説明

撮像装置

【課題】滑らかな動画を撮影できる撮像装置を提供する。
【解決手段】光学系210による像を再結像する再結像光学系136と、前記再結像光学系による像を撮像する第1撮像素子137と、前記再結像光学系の焦点距離を変更する焦点距離変更手段140と、前記再結像光学系の光軸の方向を変更する光軸方向変更手段142,144と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
観察光学系に設けられた撮像素子を用いて動画を撮影する一眼レフカメラが提案されている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−11025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のカメラは、ズーム操作やパンニング操作は撮影者による手動操作であるため、滑らかに被写体に追随する動画を得ることが困難であった。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、滑らかに被写体に追随する動画を撮影できる撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、以下の解決手段によって上記課題を解決する。なお、発明の実施形態を示す図面に対応する符号を付して説明するが、この符号は発明の理解を容易にするためだけのものであって発明を限定する趣旨ではない。
【0007】
発明に係る撮像装置(1)は、光学系(210)による像を再結像する再結像光学系(136)と、前記再結像光学系による像を撮像する第1撮像素子(137)と、前記再結像光学系の焦点距離を変更する焦点距離変更手段(140)と、前記再結像光学系の光軸の方向を変更する光軸方向変更手段(142,144)と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
上記発明において、前記光学系(210)を通過した光束を分岐する分岐光学系(121)と、前記分岐光学系によって分岐された光束の像を撮像する第2撮像素子(110)と、を備えるように構成することができる。
【0009】
また上記発明において、前記光学系(210)による像を観察可能とする観察光学系(131〜135)を備え、前記第1撮像素子(137)は前記観察光学系を通過する光束による像を撮像可能な位置に設けられるように構成することができる。
【0010】
また上記発明において、前記観察光学系(131〜135)は、前記光学系(210)による像を結像する焦点板(131)を含み、前記再結像光学系(136)は、前記焦点板に結像した像を前記第1撮像素子(137)に再結像するように構成することができる。
【0011】
また上記発明において、前記第1撮像素子(137)により前記焦点板(131)に結像した像全体を撮像するように、前記焦点距離変更手段(140)および前記光軸方向変更手段(142,144)の少なくとも一方を制御する制御手段(170)を備えるように構成することができる。
【0012】
また上記発明において、前記第1撮像素子(137)により前記焦点板(131)に結像した像の一部を撮像するように、前記焦点距離変更手段(140)および前記光軸方向変更手段(142,144)の少なくとも一方を制御する制御手段(170)を備えるように構成することができる。
【0013】
また上記発明において、前記再結像光学系(136)による像のうち特定の基準画像に相当する像の位置を認識する認識手段(170)を備え、前記光軸方向変更手段(142,144)は、前記認識手段によって認識された像の位置に応じて前記再結像光学系(136)の光軸(L3)の方向を変更するように構成することができる。
【0014】
また上記発明において、前記再結像光学系(136)による像のうち特定の基準画像に相当する像の大きさを認識する認識手段(170)を備え、前記焦点距離変更手段(140)は、前記認識手段によって認識された像の大きさに応じて前記再結像光学系(136)の焦点距離を変更するように構成することができる。
【0015】
また上記発明において、前記第1撮像素子(137)により撮像した画像を記録する記録手段(170)および前記第1撮像素子により撮像した画像を表示する表示手段(152)の少なくとも一方を備えるように構成することができる。
