説明

搬送装置

【課題】半導体ウェーハを非接触状態で持ち上げた際に半導体ウェーハが反ってしまったり自重で外周部が垂れ下がったりする場合にも、半導体ウェーハの水平方向の移動を規制する。
【解決手段】ベース部20の中心領域20aに非接触式吸引保持部21を備え、ベース部20の外周領域20bにワークWの水平方向の移動を規制する規制部22を備え、ワークWとの接触面223aを有する規制部22は、接触面223をベース部20に対して上下方向に移動可能に配設される。接触面223aは、湾曲したワークWの中央部上面よりも下に位置するワークの外周部上面W1に接触面223aが接触する下位置と、下位置に位置づけられた接触面223aがワークWを介してテーブル5上に押し付けられることにより下位置から上方向に逃げる上位置との間で上下動することで、ワークWを持ち上げた際にワークWが反ってしまったりした場合でも、板状物の水平方向の移動を規制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種板状物を保持して搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列された多数の領域にIC、LSI等の回路を形成し、回路が形成された領域を所定のストリートといわれる切断ラインに沿ってダイシングすることにより個々の半導体チップを製造している。そして、このようにして分割された半導体チップは、パッケージングされて携帯電話やパソコン等の電気機器に広く利用されている。
【0003】
半導体ウェーハのダイシングを含む製造後工程では、通常は、半導体ウェーハ及びリング状に形成された環状フレームがダイシングテープに貼着され、半導体ウェーハがダイシングテープを介して環状フレームに支持された状態となる。しかし、コスト削減のためにダイシングテープ及び環状フレームを用いずに半導体ウェーハ単体で搬送することが求められる場合があり、かかる場合には、いわゆるベルヌーイの原理を用いて半導体ウェーハを非接触状態で吸引し、水平方向への半導体ウェーハのズレを摩擦部材によって規制した構成の搬送機構が用いられることがある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に開示された搬送機構は、半導体ウェーハの外周部上面に接触してその水平方向の移動を規制する外周支持部材を備えており、保持テーブル上に載置された半導体ウェーハの外周部上面の高さに合わせて外周支持部材の接触面を形成した構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4256132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体チップの放熱性を良好にするためは、半導体チップの厚さをできるだけ薄く形成することが望ましく、また、半導体素子を多数用いる携帯電話機、スマートカード、パソコン等の小型化を可能にするためにも、半導体素子の厚さをできるだけ薄く形成することが望ましいため、近年は、研削により半導体ウェーハを極めて薄く形成するようになっている。
【0007】
したがって、このような極めて薄い半導体ウェーハを、ダイシングテープ及び環状フレームを用いずに、特許文献1に示した搬送機構によって搬送しようとすると、持ち上げた際に半導体ウェーハが反ってしまったり、半導体ウェーハの自重でその外周部が垂れ下がったりする場合がある。
【0008】
かかる場合には、保持テーブル上に載置された半導体ウェーハの外周部上面の高さに合わせて外周支持部材の接触面を形成した構成では、半導体ウェーハの搬送時に接触面が半導体ウェーハの上面から離れてしまい、半導体ウェーハの水平方向の移動規制を実現することができない。このような問題は、半導体ウェーハ以外の薄く形成される板状物にも同様に存在する。
【0009】
