木製部材の接合構造及び木製部材用接合装置
【課題】接合される木製部材間のせん断方向の強度を十分に確保できると共に、木製部材同士の金具による取り付け作業が簡易である木製部材の接合構造及び接合装置を提供する。
【解決手段】接合構造は、桁材11と、その側面に水平かつ直角に配置された梁材16とを接合装置20により接合させたものである。パイプ部材21が、梁材16の挿通孔17内に摺動可能に挿入され、棒状のピン部材29が梁材16の側面に設けた貫通孔18に挿入されて、パイプ部材21の係合長孔23を貫通して梁材16に固定されることにより、ピン部材29が係合長孔23に係合してパイプ部材21を係合長孔23の長さ範囲で長手方向に摺動可能にされる。ボルト部材31が、桁材11の取付孔12に挿通されて、ネジ部をパイプ部材21先端のネジ溝に螺合させることにより、パイプ部材21の一端側が収容孔部14内に引っ張り込まれた状態にされる。
【解決手段】接合構造は、桁材11と、その側面に水平かつ直角に配置された梁材16とを接合装置20により接合させたものである。パイプ部材21が、梁材16の挿通孔17内に摺動可能に挿入され、棒状のピン部材29が梁材16の側面に設けた貫通孔18に挿入されて、パイプ部材21の係合長孔23を貫通して梁材16に固定されることにより、ピン部材29が係合長孔23に係合してパイプ部材21を係合長孔23の長さ範囲で長手方向に摺動可能にされる。ボルト部材31が、桁材11の取付孔12に挿通されて、ネジ部をパイプ部材21先端のネジ溝に螺合させることにより、パイプ部材21の一端側が収容孔部14内に引っ張り込まれた状態にされる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梁と桁、通し柱と二階梁、土台と柱等、建築用の2つの木製部材を互いに接合面で接合させる木製部材の接合構造及び接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の木製部材の接合構造としては、例えば特許文献1(図1、図2等を参照)に示すように、上下方向に立設された桁材に対して水平に延びて取り付けられる梁材の幅方向に貫通した貫通孔にパイプ状受具を挿嵌し、桁材に設けた梁材方向に伸びた挿通孔にボルト部材を差し込み、ボルト部材の先端をパイプ状受具のネジ孔に螺合させることにより強固に取り付けるものが開示されている。パイプ状受具は、締結する木材の厚さに合わせた長さに切断されてその側壁中央部の絞り加工予定位置に小孔を穿設すると共に、絞り加工予定位置と対向する側壁にボルト逃げ孔を穿設し、小孔周縁をパイプ部材の内側へ押し込むように絞り加工を施してパイプ部材の内側へ突出する筒状部を形成した後、筒状部の内壁にネジ溝を設けて雌ねじとしたものである。この接続構造は、パイプ状受具とボルト部材がいずれも木製部材内に埋設されて外部から見えないため、外部から見て木材の素材感を楽しむことができるという長所を備えている。さらに、予め加工工場で梁材にパイプ状受具を取り付けた状態とするプレカット処理を行う場合、木製材料から金具の突出がないので、従来の金具つきの木製材料に比べて木製材料の積載のためのスペースが少なくされる。そのため、木製材料の運搬の手間とコストが大幅に削減されるという大きな効果も得られる。同種の木製材料の接合構造については、特許文献2にも開示されている。
【特許文献1】特開2005−98071号公報
【特許文献2】特開平8−52169号公報
【0003】
しかし、上記接続構造においては、梁材と桁材との引っ張り方向の強度は、パイプ状受具とボルトとの間の引張り力により確保されるが、梁材と桁材とのせん断方向の強度は、細いボルトのみで受けられる構造となっているため十分な強度を確保できないという問題がある。また、上記接続構造においては、ボルトを挿通させるために梁材及びパイプ状受具の取付孔の径が非常に小さいため、ボルトを取付孔に位置合わせする作業が煩雑になり、特に、梁材の重量が大きい場合に正確な位置あわせの困難さが非常に顕著になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題を解決しようとするもので、接合される木製部材間のせん断方向の強度を十分に確保できると共に、木製部材同士の金具による取り付け作業が簡易である木製部材の接合構造及び木製部材用接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の構成上の特徴は、2つの木製部材を互いに接合面で接合させる接合構造であって、一方の木製部材は、接合面から延びて反対面に開口した取付孔を有すると共に、取付孔の接合面側が大径の収容孔部になっており、他方の木製部材は、接合面から取付孔の延長方向に延びた収容孔部と同一径の挿通孔を有すると共に、一表面に挿通孔を貫通して延びる貫通孔を有しており、金属製の筒状本体の少なくとも一端側内周面がネジ溝を有する取付孔部になっており、筒状本体の長手方向中間部に軸直角方向に貫通すると共に軸方向に延びた一対の係合長孔を有するパイプ部材が、他方の木製部材の挿通孔内に摺動可能に挿入されており、棒状のピン部材が他方の木製部材に設けた貫通孔に挿入されて係合長孔を貫通して他方の木製部材に固定されると共に、係合長孔に係合してパイプ部材を係合長孔の長さ範囲で長手方向に摺動可能にさせ、一端にネジ部を有し他端に取付孔の反対面側の開口に係合する係合端部を有するボルト部材が、一方の木製部材の取付孔に反対面側から挿通されて、ネジ部を取付孔部に螺合させて、パイプ部材の一端側を収容孔部まで引っ張り込んだことにある。
【0006】
第1の特徴においては、パイプ部材が、他方の木製部材の挿通孔内に摺動可能に挿入され、棒状のピン部材が他方の木製部材に設けた貫通孔に挿入されて、係合長孔を貫通して木製部材に固定される。これにより、ピン部材が係合長孔に係合し、パイプ部材が係合長孔の長さ範囲で長手方向に摺動可能にされ、パイプ部材が一方の木製部材内に収容された状態になる。さらに、一端にネジ部を他端に係合端部を有するボルト部材が一方の木製部材の取付孔に反対面側から挿通されて、ネジ部をパイプ部材先端の取付孔部に螺合させることにより、パイプ部材の一端側が収容孔部内に引っ張り込まれる。その結果、両木製部材の引っ張り方向の強度は、パイプ部材とボルト部材との間の引っ張り力により確保され、さらに、パイプ部材の先端側が両木製部材の接合面を跨いだ状態で配置されているため、両木製部材間のせん断方向の強度についても、パイプ部材によって支持されて十分に確保される。
【0007】
また、本発明の第1の特徴において、パイプ部材が、筒状本体と、筒状本体の一端側内周面に挿嵌されて固定される筒状の取付孔部材とにより構成されており、取付孔部材の軸孔が、一端側の大径の直孔部と、直孔部に隣接したボルト部材が螺合されるネジ孔部になっていることが好ましい。これにより、取付孔部材の一端側が、ネジ孔部より大径の直孔部になっているため、一方の木製部材の取付孔に挿入されたボルト部材の先端をパイプ部材の取付孔に挿入する際に、大径の直孔部を介して小径のネジ孔にスムーズに導かれる。その結果、本発明においては、取付孔と取付孔部材が多少ずれてもボルト部材の嵌め合わせが容易に行われるため、ボルト部材の取り付け作業が簡易にされる。
【0008】
また、本発明の第1の特徴において、ピン部材が、円筒形で一端側が外周面にネジ溝を設けており、一端側が径方向一方向にわずかに押しつぶされた断面長円形状にされることが好ましい。これにより、ピン部材を取付孔に挿嵌する際に、一端側が大径でネジ溝を有しているため、取付孔にねじ込むことができる。そのため、ピン部材が取付孔に強固に取り付けられて確実に抜けが防止される。
【0009】
また、本発明の第2の特徴は、2つの木製部材が互いに接合面で接合し、接合面から延びて反対面に開口した取付孔を有し、取付孔の接合面側が大径の収容孔部となっている一方の木製部材に、接合面から延びた取付孔の延長方向に延びた収容孔部と同一径の挿通穴を有すると共に一表面に挿通孔を貫通して延びる貫通孔を有する一方の木製部材を接合させる接合装置であって、金属製の筒状本体の少なくとも一端側が内周面にネジ溝を有する取付孔部になっており、筒状本体の長手方向中間部に軸直角方向に貫通すると共に軸方向に延びた一対の係合長孔を有し、他方の木製部材の挿通孔に摺動可能に挿入されるパイプ部材と、他方の木製部材に設けた貫通孔に挿入されて係合長孔を貫通して木製部材に固定されると共に、係合長孔に係合してパイプ部材を係合長孔の長さ範囲で長手方向に摺動可能にさせるピン部材と、一端にネジ部を有し他端に一方の木製部材の取付孔の開口に係合する係合端部を有し、取付孔に反対面側から挿通されて、ネジ部が取付孔部に螺合されて、パイプ部材の一端側を収容孔部まで引っ張り込むボルト部材とを設けたことにある。
