説明

摩耗検出システム、摩耗検出装置、及びアンテナ装置

【課題】従来のICを用いる技術よりも簡易な構成でありながら、摩耗を検出できる技術を提供する。
【解決手段】摩耗検出装置と、共振するアンテナ装置とを備える摩耗検出システムであって、摩耗検出装置は、所定の周波数の磁界を発生させる磁界発生回路部を備え、アンテナ装置は、磁界発生回路部が発生させる磁界領域において共振する共振回路部回路部と、共振回路部に設けられ、所定の対象物に接続されて所定の対象物が摩耗すると切断される切断部と、を備え、共振回路部は、磁界領域において共振する際の共振周波数が、切断部の切断前後において変化し、摩耗検出装置は、アンテナ装置の共振周波数を取得する共振周波数情報取得部と、前記取得される共振周波数情報に基づいて所定の対象物の摩耗状態を判断する摩耗状態判断部と、前記摩耗状態に関する情報を含む摩耗情報を出力する摩耗情報出力部と、を更に備える、

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩耗検出システム、摩耗検出装置、及びアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブレーキの摩擦材の摩耗の検出は、作業員の目視によって行われていた。しかしながら、目視では、作業員の負担が大きく、また、摩耗限界位置までの摩擦材の摩耗を見過ごす可能性が否定できない。上記課題を解決するために開発された技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1に記載の技術は、ブレーキのブレーキシューに装着されるともにIC(Integrated Circuit)とアンテナとを有するICタグであって、読書き装置と無線通信可能なICタグを備える。そして、係る技術では、ICタグのアンテナの延長線の少なくとも一部が摩擦材の摩耗限界位置に位置している。上記特許文献1に記載の技術によれば、摩耗限界位置まで摩擦材が摩耗して短絡線の少なくとも一部が摩耗により切断されると、信号入力端子間の短絡が解消される。そして、短絡が解消されたことを示す信号がICタグによって読書き装置に無線送信され、読書き装置で該信号が受信される。読書き装置を例えばコンピュータからなる管理装置と接続しておくことで、摩耗の検出と作業員への通知が可能となる。すなわち、作業員の目視によらずにブレーキシュータの摩耗の検出が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3095035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブレーキの摩擦材の摩耗を検出する技術として、IC(Integrated Circuit)とアンテナとを有するICタグをブレーキシューに装着する技術が知られている。一方で、より簡易な構成によって摩耗の検出対象を検出する技術の開発が求められている。検出装置の構成をより簡易化することで例えば故障の要因の低減や、点検の手間の低減、又はコストの削減が期待されるからである。また、検出装置の構成をより簡易化することで、ブレーキの摩擦材の摩耗の検出に限らず、検出装置の使用の用途が広がることも期待される。
【0005】
本発明では、上記した背景に鑑み、従来のICを用いる技術よりも簡易な構成により、摩耗を検出できる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、上述した課題を解決するため、所定の対象物が摩耗すると切断される切断部を、所定の対象物(摩耗の検出対象物)に接続し、切断部の切断の前後におけるアンテナ装置の共振周波数の変化から所定の対象物の摩耗を検出することとした。本発明によれば、共振回路と切断部とを有するアンテナ装置の共振周波数の変化に基づいて摩耗を検出することで、ICを用いずに所定の対象物の摩耗を検出することができる。換言すると、従来のICを用いた摩耗を検出する装置よりも簡易な構成により、所定の対象物の摩耗を検出することが可能となる。なお、所定の対象物とは、摩耗の検出対象であり、使用によって摩耗するもの、例えば、摩擦材やワイヤ等がある。
【0007】
より詳細には、本発明は、所定の周波数の磁界を発生させると共に所定の対象物の摩耗を検出する摩耗検出装置と、前記摩耗検出装置による磁界によって共振するアンテナ装置とを備える摩耗検出システムであって、前記摩耗検出装置は、前記所定の周波数の磁界を
発生させる磁界発生回路部を備える。前記アンテナ装置は、前記磁界発生回路部が発生させる磁界領域において共振する共振回路部と、前記共振回路部に設けられ、前記所定の対象物に接続されて該所定の対象物が摩耗すると切断される切断部とを備える。前記共振回路部は、前記切断部の切断前後において、前記磁界領域において共振する際の共振周波数が異なる。前記摩耗検出装置は、前記切断部の切断前後において異なる前記共振回路部の共振周波数に関する共振周波数情報を取得する共振周波数情報取得部と、前記共振周波数情報取得部で取得される共振周波数情報に基づいて、前記所定の対象物の摩耗状態を判断する摩耗状態判断部と、前記摩耗状態判断部で判断される摩耗状態に関する摩耗情報を出力する摩耗情報出力部と、を更に備える。
【0008】
アンテナ装置の共振回路部は、摩耗検出装置の磁界発生回路部が発生させる磁界領域にあることで共振する。本発明に係る摩耗検出システムでは、アンテナ装置の切断部が所定の対象物が摩耗することで切断されると、共振回路部のリアクタンスが変化し、その結果、共振回路部の共振周波数も変化する。なお、切断部は、上記のように所定の対象物が摩耗することで切断される。従って、切断部が切断されたか否かを判断することで、所定の対象物が摩耗した否かを判断することが可能となる。そこで、本発明では、変化する共振周波数、換言すると異なる共振周波数に関する共振周波数情報を摩耗検出装置で検出することで、切断部が切断されたか否かを判断することが可能となる。
【0009】
磁界発生回路部は、所定の周波数の磁界を発生させる。例えば、前記磁界発生回路部は、前記切断部の切断前の共振周波数に対応する帯域の基準周波数の磁界と前記切断部の切断後の共振周波数に対応する帯域の切断周波数の磁界を発生させ、前記摩耗状態判断部は、前記共振周波数情報取得部で取得される共振周波数情報から前記共振回路部の共振周波数を特定して、前記所定の対象物の摩耗状態を判断してもよい。
【0010】