【0016】
また上記発明において、前記光学系(210)を通過した光束に基づいて前記撮影光学系の焦点調節状態を検出する焦点検出手段(161)を備えるように構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
上記発明によれば、滑らかに被写体に追随する動画を撮影することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下においては、上記発明を一眼レフデジタルカメラに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。ただし上記発明は、銀塩フィルムカメラやコンパクトカメラその他の撮像装置にも適用することができる。
【0019】
図1は、本実施形態に係る一眼レフデジタルカメラ1を示すブロック図であり、上記発明の撮像装置に関する構成以外のカメラの一般的構成については、その図示と説明を一部省略する。
【0020】
本実施形態の一眼レフデジタルカメラ1(以下、単にカメラ1という。)は、カメラボディ100とレンズ鏡筒200とを備え、カメラボディ100とレンズ鏡筒200は着脱可能に結合されている。
【0021】
レンズ鏡筒200には、フォーカスレンズ211やズームレンズ212を含むレンズ群210や絞り装置220などからなる撮影光学系が内蔵されている。
【0022】
フォーカスレンズ211は、その光軸L1に沿って移動可能に設けられ、フォーカスレンズエンコーダ260によってその位置または移動量が検出されつつフォーカスレンズ駆動モータ230によってその位置が調節される。そして、フォーカスレンズエンコーダ260で検出されたフォーカスレンズ211の位置または移動量の情報は、レンズ制御部250を介して後述するレンズ駆動制御部165へ送信される。また、フォーカスレンズ駆動モータ230は、後述する焦点検出結果に基づいて演算された駆動量や駆動速度に応じて、レンズ駆動制御部165からレンズ制御部250を介して送信される駆動信号により駆動する。
【0023】
ズームレンズ212は、その光軸L1に沿って移動可能に設けられ、ズームレンズエンコーダ280によってその位置または移動量が検出されつつズームレンズ駆動モータ270によってその位置が調節される。ズームレンズ212の位置は、操作部150に設けられたズームボタンを操作することにより調節される。また、レンズ鏡筒200にズーム環を設けて手動操作可能に構成することもできる。そして、ズームレンズエンコーダ280で検出されたズームレンズ212の位置または移動量の情報は、レンズ制御部250へ送信される。
【0024】
絞り装置220は、上記撮影光学系を通過して撮像素子110に至る光束の光量を制限するために、光軸L1を中心にした開口径が調節可能とされている。絞り装置220による開口径の調節は、たとえば自動露出モードにおいて演算された絞り値に応じた信号が、カメラ制御部170からレンズ制御部250を介して絞り駆動部240へ送信されることにより行われる。また、開口径の調節は、カメラボディ100に設けられた操作部150によるマニュアル操作により、設定された絞り値に応じた信号がカメラ制御部170からレンズ制御部250を介して絞り駆動部240へ送信されることによっても行われる。
【0025】
レンズ鏡筒200にはレンズ制御部250が設けられている。レンズ制御部250はマイクロプロセッサとメモリなどの周辺部品から構成され、カメラ制御部170と電気的に接続され、このカメラ制御部170からデフォーカス量や絞り制御信号などの情報を受信するとともに、カメラ制御部170へレンズ情報を送信する。
【0026】
一方、カメラボディ100は、被写体からの光束を撮像素子110、ファインダ135、測光センサ137及び焦点検出モジュール161へ導くためのミラー系120を備える。このミラー系120は、回転軸123を中心にして被写体の観察位置と撮影位置との間で所定角度だけ回転するクイックリターンミラー121と、このクイックリターンミラー121に軸支されてクイックリターンミラー121の回動に合わせて回転するサブミラー122とを備える。
【0027】