【0010】
第2の特徴においては、パイプ部材が、他方の木製部材の挿通孔内に摺動可能に挿入され、ピン部材を他方の木製部材の側面に設けた貫通孔に挿入させて係合長孔を貫通して木製部材に固定させることにより、パイプ部材が係合長孔に係合したピン部材によって長孔の長さ範囲で長手方向に摺動可能にさせられる。さらに、ボルト部材が、一方の木製部材の取付孔に開口側から挿通されて、一端のネジ部を取付孔部に螺合させ、他端の係合端部を取付孔の開口に係合させることにより、ネジ部が取付孔部に螺合されて、パイプ部材の一端側を収容孔部内に引っ張り込むことができる。その結果、両木製部材の引っ張り方向の強度は、パイプ部材とボルト部材との間の引っ張り力により確保でき、さらに、パイプ部材の先端側が両木製部材の接合面を跨いだ状態で配置されているため、両木製部材間のせん断方向の強度についても、パイ部材で支持されて十分に確保される。
【0011】
また、本発明の第2の特徴において、パイプ部材が、筒状本体と、筒状本体の一端側内周面に挿嵌されて固定される別部材の筒状の取付孔部材とにより構成されており、取付孔部材が、一端側の大径の直孔部と、直孔部に隣接したボルト部材が螺合されるネジ孔部になっていることが好ましい。これにより、取付孔部材の一端側がネジ孔部より大径の直孔部になっているため、一方の木製部材の取付孔に挿入されたボルト部材の先端をパイプ部材の取付孔に挿入する際に、大径の直孔部を通して行うことができるため、取付孔と取付孔部材が多少ずれてもボルト部材の嵌め合わせが可能であり、ボルト部材の取り付け作業が簡易にされる。
【0012】
また、本発明の第2の特徴において、ピン部材が、円筒形で一端側が外周面にネジ溝を設けており、一端側が径方向一方向にわずかに押しつぶされた断面長円形状にされることが好ましい。これにより、ピン部材を取付孔に挿嵌する際に、一端側が大径でネジ溝を有しているため、取付孔にねじ込むことができる。そのため、ピン部材が取付孔に強固に取り付けられて確実に抜けが防止される。
【0013】
また、本発明の第3の特徴は、垂直に配置された一方の木製部材の上端側の側面に、上側から他方の木製部材を落としてその端面を接合させ、両木製部材の上端近傍位置に設けた第2の接合装置と、第2の接合装置の下側の少なくとも1箇所に埋設された請求項4に記載の接合装置とにより両木製部材が接合された木製部材の接合構造であって、 第2の接合部材が配設される他方の木製部材の上端近傍位置には、両木製部材の接合面から延びた第2挿通孔を有し、一方の木製部材は、接合面の上端近傍部分において直方体形状に切り欠かれ切欠き部を設けると共に、切欠き部から第2挿通孔の延長方向に延びて反対面に開口した第2取付孔を有しており、金属製の第2筒状本体の少なくとも一端側内周面がネジ溝を有する第2取付孔部になっており、第2筒状本体の長手方向中間部に軸直角方向に貫通する一対の係合孔を有する第2パイプ部材が、他方の木製部材の第2挿通孔に挿入されると共に一端側が切欠き部内に配置されており、棒状の第2ピン部材が他方の木製部材に設けた第2貫通孔に挿入されて係合孔を貫通して木製部材に固定され、一端側にネジ部を有し他端側に第2取付孔開口に係合する係合端部を有する第2ボルト部材が、一方の木製部材の第2取付孔に反対面側から挿通されて、ネジ部を第2取付孔部に螺合させたことにある。
【0014】
上記構成の第3の特徴においては、垂直に配置された一方の木製部材の上端側の側面に、上側から大型の他方の木製部材を落としてその端面を接合させる接合構造について、接合面の強度を確保するために、接合面の上端近傍位置に第2パイプ部材と第2品部材と第2ボルト部材とからなる第2の接合装置が設けられ、接合面の第2の接合装置の下側の少なくとも1箇所に請求項4に記載の接合装置が埋設される。第2パイプ部材が、他方の木製部材の第2挿通孔に挿入されると共に突出した一端側が一方の木製部材の切欠き部内に配置され、他方の木製部材が一方の木製部材によって支持される。これにより、大型の他方の木製部材が、第2パイプ部材によって一方の木製部材に簡単かつ精度よく位置合わせされる。この状態で、棒状の第2ピン部材が他方の木製部材に設けた第2貫通孔に挿入されて係合孔を貫通して他方の木製部材に固定される。続いて、一端側にネジ部を有し他端側に取付孔開口に係合する係合端部を有する第2ボルト部材が、一方の木製部材の第2取付孔に反対面側から挿通されて、ネジ部を第2取付孔部に螺合させることにより取り付けられる。第2の接合装置の下方に設けた請求項4の接合装置については、上述したように、一方の木製部材の取付孔からボルト部材を挿入して、パイプ部材の一端の取付孔部に螺合させることにより、パイプ部材が接合面を跨いで収容孔部内に引っ張り込まれる。
【0015】
その結果、本発明においては、垂直に配置された木製部材の上端側に大型で重い他の木製部材を簡単にかつ精度よく位置合わせして接合させることができる。また、本発明においては、上端近傍位置に第2の接合装置の第2パイプ部材と、請求項4に記載の接合装置のパイプ部材が、いずれも接合面を跨って配置されるため、大型の重い他の木製部材による大きなせん断方向の重力を確実に受け止めることができる。
【0016】
また、本発明の第3の特徴においては、第2貫通孔と貫通孔が一直線に形成されており、第2ピン部材とピン部材が一本にまとめられることが好ましい。これにより、第2貫通孔と貫通孔が一直線に形成されており、第2ピン部材とピン部材が一本にまとめられたそのため、ピン部材が取付孔に強固に取り付けられて確実に抜けが防止される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ボルト部材が一方の木製部材の取付孔に挿通されて、ネジ部をパイプ部材先端の取付孔部に螺合させることにより、パイプ部材の一端側が接合面を跨って収容孔部内に引っ張り込まれた状態にされる。その結果、本発明においては、パイプ部材の先端側が両木製部材の接合面を跨いだ状態で配置されているため、両木製部材間の引張り方向の強度に加えてせん断方向の強度についてもパイプ部材で十分に確保される。また、本発明においては、筒状本体に取り付けられる取付孔部材の一端側を、ネジ孔部より大径の直孔部とすることにより、取付孔と取付孔部材が多少ずれてもボルト部材の嵌め合わせが可能であり、ボルト部材の取り付け作業が簡易にされる。
【0018】
また、本発明によれば、垂直に配置された木製部材の上端側の側面に、上側から大型の他の木製部材を落としてその端面を接合させる接合構造の場合、接合面の上端近傍位置に第2の接合装置を設け、接合面の第2の接合装置の下側の少なくとも1箇所に請求項4に記載の接合装置を埋設させ、第2の接合装置の第2パイプ部材を、他方の木製部材の挿通孔に挿入させると共に一端側を一方の木製部材の切欠き部に配置される。その結果、本発明においては、第2パイプ部材によって重量の大きな大型の他方の木製部材が一方の木製部材に簡単かつ精度よく位置合わせされ、かつ十分な強度の接合構造が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、実施例1に係る木製部材の接合構造を斜視図により示し、図2、図3は、接合構造の形成過程と接合構造の最終状態とをそれぞれ断面図により示したものである。実施例1は、水平に配置された四角柱形状の一方の木製部材である桁材11と、その側面に水平かつ直角に配置された四角柱形状の他方の木製部材である梁材16とを、パイプ部材21と、ピン部材29と、ボルト部材31とからなる接合装置20により接合させた、T字状の接合構造に関するものである。
【0020】
桁材11は、幅方向両端面間を水平かつ直角方向に貫通した取付孔12を有している。取付孔12は、桁材11の垂直な一側面11a側(図示左端)が、同軸状に形成されて端面から軸方向にわずかに延びた大径の取付口13になっており、反対側の他側面11b側(図示右端)が、同軸状に形成されて端面から軸方向にわずかに延びた取付孔12よりわずかに内径の大きい収容孔部14になっている。取付孔12にはボルト部材31がほぼ密着状態で挿入されるようになっている。桁材11の他側面11bには、梁材16が一端面16a(図示左端)にて接合されており、他側面11bと一端面16aが互いに接合面になっている。
【0021】