基準周波数は、アンテナ装置の切断部が切断される前の共振周波数、換言すると摩耗前の共振周波数と同じ帯域の周波数である。この基準周波数は、切断部が切断される前の共振回路部のリアクタンスに基づいて予め算出することができる。一方、切断周波数は、アンテナ装置の切断部が切断された後における共振周波数、換言すると摩耗後の共振周波数と同じ帯域の周波数である。この切断周波数は、切断部が切断された後の共振回路部のリアクタンスに基づいて予め算出することができる。発信回路部が異なる帯域の周波数を有する磁界を発生させ、この磁界の領域において共振する共振回路部の共振周波数を取得または特定することで、切断部が切断されたか否かを判断することができる。その結果、対象物が摩耗しているか否かを判断することが可能となる。
【0011】
共振周波数情報とは、共振回路部の共振周波数を特定するための情報、より詳細には、切断部の切断前後によって異なる共振回路部の共振周波数を特定するための情報である。共振回路部の共振が変化すると、この変化は、発信回路部が発生させる磁界領域にも影響をもたらす。換言すると、共振回路部の共振周波数によって、発信回路部を流れる電流や、発信回路部内の電圧にも変化が生じる。従って、共振周波数情報には、共振回路部の共振周波数によって変化する、発信回路部を流れる電流の変化に関する情報や、発信回路部内の電圧に関する情報を含めることができる。そして、共振周波数情報取得部は、このような発信回路部を流れる電流の変化に関する情報や、発信回路部内の電圧に関する情報を、前記共振周波数情報として取得することができる。
【0012】
そこで、本発明において、前記磁界発生回路部は、前記切断部の切断前の共振周波数に対応する帯域の基準周波数の磁界と前記切断部の切断後の共振周波数に対応する帯域の切断周波数の磁界を発生させ、前記共振周波数情報取得部は、前記共振周波数情報として、前記異なる共振周波数によって変化する前記磁界発生回路部における電流又は電圧を取得し、前記摩耗状態判断部は、前記共振周波数情報取得部で取得される電流又は電圧に基づ
いて前記共振回路部の共振周波数を特定して、前記所定の対象物の摩耗状態を判断するようにしてもよい。上記のように、共振回路部の共振周波数によって、発信回路部を流れる電流や、発信回路部内の電圧にも変化が生じることから、発信回路部を流れる電流や電圧に基づいて、共振周波数の特定が可能となる。そして、共振周波数が特定できれば、最終的に所定の対象物の摩耗状態を判断することが可能となる。
【0013】
ここで、上記発明において、前記磁界発生回路部は、前記切断部の切断前の共振周波数に対応する帯域の基準周波数の磁界と前記切断部の切断後の共振周波数に対応する帯域の切断周波数の磁界を発生させ、前記共振周波数情報取得部は、前記共振周波数情報として、前記異なる共振周波数によって変化する前記磁界発生回路部における電流又は電圧を取得し、前記摩耗状態判断部は、前記共振周波数情報取得部で取得される電流又は電圧に基づいて前記共振回路部の共振周波数を特定し、該特定された共振周波数が前記基準周波数と前記切断周波数のいずれにも対応しない場合、前記摩耗検出システムに異常があると判断するようにしてもよい。
【0014】
上述したように、基準周波数及び切断周波数は、アンテナ装置の共振回路部のリアクタンスに基づいて予め算出することができる。換言すると、摩耗検出システムが正常に作動している限り、共振周波数情報取得部で取得される共振周波数情報から特定される共振周波数は、基準周波数又は切断周波数のいずれか一方に対応する。従って、特定される共振周波数が、基準周波数と切断周波数の双方に対応しない場合には、摩耗検出システムに何らかの異常が発生したことが想定される。従って、本発明によれば、対象物の摩耗の検出に加えて、システムが正常に動作しているか否かを判断することができる。
【0015】
ここで、上記発明において、前記切断部は、前記所定の対象物の摩耗状態に応じて切断されるように、前記所定の対象物に複数接続され、前記磁界発生回路部は、前記複数の切断部の夫々についての、前記切断部の切断前の共振周波数と対応する帯域の基準周波数の磁界と前記切断部の切断後の共振周波数と対応する帯域の切断周波数の磁界を発生させ、前記摩耗状態判断部は、前記共振周波数情報取得部で取得される共振周波数情報から前記共振回路部の共振周波数を特定し、前記所定の対象物の摩耗状態を判断するようにしてもよい。
【0016】
所定の対象物の摩耗は、対象物の領域によってその進行度が異なることが想定される。また、厚みを有する所定の対象物は、摩耗が厚さ方向に徐々に進行する。そこで、複数の切断部を所定の対象物に接続することで所定の対象物の摩耗状態をより正確に判断することが可能となる。例えば、所定の対象物が厚みを有する場合、厚さ方向に段階的に切断部を接続することで、摩耗の進行度合いを段階的に判断することが可能となる。
【0017】
上記発明において、前記切断部は、前記共振回路部を構成する導線の一部とすることができる。そして、このような切断部は、前記所定の対象物の表面に接続されるようにしてもよく、また、所定の対象物の内部に埋め込むようにしてもよい。切断部を表面に接続する場合、既存の所定の対象物に接続することができ、また、切断部の状況を視認することができる。一方、切断部を内部に埋め込むことで、所定の対象物と切断部との一体性が向上し、摩擦によって切断部が確実に切断される。また、切断部を内部に埋め込むことで、所定の対象物の美観が向上する。
【0018】
ここで、本発明は、上述した摩耗検出システムに含まれる摩耗検出装置としてもよい。具体的には、本発明は、所定の周波数の磁界を発生させると共に所定の対象物の摩耗を検出する摩耗検出装置であって、前記所定の周波数の磁界を発生させる磁界発生回路部と、前記磁界発生回路が発生させる磁界によって共振するアンテナ装置の共振周波数を取得する共振周波数情報取得部と、前記共振周波数情報取得部で取得される共振周波数情報に基
づいて、前記所定の対象物の摩耗状態を判断する摩耗状態判断部と、前記摩耗状態判断部で判断される摩耗状態に関する情報を含む摩耗情報を出力する摩耗情報出力部とを備える。そして、前記アンテナ装置は、前記磁界発生回路部が発生させる磁界領域において共振する共振回路部と、前記共振回路部に設けられ、前記所定の対象物に接続されて該所定の対象物が摩耗すると切断される切断部と、を備え、前記共振回路部は、前記磁界領域において共振する際の共振周波数が、前記切断部の切断前後において変化する。
【0019】
