説明

撮像装置

【課題】
撮像装置において想定される撮影条件が多岐に及び、それに付随して最適な補正項も大きく変化するような場合、全ての可能性に対して補正項を用意するならば、補正値を保持する為の記憶容量が膨大になり、また、補正項を得る為の調整工程が煩雑になる。
【解決手段】
撮影画像データの信号値のむらを補正するための補正項を、撮影条件に対応させて記憶する第1記憶手段と、前記第1記憶手段に記憶されている補正項のうち、撮影画像データを取得した際の撮影条件と近い補正項を用いて撮影画像データの補正項を補間計算する第2記憶手段と、第1計算手段が計算した撮影画像データの補正項を用いて、撮影画像データの信号値のむらを補正する補正手段とを有する撮像装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データ補正処理を行う撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な撮像装置に於いて、レンズなどの光学系の特性による撮像面へ入射する光量の非均一性を別として、撮像装置を構成する画素の非均一性、画素と対応するマイクロレンズの位相ずれ、フィルタの染色むらなどに起因し、撮像面の受光特性に非均一性が生じることがある。これにより発生する、輝度シェーディングまたは色シェーディングが問題となっている。
【0003】
撮像装置の上記シェーディングを補正する方法として、予め輝度及び色が均一な面を撮影することで得られる画像データを複数のブロックに区切り、各ブロックでゲインを求め、撮影のとき、前述のゲインを用いて画像データを補正する方法が知られている。
【0004】
また、撮影条件(ズーム倍率、絞り径など)の変化に伴い、複数用意されたゲインから最適なものを選択する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4579570号公報
【0006】
【特許文献2】特開2008−53931号公報
【0007】
【特許文献3】特開2008−109278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記撮像装置において想定される撮影条件が多岐に及び、それに付随して最適な補正項も大きく変化するような場合、全ての可能性に対して前記補正項を用意するならば、補正値を保持する為の記憶容量が膨大になり、また前記補正項を得る為の調整工程が煩雑になる。
【0009】
本発明では、想定される撮影条件での撮像素子に対する光線の入射角度などのシェーディングと相関性を持つパラメータを計算する手段を備え、実際の撮影時の撮影条件での光線の入射角度などのパラメータから最適な補正項を補間計算する事で、最適なシェーディング補正を行う撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
撮影レンズ光学系と絞りと撮像素子を有し、前記撮像素子が画像信号を取得することで撮影画像データを取得する撮像装置において、第1記憶手段と、第1計算手段と、補正手段とを有し、前記第1記憶手段は、撮影画像データの信号値のむらを補正するための補正項を、撮影条件に対応させて記憶し、前記第1計算手段は、前記第1記憶手段に記憶されている補正項のうち、撮影画像データを取得した際の撮影条件と近い補正項を用いて撮影画像データの補正項を補間計算し、前記補正手段は、前記第1計算手段が計算した撮影画像データの補正項を用いて、撮影画像データの信号値のむらを補正することを特徴とする撮像装置を提供する。
【0011】
撮影レンズ光学系と絞りと撮像素子を有し、前記撮像素子が画像信号を取得することで撮影画像データを取得する撮像装置において、第1記憶手段と、第1計算手段と、補正手段とを有し、前記第1記憶手段は、撮影画像データの信号値のむらを補正するための補正項を、撮影条件の光線角度、撮影レンズの種類、ズームポジション、合焦位置、絞り径に関するパラメータ、コンバータの有無及び種類、フィルタの有無及び種類、色収差、像面湾曲、歪曲収差、レンズシフト方式手振れ補正レンズのシフト量、センサシフト方式手振れ補正センサのシフト量、ティルト・シフトレンズのティルト・シフト量、ソフトフォーカスレンズのソフト量、光源の種類、撮影レンズの透過率、撮影レンズのコーティング、センサの温度、露光時間のうち、少なくとも2つ以上の項目に対応させて記憶し、前記第1計算手段は、前記第1記憶手段に、撮影条件の光線角度、撮影レンズの種類、ズームポジション、合焦位置、絞り径に関するパラメータ、コンバータの有無及び種類、フィルタの有無及び種類、色収差、像面湾曲、歪曲収差、レンズシフト方式手振れ補正レンズのシフト量、センサシフト方式手振れ補正センサのシフト量、ティルト・シフトレンズのティルト・シフト量、ソフトフォーカスレンズのソフト量、光源の種類、撮影レンズの透過率、撮影レンズのコーティング、センサの温度、露光時間のうち、少なくとも2つ以上の項目に対応して記憶されている補正項中の、対応する撮影画像データを取得した際の撮影条件の光線角度、撮影レンズの種類、ズームポジション、合焦位置、絞り径に関するパラメータ、コンバータの有無及び種類、フィルタの有無及び種類、色収差、像面湾曲、歪曲収差、レンズシフト方式手振れ補正レンズのシフト量、センサシフト方式手振れ補正センサのシフト量、ティルト・シフトレンズのティルト・シフト量、ソフトフォーカスレンズのソフト量、光源の種類、撮影レンズの透過率、撮影レンズのコーティング、センサの温度、露光時間と近い補正項を用いて撮影画像データの補正項を補間計算し、前記補正手段は、前記第1計算手段が計算した撮影画像データの補正項を用いて、撮影画像データの信号値のむらを補正することを特徴とする撮像装置を提供する。
【0012】
第2記憶手段を有し、前記第2記憶手段は、前記撮影条件に対応する絞り中心光線角または撮影レンズ光学系の射出瞳位置をあらかじめ記憶し、前記第1記憶手段は、補正項を絞り中心光線角または撮影レンズ光学系の射出瞳位置と絞り径に関するパラメータとに対応させて記憶し、前記第1計算手段は、実際に撮影した際の絞り中心光線角または撮影レンズ系の射出瞳位置と絞り径に関するパラメータの情報を前記第2記憶手段から読み出し、前記第1記憶手段に記憶されている補正項のうち、撮影画像データを取得した際の前記撮影条件と近い補正項を用いて撮影画像データの補正項を補間計算することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撮像装置を提供する。
【0013】