梁材16は、一端面16a(図示左端)から取付孔12の延長方向に端面に水平かつ直角方向に延びたストレートな挿通孔17を有している。挿通孔17は、収容孔部14と同一内径になって繋げられている。梁材16の垂直側面の所定位置には、面に対して直角かつ水平方向に貫通した貫通孔18が形成されている。挿通孔17内にはパイプ部材21が挿入され、貫通孔18にはピン部材29が挿嵌されるようになっている。
【0022】
パイプ部材21は、図4〜図6に示すように、金属製のストレートな円筒形の筒状本体22と、その軸方向一端側22a(図示左端)の内周面に同軸状に挿嵌されて固定された円筒状の取付孔部材25とにより構成されている。筒状本体22は、軸方向他端側(図示右端)に寄った位置に、軸方向に貫通しかつ軸方向に長い長円状の一対の係合長孔23を設けている。係合長孔23は、筒状本体22に穴あけ加工を施すことにより、径方向両側に設けられ、孔開け加工により、外周縁が外周面からわずかに凹んだ状態になっている。取付孔部材25は、図7に示すように、一端側から軸方向中間に至る大径の直孔部26と、軸方向中間から他端側のネジ溝部分からなるネジ孔部27を有している。直孔部26は内径がボルト部材31の外径より大きくなっており、ネジ孔部27にはボルト部材31のネジ部33が螺合するようになっている。
【0023】
パイプ部材21は、図7に示すように、円筒形のパイプに係合長孔23を加工した筒状本体22に、軸方向一端側から取付孔部材25を挿入し、その一端側を筒状本体22の一端側からわずかに突出させ、突出部分外周を筒状本体22の一端に溶接28で固定することにより形成される。ピン部材29は、円筒形で一端側が外周面にネジ溝を設けており、一端側29aが径方向一方向にわずかに押しつぶされた断面長円形状にされている。ボルト部材31は、一端に六角形の頭部32を有し、他端側の所定範囲にネジ部33を設けている。
【0024】
次に、桁材11と梁材16の接合構造の形成について説明する。パイプ部材21は、梁材16の挿通孔17内に摺動可能に挿入され、棒状のピン部材29が梁材16の側面に設けた貫通孔18に挿入されて係合長孔23を貫通して梁材16に固定される。これにより、パイプ部材21は、係合長孔23に係合したピン部材29によって拘束され、係合長孔23の長さ範囲で長手方向に摺動可能にされ、パイプ部材21が梁材16内に収容された状態になる。その後、ボルト部材31が、桁材11の取付孔12に一側面11a側から挿通され、頭部32が取付口13にワッシャ34を介して係合され、ネジ部33がネジ孔部27に螺合される。それにより、パイプ部材21が引っ張れて、その一端側が収容孔部14内に収容される。
【0025】
上記実施例1においては、パイプ部材21が、梁材16の挿通孔17内に摺動可能に挿入され、棒状のピン部材29が梁材16の側面に設けた貫通孔18に挿入されて、パイプ部材21の係合長孔23を貫通して梁材16に固定されることにより、ピン部材29が係合長孔23に係合してパイプ部材21を係合長孔23の長さ範囲で長手方向に摺動可能にされる。さらに、ボルト部材31が、桁材11の取付孔12に一側面11a側から挿通されて、ネジ部33をパイプ部材21先端のネジ孔部27に螺合させることにより、パイプ部材21の一端側が収容孔部14内に引っ張り込まれた状態にされる。
【0026】
そのため、桁材11と梁材16の接合面における引っ張り方向の強度は、パイプ部材21とボルト部材31との間の引張り力により確保され、さらに、パイプ部材21の先端側が桁材11と梁材16の接合面を跨いだ状態で配置されているため、両部材11,16間のせん断方向の強度についても、パイプ部材21に支えられて十分に確保される。その結果、実施例1においては、桁材11と梁材16とを接合する十分な強度の接合構造が得られる。また、取付孔部材25の一端側が他端側のネジ孔部27より大径の直孔部26になっているため、桁材11の取付孔12に挿入されたボルト部材31の先端をパイプ部材21の取付孔部材25に挿入する際に、大径の直孔部26を介して小径のネジ孔部27にスムーズに導かれる。その結果、実施例1においては、取付孔12と取付孔部材25が多少ずれても嵌め合わせが容易に行われるため、ボルト部材31の取り付け作業が簡易にされる。さらに、ピン部材29を梁材16の貫通孔18に挿嵌する際に、ピン部材29の一端側29aが大径でネジ溝を有しているため、貫通孔18にねじ込むことができる。そのため、ピン部材29が貫通孔18に強固に取り付けられて確実に抜けが防止される。
【0027】
なお、上記実施例1において、パイプ部材21の取付孔部材25の変形例として、図8に示すような鍛造で形成した取付孔部材25Aとすることができる。取付孔部材25Aは、鍛造で形成されることにより、ストレートな取付孔部材25の軸方向一端に周方向に沿って外方に突出したつば部26aを設けたものである。つば部26aの外径は、筒状本体22と同一である。取付孔部材25Aのその他の構成は取付孔部材25と同様である。これにより、取付孔部材25Aは、筒状本体22に挿入された後、電気溶接により簡単に取付が行われる。また、取付孔部材25Aは、鍛造で形成されることにより、量産により安価にされる。
【0028】
次に、実施例2について説明する。図9、図10は、実施例2に係る桁材と梁材を接合装置で接合した接合構造を正面断面図及び平面断面図により示したものである。実施例2は、垂直に配置された四角柱形状の桁材41の上端側の側面に、上側から四角柱形状の梁材46を落としてその端面を合せ、桁材41と梁材46の上端近傍位置に第2の接合装置50が設けられ、第2の接合装置50の下側の1箇所に実施例1に示した接合装置20が埋設された接合構造に関するものである。接合装置20については、上記実施例1に示したと同様であり、説明を省く。
【0029】
桁材41は、接合面41a側において上端面41b側から幅方向両側(図9の前後方向)を除いて下方に所定長さ切り欠かれて延びた直方体形状の切欠き部42を設けている。切欠き部42の幅は、後述する第2パイプ部材51の外径と略同一にされている。切欠き部42の下端側には、直角方向に貫通した上取付孔43が設けられている。上取付孔43は、桁材41の垂直な一側面41c側(図示左端)が、同軸状に形成されて端面から軸方向にわずかに延びた大径の取付口44になっている。上取付孔43には上記ボルト部材31がほぼ密着状態で挿入されるようになっている。上取付孔43の下方には、上記取付孔12と同様の下取付孔45が設けられている。
【0030】
梁材46は、一端面46aから上取付孔43の延長方向に端面に直角方向に延びたストレートな上挿通孔47を有している。梁材46の上面46bの所定位置には、下方に垂直に延びた貫通孔48が形成されている。上挿通孔47内には第2パイプ部材51が挿入され、貫通孔48には第2ピン部材58が挿嵌されるようになっている。上挿通孔47の下側には、下取付孔45の延長方向に延びた下挿通孔49が形成されている。
【0031】
第2の接合装置50は、第2パイプ部材51と第2ピン部材58と第2ボルト部材61とからなる。第2パイプ部材51は、図11,図12に示すように、上記パイプ部材21とほぼ同一形状であり金属製のストレートな円筒形の筒状本体52と、その軸方向一端側52a(図示左端)の内周面に同軸状に挿嵌されて溶接56により固定された上記取付孔部材25と同一の取付孔部材55とにより構成されている。筒状本体52は、軸方向他端側(図示右端)に寄った位置に、軸方向に貫通した円形の一対の係合孔53を設けている。係合孔53は、筒状本体52に穴あけ加工を施すことにより、径方向両側に設けられ、外周縁が外周面からわずかに凹んだ状態になっている。梁材46に設けた貫通孔48は、第2パイプ部材51の係合孔53に繋がっており、さらに接合装置20のパイプ部材21の係合長孔23を貫通している。貫通孔48に第2ピン部材58が挿嵌され、係合孔53及び係合長孔23に係合している。第2ボルト部材61は、上記ボルト部材31と同一である。
【0032】
上記構成の実施例2においては、垂直に配置された桁材41の上端側の側面に、上側から大型の梁材46を落としてその端面を接合させる際に、梁材46の上挿通孔47に挿入された第2パイプ部材51の一端側が突出しており、この突出部分が桁材41の上端側の切欠き部42内の底面上に載置される。また、切欠き部42の幅が第2パイプ部材51の外径と略同一であるため、第2パイプ部材51の幅方向の位置決めが精度よく行われる。これにより、重い梁材46が、第2パイプ部材51に支持されて、桁材41に簡単かつ精度よく位置合わせされる。この状態で、棒状の第2ピン部材58が梁材46の上面に設けた貫通孔48に挿入されて係合孔53を貫通し、さらにパイプ部材21の係合長孔23を貫通して梁材46に固定される。続いて、第2ボルト部材31が、桁材41の上取付孔43に一側面41c側から挿通されて、ネジ部33を取付孔部材55のネジ孔部に螺合させることにより取り付けられる。第2の接合装置50の下方に設けた上記接合装置20については、上述したように、桁材41の上取付孔43から第2ボルト部材61を挿入して、パイプ部材21の一端の取付孔部材25に螺合させることにより、第2パイプ部材51を接合面41aを跨いで収容孔部に引っ張り込まれる。