本発明は、これらの事実に鑑みてなされたものであって、その主な技術的課題は、ベルヌーイの原理を用いた搬送機構で半導体ウェーハを非接触状態で持ち上げた際に、半導体ウェーハが反ってしまったり自重で外周部が垂れ下がったりする場合にも、搬送時に半導体ウェーハの水平方向の移動を規制できる搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、板状物を吸引保持する吸引保持機構と、吸引保持機構を移動させる移動機構とを具備する板状物の搬送装置において、吸引保持機構は、移動機構に連結したベース部と、ベース部の中心領域下面に配設された非接触式吸引保持器と、ベース部の外周領域に配設され接触面を板状物の上面に接触させることで板状物の水平方向の移動を規制する規制部とを有する。そして、規制部は、接触面を、上位置と下位置との間で移動可能にベース部に配設されており、下位置は、非接触吸引保持器に保持されて持ち上げられることにより湾曲した板状物の中央部上面よりも下に位置する板状物の外周部上面に該接触面が接触する位置であり、上位置は、非接触吸引保持器がテーブル上に載置されたワークを保持する際に、下位置に位置づけられた接触面が板状物を介してテーブル上に押し付けられることにより下位置から上方向に逃げる位置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る搬送装置は、板状物の水平方向の移動を規制する規制部を構成するワークとの接触面が、所定の上位置と下位置との間で移動可能であるため、板状物を持ち上げた際に板状物が反ってしまったり、自重でその外周部が垂れ下がったりする場合であっても、搬送時に板状物の水平方向の移動を規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】搬送装置の第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】第1の実施形態の搬送装置を構成する非接触式吸引保持器の一例を示す断面図である。
【図3】第1の実施形態の搬送装置を構成するベース部及び規制部を拡大して略示的に示す断面図である。
【図4】第1の実施形態の搬送装置を搭載した切削装置の一例を示す斜視図である。
【図5】第1の実施形態の搬送装置によってワークを保持する状態を略示的に示す断面図である。
【図6】第1の実施形態の搬送装置によってワークを保持して搬送する状態を略示的に示す断面図である。
【図7】第1の実施形態の搬送手段によって保持されたワークを保持手段に載置した状態を略示的に示す断面図である。
【図8】第2の実施形態の搬送装置によってワークを保持する状態を略示的に示す断面図である。
【図9】第2の実施形態の搬送装置によってワークを保持して搬送する状態を略示的に示す断面図である。
【図10】第3の実施形態の搬送装置によってワークを保持する状態を略示的に示す断面図である。
【図11】第3の実施形態の搬送装置によってワークを保持して搬送する状態を略示的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1)第1の実施形態
図1に示す搬送装置1は、各種板状物を保持して搬送する装置であり、板状物を吸引保持する吸引保持機構2と、吸引保持機構2を移動させる移動機構3とから構成されている。
【0014】
吸引保持機構2は、板状に形成され移動機構3に連結されたベース部20と、ベース部20の中心領域20aの下面に配設された非接触式吸引保持器21と、ベース部20の外周領域20bに配設され保持対象の板状物の水平方向移動を規制する複数の規制部22とを備えている。規制部22は、ベース部20の外周の円弧に沿って配設されている。なお、図1の例では非接触式吸引保持器21が3個配設されているが、非接触式吸引保持器21の数は1つでもよいし、4つ以上でもよい。また、規制部22のベース部20における径方向の配設位置は、保持する板状物の大きさに応じて調整される。
【0015】
移動機構3は、アーム部30と、アーム部30の一端に連結されアーム部30を昇降させる昇降手段31と、アーム部30を水平方向に旋回させる旋回動手段32と、アーム部30と吸引保持機構2とを連結する連結部材33とを備えている。昇降手段31は、例えばエアピストンにより構成され、図1において矢印Aで示した上下方向にアーム部30を昇降させることができる。また、旋回動手段32は、正転及び逆転可能なモータを含み、昇降手段31を回転させることによりアーム部30を矢印Bで示した水平方向に旋回させることができる。連結部材33には、その表裏を貫通する孔が形成されており、それぞれの孔にチューブ34が挿通されている。このチューブ34の一端は、エアを送風するエア送風源(図示せず)に連通している。
【0016】
