説明

根菜類収穫機の根菜類列検知装置

【課題】 センサの調整条件を極力減らせる簡易な構造にすることで茎葉等の夾雑物の絡まりを防止するとともに、畝からの接地負荷に対する追従性を高めることにより、根菜類列の検知精度を高めることができる根菜類収穫機の根菜類列検知装置を提供する。
【解決手段】 接触アーム3は、畝から受ける上方向の押圧力を吸収し得る弾性力を備えているとともに、所定の下向傾斜角で左右の内側方向に延設された接触先端部32と、この接触先端部32から左右の外側方向に湾出された湾曲部31とを有しており、接触先端部32が根菜類の頭側部に当接した場合、その当接力により湾曲部31を左右の外側方向に回動させてその回動変位を変位センサ5Aに伝達し、接触先端部32が畝に接触して下方から押圧された場合、その押圧力を湾曲部31の弾性力によって吸収して変位センサ5Aに伝達しないように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビート等の根菜類列の位置ズレを検知する根菜類列検知装置に関し、特に、畝等の地面との接触による誤検知を低減しつつも根菜類列の位置ズレを正確に検知するのに好適な根菜類収穫機の根菜類列検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ビート等の根菜類を収穫する場合、図17および図18に示すような根菜類収穫機11が使用されている。この根菜類収穫機11は、ヒッチ12を介してトラクタ(図示せず)に連結されているとともに、前記ヒッチ12と機体21とが方向変換装置である油圧シリンダ13で連結されている。また、機体21の下方には根菜類を掘り取るための堀取口22が設けられており、この堀取口22の前方に根菜類列を検知するセンサ14が設けられている。そして、このセンサ14が畝から露出した根菜類の頭部に接触して押動され、根菜類列に対する機体21のズレを検知すると、油圧シリンダ13を伸縮させて機体21の進行方向を変更し、堀取口22を根菜類列に位置合わせするようになっている。
【0003】
前述した根菜類列のセンサ14に関する技術として、例えば、特許第3564452号公報に記載のビートハーベスタのビート列感知装置が挙げられる(特許文献1)。このビート列感知装置では、センサ杆を枢着したスイッチボックス全体が平行リンクによって上下動自在に支持されている。そして、センサ杆がビートの側頭部に接触した場合には、リミットスイッチをONさせるとともに、センサ杆が畝に接地した場合には、接地抵抗でON位置に回動する前に地面からの負荷に反発して平行リンクを上方へ浮かせることによりリミットスイッチをOFF状態に維持して、畝との接触による誤作動を防止するものであるとされる。
【0004】
【特許文献1】特許第3564452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたようなビート列感知装置においては、ビートに接触したときにはリミットスイッチをONにし、畝に接地したときにはスイッチON位置まで回動する前に平行リンクを浮上させて接地抵抗を吸収させられる機構にするために、極めて微妙な機械的調整をしなければならない。つまり、特許文献1の明細書によれば、センサ杆の下方傾斜角と、センサ杆の接地時回動抵抗値と、センサ杆のフリー位置からON位置までの回動角度と、センサ杆の接地反発力と、平行リンクの上昇バランス抵抗とを総合的に調整した構成とすることによって達成されるものとある。このように多数の調整条件が揃ってはじめて正常に作動する構成であるため、検出精度を維持するのが格段に難しいという問題がある。特に、圃場での作業は振動や衝撃も大きいので多数の条件を精密に調整するには厳しい条件である。
【0006】
さらに、特許文献1で採用している上下方向の平行リンク機構は、ビートの茎葉等の夾雑物が絡まりやすい構造であるため、夾雑物が絡まると、平行リンクのスムーズな上下動が阻まれて接地抵抗を吸収できなくなり、畝と接触した場合であっても作物列に接触したものと誤検知してしまうという問題がある。
【0007】