第2記憶手段と、制御手段を有し、前記第2記憶手段は前記撮影時条件に対応する絞り中心光線角及び絞り周辺光線角をあらかじめ記憶し、前記第1記憶手段は、補正項を光束中心光線角と絞り径に関するパラメータとに対応させて記憶し、前記制御手段は、実際に撮影した際の絞り中心光線角及び絞り周辺光線角と、絞り径に関するパラメータから、光束中心光線角を計算し、前記第1計算手段は、前記第1記憶手段に記憶されている補正項のうち、前記制御手段が計算した、撮影画像データを取得した際の前記撮影条件の、光束中心光線角と絞り径に関するパラメータと近い補正項を用いて撮影画像データの補正項を補間計算することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撮像装置を提供する。
【0014】
第2計算手段を有し、前記第2計算手段は、基準となる被写体を撮影することで取得した調整画像データから、撮影画像データの信号値の比を補正する為の補正項を計算することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の撮像装置を提供する。
【0015】
前記第2計算手段は、基準となる被写体を撮影することで取得した調整画像データを複数のブロックに分割し、ブロック毎のゲインを計算し、前記ブロック毎のゲインの集合である補正項を予め計算し、前記第1記憶手段は、前記第2計算手段が計算したブロック毎のゲインの集合である補正項を、調整画像データを取得した際の前記撮影条件に対応させて記憶することを特徴とする請求項5に記載の撮像装置を提供する。
【0016】
前記基準となる被写体は、輝度及び色が均一な面であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の撮像装置を提供する。
【0017】
前記第1計算手段は、撮像素子の特性に起因する撮像面の受光特性の非均一性についての補正項を計算し、前記補正手段は、前記第1計算手段が算出した撮像素子の特性に起因する撮像面の受光特性の非均一性についての補正項を用いて補正を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の撮像装置を提供する。
【0018】
装着するレンズ光学系の交換が可能な撮像装置であり、前記第1記憶手段が前記撮像装置内に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の撮像装置を提供する。
【0019】
装着するレンズ光学系の交換が可能な撮像装置であり、前記第1記憶手段が装着するレンズ内に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の撮像装置を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、必要最低限の調整工程と必要最低限のメモリ容量で、画像データの撮影条件に応じた最適なシェーディング補正を行い、画質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明にかかる画像処理システムの一例である撮像装置の概略構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施例における調整工程のフローチャート
【図3】本発明の実施例における補正項調整工程のフローチャート
【図4】絞り中心光線角の概念を示す概念図
【図5】上絞り周辺光線角と下絞り周辺光線角を示す概念図
【図6】光束中心光線角を示す概念図
【図7】補正項記憶装置に記憶される、絞り中心光線角か、射出瞳か、光束中心光線角と絞り径に対応させた補正項を示す図
【図8】実際に撮影した画像データに用いる補正項を計算する際に読み出す4つの補正項の選出方法を示す概念図
【図9】画像データをブロック毎に分割する概念図
【図10】実際に撮影した画像データに用いる補正項から、撮影画像データの各画素に与えるべきゲインを計算する方法を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は本発明にかかる画像処理システムの一例である撮像装置の概略構成を示すブロック図である。
【0023】
図1における101は光学系であり、例えば光学系の交換が可能なカメラに装着する交換レンズの光学系や、デジタルカメラと一体となった光学系が考えられる。
【0024】
102は絞りであり、絞り制御114によって駆動を制御されている。
【0025】
101aはズーム時に移動するズームレンズ、101bはフォーカス時に移動するフォーカスレンズであり、112のズーム制御部、113のフォーカス制御部はそれぞれズーム時に移動するレンズ101aとフォーカス時に移動するレンズ101bを制御している。ただし、101aのズームレンズ及び112のズーム制御部は、例えば光学系の交換が可能なカメラにおいて単焦点のレンズを装着した場合や、カメラと一体となった光学系が単焦点であった場合には構成に含まない。
【0026】
111はCPUであり、ズーム制御部112、フォーカス制御部113、絞り制御部114はかかるCPU111の制御下で、各部の駆動を行う。
【0027】
115はレンズ制御部である。光学系101が光学系の交換が可能なカメラに装着する交換レンズの光学系であった場合には、レンズ制御部115は装着したレンズのレンズID、撮影時の焦点距離、合焦距離、絞り径等の撮影条件を読み出し、CPUへと送る。レンズIDとは、光学系の交換が可能なカメラに装着可能な交換レンズを識別するためのIDであり、かかるレンズIDによって装着された交換レンズが予めカメラに登録されたレンズのうち、どのレンズなのかを光線角記憶装置201で参照することが可能となる。また、光学系101がデジタルカメラと一体になった光学系であった場合には、撮影時の焦点距離、合焦距離、絞り径等の撮影条件をCPU111が読み出す。
【0028】
103はフィルタである。かかるフィルタ103は例えば、赤外線等の撮像素子にとって不要な波長の光線を反射もしくは吸収するものやローパスフィルタ等が考えられる。かかるフィルタ103の透過率は光線入射角度によって変化する。
【0029】
104は撮像素子であり、光学系101とフィルタ103を通して入射した光を信号電荷に変換するCCDである。
【0030】
105はCDS回路である。かかるCDSとはCorrelated Double Samplingの略であり、相関二重サンプリングを示す。かかる相関二重サンプリングとは、CCDの内部で走査転送する際に生じるリセットノイズを、信号のフィードスルー部分の電圧とデータ部分の電圧の差分を検出し、この差分をキャンセルすることでリセットノイズを除去し、正確な信号レベルを計算するものである。
【0031】
106は可変電気アンプであり、信号電荷の増幅を行う。