図2に示すように、非接触式吸引保持器21は、ベルヌーイの原理によって板状物を吸引保持する機能を有し、円盤上に形成された本体部210を備えている。本体部210の上部からはエア流入部211が突出して形成されており、エア流入部211は、図1に示した移動機構3の連結部材33に固定されたチューブ34に連通している。図2に示すように、エア流入部211は、本体部210の内部に形成されたエア流通路212に連通しており、エア流通路212は、本体部210の下面210aに形成されたエア噴出部213に連通している。エア噴出部213は、エアの噴出方向を案内する案内部213aを備えており、エア流入部211から流入したエアは、図2における矢印Cの方向に放射状に噴出する。
【0017】
非接触式吸引保持器21においては、エア噴出部213から矢印Cの方向にエアが噴出されると、本体部210の下面210aの中心部には負圧が発生し、この負圧によって板状物が下面210a側(矢印Dの方向)に引き寄せられる。そして、さらに板状物がエア噴出部213に接近すると、本体部210の下面210aと板状物との間を流れる空気が反発力として作用し、板状物と下面210aとの接触が阻止され、非接触状態で板状物を吸引保持することができる。
【0018】
図3に示すように、規制部22は、ベース部20の厚さ方向に貫通する貫通孔200を貫通した軸部220と、軸部220の上部に位置する抜け止め部221と、軸部220の下部に位置する昇降ブロック222とから構成されている。軸部220は、貫通孔200に遊嵌しており、ベース部20に対して上下動可能となっている。
【0019】
抜け止め部221は、ベース部20に形成された貫通孔200を貫通しないように、軸部20より大径に形成されている。また、抜け止め部221には、規制部22の重さを調整するためのおもり221aを備えている。抜け止め部221の下面221bとベース部20の上面20cとは平行である。
【0020】
昇降ブロック222の下面222aは、保持するワークの外周側に向かうにつれて下降する傾斜面となっており、この傾斜した下面222aの全面には、ワークのスライドを防止できるほどに摩擦係数の高い摩擦部材223が敷設されている。摩擦部材223としては、たとえばラバーシートを使用することができる。摩擦部材223の下面は、板状物と接触する接触面223aとなっている。接触面223aの摩擦力は、規制部22の重さによって調整することができる。
【0021】
このように構成される搬送装置1は、例えば図4に示す切削装置4に搭載される。この切削装置4は、保持手段5において切削対象の板状物を保持し、切削手段6によって板状物に切削加工を施す装置である。
【0022】
装置前面側には、板状物であるワークWを複数収容することができるカセット70が載置されるカセット載置領域7を備えている。カセット70には、板状物の搬出入口となる開口部70aを備えている。開口部70aの内部の両側部には、板状物を複数段に支持するためのスロット70bが形成されている。
【0023】
カセット70は、開口部70aが装置の後方側に向くようにカセット載置領域7に載置される。カセット載置領域7は昇降可能であり、カセット載置領域7が昇降することにより、カセット70に収容された板状物を所定の高さに位置させることができる。
【0024】
カセット載置領域7の後方側には、カセット70からの加工前の板状物の搬出及び加工後の板状物のカセット70への搬入を行う搬出入手段8と、カセット70から搬出した板状物を所定の位置に位置合わせする位置合わせ手段9が配設されている。位置合わせ手段9は、ワークWを載置するための載置部90を備えている。
【0025】
保持手段5は、ワークを保持するためのテーブルであり、ワークを吸引保持する吸引部5aを有している。保持手段5は、図4におけるX方向に移動可能となっており、ワークを吸引保持する吸引部5aを有している。保持手段5は、板状物の受け渡しを行う領域である受け渡し領域50と、板状物の切削加工を行う領域である加工領域51との間を移動する構成となっている。また、保持手段5の移動経路の上方には、板状物の切削すべき位置を検出するための撮像を行う撮像手段10が配設されている。
【0026】
受け渡し領域50には、図1に示した搬送装置1が配設されている。搬送装置1は、位置合わせ手段9と保持手段5と洗浄手段11との間で板状物を搬送する機能を有する。
【0027】
一方、加工領域51には切削手段6が配設されている。切削手段6は、X方向に対して水平方向に直交するY方向及びX方向及びY方向に直交するZ方向に移動可能であり、高速回転可能な切削ブレード60を備えている。