また、平行リンク機構を採用すると、構造上、複雑になるため可動部分の重量が重くなり、高速で収穫作業をする場合の上下動作に対する追従性が悪くなって、誤作動の可能性が高まってしまう。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、センサの調整条件を極力減らせる簡易な構造にすることで茎葉等の夾雑物の絡まりを防止するとともに、畝からの接地負荷に対する追従性を高めることにより、根菜類列の検知精度を高めることができる根菜類収穫機の根菜類列検知装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る根菜類収穫機の根菜類列検知装置の特徴は、根菜類収穫機が収穫する根菜類列の両側に配置される一対の接触アームと、これら接触アームの変位を検知する変位センサとを有しており、この変位センサの出力信号に基づいて根菜類列の位置を検知する根菜類収穫機の根菜類列検知装置であって、前記接触アームは、畝から受ける上方向の押圧力を吸収し得る弾性力を備えているとともに、所定の下向傾斜角で左右の内側方向に延設された接触先端部と、この接触先端部から左右の外側方向に湾出された湾曲部とを有しており、前記接触先端部が根菜類の頭側部に当接した場合、その当接力により前記湾曲部を左右の外側方向に回動させてその回動変位を前記変位センサに伝達し、前記接触先端部が畝に接触して下方から押圧された場合、その押圧力を前記湾曲部の弾性力によって吸収して前記変位センサに伝達しないように構成されている点にある。
【0010】
また、本発明において、前記1対の接触アームは、Y字状に形成されたY字ブラケットの二股の先端部にそれぞれ固定されるとともに、このY字ブラケットの基端部が前記根菜類収穫機の機体に対して左右方向に揺動自在に支持されており、前記変位センサは、前記Y字ブラケットの回動変位に連動して回転する回転軸を有しており、この回転軸の回転角度および回転方向を検出することが好ましい。
【0011】
さらに、本発明において、畝を跨ぐようにして機体に固定される固定ブラケットと、この固定ブラケットの左右端部に回動自在に軸支される一対の回動ブラケットとを有しており、これら回動ブラケットの下方端部にはそれぞれ前記接触アームが固定されるとともに、これら各接触アームを初期位置に戻す方向に付勢する付勢部材が前記固定ブラケットに設けられており、前記変位センサは、前記各回動ブラケットの回動変位に連動して回転する回転軸を有し、この回転軸の回転角度を検出するようにしてもよい。
【0012】
また、本発明において、畝を跨ぐようにして機体に固定される固定ブラケットと、この固定ブラケットの左右端部に回動自在に軸支される一対の回動ブラケットと、これら回動ブラケットに軸支されて左右方向に揺動自在に連結される揺動ブラケットとから構成される平行リンク機構を有しており、前記一対の接触アームは、前記各回動ブラケットの下方端部に固定されて平行移動可能とされ、前記変位センサは、前記回動ブラケットの回動変位に連動して回転する回転軸を有し、この回転軸の回転角度および回転方向を検出するようにしてもよい。
【0013】
さらに、本発明において、畝を跨ぐようにして機体に固定される固定ブラケットと、この固定ブラケットの左右端部に回動自在に軸支される一対の回動ブラケットと、これら回動ブラケットに軸支されて左右方向に揺動自在に連結される揺動ブラケットとから構成される平行リンク機構を有しており、前記一対の接触アームは、前記各回動ブラケットの下方端部に固定されて平行移動可能とされ、前記変位センサは、前記回動ブラケットの近接状態および離隔状態を検出するようにしてもよい。
【0014】
また、本発明において、前記揺動ブラケットは、その左右方向の略中心位置に押動ピンを有しているとともに、この押動ピンの左右両側には、この押動ピンによって押し動かされる一対の押動ブラケットが前記固定ブラケットに回動自在に軸支されており、それら押動ブラケットには、前記押動ピンを初期位置に戻す方向に付勢する付勢部材が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、センサの調整条件を極力減らせる簡易な構造にすることで茎葉等の夾雑物の絡まりを防止するとともに、畝からの接地負荷に対する追従性を高めることにより、根菜類列の検知精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る根菜類収穫機の根菜類列検知装置の実施形態について図面を用いて説明する。なお、根菜類収穫機の構成のうち従来の構成と同一若しくは相当する構成については同一の符号を付して再度の説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明に係る根菜類列検知装置1Aを搭載した根菜類収穫機2の第1実施形態を示す側面図であり、図2から図4は、それぞれ本第1実施形態の根菜類列検知装置1Aの斜視図、側面図および平面図である。