また、本発明は、上述した摩耗検出システムに含まれるアンテナ装置としてもよい。具体的には、本発明は、所定の周波数の磁界を発生させると共に所定の対象物の摩耗を検出する摩耗検出装置が発生させる前記磁界によって共振するアンテナ装置であって、前記摩耗検出装置は、前記所定の周波数の磁界を発生させる磁界発生回路部を備える。そして、前記アンテナ装置は、前記磁界発生回路部が発生させる磁界領域において共振する共振回路部回路部と、前記共振回路部に設けられ、前記所定の対象物に接続されて該所定の対象物が摩耗すると切断される切断部と、を備える。また、前記共振回路部は、前記磁界領域において共振する際の共振周波数が、前記切断部の切断前後において変化する。また、前記摩耗検出装置は、前記アンテナ装置の共振周波数を取得する共振周波数情報取得部と、前記共振周波数情報取得部で取得される共振周波数情報に基づいて、前記所定の対象物の摩耗状態を判断する摩耗状態判断部と、前記摩耗状態判断部で判断される摩耗状態に関する情報を含む摩耗情報を出力する摩耗情報出力部と、を更に備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、従来のICを用いる技術よりも簡易な構成により、摩耗を検出できる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】摩耗検出システムの適用例を示す。
【図2】第一実施形態に係る摩耗検出システムの概略構成を示す。
【図3】制御装置の機能ブロック図を示す。
【図4】摩耗検出システムの他の適用例を示す。
【図5】第一実施形態に係るアンテナ装置の構成例を示す。
【図6】第一実施形態に係るアンテナ装置の接続態様の一例を示す。
【図7A】図6とは異なる、第一実施形態に係るアンテナ装置の接続態様の一例を示す。
【図7B】図7AにおけるAA断面を示す。
【図8】摩耗検出システムにおける処理フローを示す。
【図9A】正常時における摩耗検出システムを示す。
【図9B】摩耗時における摩耗検出システムを示す。
【図9C】異常時における摩耗検出システムを示す。
【図10】摩耗判断処理フローを示す。
【図11A】正常時における、スイッチと発信回路の出力電圧との関係を示す。
【図11B】摩耗時における、スイッチと発信回路の出力電圧との関係を示す。
【図11C】異常時における、スイッチと発信回路の出力電圧との関係を示す。
【図12】第二実施形態に係る摩耗検出システムの概略構成を示す。
【図13】第ニ実施形態に係るアンテナ装置の接続態様の一例を示す。
【図14】図13における切断部及び第一切断部の拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係る摩耗検出システムの実施形態について図面に基づいて説明する。以下の説明では、本発明に係る摩耗検出システムを、車両のブレーキを構成するライニング(摩擦材)の摩耗の検出に適用する場合を例に説明する。但し、以下の説明は、例示であ
り、本発明に係る摩耗検出システムは、使用を重ねることで摩耗する様々な対象物、摩擦材、ワイヤ等の摩耗を検出するシステムとして利用することができる。また、以下の説明では、車両として四輪の自動車を例示するが、本発明に係る摩耗検出システムは、二輪車や鉄道車両のブレーキを構成する摩擦材の摩耗の検出にも好適に用いることができる。
【0023】
[第一実施形態]
<構成>
図1は、摩耗検出システムの適用例を示す。また、図2は、第一実施形態に係る摩耗検出システム100の概略構成を示す。第一実施形態に係る摩耗検出システム100は、摩耗検出装置1と、アンテナ装置2とを備える。第一実施形態に係る摩耗検出システム100では、アンテナ装置2が、車両3のホイル31付近に設けられるブレーキ(詳細には、ブレーキのプレッシャープレート)に接続され、摩耗検出装置1は、車両3のフェンダ32に接続されている。なお、図1では、摩耗検出システム100が後輪の一方にのみ設けられているが、全ての車輪のブレーキに設けることが好ましい。図1に示す例では、摩耗検出装置1が、車両3内に搭載されるナビゲーション装置4と電気的に接続され、摩耗検出システム100による摩耗の検出結果が、ナビゲーション装置4のディスプレイや車両3のスピーカ(図示せず)を通じて出力される。以下、第一実施形態に係る摩耗検出システム100の詳細について説明する。
【0024】
(摩耗検出装置)
摩耗検出装置1は、発信回路11、制御装置12を備える。発信回路11は、所定の周波数の磁界を発生させる。本実施形態に係る発信回路11は、第一交流電源111、第二交流電源112、スイッチ113、検出装置側コイル114、抵抗器115、オペアンプ116を備える。
【0025】
第一交流電源111は、周波数f0の電力を出力する。第二交流電源112は、周波数
02の電力を出力する。スイッチ113は、第一交流電源111と第二交流電源112とを切り替える。スイッチ113の切替は、制御装置12のスイッチ制御部126によって行われる。抵抗器115は、発信回路11の抵抗として機能する。オペアンプ116は、発信回路11から出力される電流や電圧を増幅する。
【0026】
検出装置側コイル114は、第一交流電源111又は第二交流電源112からの電力によって磁界を発生させる。すなわち、検出装置側コイル114は、第一交流電源111が接続されている場合、周波数f0の磁界を発生させる。一方、検出装置側コイル114は
、第二交流電源112が接続されている場合、周波数f02の磁界を発生させる。
【0027】
ここで、周波数f0は、本発明の基準周波数に相当し、アンテナ装置2が正常な状態に
おける共振周波数f0に対応する。換言すると、第一交流電源111から出力される電力
の周波数は、アンテナ装置2が正常な状態における共振周波数f0に基づいて設定される
。アンテナ装置2が正常な状態とは、アンテナ装置2が正常に動作する状態であって、かつ、切断部22が切断されていない状態である。また、周波数f02は、本発明の切断周波数に相当し、アンテナ装置2の切断部22がライニングの摩耗によって切断された状態における共振周波数f02と一致する。換言すると、第二交流電源112から出力される電力の周波数は、ライニングが摩耗して切断部22が切断される状態における共振周波数f02に基づいて設定される。
【0028】
図3は、制御装置12の機能ブロック図を示す。図3に示すように、制御装置12は、CPU121、メモリ122、共振周波数情報取得部123、摩耗状態判断部124、摩耗情報出力部125、スイッチ制御部126を有する。CPU121は、バスを介して上述した発信回路11等の各ハードウェアと接続されている。CPU121は、発信回路1
