機能調整式義足
義足(124)は足竜骨(165)および前記足竜骨に連結された腓脛部を含み、義足の足関節部を形成する。装置(125)は前記腓脛部の上端と前記義足の下部の間に連結され、前記義足の使用時に前記腓脛部の上端の後ろへの動きに力を補填し、前記腓脛部の上記上端の前への動きを制御するために使われる。前期装置(125)は歩行中の前記腓脛部の前記上端の前への動きに伴う力が負荷されたときエネルギーを蓄え、力から解放されたとき蓄えたエネルギーを戻して、運動力として歩行中に義足が発生した使用者の体への推進力が加えられるばねを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動的応答能力を備え、これらの能力が負荷された力の力学系に応答するように調整されたとき、優れた動的応答能力を発揮することができる高性能な義足に関する。
【背景技術】
【0002】
下肢補綴用の無関節義足は、マーチン(Martin)その他の米国特許第5897594号に開示されている。人の足関節の機能に近づけるために剛構造の義足に関節を設けてきたそれ以前の解決策とは異なり、マーチンその他の無関節義足は、足形成形物の内部に弾性を有する足挿入体を配置している。足挿入体は、縦断面で見たとき凹面部が後を向いた概ねC字形に形成されていて、補綴部に掛かる負荷をC字形挿入体の上端で支承し、そして、C字形挿入体の下端を介してその負荷を連結された板ばねに伝達するように構成されている。板ばねは、下から見た形状は凸状であり、足挿入体より前の足先端部まで足底部に対して概ね平行に延出している。マーチンその他による発明は、使用者が自然な歩行ができるよう無関節義足の踵部の衝撃緩衝能力、弾性、踵からつま先への歩行、および横安定性を改良するという目的に基づいており、使用者に通常の歩行だけではなく、肉体的運動をすることや、スポーツを楽しむことができるようにすることを意図している。しかし、この公知の義足は、動的応答特性に制限がある。したがって、足切断者が、たとえばランニング、跳躍、短距離走、スターティング、停止、および中断のような競技上の運動能力を向上させることができる改良された応用力学的構造を有するより高性能な義足が求められている。
【0003】
別の義足がヴァン・L・フィリップス(Van L. Phillips)によって提案されており、それは、先行技術による義足の構造上の制限と、そのための不十分な性能のために従来は不可能であった種々の運動を、足切断者に行うことができるようにするための迅速性と運動特性とを付与するものである、と主張されている。ランニング、跳躍、およびその他の運動がこれらの公知の義足によって可能になり、また、これらの義足は、使用者の正常な側の足と同様に使用することができる、と報告されている。例として、米国特許第6071313号、同第5993488号、同第5899944号、同第5800569号、同第5800568号、同第5728177号、同第5728176号、同第5824112号、同第5593457号、同第5514185号、同第5181932号、および同第4822363号を参照されたい。
【発明の開示】
【0004】
足を切断した運動選手により高いレベルの競技ができるようにするために、改良された応用力学的構造を有する高性能義足が求められており、高性能義足は、人の足を凌ぐことが可能であり、また、先行技術による義足をも凌ぐことができる。足を切断した運動選手にとっては、改良された応用力学的構造、高低の動的応答性、および実際的には課題に応じて変わる運動の水平成分と垂直成分を向上させるための微調整が可能なアライメントの調節機能を備えた高性能義足を入手することが関心事である。
【0005】
本発明による義足は、これらの求めに応じたものである。ここに開示した実施形態の一例によると、本発明による義足は、一方の端部側の足前部、他方の端部側の足後部、および足前部と足後部のあいだに延在するとともに、上向きに湾曲した比較的長い足中央部を含んで縦方向に延在する足竜骨を有する。腓脛部は、また、下向きに突出するように湾曲した下部を有する。腓脛部の湾曲した下部が、調節式締結構造を介して足竜骨の上向きに湾曲した足中央部に取り付けられて、義足の足関節部を形成する。
【0006】
調節式締結構造を採用しているために、腓脛部と足竜骨とのアライメントは、義足の性能を調節するために足竜骨の縦方向で互いに調節することが可能である。互いに対向して配置されている足竜骨の上向きに湾曲した足中央部と腓脛部の下向きに突出するように湾曲した下部との足竜骨の縦方向のアライメントを調節することによって、義足の動的応答特性と運動性能とを、必要・所望の水平方向および垂直方向の線形速度と関連して特定の課題を達成するように変更することができる。高低の動的応答能力はもとより双方向への作動特性を有する多用途義足がここに開示され、これらの能力と特性は、スポーツおよび/または娯楽活動に参加する足切断者の機能を向上させるものである。また、特に短距離走用の義足も開示される。
【0007】
義足は、また、義足の使用時に腓脛部に対する力の負荷または腓脛部の力からの解放に応じて運動する腓脛部の上端の運動の範囲を制限するための装置を含むことができる。一実施形態において、装置は、腓脛部の上端と下端に連結されたピストンとシリンダを含むユニットであり、当該ユニットは、運動の範囲を制限するとともに、腓脛部の圧縮と伸張のときに貯蔵されるまたは放出されるエネルギーを吸収して緩衝するために、少なくとも一種類の加圧流体が充填されている。別の実施形態においては、後部腓装置が、義足に対する力の負荷時にそれ自身の位置エネルギーを蓄え、そして、蓄えたエネルギーを力からの解放時に戻して弾性エネルギーの総貯蔵能力に追加することによって、歩行中に義足が推進力として発生する動力を増大させる。
【0008】
本発明のこれらの並びにその他の目的、特徴、および利点は、開示した本発明の例示としての実施形態についての以下の詳細な説明と添付図面とを検討することによってより明白になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
ここで図を参照すると、図3〜図5に例示した実施形態において、義足1は、一方の端部側の足前部3、他方の端部側の足後部4、および足前部と足後部のあいだに延在する上向きに湾曲した足中央部5を含み縦方向に延在する足竜骨2を有することが判る。足中央部5は、この例示した実施形態において、足前部と足後部のあいだの縦方向の全長に亘って上向きに突出するように湾曲している。
【0010】
義足1の直立した腓脛部6の下向きに突出するように湾曲した下部7が、着脱式固締具8と連結要素11によって足竜骨の足中央部5に隣接する後部面に取り付けられる。固締具8は、例示した実施形態においてはナットとワッシャを有する単一のボルトであるが、締め付けられたときに足竜骨に配置された腓脛部を確実に保持可能な着脱式のクランプまたはその他の固締具であってもよい。
【0011】
縦方向に伸びた開口9が、足竜骨の足中央部5に隣接する後部面に形成されている(図8参照)。また、縦方向に伸びた開口10が、たとえば図15に示したような腓脛部6の湾曲した下部7に形成されている。着脱式の固締具8は開口9,10を貫通して延在しており、これにより、特定の課題を達成するよう義足の性能を調整するために固締具8が緩められたときまたは取り外されたとき、図5に線A−Aで示した縦方向における腓脛部と足竜骨とのアライメントの調節が可能になる。したがって、固締具8、連結要素11、および縦方向に伸びた開口9,10は、腓脛部を足竜骨に取り付けるための調節可能な締結構造を構成するとともに、義足の足関節部を形成する。
【0012】
腓脛部6と足竜骨2とのアライメントを調節することの意味は、足竜骨の足中央部5と腓脛部6の対向する位置に隣接して配置されたドーム状つまり突出するように湾曲した面を表す二つの曲率半径R1,R2が隣接して示されている図1と図2を検討することによって理解できるであろう。そのような二つの曲率半径を隣接させて検討すると、運動可能な方向は、二つの曲率半径のあいだに引かれた図1では接線Aに、図2では接線A1に直交する方向に存在することが判る。これら二つの曲率半径の相互関係が、結果として生ずる運動の方向を決定する。したがって、義足1に対する動的応答力の負荷は、この関係に依存する。凹面の曲率半径が大きければ大きいほど、動的応答能力が大きくなる。一方、極率半径が小さければ小さいほど、急速な応答が可能になる。
【0013】
本発明による義足の腓脛部と足竜骨とのアライメントが調節可能であるために、競技時の義足の水平方向または垂直方向の線型速度に影響を与えるために湾曲した面の位置を移動させることができる。たとえば、義足1の水平方向における線型速度の性能を向上させるために、腓脛部の湾曲した面と足竜骨の湾曲した面との関係に影響を与えるようアライメントを調節することが可能である。つまり、水平方向の線型速度特性を向上させるために、図1と対比させて図2に示すように、下側、即ち足竜骨、の曲率半径R2を有する湾曲した面の位置を出発位置より遠位に位置させることができる。これによって、義足1の動的応答特性と運動性能とを水平方向により強く振り向け、結果として、負荷された力の大きさが同じ場合、水平方向により大きい線型速度を発生させることができる。
【0014】
足切断者は、水平方向と垂直方向の線型速度に関連する各人の必要性を満たすよう、各々の競技に合った設定を練習を通して見出すことができる。たとえば、ジャンパーとバスケットボールの選手は、短距離走者より垂直方向のより大きい跳躍を必要とする。連結要素11は、プラスチック製または合金製のアライメント用の連結部材であり(図3、図4および図23参照)、取り付けられた足竜骨2と腓脛部6のあいだに挟み込まれている。着脱式固締具8は、連結要素の開口12を貫通している。連結要素は、腓脛部の取付部と足竜骨の足中央部5に隣接した後部面に沿って延在する。
【0015】
腓脛部6の湾曲した下部7は、放物線形であり、放物線の最小曲率半径部が下部に配置されるとともに、下部からは、上向きに、そして、最初は放物線形になるよう前に延出する。後を向いた凹面部が、図3に示したように腓脛部が湾曲することによって形成されている。放物線形の有利さは、下端に小さい曲率半径部を設けることによって応答特性を迅速なものにしつつも、その隣接した終端部に比較的大きい曲率に付随する増大した水平方向の線型速度を発生させるための動的応答特性を向上させる、という点にある。放物線形の上部の大きい曲率半径部は、図1と図2を参照して説明した接線Aがアライメントを変更したときにより大きく水平方向を向くように維持することが可能であり、これにより、水平方向の線型速度が増大する。
【0016】
放物線形の腓脛部は、人の歩行中にそれ自体を圧縮するまたはそれ自体がコイル状になることによって最初の接地に対する地面からの反力に対応する。この事は、放物線の曲率半径を小さくし、その結果、圧縮に対する抵抗が小さくなる。逆に、人の歩行中に放物線形の腓脛部が踵離地時の地面からの反力(GRFs)に対して伸張することによって応答する場合、この事は、放物線の曲率半径を大きくし、その結果、抵抗が、先に述べた圧縮時の抵抗よりはるかに大きくなる。これらの抵抗は、人の歩行中の人体の前方と後方の腓腹筋群の機能に関係している。人の歩行中の最初の足底接地時には、前方の小さい腓腹筋群が偏倚して収縮することによってGRFsに応答して足を地面にまで下げ、そして、背屈モーメントを発生する。足底接地から足尖離地のあいだにおいては、後方の大きい腓腹筋群が同様に偏倚して収縮することによってGRFsに応答し、そして、足底による大きい屈曲モーメントが発生する。このモーメントの大きさは、腓の前部と後部の筋群の大きさの差に関係している。したがって、背屈に対する義足の腓脛部の抵抗と人の歩行中の足底に発生する屈曲モーメントとを近似させることによって、正常な歩行が可能になる。放物線の曲率を変えることによって抵抗を変更できるために、義足の腓脛部を、人が歩行、ランニング、および跳躍をするときの人体の腓腹筋群の機能に近づけることによって、義足の効率化を達成することが可能になる。
【0017】
人は時速約4.8km(3マイル)の速さで歩く。1.6km(1マイル)を4分で走る走者は時速19.2km(12マイル)で走り、100mを10秒で走る短距離走者は時速33.6km(21マイル)で疾走することになる。これは、1対4対7の割合である。各々の課題に求められる水平成分は、運動の速度が上がるにしたがって大きくなる。したがって、義足の腓脛部の曲率の大きさを予め決定することが可能である。歩行者は、腓脛部の放物線の曲率半径を中距離走者と短距離走者のそれより小さくすることが必要である。短距離走者は、歩行者の場合より7倍も大きい腓脛部の放物線の曲率が必要である。この関係は、歩行者、ランナー、および短距離走者の各々について放物線の曲率を決定する方法を表している。短距離走者は大きい範囲の運動を行うことが求められているために、彼ら用の腓脛部は、この運動に伴って増大する負荷を支承することができるよう強力でなければならないが、これは、重大なことである。広いあるいは大きい放物線形の腓脛部は比較的平らな曲率を有するが、この腓脛部は、運動の範囲が広がるにつれて構造上より大きい強度を有しなければならない。
【0018】
支柱用アダプタ13は、腓脛部6の上部に固締具14によって連結されている。同様に、アダプタ13は、支柱15の下部に固締具16によって固定されている。支柱15は、下肢端部に装着された支持構造体(図示せず)によって足切断者の下肢に締結される。
【0019】
足竜骨2の足前部、足中央部、および足後部は、例示した実施形態において弾性を有する材料を用いて一体に形成されている。たとえば、地面からの反力によって変形させられたとき復元する特性を有する硬質の材料、具体的にはプラスチック、を用いることができる。より具体的には、足竜骨と腓脛部とは、ポリマーの母材に積層された補強用ファイバを有する積層複合材を用いて形成することができる。特に、エポキシ系熱硬化性樹脂、射出成形に用いられるデルラン(Delran)(登録商標)という商品名のプラスチック、または脱気したポリウレタン共重合体に積層された高強度グラファイトを、足竜骨と腓脛部との形成に用いてもよい。これらの材料に関係する機能上の特性は、軽量で最小のクリープを有しながら大きい強度を備えることである。熱硬化性エポキシ樹脂は、義足業界の基準にしたがって真空の元で積層される。ポリウレタン共重合体は凹型の金型に流し込まれ、押し出し成形されたプラスチックは、機械加工することができる。用いられる材料は、各々好都合な点と不都合な点とを有する。足竜骨と腓脛部用の積層複合材は、また、補強用ファイバと機械的伸びを良好にするための熱可塑性ポリマーの母材とを有し、業界の基準にしたがって製造された熱形成型(プレプレッグ)の積層複合材であることが好都合であることが見出された。この種の好適で市販されている複合材は、メリーランド州アーヴル・デュ・グレースのサイテック・ファイバライト社(Cytec Fiberite Inc.)が製造しているCYLON(登録商標)である。また、腓脛部と足竜骨は、たとえば、ばね鋼、ステンレススチール、チタン合金、またはその他の合金のような弾性を有する金属材料を用いて形成することも可能である。
【0020】
弾性を有する材料の物理的性質は、それらが剛性、可撓性、および強度に関する限り、材料の厚さによって全てが決定される。薄い材料は、同一の密度を有する厚い材料より容易に変形する。用いられた材料の種類とその物理的性質が、義足の足竜骨と腓脛部の剛性と可撓性についての特性に関係する。足竜骨と腓脛部の厚さは、図3〜図5に例示した実施形態においては一様であるまたは対称形であるが、以下で説明するように、これらの構成部品の厚さを縦方向において、たとえば、足後部と足前部の領域を薄くし、足中央部の屈曲に対しての応答性が高まるように、変化させることができる。
【0021】
義足1が容易に高低の動的応答能力を持つことができるようにするために、足中央部5は、縦方向に湾曲したアーチを有し、縦方向アーチの内側は外側より高い動的応答能力を有するように形成されている。この目的のために、例示した実施形態において、縦方向アーチの凹面部の内側は、外側より大きい曲率を有する。
【0022】
足中央部5の縦方向アーチの凹面部の内側と外側における各々の曲率の大きさの相関関係は、足竜骨2に設けられた足底の体重を支承する領域の前方の面と後方の面としてさらに定義される。図8において、足中央部5の前方の線T1−T2は、足底の前部に位置する体重支承領域を表す。線P1−P2は、足中央部5の足底の後部に位置する体重支承領域を表す。足2の外側に位置する足底の体重支承領域は、T1−P1間の距離によって表される。足2の内側に位置する足底の体重支承領域は、P2−T2間の距離によって表される。T1−P1とP2−T2によって表された距離は、曲率の大きさを決定し、よって、高低の動的応答についての相関関係が決定まり、これら二つの線T1−T2とP1−P2を交わらせるまたは逸らせることによって相関関係を変更することができる。したがって、高低の動的応答能力を、構造設計によって決定することができる。図8に示したように、この高低の動的応答能力を発生させるためには、足前部の体重支承領域T1−T2は、足竜骨の縦軸A−Aに直交した方向から僅かに5°傾斜しているだけでよい。
【0023】
足後部4の後端17は、踵接地時の衝撃吸収のために屈曲することによって、接地したときの地面からの反力に応答するよう上向きに湾曲したアーチに形成されている。足後部4によって構成される踵は、歩行の最初の接地時に足後部が容易に上向きに湾曲できるようにするために、後方の外側角18を内側角19より後方、かつ、外側に配置して形成されている。足前部3の前端20は、歩行の立脚相後期の踵離地・足尖離地の姿勢において背屈した人のつま先に近似させるために、上向きに湾曲したアーチに形成されている。ゴムまたは発泡材のパッド63,64が、緩衝材として足前部と足後部の下面に取り付けられている。
【0024】
義足の双方向への作動能力の向上は、足前部3の背側と足底側とを貫通して伸びる伸張用の内側および外側の連結孔21,22によってもたらされる。伸張用の連結溝23,24が、対応する孔の各々から足前部の先端まで伸びて、伸張用の内側、中央、および外側の突出片25〜27を形成し、これによって、足竜骨の足前部が双方向へ作動する能力の向上がもたらされる。図5に示すように、伸張用の連結孔21,22は、横断面内の線B−Bに沿って配置されており、線B−Bは、伸張用の内側連結孔21を伸張用の外側連結孔22より前方に配置することによって足竜骨の縦軸A−Aに対して35°の角度αだけ傾斜している。
【0025】
図5において、縦軸A−Aに対する線B−Bの角度αは僅かに5°であるが、それでも高低の動的応答性を生じさせることができる。この角度αが変化したとき、図8に示した線T1−T2の角度Zも変化するようになっている。矢状面に投影された伸張用の連結孔21,22は、横断面に対して45°の角度だけ傾斜しており、また、連結孔の背側は、足底側より前方に位置している。この構成にすることにより、着脱式固締具8から伸張用の外側連結孔22までの距離が、着脱式固締具から伸張用の内側連結孔21までの距離より短くなり、よって、足中央部が高低の動的応答性を有するようにするために、義足1の側部が、内側より短いつま先のレバー部を有する。さらに、着脱式固締具8から線T1で表された足底の外側に位置する体重支承面までの距離が、着脱式固締具から線T2によって表された足底の内側に配置された体重支承面までの距離より短くなり、よって、足中央部が高低の動的応答性を有するようにするために、義足1の側部が、内側より短いつま先のレバー部を有する。