【0028】
受け渡し領域50の近傍には、切削済みの板状物に対して洗浄液を噴出して洗浄を行う洗浄手段11が配設されている。そして、洗浄手段11の上方には、保持手段5と洗浄手段11との間で板状物を搬送する搬送装置1aが配設されている。この搬送装置1aも、搬送装置1と同様に、ベルヌーイの原理によって板状物を吸引保持する吸引保持機構2を備えている。吸引保持機構2は、連結部33を介してアーム部30aに対して昇降可能に連結され、アーム部30aを含む移動機構3aによって駆動されてX方向に対して水平方向に直交するY方向に移動可能となっている。吸引保持機構2がY方向に移動することで、受け渡し領域50と洗浄手段11との間で板状物を搬送することができる。
【0029】
ワークを保持するテーブルである保持手段5に保持されたワークを吸引保持機構2で保持して搬出する際は、図5に示すように、アーム部30とともに吸引保持機構2を降下させ、摩擦部材223の接触面223aをワークWの外周部上面W1に接触させ、ワークWを保持手段5に押し付ける。そうすると、規制部22が上昇し、抜け止め部221の下面221bとベース部20の上面20cとの間に高低差Z1が生じる。またこのとき、非接触式吸引保持器21からは、ワークWの中央部上面W2から外周部上面W1の方向にエアが流れるようにエアを噴出する。
【0030】
こうしてエアを噴出した状態で、図6に示すように、吸引保持機構2を上昇させると、ワークWが非接触吸引保持器21と非接触の状態で上昇して吸引保持される。また、吸引保持機構2が上昇することにより、規制部22は、ベース部20に対してワークWの湾曲に対応して降下する。すなわち、ワークWが反ったり、ワークWの自重により外周部分が垂れ下がったりしても、ワークWの外周部上面W1は、接触面223aに接触した状態となり、摩擦部材223によってワークWの水平方向の移動が規制される。たとえば、図5に示した高低差Z1が2mmあれば、ワークWの周縁部が厚さ方向下方に2mm湾曲しても、接触面223aとワークWの上面W1との接触が維持され、ワークWの水平方向のずれを防止することができる。
【0031】
このように、非接触吸引保持器21に保持されて持ち上げられることにより湾曲したワークWの中央部上面W2よりも下に位置する板状物の外周部上面W1に接触面223aが接触するときの接触面223aの位置を、下位置という。一方、図5に示したように非接触吸引保持器21がワークを保持するテーブルである保持手段5上に載置されたワークWを保持する際に、下位置に位置づけられた接触面223aがワークWを介して保持手段5上に押し付けられることにより下位置から上方向に逃げたときの接触面223aの位置を、上位置という。すなわち、規制部22は、接触面223aを上位置と下位置との間で移動可能にベース部20に配設されており、移動可能範囲内のワークWの湾曲であれば接触面223aとワークWの上面W1との接触を維持できる。
【0032】
一方、吸引保持機構2によって保持したワークWを保持手段5に搬入する際には、図7に示すように、摩擦部材223がワークWを保持手段5に押し付けてワークWを保持手段5に載置する。そして、保持手段5の吸引部5aに吸引力を作用させることにより、ワークWが保持手段5に保持される。
【0033】
1枚のワークでも、その反り量は外周位置によって異なり、外周上面W1はそれぞれ異なる高さ位置に位置することになるが、各規制部22は、それぞれが独立して昇降し、それぞれが上位置と下位置との間にあるワークに一定の圧をかけながら接触面223aを接触させることができる、したがって、ワークWを安定して保持し、搬送することができる
【0034】
このように構成される切削装置4において、カセット70に収容された板状物であるワークWを切削加工し、切削加工後のワークWをカセット70に収容する場合における切削装置4の動作について、以下に説明する、なお、ワークWは特に限定はされないが、例えばシリコンウェーハ、ガリウム砒素、シリコンカーバイド等の半導体ウェーハや、チップ実装用としてウェーハの裏面に設けられるDAF(Die Attach Film)等の粘着部材、半導体製品のパッケージ、セラミックス、ガラス、サファイア(Al2O3)系の無機材料基板、液晶ディスプレイドライバー等の各種電子部品、さらには、ミクロンオーダーの加工位置精度が要求される各種加工材料が挙げられる。