1等のハードウェアを制御すると共に、例えばメモリ122に格納された制御プログラムに従って、所定の処理を実行する。メモリ122は、揮発性のRAM(Random Access Memory)と、不揮発性のROM(Read Only Memory)を含む。ROMには、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read-Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)のような書き換え可能な半導体メモリ
を含む。
【0029】
共振周波数情報取得部123、摩耗状態判断部124、摩耗情報出力部125、スイッチ制御部126等の機能部についての詳細については、後述するが、これらの機能部は、CPU121上で実行されるコンピュータプログラムとして構成することができる。なお、これらの機能部は、専用のプロセッサとして構成してもよい。
【0030】
共振周波数情報取得部123は、アンテナ装置2の共振周波数に関する共振周波数情報を取得する。具体的には、共振周波数情報取得部123は、共振回路21の共振周波数を特定する情報として、オペアンプ116で増幅された発信回路11から出力される出力電流や出力電圧を取得する。発信回路11から出力される出力電流や出力電圧は、電流計や電圧計を介して取得することができる。
【0031】
摩耗状態判断部124は、共振周波数情報取得部で取得される共振周波数情報に基づいて、ライニングの摩耗状態を判断する。具体的には、摩耗状態判断部124は、共振周波数情報取得部123で取得される共振周波数情報から特定される共振周波数が、切断周波数f02に対応していれば、ライニングが摩耗していると判断する。共振周波数情報から特定される共振周波数が切断周波数f02に対応しているか否かは、発信回路11から出力される出力電流や出力電圧によって判断することができる。アンテナ装置2が共振している場合、摩耗検出装置1も共振することから発信回路11から出力される出力電流や出力電圧が上昇する。例えば、第ニ交流電源112が接続され、周波数f02の磁界が発生している場合において、発信回路11から出力される出力電流又は出力電圧が上昇した場合、共振回路21の共振周波数がf02であると特定される。従って、摩耗状態判断部124は、共振周波数情報取得部123で取得される共振周波数情報から特定される共振周波数が切断周波数f02に対応しており、切断部22が切断され、ライニングが摩耗していると判断する。
【0032】
一方、第一交流電源111が接続され、周波数f0の磁界が発生している場合において
、発信回路11から出力される出力電流又は出力電圧が上昇した場合、共振回路21の共振周波数がf0であると特定される。従って、摩耗状態判断部124は、共振周波数情報
取得部123で取得される共振周波数情報から特定される共振周波数が、切断周波数f02に対応していない、換言すると、共振周波数情報取得部123で取得される共振周波数情報から特定される共振周波数が、切断周波数f0に対応していると判断する。その結果、
摩耗状態判断部124は、切断部22が切断されておらず、ライニングは摩耗していないと判断する。なお、第一交流電源111が接続されている場合と第二交流電源が接続されている場合のいずれの場合においても、発信回路11から出力される電流又は電圧が上昇しない場合、摩耗検出システム100に異常が発生したと判断する。
【0033】
摩耗情報出力部125は、摩耗状態判断部124で判断される摩耗状態に関する情報を含む摩耗情報を出力する。例えば、摩耗情報出力部125は、車両に搭載されるナビゲーション装置4のディスプレイに対して、摩耗情報を出力する。なお、出力の態様は、特に限定されない。摩耗情報出力部125は、スピーカを通じて例えば警告音を発するようにしてもよい。また、摩耗検出装置1を車両3に取り付けずに可搬型とする場合には、摩耗検出装置1にディスプレイやスピーカ等の出力装置を接続し、摩耗情報出力部125は、このような出力装置を介して摩耗情報を出力するようにしてもよい。図4は、摩耗検出シ
ステムの他の適用例を示す。図4に示す例では、摩耗検出装置1が、ディスプレイ、キーボード、スピーカ等を備えるコンピュータ5と電気的に接続されている。図4に示す例では、摩耗情報出力部125は、コンピュータ5のディスプレイやスピーカに対して、摩耗情報を出力する。
【0034】
スイッチ制御部126は、スイッチ113が、第一交流電源111と第二交流電源112とを切り替えるタイミングを制御する。例えば、スイッチ制御部126は、第一交流電源111と第二交流電源112とが数秒毎に切り替わるようスイッチ113を制御する。
【0035】
(アンテナ装置)
次にアンテナ装置について説明する。図1に示すように、アンテナ装置2は、共振回路21、切断部22を備える。共振回路21は、摩耗検出装置1の発信回路11が発生させる磁界において共振する。第一実施形態に係る共振回路21は、アンテナ装置側コイル211、第一コンデンサ212、第二コンデンサ213、導線214、導線214の一部によって構成される切断部22を備える。換言すると、第一実施形態に係る共振回路21は、アンテナ装置側コイル211と第一コンデンサ212とこれらを接続する導線214からなる第一ループを有する。そして、第一ループには、アンテナ装置側コイル211と、第一コンデンサ212とを接続する導線214の途中に分岐点215、215が設けられている。この分岐点215、215からは、導線214が延出され、第二ループが形成されている。第二ループには、第二コンデンサ213と、切断部22が設けられている。
【0036】
切断部22は、ライニングが摩耗すると切断されものであり、導線214の一部を構成する。本実施形態に係る切断部22は、共振回路21の第二ループに設けられている。切断部22が第二ループに設けられることで、共振回路21は、異なる共振周波数を有することができる。すなわち、共振回路21の共振周波数は、共振回路21のコンデンサ(第一コンデンサ212、第二コンデンサ213)の静電容量の和と、コイル(アンテナ装置側コイル211)のインダクタンスによって決定される。つまり、切断部22の切断前においては、共振回路21の共振周波数f0は、第一コンデンサ212と第二コンデンサ2