【0018】
本第1実施形態の根菜類列検知装置1Aは、図1に示すように、根菜類収穫機2の進行方向において、堀取口22の前方に設けられている。そして、根菜類列検知装置1Aは、図2から図4に示すように、主として、ビート等の根菜類列の左右両側に配置される一対の接触アーム3と、これら接触アーム3を所定の下向傾斜角をもって機体21に支持するY字ブラケット4と、このY字ブラケット4を介して接触アーム3の変位を検知する変位センサ5Aとを有している。
【0019】
接触アーム3は、鉄等のようにバネ性のある弾性力を有する材料によって形成されており、接触アーム3が畝に接触した際に受ける押圧力を吸収し得る程度の弾性力を有している。また、接触アーム3は、図2から図4に示すように、左右対称に形成されており、左右の外側方向に湾出された弓形の湾曲部31と、この湾曲部31の先端から左右の内側方向に延出された触手のような接触先端部32とを有している。そして、前記湾曲部31の基端部がボルト等を介してY字ブラケット4に取り付けられている。
【0020】
また、左右の接触先端部32,32は、通常の初期位置では畝に接触しない高さに設定されているとともに、根菜類の頭側部が通過し得る間隔をもって配置されている。そして、その間隙が堀取口22に位置合わせされている。なお、本実施形態では、図3に示すように、湾曲部31および接触先端部32が適当な下向傾斜角で延設されている。
【0021】
Y字ブラケット4は、図2および図4に示すように、略Y字状に形成されており、二股の先端部41,41に接触アーム3を固定するとともに、その基端部42が機体21に対して左右方向に揺動自在に支持されている。また、変位センサ5Aは、ポテンショメータあるいはロータリーエンコーダから構成されており、回転軸51の回転量および回転方向に応じて位相の異なるパルスを出力し、このパルス信号をケーブル52を介して図1に示す方向制御手段15に送信するようになっている。
【0022】
そして、本第1実施形態では、図2および図3に示すように、Y字ブラケット4の基端部42近傍から回動伝達ピン43を突設させるとともに、この回動伝達ピン43と変位センサ5Aの回転軸51とを回動伝達ブラケット53で連結している。この回動伝達ブラケット53を介してY字ブラケット4の回転角度および回転方向が変位センサ5Aの回転軸51に伝達されるようになっている。
【0023】
つぎに、本第1実施形態における根菜類収穫機2の根菜類列検知装置1Aによる作用を説明する。
【0024】
まず、根菜類収穫機2によりビート等の収穫作業を行う場合、接触アーム3が根菜類列の両側に位置するように根菜類収穫機2を配置する。これにより、機体21の進行方向において、堀取口22が根菜類のほぼ後方に配置される。そして、根菜類列に沿って機体21を進行させたとき、その進行方向が根菜類列に沿っている場合には、図5に示すように、各接触アーム3,3の接触先端部32,32が根菜類の頭側部に接触することなく、その両側を通過する。このため、根菜類列検知装置1Aは作動せず、機体21はその進行方向を変更することなく直進し、根菜類を収穫する。
【0025】
一方、畝の曲折地点あるいは作物列のズレなどによって、根菜類列の向きが機体21の進行方向とずれる場合、左右の接触アーム3,3のいずれかが根菜類の頭側部に接触する。具体的には、図6に示すように、根菜類列が進行方向に対して右側にずれる場合、右側の接触先端部32が根菜類の頭側部に当接する。これにより、当該接触先端部32は右外側方向の押圧力を受けて湾曲部31の付け根に連結されているY字ブラケット4を反時計回りに回動させる。同様に、根菜類列が進行方向に対して左側にずれる場合は、図7に示すように、左側の接触先端部32が根菜類の頭部に当接する。これにより、当該接触先端部32は左外側方向の押圧力を受けて湾曲部31の付け根に連結されているY字ブラケット4を時計回りに回動させる。
【0026】
なお、本第1実施形態では、接触先端部32がなだらかな角度で下向傾斜されつつ左右の内側方向に延設されている。このため、機体21の進行方向からずれた根菜類と確実に当接し、根菜類列の急激な方向変化にも対応し得るようになっている。
【0027】