【0032】
107はAD変換機であり、撮像素子104から出力された信号電荷はCDS回路105、可変電気アンプ106を通り、AD変換器107でアナログ信号からデジタル信号の画像データへと変換される。
【0033】
108は画像処理部であり、かかる画像処理部108は撮影された画像データに各種画像処理を施す。また、かかる画像処理部108内は補正項調整計算回路108a及び補正回路108bを有している。
【0034】
108aは補正項調整計算回路であり、後述の光線角記憶装置201と補正項記憶装置202からの情報と、レンズ制御部115からの撮影条件とから補正項を計算する。
【0035】
108bは補正回路であり、補正項調整計算回路108aにより計算された補正項から、画像データ全体の各画素に与えるべきゲインを計算し、計算されたゲインをそれぞれに画素の信号値に乗除算することでシェーディング補正を行う。
【0036】
201は光線角記憶装置であり、不揮発性メモリの形でカメラ内部、もしくは各々レンズ内部に格納されており、予め想定されるレンズ毎にズーム位置、フォーカス位置等に対応する絞り中心光線角、もしくは射出瞳位置が記憶されている。
【0037】
109は表示装置であり、たとえば、液晶や有機ELなどを用いることができる。
【0038】
110は記憶装置撮影画像を記憶するためのメディアである。外部記録装置110としてはたとえば、SDメモリカード等の記録媒体を用いることができる。
【0039】
図4は絞り中心光線角の概念を示す概念図である。
【0040】
絞り中心光線角とは、図4に示すような、絞り中心を通り撮像素子の最大像高部分へ入射する光線の光線入射角度である。
【0041】
前述の補正項調整計算回路108aにおいて、補正項を計算する際には、レンズ交換が可能なカメラであれば、かかる光線角記憶装置201から、撮影時にカメラに装着されている交換レンズ、及び装着されている交換レンズの撮影時のズーム位置やフォーカス位置等に対応する絞り中心光線角もしくは射出瞳位置が読み出され、撮影時の絞り中心光線角もしくは射出瞳位置の情報を用いて補正項の補間計算を行い、実際に撮影した画像データに用いる補正項を計算する。同様に、光学系が一体となったカメラであれば、かかる光線角記憶装置201から撮影時の光学系のズーム位置やフォーカス位置に対応する絞り中心光線角もしくは射出瞳位置が読み出され、撮影時の絞り中心光線角もしくは射出瞳位置の情報を用いて補正項の補間計算を行い、実際に撮影した画像データに用いる補正項を計算する。
【0042】
図9は画像データをブロック毎に分割する概念図である。
【0043】
301は補正項計算回路である。補正項計算回路301はレンズ、又はズーム位置、フォーカス位置と、絞り径を変更して撮影することで予め取得した一定光源の画像データを、図9のような形でむらを補正するのに十分な数の複数のブロックに分割し、ブロック毎に信号値の平均値を計算し、得られる信号値の色信号比が全画面で均一になるよう、ブロック毎に与えるべきゲインを、ブロック毎での信号値の平均値の逆数として求める。
【0044】
図7は補正項記憶装置に記憶される、絞り中心光線角か、射出瞳か、光束中心光線角と絞り径に対応させた補正項を示す図であり、図7(A)は第1実施例の概念図である。
【0045】
202は補正項記憶装置である。補正項記憶装置202は補正項計算回路301が計算したブロック毎のゲインの集合である、補正項を記憶する。かかるブロック毎のゲインの集合である、補正項は、補正項記憶装置202に、例えば図7(A)のような形で記憶される。
【0046】
例えば、レンズ甲をレンズ交換可能なカメラに装着し、一定光源を撮影した場合、カメラは光線角記憶装置201からレンズ甲の撮影時の絞り中心光線角mを読み出し、レンズ制御部は撮影時のレンズ甲の絞り径をnと読み出した場合、カメラ内補正項計算回路301は絞り中心光線角mであり、絞り径nである撮影画像データに対応した、ブロック毎のゲインの集合である補正項を計算し、補正項記憶装置202に記憶する。
【0047】
次に、本発明における撮像装置の行う画像データ補正処理について説明する。かかる画像データ補正処理は、大きく分けて個体調整の工程と補正項の調整計算の工程と補正の工程の3つの工程から成る。以下に3つの工程を順に説明する。
【0048】
第1の実施形態における個体調整の工程について説明する。
【0049】
調整工程とは、カメラの個体毎に最適な補正項を記録させる工程であり、図2はかかる調整工程のフローチャートである。
【0050】
調整工程においてはまず、レンズの交換若しくは、ズーム位置・合焦距離の変更を行う。(ステップ#1)
【0051】
本実施例においては、かかるステップ#1で交換するレンズは予め想定されている。つまり、カメラ内に予め、レンズID毎にズーム位置、フォーカス位置に対応する絞り中心光線角、もしくは射出瞳位置が記憶されているので、CPU111はその情報を光線角記憶装置201に参照し、装着されたレンズのズーム位置・合焦距離毎の絞り中心光線角、もしくは射出瞳位置といった情報を得ることができる。
【0052】
本実施例のステップ#1においては例えば、予め想定されたレンズのうち、絞り中心光線角が小さいもの、もしくは像面と射出瞳の距離が長いものから順にカメラに装着し、撮影を行って情報を取得する。
【0053】
次に、装着したレンズの絞り径を変更する。(ステップ#2)
【0054】
本実施例のステップ#2においては例えば、絞り状態をまずF8.0に設定し、ステップ#3の撮影によりデータを取得し、ステップ#4で各ブロックのゲインを計算したら、次はF2.8、その次はF2.0、最後にF1.4と4段階で絞りを開放していき、それぞれの絞り径でステップ#3とステップ#4を繰り返すことで、装着したレンズについて4種類の絞りパターンにおけるデータを取得する。
【0055】
ステップ#2で絞り径を変更した後に、ステップ#3において一定光源を撮影し、画像データを取得する。本実施例においては、無限遠合焦状態で撮影を行う。そして、補正項計算装置301がかかる画像データを、図9に示すような形で、むらを補正するのに十分な数の複数のブロックに分割し、ブロック毎に信号値の平均値を計算し、得られる信号値の色信号比が全画面で均一になるよう、ブロック毎に与えるべきゲインを、ブロック毎での信号値の平均値の逆数の比率として求め、計算されたブロック毎のゲインの集合である補正項は、図7(A)のようにそれぞれ絞り中心光線角と絞り径に対応した補正項として、補正項記憶装置202に記憶される。
【0056】