13の静電容量の和と、アンテナ装置側コイル211のインダクタンスによって決定される(式1参照。)。また、切断部22の切断後においては、第二ループに設けられている第二コンデンサ213への接続が遮断される。その結果、共振回路21の共振周波数f02は、第一コンデンサ212の静電容量と、アンテナ装置側コイル211のインダクタンスによって決定される(式2参照)。
【0037】
【数1】

【0038】
【数2】

【0039】
ここで、図5は、第一実施形態に係るアンテナ装置2の構成例を示す。図5に示すアンテナ装置2は、非導電性の薄板状の基板22上に共振回路21が設けられている。より詳細には、長方形の基板22上にアンテナ装置側コイル211と、第一コンデンサ212及び第二コンデンサ213が設けられている。そして、導線の一部としての切断部22が基板22から外側に突出するように設けられている。また、基板22の四隅近傍の夫々には
、アンテナ装置2が接続されるプレッシャープレートに接続する際に用いる接続用貫通孔23が設けられている。なお、アンテナ装置2の接続方法についは、後述する。
【0040】
ここで、図6は、第一実施形態に係るアンテナ装置2の接続態様の一例を示す。図6に示す例では、アンテナ装置2が、ブレーキのプレッシャ−プレート35の表面(ライニング36が接続される側の面)に接続されている。アンテナ装置2とプレッシャ−プレート35との接続は、アンテナ装置2の接続用貫通孔23を用いて螺子締結によって実現できる。なお、アンテナ装置2とプレッシャ−プレート35との接続は、接着剤を用いて行ってもよく、また、螺子締結と接着剤を併用してもよい。図6に示す態様では、導線の一部としての切断部22が、ライニング36の側面36aに、接着剤を用いて固定されている。これにより、ライニング36が摩耗することで切断部22が切断される。
【0041】
図7Aは、図6とは異なる、第一実施形態に係るアンテナ装置2の接続態様の一例を示す。図7Bは、図7AにおけるAA断面を示す。図7Aに示す例では、アンテナ装置2が、プレッシャ−プレート35の背面(ライニング36が接続される面と反対側の面)に接続されている。アンテナ装置2とプレッシャ−プレート35との接続は、図6に示す例と同様、螺子締結、接着剤、又は螺子締結と接着剤との併用により行うことができる。図7Aに示す態様では、導線214の一部としての切断部22は、プレッシャ−プレート35に設けられた孔部351を介してライニング36に埋め込まれている。このような態様は、例えば、導線214の一部である切断部22を埋め込んでライニング36を成形し、ライニング36から突出する切断部22と、アンテナ装置2とを接続することで実現できる。なお、切断部22は、孔部351を介してプレッシャ−プレート35の表面に出しておき、図6に示す態様のようにライニング36の側面に接続するようにしてもよい。
【0042】
<処理>
次に摩耗検出システム100で行われる処理について説明する。図8は、摩耗検出システム100における処理フローを示す。図8に示すように、ステップS01では、発信回路11が所定の周波数の磁界を発生させる。具体的には、スイッチ制御部126によってスイッチ113が制御され、周波数f0の第一交流電源111と周波数f02の第二交流電
源112が交互に接続される。その結果、発信回路11によって、周波数f0と周波数f02の磁界が交互に発生する。発信回路11による磁界の発生は、制御装置12にタイマを
設けて、定期的に行うようにすることができる。また、発信回路11による磁界の発生は、例えば、ナビゲーション装置4の操作部を通じてユーザが希望するタイミングで行えるようにしてもよい。
【0043】
発信回路11によって周波数f0又はf02の磁界が発生すると、ステップS02では、
この磁界の発生により、アンテナ装置2の共振回路21が共振する。切断部22の切断前では、共振回路21は、共振周波数f0で共振する。一方、切断部22の切断後では、共
振回路21は、共振周波数f02で共振する。ここで、図9は、正常時、摩耗時、異常時における摩耗検出システムを示す。図9Aは、正常時における摩耗検出システムを示す。図9Aに示すように、摩耗検出システムが正常であり、かつ、ライニング36が摩耗していない場合(切断部22の切断前)、アンテナ装置2の共振周波数はf0となる。従って、
図9Aに示すように、発信回路11の第一交流電源111が接続され、発信回路11によって周波数f0の磁界が発生する際に、アンテナ装置2が共振する。
【0044】
図9Bは、摩耗時における摩耗検出システムを示す。図9Bに示すように、ライニング36が摩耗して切断部22が切断されると(図9Bにおいて×印で示す)、アンテナ装置2の共振周波数は、f02となる。従って、図9Bに示すように、発信回路11の第二交流電源112が接続され、発信回路11によって周波数f02の磁界が発生する際に、アンテナ装置2が共振する。
【0045】
図9Cは、異常時における摩耗検出システムを示す。図9Cに示すように、アンテナ装置側コイル211の一部が切断されるなどの異常が発生すると、アンテナ装置2の共振周波数は、f0にもf02にもならない。若しくは、この場合、アンテナ装置2には、共振周
波数が存在しなくなる。
【0046】
ステップS03では、摩耗検出装置1により、アンテナ装置2の共振回路21が共振する際の共振周波数が検出され、この共振周波数に基づいてライニング36の摩耗状態が判断される。すなわち、摩耗検出装置1による摩耗判断処理が実行される。以下、摩耗判断処理について詳述する。
【0047】
図10は、摩耗判断処理フローを示す。摩耗判断処理は、摩耗検出装置1の制御装置12のCPU121によって実行される。ステップS31では、共振周波数情報が取得される。具体的には、共振周波数情報取得部123により、共振周波数情報として、発信回路11から出力される出力電流若しくは出力電圧が取得される。共振周波数情報が取得されるとステップS32へ進む。
【0048】
ステップS32では、摩耗状態判断部124により、取得された共振周波数情報に基づいてライニングの摩耗状態が判断される。ここで、図11は、正常時、摩耗時、異常時におけるスイッチ113と発信回路11の出力電圧との関係を示す。図11Aは、正常時におけるスイッチ113と発信回路11の出力電圧との関係を示す。上述したように、正常時のアンテナ装置2の共振周波数はf0である。従って、正常時では、第一交流電源11
1が接続されて周波数f0の磁界が発生している場合、アンテナ装置2の共振回路21と
摩耗検出装置1の発信回路11が共振する。その結果、図11Aに示すように、発信回路11から出力される出力電圧が、第二交流電源112が接続されている場合(図11AでVbで示す。)よりも高くなる(図11AでV0で示す。)。従って、摩耗状態判断部124は、第一交流電源111が接続されて周波数f0の磁界が発生している場合に、発信回