つづいて、上記のようにY字ブラケット4が回動されると、これに突設されている回動伝達ピン43も回動し、回動伝達ブラケット53を介して変位センサ5Aの回転軸51が回転する。これにより、変位センサ5Aが回転軸51の回転方向および回転量を回動変位として取得し方向制御手段15に出力する。方向制御手段15は、取得した回転方向および回転量に応じてヒッチ12に連結されている油圧シリンダ13を伸縮させ、機体21の進行方向を根菜類列に沿う方向に変更させる。
【0028】
具体的には、Y字ブラケット4が反時計回りに回動された場合、根菜類列が右方向にずれていること検知し、取得した回転量に応じて機体21を右方向へ方向変更させる。同様に、Y字ブラケット4が時計回りに回動された場合には、根菜類列が左方向にずれていること検知し、取得した回転量に応じて機体21を左方向へ方向変更させる。これにより、機体21の進行方向が、自動的に根菜類列に位置合わせされるため、堀取口22によって根菜類を確実に掘り出せるようになっている。なお、本第1実施形態において、取得した回転量と油圧シリンダ13の伸縮量の関係は、予め方向制御手段15に設定されている。
【0029】
一方、接触アーム3の接触先端部32が畝に接触した場合、接触アーム3の弾性力が小さければ、畝との間の接地抵抗により左右方向の押圧力を受け、Y字ブラケット4が回動してしまうおそれがある。しかしながら、本第1実施形態の接触アーム3は、畝から受ける上方向の押圧力を吸収し得る弾性力を備えるとともに、左右の外側方向に湾出される湾曲部31を有している。このため、仮に接触先端部32が畝や畝中の突起や石に接触した場合でも、図8に示すように、湾曲部31が容易に上方向に弾性変形して接触抵抗を吸収するため、接触抵抗による変位を変位センサ5Aに伝達しない。これにより、接触アーム3が畝に接触した際の誤検知が防止されるようになっている。
【0030】
以上のような本第1実施形態によれば、簡易な構造であるため、使用する際の調整や設定が容易であるとともに、茎葉等の夾雑物が絡まりにくい構造である。また、接触アーム3が畝からの接地抵抗を確実かつ効率的に吸収するため、上下動の追従性を高めるとともに根菜類列の誤検知を防止することができる。
【0031】
つぎに、本発明に係る根菜類列検知装置1Bの第2実施形態について図面を用いて説明する。
【0032】
図9および図10は、本第2実施形態の根菜類列検知装置1Bを示す斜視図および背面図である。なお、本第2実施形態のうち、前述した第1実施形態の構成と同一若しくは相当する構成については同一の符号を付して再度の説明を省略する。
【0033】
本第2実施形態の根菜類列検知装置1Bの特徴は、一対の接触アーム3,3のそれぞれに変位センサを設けている点にある。具体的には、図9に示すように、畝を跨ぐようにして機体21に固定される平面略十字形状の固定ブラケット6Bを備えているとともに、この固定ブラケット6Bに回動自在に軸支された一対の回動ブラケット7B,7Bの下端部に各接触アーム3,3が固定されている。そして、図10に示すように、ポテンショメータあるいはロータリーエンコーダから構成される変位センサ5Aが、各回動ブラケット7B,7Bの回転軸51,51に設けられている。また、本第2実施形態では、図9および図10に示すように、各回動ブラケット7B,7Bにおいて回転軸51よりも接触アーム3側に突設された引張ピン71と、固定ブラケット6Bの十字形状をなす中央下端部61とが、それぞれ引張バネ8からなる付勢部材8により連結されている。
【0034】
以上の構成により、接触アーム3の接触先端部32に根菜類が当接すると、左右の接触アーム3,3を支持する回動ブラケット7B,7Bがそれぞれ独立して左右の外側方向に回動する。このとき、各変位センサ5A,5Aは、各回動ブラケット7B,7Bの回転量を回動変位として取得し方向制御手段15に出力する。なお、本第2実施形態では、変位センサ5Aが左右それぞれの接触アーム3,3に設けられているため、特に回転方向を別途判別する必要はない。また、接触アーム3が外側に回動されると、回動ブラケット7Bの引張ピン71により引張バネ8が引っ張られるため、この引張バネ8の復元力により、接触アーム3が迅速に初期位置に戻るようになっている。
【0035】
以上のような本第2実施形態によれば、本第1実施形態の効果と同様、簡易な構造により機構の精度調整や設定が容易であるとともに、茎葉等の夾雑物が絡まりにくくできる。また、接触アーム3が畝からの接地抵抗を確実かつ効率的に吸収し、付勢部材8を加えることで上下動の追従性をより高めるとともに根菜類列の誤検知を防止することができる。