【0035】
カセット70に収容されたワークWは、搬出入手段8によって搬出され、位置合わせ手段9の載置部90に載置される。そして、ここでワークWの位置が一定の位置に位置合わせされた後、搬送装置1によって受け渡し領域50に位置する保持手段5に搬送される。載置部90から保持手段5へのワークの搬送は、図5−7に示した方法と同様の方法により行われる。
【0036】
次に、保持手段5が図1に示したX方向に移動し、撮像手段10によってワークWの上面が撮像されて切削すべき位置が検出され、その位置と切削ブレード60とのY方向の位置合わせが行われる。そして、保持手段5がX方向に移動して加工領域51に進入するとともに、切削ブレード60が高速回転しながら切削手段6が降下することにより、切削すべき位置が切削される。例えば、最終的なチップの仕上がり厚さに相当する深さの切削溝が形成される。このような切削を、切削手段6をY方向に送りながら繰り返し行い、さらに保持手段6を90度回転させて同様の切削を行う。
【0037】
切削終了後は、保持手段5が受け渡し領域50に戻る。そして、搬送装置1aによって切削後のワークWが吸引保持されて洗浄手段11に搬送される。搬送手段1aによるワークWの吸引保持及び搬送は、搬送手段1の場合と同様に、図5−7に示した方法と同様の方法によって行われる。
【0038】
洗浄手段11に搬送された切削後のワークWは、洗浄手段11において洗浄及び乾燥が行われた後、搬送装置1によって切削後のワークWが吸引保持され、位置合わせ手段9に搬送される。そして、搬出入手段8によって切削後のワークWを保持し、カセット70に収容する。
【0039】
(2)第2の実施形態
図8に示す搬送装置1bは、移動機構3によって移動する吸引保持機構2aを備えている。なお、以下においては、第1の実施形態と同様に構成される部位については同一の符号を付して説明する。
【0040】
図8に示す吸引保持機構2aは、ベース部20の中心領域20aの下面に非接触式吸引保持器21が配設され、ベース部20の外周領域20bに、板状物の水平方向移動を規制する複数の規制部22bが配設されて構成されている。
【0041】
規制部22bは、ベース部20の厚さ方向に貫通する貫通孔200を貫通した軸部220と、軸部220の上部に位置する抜け止め部224と、軸部220の下部に位置する昇降ブロック222とから構成されている。昇降ブロック222の下面222aには、摩擦部材223が敷設されており、摩擦部材223の下面は、ワークと接触する接触面223aとなっている。軸部220は、貫通孔200に遊嵌しており、ベース部20に対して上下動可能となっている。
【0042】
抜け止め部224は、ベース部20に形成された貫通孔200を貫通しないように、軸部20より大径に形成されている。抜け止め部224の下面224bとベース部20の上面20cとは平行である。
【0043】
軸部220のうち、ベース部20の下面20dと昇降ブロック222との間には、スプリング23が介在している。スプリング23は、ベース部20の下面20dと昇降ブロック222の上面222bとを離間させる方向に付勢されており、スプリング23による付勢によって接触面223aの摩擦力を調整することができる。
【0044】
図8に示すように、ワークWを保持する際に、接触面223aをワークWに押し付けると、スプリング23が収縮する。このときの接触面223aの位置が上位置となる。
【0045】
そして、図9に示すように、非接触吸引保持器21によってワークWを吸引保持して吸引保持機構2aを上昇させると、規制部22が自重によって降下するとともに、スプリング23が伸長し、接触面223aと反ったワークWの外周部上面W1と接触した状態を維持する。このように、規制部22の自重とスプリング23の付勢力とによって接触面223aの下位置が調整される。こうして、接触面223aによって、ワークWの水平方向の移動が規制される。
【0046】
(3)第3の実施形態
図10に示す搬送装置1cは、移動機構3によって移動する吸引保持機構2bを備えている。なお、以下においては、第1の実施形態と同様に構成される部位については同一の符号を付して説明する。
【0047】
図10に示す吸引保持機構2bは、ベース部20の中心領域20aの下面に非接触式吸引保持器21が配設され、ベース部20の外周領域20bの下面20dに、板状物の水平方向移動を規制する複数の規制部22cが固着されて構成されている。