路11から出力される出力電圧が、第二交流電源112が接続されている場合よりも高い場合、アンテナ装置2の共振周波数がf0であると判断する。換言すると、摩耗状態判断
部124は、アンテナ装置2の共振周波数がf0であると特定し、摩耗が発生していない
と判断する。
【0049】
図11Bは、摩耗時における、スイッチ113と発信回路の出力電圧との関係を示す。上述したように、摩耗時のアンテナ装置2の共振周波数はf02である。従って、摩耗時では、第ニ交流電源112が接続されて周波数f02の磁界が発生している場合、アンテナ装置2の共振回路21と摩耗検出装置1の発信回路11が共振する。その結果、発信回路11から出力される出力電圧が、第一交流電源111が接続されている場合よりも高くなる。すなわち、スイッチ113の切替のタイミングにおける出力電圧の位相が、正常時と摩耗時で位相が反転する。従って、摩耗状態判断部124は、第ニ交流電源112が接続されて周波数f02の磁界が発生している場合において、発信回路11から出力される出力電圧が、第一交流電源111が接続されている場合よりも高い場合、アンテナ装置2の共振周波数がf02であると判断する。換言すると、摩耗状態判断部124は、アンテナ装置2の共振周波数がf02であると特定し、摩耗が発生していると判断する。
【0050】
図11Cは、異常時における、スイッチ113と発信回路の出力電圧との関係を示す。図11Cに示す例は、何らかの異常により、共振が起こらなかった場合である。この場合、スイッチ113が切り替わっても出力電圧が変化していない。従って、摩耗状態判断部124は、第一交流電源111と第二交流電源112が切り替えられることで周波数f0
とf02の磁界が交互に発生している場合において、発信回路11から出力される出力電圧に変化が見られない場合、摩耗検出システム100に何らかの異常が発生していると判断
する。
【0051】
なお、上述した例では、出力電圧に基づいて判断しているが、発信回路11から出力される電流に基づいて判断してもよい。また、出力電圧や電流の値を予め算出しておき、算出した値と取得される値とに基づいて、アンテナ装置2の共振周波数を特定してもよい。そして、特定された共振周波数から、最終的に摩耗の発生の有無を判断するようにしてもよい。また、取得される値(出力電圧や電流)が算出した値のいずれにも対応しない場合には、摩耗検出システム100に何らかの異常(例えば、断線)が発生したと判断することができる。摩耗状態の判断が完了すると、ステップS33へ進む。
【0052】
ステップS33では、摩耗情報出力部125により、摩耗状態に関する判断結果(摩耗情報)が出力される。第一実施形態に係る摩耗検出システム100では、車両3に搭載されるナビゲーション装置4に対して出力される。その結果、ナビゲーション装置4のディスプレイに摩耗状態に関する判断結果が表示される。なお、摩耗情報の出力は、切断部22が切断された場合、すなわち、ライニング36が摩耗した場合のみ行うようにしてもよい。
【0053】
<効果>
以上説明した第一実施形態に係る摩耗検出システム100によれば、アンテナ装置2にICを用いることなくライニング36の摩耗を検出することができる。すなわち、従来のICを用いる技術よりも簡易な構成でありながら、摩耗を検出することができる。その結果、故障の要因の低減や、点検の手間の低減、又はコストの削減を実現することができる。
【0054】
[第二実施形態]
次に第二実施形態に係る摩耗検出システム100aについて説明する。なお、第一実施形態に係る摩耗検出システム100との相違点を中心に説明する。第一実施形態に係る摩耗検出システム100と同一の構成については、同一符号を付すことでその説明は省略する。また、符号の末尾に付されたローマ字は、実施形態に応じて付したものであり、共通番号が付された構成は、同等の機能を有するものとし、その詳細な説明は省略する。
【0055】
図12は、第二実施形態に係る摩耗検出システム100aの概略構成を示す。第二実施形態に係る摩耗検出システム100aは、摩耗検出装置1aと、アンテナ装置2aとを備える。第二実施形態に係る摩耗検出システム100aは、基本的には、第一実施形態に係る摩耗検出システム100と同様の機能を有している。
【0056】
まず、アンテナ装置2aについて説明すると、第二実施形態に係るアンテナ装置21aは、切断部を二つ有しており、ライニングの摩耗を段階的に検出することが可能である。より詳細には、第二実施形態に係るアンテナ装置2aは、共振回路22aが、第一実施形態に係る共振回路22の構成に加えて、第一切断部22a及び第三コンデンサ217を更に備える。第一切断部22aと第三コンデンサ217は、第二ループに設けられた分岐点216、216から導線214が分岐することで形成される第三ループに設けられている。
【0057】
第一切断部22aも切断部22と同じく、ライニングが摩耗すると切断されるものであり、導線214の一部を構成する。第一切断部22aは、切断部22よりも先に切断されるようライニングに接続する必要があり、これにより、ライニングの摩耗を段階的に検知することが可能となる。ここで、図13は、第ニ実施形態に係るアンテナ装置2aの接続態様の一例を示す。図13に示す例では、アンテナ装置2aが、ブレーキのプレッシャ−プレート35の表面(ライニング36が接続される側の面)に接続されている。なお、ア
ンテナ装置2aとプレッシャ−プレート35との接続は、第一実施形態と同じく、例えば、アンテナ装置2の接続用貫通孔23(図5参照。)を用いた螺子締結や接着剤によって行うことができる。
【0058】
図14は、図13における切断部及び第一切断部の拡大図を示す。図14に示すように、第二実施形態に係るアンテナ装置2aでは、切断部22が、ライニング36の側面36aに接着剤を用いて固定されている。そして、第一切断部22aは、切断部22よりもライニング36の表面寄りに接着剤を用いて固定されている。このように、切断部22と第一切断部22aがライニング36の側面36aに接続されることで、ライニング36の摩耗が第一段階まで進んだ時点で、まず第一切断部22aが切断される。そして、更にライニング36の摩耗が第二段階まで進んだ時点で、切断部22が切断される。例えば、第一段階は、摩耗が進行していることを予備的に知らせることを目的として設定し、第二段階は、摩耗限界として位置づけることができる。