【0036】
つぎに、本発明に係る根菜類列検知装置1Cの第3実施形態について図面を用いて説明する。
【0037】
図11および図12は、それぞれ本第3実施形態の根菜類列検知装置1Cを示す斜視図および背面図であり、図13は、本第3実施形態の根菜類列検知装置1Cを示す一部拡大図である。なお、本第3実施形態のうち、前述した各実施形態の構成と同一若しくは相当する構成については同一の符号を付して再度の説明を省略する。
【0038】
本第3実施形態の根菜類列検知装置1Cの特徴は、機体21の進行方向に対して左右方向に平行移動可能な平行リンク機構Hによって一対の接触アーム3を支持している点にある。具体的には、図11から図13に示すように、平行リンク機構Hは、畝を跨ぐようにして機体21に固定される平板状の固定ブラケット6Cと、この固定ブラケット6Cの左右端部に回動自在に軸支される一対の回動ブラケット7C,7Cと、これら回動ブラケット7C,7Cに軸支されて左右方向に揺動自在に連結される揺動ブラケット9とから構成されている。
【0039】
各接触アーム3,3は、各回動ブラケット7C,7Cの下方端部に固定され、この回動ブラケット7Cの揺動に伴って左右方向に平行移動するようになっている。また、変位センサ5Aは、ポテンショメータあるいはロータリーエンコーダから構成されており、図12に示すように、固定ブラケット6Cに対する各回動ブラケット7C,7Cの回転軸51,51のうち、いずれか一方の回転軸51に設けられている。
【0040】
また、本第3実施形態では、揺動ブラケット9の左右方向の略中心位置に押動ピン91が突設されているとともに、この押動ピン91の左右両側に一対の押動ブラケット10,10が配置されている。これら押動ブラケット10,10は前記押動ピン91によって押し動かされるようになっている。また、前記押動ブラケット10,10は、互いに左右対称に形成されており、上方に延出された上方当接部101と、下方に延出された下方当接部102とを有している。
【0041】
また、固定ブラケット6Cには、各押動ブラケット10,10を上下に重ねつつ回動自在に軸支する回動ピン62が突設されている。また、この回動ピン62の上下位置には、押動ブラケット10の上方当接部101および下方当接部102に当接して各押動ブラケット10,10の回動範囲を規制するストッパーピン63が突設されている。そして、各押動ブラケット10,10と固定ブラケット6Cとは、引張バネ8からなる付勢部材8により連結されており、常に押動ピン91を左右の中心位置である初期位置に戻す方向に下方当接部102を付勢している。
【0042】
以上の構成により、接触アーム3の接触先端部32に根菜類が当接すると、左右の接触アーム3,3を支持する回動ブラケット7C,7Cが同期して左右の外側方向に回動する。このとき、変位センサ5Aは、回動ブラケット7Cの回転方向および回転量を回動変位として取得し方向制御手段15に出力する。また、揺動ブラケット9が左右方向に平行移動すると、押動ピン91に押動された押動ブラケット10が引張バネ8のバネ力に対抗しつつ回動する。このとき、上方当接部101の回動方向にストッパーピン63が設けられているため、押動ブラケット10の過回動が防止される。また、引張バネ8の復元力により、揺動ブラケット9が迅速に初期位置に戻るようになっており、この場合にも、下方当接部102の回動方向にストッパーピン63が設けられているため、押動ブラケット10の過回動が防止される。
【0043】
以上のような本第3実施形態によれば、接触アーム3によって上下方向の追従性を高めるとともに、平行リンク機構Hと付勢部材8により左右方向の追従性も高められるため、根菜類列の検知精度を向上することができ、正確に根菜類列をトレースすることができる。
【0044】
つぎに、本発明に係る根菜類列検知装置1Dの第4実施形態について図面を用いて説明する。
【0045】
図14および図15は、それぞれ本第4実施形態の根菜類列検知装置1Dを示す斜視図および背面図であり、図16は、本第4実施形態の根菜類列検知装置1Dを示す一部拡大図である。なお、本第4実施形態のうち、前述した各実施形態の構成と同一若しくは相当する構成については同一の符号を付して再度の説明を省略する。
【0046】