【0033】
その結果、実施例2においては、垂直に配置された桁材41の上端側に大型で重い梁材46を簡単にかつ精度よく位置合わせして接合させることができる。また、本実施例においては、上端近傍位置に第2の接合装置50の第2パイプ部材51と、接合装置20のパイプ部材21が、いずれも接合面を跨って配置されるため、重い梁材46による大きなせん断方向の重力を確実に受け止めることができる。なお、実施例2においては、貫通孔は1つでピン部材も一本とし、ピン部材の取り付けの手間を省いているが、両者を接合装置と第2の接合装置ごとに分けて設けることもできる。
【0034】
なお、上記実施例1,2に示した木製部材の接合構造は、桁材と梁材がT字上に組み合わされたものであるが、その他、例えば図13に示すように、T字状に組み合わされた2本の木製部材S1,S2に対して、斜めに補強する木製部材X1,X2を接合装置20で接合させることができる。さらに、図14に示すように、十字状に組み合わされた木製部材S3,S4に対して、斜めに補強する木製部材X3〜X6をそれぞれ接合装置20で接合させることができる。
【0035】
なお、上記実施例1,2においては、パイプ部材は、筒状本体と取付孔部材とが分けられているが、筒状本体に直接ネジ溝を設けることも可能である。その他、上記実施例に示した接合構造、接合装置については一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、ボルト部材が一方の木製部材の取付孔に挿通されて、ネジ部をパイプ部材先端の取付孔部に螺合させることにより、パイプ部材の一端側が接合面を跨って収容孔部内に引っ張り込まれた状態にされ、パイプ部材の先端側が両木製部材の接合面を跨いだ状態で配置されているため、両木製部材間の引張り方向の強度に加えてせん断方向の強度についてもパイプ部材で十分に確保されるので、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例1である桁材と梁材をT字上に接合させた接合構造を概略構成を示す斜視図である。
【図2】同接合構造の形成過程を示す正面断面図である。
【図3】同接合構造の最終状態を示す正面断面図である。
【図4】パイプ部材を示す正面図である。
【図5】パイプ部材を示す平面図である。
【図6】パイプ部材を示す左側面図である。
【図7】パイプ部材の形成過程を説明する一部破談正面図である。
【図8】変形例である取付孔部材を示す断面図である。
【図9】実施例2である桁材と梁材を接合させた接合構造を示す正面断面図である。
【図10】同接合構造を示す平面断面図である。
【図11】パイプ部材を示す平面図である。
【図12】パイプ部材を示す正面図である。
【図13】接合構造の他の例を示す平面図である。
【図14】接合構造のその他の例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0038】
11…桁材、12…取付孔、14…収容孔部、16…梁材、17…挿通孔、18…貫通孔、20…接合装置、21…パイプ部材、22…筒状本体、23…係合長孔、25,25A…取付孔部材、29…ピン部材、31…ボルト部材、41…桁材、42…切欠き部、43…上取付孔、45…下取付孔、46…梁材、47…上挿通孔、48…貫通孔、50…第2の接合装置、51…第2パイプ部材、52…筒状本体、53…係合孔、55…取付孔部材、58…第2ピン部材、61…第2ボルト部材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、梁と桁、通し柱と二階梁、土台と柱等、建築用の2つの木製部材を互いに接合面で接合させる木製部材の接合構造及び接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の木製部材の接合構造としては、例えば特許文献1(図1、図2等を参照)に示すように、上下方向に立設された桁材に対して水平に延びて取り付けられる梁材の幅方向に貫通した貫通孔にパイプ状受具を挿嵌し、桁材に設けた梁材方向に伸びた挿通孔にボルト部材を差し込み、ボルト部材の先端をパイプ状受具のネジ孔に螺合させることにより強固に取り付けるものが開示されている。パイプ状受具は、締結する木材の厚さに合わせた長さに切断されてその側壁中央部の絞り加工予定位置に小孔を穿設すると共に、絞り加工予定位置と対向する側壁にボルト逃げ孔を穿設し、小孔周縁をパイプ部材の内側へ押し込むように絞り加工を施してパイプ部材の内側へ突出する筒状部を形成した後、筒状部の内壁にネジ溝を設けて雌ねじとしたものである。この接続構造は、パイプ状受具とボルト部材がいずれも木製部材内に埋設されて外部から見えないため、外部から見て木材の素材感を楽しむことができるという長所を備えている。さらに、予め加工工場で梁材にパイプ状受具を取り付けた状態とするプレカット処理を行う場合、木製材料から金具の突出がないので、従来の金具つきの木製材料に比べて木製材料の積載のためのスペースが少なくされる。そのため、木製材料の運搬の手間とコストが大幅に削減されるという大きな効果も得られる。同種の木製材料の接合構造については、特許文献2にも開示されている。
【特許文献1】特開2005−98071号公報
【特許文献2】特開平8−52169号公報
【0003】
しかし、上記接続構造においては、梁材と桁材との引っ張り方向の強度は、パイプ状受具とボルトとの間の引張り力により確保されるが、梁材と桁材とのせん断方向の強度は、細いボルトのみで受けられる構造となっているため十分な強度を確保できないという問題がある。また、上記接続構造においては、ボルトを挿通させるために梁材及びパイプ状受具の取付孔の径が非常に小さいため、ボルトを取付孔に位置合わせする作業が煩雑になり、特に、梁材の重量が大きい場合に正確な位置あわせの困難さが非常に顕著になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題を解決しようとするもので、接合される木製部材間のせん断方向の強度を十分に確保できると共に、木製部材同士の金具による取り付け作業が簡易である木製部材の接合構造及び木製部材用接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の構成上の特徴は、2つの木製部材を互いに接合面で接合させる接合構造であって、一方の木製部材は、接合面から延びて反対面に開口した取付孔を有すると共に、取付孔の接合面側が大径の収容孔部になっており、他方の木製部材は、接合面から取付孔の延長方向に延びた収容孔部と同一径の挿通孔を有すると共に、一表面に挿通孔を貫通して延びる貫通孔を有しており、金属製の筒状本体の少なくとも一端側内周面がネジ溝を有する取付孔部になっており、筒状本体の長手方向中間部に軸直角方向に貫通すると共に軸方向に延びた一対の係合長孔を有するパイプ部材が、他方の木製部材の挿通孔内に摺動可能に挿入されており、棒状のピン部材が他方の木製部材に設けた貫通孔に挿入されて係合長孔を貫通して他方の木製部材に固定されると共に、係合長孔に係合してパイプ部材を係合長孔の長さ範囲で長手方向に摺動可能にさせ、一端にネジ部を有し他端に取付孔の反対面側の開口に係合する係合端部を有するボルト部材が、一方の木製部材の取付孔に反対面側から挿通されて、ネジ部を取付孔部に螺合させて、パイプ部材の一端側を収容孔部まで引っ張り込んだことにある。
【0006】
第1の特徴においては、パイプ部材が、他方の木製部材の挿通孔内に摺動可能に挿入され、棒状のピン部材が他方の木製部材に設けた貫通孔に挿入されて、係合長孔を貫通して木製部材に固定される。これにより、ピン部材が係合長孔に係合し、パイプ部材が係合長孔の長さ範囲で長手方向に摺動可能にされ、パイプ部材が一方の木製部材内に収容された状態になる。さらに、一端にネジ部を他端に係合端部を有するボルト部材が一方の木製部材の取付孔に反対面側から挿通されて、ネジ部をパイプ部材先端の取付孔部に螺合させることにより、パイプ部材の一端側が収容孔部内に引っ張り込まれる。その結果、両木製部材の引っ張り方向の強度は、パイプ部材とボルト部材との間の引っ張り力により確保され、さらに、パイプ部材の先端側が両木製部材の接合面を跨いだ状態で配置されているため、両木製部材間のせん断方向の強度についても、パイプ部材によって支持されて十分に確保される。