また、前記補正項により、レンズなどの光学系の特性による撮像面へ入射する光量の非均一性を含めて補正する場合には、前記ゲインはブロック毎での信号値の平均値の、画面中心ブロックでの信号値の平均値に対する比率の逆数として計算する。かかる補正項により、撮像面の受光特性の非均一性のみを補正する場合には、前記ゲインはブロック毎での信号値の平均値の、画面中心ブロックでの信号値の平均値に対する比率の逆数から、調整工程に於いて使用される光学系から撮像面へ入射する光量の、当該ブロック位置の撮像素子中心の対する比の逆数を除算したもの、として計算することも考えられる。
【0057】
記憶が完了すると、次に補正項計算装置301は十分多くの絞り径で補正項を取得したか否かを判断する。本実施例において十分多くの絞り径とは、想定する4種類の絞りパターン全てである。(ステップ#5)
【0058】
本実施例においては、前述のとおりF8.0、F2.8、F2.0、F1.4の順に4種類の絞りパターンを想定し、F8.0から撮影(ステップ#3)、各ブロックのゲイン計算(ステップ#4)を行っている。したがって、あるレンズAにおいて絞りF8.0で撮影(ステップ#3)、各ブロックのゲイン計算(ステップ#4)を行うと、補正項計算装置301はレンズAにおいてF8.0の時の補正項しか取得していないため、まだ4種類全ての絞り径で補正項を取得していない、と判断し、まだ、十分多くの絞り径で補正項を取得していない、と判断する。十分多くの絞り径で補正項を取得していない場合には、ステップ#2に戻り、絞り径を変更する。例えば、F8.0の時の補正項しか取得していない場合には、絞り径はF8.0の次に絞り径の大きいF2.8に設定され、F8.0、F2.8の時の補正項を取得している場合には次に絞り径の大きいF2.0に設定され、F8.0、F2.8、F2.0の時の補正項を取得している場合には次に絞り径の大きいF1.4に設定される。
【0059】
本実施例では補正項を得る絞り状態の範囲をF8.0〜F1.4とし、その分割数を4つに設定し、F8.0、F2.8、F2.0、F1.4の順にデータ取得を行うため、レンズAにおいてF1.4の時の補正項を取得した場合には、4種類の絞りパターンでデータを取得しているとわかるため、レンズAにおいて想定している全ての絞りパターンでデータを取得していると判断し、ステップ#6に進む。
【0060】
ステップ#6では補正項計算装置301は十分多くの絞り中心光線角で補正項を取得したか否かを判断する。第1実施例においては、絞り中心光線角を、小さいもの、標準のもの、大きいものの3種類に設定している。本実施例において十分多くの絞り中心光線角とは、想定する3種類のパターン全てである。そして、絞り中心光線角の小さいレンズから、絞り中心光線角が標準的なレンズ、絞り中心光線角が大きいレンズ、と順に、絞り中心光線角が小さいものから撮影(ステップ#3)、各ブロックのゲイン計算(ステップ#4)を行っている。したがって、絞り中心光線角が小さいレンズAにおいてのみ、F8.0からF2.8、F2.0、F1.4と4段階で絞りを開放し、4種類の絞りパターンでデータを取得した場合、(ステップ#5)補正項計算装置301がレンズAの絞り中心光線角の補正項しか取得していないと判断し、まだ、十分多くの絞り中心光線角で補正項を取得していない、と判断する。
【0061】
十分多くの絞り中心光線角で補正項を取得していない場合には、ステップ#1に戻り、レンズを交換して、絞り中心光線角を変更する。例えば、本実施例では絞り中心光線角の小さいレンズAから、絞り中心光線角が標準的なレンズBに取り換える。(ステップ#1)また、レンズBにおいてステップ#2、ステップ#3、ステップ#4を繰り返し、レンズA同様、レンズBにおいても4種類全ての絞りパターンでデータを取得した場合には、ステップ#5からステップ#6に進み、絞り中心光線角が標準的なレンズBから絞り中心光線角が大きいレンズCに取り換える。(ステップ#1)
【0062】
対して、レンズA、レンズB、レンズCの3つでデータを取得した場合には、本実施例において、絞り中心光線角は、絞り中心光線角の小さいレンズ、絞り中心光線角が標準的なレンズ、絞り中心光線角が大きいレンズの3つのパターンに設定しているため、十分多くの絞り中心光線角で補正項を取得したとして、調整工程を終了する。
【0063】
次に、第1の実施形態における補正項調整計算の工程について説明する。
【0064】
補正項調整計算の工程とは、撮影条件に応じて補正項を最適な形に調整し、実際に撮影した画像データに用いる補正項を計算する工程であり、図3(A)は実施例1の補正項調整工程のフローチャートである。
【0065】
調整工程終了後、補正を施される画像データを撮影する。すると、ステップ#10ではズーム制御部112、フォーカス制御部113、絞り制御部114が、それぞれ撮影時の焦点距離、合焦距離、絞り径を読み出し、ステップ#11ではレンズ制御部115がレンズIDを読み出す。
【0066】
光学系の交換が可能なカメラに装着した交換レンズが、予め想定されるレンズであった場合には、装着した交換レンズからレンズIDを取得する。対して、装着した交換レンズが予め想定されたレンズではなかった場合など、レンズIDの取得に失敗したときは、予め設定した基準レンズのIDが入力される。(ステップ#12)基準レンズとは、例えば、本実施例においては予め、絞り中心光線角が標準的なレンズが設定される。
【0067】
光線角記憶装置201は前述のとおり、不揮発性メモリの形でカメラ内部、もしくは各々レンズ内部に配置されており、予め想定されるレンズ毎にズーム位置、フォーカス位置に対応する絞り中心光線角、もしくは射出瞳位置を記憶している。ステップ#13では光線角記憶装置201に記憶されている、撮影時のレンズID、ズーム位置、合焦位置に対応する絞り中心光線角、若しくは射出瞳位置を読み出す。
【0068】
図8は実際に撮影した画像データに用いる補正項を計算する際に読み出す4つの補正項の選出方法を示す概念図であり、図8(A)は実施例1の概念図である。
【0069】
絞り中心光線角若しくは射出瞳位置を縦軸に、撮影時の絞り径の逆数を横軸にとる図8(A)のような二次元平面を考え、その平面上に記憶手段202に記憶されている複数の補正項に対応する絞り中心光線角若しくは射出瞳位置、及び撮影時の絞り径の逆数をプロットして、隣り合う点を破線で結び、破線のようなブロックを考える。ステップ#14では前記平面上に撮影時の前記絞り中心光線角若しくは射出瞳位置、及び撮影時の絞り径をプロットし、その点を含むような前記ブロックを構成する4つの点に対応する記憶手段202に記憶されている4つの補正項を読み出す。
【0070】