【0059】
以上説明した第二実施形態に係るアンテナ装置2aは、共振回路22aが、第一実施形態に係る共振回路22の構成に加えて、第一切断部22a及び第三コンデンサ217を有することから、3つの共振周波数を有する。すなわち、第一実施形態に係る共振回路22が有する2つの共振周波数、f0、f02に加えて、f03を有する。共振周波数f03は、第
一切断部22a及び切断部22の切断前における共振周波数であり、第一コンデンサ212、第二コンデンサ213及び第三コンデンサ217の静電容量の和とアンテナ装置側コイル211のインダクタンスによって決定される(式3参照。)。共振周波数f0は、第
一実施形態と同様に、式1から算出されるが、第二実施形態では、第一実施形態と異なり、第一切断部22aの切断後における共振周波数である。第一切断部22aの切断後では、第三ループに設けられている第三コンデンサ217への接続が遮断される。その結果、共振回路21aの共振周波数f0は、第一コンデンサ212と第二コンデンサ213の静
電容量の和とアンテナ装置側コイル211のインダクタンスによって決定される(式1参照。)。共振周波数f02も、第一実施形態と同様に、式2から算出されるが、第二実施形態では、第一実施形態と異なり、第一切断部22a及び切断部22の切断後における共振周波数である。第一切断部22a及び切断部22の切断後では、第三ループに設けられている第三コンデンサ217への接続、及び第二ループに設けられている第二コンデンサ213への接続が遮断される。その結果、共振回路21の共振周波数f02は、第一コンデンサ212の静電容量とアンテナ装置側コイル211のインダクタンスによって決定される(式2参照)。
【0060】
【数3】

【0061】
次に第二実施形態に係る摩耗検出装置100aについて説明する。第二実施形態に係る摩耗検出装置100aは、上述した第二実施形態に係るアンテナ装置2aが有する3つの共振周波数に対応した磁界を発生できるよう、第一実施形態に係る発信回路11が有する第一交流電源111及び第二交流電源112に加えて、周波数f03の電力を出力する第三交流電源117を有する。そして、このような3つの交流電源を有する発信回路11aを機能させるため、第二実施形態に係る発信回路11aは、3つの交流電源を切り替えるスイッチ113aを有している。このスイッチ113aの切替は、制御装置12のスイッチ制御部126によって行われる。
【0062】
次に第二実施形態に係る摩耗検出システム100aで行われる処理について説明する。なお、第二実施形態に係る摩耗検出システム100aで行われる処理も基本的には、第一
実施形態に係る摩耗検出システム100で行われる処理と同じであることから簡略化して説明する(処理フローについては、図8、図10参照。)。発信回路11aによって所定の周波数の磁界(周波数f0、f02、f03の磁界)が発生し(ステップS01)、この磁
界の発生により、アンテナ装置2の共振回路21が共振する(ステップS02)。そして、アンテナ装置2aの共振回路21aが共振する際の共振周波数が検出され、この共振周波数に基づいてライニング36の摩耗状態が判断される。
【0063】
摩耗判断処理も基本的には第一実施形態に係る摩耗検出システム100で実行されるものと同じである。すなわち、共振周波数情報取得部123により、共振周波数情報として、発信回路11aから出力される出力電流若しくは出力電圧が取得される(ステップS31)。次にステップS32では、摩耗状態判断部124により、取得された共振周波数情報に基づいてライニングの摩耗状態が判断される。第二実施形態では、正常(切断部22及び第一切断部22aの双方が切断されておらず、かつ、摩耗検出システム1001が正常に機能している状態)、二段階の摩耗状態(第一切断部22aが切断された第一段階、切断部22が切断された第二段階)、異常が判断される。すなわち、第三交流電源117が接続されて周波数f03の磁界が発生している場合に、発信回路11aから出力される出力電圧が、第一交流電源111又は第二交流電源112が接続されている場合よりも高い場合、アンテナ装置22aの共振周波数がf03であると特定される。従って、摩耗状態判断部124は、摩耗が発生していないと判断する。
【0064】
また、第一交流電源111が接続されて周波数f0の磁界が発生している場合に、発信
回路11aから出力される出力電圧が、第二交流電源112又は第三交流電源117が接続されている場合よりも高い場合、アンテナ装置22aの共振周波数がf0であると特定
される。従って、摩耗状態判断部124は、摩耗が第一段階(図14参照。)にあると判断する。また、第ニ交流電源112が接続されて周波数f02の磁界が発生している場合に、発信回路11aから出力される出力電圧が、第一交流電源111又は第三交流電源117が接続されている場合よりも高い場合、アンテナ装置22aの共振周波数がf02であると特定される。従って、摩耗状態判断部124は、摩耗が第二段階(図14参照。)にあると判断する。
【0065】
摩耗状態の判断が完了すると、ステップS33へ進み、ステップS33では、摩耗情報出力部125により、摩耗状態に関する判断結果(摩耗情報)が、例えばナビゲーション装置4のディスプレイに出力される。
【0066】
<効果>
以上説明した第二実施形態に係る摩耗検出システム100aによれば、第一実施形態に係る摩耗検出システム100と同じく、アンテナ装置2aにICを用いることなくライニング36の摩耗を検出することができる。すなわち、従来のICを用いる技術よりも簡易な構成でありながら、摩耗を検出することができる。その結果、故障の要因の低減や、点検の手間の低減、又はコストの削減を実現することができる。また、第二実施形態に係る摩耗検出システム100aによれば、上記効果に加えて、段階的に摩耗の検出を行うことが可能となる。
【0067】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明に係る摩耗検出システムはこれらに限らず、可能な限りこれらの組合せを含むことができる。
【符号の説明】
【0068】
1、1a・・・摩耗検出装置
2、2a・・・アンテナ装置
3・・・車両
11、11a・・・発信回路
12・・・制御装置
21、21a・・・共振回路
22・・・切断部
22a・・・第一切断部
100、100a・・・摩耗検出システム
121・・・CPU
122・・・メモリ
123・・・共振周波数情報取得部
124・・・摩耗状態判断部
125・・・摩耗情報出力部