【0026】
足竜骨2の足後部4の前部は、足後部4の背側と足底側とを貫通して伸びる伸張用の連結孔28をさらに含む。伸張用の連結溝29が、連結孔28から足後部の後縁まで伸びて、伸張用の突出片30,31を形成する。これらの事が、足の後部における双方向への作動能力の向上をもたらす。変更例において、伸張用の連結孔28,21,22は、図8に示すように、連結孔に隣接した領域に穿孔された応力緩和孔として作用する各々別の小孔28A,21A,22Aを有していてもよい。これらの別の小孔は、足竜骨に発生する振動の伝播方向を変化させることによって、裂け目および/または損傷の発生を低下させることができる。
【0027】
足竜骨2の足中央部5と足前部3との背側は、図3に示したように、上方を向いた凹面部32を形成して、人の足の第5肋軸周りの運動を機能上模倣する。つまり、凹面部32は、人の足の第2から第5中足骨の低速時の回転軸と同様に、歩行中に第5肋軸周りの運動をより容易に行うことができるよう内側が外側より前方に配置されている足竜骨の縦軸A−Aに対して5°から35°の角度βだけ傾斜した縦軸C−Cを有する。
【0028】
双方向への作動能力の重要性は、足切断者が凹凸のある地面上を歩くとき、または、運動選手が足の内側または外側を切断したときに理解できるものである。ベクトルで表された地面からの反力の向きは、矢状面の方向から前方面への成分を有するように変化する。地面からの反力は、外側に向けて押す足の方向とは逆の内側に向けて足を押す。この結果、腓脛部は内側に傾斜し、そして、体重が足竜骨の内側構造部材に掛けられる。これらの圧力に対応して、足竜骨2の伸張用の内側突出片25,31は背屈し(上向きに反って)、次に、下向きに湾曲し、そして、伸張用の外側突出片27,30は足底のように屈曲して(下向きに反って)、次に、上向きに湾曲する。この運動は、足の足底面を地面に対して平らに配置しようする試みである(足底度)。
【0029】
本発明による別の、とりわけ短距離走用の足竜骨33を、本発明の義足に用いてもよい(図6と図7を参照されたい)。短距離走中の体の重心は、殆ど完全に矢状面の方向を向く。義足は、低い動的応答特性を有する必要はない。したがって、足竜骨2の場合のように、足前部と足中央部の各々の凹面部の縦軸を5°から35°だけ外向きに傾斜させる必要はない。それよりも、凹面部の縦軸D−Dの方向は、図6と図7に示したように、前面に対して平行になっていなければならない。これにより、短距離走用の足竜骨は、矢状面方向だけに応答するようなる。さらに、線E−Eに沿った足前部と足中央部の伸張用の連結孔34,35の向きは、前面に対して平行である、即ち、外側の孔35が前方に移動して内側の孔34に並ぶことによって、前面に対して平行にされている。また、足竜骨33の足前部の終端部36も前面に対して平行にされている。足竜骨の足後部の終端踵部37も、また、前面に対して平行になっている。これらの変更は、義足の多用途能力にはマイナスの方向の影響を与える。しかし、その性能は特定の課題を達成できるようになる。短距離走用の足竜骨33の別の変更例は、足前部のつま先肋領域において、足竜骨2の場合の15°の背屈が、足竜骨33においては25°〜40°に拡大されている。
【0030】
図9と図10は、サイム式切断法により足を切断した足切断者が短距離走を行うときにとりわけ有利な、本発明による義足用の別の足竜骨38を示す。この目的のために、足竜骨38の足中央部は、腓脛部の湾曲した下部を着脱式固締具によって足竜骨に取り付けるための、後部に配置された上向きの凹面部39を含む。この足竜骨は、全ての下肢切断者によって使用可能である。足竜骨38は、サイム方式による足切断者にあり得る長い残肢に対しても使用可能である。その使用特性は、動的応答性能が際立って迅速なことである。その使用は、長い残肢を有する足切断者に特定されるものではない。それは、下腿切断者および大腿切断者の全てに使用可能である。図11と図12に例示した実施形態の足竜骨40も、また、サイム式足切断者用の凹面部41を有し、この足竜骨を用いることによって、図3〜図5と図8に例示した実施形態と同様に、義足1は、高低の動的応答特性と、双方向への作動能力とを有するようになる。
【0031】
義足1用の数種類の足竜骨の機能上の特性は、形状と設計上の特徴とに関係付けられており、それらは、凹面形状、凸面形状、曲率の大きさ、伸張性、圧縮性、および材料の物的性質に関係しており、そして、これら全ての特性が、歩行、ランニング、および跳躍運動をするとき地面からの力と関係を持つ、つまり地面からの力に反発する。
【0032】
図13の足竜骨42は、足竜骨の厚さが足中央部から足後部の後方にかけて漸減していることを除くと、図3〜図5と図8に例示した実施形態に類似している。図14の足竜骨43は、その厚さが、前端および後端の両方にかけて漸減している、つまりテーパを有する。同様な厚さの変更例が、図15の腓脛部44と図16の腓脛部45に示されており、両方とも義足1に用いることができる。足竜骨と腓脛部の各々の設計は異なる機能上の結果をもたらし、これらの機能上の結果は、種々の競技関連の課題の達成度を向上させるための特定の水平方向と垂直方向の線型速度に関係している。複数の種類の腓脛部の構成を組み込むことと、足竜骨と腓脛部のあいだの設定の調節とが可能であるために、足切断者または補綴技師は、幅広い種類のスポーツとレクレーションの中から選択した一つの運動について義足の性能が最高になるよう調整することが可能な腓脛部を備えた義足を製造することができる。
【0033】
義足1用の別の腓脛部は、図17〜図22に示されており、C字形の腓脛部46,47、S字形の腓脛部48,49、およびJ字形の腓脛部50,51を含む。腓脛部の上部は、また、直線状の垂直端部を有していてもよく、ピラミッド形の装着板が、この基部側端部に取り付けられる。オス型のピラミッドが、図28〜図30と図33〜図36に示すように、腓脛部のこの垂直端部にボルトで取り付けられる。別の実施形態において、腓脛部の基部は、足切断者の下肢に装着されたソケットおよび/または義足の別の部品の前面および/または後面に取り付けてもよい。隣接したオス型のピラミッドと遠位の足竜骨を受承するために、プラスチックまたはアルミニウムの充填材を、腓脛部の基部側端部と遠位の端部に設けられた長い開口に充填することができる。本発明の義足は、使用の柔軟性と多用途性を維持するために、好ましくは標準化されたユニットまたは大きさを用いて形成されたモジュール式装置である。図28に示された実施形態の符号88が、腓脛部の基部側端部に取り付けられたピラミッド形の装着板を示す。
【0034】
全てのトラック走行関連の競技は、反時計回りに行われる。本発明の別の、随意の特徴は、そのようなカーブした走路に沿って走行する足に作用する力を考慮に入れている。求心性の加速度は、物体が湾曲した経路に沿って運動するとき、回転の中心に向けて作用する。ニュートンの第三の法則がエネルギーの作用に適用される。大きさが等しく、そして、反対方向に作用する反力が存在する。したがって、全ての「求心性」の力に対して、「中心から離脱」する力が存在する。求心力は回転の中心に向かって作用し、反力である遠心力は回転の中心から離れる方向に作用する。走者がトラックのカーブを走行しているとき、求心力は走者をカーブの中心に向けて引き寄せ、遠心力はカーブの中心から遠ざけるように作用する。走者を外向きに傾けようとする遠心力を打ち消すために、走者は、内側に傾斜する。走者がトラックを走る方向がいつも反時計回りである場合には、左側が、トラックの内側に当たる。したがって、本発明の特長によると、右用と左用の義足の腓脛部の左側を右側より薄くして、足切断者のカーブ走行性能を向上させることができる。
【0035】
数種類の実施形態における足竜骨2,33,38,42,43は、各々長さが29cmであり、図3〜図5並びに別の腓脛部と足竜骨を示した数種類の図において、義足1の各部の大きさは正しい寸法の比を用いて示されている。しかし、当業者には容易に理解できるように、義足の特定の寸法は、義足を付ける足切断者の身長、体重、およびその他の特徴に合わせて変更可能である。腓脛部の長さと弾性モジュラスが、弾性エネルギーを蓄える能力と容量を決定する。この貯蔵された弾性エネルギーが、機械的機構を介して方向性と大きさを有するベクトルで表される運動力に変換される。したがって、腓脛部の長さが長ければ長いほど、推進力が大きくなる。最高レベルの運動選手のためには、腓脛部の基部側の取付け位置は、義足の構成部品との関係において許される限り基部に近接するようにしなければならない。
【0036】
ここで、歩行とランニングとの歩行周期の立脚相における、義足1の動作を検討する。慣性、加速、および作用・反作用に関するニュートンの運動の三つの法則が、足2の運動力学の基礎である。作用・反作用の法則であるニュートンの第三の法則から、足が地面を押すとき、地面は、大きさは同じであるが、足が地面を押す方向とは反対の方向に足を押すことが知られている。これらは、地面からの反力として知られている。人の歩行、ランニング、および跳躍運動に関しては多くの科学的研究がなされてきた。力板を用いた研究が、ニュートンの第三の法則が歩行中に見られることを我々に教えてくれる。これらの研究から、我々は、地面が足を押す方向について知っている。
【0037】
歩行とランニングを行っているときの立脚相は、減速期と加速期とにさらに分割可能である。義足が接地するとき、足は地面を前に向けて押し、そして、地面は、大きさは同じであるが、反対の方向に押し返す、つまり、地面は義足を後に向けて押す。この力が、義足を動かす。歩行とランニングを行っているときの立脚相の分析は、接地点が、図5と図8に示したように、足の内側より後方に偏倚した外側に位置する外側角18であるところから開始される。最初の接地点がこのように偏倚しているために、足は上向きに反り、また、腓脛部と足底が屈曲する。腓脛部は、体重をその脛部を介して伝達できる位置を常に探している、換言すると、たとえば、その長い直立部材を地面からの力に対向する位置に配置しようとする。この事が、足を後に向けて押している地面からの反力に対向するために、直立部材が後方に移動するとともに足底が屈曲する理由である。
【0038】
地面からの力が、基部側端部を後方に動かすようにして腓脛部44,45,46,47,50,51を圧縮する。腓脛部48,49の場合には、凹面部の先端の向きに応じて、腓脛部の先端側半分が圧縮される。先端側の凹面部がGRFsに応答して圧縮された場合、基部側の凹面部は伸張し、そして、腓脛部全体は後に向けて動く。地面からの力は、基部側端部を後方に動かすようにして腓脛部を圧縮する。腓脛部の小さい曲率の下部は、人の足関節の曲がりと足底の屈曲と同様に圧縮され、そして、圧縮されたことによって足前部が地面にまで下げられる。同時に、足後部4の符号17で示された後端が圧縮されて上向きに曲がる。これらの圧縮力の両方が、緩衝機構として作用する。この衝撃吸収は、足を上向きに湾曲させる偏倚した後方の外側角18によってさらに高められ、また、外側角18は、腓脛部が一旦運動を停止して足底が屈曲する段階になって地面が足を後に向けて押すとき、緩衝機構とし作用する。
【0039】
足竜骨と腓脛部の圧縮された部材は、次に、力から解放され、つまり、元の形状を求めて蓄えられたエネルギーが放出され、これにより、腓脛部の基部側端部が加速されて前に向けて動く。腓脛部が垂直の出発位置に近づくと、地面からの力は、足を後へ向けて押す力から、足を垂直上向きに押す力へと変化する。義足は足底の後部と前部に位置する体重支承領域を有し、そして、これらの領域が体重を支承しない長いアーチ形の中央部によって連結されているために、義足からの垂直方向の力がこの長いアーチ形の中央部を伸張させることによって体重は支承される。後部と前部に位置する体重支承面は、互いに離間している。地面からの力が自然な状態の垂直方向から前方を向いた方向へと移動するにしたがって、これらの垂直方向の力は、足の長いアーチ形の中央部に蓄えられる。腓脛部の下部は、足関節の背屈と同様に伸張する。これにより、義足は、枢動して、足底の前部に配置された体重支承面が地面から離れる。力の解放が行われるために、足中央部5の縦方向アーチは、伸張した状態から変化し、そして、足底の屈筋群と同様に群発を作り出す元の形状に復帰しようとする。このようにして、機械的構造の義足は、貯蔵していた弾性エネルギーを放出して運動力に変換する。
【0040】
足竜骨と腓脛部の長いアーチは、各々の構造部材が伸張されることに抵抗する。したがって、腓脛部の前への動きが抑制され、足は、枢動を開始して、足底の前部に配置された体重支承領域が地面から離れる。図3〜図5と図8、図11と図12、および図13と図14に例示した実施形態の足竜骨の場合、足中央部の伸張は、高低の応答能力を有する。これらの足竜骨の足中央部から足前部にかけての遷移領域は、足の縦軸から外側に15°から35°逸れているために、内側の長いアーチは、外側の長いアーチより大きい長さを有する。通常の足の場合には加速期または減速期に足の内側が使用されるため、これは重要な事である。
【0041】
義足の内側の長いアーチは、外側より大きい動的応答特性を有する。外側の短いつま先レバーは、低速での歩行またはランニング時に使用される。体の重心は、シヌソイド曲線の空間を移動する。それは、内側、外側、近位、および遠位と移動する。遅いスピードで歩行するまたはランニングをするとき、体の重心は、速く歩くまたは走るときより、より大きく内側と外側のあいだを移動する。さらに、モーメントまたは慣性が小さいために、高い動的応答能力に対抗するための能力も小さくて済む。本発明による義足は、応用力学を用いてこれらの原理を取り込むように構成されている。
【0042】
さらに、人の歩行周期における立脚相では、体の重心は最大限外側にずれている。立脚相から足尖離地までのあいだ、体の重心(BCG)は、外側から内側へと移動する。結果として、体の重心は、足竜骨2の外側へと移る。初めに(低速ギヤ)、そしてBCGが前方へ移るにつれて、それは、足竜骨2の内側へと移動する(高速ギヤ)。したがって、義足の足竜骨2は、オートマチック・トランスミッションの効果を有する。つまり、それは、低速ギヤで始動して、足切断者が歩を進める毎に高速ギヤへと移っていく。
【0043】
地面を後に向けて押している義足を地面からの力が前に向けて押すとき、踵が上がり始めるために、足中央部の長いアーチの前方部分が変形して、これらの後方に向けられた力を足底面に対して直交する方向に負荷する。これが、これらの力を負荷するための最も効果的で効率のよい方法である。同じ事が、義足の足後部の後端についても当てはまる。また、それは、最初の接地時に後方を向いている地面からの力に、負荷された力の方向に対して直交している足竜骨の足底面が対向するように形成されている。
【0044】
踵挙上から足尖離地までの歩行とランニングの後期相において、足前部の肋領域は15°〜35°だけ背屈している。このように上向きに突出しているアーチのために、前方に向けられた地面からの力が足のこの領域を圧縮するように作用する。この圧縮は伸張に比べると制限が少なく、義足を付けての歩行とランニングの遊脚相への移行がスムースに行われる。歩行の立脚相の後期において、伸張した腓脛部と伸張した足中央部の長いアーチは、各々蓄えていたエネルギーを放出して、つれて動く下肢と足切断者の体の重心とを上前方へと運ぶための推進力に付加する。
【0045】
人が歩行するときの主な推進機構の一つは、有効前屈相と呼ばれている。踵挙上において、体重は支持下肢の前方に掛かっており、また、重心は降下している。体重が図5に線C−Cで示した足前部の舟底部に掛かって下向きの加速度が生じ、これにより、人体には最大の垂直方向の力が負荷される。踵挙上につれて足が足関節の前方へと加速されることによって、地面に対する後方せん断力が発生する。加圧の中心が前方の中足骨頭の回転軸に移動することによって、背屈のトルクが依然増大する。この事は、前方への完全な転倒状態を引き起こしもするが、歩行に用いられる主たる前進力を発生する。有効に前傾しているときの効果的な足関節の機能は、踵挙上、関節部の最小移動、および殆ど中立的な足関節の位置に現われる。踵挙上を正常に継続させるためには、安定した足中央部が必須である。
【0046】
先に言及した数種類の実施形態において、足後部の後方と足竜骨の足前部領域には、伸張用の連結孔と伸張用の突出片とが設けられている。向きが調節された伸張用の連結孔が、留め継ぎ式ヒンジとして作用して、双方向への作動能力を向上させるために、足は、凹凸のある地面を歩行するときの足底面の総合的な接地特性を向上することができる。
【0047】
図9〜図12に示したサイム方式用の足竜骨は、動的な応答能力が明らかに異なっているが、これらの能力は、歩行、ランニング、および跳躍運動に関係している。これらの足竜骨は、四つの特異な特徴において異なっている。これらは、サイム方式による残余の下肢部を平坦な面より都合よく受承できるよう足中央部の基部に隣接した後部に凹面部を有する。また、この凹面部は、サイム方式のレベルでの足切断者に伴う長い残余の下肢に連結される足竜骨の高さを低くするように作用する。このアライメントの変更に用いられる凹面部にとって、足竜骨のアーチ形の足中央部の対応する前方と後方の湾曲部は曲がりが急であり、かつ、サイズも小さいことが必要である。したがって、全ての足中央部の長いアーチの曲率と足後部の曲率は、曲がりが急で、かつ、小さくされている。この事は、動的応答特性に大きい影響を与える。小さい曲率は、動的応答に関しては小さい貢献しかしない。しかし、義足は、前述した歩行、ランニング、および跳躍を行うときの地面からの全ての反力に対してより迅速に応答する。結果は、小さい動的応答性を備えつつも、応答が迅速な足の提供である。
【0048】
本発明による義足のアライメントを変更する事によって、競技の特定の課題の成績を向上させることが可能であるが、それは、これらのアライメントの変更が各々の課題に求められる垂直成分と水平成分に影響を与えるからである。人の足は、多機能ユニットであり、それは、歩く、走る、および跳ぶために使用できる。これに対して、人の脛骨と腓骨とから成る腓脛骨構造は、多機能ユニットではない。それは、歩行、ランニング、および跳躍運動を行うときに、長さは長いが、基部と先端とを結ぶ方向に力を負荷する単純なレバーである。それは、非圧縮性の構造体であり、また、エネルギーを蓄える能力を有しない。これに対して、本発明による義足は、動的な応答能力を有し、また、これらの動的応答能力は、歩行、ランニング、および跳躍運動を行うための水平方向と垂直方向の線型速度に関係付けられているために、人の脛骨と腓骨の性能を凌ぐものである。したがって、足切断者が競技の成績を向上させる可能性がある。このために、本発明においては、固締具8を緩めることによって、腓脛部と足竜骨とのアライメントを足竜骨の縦方向において調節することができる。そのような変更については、図1と図2に関連して先に説明した。腓脛部は、次に、固締具8を用いて調節された位置で足竜骨に固定される。この調節を行うとき、固締具8のボルトは、対向して配置され、比較的長く縦方向に伸びた足竜骨と腓脛部の各々の開口9,10の一方または両方に対して摺動する。