図1においては、ミラー系120が被写体の観察位置にある状態を実線で示し、被写体の撮影位置にある状態を二点鎖線で示す。ミラー系120は、被写体の観察位置にある状態では光軸L1の光路上に挿入される一方で、被写体の撮影位置にある状態では光軸L1の光路から退避するように回転する。
【0028】
クイックリターンミラー121はハーフミラーで構成され、被写体の観察位置にある状態では、被写体からの光束(光軸L1)の一部の光束(光軸L2,L3)を当該クイックリターンミラー121で反射してファインダ135および測光センサ137へ導き、一部の光束(光軸L4)を透過させてサブミラー122へ導く。これに対して、サブミラー122は全反射ミラーで構成され、クイックリターンミラー121を透過した光束(光軸L4)を焦点検出モジュール161へ導く。
【0029】
したがって、ミラー系120が観察位置にある場合は、被写体からの光束(光軸L1)はファインダ135、測光センサ137および焦点検出モジュール161へ導かれ、撮影者により被写体が観察されるとともに、露出演算やフォーカスレンズ211の焦点調節状態の検出が実行される。そして、撮影者がレリーズボタンを全押しするとミラー系120が撮影位置に回動し、被写体からの光束(光軸L1)は全て撮像素子110へ導かれ、撮影した画像データを図示しないメモリに保存する。
【0030】
焦点検出モジュール161は、被写体光を用いた位相差検出方式による自動合焦制御を実行するための焦点検出素子であり、サブミラー122で反射した光束(光軸L4)の、撮像素子110の撮像面と光学的に等価な位置に固定されている。
【0031】
図2は、図1に示す焦点検出モジュール161の構成例を示す図である。
【0032】
本例の焦点検出モジュール161は、コンデンサレンズ161a、一対の開口が形成された絞りマスク161b、一対の再結像レンズ161cおよび一対のラインセンサ161dを有し、フォーカスレンズ211の射出瞳の異なる一対の領域を通る一対の光束をラインセンサ161dで受光して得られる一対の像信号の位相ずれを周知の相関演算によって求めることにより焦点調節状態を検出する。
【0033】
そして、図2に示すように被写体Pが撮像素子110の等価面(予定結像面)161eで結像すると合焦状態となるが、フォーカスレンズ211が光軸L1方向に移動することで、結像点が等価面161eより被写体側にずれたり(前ピンと称される)、カメラボディ100側にずれたりすると(後ピンと称される)、ピントずれの状態となる。
【0034】
なお、被写体Pの結像点が等価面161eより被写体側にずれると、一対のラインセンサ161dで検出される一対の像信号の間隔Wが、合焦状態の間隔Wに比べて短くなり、逆に被写体像Pの結像点がカメラボディ100側にずれると、一対のラインセンサ161dで検出される一対の像信号の間隔Wが、合焦状態の間隔Wに比べて長くなる。
【0035】
すなわち、合焦状態では一対のラインセンサ161dで検出される像信号がラインセンサの中心に対して重なるが、非合焦状態ではラインセンサの中心に対して各像信号がずれる、すなわち位相差が生じるので、この位相差(ずれ量)に応じた量だけフォーカスレンズ211を移動させることでピントを合わせる。
【0036】
図1に戻り、AF−CCD制御部162は、オートフォーカスモードにおいて、焦点検出モジュール161のラインセンサ161dのゲインや蓄積時間を制御するもので、焦点検出位置として選択された焦点検出エリアに関する情報をカメラ制御部170から受け、この焦点検出エリアに相当する一対のラインセンサ161dにて検出された一対の像信号を読み出し、デフォーカス演算部163へ出力する。
【0037】
デフォーカス演算部163は、AF−CCD制御部162から送られてきた一対の像信号のずれ量をデフォーカス量ΔWに変換し、これをレンズ駆動量演算部164へ出力する。
【0038】
レンズ駆動量演算部164は、デフォーカス演算部163から送られてきたデフォーカス量ΔWに基づいて、当該デフォーカス量ΔWに応じたレンズ駆動量Δdを演算し、これをレンズ駆動制御部165へ出力する。
【0039】
レンズ駆動制御部165は、レンズ駆動量演算部164から送られてきたレンズ駆動量Δdに基づいてレンズ駆動モータ230へ駆動指令を送出し、レンズ駆動量Δdだけフォーカスレンズ211を移動させる。
【0040】