126・・・スイッチ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数の磁界を発生させると共に所定の対象物の摩耗を検出する摩耗検出装置と、前記摩耗検出装置による磁界によって共振するアンテナ装置とを備える摩耗検出システムであって、
前記摩耗検出装置は、
前記所定の周波数の磁界を発生させる磁界発生回路部を備え、
前記アンテナ装置は、
前記磁界発生回路部が発生させる磁界領域において共振する共振回路部と、
前記共振回路部に設けられ、前記所定の対象物に接続されて該所定の対象物が摩耗すると切断される切断部と、を備え、
前記共振回路部は、前記切断部の切断前後において、前記磁界領域において共振する際の共振周波数が異なり、
前記摩耗検出装置は、
前記切断部の切断前後において異なる前記共振回路部の共振周波数に関する共振周波数情報を取得する共振周波数情報取得部と、
前記共振周波数情報取得部で取得される共振周波数情報に基づいて、前記所定の対象物の摩耗状態を判断する摩耗状態判断部と、
前記摩耗状態判断部で判断される摩耗状態に関する摩耗情報を出力する摩耗情報出力部と、を更に備える、
摩耗検出システム。
【請求項2】
前記磁界発生回路部は、前記切断部の切断前の共振周波数に対応する帯域の基準周波数の磁界と前記切断部の切断後の共振周波数に対応する帯域の切断周波数の磁界を発生させ、
前記摩耗状態判断部は、前記共振周波数情報取得部で取得される共振周波数情報から前記共振回路部の共振周波数を特定して、前記所定の対象物の摩耗状態を判断する、請求項1に記載の摩耗検出システム。
【請求項3】
前記磁界発生回路部は、前記切断部の切断前の共振周波数に対応する帯域の基準周波数の磁界と前記切断部の切断後の共振周波数に対応する帯域の切断周波数の磁界を発生させ、
前記共振周波数情報取得部は、前記共振周波数情報として、前記異なる共振周波数によって変化する前記磁界発生回路部における電流又は電圧を取得し、
前記摩耗状態判断部は、前記共振周波数情報取得部で取得される電流又は電圧に基づいて前記共振回路部の共振周波数を特定して、前記所定の対象物の摩耗状態を判断する、請求項1又は2に記載の摩耗検出システム。
【請求項4】
前記磁界発生回路部は、前記切断部の切断前の共振周波数に対応する帯域の基準周波数の磁界と前記切断部の切断後の共振周波数に対応する帯域の切断周波数の磁界を発生させ、
前記共振周波数情報取得部は、前記共振周波数情報として、前記異なる共振周波数によって変化する前記磁界発生回路部における電流又は電圧を取得し、
前記摩耗状態判断部は、前記共振周波数情報取得部で取得される電流又は電圧に基づいて前記共振回路部の共振周波数を特定し、該特定された共振周波数が前記基準周波数と前記切断周波数のいずれにも対応しない場合、前記摩耗検出システムに異常があると判断する、請求項1から3のいずれか一に記載の摩耗検出システム。
【請求項5】
前記切断部は、前記所定の対象物の摩耗状態に応じて切断されるように、前記所定の対象物に複数接続され、
前記磁界発生回路部は、前記複数の切断部の夫々についての、前記切断部の切断前の共振周波数と対応する帯域の基準周波数の磁界と前記切断部の切断後の共振周波数と対応する帯域の切断周波数の磁界を発生させ、
前記摩耗状態判断部は、前記共振周波数情報取得部で取得される共振周波数情報から前記共振回路部の共振周波数を特定し、前記所定の対象物の摩耗状態を判断する、請求項1から4のいずれか一に記載の摩耗検出システム。
【請求項6】
前記切断部は、前記共振回路部を構成する導線の一部であり、前記所定の対象物の表面に接続される、請求項1から5のいずれか一に記載の摩耗検出システム。
【請求項7】
前記切断部は、前記共振回路部を構成する導線の一部であり、前記所定の対象物の内部に埋め込まれている、請求項1から5のいずれか一に記載の摩耗検出システム。
【請求項8】
所定の周波数の磁界を発生させると共に所定の対象物の摩耗を検出する摩耗検出装置であって、
前記所定の周波数の磁界を発生させる磁界発生回路部と、
前記磁界発生回路が発生させる磁界によって共振するアンテナ装置の共振周波数を取得する共振周波数情報取得部と、
前記共振周波数情報取得部で取得される共振周波数情報に基づいて、前記所定の対象物の摩耗状態を判断する摩耗状態判断部と、
前記摩耗状態判断部で判断される摩耗状態に関する情報を含む摩耗情報を出力する摩耗情報出力部と、を備え、
前記アンテナ装置は、前記磁界発生回路部が発生させる磁界領域において共振する共振回路部回路部と、前記共振回路部に設けられ、前記所定の対象物に接続されて該所定の対象物が摩耗すると切断される切断部と、を備え、前記共振回路部は、前記磁界領域において共振する際の共振周波数が、前記切断部の切断前後において変化する、
摩耗検出装置。
【請求項9】
所定の周波数の磁界を発生させると共に所定の対象物の摩耗を検出する摩耗検出装置が発生させる前記磁界によって共振するアンテナ装置であって、
前記摩耗検出装置は、
前記所定の周波数の磁界を発生させる磁界発生回路部を備え、
前記アンテナ装置は、
前記磁界発生回路部が発生させる磁界領域において共振する共振回路部回路部と、
前記共振回路部に設けられ、前記所定の対象物に接続されて該所定の対象物が摩耗すると切断される切断部と、を備え、
前記共振回路部は、前記磁界領域において共振する際の共振周波数が、前記切断部の切断前後において変化し、
前記摩耗検出装置は、
前記アンテナ装置の共振周波数を取得する共振周波数情報取得部と、
前記共振周波数情報取得部で取得される共振周波数情報に基づいて、前記所定の対象物の摩耗状態を判断する摩耗状態判断部と、
前記摩耗状態判断部で判断される摩耗状態に関する情報を含む摩耗情報を出力する摩耗情報出力部と、を更に備える、
アンテナ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図9C】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate

【図11C】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2010−242815(P2010−242815A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90431(P2009−90431)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】