【0049】
たとえば、足中央接地走者の場合のように足底接地で最初に接地する走者の走行特性を向上させるためにアライメントの変更を行うということは、足竜骨が腓脛部に対して前方に摺動し、そして、足底が腓脛部に対して屈曲できるようにするという事である。この新しい関係が、ランニングを行うときの水平成分を向上させる。つまり、腓脛部が足に向けて屈曲した状態で、通常はまず踵接地することに反して、足が足底接地で接地するとき、地面は、地面を前に向けて押している足を直ちに後に向けて押す。これにより、腓脛部が(伸張によって)急速に前方下向きに動かされる。腓脛部の最初の動きの方向に抵抗するように作用する伸張によって、動的応答力が発生する。その結果、足は、足底の中足骨の位置にある体重支承領域を支点にして枢動する。これにより、足竜骨の足中央部に圧縮するときよりも大きい抵抗を有する伸張が引き起こされる。腓脛部の伸張と足中央部の伸張とがもたらすネットの効果は、腓脛部のさらなる前方への移動に抵抗が生ずる事であり、これにより、使用者の体内の膝関節エキステンダーと股関節エキステンダーとが、体の重心をより効率的な方法で前方かつ基部方向に移動させることを可能にする(即ち、水平速度の増大)。これにより、足底接地走者より大きく背屈(垂直方向)した状態から始動する腓脛部によって腓脛部の前への運動が余り大きい抵抗を受けないヒール・トウ走者の場合より、上向きより大きい前への推進力が発生する。
【0050】
短距離走用の足の機能を分析するために、腓脛部と足竜骨とのアライメントの変更を行った。全ての凹面部の縦軸が前面に対して平行に配置されている足竜骨を有効利用した。腓脛部は、足底に対して曲げられるとともに、足竜骨上を後方へと摺動させられた。これにより、たとえば、図3〜図5と図8のような多用途の足竜骨を装着した足底接地走者の場合より遠位の湾曲部の位置をさらに低くすることが可能になった。この結果、義足は、水平運動の能力がさらに向上し、そして、動的応答性をこの向上した水平能力に組み入れることができた。
【0051】
短距離走者は、大きい運動範囲、力、およびモーメント(慣性)を有し、モーメントが、主たる作動媒体である。立脚相における減速期は、加速期よりも短時間であるために、大きい水平方向の線型速度が得られる。この事は、つま先が接地する最初の接地時に、地面が足を後に向けて押し、そして、足が地面を前に向けて押すことを意味する。大きい力とモーメントとを有する腓脛部は、足底接地走者の最初の接地時よりさらに大きい屈曲と下向きの運動をさせられる。これらの力は結果として、足の長いアーチ形の凹面部を伸張する力として掛かり、また、腓脛部を伸張する力として掛かる。これらの伸張力は、先に述べたその他全てのランニングに関連した力より強い抵抗を受ける。したがって、足の動的応答能力は、負荷された力に比例する事になる。人の脛骨と腓骨とから成る腓脛骨の応答性は、エネルギーの大きさだけに関係しており、また、それは、直線状の構造であって、エネルギーを蓄えることができない。短距離走を行うときに本発明の義足がもたらすこれらの伸張力は、先に述べたその他全ての歩行とランニングに付随した力より強力である。したがって、足の動的応答能力は、負荷された力に比例し、また、人の機能と比較した場合、足切断者は競技の成績を向上させる事が可能になる。
【0052】
図25に示した義足53は、腓脛部と足竜骨のあいだの調節可能な締結構造と、支柱の下端に連結するための腓脛部の上部の構造を除いて、図3のそれに類似している。この例示した実施形態において、足竜骨54は、プラスチック製または合金製の連結要素56を介して腓脛部55に調節可能に取り付けられている。連結要素は、足竜骨の縦方向において互いに離間して連結要素に配置された着脱式の固締具57,58によって各々足竜骨と腓脛部とに取り付けられている。連結要素を腓脛部に結合する固締具58は、足竜骨と連結要素を結合する固締具57より後方にある。腓脛部の作動長さをこのように伸張させることにより、腓脛部自体の動的応答能力が増大する。アライメントの変更は、例示した別の実施形態と同様に、縦方向に伸びた腓脛部と足竜骨の開口と協働して行われる。
【0053】
腓脛部55の上部には、支柱15を受承するための長い開口59が形成されている。一旦開口に受承された支柱は、ボルト60,61を締め付け、そして、腓脛部の開口に沿った自由端側の縁62,63を引き寄せることによって腓脛部に確実に固締することが可能である。この連結構造は、ボルトを緩め、支柱を腓脛部に対して所望の位置まで引き出し、そして、ボルトを再度締め付けることによって調節した位置において支柱を容易に固定することができる。
【0054】
図28〜図32に示した義足70は、図3〜図5,図8,および図23〜27の義足に類似しているが、足切断者が義足を使用中に腓脛部に力が負荷されたときのまたは力から解放されたときの腓脛部上端の運動の範囲を制限するために、義足に取り付けられた腓脛部の運動制限・減衰装置71をさらに含む。この機能は、比較的長い腓脛部を有する義足にはとりわけ好都合であり、この場合、装着者はランニングや跳躍のような運動を行い、腓脛部に装着者の体重の何倍もの、たとえば、ランニングの場合には体重の5〜7倍であり、跳躍の場合には体重の11〜13倍、の力が発生する。これに対して、歩行中に発生する力は体重の僅かに1〜1.5倍である。
【0055】
例示した実施形態において運動制限・減衰装置71は、空気のような気体または液圧用の流体などの加圧流体が各々の取付け部品73,74を介して充填されている双方向に作動するピストンとシリンダを含むユニットである。運動制限・減衰装置は、力の負荷時と力からの解放時に腓脛部が各々圧縮と伸張の両方をさせられるときの腓脛部72の上端の運動の範囲を調節するための圧縮用と伸張用の二つの可変制御器を有する。また、運動制限・減衰装置71は、腓脛部の圧縮と伸張時に蓄えられたまたは放出されたエネルギーを減衰させる。運動制限・減衰装置71の両端は、腓脛部の上部と義足の下部に連結されており、例示した実施形態においては、好ましくは玉継手の枢動式連結具75,76を用いて腓脛部の上部と下方の端部に連結されている事が好ましい。
【0056】
図32は、腓脛部が圧縮と伸張とをされたときの義足70の腓脛部72の上端の動きを示す。腓脛部が概ね放物線形であるために、腓脛部の上端は、力の負荷時と解放時の腓脛部の圧縮と伸張に伴って足竜骨77の縦方向、たとえば図5と図32に示した線A−Aの方向、に動き、そして、腓脛部の下端は足竜骨に連結されている。したがって、義足の向上した動的応答能力は、図28〜図32に示した例示としての実施形態において維持されることになる。
【0057】
運動制限・減衰装置71は、説明したピストンとシリンダを含むユニットに限定されるものではなく、別の速度制御装置および/または運動制限装置であってもよい。たとえば、義足の腓脛部に用いられる運動制限・減衰装置71の後方の部分を、現在、人口膝関節の運動を制御するために用いられているような圧縮段階と伸張段階とを制御することができるマイクロプロセッサ制御式の流体ユニットにすることも想定されている。特殊なソフトウェアとPCとを用いて、マイクロプロセッサ制御式の流体ユニットを足切断者の各々に適合させるよう調整することが可能である。モーメントを1秒間に50回も測定することによって、動力補填式歩行を、できる限り自然な歩行に近づけることが可能である。流体ユニットの良好な応答性のために、この装置は、幅広い範囲の下肢切断者に好適である。ユニットに組み込まれたリチウム・イオン電池は、流体ユニットを丸一日動作させるのに充分なエネルギーを供給する。圧縮に対する抵抗力は、伸張に対する調節からは独立して行われる。多数の統合されたセンサが、ユニットの立脚相と遊脚相との特性を1秒間に50回の割合で自動的に調節することができる基板上のマイクロプロセッサに歩行分析データを連続的に送信する。
【0058】
運動制限・減衰装置71のマイクロプロセッサ制御式の流体ユニットは、機械的な流体ユニットより応答の速度が速い。電気制御の圧縮(足底屈曲)弁は、1秒間に50回の割合で調節する。ユニットの圧縮弁は、遊脚の前に自動的に全開する。したがって、ユニットは、制限された領域で、そして、同様の条件の下、低速で圧縮と屈曲とを行うことがきわめて容易である。ユニットのサーボ・モータのスピードは、1秒間に50回の割合で送られてくるマイクロプロセッサからの命令に応答して、圧縮(足底屈曲)弁と伸張時の背屈用弁とを非常に速く閉めることを可能にする。弁が全閉の状態に近づいたとき、ユニットの減衰力が非常に高くなって、早足での歩行とランニングさえもが可能になる。義足技師は、独特な動的要素を介して、ゆっくりとした歩行から活発で、速い歩行までの全ての歩行パターンについて流体ユニットの動作が最適になるよう調節することができる。マイクロプロセッサ制御式の流体ユニットを個別の独特な歩行パターンに合わせて「調整」するこの能力は、歩行の効率と快適度を高めるために幅広いリズムを義足に組み込むことが可能である。つまり、運動制限・減衰装置71のようなマイクロプロセッサ制御式の流体ユニットを用いることによって、義足は、活動的な足切断者が使用するときに必要となる種々のリズムにも対応できる能力が向上される。
【0059】
図28〜図32の義足70の縦方向に延在する足竜骨77は、図3と図25の足竜骨と同様に足前部、足中央部、および足後部を有する。義足の腓脛部72は、図25〜図27の例示した実施形態と同様に、縦方向に離間して配置され、連結要素78を各々腓脛部と足竜骨とに連結するための着脱式の二つの固締具79,80により連結要素を介して足竜骨に取り付けられる。腓脛部72は、腓脛部の両端部のあいだで縦方向に伸びる伸張用溝81を有する。伸張用の連結孔82,83が、伸張用溝の両端に設けられている。また、図29〜図31に示すように、足竜骨の足前部と足後部にも各々伸張用溝(符号なし)が形成されている。
【0060】
足切断者の下肢端部に装着される義足用ソケット(図示せず)は、図のように腓脛部72の上部に固締具86,87によって固定されたアダプタ85を介して腓脛部の上端に連結される。アダプタは、アダプタの上面に取り付けられた取付け用板に連結された逆さのピラミッド形の取付け具88を有する。義足と義足用ソケットとを連結するとき、ピラミッド形の取付け具は、懸架された義足用ソケット上の相補形状のソケット式取付け具によって受承される。この種類の連結構造は、図34〜図36の実施形態に示されている。
【0061】
図28〜図32に例示した実施形態の運動制限・減衰装置71は、腓脛部の圧縮と伸張の両方のケースにおいて腓脛部上端の運動の範囲を制限するが、腓脛部上端の運動の範囲を圧縮時または伸張時にだけ制限する同様の装置を用いることもできる。力の負荷と力からの解放時に腓脛部の伸張だけを制限する運動制限・減衰装置84が、図33に例示した実施形態に示されている。この運動制限・減衰装置84は柔軟な帯であり、帯は、制限された範囲の弾性伸びだけが可能であり、これにより、腓脛部に力が負荷された結果圧縮されたとき腓脛部の上端の動きは制限されないが、腓脛部の伸張は制限される。この運動制限・減衰装置84は予め張力を掛けて装着することが可能であり、この場合、運動制限・減衰装置は、腓脛部の基部側端部を後に向けて付勢する。
【0062】
図34〜図36は、図28〜図32の義足の足竜骨77またはここに開示した別の足竜骨の一つとともに用いることができる本発明による別の腓脛部90を示す。腓脛部90は、その曲率半径の最も小さい部分が下部に配置され、そして、その下部から上向きに、かつ、基部側端部の比較的大きい曲率の部分へと初めは前方に延出する概ね放物線形である。後方を向いた凹面部が、図34に示すように腓脛部が湾曲することによって形成されている。腓脛部の先端部は、特定の課題を達成できるよう義足の特性を調整するために固締具79または80が緩められるか取り外されたとき、連結要素78、着脱式固締具79,80、および足竜骨の縦方向に伸びた開口と協働して、腓脛部と足竜骨の縦方向の互いのアライメントを調節できるようにする縦方向に伸びた開口91を有する。
【0063】
腓脛部90の先端部は、図28〜図32の腓脛部72より鋭く湾曲しており、即ち小さい曲率半径を有し、そして、縦方向で小さい長さだけ上前方に延出する。腓脛部は、この形状にすることが補綴上好都合である。つまり、先端が、人の足の形をした義足用外被の踝の内側と外側が通常配置される足関節の領域により近接して位置される。この腓脛部は、義足用外被により上手く収まる。その機能上の特性は、広がった放物線形、たとえば、先に言及したような大きい曲率半径、を有する腓脛部より動的応答能力は小さいが、この腓脛部は、最初の接地時に地面から受ける反力に迅速に応答することである。したがって、義足を付けて走り、また、ジャンプをするような活動的な人は、広がった放物線形、つまりまたは大きい曲率半径、を有する腓脛部を用いることによって、より大きい水平方向の速度を容易に得ることが可能になる。
【0064】
図34〜図36の腓脛部90は、固締具94,95によって腓脛部の上部に連結されたプラスチック製または金属製のアダプタ93と、使用者の下肢端部に固締された義足用ソケット96のあいだに配置された、アライメント機能付きの連結装置92をさらに含む。使用者は、たとえば、膝上または膝下での足切断者である。アライメント機能付きの連結装置は、地面に対して平行な面に互いに直交して配置された一対の摺動部97,98を有する。摺動部の各々の構成部品の相対位置は、義足の腓脛部と足竜骨に対する義足用ソケットの相対的な向きを変更する摺動部97,98の各々を調節するためのねじ付き固締具99を緩めることによって調節することができる。連結装置92を支持するアダプタ93の頂部は、義足を付けて歩行するときの立脚相において地面に対して平行であることが好ましい。
【0065】
連結装置92の上側の摺動部98の頂部には、逆さのピラミッド形の取付け部品101が固定されており、取付け部品101は、義足用ソケット96に設けられた反対側の取付け部品102にねじ付き固締具103によって固締される。二つの取付け部品101,102をこのように連結することによって、義足用ソケットと義足のあいだの角度変化を伴った屈曲・伸張と外転・内転とが可能になる。連結装置92は、横方向と縦方向への直線的な摺動による調節が可能である。したがって、連結装置92は、義足を全ての方向に動くことができるようにするアライメント機能付き装備品であり、そのために、地面からの反力に対して腓脛部と足竜骨から成る機械的構造体が応答する方法に影響を与える。
【0066】
図37と図38の足竜骨110と図39と図40の足竜骨120は、本発明による義足に使用可能な足竜骨のさらに別の例示としての実施形態である。二つの足竜骨は、右足用であり、足後部を除いて類似の構造を有する。これらの足竜骨の内側と外側は、同一の形状である。足竜骨110は、足後部領域が矢状方向に切断されて、縦方向に伸張する伸張用連結部または溝113によって分離された伸張用の外側と内側の突出片111,112を備える。足竜骨110の踵部の後端114は、前面に対して平行である、たとえば、足竜骨の縦軸A−Aに対して直交している。同様に、足竜骨の足後部の背側の凹面部115は、前面に対して平行である、たとえば、縦軸A−Aに対して直交した、つまりΔが90°である、縦軸F−Fを有する。
【0067】
足竜骨110に反して足竜骨120は、足後部領域が矢状方向に切断されることもなく、足後部の背側の凹面部121は、外側が内側より前方に配置されているために、凹面部の縦軸F’−F’が前面に対して傾斜しており、たとえば、縦軸A−Aに対して好ましくは110〜125°の鈍角Δ’を成している。背側の凹面部をこのような向きに配置することによって、伸張用の外側の突出片122を、伸張用の内側の突出片123より長い範囲に亘って薄くし、これにより、突出片123より実質上長く、そして、より大きい可撓性を有するようにすることができる。このように可撓性を増大させることによって、足後部は、最初の接地時に地面からの反力に対して上向きに湾曲することが容易になるが、これは衝撃吸収機構である。これにより、体の重心が生み出す力が歩行中に足竜骨の足後部を介して効率良く伝達され、また、より正常な歩行パターンの達成が容易になる。
【0068】
図41と図42の義足124は、足竜骨165、腓脛部126、および歩行中に腓脛部の上端の前への動きに伴うエネルギーを追加して蓄えるために設けられた後部腓装置125をさらに有する。これにより、歩行の有効前屈相において、弾性を有する義足に力を負荷することによって、腓脛部の前に突出した湾曲部127によって形成された腓脛部105の矢状面の凹面部が伸張し、腓脛部の上端の前への動きが引き起こされる。後部腓装置125の柔軟な帯128は、腓脛部の上部と義足の下部、つまり先に説明したように、腓脛部と足竜骨とを連結する連結要素129、に接続されている。弾性体および/または非弾性体を用いて形成され、また、歩行中に張力が掛けられる柔軟な帯は、その長さを固定するまたは摺動式調節具130を用いて帯の重複部分の長さを変えることによって調節することができる。
【0069】
二つのばね131,132の基部が、腓脛部の上部の位置において、腓脛部と、固締具134によって腓脛部に固定されたアダプタ133のあいだに調節可能に支持されている。ばねの下方の自由端は、柔軟な帯と相互作用するように配置されている。帯に張力が掛かったとき、ばねは、帯の縦方向の範囲の大きさを変化させる。歩行中に腓脛部の上端が前に動くことによって、帯が伸張されまたは(帯に予め張力が掛けられている場合には)さらに伸張され、そして、歩行中に義足に力が負荷されたとき、エネルギーを蓄えるよう力がばねに負荷されるまたはさらに負荷される。この蓄えられたエネルギーは、義足が力から解放されたときばねから戻されて、歩行中に義足が推進力として発生する動力を増大させる。
【0070】
義足の使用前に、帯128に予め張力を掛けるために帯の長さが短かくされたとき、この帯に掛けられた張力は、義足の使用時に、弾性を有する腓脛部の上端が後に動くことを容易にするとともに、腓脛部の前への動きを制御するように作用する。また、後への動きに対して力を補填することによって、歩行の初期の立脚相において、義足は、踵接地時に足接地に対する迅速な応答を容易に得ることができるようになるが、それは、歩行中に踵が接地するとき、人の足と足関節に生ずる足底が屈曲する現象に類似している。
【0071】
義足の使用時に後部腓装置125を用いて、弾性を有する腓脛部の上端の後への動きに対して力を補填し、また、前への動きを制御することによって、義足の使用中に力の負荷または力からの解放に応答して腓脛部の上端の縦方向の動きに対する矢状面の屈曲特性を変化させることは、歩行中の義足の足関節のトルク比を変更することに各々効果を有する。歩行後期の終止相において発生する足関節の最大背屈トルクを、歩行中に踵接地後に最初に力が掛けられる足底接地に対する応答時に発生する足関節の足底屈曲トルクによって割った比率として定義された歩行中の人の足関節の自然な生理的トルク比は、11.33対1であると報告されている。後部腓装置125を用いて腓脛部の上端の縦方向の運動に対する矢状面の屈曲特性を変更することの目的は、歩行中に人の足に生ずる現象に近似させるために、義足の足関節のトルク比を増大させることである。この事は、義足を用いての適切な歩行を達成するため、また、一方が自分の足であり、他方が義足の人にとっては歩行の対称性を確保するために重要である。前への動きを制御し、また、後部腓装置125を用いることによって可能になることであるが、後への動きに対して力を補填することによって、義足に発生する足関節の最大背屈トルクが足関節の足底屈曲トルクより一桁大きくなるよう、足関節のトルク比が増大されることが好ましい。足関節のトルク比は、報告されている足関節の自然トルク比である11.33対1に対して約11対1の値になるよう大きくされることがより好ましい。