【0007】
また、本発明の第1の特徴において、パイプ部材が、筒状本体と、筒状本体の一端側内周面に挿嵌されて固定される筒状の取付孔部材とにより構成されており、取付孔部材の軸孔が、一端側の大径の直孔部と、直孔部に隣接したボルト部材が螺合されるネジ孔部になっていることが好ましい。これにより、取付孔部材の一端側が、ネジ孔部より大径の直孔部になっているため、一方の木製部材の取付孔に挿入されたボルト部材の先端をパイプ部材の取付孔に挿入する際に、大径の直孔部を介して小径のネジ孔にスムーズに導かれる。その結果、本発明においては、取付孔と取付孔部材が多少ずれてもボルト部材の嵌め合わせが容易に行われるため、ボルト部材の取り付け作業が簡易にされる。
【0008】
また、本発明の第1の特徴において、ピン部材が、円筒形で一端側が外周面にネジ溝を設けており、一端側が径方向一方向にわずかに押しつぶされた断面長円形状にされることが好ましい。これにより、ピン部材を取付孔に挿嵌する際に、一端側が大径でネジ溝を有しているため、取付孔にねじ込むことができる。そのため、ピン部材が取付孔に強固に取り付けられて確実に抜けが防止される。
【0009】
また、本発明の第2の特徴は、2つの木製部材が互いに接合面で接合し、接合面から延びて反対面に開口した取付孔を有し、取付孔の接合面側が大径の収容孔部となっている一方の木製部材に、接合面から延びた取付孔の延長方向に延びた収容孔部と同一径の挿通穴を有すると共に一表面に挿通孔を貫通して延びる貫通孔を有する一方の木製部材を接合させる接合装置であって、金属製の筒状本体の少なくとも一端側が内周面にネジ溝を有する取付孔部になっており、筒状本体の長手方向中間部に軸直角方向に貫通すると共に軸方向に延びた一対の係合長孔を有し、他方の木製部材の挿通孔に摺動可能に挿入されるパイプ部材と、他方の木製部材に設けた貫通孔に挿入されて係合長孔を貫通して木製部材に固定されると共に、係合長孔に係合してパイプ部材を係合長孔の長さ範囲で長手方向に摺動可能にさせるピン部材と、一端にネジ部を有し他端に一方の木製部材の取付孔の開口に係合する係合端部を有し、取付孔に反対面側から挿通されて、ネジ部が取付孔部に螺合されて、パイプ部材の一端側を収容孔部まで引っ張り込むボルト部材とを設けたことにある。
【0010】
第2の特徴においては、パイプ部材が、他方の木製部材の挿通孔内に摺動可能に挿入され、ピン部材を他方の木製部材の側面に設けた貫通孔に挿入させて係合長孔を貫通して木製部材に固定させることにより、パイプ部材が係合長孔に係合したピン部材によって長孔の長さ範囲で長手方向に摺動可能にさせられる。さらに、ボルト部材が、一方の木製部材の取付孔に開口側から挿通されて、一端のネジ部を取付孔部に螺合させ、他端の係合端部を取付孔の開口に係合させることにより、ネジ部が取付孔部に螺合されて、パイプ部材の一端側を収容孔部内に引っ張り込むことができる。その結果、両木製部材の引っ張り方向の強度は、パイプ部材とボルト部材との間の引っ張り力により確保でき、さらに、パイプ部材の先端側が両木製部材の接合面を跨いだ状態で配置されているため、両木製部材間のせん断方向の強度についても、パイ部材で支持されて十分に確保される。
【0011】
また、本発明の第2の特徴において、パイプ部材が、筒状本体と、筒状本体の一端側内周面に挿嵌されて固定される別部材の筒状の取付孔部材とにより構成されており、取付孔部材が、一端側の大径の直孔部と、直孔部に隣接したボルト部材が螺合されるネジ孔部になっていることが好ましい。これにより、取付孔部材の一端側がネジ孔部より大径の直孔部になっているため、一方の木製部材の取付孔に挿入されたボルト部材の先端をパイプ部材の取付孔に挿入する際に、大径の直孔部を通して行うことができるため、取付孔と取付孔部材が多少ずれてもボルト部材の嵌め合わせが可能であり、ボルト部材の取り付け作業が簡易にされる。
【0012】
また、本発明の第2の特徴において、ピン部材が、円筒形で一端側が外周面にネジ溝を設けており、一端側が径方向一方向にわずかに押しつぶされた断面長円形状にされることが好ましい。これにより、ピン部材を取付孔に挿嵌する際に、一端側が大径でネジ溝を有しているため、取付孔にねじ込むことができる。そのため、ピン部材が取付孔に強固に取り付けられて確実に抜けが防止される。
【0013】
また、本発明の第3の特徴は、垂直に配置された一方の木製部材の上端側の側面に、上側から他方の木製部材を落としてその端面を接合させ、両木製部材の上端近傍位置に設けた第2の接合装置と、第2の接合装置の下側の少なくとも1箇所に埋設された請求項4に記載の接合装置とにより両木製部材が接合された木製部材の接合構造であって、 第2の接合部材が配設される他方の木製部材の上端近傍位置には、両木製部材の接合面から延びた第2挿通孔を有し、一方の木製部材は、接合面の上端近傍部分において直方体形状に切り欠かれ切欠き部を設けると共に、切欠き部から第2挿通孔の延長方向に延びて反対面に開口した第2取付孔を有しており、金属製の第2筒状本体の少なくとも一端側内周面がネジ溝を有する第2取付孔部になっており、第2筒状本体の長手方向中間部に軸直角方向に貫通する一対の係合孔を有する第2パイプ部材が、他方の木製部材の第2挿通孔に挿入されると共に一端側が切欠き部内に配置されており、棒状の第2ピン部材が他方の木製部材に設けた第2貫通孔に挿入されて係合孔を貫通して木製部材に固定され、一端側にネジ部を有し他端側に第2取付孔開口に係合する係合端部を有する第2ボルト部材が、一方の木製部材の第2取付孔に反対面側から挿通されて、ネジ部を第2取付孔部に螺合させたことにある。
【0014】
上記構成の第3の特徴においては、垂直に配置された一方の木製部材の上端側の側面に、上側から大型の他方の木製部材を落としてその端面を接合させる接合構造について、接合面の強度を確保するために、接合面の上端近傍位置に第2パイプ部材と第2品部材と第2ボルト部材とからなる第2の接合装置が設けられ、接合面の第2の接合装置の下側の少なくとも1箇所に請求項4に記載の接合装置が埋設される。第2パイプ部材が、他方の木製部材の第2挿通孔に挿入されると共に突出した一端側が一方の木製部材の切欠き部内に配置され、他方の木製部材が一方の木製部材によって支持される。これにより、大型の他方の木製部材が、第2パイプ部材によって一方の木製部材に簡単かつ精度よく位置合わせされる。この状態で、棒状の第2ピン部材が他方の木製部材に設けた第2貫通孔に挿入されて係合孔を貫通して他方の木製部材に固定される。続いて、一端側にネジ部を有し他端側に取付孔開口に係合する係合端部を有する第2ボルト部材が、一方の木製部材の第2取付孔に反対面側から挿通されて、ネジ部を第2取付孔部に螺合させることにより取り付けられる。第2の接合装置の下方に設けた請求項4の接合装置については、上述したように、一方の木製部材の取付孔からボルト部材を挿入して、パイプ部材の一端の取付孔部に螺合させることにより、パイプ部材が接合面を跨いで収容孔部内に引っ張り込まれる。
【0015】
その結果、本発明においては、垂直に配置された木製部材の上端側に大型で重い他の木製部材を簡単にかつ精度よく位置合わせして接合させることができる。また、本発明においては、上端近傍位置に第2の接合装置の第2パイプ部材と、請求項4に記載の接合装置のパイプ部材が、いずれも接合面を跨って配置されるため、大型の重い他の木製部材による大きなせん断方向の重力を確実に受け止めることができる。
【0016】
また、本発明の第3の特徴においては、第2貫通孔と貫通孔が一直線に形成されており、第2ピン部材とピン部材が一本にまとめられることが好ましい。これにより、第2貫通孔と貫通孔が一直線に形成されており、第2ピン部材とピン部材が一本にまとめられたそのため、ピン部材が取付孔に強固に取り付けられて確実に抜けが防止される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ボルト部材が一方の木製部材の取付孔に挿通されて、ネジ部をパイプ部材先端の取付孔部に螺合させることにより、パイプ部材の一端側が接合面を跨って収容孔部内に引っ張り込まれた状態にされる。その結果、本発明においては、パイプ部材の先端側が両木製部材の接合面を跨いだ状態で配置されているため、両木製部材間の引張り方向の強度に加えてせん断方向の強度についてもパイプ部材で十分に確保される。また、本発明においては、筒状本体に取り付けられる取付孔部材の一端側を、ネジ孔部より大径の直孔部とすることにより、取付孔と取付孔部材が多少ずれてもボルト部材の嵌め合わせが可能であり、ボルト部材の取り付け作業が簡易にされる。