ステップ#15では前記4つの補正項に対して、撮影時の前記絞り中心光線角もしくは射出瞳位置、及び撮影時の絞り径の逆数を重みパラメータとして、各ブロックのゲイン毎に補間計算を行い、実際に撮影した画像データに用いる補正項を計算する。例えば図8(A)に示すように、前記記憶手段202に記憶されている補正項の内、F値が小さい順から並べてj番目の絞り径F(j)と、数値が小さい順から並べてi番目の絞り中心光線角若しくは射出絞り位置θ(i)に対応する補正項をC(i,j)とすると、撮影時の絞り中心光線角若しくは射出絞り位置がθ、F値がFならば、最終的な補正項Cは、以下の数1に従って計算される。
【0071】
(数1)

【0072】
次に、第1の実施形態における補正の工程について説明する。
【0073】
補正の工程とは、補正項の調整計算の工程で計算された、実際に撮影した画像データに用いる補正項を各画素に最適な形に調整し、撮影画像データの各画素に与えるべきゲインを計算し、各画素の値に乗算する工程であり、かかる補正には、計算した補正項によって3パターンの方法がある。
【0074】
まず、第1のパターンについて説明する。
【0075】
第1のパターンにおける、補正項の調整計算の工程のステップ#15で計算された、実際に撮影した画像データに用いる補正項は、撮像面の受光特性の非均一性に加え、レンズなどの光学系の特性による撮像面へ入射する光量の非均一性を含めて補正する場合を想定して計算された補正項である。第1のパターンでは、かかる実際に撮影した画像データに用いる補正項から、撮影画像データの各画素に与えるべきゲインを計算する。
【0076】
図10は、実際に撮影した画像データに用いる補正項から、撮影画像データの各画素に与えるべきゲインを計算する方法を示す概念図である。
【0077】
撮影画像データの各画素に与えるべきゲインはゲインを計算する画素の座標を中心に置く4つの前記ブロックに対応するゲインを、座標を重みパラメータとして補間計算することで得られる。例えば図10に示すように、画像の左からI番目、上からJ番目の前記ブロック(I,J)とし、その中心の座標を(X(I),Y(J))、そのブロックに対応する前記ゲイン量をG(I,J)とすると、ブロック(I,J)内でその中心より右下にある画素の座標が(x,y)ならば、撮影画像データの画素(x,y)に与えるべきゲインg(x,y)は、以下の数2に従って計算される。
【0078】
(数2)

【0079】
第1のパターンでは、計算された撮影画像データの各画素に与えるべきゲインをそれぞれの画素の値に乗算し、補正の工程を終了する。
【0080】
次に、第2のパターンについて説明する。
【0081】
第2のパターンにおける補正項の調整計算の工程のステップ#15で計算された、実際に撮影した画像データに用いる補正項は、撮像面の受光特性の非均一性のみを補正する場合を想定して計算された補正項である。第2のパターンにおいては、かかる補正項から、撮影画像データの各画素に与えるべきゲインを計算し、各画素の値に乗算し、補正の工程を終了する。かかる処理は第1のパターンと同じであるため、説明を省略する。
【0082】
次に、第3のパターンについて説明する。
【0083】
第3のパターンにおける補正項の調整計算の工程のステップ#15で計算された、実際に撮影した画像データに用いる補正項は、第2のパターン同様、撮像面の受光特性の非均一性のみを補正する場合を想定して計算された補正項である。第3のパターンにおいては、まず、かかる補正項から、撮影画像データの各画素に与えるべきゲインを計算し、次に、撮像面へ入射する光量の非均一性によるシェーディングを補正するための補正項を計算し、これも撮影画像データの各画素に与えるべきゲインの形に変換する。そして両者を掛け合わせて計算されたゲインを各画素の値に乗算し、補正の工程を終了する。かかる処理は第1のパターンと同じであるため、説明を省略する。
【0084】
そして、第1パターン、第2パターン、第3パターンのいずれかにおいて補正の工程が終了すると、補正された撮影画像データは、画像処理部108により、ホワイトバランス補正、ノイズ処理、ガンマ補正などを施され、表示装置109や記録装置110に出力される。
【0085】
次に、第2実施例における画像データ補正について説明する。第2実施例においても、画像データ補正は、大きく分けて個体調整の工程と補正項の調整計算の工程と補正の工程の3つの工程から成るが、補正の工程に関しては実施例1と全く同様の処理であるため、説明を省略する。
【0086】
次に、第2の実施形態における個体調整の工程について説明する。
【0087】
前述のとおり、調整工程とは、カメラの個体毎に最適な補正項を記録させる工程であり、図2はかかる調整工程のフローチャートである。
【0088】
調整工程においてはまず、レンズの交換若しくは、ズーム位置・合焦距離の変更を行う。(ステップ#1)
【0089】
また、第2実施例においては、前述のとおり、かかるステップ#1で交換するレンズは予め想定されている。つまり、カメラ内に予め、レンズID毎にズーム位置、フォーカス位置に対応する絞り中心光線角、もしくは射出瞳位置が記憶されているので、カメラはその情報を光線角記憶装置201に参照し、装着されたレンズのズーム位置・合焦距離毎の絞り中心光線角、もしくは射出瞳位置といった情報を得ることができる。
【0090】
但し、実施例2では絞り中心光線角ではなく、光束中心光線角と絞り径に対応する補正項のデータが記憶されたカメラを用いる。
【0091】
図6は光束中心光線角を示す概念図である。
【0092】
光束中心光線角は、図6に示すように、各絞り状態に於いて撮像面の最大像高部分へ入射する光束の中心光線入射角度を示す。
【0093】
したがって、第2実施例のステップ#1においては例えば、予め想定されたレンズのうち、光束中心光線角が小さいものから順にカメラに装着し、撮影を行って情報を取得する。
【0094】
次に、装着したレンズの絞り径を変更する。(ステップ#2)
【0095】
第2実施例のステップ#2においては例えば、絞り状態をまずF8.0に設定し、ステップ#3の撮影によりデータを取得し、ステップ#4で各ブロックのゲインを計算したら、次はF2.8、その次はF2.0、最後にF1.4と4段階で絞りを開放していき、それぞれの絞り径でステップ#3とステップ#4を繰り返すことで、4種類の絞りパターンにおけるデータを取得している。
【0096】
図7補正項記憶装置に記憶される、絞り中心光線角か、射出瞳か、光束中心光線角と絞り径に対応させた補正項を示す図であり、図7(B)は第2実施例の概念図である。
【0097】