撮像素子110は、カメラボディ100の、被写体からの光束の光軸L1上であって、レンズ群210を含む撮影光学系の予定焦点面となる位置に設けられ、その前面にシャッター111が設けられている。撮像素子110は、複数の光電変換素子が二次元に配列されたものであって、二次元CCDイメージセンサ、MOSセンサまたはCIDなどで構成することができる。この撮像素子110で光電変換された電気画像信号は、カメラ制御部170で画像処理されたのち図示しないメモリに保存される。なお、撮影画像を格納するメモリは内蔵型メモリやカード型メモリなどで構成することができる。
【0041】
一方、クイックリターンミラー121で反射された被写体からの光束は、撮像素子110と光学的に等価な面に配置された焦点板131に結像し、ペンタプリズム133と接眼レンズ134とを介して撮影者の眼球に導かれる。このとき、透過型液晶表示器132は、焦点板131上の被写体像に焦点検出エリアマークなどを重畳して表示するとともに、被写体像外のエリアにシャッター速度、絞り値、撮影枚数などの撮影に関する情報を表示する。これにより、撮影者は、撮影準備状態において、ファインダ135を通して被写体およびその背景ならびに撮影関連情報などを観察することができる。
【0042】
操作部150は、シャッターレリーズボタン、ズームボタン、動画用ズームボタン、および撮影者がカメラ1の各種動作モードを設定するための入力スイッチであり、自動露出モード/マニュアル露出モード、オートフォーカスモード/マニュアルフォーカスモードの切換や、オートフォーカスモードの中でも、ワンショットモード/コンティニュアスモードの切換が行えるようになっている。
【0043】
また、シャッターレリーズボタンは全押ししたときにシャッターがONされるが、これ以外にも、オートフォーカスモードにおいて当該ボタンを半押しするとフォーカスレンズの合焦動作がONとなり、ボタンを離すとOFFになる。また、単写/連写設定ボタンも含まれ、連写モードでレリーズボタンを全押しすると1秒間に所定枚数の画像を撮影することができる。
【0044】
また、ズームボタンは、広角側にズーミングするWボタンと、望遠側にズーミングするTボタンとを備え、Wボタンを押すとズームレンズ212の焦点距離を短くするようにズームレンズ駆動モータ270が駆動し、Tボタンを押すとズームレンズ212の焦点距離を長くするようにズームレンズ駆動モータ270が駆動する。
【0045】
これに対し、動画用ズームボタンも、広角側にズーミングするWボタンと、望遠側にズーミングするTボタンとを備え、Wボタンを押すと後述する測光用ズームレンズ136の焦点距離を短くするようにズームレンズ駆動モータ140が駆動し、Tボタンを押すと測光用ズームレンズ136の焦点距離を長くするようにズームレンズ駆動モータ140が駆動する。
【0046】
これらの操作部150により設定された各種モードはカメラ制御部170へ送信される。
【0047】
カメラボディ100にはカメラ制御部170が設けられている。カメラ制御部170はマイクロプロセッサとメモリなどの周辺部品から構成され、レンズ制御部250と電気的に接続され、このレンズ制御部250からレンズ情報を受信するとともに、レンズ制御部250へデフォーカス量や絞り制御信号などの情報を送信する。また、カメラ制御部170は、上述したように撮像素子110から画像情報を読み出すとともに、必要に応じて所定の情報処理を施し、図示しないメモリに出力する。また、カメラ制御部170は、撮影画像情報の補正やレンズ鏡筒200の焦点調節状態、絞り調節状態などを検出するなど、カメラ1全体の制御を司る。
【0048】
接眼レンズ134の近傍には、測光用レンズ136と測光センサ137が設けられ、焦点板131に結像した被写体光のうちハーフミラー139により分岐された光束を受光する。
【0049】
測光センサ137は、二次元カラーCCDイメージセンサなどで構成され、各画素の画像信号はカメラ制御部170へ出力されて所定の画像処理が施されたのち、表示部152および図示しないメモリへ出力される。表示部152は、液晶ディスプレイなどで構成され、測光センサ137により撮像して所定のフレームレートで得られた動画像を表示することで電子ビューファインダとして機能する。したがって、撮影者は、当該表示部152に表示される被写体を観察しながら動画像の撮影操作を行うことができる。