【0072】
後部腓装置の別の目的は、義足に力を負荷したとき腓装置のばね131,132に弾性エネルギーを追加して蓄え、そして、力からの解放時に蓄えた弾性エネルギーを戻して歩行中に義足が推進力として発生した動力を増大させることによって歩行中の義足の効率を向上させることである。後部腓装置125は、義足に力を負荷したとき人体に位置エネルギーを発生させ、そして、義足から力を解放したときその位置エネルギーが動的エネルギーに変換されることを利用して、人の腓腹筋群が歩行中に人の足、足関節、および腓に作用する、つまり、歩行中に人体に効率よく推進力を発生させる、のと同様に義足の目的に適うものであると考察される。義足の効率を、本発明による後部腓装置を用いることによって人の足のそれに近づけるまたはむしろそれを超えるようにすることは、たとえば、足切断者が「通常の機能」を取り戻すために重要である。
【0073】
後部腓装置125によって腓脛部の上端の前への動きを制御することは、図28〜図33に示した先の実施形態と同様に腓脛部の上端の前への動きの範囲を制限することに効果がある。また、義足124の足竜骨は、歩行中に力が負荷されたとき、縦方向の弾性を有するアーチを伸張させることによってエネルギーを蓄えることができる。この位置エネルギーは、歩行中に力から解放されたとき、推進力を発生させるための動力として戻される。図3〜図5と図8の実施形態に関連して先に説明したように、内側が外側より大きい曲率半径を有し、また、同様に、内側が外側より高い動的応答能力を有する縦方向のアーチの形状に足竜骨の足中央部が形成されているために、この実施形態は、高低の動的応答能力を備える。しかし、図6と図7のような短距離走用の足竜骨または図9と図10の説明時に言及したサイム方式による足切断者用の足竜骨を義足124に使用することも可能である。
【0074】
図43〜図45に示した義足135は、長さが調節可能な柔軟な帯137が連結索138を介して腓脛部の上端部と足竜骨の前部に接続されていること以外は図41と図42の実施形態に類似した後部腓装置136を有する。連結索138の端部は、伸張用の連結溝141によって分離され、前方に位置する内側と外側の突出片139,140の各々に接続されている。連結索は、後方に向かい、次に、連結要素144に装着されたプーリ142,143を介して帯137の先端に接続された半円形の戻し部材145へと上向きに延出する。足竜骨の弾性を有するアーチと、図41と図42の実施形態において腓脛部の上部に装着されて帯に係合するばね146は、先に説明したように、歩行中に義足が発生した推進力に追加するようエネルギーを蓄え、そして、戻すために用いられる。
【0075】
図41と図42にはメスのアダプタを示したが、本発明による図43のアダプタ133は、オスのピラミッド型アダプタであり、足切断者の下肢端部に装着されたソケットまたはその他の部品に取り付けられた矩形の相補形突起を隙間を空けて受承するための、基部側端部の角が丸められた矩形のソケットを有する。図41の破線を参照されたい。符号は付されていないが、矩形ソケットの側壁の中央に各々配置された四つのねじを用いて義足を足切断者の下肢端部の支持構造体に装着するために、ねじ込んで突起と係合させる、または、解除することが可能である。突起とソケットのあいだに隙間があり、また、メスのアダプタの四つのねじの位置の調節が可能であるために、義足と支持構造体とを縦方向と横方向に調節すること、並びに、義足と支持構造体との角度つまり傾斜を調節することができる。メスのアダプタの別の形態によると、ねじ付き固締具を用いて、アダプタ上部のソケット収容部材がアダプタの下方の基部に着脱可能に連結される。アダプタのソケットの基部に露出しているねじ付き固締具の頂部は、基部に装着されたアダプタのソケット収容部材を緩めて基部と義足に対して回動できるようにするために、アレンレンチを受承するアレンソケットを有する。このように、アダプタは、水平面での回動を可能にするが、それは、足の内輪と外輪とを臨界域、たとえば3.2mm(1/8インチ)の範囲内、に容易に収めるために必要な特徴である。
【0076】
図46と図47に示した実施形態の義足147は、腓脛部148、足竜骨149、および後部腓装置150が一体に形成されていることを特徴とする。腓脛部148は、先に説明した実施形態と同様に、足竜骨から上向きに延出して、前に突出するように湾曲した下部を有する。後部腓装置150は、弾性を有する材料を用いて形成されているとともに、基部を腓脛部の上部に結合された長くて湾曲したばねの形状であり、ばねの先端は、足竜骨の後端の開口152に延出する枢軸を備えて、ばねの先端に装着されたブラケット(符号なし)によって足竜骨の後部に枢動可能に連結されている。枢軸151の端部は、図示したように、足竜骨の開口152に固定されている。腓脛部上端の歩行中の前へのまたは後への動きに伴って、湾曲したばねの凹面部は、伸張または圧縮されてばねの運動の範囲内で可能なエネルギーを蓄える。蓄えられたエネルギーは、次に、歩行中に力から解放されたときに戻されて、使用者の体の推進力として使用可能な動力に追加される。
【0077】
図48〜図51に示した実施形態は、三つの縦分割体153〜155を有する義足152である。縦分割体の各々は、足竜骨156、腓脛部157、および後部腓装置158と一体に形成されている。縦分割体153〜155は、隙間159によって分離されているために、先端部は互いに独立して運動することができるが、基部、つまり腓脛部の上端、は一体である。義足は、個別に形成された各々の縦分割体の基部側端部を固締具によって連結することによって構成することができる。代替としては、弾性を有する縦分割体の上端を連結し、そして、隙間159によって縦分割体を互いに分離させることにより、先端部が独立して可動自在になるよう一体に形成することもできる。
【0078】
義足152の中央の縦分割体154は、内側と外側の縦分割体153,155より幅が広く、また、その先端は、他の縦分割体153,154の先端より高い位置にある。この構成は、足竜骨の前部と後部を伸張用の連結溝により縦方向に分離して複数の突出片を画成することに関連して先に説明したのと同様に、凹凸のある面または傾斜した面の上で体を支えるときに好都合である。義足に用いられる複数の縦分割体の数は、三つに限定されるものではなく,また、縦分割体の各々の相対的な幅の大きさも、ここに示した実施形態とは異なるように構成することができる。縦分割体の各々の後部腓装置158の湾曲したばねの先端は、図46と図47に示した実施形態の場合のように足竜骨に枢動可能に連結することに替えて、足竜骨156の足後部と一体に形成されている。先に別の実施形態について図示し、そして、説明したように、適切な形状のアダプタ(図示せず)が、使用者の下肢端部に装着されたソケットの下端部と連結するために義足152の腓脛部の上端に結合される。
【0079】
図52〜図54は、別の形状に構成配置された本発明による義足を示し、義足160は、足竜骨163の足後部162と一体に形成された腓脛部161を有する。弾性を有する材料を用いて形成された腓脛部と足後部は、図示したように、固締具165,166によって弾性部材164に連結されて、足前部と足中央部とを形成する。図52〜図54には示されていないが、先に開示したように、後部腓装置を義足の一部として形成することができる。同様に、ソケットの下端部に連結するためのアダプタを腓脛部161の上端に取り付けることができる。
【0080】
これにより、例示した実施形態の説明を終える。本発明について数多くの実施形態についての図面を参照して説明したが、当業者はその他の数多くの変更例や実施形態を案出することが可能であり、それらは、この発明による原理の精神と範囲とに含まれると了解されるものとする。たとえば、本発明による義足の腓脛部の下部は、放物線形または渦巻き形状に限定されるものではなく、義足の足関節部を形成するために足竜骨に連結したとき、義足が所望の運動をするよう下向きに突出した双曲線形または曲線形に構成することができる。後部腓装置に用いられる長い柔軟な部材は、帯に限定されるものではなく、可撓性を有するワイヤのような別の種類の部材を用いることができる。同様に、後部腓装置のコイルばねは、図示したコイルばねとは異なっていてもよい。例として、エネルギーを蓄えて放出するようにするために、義足の縦方向で可能な限りの高さで横方向に延在する可撓性を有する金属製の管またはプラスチックを、長く柔軟な部材と腓脛部の上端とのあいだに介在させることもできる。また、種々の実施形態に用いられた製造用の材料を含む特徴は、互いに入れ替えて使用することができる。より具体的には、本発明の精神から逸脱することなく、上述した開示内容、図面、および添付特許請求の範囲に含まれる構成部品および/または当該構成部品の組合せに合理的な変更と修正を行うことが可能である。構成部品および/または構成配置について変更と修正を行うことが可能であることに加えて、当業者には、別の使用方法も、また、明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明による義足の足竜骨と腓脛部の各々の曲率半径R1,R2を二つの隣接した円によって表した模式図であり、これにより、動的な応答能力と、二つの円を結んだ接線Aに対して直交した矢印B方向への歩行中の足の動きと、が生み出される。
【図2】図1に類似の図であるが、接線A1に直交した矢印B1が図1の場合より水平方向を向くよう、動的応答能力と歩行中の足の動きの水平成分を増大させ、かつ、垂直成分を減少させるために本発明による義足の二つの円のアライメントを変更した形態を示す。
【図3】足切断者の下肢端部に義足を装着するための義足用アダプタと、それに連結された支柱とを備えた本発明の例示としての実施形態による義足の側面図である。
【図4】図3の義足用アダプタと支柱を備えた義足の正面図である。
【図5】図3と図4に示した実施形態の平面図である。
【図6】本発明による義足に用いることができ、とりわけ短距離走用の本発明による別の足竜骨の側面図である。
【図7】図6の足竜骨の平面図である。
【図8】図3に示した高低の応答特性とともに、双方向への作動能力を備えた義足の足竜骨の下面図である。
【図9】サイム式足切断手術を受けた足切断者が短距離走を行うときにとりわけ好都合な、本発明による義足に用いられる別の足竜骨の側面図である。
【図10】図9の足竜骨の平面図である。
【図11】サイム式による足切断者用であり、高低の応答特性とともに双方向への作動能力を備えた本発明による義足に用いられる足竜骨のさらなる変更例である。
【図12】図11の足竜骨の平面図である。
【図13】足竜骨の厚さにテーパが付けられ、たとえば、厚さが足竜骨の足中央部から足後部にかけて漸減している本発明による足竜骨の側面図である。
【図14】足竜骨の足中央部から足前部と足後部の両方にかけて厚さにテーパが付けられた別の形状の足竜骨の側面図である。
【図15】腓脛部の上端にかけて厚さにテーパが付けられた本発明による義足の放物線形の腓脛部を僅かに上前方から見たときの側面図である。
【図16】図15に類似しているが、中央部から上端と下端の両方にかけてテーパが付けられた別の腓脛部を示す側面図である。
【図17】腓脛部の厚さに中央部から上端と下端の両方にかけてテーパが付けられた義足用のC字形腓脛部の側面図である。
【図18】腓脛部の厚さが中央部から上端にかけて漸減する、義足用の別の例としてのC字形腓脛部の側面図である。
【図19】両端部から中央部にかけて厚さが漸減する、義足用のC字形腓脛部の側面図である。
【図20】上端部においてだけ厚さにテーパが付けられたS字形腓脛部の別の例である。
【図21】両端にかけてテーパが付けられた、本発明による義足用のJ字形腓脛部の側面図である。
【図22】図21に類似しているが、厚さが上端にかけてだけ漸減するJ字形腓脛部を示す。
【図23】図3に示した腓脛部を足竜骨に取付けるための、本発明による調節式締結構造に用いられる合金製またはプラスチック製の連結要素を僅かに上方から見たときの斜視図である。
【図24】足切断者の下肢に装着される支柱に図3〜図5に示した義足を連結するために用いられ、また、図28と図29の義足に用いても有用である義足用アダプタを僅かに側部前方から見たときの斜視図である。
【図25】図3のそれに類似しているが、縦方向に離間して配置され、連結要素を腓脛部と足竜骨の各々に結合する二つの着脱式固締具とともに連結要素が用いられている状態を示す本発明による別の義足の側面図である。
【図26】図25の連結要素の拡大側面図である。
【図27】図25の義足の腓脛部の拡大側面図である。
【図28】図3と図25に示した義足に類似しているが、義足の使用時に腓脛部に対する力の負荷または力からの解放に応答した腓脛部上端の運動の範囲を制限するための運動制限・緩衝装置が、腓脛部の上部と下端に各々連結されているさらに別の例示としての実施形態による義足の側面図である。
【図29】図28に示した義足を左側から見たときの義足の正面図であり、義足の腓脛部の縦方向の伸張用溝が示されている。
【図30】図28に示した義足を右側から見たときの義足の背面図である。
【図31】図28に示した義足の底面図である。
【図32】図28に示した義足の腓脛部と足竜骨の側面図であり、義足の使用時に腓脛部に対する力の負荷または力からの解放の結果生ずる腓脛部上端の運動を例示している。
【図33】図28〜図32に示した義足に類似しているが、腓脛部の伸張による上端の運動の範囲だけを制限するために柔軟な帯が用いられているさらに別の例示としての実施形態による義足の側面図である。
【図34】足切断者の下肢端部に装着される義足用ソケットに義足を固定するために、腓脛部の上端に連結されたアダプタに配置されたアライメント機能付き連結装置を有する別の実施形態による義足の側面図であり、アライメント機能付き連結装置は、義足を義足用ソケットに対して横方向および縦方向に摺動させて調節することを可能にする。
【図35】図34に示した義足を左側から見たときの義足の正面図である。
【図36】図34に示した義足を右側から見たときの義足の背面図である。
【図37】本発明による右足用義足の別の足竜骨の平面図であり、足の後端は前面に対して平行であり、即ち足の縦軸A−Aに対して直交しており、また、足後部の基部側の凹面部も縦軸A−Aに対して直交している。
【図38】図37に示した足竜骨を横方向から見たときの足竜骨の斜視図である。
【図39】図37と図38に示した足竜骨に類似しているが、縦軸A−Aに対して鈍角Δ’だけ傾斜した足後部の基部側の凹面部の縦軸F1−F1を有しており、これにより、足後部の外側の突出片が内側の突出片より実質上長くなり、また、可撓性が増大して、歩行中の踵接地時に足の外転を容易にするようにされた本発明による別の足竜骨の平面図である。
【図40】図39に示した足竜骨を横方向から見たときの足竜骨の斜視図である。
【図41】腓脛部の上部と腓脛部を足竜骨に連結するための連結要素とに接続された弾性を有する後部腓装置を有する別の実施形態による義足の側面図であり、後部腓装置は、歩行中の力の負荷時に後部腓装置のばねにエネルギーを蓄え、また、蓄えたエネルギーを力からの解放時に戻して歩行中の義足が推進力として発生する動力を増大させる。
【図42】図41に示した義足の背面図である。
【図43】歩行中の義足が推進力として発生する動力を増大させるための後部腓装置を有する別の実施形態の義足の側面図であり、後部腓装置の長さが調節可能な帯は、腓脛部の上部と足竜骨の前端のあいだに張力を掛けて装着されている。
【図44】図43に示した義足の背面図である。
【図45】図43と図44に示した義足の下面図であり、足竜骨の各々の側部に結合され、後部に向けて張られた伸張用索が示されている。
【図46】別の実施形態による義足の側面図であり、腓脛部、足竜骨、並びに後部腓装置が一体に形成され、また、後部腓装置のばねの先端は、足竜骨の後端に枢動可能に連結されている。
【図47】図46に示した義足の背面図である。
【図48】図46と図47に示した義足に類似しているが、足竜骨、腓脛部、および後部腓装置を一体に形成し、並べて配置された三つの縦分割体は、各々の先端は互いに可動自在であり、また、腓脛部に隣接した端部が連結されており、さらに、各々の先端の面がその外側の縦分割体より高い位置に配置されている実施例の義足の側面図である。
【図49】図48に示した義足の平面図である。
【図50】図48と図49に示した義足の正面図である。
【図51】図48〜図50に示した義足の背面図である。
【図52】本発明による別の形状の腓脛部と足竜骨の側面図であり、腓脛部は、足竜骨の後部と一体に形成され、また、義足の足前部と足中央部との形成部材に固締具によって連結されている。
【図53】図52に示した腓脛部と足竜骨の平面図である。
【図54】図52と図53に示した腓脛部と足竜骨の背面図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、動的応答能力を備え、これらの能力が負荷された力の力学系に応答するように調整されたとき、優れた動的応答能力を発揮することができる高性能な義足に関する。
【背景技術】
【0002】
下肢補綴用の無関節義足は、マーチン(Martin)その他の米国特許第5897594号に開示されている。人の足関節の機能に近づけるために剛構造の義足に関節を設けてきたそれ以前の解決策とは異なり、マーチンその他の無関節義足は、足形成形物の内部に弾性を有する足挿入体を配置している。足挿入体は、縦断面で見たとき凹面部が後を向いた概ねC字形に形成されていて、補綴部に掛かる負荷をC字形挿入体の上端で支承し、そして、C字形挿入体の下端を介してその負荷を連結された板ばねに伝達するように構成されている。板ばねは、下から見た形状は凸状であり、足挿入体より前の足先端部まで足底部に対して概ね平行に延出している。マーチンその他による発明は、使用者が自然な歩行ができるよう無関節義足の踵部の衝撃緩衝能力、弾性、踵からつま先への歩行、および横安定性を改良するという目的に基づいており、使用者に通常の歩行だけではなく、肉体的運動をすることや、スポーツを楽しむことができるようにすることを意図している。しかし、この公知の義足は、動的応答特性に制限がある。したがって、足切断者が、たとえばランニング、跳躍、短距離走、スターティング、停止、および中断のような競技上の運動能力を向上させることができる改良された応用力学的構造を有するより高性能な義足が求められている。
【0003】