次に、ステップ#3において一定光源を撮影し、画像データを取得する。そして、補正項計算装置301がかかる画像データを、図9のような形でのむらを補正するのに十分な数の複数のブロックに分割し、ブロック毎に信号値の平均値を計算し、得られる信号値の色信号比が全画面で均一になるよう、ブロック毎に与えるべきゲインを、ブロック毎での信号値の平均値の逆数の比率として求め、計算されたゲインの集合は、補正項として、図7(B)のようにそれぞれ光束中心光線角と絞り径に対応した形で補正項記憶装置202に記憶される。(ステップ#4)
【0098】
また、前記補正項により、レンズなどの光学系の特性による撮像面へ入射する光量の非均一性を含めて補正する場合には、前記ゲインはブロック毎での信号値の平均値の、画面中心ブロックでの信号値の平均値に対する比率の逆数として計算する。かかる補正項により、撮像面の受光特性の非均一性のみを補正する場合には、前記ゲインはブロック毎での信号値の平均値の、画面中心ブロックでの信号値の平均値に対する比率の逆数から、調整工程に於いて使用される光学系から撮像面へ入射する光量の、当該ブロック位置の撮像素子中心の対する比の逆数を除算したもの、として計算することも考えられる。
【0099】
記憶が完了すると、次に補正項計算装置301は十分多くの絞り径で各ブロックのゲインの集合である補正項を取得したか否かを判断する。(ステップ#5)
【0100】
第2実施例においては、前述のとおりF8.0、F2.8、F2.0、F1.4の順に4種類の絞りパターンで、F8.0から撮影(ステップ#3)、各ブロックのゲイン計算(ステップ#4)を行っている。したがって、あるレンズAにおいて絞りF8.0で撮影(ステップ#3)、各ブロックのゲイン計算(ステップ#4)を行うと、補正項計算装置301はレンズAにおいてF8.0の時の補正項しか取得していないと判断し、まだ十分多くの絞り径で補正項を取得していない、と判断する。第2実施例において十分多くの絞り径とは、想定する4種類の絞りパターン全てである。十分多くの絞り径で補正項を取得していない場合には、ステップ#2に戻り、絞り径を変更する。例えば、F8.0の時の補正項しか取得していない場合には、絞り径はF8.0の次に絞り径の大きいF2.8に設定され、F8.0、F2.8の時の補正項を取得している場合には次に絞り径の大きいF2.0に設定され、F8.0、F2.8、F2.0の時の補正項を取得している場合には次に絞り径の大きいF1.4に設定する。
【0101】
第2実施例では補正項を得る絞り状態の範囲をF8.0〜F1.4とし、その分割数を4つと設定し、F8.0、F2.8、F2.0、F1.4の順にデータ取得を行うため、レンズAにおいてF1.4の時の補正項を取得した場合には、4種類の絞りパターンでデータを取得しているとわかるため、レンズAにおいて全ての絞りパターンでデータを取得していると判断し、十分多くの絞り径で補正項を取得したとしてステップ#6に進む。
【0102】
ステップ#6では補正項計算装置301は十分多くの光束中心光線角で補正項を取得したか否かを判断する。第2実施例においては、光束中心光線角を小さいもの、標準のもの、大きいものの3種類に設定している。第2実施例において十分多くの光束中心光線角とは、想定する3種類のパターン全てである。そして、光束中心光線角の小さい交換レンズから、光束中心光線角が標準的なレンズ、光束中心光線角が大きいレンズ、と順に、光束中心光線角が小さいものから撮影(ステップ#3)、各ブロックのゲイン計算(ステップ#4)を行っている。したがって、光束中心光線角が小さいレンズAにおいてのみ、F8.0、F2.8、F2.0、F1.4と4段階で絞りを開放し、4種類の絞りパターンで補正項を取得した場合、(ステップ#5)補正項計算装置301がレンズAの光束中心光線角の補正項しか取得していないと判断し、まだ、十分多くの光束中心光線角で補正項を取得していない、と判断する。
【0103】
十分多くの光束中心光線角で補正項を取得していない場合には、ステップ#1に戻り、レンズを交換して、光束中心光線角を変更する。例えば、上記の例においては、光束中心光線角の小さいレンズAから、光束中心光線角が標準的なレンズBに取り換える。(ステップ#1)また、レンズBにおいてステップ#2、ステップ#3、ステップ#4を繰り返し、レンズA同様、レンズBにおいても4種類全ての絞りパターンで補正項を取得した場合には、ステップ#5からステップ#6に進み、光束中心光線角が標準的なレンズBから光束中心光線角が大きいレンズCに取り換える。(ステップ#1)
【0104】
対して、レンズA、レンズB、レンズCとでデータを取得した場合には、第2実施例においては、光束中心光線角の小さいレンズ、光束中心光線角が標準的なレンズ、光束中心光線角が大きいレンズと、光束中心光線角を3つのパターンに設定しているため、3つのパターン全てで補正項を取得したとして、補正項計算装置301は十分多くの光束中心光線角で補正項を取得したと判断し、調整工程を終了する。
【0105】
次に、第2の実施形態における補正項調整計算の工程について説明する。
【0106】
補正項調整計算の工程とは、撮影条件に応じて補正項を最適な形に調整し、実際に撮影した画像データに用いる補正項を計算する工程であり、図3(B)は実施例2の補正項調整工程のフローチャートである。
【0107】
調整工程終了後、補正を施される画像データを撮影する。すると、ステップ#10ではズーム制御部112、フォーカス制御部113、絞り制御部114が、それぞれ撮影時の焦点距離、合焦距離、絞り径を読み出し、ステップ#11ではレンズ制御部115レンズIDを読み出す。
【0108】
光学系の交換が可能なカメラに装着した交換レンズが、予め想定される交換レンズであった場合には、カメラ内の光線角記憶装置201からレンズIDを取得する。対して、装着した交換レンズが予め想定された交換レンズではなかった場合など、レンズIDの取得に失敗したときは、予め設定した基準レンズのIDが入力される。(ステップ#12)例えば、第2実施例においては絞り中心光線角が標準的なレンズを基準レンズとして設定する。
【0109】
図5は上絞り周辺光線角と下絞り周辺光線角を示す概念図である。
【0110】
実施例2における光線角記憶装置201は、不揮発性メモリの形でカメラ内部、もしくは各々レンズ内部に格納されており、予め想定されるレンズ毎にズーム位置、フォーカス位置に対応する絞り中心光線角と、絞り開放時に撮像面の最大像高部分へ入射する光線入射角度の最大値と最小値(以下、絞り周辺光線角)が記憶されている。絞り周辺光線角には図5に示すような上絞り周辺光線角と、下絞り周辺光線角がある。上絞り周辺光線角は、絞り開放時に撮像素子の最大像高部分へ入射するもっとも上方の光線の光線入射角度である。ステップ#13では光線角記憶装置201に記憶されている、撮影時のレンズID、ズーム位置、合焦位置に対応する絞り中心光線角と、絞り周辺光線角を読み出す。
【0111】