【0050】
また、測光センサ137により受光した光束の輝度に応じた測光信号を所定の画素群ごとにカメラ制御部170へ出力し、撮影の際の撮像素子110の露出値を演算する。
【0051】
本例の測光用レンズ136と測光センサ137は光学鏡筒138内に設けられ、焦点板131に結像した像を測光用レンズ136によって測光センサ137の撮像面に再結像させる。
【0052】
また測光用レンズ136は、ズームレンズ駆動モータ140によって光軸L3に沿って駆動可能に設けられ、これによりその焦点距離が変更されて測光センサ137に再結像する像の倍率が変更される。
【0053】
すなわち、撮影者が操作部150に設けられた動画用ズームボタンの広角側ボタンまたは望遠側ボタンのいずれかを操作すると、当該操作信号がカメラ制御部170からズームレンズ駆動モータ140に出力され、これによりズームレンズ駆動モータ140が駆動する。また、ズームレンズエンコーダ141は、測光用レンズ136の駆動位置を検出し、この位置検出信号がカメラ制御部170へ出力され、当該カメラ制御部170にて測光用レンズ136による倍率が演算される。
【0054】
測光用レンズ136は、焦点板131に結像した像全体を測光センサ137により撮像する倍率に設定可能とされ、この倍率から焦点板131に結像した像の一部を測光センサ137により撮像する倍率までの間をモータにより連続的に変更可能とされている。これにより、滑らかに被写体の倍率を変化させる動画撮影が容易に可能となる。
【0055】
そして、動画像を撮影する場合は、撮影者が動画用ズームボタンを操作することで焦点板131に結像した像を所望の倍率で測光センサ137に再結像させ、これを表示部152に表示させながら図示しないメモリに記録することができる。
【0056】
また、焦点板131に結像した像全体を測光センサ137に再結像させ、測光センサ137により受光した光束の輝度に応じた測光信号を所定の画素群ごとにカメラ制御部170へ出力することで、静止画撮影の際の撮像素子110の露出値を演算する。動画撮影時は測光センサ137のゲイン、蓄積時間、絞りを演算する。測光センサ137による画素ごと又は所定の画素群ごとの測光信号は、カメラ制御部170へ出力されて、撮影シーンの解析や認識にも用いられ、輝度や色彩に基づいて焦点調節対象の位置を解析または認識したり、人物撮影や風景撮影などの撮影モードの選択をしたり、各種画像処理に用いることができる。
【0057】
測光用レンズ136と測光センサ137を内蔵した光学鏡筒138は、ヨー角駆動モータ142によりその光軸L3の向きをヨー角θ方向(測光センサ137における左右方向)に変更可能とされ、またピッチ角駆動モータ144によりその光軸L3の向きをピッチ角φ方向(測光センサ137における上下方向)に変更可能とされている。
【0058】
これらヨー角駆動モータ142およびピッチ角駆動モータ144はカメラ制御部170からの制御信号によって駆動する。ヨー角エンコーダ143は光学鏡筒138の光軸L3のヨー角θを検出してカメラ制御部170へ出力するとともに、ピッチ角エンコーダ145は光学鏡筒138の光軸L3のピッチ角φを検出してカメラ制御部170へ出力する。
【0059】
ヨー角駆動モータ142およびピッチ角駆動モータ144も、焦点板131に結像した像全体を測光センサ137により撮像可能な角度に設定可能とされている。
【0060】
したがって、撮影光学系210により撮影されて焦点板131に結像した像は、光学鏡筒138による変倍および光軸L3の方向変更によって、位置と倍率が任意の矩形範囲で撮影可能となっている。
【0061】
撮影者が動画用ズームボタンを操作すると測光用レンズ136がズームレンズ駆動モータ140により駆動し、測光センサ137に結像した像が変倍するが、この変倍動作はズームレンズ駆動モータ140によるものであることから、滑らかな変倍動作の動画として記録することができる。
【0062】
これに加えて本例のカメラ1においては、撮影者がパンニング操作(本願ではヨー角方向の移動に加えてピッチ角方向の移動を含む広義の操作をいう。)をしながら動画撮影をした場合の動画像の動きが滑らかになるように、ヨー角駆動モータ142およびピッチ角駆動モータ144により光学鏡筒138の光軸l3の角度を制御する。
【0063】