本第4実施形態の根菜類列検知装置1Dの特徴は、変位センサ5Dとして、磁気式の近接センサ5Dを使用する点にある。この近接センサ5Dは、図示しない検出コイルから高周波磁界を発生させており、この高周波磁界に近接する金属を検出するようになっている。具体的には、高周波磁界に金属が近接すると、この金属中に誘導電流が流れるため、この誘導電流により検出コイルのインピーダンスが変化し、発振が停止する。そして、この発振状態の変化をON/OFF信号で出力するようになっている。
【0047】
本第4実施形態では、図14から図16に示すように、固定ブラケット6Dの右端部から上方にかけてセンサ取付部64が延設されており、このセンサ取付部64の上端部に一対の近接センサ5D,5Dが設けられている。これら近接センサ5D,5Dは、左右方向に所定の間隔を隔てて配置されており、初期位置にある回動ブラケット7Dの左右両側に配置されるようになっている。また、各回動ブラケット7Dは所定の金属材料で形成されているとともに、初期位置において近接センサ5Dから離隔するとともに、左右方向に回動されたとき、近接センサ5Dと近接するように固定ブラケット6Dに軸支されている。
【0048】
以上の構成により、接触アーム3の接触先端部32に根菜類が当接すると、左右の接触アーム3を支持する回動ブラケット7Dが同期しつつ左右の外側方向に回動する。そして、所定の角度以上回動したとき、回動ブラケット7Dの上端部が左右いずれかの近接センサ5Dに近接するため、当該近接センサ5DがON信号を方向制御手段15に出力する。また、接触アーム3が左右の中心位置に戻ってくると、回動ブラケット7Dの上端部が近接センサ5Dから離隔するため、当該近接センサ5DはOFF信号を方向制御手段15に出力するようになっている。
【0049】
以上のような本第4実施形態によれば、非接触型の変位センサ5Dにより、土や油で汚れても、確実に接触アーム3の回動を検知できるとともに、応答速度を向上させ、装置を長寿命化させることができる。
【0050】
なお、本発明に係る根菜類収穫機2の根菜類列検知装置1A〜1Dは、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。例えば、本第2実施形態から第4実施形態では、付勢部材8を用いて、接触アーム3が迅速に初期位置に復帰するように構成されているが、これに限られるものではなく、接触アーム3が自重により初期位置に戻るように構成されていれば、付勢部材8を設ける必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る根菜類列検知装置を搭載した根菜類収穫機の第1実施形態を示す側面図である。
【図2】本第1実施形態の根菜類列検知装置を示す斜視図である。
【図3】本第1実施形態の根菜類列検知装置を示す側面図である。
【図4】本第1実施形態の根菜類列検知装置を示す平面図である。
【図5】本第1実施形態において、根菜類列が進行方向と一致する状態を示す図である。
【図6】本第1実施形態において、根菜類列が進行方向に対して右側にずれた状態を示す図である。
【図7】本第1実施形態において、根菜類列が進行方向に対して左側にずれた状態を示す図である。
【図8】本第1実施形態において、接触アームが畝に接触した状態を示す図である。
【図9】本第2実施形態の根菜類列検知装置を示す斜視図である。
【図10】本第2実施形態の根菜類列検知装置を示す背面図である。
【図11】本第3実施形態の根菜類列検知装置を示す斜視図である。
【図12】本第3実施形態の根菜類列検知装置を示す背面図である。
【図13】本第3実施形態の根菜類列検知装置を示す一部拡大図である。
【図14】本第4実施形態の根菜類列検知装置を示す斜視図である。
【図15】本第4実施形態の根菜類列検知装置を示す背面図である。
【図16】本第4実施形態の根菜類列検知装置を示す一部拡大図である。
【図17】従来の根菜類収穫機を示す側面図である。
【図18】従来の根菜類収穫機を示す平面図である。
【符号の説明】
【0052】
1A,1B,1C,1D 根菜類列検知装置
2 根菜類収穫機
3 接触アーム
4 Y字ブラケット
5A 変位センサ(ポテンショメータあるいはロータリーエンコーダ)
5D 変位センサ(近接センサ)
6B,6C,6D 固定ブラケット
7B,7C,7D 回動ブラケット
8 付勢部材(引張バネ)
9 揺動ブラケット
10 押動ブラケット
11 従来の根菜類収穫機
12 ヒッチ
13 油圧シリンダ
14 センサ
15 方向制御手段
21 機体
22 堀取口
31 湾曲部
32 接触先端部
41 先端部
42 基端部
43 回動伝達ピン
51 回転軸
52 ケーブル