ステップ#13−2では、CPU111が、読み出した撮影時の前記絞り中心光線角θpupと上絞り周辺光線角θupと下絞り周辺光線角θdw、及び撮影時の絞りのF値F´から、光束中心光線角θcenを以下の数3にしたがって計算する。また、かかるステップ#13−2の必要について、以下に説明する。
(数3)

【0112】
実施例2の調整工程において、補正項記憶装置202は、各レンズのデータを、絞り中心光線角とF値に対応する補正項としてではなく、光束中心光線角と絞り値に対応する補正項として記憶している。しかしながら、実施例2における光線角記憶装置201は、カメラ内部、もしくは各々レンズ内部に、予め想定されるレンズ毎にズーム位置、フォーカス位置に対応する絞り中心光線角を記憶している。
【0113】
つまり、調整工程で得た各レンズのデータが、光束中心光線角と絞り値に対応する補正項であり、一方、調整工程後に撮影した画像データが有する情報は絞り中心光線角と、絞り周辺光線角であるため、2つはこのままの形で対応させることができず、問題となる。
【0114】
そこで、撮影した画像データが有する情報である、光線角記憶装置201から読み出された、撮影時の絞り中心光線角と絞り周辺光線角及び撮影時の絞りのF値から、光束中心光線角を計算し、両者を対応できる形にする必要があるため、ステップ#13の光束中心光線角の計算が必要となる。
【0115】
図8は実際に撮影した画像データに用いる補正項を計算する際に読み出す4つの補正項の選出方法を示す概念図であり、図8(B)は実施例2の概念図である。
【0116】
絞り中心光線角と光束中心光線角の整合が完了したところで、光束中心光線角を縦軸に、撮影時の絞り径の逆数を横軸にとる図8(B)のような二次元平面を考え、その平面上に記憶手段202に記憶されている複数の補正項に対応する光束中心光線角及び撮影時の絞り径の逆数をプロットして、隣り合う点を破線で結び、破線のようなブロックを考える。ステップ#14では前記平面上に撮影時の光束中心光線角、及び撮影時の絞り径をプロットし、その点を含むような前記ブロックを構成する4つの点に対応する記憶手段202に記憶されている4つの補正項を読み出す。
【0117】
ステップ#15では前記4つの補正項に対して、撮影時の光束中心光線角、及び撮影時の絞り径の逆数を重みパラメータとして、ブロックのゲイン毎に補間計算を行い、実際に撮影した画像データに用いる補正項を計算する。例えば図8(B)に示すように、記憶手段202に記憶されている補正項の内、F値が小さい順から並べてj番目の絞り径F(j)と、数値が小さい順から並べてi番目の光束中心光線角θ(i)に対応する補正項をC(i,j)とすると、撮影時の光束中心光線角がθ、F値がFならば、最終的な補正項Cは、以下の数4に従って計算される。
(数4)

【0118】
次に、第2の実施形態における補正の工程であるが、前述のとおり、第1実施例と第2実施例における補正の工程は全く同様の処理であるため、説明を省略する。
【0119】
また、第1実施例ではレンズ交換可能なデジタルカメラを想定し、絞り中心光線角の小さいレンズ、絞り中心光線角が標準的なレンズ、絞り中心光線角が大きいレンズとレンズ交換をすることによってステップ#1としたが、例えば光学系が一体となったカメラの場合にはズーム位置や合焦距離を変えることでステップ#1とすることができる。更に、レンズ交換可能なデジタルカメラにおいても、レンズ一本においてズーム位置や合焦距離を変えることで絞り中心光線角を変化させ、ステップ#1とする場合も同様である。
【0120】
また、第2実施例ではレンズ交換可能なデジタルカメラを想定し、光束中心光線角の小さいレンズ、光束中心光線角が標準的なレンズ、光束中心光線角が大きいレンズとレンズ交換をすることによってステップ#1としたが、例えば光学系が一体となったカメラの場合にはズーム位置や合焦距離を変えることでステップ#1とする。更に、レンズ交換可能なデジタルカメラにおいても、レンズ一本においてズーム位置や合焦距離を変えることで光束中心光線角を変化させ、ステップ#1とする場合も同様である。
【0121】
また、第1、第2実施例では補正項を得る絞り状態の範囲をF8.0〜F1.4とし、その分割数を4つと設定したが、絞りの変化に伴うシェーディングの変化の程度に応じて、この範囲及び分割数は変更するべきものである。
【0122】
また、第1実施例では補正項を得る絞り中心光線角の分割数を3つと設定したが、絞り中心光線角の変化に伴うシェーディングの変化の程度に応じて、この分割数は変更するべきものである。
【0123】
また、第2実施例では補正項を得る光束中心光線角の分割数を3つと設定したが、光束中心光線角の変化に伴うシェーディングの変化の程度に応じて、この分割数は変更するべきものである。
【0124】
また、第1実施例では信号値のむらを補正するための補正項を、絞り中心光線角と絞り径に対応させて、補正項記憶装置301に記憶し、第2実施例では信号値のむらを補正するための補正項を、光束中心光線角と絞り径に対応させて、補正項記憶装置301に記憶しているが、信号値のむらを補正するための補正項は、光線角度、撮影レンズの種類、ズームポジション、合焦位置、絞り径に関するパラメータ、コンバータの有無及び種類、フィルタの有無及び種類、色収差、像面湾曲、歪曲収差、レンズシフト方式手振れ補正レンズのシフト量、センサシフト方式手振れ補正センサのシフト量、ティルト・シフトレンズのティルト・シフト量、ソフトフォーカスレンズのソフト量、光源の種類、撮影レンズの透過率、撮影レンズのコーティング、センサの温度、露光時間のうち、すくなくとも2つ以上の項目に対応させ、補正項記憶装置301に記憶する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0125】
101a ズームレンズ
101b フォーカスレンズ
102 絞り
103 フィルタ
104 撮像素子
105 CDS
106 可変電気アンプ
107 AD変換機
108 画像処理部
108a 補正項調整計算回路
108b 補正回路
109 表示装置
110 記憶装置
111 CPU
112 ズーム制御部
113 フォーカス制御部
114 絞り制御部
115 レンズ制御部
201 光線角記憶装置
202 補正項記憶装置
301 補正項計算回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影レンズ光学系と絞りと撮像素子を有し、
前記撮像素子が画像信号を取得することで撮影画像データを取得する撮像装置において、
第1記憶手段と、第1計算手段と、補正手段と
を有し、
前記第1記憶手段は、撮影画像データの信号値のむらを補正するための補正項を、撮影条件に対応させて記憶し、