図3A〜図3Cは、動画撮影した場合の微小時刻t=T1〜T4における動作を説明する図であって、ファインダ135にて観察したファインダ画面51と、そのときに表示部152に表示されるLCD画面61〜64を示す図である。ファインダ画面51は、撮影光学系210による像、すなわち焦点板131に結像した像全体であり、LCD画面61〜64は、光学鏡筒138の測光センサ137により撮影された像である。
【0064】
ここでは、被写界の左から右に向かって走行する自動車71〜74を撮影者がパンニング操作しながら動画を撮影した場合を例に挙げて説明する。なお、動画撮影する場合は、レリーズボタンを押さずに別設された動画ボタンを押すことにより撮影が開始し、再度動画ボタンを押すことで動画撮影が終了する。
【0065】
また、動画撮影中においては、クイックリターンミラー121は光路(光軸L1)上に挿入され、撮像素子110による静止画撮影は禁止されるが、焦点検出モジュール161等による合焦動作は実行され、選択された焦点検出エリアに焦点が合うように制御されるので、合焦精度が高く合焦動作も速い動画像を得ることができる。なお、測光センサ137のゲインや蓄積時間、絞り220を調節することにより明るさを調節することもできる。
【0066】
また上述したように、表示部152には測光センサ137による撮像画像がリアルタイムで表示されるので、撮影者は撮影される動画像を表示部152で観察しながら、所望の倍率や位置を選択することができる。ただし、撮影者はファインダ135を覗くことで焦点板131の全体像、すなわち撮影光学系210による被写界全体を観察することもでき、必要に応じて観察視界を使い分けることができる。
【0067】
まず、図3Aの時刻t=T1のファインダ画面51に示すように、自動車71が右方向に走行している被写界に対し、撮影者が、表示部152を観察しながら動画用ズームボタンを操作し、測光用レンズ136の倍率をβ1に設定したものとする。これにより表示部152にはLCD画面61のように表示される。
【0068】
ここで、撮影者が、操作部150に設けられた被写体追尾ボタンを操作し、自動車71を追尾対象として設定し、時刻t=T1からT2,T3,T4のようにカメラ1を自動車71の走行方向にパンニング操作したものとする。時刻t=T1〜T2の変化は図3A、時刻t=T2〜T3の変化は図3B、時刻t=T3〜T4の変化は図3Cにそれぞれ示す。
【0069】
ただし、図3Aの時刻t=T1〜T2の変化は自動車のみの変化71→72を示し、図3Bの時刻t=T2〜T3の変化は時刻t=T1〜T2の自動車の変化71→72に対するLCD画面の追尾動作62→63と、時刻t=T2〜T3の自動車の変化72→73との両方を示す。同様に、図3Cの時刻t=T3〜T4の変化は時刻t=T2〜T3の自動車の変化72→73に対するLCD画面の追尾動作63→64と、時刻t=T3〜T4の自動車の変化73→74との両方を示す。
【0070】
被写体追尾ボタンの設定操作によって、追尾枠81内の画像の輝度情報や色情報に基づいてテンプレート画像情報がカメラ制御部170で生成され、これがテンプレート基準画像として一時的に記憶される。
【0071】
次に、時刻t=T2における測光センサ137の出力画像の輝度情報や色情報と、上記テンプレート基準画像の輝度情報や色情報とを比較し、一致の度合いを類似度として評価するとともに、周辺エリアに他に一致するエリアが存在したかどうかといった可能性の有無を信頼度として評価する。テンプレート基準画像と一致する場合は、測光センサ137の出力画像情報のうち一致するエリアの二次元座標を演算して求める。この演算値は測光センサ137(表示部152)における座標値である。
【0072】
ここで図3Aの時刻t=T2の下図に示すように、LCD画面62上において自動車71→自動車72の移動量がヨー角方向にg1であったとすると、同図の上図に示すファインダ画面51上における移動量d1は、LCD画面62上における移動量g1と測光用レンズ136の倍率β1とから、d1=g1×β1で求めることができる。
【0073】
なお、図示する例では説明を簡素化するために画面61,62の上下方向(ピッチ角方向)の移動量をゼロとするが、上下方向の移動量がある場合は、上述した二次元座標の演算値から、左右(ヨー角)方向の移動量と同様の手順で上下(ピッチ角)方向の移動量を求めることができる。