【0018】
また、本発明によれば、垂直に配置された木製部材の上端側の側面に、上側から大型の他の木製部材を落としてその端面を接合させる接合構造の場合、接合面の上端近傍位置に第2の接合装置を設け、接合面の第2の接合装置の下側の少なくとも1箇所に請求項4に記載の接合装置を埋設させ、第2の接合装置の第2パイプ部材を、他方の木製部材の挿通孔に挿入させると共に一端側を一方の木製部材の切欠き部に配置される。その結果、本発明においては、第2パイプ部材によって重量の大きな大型の他方の木製部材が一方の木製部材に簡単かつ精度よく位置合わせされ、かつ十分な強度の接合構造が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、実施例1に係る木製部材の接合構造を斜視図により示し、図2、図3は、接合構造の形成過程と接合構造の最終状態とをそれぞれ断面図により示したものである。実施例1は、水平に配置された四角柱形状の一方の木製部材である桁材11と、その側面に水平かつ直角に配置された四角柱形状の他方の木製部材である梁材16とを、パイプ部材21と、ピン部材29と、ボルト部材31とからなる接合装置20により接合させた、T字状の接合構造に関するものである。
【0020】
桁材11は、幅方向両端面間を水平かつ直角方向に貫通した取付孔12を有している。取付孔12は、桁材11の垂直な一側面11a側(図示左端)が、同軸状に形成されて端面から軸方向にわずかに延びた大径の取付口13になっており、反対側の他側面11b側(図示右端)が、同軸状に形成されて端面から軸方向にわずかに延びた取付孔12よりわずかに内径の大きい収容孔部14になっている。取付孔12にはボルト部材31がほぼ密着状態で挿入されるようになっている。桁材11の他側面11bには、梁材16が一端面16a(図示左端)にて接合されており、他側面11bと一端面16aが互いに接合面になっている。
【0021】
梁材16は、一端面16a(図示左端)から取付孔12の延長方向に端面に水平かつ直角方向に延びたストレートな挿通孔17を有している。挿通孔17は、収容孔部14と同一内径になって繋げられている。梁材16の垂直側面の所定位置には、面に対して直角かつ水平方向に貫通した貫通孔18が形成されている。挿通孔17内にはパイプ部材21が挿入され、貫通孔18にはピン部材29が挿嵌されるようになっている。
【0022】
パイプ部材21は、図4〜図6に示すように、金属製のストレートな円筒形の筒状本体22と、その軸方向一端側22a(図示左端)の内周面に同軸状に挿嵌されて固定された円筒状の取付孔部材25とにより構成されている。筒状本体22は、軸方向他端側(図示右端)に寄った位置に、軸方向に貫通しかつ軸方向に長い長円状の一対の係合長孔23を設けている。係合長孔23は、筒状本体22に穴あけ加工を施すことにより、径方向両側に設けられ、孔開け加工により、外周縁が外周面からわずかに凹んだ状態になっている。取付孔部材25は、図7に示すように、一端側から軸方向中間に至る大径の直孔部26と、軸方向中間から他端側のネジ溝部分からなるネジ孔部27を有している。直孔部26は内径がボルト部材31の外径より大きくなっており、ネジ孔部27にはボルト部材31のネジ部33が螺合するようになっている。
【0023】
パイプ部材21は、図7に示すように、円筒形のパイプに係合長孔23を加工した筒状本体22に、軸方向一端側から取付孔部材25を挿入し、その一端側を筒状本体22の一端側からわずかに突出させ、突出部分外周を筒状本体22の一端に溶接28で固定することにより形成される。ピン部材29は、円筒形で一端側が外周面にネジ溝を設けており、一端側29aが径方向一方向にわずかに押しつぶされた断面長円形状にされている。ボルト部材31は、一端に六角形の頭部32を有し、他端側の所定範囲にネジ部33を設けている。
【0024】
次に、桁材11と梁材16の接合構造の形成について説明する。パイプ部材21は、梁材16の挿通孔17内に摺動可能に挿入され、棒状のピン部材29が梁材16の側面に設けた貫通孔18に挿入されて係合長孔23を貫通して梁材16に固定される。これにより、パイプ部材21は、係合長孔23に係合したピン部材29によって拘束され、係合長孔23の長さ範囲で長手方向に摺動可能にされ、パイプ部材21が梁材16内に収容された状態になる。その後、ボルト部材31が、桁材11の取付孔12に一側面11a側から挿通され、頭部32が取付口13にワッシャ34を介して係合され、ネジ部33がネジ孔部27に螺合される。それにより、パイプ部材21が引っ張れて、その一端側が収容孔部14内に収容される。
【0025】
上記実施例1においては、パイプ部材21が、梁材16の挿通孔17内に摺動可能に挿入され、棒状のピン部材29が梁材16の側面に設けた貫通孔18に挿入されて、パイプ部材21の係合長孔23を貫通して梁材16に固定されることにより、ピン部材29が係合長孔23に係合してパイプ部材21を係合長孔23の長さ範囲で長手方向に摺動可能にされる。さらに、ボルト部材31が、桁材11の取付孔12に一側面11a側から挿通されて、ネジ部33をパイプ部材21先端のネジ孔部27に螺合させることにより、パイプ部材21の一端側が収容孔部14内に引っ張り込まれた状態にされる。
【0026】
そのため、桁材11と梁材16の接合面における引っ張り方向の強度は、パイプ部材21とボルト部材31との間の引張り力により確保され、さらに、パイプ部材21の先端側が桁材11と梁材16の接合面を跨いだ状態で配置されているため、両部材11,16間のせん断方向の強度についても、パイプ部材21に支えられて十分に確保される。その結果、実施例1においては、桁材11と梁材16とを接合する十分な強度の接合構造が得られる。また、取付孔部材25の一端側が他端側のネジ孔部27より大径の直孔部26になっているため、桁材11の取付孔12に挿入されたボルト部材31の先端をパイプ部材21の取付孔部材25に挿入する際に、大径の直孔部26を介して小径のネジ孔部27にスムーズに導かれる。その結果、実施例1においては、取付孔12と取付孔部材25が多少ずれても嵌め合わせが容易に行われるため、ボルト部材31の取り付け作業が簡易にされる。さらに、ピン部材29を梁材16の貫通孔18に挿嵌する際に、ピン部材29の一端側29aが大径でネジ溝を有しているため、貫通孔18にねじ込むことができる。そのため、ピン部材29が貫通孔18に強固に取り付けられて確実に抜けが防止される。
【0027】
なお、上記実施例1において、パイプ部材21の取付孔部材25の変形例として、図8に示すような鍛造で形成した取付孔部材25Aとすることができる。取付孔部材25Aは、鍛造で形成されることにより、ストレートな取付孔部材25の軸方向一端に周方向に沿って外方に突出したつば部26aを設けたものである。つば部26aの外径は、筒状本体22と同一である。取付孔部材25Aのその他の構成は取付孔部材25と同様である。これにより、取付孔部材25Aは、筒状本体22に挿入された後、電気溶接により簡単に取付が行われる。また、取付孔部材25Aは、鍛造で形成されることにより、量産により安価にされる。
【0028】
次に、実施例2について説明する。図9、図10は、実施例2に係る桁材と梁材を接合装置で接合した接合構造を正面断面図及び平面断面図により示したものである。実施例2は、垂直に配置された四角柱形状の桁材41の上端側の側面に、上側から四角柱形状の梁材46を落としてその端面を合せ、桁材41と梁材46の上端近傍位置に第2の接合装置50が設けられ、第2の接合装置50の下側の1箇所に実施例1に示した接合装置20が埋設された接合構造に関するものである。接合装置20については、上記実施例1に示したと同様であり、説明を省く。
【0029】
桁材41は、接合面41a側において上端面41b側から幅方向両側(図9の前後方向)を除いて下方に所定長さ切り欠かれて延びた直方体形状の切欠き部42を設けている。切欠き部42の幅は、後述する第2パイプ部材51の外径と略同一にされている。切欠き部42の下端側には、直角方向に貫通した上取付孔43が設けられている。上取付孔43は、桁材41の垂直な一側面41c側(図示左端)が、同軸状に形成されて端面から軸方向にわずかに延びた大径の取付口44になっている。上取付孔43には上記ボルト部材31がほぼ密着状態で挿入されるようになっている。上取付孔43の下方には、上記取付孔12と同様の下取付孔45が設けられている。
【0030】