前記第1計算手段は、前記第1記憶手段に記憶されている補正項のうち、撮影画像データを取得した際の撮影条件と近い補正項を用いて撮影画像データの補正項を補間計算し、
前記補正手段は、前記第1計算手段が計算した撮影画像データの補正項を用いて、撮影画像データの信号値のむらを補正する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
撮影レンズ光学系と絞りと撮像素子を有し、
前記撮像素子が画像信号を取得することで撮影画像データを取得する撮像装置において、
第1記憶手段と、第1計算手段と、補正手段と
を有し、
前記第1記憶手段は、撮影画像データの信号値のむらを補正するための補正項を、撮影条件の光線角度、撮影レンズの種類、ズームポジション、合焦位置、絞り径に関するパラメータ、コンバータの有無及び種類、フィルタの有無及び種類、色収差、像面湾曲、歪曲収差、レンズシフト方式手振れ補正レンズのシフト量、センサシフト方式手振れ補正センサのシフト量、ティルト・シフトレンズのティルト・シフト量、ソフトフォーカスレンズのソフト量、光源の種類、撮影レンズの透過率、撮影レンズのコーティング、センサの温度、露光時間のうち、少なくとも2つ以上の項目に対応させて記憶し、
前記第1計算手段は、前記第1記憶手段に、撮影条件の光線角度、撮影レンズの種類、ズームポジション、合焦位置、絞り径に関するパラメータ、コンバータの有無及び種類、フィルタの有無及び種類、色収差、像面湾曲、歪曲収差、レンズシフト方式手振れ補正レンズのシフト量、センサシフト方式手振れ補正センサのシフト量、ティルト・シフトレンズのティルト・シフト量、ソフトフォーカスレンズのソフト量、光源の種類、撮影レンズの透過率、撮影レンズのコーティング、センサの温度、露光時間のうち、少なくとも2つ以上の項目に対応して記憶されている補正項中の、対応する撮影画像データを取得した際の撮影条件の光線角度、撮影レンズの種類、ズームポジション、合焦位置、絞り径に関するパラメータ、コンバータの有無及び種類、フィルタの有無及び種類、色収差、像面湾曲、歪曲収差、レンズシフト方式手振れ補正レンズのシフト量、センサシフト方式手振れ補正センサのシフト量、ティルト・シフトレンズのティルト・シフト量、ソフトフォーカスレンズのソフト量、光源の種類、撮影レンズの透過率、撮影レンズのコーティング、センサの温度、露光時間と近い補正項を用いて撮影画像データの補正項を補間計算し、
前記補正手段は、前記第1計算手段が計算した撮影画像データの補正項を用いて、撮影画像データの信号値のむらを補正する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
第2記憶手段を有し、
前記第2記憶手段は、前記撮影条件に対応する絞り中心光線角または撮影レンズ光学系の射出瞳位置をあらかじめ記憶し、
前記第1記憶手段は、補正項を絞り中心光線角または撮影レンズ光学系の射出瞳位置と絞り径に関するパラメータとに対応させて記憶し、
前記第1計算手段は、実際に撮影した際の前記撮影条件の、絞り中心光線角または撮影レンズ系の射出瞳位置と絞り径に関するパラメータの情報を前記第2記憶手段から読み出し、前記第1記憶手段に記憶されている補正項のうち、撮影画像データを取得した際の前記撮影条件と近い補正項を用いて撮影画像データの補正項を補間計算する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
第2記憶手段と、
制御手段を有し、
前記第2記憶手段は前記撮影条件に対応する絞り中心光線角及び絞り周辺光線角をあらかじめ記憶し、
前記第1記憶手段は、補正項を光束中心光線角と絞り径に関するパラメータとに対応させて記憶し、
前記制御手段は、実際に撮影した際の絞り中心光線角及び絞り周辺光線角と、絞り径に関するパラメータから、光束中心光線角を計算し、
前記第1計算手段は、前記第1記憶手段に記憶されている補正項のうち、前記制御手段が計算した、撮影画像データを取得した際の前記撮影条件の、光束中心光線角と絞り径に関するパラメータと近い補正項を用いて撮影画像データの補正項を補間計算する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撮像装置。
【請求項5】
第2計算手段を有し、
前記第2計算手段は、基準となる被写体を撮影することで取得した調整画像データから、撮影画像データの信号値の比を補正する為の補正項を計算する
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の撮像装置
【請求項6】
前記第2計算手段は、基準となる被写体を撮影することで取得した調整画像データを複数のブロックに分割し、ブロック毎のゲインを計算し、前記ブロック毎のゲインの集合である補正項を予め計算し、
前記第1記憶手段は、前記第2計算手段が計算したブロック毎のゲインの集合である補正項を、調整画像データを取得した際の前記撮影条件に対応させて記憶する
ことを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記基準となる被写体は、輝度及び色が均一な面である
ことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の撮像装置
【請求項8】
前記第1計算手段は、撮像素子の特性に起因する撮像面の受光特性の非均一性についての補正項を計算し、
前記補正手段は、前記第1計算手段が算出した撮像素子の特性に起因する撮像面の受光特性の非均一性についての補正項を用いて補正を行う
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項9】
装着するレンズ光学系の交換が可能な撮像装置であり、
前記第1記憶手段が前記撮像装置内に配置されていること
を特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項10】
装着するレンズ光学系の交換が可能な撮像装置であり、
前記第1記憶手段が装着するレンズ内に配置されていること
を特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−244239(P2012−244239A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109596(P2011−109596)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000131326)株式会社シグマ (167)
【Fターム(参考)】