【0074】
時刻t=T2〜T3の間にLCD画面62〜63の動かすべき量(図3Bの右図参照)を上記d1だけ移動させることとする。そのために、ファインダ画面51上における移動量d1と、光学鏡筒138の幾何学的配置関係(既知)と、光学鏡筒138のヨー角θ2およびピッチ角φ2(本例ではゼロ)を演算する。次いで、演算されたヨー角θ2およびピッチ角φ2に相当する駆動信号をヨー角駆動モータ142およびピッチ角駆動モータ144に出力し、光学鏡筒138の光軸L3の方向を変更する。
【0075】
これにより、図3Bの右に示す時刻t=T3におけるLCD画面63(すなわち測光センサ137の撮像範囲)が、時刻t=T2における画面62に対して移動量e2だけ移動することになる。すなわち、時刻t=T1から時刻t=T2の間に追尾対象たる自動車71はファインダ画面51上において右方向に移動量d1だけ移動するが、時刻t=T2〜T3においてこの移動量d1に等しい移動量e2(=d1)だけLCD画面62も右方向に追尾して移動することとするので、追尾対象たる自動車のLCD画面における相対位置は概ね小さくなり、t=T2からt=T3の間にg2だけ移動する。また、この追尾移動によって、撮影が難しい滑らかなパンニング操作を行なったときと同様の動画像を容易に撮影することができる。
【0076】
以下同様にして追尾動作による処理を実行する。すなわち、図3Bに示すように、時刻t=T3における追尾対象のLCD画面63上の座標値を上述したテンプレートマッチング処理により求める。これにより、時刻t=T2〜T3の間のLCD画面63上の自動車72→73の移動量がg2であったとする。
【0077】
また、ズームレンズエンコーダ141により測光用レンズ136の倍率β2、ヨー角エンコーダ143により光学鏡筒138のヨー角θ2、ピッチ角エンコーダ145により光学鏡筒138のピッチ角φ2をそれぞれ検出する。
【0078】
そして、図3Bの時刻t=T3の下図に示すように、LCD画面63上において自動車72→自動車73の移動量がヨー角方向にg2であるから、同図の上図に示すファインダ画面51上における移動量d2は、LCD画面63上における移動量g2と測光用レンズ136の倍率β2と上記e2とから、d2=g2×β2+e2で求めることができる。
【0079】
時刻t=T3〜T4の間にLCD画面63〜64の動かすべき量(図3Cの右図参照)を上記d2だけ移動させることとする。そのために、ファインダ画面51上における移動量d2と、光学鏡筒138の幾何学的配置関係(既知)と、光学鏡筒138のヨー角θ3およびピッチ角φ3(本例ではゼロ)を演算する。次いで、演算されたヨー角θ3およびピッチ角φ3に相当する駆動信号をヨー角駆動モータ142およびピッチ角駆動モータ144に出力し、光学鏡筒138の光軸L3の方向を変更する。
【0080】
これにより、図3Cの右に示す時刻t=T4におけるLCD画面64(すなわち測光センサ137の撮像範囲)が、時刻t=T3における画面63に対して移動量e3だけ移動することになる。すなわち、時刻t=T2から時刻t=T3の間に追尾対象たる自動車72はファインダ画面51上において右方向に移動量d2だけ移動するが、時刻t=T3〜T4においてこの移動量d2に相当する移動量e3だけLCD画面63も右方向に追尾して移動することとするので、追尾対象たる自動車のLCD画面における相対位置は概ね小さくなり、t=T3〜T4の間にg3だけ移動する。また、この追尾移動によって、撮影が難しい滑らかなパンニング操作を行なったときと同様の動画像を容易に撮影することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】発明の実施形態に係るカメラを示すブロック図である。
【図2】図1の焦点検出モジュールを示す図である。
【図3A】図1のカメラの動作例を示す図(その1)である。
【図3B】図1のカメラの動作例を示す図(その2)である。
【図3C】図1のカメラの動作例を示す図(その3)である。
【符号の説明】
【0082】
1…一眼レフデジタルカメラ
100…カメラボディ
110…撮像素子
131…焦点板
135…ファインダ
136…測光用レンズ
137…測光センサ
138…光学鏡筒
139…ハーフミラー