別の義足がヴァン・L・フィリップス(Van L. Phillips)によって提案されており、それは、先行技術による義足の構造上の制限と、そのための不十分な性能のために従来は不可能であった種々の運動を、足切断者に行うことができるようにするための迅速性と運動特性とを付与するものである、と主張されている。ランニング、跳躍、およびその他の運動がこれらの公知の義足によって可能になり、また、これらの義足は、使用者の正常な側の足と同様に使用することができる、と報告されている。例として、米国特許第6071313号、同第5993488号、同第5899944号、同第5800569号、同第5800568号、同第5728177号、同第5728176号、同第5824112号、同第5593457号、同第5514185号、同第5181932号、および同第4822363号を参照されたい。
【発明の開示】
【0004】
足を切断した運動選手により高いレベルの競技ができるようにするために、改良された応用力学的構造を有する高性能義足が求められており、高性能義足は、人の足を凌ぐことが可能であり、また、先行技術による義足をも凌ぐことができる。足を切断した運動選手にとっては、改良された応用力学的構造、高低の動的応答性、および実際的には課題に応じて変わる運動の水平成分と垂直成分を向上させるための微調整が可能なアライメントの調節機能を備えた高性能義足を入手することが関心事である。
【0005】
本発明による義足は、これらの求めに応じたものである。ここに開示した実施形態の一例によると、本発明による義足は、一方の端部側の足前部、他方の端部側の足後部、および足前部と足後部のあいだに延在するとともに、上向きに湾曲した比較的長い足中央部を含んで縦方向に延在する足竜骨を有する。腓脛部は、また、下向きに突出するように湾曲した下部を有する。腓脛部の湾曲した下部が、調節式締結構造を介して足竜骨の上向きに湾曲した足中央部に取り付けられて、義足の足関節部を形成する。
【0006】
調節式締結構造を採用しているために、腓脛部と足竜骨とのアライメントは、義足の性能を調節するために足竜骨の縦方向で互いに調節することが可能である。互いに対向して配置されている足竜骨の上向きに湾曲した足中央部と腓脛部の下向きに突出するように湾曲した下部との足竜骨の縦方向のアライメントを調節することによって、義足の動的応答特性と運動性能とを、必要・所望の水平方向および垂直方向の線形速度と関連して特定の課題を達成するように変更することができる。高低の動的応答能力はもとより双方向への作動特性を有する多用途義足がここに開示され、これらの能力と特性は、スポーツおよび/または娯楽活動に参加する足切断者の機能を向上させるものである。また、特に短距離走用の義足も開示される。
【0007】
義足は、また、義足の使用時に腓脛部に対する力の負荷または腓脛部の力からの解放に応じて運動する腓脛部の上端の運動の範囲を制限するための装置を含むことができる。一実施形態において、装置は、腓脛部の上端と下端に連結されたピストンとシリンダを含むユニットであり、当該ユニットは、運動の範囲を制限するとともに、腓脛部の圧縮と伸張のときに貯蔵されるまたは放出されるエネルギーを吸収して緩衝するために、少なくとも一種類の加圧流体が充填されている。別の実施形態においては、後部腓装置が、義足に対する力の負荷時にそれ自身の位置エネルギーを蓄え、そして、蓄えたエネルギーを力からの解放時に戻して弾性エネルギーの総貯蔵能力に追加することによって、歩行中に義足が推進力として発生する動力を増大させる。
【0008】
本発明のこれらの並びにその他の目的、特徴、および利点は、開示した本発明の例示としての実施形態についての以下の詳細な説明と添付図面とを検討することによってより明白になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
ここで図を参照すると、図3〜図5に例示した実施形態において、義足1は、一方の端部側の足前部3、他方の端部側の足後部4、および足前部と足後部のあいだに延在する上向きに湾曲した足中央部5を含み縦方向に延在する足竜骨2を有することが判る。足中央部5は、この例示した実施形態において、足前部と足後部のあいだの縦方向の全長に亘って上向きに突出するように湾曲している。
【0010】
義足1の直立した腓脛部6の下向きに突出するように湾曲した下部7が、着脱式固締具8と連結要素11によって足竜骨の足中央部5に隣接する後部面に取り付けられる。固締具8は、例示した実施形態においてはナットとワッシャを有する単一のボルトであるが、締め付けられたときに足竜骨に配置された腓脛部を確実に保持可能な着脱式のクランプまたはその他の固締具であってもよい。
【0011】
縦方向に伸びた開口9が、足竜骨の足中央部5に隣接する後部面に形成されている(図8参照)。また、縦方向に伸びた開口10が、たとえば図15に示したような腓脛部6の湾曲した下部7に形成されている。着脱式の固締具8は開口9,10を貫通して延在しており、これにより、特定の課題を達成するよう義足の性能を調整するために固締具8が緩められたときまたは取り外されたとき、図5に線A−Aで示した縦方向における腓脛部と足竜骨とのアライメントの調節が可能になる。したがって、固締具8、連結要素11、および縦方向に伸びた開口9,10は、腓脛部を足竜骨に取り付けるための調節可能な締結構造を構成するとともに、義足の足関節部を形成する。
【0012】
腓脛部6と足竜骨2とのアライメントを調節することの意味は、足竜骨の足中央部5と腓脛部6の対向する位置に隣接して配置されたドーム状つまり突出するように湾曲した面を表す二つの曲率半径R1,R2が隣接して示されている図1と図2を検討することによって理解できるであろう。そのような二つの曲率半径を隣接させて検討すると、運動可能な方向は、二つの曲率半径のあいだに引かれた図1では接線Aに、図2では接線A1に直交する方向に存在することが判る。これら二つの曲率半径の相互関係が、結果として生ずる運動の方向を決定する。したがって、義足1に対する動的応答力の負荷は、この関係に依存する。凹面の曲率半径が大きければ大きいほど、動的応答能力が大きくなる。一方、極率半径が小さければ小さいほど、急速な応答が可能になる。
【0013】
本発明による義足の腓脛部と足竜骨とのアライメントが調節可能であるために、競技時の義足の水平方向または垂直方向の線型速度に影響を与えるために湾曲した面の位置を移動させることができる。たとえば、義足1の水平方向における線型速度の性能を向上させるために、腓脛部の湾曲した面と足竜骨の湾曲した面との関係に影響を与えるようアライメントを調節することが可能である。つまり、水平方向の線型速度特性を向上させるために、図1と対比させて図2に示すように、下側、即ち足竜骨、の曲率半径R2を有する湾曲した面の位置を出発位置より遠位に位置させることができる。これによって、義足1の動的応答特性と運動性能とを水平方向により強く振り向け、結果として、負荷された力の大きさが同じ場合、水平方向により大きい線型速度を発生させることができる。
【0014】
足切断者は、水平方向と垂直方向の線型速度に関連する各人の必要性を満たすよう、各々の競技に合った設定を練習を通して見出すことができる。たとえば、ジャンパーとバスケットボールの選手は、短距離走者より垂直方向のより大きい跳躍を必要とする。連結要素11は、プラスチック製または合金製のアライメント用の連結部材であり(図3、図4および図23参照)、取り付けられた足竜骨2と腓脛部6のあいだに挟み込まれている。着脱式固締具8は、連結要素の開口12を貫通している。連結要素は、腓脛部の取付部と足竜骨の足中央部5に隣接した後部面に沿って延在する。
【0015】
腓脛部6の湾曲した下部7は、放物線形であり、放物線の最小曲率半径部が下部に配置されるとともに、下部からは、上向きに、そして、最初は放物線形になるよう前に延出する。後を向いた凹面部が、図3に示したように腓脛部が湾曲することによって形成されている。放物線形の有利さは、下端に小さい曲率半径部を設けることによって応答特性を迅速なものにしつつも、その隣接した終端部に比較的大きい曲率に付随する増大した水平方向の線型速度を発生させるための動的応答特性を向上させる、という点にある。放物線形の上部の大きい曲率半径部は、図1と図2を参照して説明した接線Aがアライメントを変更したときにより大きく水平方向を向くように維持することが可能であり、これにより、水平方向の線型速度が増大する。
【0016】
放物線形の腓脛部は、人の歩行中にそれ自体を圧縮するまたはそれ自体がコイル状になることによって最初の接地に対する地面からの反力に対応する。この事は、放物線の曲率半径を小さくし、その結果、圧縮に対する抵抗が小さくなる。逆に、人の歩行中に放物線形の腓脛部が踵離地時の地面からの反力(GRFs)に対して伸張することによって応答する場合、この事は、放物線の曲率半径を大きくし、その結果、抵抗が、先に述べた圧縮時の抵抗よりはるかに大きくなる。これらの抵抗は、人の歩行中の人体の前方と後方の腓腹筋群の機能に関係している。人の歩行中の最初の足底接地時には、前方の小さい腓腹筋群が偏倚して収縮することによってGRFsに応答して足を地面にまで下げ、そして、背屈モーメントを発生する。足底接地から足尖離地のあいだにおいては、後方の大きい腓腹筋群が同様に偏倚して収縮することによってGRFsに応答し、そして、足底による大きい屈曲モーメントが発生する。このモーメントの大きさは、腓の前部と後部の筋群の大きさの差に関係している。したがって、背屈に対する義足の腓脛部の抵抗と人の歩行中の足底に発生する屈曲モーメントとを近似させることによって、正常な歩行が可能になる。放物線の曲率を変えることによって抵抗を変更できるために、義足の腓脛部を、人が歩行、ランニング、および跳躍をするときの人体の腓腹筋群の機能に近づけることによって、義足の効率化を達成することが可能になる。
【0017】
人は時速約4.8km(3マイル)の速さで歩く。1.6km(1マイル)を4分で走る走者は時速19.2km(12マイル)で走り、100mを10秒で走る短距離走者は時速33.6km(21マイル)で疾走することになる。これは、1対4対7の割合である。各々の課題に求められる水平成分は、運動の速度が上がるにしたがって大きくなる。したがって、義足の腓脛部の曲率の大きさを予め決定することが可能である。歩行者は、腓脛部の放物線の曲率半径を中距離走者と短距離走者のそれより小さくすることが必要である。短距離走者は、歩行者の場合より7倍も大きい腓脛部の放物線の曲率が必要である。この関係は、歩行者、ランナー、および短距離走者の各々について放物線の曲率を決定する方法を表している。短距離走者は大きい範囲の運動を行うことが求められているために、彼ら用の腓脛部は、この運動に伴って増大する負荷を支承することができるよう強力でなければならないが、これは、重大なことである。広いあるいは大きい放物線形の腓脛部は比較的平らな曲率を有するが、この腓脛部は、運動の範囲が広がるにつれて構造上より大きい強度を有しなければならない。
【0018】
支柱用アダプタ13は、腓脛部6の上部に固締具14によって連結されている。同様に、アダプタ13は、支柱15の下部に固締具16によって固定されている。支柱15は、下肢端部に装着された支持構造体(図示せず)によって足切断者の下肢に締結される。
【0019】
足竜骨2の足前部、足中央部、および足後部は、例示した実施形態において弾性を有する材料を用いて一体に形成されている。たとえば、地面からの反力によって変形させられたとき復元する特性を有する硬質の材料、具体的にはプラスチック、を用いることができる。より具体的には、足竜骨と腓脛部とは、ポリマーの母材に積層された補強用ファイバを有する積層複合材を用いて形成することができる。特に、エポキシ系熱硬化性樹脂、射出成形に用いられるデルラン(Delran)(登録商標)という商品名のプラスチック、または脱気したポリウレタン共重合体に積層された高強度グラファイトを、足竜骨と腓脛部との形成に用いてもよい。これらの材料に関係する機能上の特性は、軽量で最小のクリープを有しながら大きい強度を備えることである。熱硬化性エポキシ樹脂は、義足業界の基準にしたがって真空の元で積層される。ポリウレタン共重合体は凹型の金型に流し込まれ、押し出し成形されたプラスチックは、機械加工することができる。用いられる材料は、各々好都合な点と不都合な点とを有する。足竜骨と腓脛部用の積層複合材は、また、補強用ファイバと機械的伸びを良好にするための熱可塑性ポリマーの母材とを有し、業界の基準にしたがって製造された熱形成型(プレプレッグ)の積層複合材であることが好都合であることが見出された。この種の好適で市販されている複合材は、メリーランド州アーヴル・デュ・グレースのサイテック・ファイバライト社(Cytec Fiberite Inc.)が製造しているCYLON(登録商標)である。また、腓脛部と足竜骨は、たとえば、ばね鋼、ステンレススチール、チタン合金、またはその他の合金のような弾性を有する金属材料を用いて形成することも可能である。
【0020】
弾性を有する材料の物理的性質は、それらが剛性、可撓性、および強度に関する限り、材料の厚さによって全てが決定される。薄い材料は、同一の密度を有する厚い材料より容易に変形する。用いられた材料の種類とその物理的性質が、義足の足竜骨と腓脛部の剛性と可撓性についての特性に関係する。足竜骨と腓脛部の厚さは、図3〜図5に例示した実施形態においては一様であるまたは対称形であるが、以下で説明するように、これらの構成部品の厚さを縦方向において、たとえば、足後部と足前部の領域を薄くし、足中央部の屈曲に対しての応答性が高まるように、変化させることができる。
【0021】
義足1が容易に高低の動的応答能力を持つことができるようにするために、足中央部5は、縦方向に湾曲したアーチを有し、縦方向アーチの内側は外側より高い動的応答能力を有するように形成されている。この目的のために、例示した実施形態において、縦方向アーチの凹面部の内側は、外側より大きい曲率を有する。
【0022】
足中央部5の縦方向アーチの凹面部の内側と外側における各々の曲率の大きさの相関関係は、足竜骨2に設けられた足底の体重を支承する領域の前方の面と後方の面としてさらに定義される。図8において、足中央部5の前方の線T1−T2は、足底の前部に位置する体重支承領域を表す。線P1−P2は、足中央部5の足底の後部に位置する体重支承領域を表す。足2の外側に位置する足底の体重支承領域は、T1−P1間の距離によって表される。足2の内側に位置する足底の体重支承領域は、P2−T2間の距離によって表される。T1−P1とP2−T2によって表された距離は、曲率の大きさを決定し、よって、高低の動的応答についての相関関係が決定まり、これら二つの線T1−T2とP1−P2を交わらせるまたは逸らせることによって相関関係を変更することができる。したがって、高低の動的応答能力を、構造設計によって決定することができる。図8に示したように、この高低の動的応答能力を発生させるためには、足前部の体重支承領域T1−T2は、足竜骨の縦軸A−Aに直交した方向から僅かに5°傾斜しているだけでよい。
【0023】
足後部4の後端17は、踵接地時の衝撃吸収のために屈曲することによって、接地したときの地面からの反力に応答するよう上向きに湾曲したアーチに形成されている。足後部4によって構成される踵は、歩行の最初の接地時に足後部が容易に上向きに湾曲できるようにするために、後方の外側角18を内側角19より後方、かつ、外側に配置して形成されている。足前部3の前端20は、歩行の立脚相後期の踵離地・足尖離地の姿勢において背屈した人のつま先に近似させるために、上向きに湾曲したアーチに形成されている。ゴムまたは発泡材のパッド63,64が、緩衝材として足前部と足後部の下面に取り付けられている。
【0024】
義足の双方向への作動能力の向上は、足前部3の背側と足底側とを貫通して伸びる伸張用の内側および外側の連結孔21,22によってもたらされる。伸張用の連結溝23,24が、対応する孔の各々から足前部の先端まで伸びて、伸張用の内側、中央、および外側の突出片25〜27を形成し、これによって、足竜骨の足前部が双方向へ作動する能力の向上がもたらされる。図5に示すように、伸張用の連結孔21,22は、横断面内の線B−Bに沿って配置されており、線B−Bは、伸張用の内側連結孔21を伸張用の外側連結孔22より前方に配置することによって足竜骨の縦軸A−Aに対して35°の角度αだけ傾斜している。
【0025】
図5において、縦軸A−Aに対する線B−Bの角度αは僅かに5°であるが、それでも高低の動的応答性を生じさせることができる。この角度αが変化したとき、図8に示した線T1−T2の角度Zも変化するようになっている。矢状面に投影された伸張用の連結孔21,22は、横断面に対して45°の角度だけ傾斜しており、また、連結孔の背側は、足底側より前方に位置している。この構成にすることにより、着脱式固締具8から伸張用の外側連結孔22までの距離が、着脱式固締具から伸張用の内側連結孔21までの距離より短くなり、よって、足中央部が高低の動的応答性を有するようにするために、義足1の側部が、内側より短いつま先のレバー部を有する。さらに、着脱式固締具8から線T1で表された足底の外側に位置する体重支承面までの距離が、着脱式固締具から線T2によって表された足底の内側に配置された体重支承面までの距離より短くなり、よって、足中央部が高低の動的応答性を有するようにするために、義足1の側部が、内側より短いつま先のレバー部を有する。
【0026】
足竜骨2の足後部4の前部は、足後部4の背側と足底側とを貫通して伸びる伸張用の連結孔28をさらに含む。伸張用の連結溝29が、連結孔28から足後部の後縁まで伸びて、伸張用の突出片30,31を形成する。これらの事が、足の後部における双方向への作動能力の向上をもたらす。変更例において、伸張用の連結孔28,21,22は、図8に示すように、連結孔に隣接した領域に穿孔された応力緩和孔として作用する各々別の小孔28A,21A,22Aを有していてもよい。これらの別の小孔は、足竜骨に発生する振動の伝播方向を変化させることによって、裂け目および/または損傷の発生を低下させることができる。
【0027】
足竜骨2の足中央部5と足前部3との背側は、図3に示したように、上方を向いた凹面部32を形成して、人の足の第5肋軸周りの運動を機能上模倣する。つまり、凹面部32は、人の足の第2から第5中足骨の低速時の回転軸と同様に、歩行中に第5肋軸周りの運動をより容易に行うことができるよう内側が外側より前方に配置されている足竜骨の縦軸A−Aに対して5°から35°の角度βだけ傾斜した縦軸C−Cを有する。
【0028】
双方向への作動能力の重要性は、足切断者が凹凸のある地面上を歩くとき、または、運動選手が足の内側または外側を切断したときに理解できるものである。ベクトルで表された地面からの反力の向きは、矢状面の方向から前方面への成分を有するように変化する。地面からの反力は、外側に向けて押す足の方向とは逆の内側に向けて足を押す。この結果、腓脛部は内側に傾斜し、そして、体重が足竜骨の内側構造部材に掛けられる。これらの圧力に対応して、足竜骨2の伸張用の内側突出片25,31は背屈し(上向きに反って)、次に、下向きに湾曲し、そして、伸張用の外側突出片27,30は足底のように屈曲して(下向きに反って)、次に、上向きに湾曲する。この運動は、足の足底面を地面に対して平らに配置しようする試みである(足底度)。
【0029】