梁材46は、一端面46aから上取付孔43の延長方向に端面に直角方向に延びたストレートな上挿通孔47を有している。梁材46の上面46bの所定位置には、下方に垂直に延びた貫通孔48が形成されている。上挿通孔47内には第2パイプ部材51が挿入され、貫通孔48には第2ピン部材58が挿嵌されるようになっている。上挿通孔47の下側には、下取付孔45の延長方向に延びた下挿通孔49が形成されている。
【0031】
第2の接合装置50は、第2パイプ部材51と第2ピン部材58と第2ボルト部材61とからなる。第2パイプ部材51は、図11,図12に示すように、上記パイプ部材21とほぼ同一形状であり金属製のストレートな円筒形の筒状本体52と、その軸方向一端側52a(図示左端)の内周面に同軸状に挿嵌されて溶接56により固定された上記取付孔部材25と同一の取付孔部材55とにより構成されている。筒状本体52は、軸方向他端側(図示右端)に寄った位置に、軸方向に貫通した円形の一対の係合孔53を設けている。係合孔53は、筒状本体52に穴あけ加工を施すことにより、径方向両側に設けられ、外周縁が外周面からわずかに凹んだ状態になっている。梁材46に設けた貫通孔48は、第2パイプ部材51の係合孔53に繋がっており、さらに接合装置20のパイプ部材21の係合長孔23を貫通している。貫通孔48に第2ピン部材58が挿嵌され、係合孔53及び係合長孔23に係合している。第2ボルト部材61は、上記ボルト部材31と同一である。
【0032】
上記構成の実施例2においては、垂直に配置された桁材41の上端側の側面に、上側から大型の梁材46を落としてその端面を接合させる際に、梁材46の上挿通孔47に挿入された第2パイプ部材51の一端側が突出しており、この突出部分が桁材41の上端側の切欠き部42内の底面上に載置される。また、切欠き部42の幅が第2パイプ部材51の外径と略同一であるため、第2パイプ部材51の幅方向の位置決めが精度よく行われる。これにより、重い梁材46が、第2パイプ部材51に支持されて、桁材41に簡単かつ精度よく位置合わせされる。この状態で、棒状の第2ピン部材58が梁材46の上面に設けた貫通孔48に挿入されて係合孔53を貫通し、さらにパイプ部材21の係合長孔23を貫通して梁材46に固定される。続いて、第2ボルト部材31が、桁材41の上取付孔43に一側面41c側から挿通されて、ネジ部33を取付孔部材55のネジ孔部に螺合させることにより取り付けられる。第2の接合装置50の下方に設けた上記接合装置20については、上述したように、桁材41の上取付孔43から第2ボルト部材61を挿入して、パイプ部材21の一端の取付孔部材25に螺合させることにより、第2パイプ部材51を接合面41aを跨いで収容孔部に引っ張り込まれる。
【0033】
その結果、実施例2においては、垂直に配置された桁材41の上端側に大型で重い梁材46を簡単にかつ精度よく位置合わせして接合させることができる。また、本実施例においては、上端近傍位置に第2の接合装置50の第2パイプ部材51と、接合装置20のパイプ部材21が、いずれも接合面を跨って配置されるため、重い梁材46による大きなせん断方向の重力を確実に受け止めることができる。なお、実施例2においては、貫通孔は1つでピン部材も一本とし、ピン部材の取り付けの手間を省いているが、両者を接合装置と第2の接合装置ごとに分けて設けることもできる。
【0034】
なお、上記実施例1,2に示した木製部材の接合構造は、桁材と梁材がT字上に組み合わされたものであるが、その他、例えば図13に示すように、T字状に組み合わされた2本の木製部材S1,S2に対して、斜めに補強する木製部材X1,X2を接合装置20で接合させることができる。さらに、図14に示すように、十字状に組み合わされた木製部材S3,S4に対して、斜めに補強する木製部材X3〜X6をそれぞれ接合装置20で接合させることができる。
【0035】
なお、上記実施例1,2においては、パイプ部材は、筒状本体と取付孔部材とが分けられているが、筒状本体に直接ネジ溝を設けることも可能である。その他、上記実施例に示した接合構造、接合装置については一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、ボルト部材が一方の木製部材の取付孔に挿通されて、ネジ部をパイプ部材先端の取付孔部に螺合させることにより、パイプ部材の一端側が接合面を跨って収容孔部内に引っ張り込まれた状態にされ、パイプ部材の先端側が両木製部材の接合面を跨いだ状態で配置されているため、両木製部材間の引張り方向の強度に加えてせん断方向の強度についてもパイプ部材で十分に確保されるので、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例1である桁材と梁材をT字上に接合させた接合構造を概略構成を示す斜視図である。
【図2】同接合構造の形成過程を示す正面断面図である。
【図3】同接合構造の最終状態を示す正面断面図である。
【図4】パイプ部材を示す正面図である。
【図5】パイプ部材を示す平面図である。
【図6】パイプ部材を示す左側面図である。
【図7】パイプ部材の形成過程を説明する一部破談正面図である。
【図8】変形例である取付孔部材を示す断面図である。
【図9】実施例2である桁材と梁材を接合させた接合構造を示す正面断面図である。
【図10】同接合構造を示す平面断面図である。
【図11】パイプ部材を示す平面図である。
【図12】パイプ部材を示す正面図である。
【図13】接合構造の他の例を示す平面図である。
【図14】接合構造のその他の例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0038】
11…桁材、12…取付孔、14…収容孔部、16…梁材、17…挿通孔、18…貫通孔、20…接合装置、21…パイプ部材、22…筒状本体、23…係合長孔、25,25A…取付孔部材、29…ピン部材、31…ボルト部材、41…桁材、42…切欠き部、43…上取付孔、45…下取付孔、46…梁材、47…上挿通孔、48…貫通孔、50…第2の接合装置、51…第2パイプ部材、52…筒状本体、53…係合孔、55…取付孔部材、58…第2ピン部材、61…第2ボルト部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの木製部材を互いに接合面で接合させる接合構造であって、一方の木製部材は、接合面から延びて反対面に開口した取付孔を有すると共に、該取付孔の接合面側が大径の収容孔部になっており、他方の木製部材は、該接合面から前記取付孔の延長方向に延びた前記収容孔部と同一径の挿通孔を有すると共に、一表面に該挿通孔を貫通して延びる貫通孔を有しており、
金属製の筒状本体の少なくとも一端側内周面がネジ溝を有する取付孔部になっており、該筒状本体の長手方向中間部に軸直角方向に貫通すると共に軸方向に延びた一対の係合長孔を有するパイプ部材が、前記他方の木製部材の挿通孔内に摺動可能に挿入されており、棒状のピン部材が該他方の木製部材に設けた貫通孔に挿入されて前記係合長孔を貫通して該他方の木製部材に固定されると共に、前記係合長孔に係合して前記パイプ部材を係合長孔の長さ範囲で長手方向に摺動可能にさせ、一端にネジ部を有し他端に前記取付孔の反対面側の開口に係合する係合端部を有するボルト部材が、前記一方の木製部材の取付孔に反対面側から挿通されて、前記ネジ部を前記取付孔部に螺合させて、前記パイプ部材の一端側を前記収容孔部まで引っ張り込んだことを特徴とする木製部材の接合構造。
【請求項2】
前記パイプ部材が、前記筒状本体と、該筒状本体の一端側内周面に挿嵌されて固定される筒状の取付孔部材とにより構成されており、該取付孔部材の軸孔が、一端側の大径の直孔部と、該直孔部に隣接した前記ボルト部材が螺合されるネジ孔部になっていることを特徴とする請求項1に記載の木製部材の接合構造。
【請求項3】
前記ピン部材が、円筒形で一端側が外周面にネジ溝を設けており、該一端側が径方向一方向にわずかに押しつぶされた断面長円形状にされたことを特徴とする請求項1又は2に記載の木製部材の接合構造。
【請求項4】
2つの木製部材が互いに接合面で接合し、接合面から延びて反対面に開口した取付孔を有し、該取付孔の接合面側が大径の収容孔部となっている一方の木製部材に、接合面から延びた取付孔の延長方向に延びた前記収容孔部と同一径の挿通穴を有すると共に一表面に該挿通孔を貫通して延びる貫通孔を有する一方の木製部材を接合させる接合装置であって、
金属製の筒状本体の少なくとも一端側が内周面にネジ溝を有する取付孔部になっており、該筒状本体の長手方向中間部に軸直角方向に貫通すると共に軸方向に延びた一対の係合長孔を有し、前記他方の木製部材の挿通孔に摺動可能に挿入されるパイプ部材と、