140…ズームレンズ駆動モータ
141…ズームレンズエンコーダ
142…ヨー角駆動モータ
143…ヨー角エンコーダ
144…ピッチ角駆動モータ
145…ピッチ角エンコーダ
161…焦点検出モジュール
161d…ラインセンサ
170…カメラ制御部
200…レンズ鏡筒
210…レンズ群
211…フォーカスレンズ
212…ズームレンズ
220…絞り装置
230…フォーカスレンズ駆動モータ
240…絞り駆動装置
250…レンズ制御部
260…フォーカスレンズエンコーダ
270…ズームレンズ駆動モータ
280…ズームレンズエンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系による像を再結像する再結像光学系と、
前記再結像光学系による像を撮像する第1撮像素子と、
前記再結像光学系の焦点距離を変更する焦点距離変更手段と、
前記再結像光学系の光軸の方向を変更する光軸方向変更手段と、を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記光学系を通過した光束を分岐する分岐光学系と、
前記分岐光学系によって分岐された光束の像を撮像する第2撮像素子と、を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項2に記載の撮像装置において、
前記光学系による像を観察可能とする観察光学系を備え、
前記第1撮像素子は前記観察光学系を通過する光束による像を撮像可能な位置に設けられていることを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項3に記載の撮像装置において、
前記観察光学系は、前記光学系による像を結像する焦点板を含み、
前記再結像光学系は、前記焦点板に結像した像を前記第1撮像素子に再結像することを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
請求項4に記載の撮像装置において、
前記第1撮像素子により前記焦点板に結像した像全体を撮像するように、前記焦点距離変更手段および前記光軸方向変更手段の少なくとも一方を制御する制御手段を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の撮像装置において、
前記第1撮像素子により前記焦点板に結像した像の一部を撮像するように、前記焦点距離変更手段および前記光軸方向変更手段の少なくとも一方を制御する制御手段を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記再結像光学系による像のうち特定の基準画像に相当する像の位置を認識する認識手段を備え、
前記光軸方向変更手段は、前記認識手段によって認識された像の位置に応じて前記再結像光学系の光軸の方向を変更することを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記再結像光学系による像のうち特定の基準画像に相当する像の大きさを認識する認識手段を備え、
前記焦点距離変更手段は、前記認識手段によって認識された像の大きさに応じて前記再結像光学系の焦点距離を変更することを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記第1撮像素子により撮像した画像を記録する記録手段および前記第1撮像素子により撮像した画像を表示する表示手段の少なくとも一方を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
請求項2〜9のいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記光学系を通過した光束に基づいて前記光学系の焦点調節状態を検出する焦点検出手段を備えたことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【公開番号】特開2009−284006(P2009−284006A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130959(P2008−130959)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】