53 回動伝達ブラケット
61 中央下端部
62 回動ピン
63 ストッパーピン
64 センサ取付部
71 引張ピン
91 押動ピン
101 上方当接部
102 下方当接部
H 平行リンク機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
根菜類収穫機が収穫する根菜類列の両側に配置される一対の接触アームと、これら接触アームの変位を検知する変位センサとを有しており、この変位センサの出力信号に基づいて根菜類列の位置を検知する根菜類収穫機の根菜類列検知装置であって、
前記接触アームは、畝から受ける上方向の押圧力を吸収し得る弾性力を備えているとともに、所定の下向傾斜角で左右の内側方向に延設された接触先端部と、この接触先端部から左右の外側方向に湾出された湾曲部とを有しており、前記接触先端部が根菜類の頭側部に当接した場合、その当接力により前記湾曲部を左右の外側方向に回動させてその回動変位を前記変位センサに伝達し、前記接触先端部が畝に接触して下方から押圧された場合、その押圧力を前記湾曲部の弾性力によって吸収して前記変位センサに伝達しないように構成されていることを特徴とする根菜類収穫機の根菜類列検知装置。
【請求項2】
請求項1において、前記1対の接触アームは、Y字状に形成されたY字ブラケットの二股の先端部にそれぞれ固定されるとともに、このY字ブラケットの基端部が前記根菜類収穫機の機体に対して左右方向に揺動自在に支持されており、
前記変位センサは、前記Y字ブラケットの回動変位に連動して回転する回転軸を有しており、この回転軸の回転角度および回転方向を検出することを特徴とする根菜類収穫機の根菜類列検知装置。
【請求項3】
請求項1において、畝を跨ぐようにして機体に固定される固定ブラケットと、この固定ブラケットの左右端部に回動自在に軸支される一対の回動ブラケットとを有しており、これら回動ブラケットの下方端部にはそれぞれ前記接触アームが固定されるとともに、これら各接触アームを初期位置に戻す方向に付勢する付勢部材が前記固定ブラケットに設けられており、前記変位センサは、前記各回動ブラケットの回動変位に連動して回転する回転軸を有し、この回転軸の回転角度を検出することを特徴とする根菜類収穫機の根菜類列検知装置。
【請求項4】
請求項1において、畝を跨ぐようにして機体に固定される固定ブラケットと、この固定ブラケットの左右端部に回動自在に軸支される一対の回動ブラケットと、これら回動ブラケットに軸支されて左右方向に揺動自在に連結される揺動ブラケットとから構成される平行リンク機構を有しており、
前記一対の接触アームは、前記各回動ブラケットの下方端部に固定されて平行移動可能とされ、前記変位センサは、前記回動ブラケットの回動変位に連動して回転する回転軸を有し、この回転軸の回転角度および回転方向を検出することを特徴とする根菜類収穫機の根菜類列検知装置。
【請求項5】
請求項1において、畝を跨ぐようにして機体に固定される固定ブラケットと、この固定ブラケットの左右端部に回動自在に軸支される一対の回動ブラケットと、これら回動ブラケットに軸支されて左右方向に揺動自在に連結される揺動ブラケットとから構成される平行リンク機構を有しており、
前記一対の接触アームは、前記各回動ブラケットの下方端部に固定されて平行移動可能とされ、前記変位センサは、前記回動ブラケットの近接状態および離隔状態を検出することを特徴とする根菜類収穫機の根菜類列検知装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5において、前記揺動ブラケットは、その左右方向の略中心位置に押動ピンを有しているとともに、この押動ピンの左右両側には、この押動ピンによって押し動かされる一対の押動ブラケットが前記固定ブラケットに回動自在に軸支されており、それら押動ブラケットには、前記押動ピンを初期位置に戻す方向に付勢する付勢部材が設けられていることを特徴とする根菜類列検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−345835(P2006−345835A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179972(P2005−179972)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000222978)東洋農機株式会社 (27)
【Fターム(参考)】