前記他方の木製部材に設けた貫通孔に挿入されて前記係合長孔を貫通して該木製部材に固定されると共に、該係合長孔に係合して前記パイプ部材を該係合長孔の長さ範囲で長手方向に摺動可能にさせるピン部材と、
一端にネジ部を有し他端に前記一方の木製部材の取付孔の開口に係合する係合端部を有し、該取付孔に反対面側から挿通されて、該ネジ部が前記取付孔部に螺合されて、前記パイプ部材の一端側を前記収容孔部まで引っ張り込むボルト部材と
を設けたことを特徴とする木製部材用接合装置。
【請求項5】
前記パイプ部材が、前記筒状本体と、該筒状本体の一端側内周面に挿嵌されて固定される別部材の筒状の取付孔部材とにより構成されており、該取付孔部材が、一端側の大径の直孔部と、該直孔部に隣接した前記ボルト部材が螺合されるネジ孔部になっていることを特徴とする請求項4に記載の木製部材用接合装置。
【請求項6】
前記ピン部材が、円筒形で一端側が外周面にネジ溝を設けており、該一端側が径方向一方向にわずかに押しつぶされた断面長円形状にされたことを特徴とする請求項4又は5に記載の木製部材用接合装置。
【請求項7】
垂直に配置された一方の木製部材の上端側の側面に、上側から他方の木製部材を落としてその端面を接合させ、両木製部材の上端近傍位置に設けた第2の接合装置と、該第2の接合装置の下側の少なくとも1箇所に埋設された前記請求項4に記載の接合装置とにより両木製部材が接合された木製部材の接合構造であって、
前記第2の接合部材が配設される前記他方の木製部材の上端近傍位置には、両木製部材の接合面から延びた第2挿通孔を有し、前記一方の木製部材は、接合面の上端近傍部分において直方体形状に切り欠かれ切欠き部を設けると共に、該切欠き部から前記第2挿通孔の延長方向に延びて反対面に開口した第2取付孔を有しており、
金属製の第2筒状本体の少なくとも一端側内周面がネジ溝を有する第2取付孔部になっており、該第2筒状本体の長手方向中間部に軸直角方向に貫通する一対の係合孔を有する第2パイプ部材が、前記他方の木製部材の第2挿通孔に挿入されると共に一端側が前記切欠き部内に配置されており、棒状の第2ピン部材が該他方の木製部材に設けた前記第2貫通孔に挿入されて前記係合孔を貫通して該木製部材に固定され、一端側にネジ部を有し他端側に前記第2取付孔開口に係合する係合端部を有する第2ボルト部材が、前記一方の木製部材の第2取付孔に反対面側から挿通されて、該ネジ部を前記第2取付孔部に螺合させたことを特徴とする木製部材の接合構造。
【請求項8】
前記第2貫通孔と貫通孔が一直線に形成されており、前記第2ピン部材とピン部材が一本にまとめられたことを特徴とする請求項7に記載の木製部材の接合構造。
【請求項1】
2つの木製部材を互いに接合面で接合させる接合構造であって、一方の木製部材は、接合面から延びて反対面に開口した取付孔を有すると共に、該取付孔の接合面側が大径の収容孔部になっており、他方の木製部材は、該接合面から前記取付孔の延長方向に延びた前記収容孔部と同一径の挿通孔を有すると共に、一表面に該挿通孔を貫通して延びる貫通孔を有しており、
金属製の筒状本体の少なくとも一端側内周面がネジ溝を有する取付孔部になっており、該筒状本体の長手方向中間部に軸直角方向に貫通すると共に軸方向に延びた一対の係合長孔を有するパイプ部材が、前記他方の木製部材の挿通孔内に摺動可能に挿入されており、棒状のピン部材が該他方の木製部材に設けた貫通孔に挿入されて前記係合長孔を貫通して該他方の木製部材に固定されると共に、前記係合長孔に係合して前記パイプ部材を係合長孔の長さ範囲で長手方向に摺動可能にさせ、一端にネジ部を有し他端に前記取付孔の反対面側の開口に係合する係合端部を有するボルト部材が、前記一方の木製部材の取付孔に反対面側から挿通されて、前記ネジ部を前記取付孔部に螺合させて、前記パイプ部材の一端側を前記収容孔部まで引っ張り込んだことを特徴とする木製部材の接合構造。
【請求項2】
前記パイプ部材が、前記筒状本体と、該筒状本体の一端側内周面に挿嵌されて固定される筒状の取付孔部材とにより構成されており、該取付孔部材の軸孔が、一端側の大径の直孔部と、該直孔部に隣接した前記ボルト部材が螺合されるネジ孔部になっていることを特徴とする請求項1に記載の木製部材の接合構造。
【請求項3】
前記ピン部材が、円筒形で一端側が外周面にネジ溝を設けており、該一端側が径方向一方向にわずかに押しつぶされた断面長円形状にされたことを特徴とする請求項1又は2に記載の木製部材の接合構造。
【請求項4】
2つの木製部材が互いに接合面で接合し、接合面から延びて反対面に開口した取付孔を有し、該取付孔の接合面側が大径の収容孔部となっている一方の木製部材に、接合面から延びた取付孔の延長方向に延びた前記収容孔部と同一径の挿通穴を有すると共に一表面に該挿通孔を貫通して延びる貫通孔を有する一方の木製部材を接合させる接合装置であって、
金属製の筒状本体の少なくとも一端側が内周面にネジ溝を有する取付孔部になっており、該筒状本体の長手方向中間部に軸直角方向に貫通すると共に軸方向に延びた一対の係合長孔を有し、前記他方の木製部材の挿通孔に摺動可能に挿入されるパイプ部材と、
前記他方の木製部材に設けた貫通孔に挿入されて前記係合長孔を貫通して該木製部材に固定されると共に、該係合長孔に係合して前記パイプ部材を該係合長孔の長さ範囲で長手方向に摺動可能にさせるピン部材と、
一端にネジ部を有し他端に前記一方の木製部材の取付孔の開口に係合する係合端部を有し、該取付孔に反対面側から挿通されて、該ネジ部が前記取付孔部に螺合されて、前記パイプ部材の一端側を前記収容孔部まで引っ張り込むボルト部材と
を設けたことを特徴とする木製部材用接合装置。
【請求項5】
前記パイプ部材が、前記筒状本体と、該筒状本体の一端側内周面に挿嵌されて固定される別部材の筒状の取付孔部材とにより構成されており、該取付孔部材が、一端側の大径の直孔部と、該直孔部に隣接した前記ボルト部材が螺合されるネジ孔部になっていることを特徴とする請求項4に記載の木製部材用接合装置。
【請求項6】
前記ピン部材が、円筒形で一端側が外周面にネジ溝を設けており、該一端側が径方向一方向にわずかに押しつぶされた断面長円形状にされたことを特徴とする請求項4又は5に記載の木製部材用接合装置。
【請求項7】
垂直に配置された一方の木製部材の上端側の側面に、上側から他方の木製部材を落としてその端面を接合させ、両木製部材の上端近傍位置に設けた第2の接合装置と、該第2の接合装置の下側の少なくとも1箇所に埋設された前記請求項4に記載の接合装置とにより両木製部材が接合された木製部材の接合構造であって、
前記第2の接合部材が配設される前記他方の木製部材の上端近傍位置には、両木製部材の接合面から延びた第2挿通孔を有し、前記一方の木製部材は、接合面の上端近傍部分において直方体形状に切り欠かれ切欠き部を設けると共に、該切欠き部から前記第2挿通孔の延長方向に延びて反対面に開口した第2取付孔を有しており、
金属製の第2筒状本体の少なくとも一端側内周面がネジ溝を有する第2取付孔部になっており、該第2筒状本体の長手方向中間部に軸直角方向に貫通する一対の係合孔を有する第2パイプ部材が、前記他方の木製部材の第2挿通孔に挿入されると共に一端側が前記切欠き部内に配置されており、棒状の第2ピン部材が該他方の木製部材に設けた前記第2貫通孔に挿入されて前記係合孔を貫通して該木製部材に固定され、一端側にネジ部を有し他端側に前記第2取付孔開口に係合する係合端部を有する第2ボルト部材が、前記一方の木製部材の第2取付孔に反対面側から挿通されて、該ネジ部を前記第2取付孔部に螺合させたことを特徴とする木製部材の接合構造。
【請求項8】
前記第2貫通孔と貫通孔が一直線に形成されており、前記第2ピン部材とピン部材が一本にまとめられたことを特徴とする請求項7に記載の木製部材の接合構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−41341(P2009−41341A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210305(P2007−210305)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(501377324)有限会社 宮田鉄工 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(501377324)有限会社 宮田鉄工 (4)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]