本発明による別の、とりわけ短距離走用の足竜骨33を、本発明の義足に用いてもよい(図6と図7を参照されたい)。短距離走中の体の重心は、殆ど完全に矢状面の方向を向く。義足は、低い動的応答特性を有する必要はない。したがって、足竜骨2の場合のように、足前部と足中央部の各々の凹面部の縦軸を5°から35°だけ外向きに傾斜させる必要はない。それよりも、凹面部の縦軸D−Dの方向は、図6と図7に示したように、前面に対して平行になっていなければならない。これにより、短距離走用の足竜骨は、矢状面方向だけに応答するようなる。さらに、線E−Eに沿った足前部と足中央部の伸張用の連結孔34,35の向きは、前面に対して平行である、即ち、外側の孔35が前方に移動して内側の孔34に並ぶことによって、前面に対して平行にされている。また、足竜骨33の足前部の終端部36も前面に対して平行にされている。足竜骨の足後部の終端踵部37も、また、前面に対して平行になっている。これらの変更は、義足の多用途能力にはマイナスの方向の影響を与える。しかし、その性能は特定の課題を達成できるようになる。短距離走用の足竜骨33の別の変更例は、足前部のつま先肋領域において、足竜骨2の場合の15°の背屈が、足竜骨33においては25°〜40°に拡大されている。
【0030】
図9と図10は、サイム式切断法により足を切断した足切断者が短距離走を行うときにとりわけ有利な、本発明による義足用の別の足竜骨38を示す。この目的のために、足竜骨38の足中央部は、腓脛部の湾曲した下部を着脱式固締具によって足竜骨に取り付けるための、後部に配置された上向きの凹面部39を含む。この足竜骨は、全ての下肢切断者によって使用可能である。足竜骨38は、サイム方式による足切断者にあり得る長い残肢に対しても使用可能である。その使用特性は、動的応答性能が際立って迅速なことである。その使用は、長い残肢を有する足切断者に特定されるものではない。それは、下腿切断者および大腿切断者の全てに使用可能である。図11と図12に例示した実施形態の足竜骨40も、また、サイム式足切断者用の凹面部41を有し、この足竜骨を用いることによって、図3〜図5と図8に例示した実施形態と同様に、義足1は、高低の動的応答特性と、双方向への作動能力とを有するようになる。
【0031】
義足1用の数種類の足竜骨の機能上の特性は、形状と設計上の特徴とに関係付けられており、それらは、凹面形状、凸面形状、曲率の大きさ、伸張性、圧縮性、および材料の物的性質に関係しており、そして、これら全ての特性が、歩行、ランニング、および跳躍運動をするとき地面からの力と関係を持つ、つまり地面からの力に反発する。
【0032】
図13の足竜骨42は、足竜骨の厚さが足中央部から足後部の後方にかけて漸減していることを除くと、図3〜図5と図8に例示した実施形態に類似している。図14の足竜骨43は、その厚さが、前端および後端の両方にかけて漸減している、つまりテーパを有する。同様な厚さの変更例が、図15の腓脛部44と図16の腓脛部45に示されており、両方とも義足1に用いることができる。足竜骨と腓脛部の各々の設計は異なる機能上の結果をもたらし、これらの機能上の結果は、種々の競技関連の課題の達成度を向上させるための特定の水平方向と垂直方向の線型速度に関係している。複数の種類の腓脛部の構成を組み込むことと、足竜骨と腓脛部のあいだの設定の調節とが可能であるために、足切断者または補綴技師は、幅広い種類のスポーツとレクレーションの中から選択した一つの運動について義足の性能が最高になるよう調整することが可能な腓脛部を備えた義足を製造することができる。
【0033】
義足1用の別の腓脛部は、図17〜図22に示されており、C字形の腓脛部46,47、S字形の腓脛部48,49、およびJ字形の腓脛部50,51を含む。腓脛部の上部は、また、直線状の垂直端部を有していてもよく、ピラミッド形の装着板が、この基部側端部に取り付けられる。オス型のピラミッドが、図28〜図30と図33〜図36に示すように、腓脛部のこの垂直端部にボルトで取り付けられる。別の実施形態において、腓脛部の基部は、足切断者の下肢に装着されたソケットおよび/または義足の別の部品の前面および/または後面に取り付けてもよい。隣接したオス型のピラミッドと遠位の足竜骨を受承するために、プラスチックまたはアルミニウムの充填材を、腓脛部の基部側端部と遠位の端部に設けられた長い開口に充填することができる。本発明の義足は、使用の柔軟性と多用途性を維持するために、好ましくは標準化されたユニットまたは大きさを用いて形成されたモジュール式装置である。図28に示された実施形態の符号88が、腓脛部の基部側端部に取り付けられたピラミッド形の装着板を示す。
【0034】
全てのトラック走行関連の競技は、反時計回りに行われる。本発明の別の、随意の特徴は、そのようなカーブした走路に沿って走行する足に作用する力を考慮に入れている。求心性の加速度は、物体が湾曲した経路に沿って運動するとき、回転の中心に向けて作用する。ニュートンの第三の法則がエネルギーの作用に適用される。大きさが等しく、そして、反対方向に作用する反力が存在する。したがって、全ての「求心性」の力に対して、「中心から離脱」する力が存在する。求心力は回転の中心に向かって作用し、反力である遠心力は回転の中心から離れる方向に作用する。走者がトラックのカーブを走行しているとき、求心力は走者をカーブの中心に向けて引き寄せ、遠心力はカーブの中心から遠ざけるように作用する。走者を外向きに傾けようとする遠心力を打ち消すために、走者は、内側に傾斜する。走者がトラックを走る方向がいつも反時計回りである場合には、左側が、トラックの内側に当たる。したがって、本発明の特長によると、右用と左用の義足の腓脛部の左側を右側より薄くして、足切断者のカーブ走行性能を向上させることができる。
【0035】
数種類の実施形態における足竜骨2,33,38,42,43は、各々長さが29cmであり、図3〜図5並びに別の腓脛部と足竜骨を示した数種類の図において、義足1の各部の大きさは正しい寸法の比を用いて示されている。しかし、当業者には容易に理解できるように、義足の特定の寸法は、義足を付ける足切断者の身長、体重、およびその他の特徴に合わせて変更可能である。腓脛部の長さと弾性モジュラスが、弾性エネルギーを蓄える能力と容量を決定する。この貯蔵された弾性エネルギーが、機械的機構を介して方向性と大きさを有するベクトルで表される運動力に変換される。したがって、腓脛部の長さが長ければ長いほど、推進力が大きくなる。最高レベルの運動選手のためには、腓脛部の基部側の取付け位置は、義足の構成部品との関係において許される限り基部に近接するようにしなければならない。
【0036】
ここで、歩行とランニングとの歩行周期の立脚相における、義足1の動作を検討する。慣性、加速、および作用・反作用に関するニュートンの運動の三つの法則が、足2の運動力学の基礎である。作用・反作用の法則であるニュートンの第三の法則から、足が地面を押すとき、地面は、大きさは同じであるが、足が地面を押す方向とは反対の方向に足を押すことが知られている。これらは、地面からの反力として知られている。人の歩行、ランニング、および跳躍運動に関しては多くの科学的研究がなされてきた。力板を用いた研究が、ニュートンの第三の法則が歩行中に見られることを我々に教えてくれる。これらの研究から、我々は、地面が足を押す方向について知っている。
【0037】
歩行とランニングを行っているときの立脚相は、減速期と加速期とにさらに分割可能である。義足が接地するとき、足は地面を前に向けて押し、そして、地面は、大きさは同じであるが、反対の方向に押し返す、つまり、地面は義足を後に向けて押す。この力が、義足を動かす。歩行とランニングを行っているときの立脚相の分析は、接地点が、図5と図8に示したように、足の内側より後方に偏倚した外側に位置する外側角18であるところから開始される。最初の接地点がこのように偏倚しているために、足は上向きに反り、また、腓脛部と足底が屈曲する。腓脛部は、体重をその脛部を介して伝達できる位置を常に探している、換言すると、たとえば、その長い直立部材を地面からの力に対向する位置に配置しようとする。この事が、足を後に向けて押している地面からの反力に対向するために、直立部材が後方に移動するとともに足底が屈曲する理由である。
【0038】
地面からの力が、基部側端部を後方に動かすようにして腓脛部44,45,46,47,50,51を圧縮する。腓脛部48,49の場合には、凹面部の先端の向きに応じて、腓脛部の先端側半分が圧縮される。先端側の凹面部がGRFsに応答して圧縮された場合、基部側の凹面部は伸張し、そして、腓脛部全体は後に向けて動く。地面からの力は、基部側端部を後方に動かすようにして腓脛部を圧縮する。腓脛部の小さい曲率の下部は、人の足関節の曲がりと足底の屈曲と同様に圧縮され、そして、圧縮されたことによって足前部が地面にまで下げられる。同時に、足後部4の符号17で示された後端が圧縮されて上向きに曲がる。これらの圧縮力の両方が、緩衝機構として作用する。この衝撃吸収は、足を上向きに湾曲させる偏倚した後方の外側角18によってさらに高められ、また、外側角18は、腓脛部が一旦運動を停止して足底が屈曲する段階になって地面が足を後に向けて押すとき、緩衝機構とし作用する。
【0039】
足竜骨と腓脛部の圧縮された部材は、次に、力から解放され、つまり、元の形状を求めて蓄えられたエネルギーが放出され、これにより、腓脛部の基部側端部が加速されて前に向けて動く。腓脛部が垂直の出発位置に近づくと、地面からの力は、足を後へ向けて押す力から、足を垂直上向きに押す力へと変化する。義足は足底の後部と前部に位置する体重支承領域を有し、そして、これらの領域が体重を支承しない長いアーチ形の中央部によって連結されているために、義足からの垂直方向の力がこの長いアーチ形の中央部を伸張させることによって体重は支承される。後部と前部に位置する体重支承面は、互いに離間している。地面からの力が自然な状態の垂直方向から前方を向いた方向へと移動するにしたがって、これらの垂直方向の力は、足の長いアーチ形の中央部に蓄えられる。腓脛部の下部は、足関節の背屈と同様に伸張する。これにより、義足は、枢動して、足底の前部に配置された体重支承面が地面から離れる。力の解放が行われるために、足中央部5の縦方向アーチは、伸張した状態から変化し、そして、足底の屈筋群と同様に群発を作り出す元の形状に復帰しようとする。このようにして、機械的構造の義足は、貯蔵していた弾性エネルギーを放出して運動力に変換する。
【0040】
足竜骨と腓脛部の長いアーチは、各々の構造部材が伸張されることに抵抗する。したがって、腓脛部の前への動きが抑制され、足は、枢動を開始して、足底の前部に配置された体重支承領域が地面から離れる。図3〜図5と図8、図11と図12、および図13と図14に例示した実施形態の足竜骨の場合、足中央部の伸張は、高低の応答能力を有する。これらの足竜骨の足中央部から足前部にかけての遷移領域は、足の縦軸から外側に15°から35°逸れているために、内側の長いアーチは、外側の長いアーチより大きい長さを有する。通常の足の場合には加速期または減速期に足の内側が使用されるため、これは重要な事である。
【0041】
義足の内側の長いアーチは、外側より大きい動的応答特性を有する。外側の短いつま先レバーは、低速での歩行またはランニング時に使用される。体の重心は、シヌソイド曲線の空間を移動する。それは、内側、外側、近位、および遠位と移動する。遅いスピードで歩行するまたはランニングをするとき、体の重心は、速く歩くまたは走るときより、より大きく内側と外側のあいだを移動する。さらに、モーメントまたは慣性が小さいために、高い動的応答能力に対抗するための能力も小さくて済む。本発明による義足は、応用力学を用いてこれらの原理を取り込むように構成されている。
【0042】
さらに、人の歩行周期における立脚相では、体の重心は最大限外側にずれている。立脚相から足尖離地までのあいだ、体の重心(BCG)は、外側から内側へと移動する。結果として、体の重心は、足竜骨2の外側へと移る。初めに(低速ギヤ)、そしてBCGが前方へ移るにつれて、それは、足竜骨2の内側へと移動する(高速ギヤ)。したがって、義足の足竜骨2は、オートマチック・トランスミッションの効果を有する。つまり、それは、低速ギヤで始動して、足切断者が歩を進める毎に高速ギヤへと移っていく。
【0043】
地面を後に向けて押している義足を地面からの力が前に向けて押すとき、踵が上がり始めるために、足中央部の長いアーチの前方部分が変形して、これらの後方に向けられた力を足底面に対して直交する方向に負荷する。これが、これらの力を負荷するための最も効果的で効率のよい方法である。同じ事が、義足の足後部の後端についても当てはまる。また、それは、最初の接地時に後方を向いている地面からの力に、負荷された力の方向に対して直交している足竜骨の足底面が対向するように形成されている。
【0044】
踵挙上から足尖離地までの歩行とランニングの後期相において、足前部の肋領域は15°〜35°だけ背屈している。このように上向きに突出しているアーチのために、前方に向けられた地面からの力が足のこの領域を圧縮するように作用する。この圧縮は伸張に比べると制限が少なく、義足を付けての歩行とランニングの遊脚相への移行がスムースに行われる。歩行の立脚相の後期において、伸張した腓脛部と伸張した足中央部の長いアーチは、各々蓄えていたエネルギーを放出して、つれて動く下肢と足切断者の体の重心とを上前方へと運ぶための推進力に付加する。
【0045】
人が歩行するときの主な推進機構の一つは、有効前屈相と呼ばれている。踵挙上において、体重は支持下肢の前方に掛かっており、また、重心は降下している。体重が図5に線C−Cで示した足前部の舟底部に掛かって下向きの加速度が生じ、これにより、人体には最大の垂直方向の力が負荷される。踵挙上につれて足が足関節の前方へと加速されることによって、地面に対する後方せん断力が発生する。加圧の中心が前方の中足骨頭の回転軸に移動することによって、背屈のトルクが依然増大する。この事は、前方への完全な転倒状態を引き起こしもするが、歩行に用いられる主たる前進力を発生する。有効に前傾しているときの効果的な足関節の機能は、踵挙上、関節部の最小移動、および殆ど中立的な足関節の位置に現われる。踵挙上を正常に継続させるためには、安定した足中央部が必須である。
【0046】
先に言及した数種類の実施形態において、足後部の後方と足竜骨の足前部領域には、伸張用の連結孔と伸張用の突出片とが設けられている。向きが調節された伸張用の連結孔が、留め継ぎ式ヒンジとして作用して、双方向への作動能力を向上させるために、足は、凹凸のある地面を歩行するときの足底面の総合的な接地特性を向上することができる。
【0047】
図9〜図12に示したサイム方式用の足竜骨は、動的な応答能力が明らかに異なっているが、これらの能力は、歩行、ランニング、および跳躍運動に関係している。これらの足竜骨は、四つの特異な特徴において異なっている。これらは、サイム方式による残余の下肢部を平坦な面より都合よく受承できるよう足中央部の基部に隣接した後部に凹面部を有する。また、この凹面部は、サイム方式のレベルでの足切断者に伴う長い残余の下肢に連結される足竜骨の高さを低くするように作用する。このアライメントの変更に用いられる凹面部にとって、足竜骨のアーチ形の足中央部の対応する前方と後方の湾曲部は曲がりが急であり、かつ、サイズも小さいことが必要である。したがって、全ての足中央部の長いアーチの曲率と足後部の曲率は、曲がりが急で、かつ、小さくされている。この事は、動的応答特性に大きい影響を与える。小さい曲率は、動的応答に関しては小さい貢献しかしない。しかし、義足は、前述した歩行、ランニング、および跳躍を行うときの地面からの全ての反力に対してより迅速に応答する。結果は、小さい動的応答性を備えつつも、応答が迅速な足の提供である。
【0048】
本発明による義足のアライメントを変更する事によって、競技の特定の課題の成績を向上させることが可能であるが、それは、これらのアライメントの変更が各々の課題に求められる垂直成分と水平成分に影響を与えるからである。人の足は、多機能ユニットであり、それは、歩く、走る、および跳ぶために使用できる。これに対して、人の脛骨と腓骨とから成る腓脛骨構造は、多機能ユニットではない。それは、歩行、ランニング、および跳躍運動を行うときに、長さは長いが、基部と先端とを結ぶ方向に力を負荷する単純なレバーである。それは、非圧縮性の構造体であり、また、エネルギーを蓄える能力を有しない。これに対して、本発明による義足は、動的な応答能力を有し、また、これらの動的応答能力は、歩行、ランニング、および跳躍運動を行うための水平方向と垂直方向の線型速度に関係付けられているために、人の脛骨と腓骨の性能を凌ぐものである。したがって、足切断者が競技の成績を向上させる可能性がある。このために、本発明においては、固締具8を緩めることによって、腓脛部と足竜骨とのアライメントを足竜骨の縦方向において調節することができる。そのような変更については、図1と図2に関連して先に説明した。腓脛部は、次に、固締具8を用いて調節された位置で足竜骨に固定される。この調節を行うとき、固締具8のボルトは、対向して配置され、比較的長く縦方向に伸びた足竜骨と腓脛部の各々の開口9,10の一方または両方に対して摺動する。
【0049】
たとえば、足中央接地走者の場合のように足底接地で最初に接地する走者の走行特性を向上させるためにアライメントの変更を行うということは、足竜骨が腓脛部に対して前方に摺動し、そして、足底が腓脛部に対して屈曲できるようにするという事である。この新しい関係が、ランニングを行うときの水平成分を向上させる。つまり、腓脛部が足に向けて屈曲した状態で、通常はまず踵接地することに反して、足が足底接地で接地するとき、地面は、地面を前に向けて押している足を直ちに後に向けて押す。これにより、腓脛部が(伸張によって)急速に前方下向きに動かされる。腓脛部の最初の動きの方向に抵抗するように作用する伸張によって、動的応答力が発生する。その結果、足は、足底の中足骨の位置にある体重支承領域を支点にして枢動する。これにより、足竜骨の足中央部に圧縮するときよりも大きい抵抗を有する伸張が引き起こされる。腓脛部の伸張と足中央部の伸張とがもたらすネットの効果は、腓脛部のさらなる前方への移動に抵抗が生ずる事であり、これにより、使用者の体内の膝関節エキステンダーと股関節エキステンダーとが、体の重心をより効率的な方法で前方かつ基部方向に移動させることを可能にする(即ち、水平速度の増大)。これにより、足底接地走者より大きく背屈(垂直方向)した状態から始動する腓脛部によって腓脛部の前への運動が余り大きい抵抗を受けないヒール・トウ走者の場合より、上向きより大きい前への推進力が発生する。
【0050】
短距離走用の足の機能を分析するために、腓脛部と足竜骨とのアライメントの変更を行った。全ての凹面部の縦軸が前面に対して平行に配置されている足竜骨を有効利用した。腓脛部は、足底に対して曲げられるとともに、足竜骨上を後方へと摺動させられた。これにより、たとえば、図3〜図5と図8のような多用途の足竜骨を装着した足底接地走者の場合より遠位の湾曲部の位置をさらに低くすることが可能になった。この結果、義足は、水平運動の能力がさらに向上し、そして、動的応答性をこの向上した水平能力に組み入れることができた。
【0051】