【0048】
規制部22cは、下面20dと連結された軸部220aと、軸部220aの下部に位置するブロック225とから構成されている。
【0049】
ブロック225の下面225aには、弾性変形部材226が固着されている。弾性変形部材226としては、弾性変形可能であってワークのスライドを防止できるほどの摩擦係数を有する摩擦部材、例えばスポンジを用いることができる。弾性変形部材226の下面が、ワークと接触する接触面226aとなっている。
【0050】
図10に示すように、ワークWを保持する際には、接触面226aをワークWに押し付けると、弾性変形部材226が変形する。このときの接触面226aの位置が上位置となる。
【0051】
そして、図11に示すように、非接触吸引保持器21によってワークWを吸引保持して吸引保持機構2bを上昇させると、弾性変形部材226が元の状態に戻り、その状態における接触面226aと反ったワークWの外周部上面W1とが接触した状態が維持される。このときの接触面226bの位置が下位置である。このように、弾性変形部材226の変形によって接触面226aの下位置が調整される。こうして、接触面226aにより、ワークWの水平方向の移動が規制される。
【0052】
以上のように、いずれの実施形態においても、搬送装置によってワークを持ち上げた際にワークが反ってしまったり、自重でワークの外周部が垂れ下がったりしてしまったりしても、接触面によってワークが水平方向にずれるのを防止し、安定的に保持及び搬送を行うことができる。
【符号の説明】
【0053】
1:搬送装置
2:吸引保持機構
20:ベース部 20a:中心領域 20b:外周領域 20c:上面 20d:下面
200:貫通孔
21:非接触式吸引保持器 210:本体部 210a:下面
211:エア流入部 212:エア流通路
213:エア噴出部 213a:案内部
22:規制部 220:軸部
221:抜け止め部 221a:おもり 221b:下面
222:昇降ブロック
222a:下面 222b:上面 223:摩擦部材 223a:接触面
3:移動機構
30:アーム部 31:昇降手段 32:旋回動手段 33:連結部材 34:チューブ
4:切削装置
5:保持手段 5a:吸引部 50:受け渡し領域 51:加工領域
6:切削手段 60:切削ブレード
7:カセット載置領域 70:カセット 70a:開口部 70b:スロット
8:搬出入手段
9:位置合わせ手段 90:載置部
10:撮像手段 11:洗浄手段
1a:搬送装置
3a:移動機構 30a:アーム部
1b:搬送装置
2a:吸引保持機構 22b:規制部 224:抜け止め部 224b:下面
23:スプリング
1c:搬送装置
2b:吸引保持機構
22c:規制部 220a:軸部 225:ブロック 225a:下面
226:弾性変形部材 226a:接触面
W:ワーク(板状物) W1:外周部上面 W2:中央部上面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状物を吸引保持する吸引保持機構と、
該吸引保持機構を移動させる移動機構と、
を具備する板状物の搬送装置において、
該吸引保持機構は、
該移動機構に連結したベース部と、
該ベース部の中心領域下面に配設された非接触式吸引保持器と、
該ベース部の外周領域に配設され、接触面を板状物の上面に接触させることで板状物の水平方向の移動を規制する規制部と、
を有し、
該規制部は、該接触面を、上位置と下位置との間で移動可能に該ベース部に配設されており、
該下位置は、該非接触吸引保持器に保持されて持ち上げられることにより湾曲した板状物の中央部上面よりも下に位置する板状物の外周部上面に該接触面が接触する位置であり、
該上位置は、該非接触吸引保持器がテーブル上に載置されたワークを保持する際に、該下位置に位置づけられた該接触面が板状物を介して該テーブル上に押し付けられることにより該下位置から上方向に逃げる位置である、
搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−99755(P2012−99755A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248338(P2010−248338)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】