短距離走者は、大きい運動範囲、力、およびモーメント(慣性)を有し、モーメントが、主たる作動媒体である。立脚相における減速期は、加速期よりも短時間であるために、大きい水平方向の線型速度が得られる。この事は、つま先が接地する最初の接地時に、地面が足を後に向けて押し、そして、足が地面を前に向けて押すことを意味する。大きい力とモーメントとを有する腓脛部は、足底接地走者の最初の接地時よりさらに大きい屈曲と下向きの運動をさせられる。これらの力は結果として、足の長いアーチ形の凹面部を伸張する力として掛かり、また、腓脛部を伸張する力として掛かる。これらの伸張力は、先に述べたその他全てのランニングに関連した力より強い抵抗を受ける。したがって、足の動的応答能力は、負荷された力に比例する事になる。人の脛骨と腓骨とから成る腓脛骨の応答性は、エネルギーの大きさだけに関係しており、また、それは、直線状の構造であって、エネルギーを蓄えることができない。短距離走を行うときに本発明の義足がもたらすこれらの伸張力は、先に述べたその他全ての歩行とランニングに付随した力より強力である。したがって、足の動的応答能力は、負荷された力に比例し、また、人の機能と比較した場合、足切断者は競技の成績を向上させる事が可能になる。
【0052】
図25に示した義足53は、腓脛部と足竜骨のあいだの調節可能な締結構造と、支柱の下端に連結するための腓脛部の上部の構造を除いて、図3のそれに類似している。この例示した実施形態において、足竜骨54は、プラスチック製または合金製の連結要素56を介して腓脛部55に調節可能に取り付けられている。連結要素は、足竜骨の縦方向において互いに離間して連結要素に配置された着脱式の固締具57,58によって各々足竜骨と腓脛部とに取り付けられている。連結要素を腓脛部に結合する固締具58は、足竜骨と連結要素を結合する固締具57より後方にある。腓脛部の作動長さをこのように伸張させることにより、腓脛部自体の動的応答能力が増大する。アライメントの変更は、例示した別の実施形態と同様に、縦方向に伸びた腓脛部と足竜骨の開口と協働して行われる。
【0053】
腓脛部55の上部には、支柱15を受承するための長い開口59が形成されている。一旦開口に受承された支柱は、ボルト60,61を締め付け、そして、腓脛部の開口に沿った自由端側の縁62,63を引き寄せることによって腓脛部に確実に固締することが可能である。この連結構造は、ボルトを緩め、支柱を腓脛部に対して所望の位置まで引き出し、そして、ボルトを再度締め付けることによって調節した位置において支柱を容易に固定することができる。
【0054】
図28〜図32に示した義足70は、図3〜図5,図8,および図23〜27の義足に類似しているが、足切断者が義足を使用中に腓脛部に力が負荷されたときのまたは力から解放されたときの腓脛部上端の運動の範囲を制限するために、義足に取り付けられた腓脛部の運動制限・減衰装置71をさらに含む。この機能は、比較的長い腓脛部を有する義足にはとりわけ好都合であり、この場合、装着者はランニングや跳躍のような運動を行い、腓脛部に装着者の体重の何倍もの、たとえば、ランニングの場合には体重の5〜7倍であり、跳躍の場合には体重の11〜13倍、の力が発生する。これに対して、歩行中に発生する力は体重の僅かに1〜1.5倍である。
【0055】
例示した実施形態において運動制限・減衰装置71は、空気のような気体または液圧用の流体などの加圧流体が各々の取付け部品73,74を介して充填されている双方向に作動するピストンとシリンダを含むユニットである。運動制限・減衰装置は、力の負荷時と力からの解放時に腓脛部が各々圧縮と伸張の両方をさせられるときの腓脛部72の上端の運動の範囲を調節するための圧縮用と伸張用の二つの可変制御器を有する。また、運動制限・減衰装置71は、腓脛部の圧縮と伸張時に蓄えられたまたは放出されたエネルギーを減衰させる。運動制限・減衰装置71の両端は、腓脛部の上部と義足の下部に連結されており、例示した実施形態においては、好ましくは玉継手の枢動式連結具75,76を用いて腓脛部の上部と下方の端部に連結されている事が好ましい。
【0056】
図32は、腓脛部が圧縮と伸張とをされたときの義足70の腓脛部72の上端の動きを示す。腓脛部が概ね放物線形であるために、腓脛部の上端は、力の負荷時と解放時の腓脛部の圧縮と伸張に伴って足竜骨77の縦方向、たとえば図5と図32に示した線A−Aの方向、に動き、そして、腓脛部の下端は足竜骨に連結されている。したがって、義足の向上した動的応答能力は、図28〜図32に示した例示としての実施形態において維持されることになる。
【0057】
運動制限・減衰装置71は、説明したピストンとシリンダを含むユニットに限定されるものではなく、別の速度制御装置および/または運動制限装置であってもよい。たとえば、義足の腓脛部に用いられる運動制限・減衰装置71の後方の部分を、現在、人口膝関節の運動を制御するために用いられているような圧縮段階と伸張段階とを制御することができるマイクロプロセッサ制御式の流体ユニットにすることも想定されている。特殊なソフトウェアとPCとを用いて、マイクロプロセッサ制御式の流体ユニットを足切断者の各々に適合させるよう調整することが可能である。モーメントを1秒間に50回も測定することによって、動力補填式歩行を、できる限り自然な歩行に近づけることが可能である。流体ユニットの良好な応答性のために、この装置は、幅広い範囲の下肢切断者に好適である。ユニットに組み込まれたリチウム・イオン電池は、流体ユニットを丸一日動作させるのに充分なエネルギーを供給する。圧縮に対する抵抗力は、伸張に対する調節からは独立して行われる。多数の統合されたセンサが、ユニットの立脚相と遊脚相との特性を1秒間に50回の割合で自動的に調節することができる基板上のマイクロプロセッサに歩行分析データを連続的に送信する。
【0058】
運動制限・減衰装置71のマイクロプロセッサ制御式の流体ユニットは、機械的な流体ユニットより応答の速度が速い。電気制御の圧縮(足底屈曲)弁は、1秒間に50回の割合で調節する。ユニットの圧縮弁は、遊脚の前に自動的に全開する。したがって、ユニットは、制限された領域で、そして、同様の条件の下、低速で圧縮と屈曲とを行うことがきわめて容易である。ユニットのサーボ・モータのスピードは、1秒間に50回の割合で送られてくるマイクロプロセッサからの命令に応答して、圧縮(足底屈曲)弁と伸張時の背屈用弁とを非常に速く閉めることを可能にする。弁が全閉の状態に近づいたとき、ユニットの減衰力が非常に高くなって、早足での歩行とランニングさえもが可能になる。義足技師は、独特な動的要素を介して、ゆっくりとした歩行から活発で、速い歩行までの全ての歩行パターンについて流体ユニットの動作が最適になるよう調節することができる。マイクロプロセッサ制御式の流体ユニットを個別の独特な歩行パターンに合わせて「調整」するこの能力は、歩行の効率と快適度を高めるために幅広いリズムを義足に組み込むことが可能である。つまり、運動制限・減衰装置71のようなマイクロプロセッサ制御式の流体ユニットを用いることによって、義足は、活動的な足切断者が使用するときに必要となる種々のリズムにも対応できる能力が向上される。
【0059】
図28〜図32の義足70の縦方向に延在する足竜骨77は、図3と図25の足竜骨と同様に足前部、足中央部、および足後部を有する。義足の腓脛部72は、図25〜図27の例示した実施形態と同様に、縦方向に離間して配置され、連結要素78を各々腓脛部と足竜骨とに連結するための着脱式の二つの固締具79,80により連結要素を介して足竜骨に取り付けられる。腓脛部72は、腓脛部の両端部のあいだで縦方向に伸びる伸張用溝81を有する。伸張用の連結孔82,83が、伸張用溝の両端に設けられている。また、図29〜図31に示すように、足竜骨の足前部と足後部にも各々伸張用溝(符号なし)が形成されている。
【0060】
足切断者の下肢端部に装着される義足用ソケット(図示せず)は、図のように腓脛部72の上部に固締具86,87によって固定されたアダプタ85を介して腓脛部の上端に連結される。アダプタは、アダプタの上面に取り付けられた取付け用板に連結された逆さのピラミッド形の取付け具88を有する。義足と義足用ソケットとを連結するとき、ピラミッド形の取付け具は、懸架された義足用ソケット上の相補形状のソケット式取付け具によって受承される。この種類の連結構造は、図34〜図36の実施形態に示されている。
【0061】
図28〜図32に例示した実施形態の運動制限・減衰装置71は、腓脛部の圧縮と伸張の両方のケースにおいて腓脛部上端の運動の範囲を制限するが、腓脛部上端の運動の範囲を圧縮時または伸張時にだけ制限する同様の装置を用いることもできる。力の負荷と力からの解放時に腓脛部の伸張だけを制限する運動制限・減衰装置84が、図33に例示した実施形態に示されている。この運動制限・減衰装置84は柔軟な帯であり、帯は、制限された範囲の弾性伸びだけが可能であり、これにより、腓脛部に力が負荷された結果圧縮されたとき腓脛部の上端の動きは制限されないが、腓脛部の伸張は制限される。この運動制限・減衰装置84は予め張力を掛けて装着することが可能であり、この場合、運動制限・減衰装置は、腓脛部の基部側端部を後に向けて付勢する。
【0062】
図34〜図36は、図28〜図32の義足の足竜骨77またはここに開示した別の足竜骨の一つとともに用いることができる本発明による別の腓脛部90を示す。腓脛部90は、その曲率半径の最も小さい部分が下部に配置され、そして、その下部から上向きに、かつ、基部側端部の比較的大きい曲率の部分へと初めは前方に延出する概ね放物線形である。後方を向いた凹面部が、図34に示すように腓脛部が湾曲することによって形成されている。腓脛部の先端部は、特定の課題を達成できるよう義足の特性を調整するために固締具79または80が緩められるか取り外されたとき、連結要素78、着脱式固締具79,80、および足竜骨の縦方向に伸びた開口と協働して、腓脛部と足竜骨の縦方向の互いのアライメントを調節できるようにする縦方向に伸びた開口91を有する。
【0063】
腓脛部90の先端部は、図28〜図32の腓脛部72より鋭く湾曲しており、即ち小さい曲率半径を有し、そして、縦方向で小さい長さだけ上前方に延出する。腓脛部は、この形状にすることが補綴上好都合である。つまり、先端が、人の足の形をした義足用外被の踝の内側と外側が通常配置される足関節の領域により近接して位置される。この腓脛部は、義足用外被により上手く収まる。その機能上の特性は、広がった放物線形、たとえば、先に言及したような大きい曲率半径、を有する腓脛部より動的応答能力は小さいが、この腓脛部は、最初の接地時に地面から受ける反力に迅速に応答することである。したがって、義足を付けて走り、また、ジャンプをするような活動的な人は、広がった放物線形、つまりまたは大きい曲率半径、を有する腓脛部を用いることによって、より大きい水平方向の速度を容易に得ることが可能になる。
【0064】
図34〜図36の腓脛部90は、固締具94,95によって腓脛部の上部に連結されたプラスチック製または金属製のアダプタ93と、使用者の下肢端部に固締された義足用ソケット96のあいだに配置された、アライメント機能付きの連結装置92をさらに含む。使用者は、たとえば、膝上または膝下での足切断者である。アライメント機能付きの連結装置は、地面に対して平行な面に互いに直交して配置された一対の摺動部97,98を有する。摺動部の各々の構成部品の相対位置は、義足の腓脛部と足竜骨に対する義足用ソケットの相対的な向きを変更する摺動部97,98の各々を調節するためのねじ付き固締具99を緩めることによって調節することができる。連結装置92を支持するアダプタ93の頂部は、義足を付けて歩行するときの立脚相において地面に対して平行であることが好ましい。
【0065】
連結装置92の上側の摺動部98の頂部には、逆さのピラミッド形の取付け部品101が固定されており、取付け部品101は、義足用ソケット96に設けられた反対側の取付け部品102にねじ付き固締具103によって固締される。二つの取付け部品101,102をこのように連結することによって、義足用ソケットと義足のあいだの角度変化を伴った屈曲・伸張と外転・内転とが可能になる。連結装置92は、横方向と縦方向への直線的な摺動による調節が可能である。したがって、連結装置92は、義足を全ての方向に動くことができるようにするアライメント機能付き装備品であり、そのために、地面からの反力に対して腓脛部と足竜骨から成る機械的構造体が応答する方法に影響を与える。
【0066】
図37と図38の足竜骨110と図39と図40の足竜骨120は、本発明による義足に使用可能な足竜骨のさらに別の例示としての実施形態である。二つの足竜骨は、右足用であり、足後部を除いて類似の構造を有する。これらの足竜骨の内側と外側は、同一の形状である。足竜骨110は、足後部領域が矢状方向に切断されて、縦方向に伸張する伸張用連結部または溝113によって分離された伸張用の外側と内側の突出片111,112を備える。足竜骨110の踵部の後端114は、前面に対して平行である、たとえば、足竜骨の縦軸A−Aに対して直交している。同様に、足竜骨の足後部の背側の凹面部115は、前面に対して平行である、たとえば、縦軸A−Aに対して直交した、つまりΔが90°である、縦軸F−Fを有する。
【0067】
足竜骨110に反して足竜骨120は、足後部領域が矢状方向に切断されることもなく、足後部の背側の凹面部121は、外側が内側より前方に配置されているために、凹面部の縦軸F’−F’が前面に対して傾斜しており、たとえば、縦軸A−Aに対して好ましくは110〜125°の鈍角Δ’を成している。背側の凹面部をこのような向きに配置することによって、伸張用の外側の突出片122を、伸張用の内側の突出片123より長い範囲に亘って薄くし、これにより、突出片123より実質上長く、そして、より大きい可撓性を有するようにすることができる。このように可撓性を増大させることによって、足後部は、最初の接地時に地面からの反力に対して上向きに湾曲することが容易になるが、これは衝撃吸収機構である。これにより、体の重心が生み出す力が歩行中に足竜骨の足後部を介して効率良く伝達され、また、より正常な歩行パターンの達成が容易になる。
【0068】
図41と図42の義足124は、足竜骨165、腓脛部126、および歩行中に腓脛部の上端の前への動きに伴うエネルギーを追加して蓄えるために設けられた後部腓装置125をさらに有する。これにより、歩行の有効前屈相において、弾性を有する義足に力を負荷することによって、腓脛部の前に突出した湾曲部127によって形成された腓脛部105の矢状面の凹面部が伸張し、腓脛部の上端の前への動きが引き起こされる。後部腓装置125の柔軟な帯128は、腓脛部の上部と義足の下部、つまり先に説明したように、腓脛部と足竜骨とを連結する連結要素129、に接続されている。弾性体および/または非弾性体を用いて形成され、また、歩行中に張力が掛けられる柔軟な帯は、その長さを固定するまたは摺動式調節具130を用いて帯の重複部分の長さを変えることによって調節することができる。
【0069】
二つのばね131,132の基部が、腓脛部の上部の位置において、腓脛部と、固締具134によって腓脛部に固定されたアダプタ133のあいだに調節可能に支持されている。ばねの下方の自由端は、柔軟な帯と相互作用するように配置されている。帯に張力が掛かったとき、ばねは、帯の縦方向の範囲の大きさを変化させる。歩行中に腓脛部の上端が前に動くことによって、帯が伸張されまたは(帯に予め張力が掛けられている場合には)さらに伸張され、そして、歩行中に義足に力が負荷されたとき、エネルギーを蓄えるよう力がばねに負荷されるまたはさらに負荷される。この蓄えられたエネルギーは、義足が力から解放されたときばねから戻されて、歩行中に義足が推進力として発生する動力を増大させる。
【0070】
義足の使用前に、帯128に予め張力を掛けるために帯の長さが短かくされたとき、この帯に掛けられた張力は、義足の使用時に、弾性を有する腓脛部の上端が後に動くことを容易にするとともに、腓脛部の前への動きを制御するように作用する。また、後への動きに対して力を補填することによって、歩行の初期の立脚相において、義足は、踵接地時に足接地に対する迅速な応答を容易に得ることができるようになるが、それは、歩行中に踵が接地するとき、人の足と足関節に生ずる足底が屈曲する現象に類似している。
【0071】
義足の使用時に後部腓装置125を用いて、弾性を有する腓脛部の上端の後への動きに対して力を補填し、また、前への動きを制御することによって、義足の使用中に力の負荷または力からの解放に応答して腓脛部の上端の縦方向の動きに対する矢状面の屈曲特性を変化させることは、歩行中の義足の足関節のトルク比を変更することに各々効果を有する。歩行後期の終止相において発生する足関節の最大背屈トルクを、歩行中に踵接地後に最初に力が掛けられる足底接地に対する応答時に発生する足関節の足底屈曲トルクによって割った比率として定義された歩行中の人の足関節の自然な生理的トルク比は、11.33対1であると報告されている。後部腓装置125を用いて腓脛部の上端の縦方向の運動に対する矢状面の屈曲特性を変更することの目的は、歩行中に人の足に生ずる現象に近似させるために、義足の足関節のトルク比を増大させることである。この事は、義足を用いての適切な歩行を達成するため、また、一方が自分の足であり、他方が義足の人にとっては歩行の対称性を確保するために重要である。前への動きを制御し、また、後部腓装置125を用いることによって可能になることであるが、後への動きに対して力を補填することによって、義足に発生する足関節の最大背屈トルクが足関節の足底屈曲トルクより一桁大きくなるよう、足関節のトルク比が増大されることが好ましい。足関節のトルク比は、報告されている足関節の自然トルク比である11.33対1に対して約11対1の値になるよう大きくされることがより好ましい。
【0072】
後部腓装置の別の目的は、義足に力を負荷したとき腓装置のばね131,132に弾性エネルギーを追加して蓄え、そして、力からの解放時に蓄えた弾性エネルギーを戻して歩行中に義足が推進力として発生した動力を増大させることによって歩行中の義足の効率を向上させることである。後部腓装置125は、義足に力を負荷したとき人体に位置エネルギーを発生させ、そして、義足から力を解放したときその位置エネルギーが動的エネルギーに変換されることを利用して、人の腓腹筋群が歩行中に人の足、足関節、および腓に作用する、つまり、歩行中に人体に効率よく推進力を発生させる、のと同様に義足の目的に適うものであると考察される。義足の効率を、本発明による後部腓装置を用いることによって人の足のそれに近づけるまたはむしろそれを超えるようにすることは、たとえば、足切断者が「通常の機能」を取り戻すために重要である。
【0073】
後部腓装置125によって腓脛部の上端の前への動きを制御することは、図28〜図33に示した先の実施形態と同様に腓脛部の上端の前への動きの範囲を制限することに効果がある。また、義足124の足竜骨は、歩行中に力が負荷されたとき、縦方向の弾性を有するアーチを伸張させることによってエネルギーを蓄えることができる。この位置エネルギーは、歩行中に力から解放されたとき、推進力を発生させるための動力として戻される。図3〜図5と図8の実施形態に関連して先に説明したように、内側が外側より大きい曲率半径を有し、また、同様に、内側が外側より高い動的応答能力を有する縦方向のアーチの形状に足竜骨の足中央部が形成されているために、この実施形態は、高低の動的応答能力を備える。しかし、図6と図7のような短距離走用の足竜骨または図9と図10の説明時に言及したサイム方式による足切断者用の足竜骨を義足124に使用することも可能である。
【0074】
図43〜図45に示した義足135は、長さが調節可能な柔軟な帯137が連結索138を介して腓脛部の上端部と足竜骨の前部に接続されていること以外は図41と図42の実施形態に類似した後部腓装置136を有する。連結索138の端部は、伸張用の連結溝141によって分離され、前方に位置する内側と外側の突出片139,140の各々に接続されている。連結索は、後方に向かい、次に、連結要素144に装着されたプーリ142,143を介して帯137の先端に接続された半円形の戻し部材145へと上向きに延出する。足竜骨の弾性を有するアーチと、図41と図42の実施形態において腓脛部の上部に装着されて帯に係合するばね146は、先に説明したように、歩行中に義足が発生した推進力に追加するようエネルギーを蓄え、そして、戻すために用いられる。
【0075】
図41と図42にはメスのアダプタを示したが、本発明による図43のアダプタ133は、オスのピラミッド型アダプタであり、足切断者の下肢端部に装着されたソケットまたはその他の部品に取り付けられた矩形の相補形突起を隙間を空けて受承するための、基部側端部の角が丸められた矩形のソケットを有する。図41の破線を参照されたい。符号は付されていないが、矩形ソケットの側壁の中央に各々配置された四つのねじを用いて義足を足切断者の下肢端部の支持構造体に装着するために、ねじ込んで突起と係合させる、または、解除することが可能である。突起とソケットのあいだに隙間があり、また、メスのアダプタの四つのねじの位置の調節が可能であるために、義足と支持構造体とを縦方向と横方向に調節すること、並びに、義足と支持構造体との角度つまり傾斜を調節することができる。メスのアダプタの別の形態によると、ねじ付き固締具を用いて、アダプタ上部のソケット収容部材がアダプタの下方の基部に着脱可能に連結される。アダプタのソケットの基部に露出しているねじ付き固締具の頂部は、基部に装着されたアダプタのソケット収容部材を緩めて基部と義足に対して回動できるようにするために、アレンレンチを受承するアレンソケットを有する。このように、アダプタは、水平面での回動を可能にするが、それは、足の内輪と外輪とを臨界域、たとえば3.2mm(1/8インチ)の範囲内、に容易に収めるために必要な特徴である。
【0076】
図46と図47に示した実施形態の義足147は、腓脛部148、足竜骨149、および後部腓装置150が一体に形成されていることを特徴とする。腓脛部148は、先に説明した実施形態と同様に、足竜骨から上向きに延出して、前に突出するように湾曲した下部を有する。後部腓装置150は、弾性を有する材料を用いて形成されているとともに、基部を腓脛部の上部に結合された長くて湾曲したばねの形状であり、ばねの先端は、足竜骨の後端の開口152に延出する枢軸を備えて、ばねの先端に装着されたブラケット(符号なし)によって足竜骨の後部に枢動可能に連結されている。枢軸151の端部は、図示したように、足竜骨の開口152に固定されている。腓脛部上端の歩行中の前へのまたは後への動きに伴って、湾曲したばねの凹面部は、伸張または圧縮されてばねの運動の範囲内で可能なエネルギーを蓄える。蓄えられたエネルギーは、次に、歩行中に力から解放されたときに戻されて、使用者の体の推進力として使用可能な動力に追加される。
【0077】
図48〜図51に示した実施形態は、三つの縦分割体153〜155を有する義足152である。縦分割体の各々は、足竜骨156、腓脛部157、および後部腓装置158と一体に形成されている。縦分割体153〜155は、隙間159によって分離されているために、先端部は互いに独立して運動することができるが、基部、つまり腓脛部の上端、は一体である。義足は、個別に形成された各々の縦分割体の基部側端部を固締具によって連結することによって構成することができる。代替としては、弾性を有する縦分割体の上端を連結し、そして、隙間159によって縦分割体を互いに分離させることにより、先端部が独立して可動自在になるよう一体に形成することもできる。
【0078】
義足152の中央の縦分割体154は、内側と外側の縦分割体153,155より幅が広く、また、その先端は、他の縦分割体153,154の先端より高い位置にある。この構成は、足竜骨の前部と後部を伸張用の連結溝により縦方向に分離して複数の突出片を画成することに関連して先に説明したのと同様に、凹凸のある面または傾斜した面の上で体を支えるときに好都合である。義足に用いられる複数の縦分割体の数は、三つに限定されるものではなく,また、縦分割体の各々の相対的な幅の大きさも、ここに示した実施形態とは異なるように構成することができる。縦分割体の各々の後部腓装置158の湾曲したばねの先端は、図46と図47に示した実施形態の場合のように足竜骨に枢動可能に連結することに替えて、足竜骨156の足後部と一体に形成されている。先に別の実施形態について図示し、そして、説明したように、適切な形状のアダプタ(図示せず)が、使用者の下肢端部に装着されたソケットの下端部と連結するために義足152の腓脛部の上端に結合される。
【0079】
図52〜図54は、別の形状に構成配置された本発明による義足を示し、義足160は、足竜骨163の足後部162と一体に形成された腓脛部161を有する。弾性を有する材料を用いて形成された腓脛部と足後部は、図示したように、固締具165,166によって弾性部材164に連結されて、足前部と足中央部とを形成する。図52〜図54には示されていないが、先に開示したように、後部腓装置を義足の一部として形成することができる。同様に、ソケットの下端部に連結するためのアダプタを腓脛部161の上端に取り付けることができる。
【0080】
これにより、例示した実施形態の説明を終える。本発明について数多くの実施形態についての図面を参照して説明したが、当業者はその他の数多くの変更例や実施形態を案出することが可能であり、それらは、この発明による原理の精神と範囲とに含まれると了解されるものとする。たとえば、本発明による義足の腓脛部の下部は、放物線形または渦巻き形状に限定されるものではなく、義足の足関節部を形成するために足竜骨に連結したとき、義足が所望の運動をするよう下向きに突出した双曲線形または曲線形に構成することができる。後部腓装置に用いられる長い柔軟な部材は、帯に限定されるものではなく、可撓性を有するワイヤのような別の種類の部材を用いることができる。同様に、後部腓装置のコイルばねは、図示したコイルばねとは異なっていてもよい。例として、エネルギーを蓄えて放出するようにするために、義足の縦方向で可能な限りの高さで横方向に延在する可撓性を有する金属製の管またはプラスチックを、長く柔軟な部材と腓脛部の上端とのあいだに介在させることもできる。また、種々の実施形態に用いられた製造用の材料を含む特徴は、互いに入れ替えて使用することができる。より具体的には、本発明の精神から逸脱することなく、上述した開示内容、図面、および添付特許請求の範囲に含まれる構成部品および/または当該構成部品の組合せに合理的な変更と修正を行うことが可能である。構成部品および/または構成配置について変更と修正を行うことが可能であることに加えて、当業者には、別の使用方法も、また、明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明による義足の足竜骨と腓脛部の各々の曲率半径R1,R2を二つの隣接した円によって表した模式図であり、これにより、動的な応答能力と、二つの円を結んだ接線Aに対して直交した矢印B方向への歩行中の足の動きと、が生み出される。
【図2】図1に類似の図であるが、接線A1に直交した矢印B1が図1の場合より水平方向を向くよう、動的応答能力と歩行中の足の動きの水平成分を増大させ、かつ、垂直成分を減少させるために本発明による義足の二つの円のアライメントを変更した形態を示す。
【図3】足切断者の下肢端部に義足を装着するための義足用アダプタと、それに連結された支柱とを備えた本発明の例示としての実施形態による義足の側面図である。
【図4】図3の義足用アダプタと支柱を備えた義足の正面図である。
【図5】図3と図4に示した実施形態の平面図である。
【図6】本発明による義足に用いることができ、とりわけ短距離走用の本発明による別の足竜骨の側面図である。
【図7】図6の足竜骨の平面図である。
【図8】図3に示した高低の応答特性とともに、双方向への作動能力を備えた義足の足竜骨の下面図である。
【図9】サイム式足切断手術を受けた足切断者が短距離走を行うときにとりわけ好都合な、本発明による義足に用いられる別の足竜骨の側面図である。
【図10】図9の足竜骨の平面図である。
【図11】サイム式による足切断者用であり、高低の応答特性とともに双方向への作動能力を備えた本発明による義足に用いられる足竜骨のさらなる変更例である。
【図12】図11の足竜骨の平面図である。
【図13】足竜骨の厚さにテーパが付けられ、たとえば、厚さが足竜骨の足中央部から足後部にかけて漸減している本発明による足竜骨の側面図である。
【図14】足竜骨の足中央部から足前部と足後部の両方にかけて厚さにテーパが付けられた別の形状の足竜骨の側面図である。
【図15】腓脛部の上端にかけて厚さにテーパが付けられた本発明による義足の放物線形の腓脛部を僅かに上前方から見たときの側面図である。
【図16】図15に類似しているが、中央部から上端と下端の両方にかけてテーパが付けられた別の腓脛部を示す側面図である。
【図17】腓脛部の厚さに中央部から上端と下端の両方にかけてテーパが付けられた義足用のC字形腓脛部の側面図である。
【図18】腓脛部の厚さが中央部から上端にかけて漸減する、義足用の別の例としてのC字形腓脛部の側面図である。
【図19】両端部から中央部にかけて厚さが漸減する、義足用のC字形腓脛部の側面図である。
【図20】上端部においてだけ厚さにテーパが付けられたS字形腓脛部の別の例である。
【図21】両端にかけてテーパが付けられた、本発明による義足用のJ字形腓脛部の側面図である。
【図22】図21に類似しているが、厚さが上端にかけてだけ漸減するJ字形腓脛部を示す。
【図23】図3に示した腓脛部を足竜骨に取付けるための、本発明による調節式締結構造に用いられる合金製またはプラスチック製の連結要素を僅かに上方から見たときの斜視図である。
【図24】足切断者の下肢に装着される支柱に図3〜図5に示した義足を連結するために用いられ、また、図28と図29の義足に用いても有用である義足用アダプタを僅かに側部前方から見たときの斜視図である。
【図25】図3のそれに類似しているが、縦方向に離間して配置され、連結要素を腓脛部と足竜骨の各々に結合する二つの着脱式固締具とともに連結要素が用いられている状態を示す本発明による別の義足の側面図である。
【図26】図25の連結要素の拡大側面図である。
【図27】図25の義足の腓脛部の拡大側面図である。
【図28】図3と図25に示した義足に類似しているが、義足の使用時に腓脛部に対する力の負荷または力からの解放に応答した腓脛部上端の運動の範囲を制限するための運動制限・緩衝装置が、腓脛部の上部と下端に各々連結されているさらに別の例示としての実施形態による義足の側面図である。
【図29】図28に示した義足を左側から見たときの義足の正面図であり、義足の腓脛部の縦方向の伸張用溝が示されている。
【図30】図28に示した義足を右側から見たときの義足の背面図である。
【図31】図28に示した義足の底面図である。
【図32】図28に示した義足の腓脛部と足竜骨の側面図であり、義足の使用時に腓脛部に対する力の負荷または力からの解放の結果生ずる腓脛部上端の運動を例示している。
【図33】図28〜図32に示した義足に類似しているが、腓脛部の伸張による上端の運動の範囲だけを制限するために柔軟な帯が用いられているさらに別の例示としての実施形態による義足の側面図である。
【図34】足切断者の下肢端部に装着される義足用ソケットに義足を固定するために、腓脛部の上端に連結されたアダプタに配置されたアライメント機能付き連結装置を有する別の実施形態による義足の側面図であり、アライメント機能付き連結装置は、義足を義足用ソケットに対して横方向および縦方向に摺動させて調節することを可能にする。
【図35】図34に示した義足を左側から見たときの義足の正面図である。
【図36】図34に示した義足を右側から見たときの義足の背面図である。
【図37】本発明による右足用義足の別の足竜骨の平面図であり、足の後端は前面に対して平行であり、即ち足の縦軸A−Aに対して直交しており、また、足後部の基部側の凹面部も縦軸A−Aに対して直交している。
【図38】図37に示した足竜骨を横方向から見たときの足竜骨の斜視図である。
【図39】図37と図38に示した足竜骨に類似しているが、縦軸A−Aに対して鈍角Δ’だけ傾斜した足後部の基部側の凹面部の縦軸F1−F1を有しており、これにより、足後部の外側の突出片が内側の突出片より実質上長くなり、また、可撓性が増大して、歩行中の踵接地時に足の外転を容易にするようにされた本発明による別の足竜骨の平面図である。
【図40】図39に示した足竜骨を横方向から見たときの足竜骨の斜視図である。
【図41】腓脛部の上部と腓脛部を足竜骨に連結するための連結要素とに接続された弾性を有する後部腓装置を有する別の実施形態による義足の側面図であり、後部腓装置は、歩行中の力の負荷時に後部腓装置のばねにエネルギーを蓄え、また、蓄えたエネルギーを力からの解放時に戻して歩行中の義足が推進力として発生する動力を増大させる。
【図42】図41に示した義足の背面図である。
【図43】歩行中の義足が推進力として発生する動力を増大させるための後部腓装置を有する別の実施形態の義足の側面図であり、後部腓装置の長さが調節可能な帯は、腓脛部の上部と足竜骨の前端のあいだに張力を掛けて装着されている。
【図44】図43に示した義足の背面図である。
【図45】図43と図44に示した義足の下面図であり、足竜骨の各々の側部に結合され、後部に向けて張られた伸張用索が示されている。
【図46】別の実施形態による義足の側面図であり、腓脛部、足竜骨、並びに後部腓装置が一体に形成され、また、後部腓装置のばねの先端は、足竜骨の後端に枢動可能に連結されている。
【図47】図46に示した義足の背面図である。
【図48】図46と図47に示した義足に類似しているが、足竜骨、腓脛部、および後部腓装置を一体に形成し、並べて配置された三つの縦分割体は、各々の先端は互いに可動自在であり、また、腓脛部に隣接した端部が連結されており、さらに、各々の先端の面がその外側の縦分割体より高い位置に配置されている実施例の義足の側面図である。
【図49】図48に示した義足の平面図である。
【図50】図48と図49に示した義足の正面図である。
【図51】図48〜図50に示した義足の背面図である。
【図52】本発明による別の形状の腓脛部と足竜骨の側面図であり、腓脛部は、足竜骨の後部と一体に形成され、また、義足の足前部と足中央部との形成部材に固締具によって連結されている。
【図53】図52に示した腓脛部と足竜骨の平面図である。
【図54】図52と図53に示した腓脛部と足竜骨の背面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
足、足関節、および足関節の上方に直立した長い脛部を含む下肢補綴装具に推進力のための動力を発生させる方法において、
前記補綴装具の前記足関節と前記脛部とを構成する一体に形成された弾性部材を設け、前記弾性部材を、前に突出するように湾曲した少なくとも足関節の領域に用いることと、
前記補綴装具の使用時に、前記弾性部材の上端の後への動きに対して力を補填し、また、前記弾性部材の前記上端の前への動きを制御することと、を含む方法。
【請求項2】
前記後への動きに対して力を補填することが、前記補綴装具に設けられた装置を用いて、後への動きに対して前記弾性部材の前記上端を弾性的に付勢することを含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記前への動きを制御することが、前記補綴装具に設けられた装置を用いて、前記弾性部材の前記上端の前への動きの範囲を制限することを含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記前への動きを制御することが、前記補綴装具に設けられた装置を用いて、前記弾性部材の前記上端の前への動きに対して抵抗することを含む請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記前への動きを制御することが、歩行中に前記補綴装具に力が負荷されたとき前記装置にエネルギーを蓄え、前記補綴装具が力から解放されたとき前記装置が蓄えたエネルギーを戻して歩行中の人の体のための推進力に追加するために、前記弾性部材の前記上端が前へ動くとき前記補綴装具に装着された装置を弾性的に付勢することを含む方法。
【請求項6】
前記力を補填すること、並びに、前記制御することとは、前記足関節のトルク比が、歩行後期の終端相において前記補綴装具に発生する前記足関節の最大背屈トルクを、歩行中の踵接地に応答して最初の足底接地時に足底の屈曲により前記補綴装具に発生する前記足関節のトルクによって割った比率として定義されたとき、歩行中の前記補綴装具の前記足関節のトルク比を増大させる請求項1記載の方法。
【請求項7】
歩行中に人の足に発生する前記足関節のトルク比に近似させるために前記足関節のトルク比を増大させることを含む請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記足関節の前記最大背屈トルクが前記足底の屈曲による前記足関節のトルクより一桁大きくなるように前記足関節のトルク比を増大させることを含む請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記足関節のトルク比を約11対1の値に増大させることを含む請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記足に高低の動的応答能力を有するようにさせることを含む請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記足は足竜骨を含み、前記足に高低の動的応答能力を有するようにさせることが、内側が外側より大きい曲率半径を有し、また、内側が外側より比較的高い応答能力を有する縦方向のアーチの形状に前記足竜骨の前記足中央部を形成することを含む請求項10記載の方法。
【請求項12】
縦方向に延在する足竜骨と、
前記足竜骨に連結された下端、前記下端から上向きに延出して前に突出するように湾曲した下部、および人の下肢端部に装着されたソケットの下端と連結するための上端を備えた弾性を有する腓脛部と、
前記腓脛部の上部と前記義足の下部とに連結されて、前記腓脛部の上端の後への動きに力を補填し、また、前記腓脛部の前記上端の前への動きを制御するための装置と、を有する義足において、
前記上端は、前記義足の使用時に前記腓脛部に対する力の負荷および力からの解放に応答して前記足竜骨の縦方向に運動することができる義足。
【請求項13】
前記装置は、弾性伸びが制限されている少なくとも一つの柔軟な帯を含む請求項12記載の義足。
【請求項14】
前記装置は、前記少なくとも一つの帯に掛かる張力を調節するための手段を含む請求項13記載の義足。
【請求項15】
前記装置が連結された前記義足の前記下部は、前記腓脛部の下部、前記足竜骨、および前記腓脛部と前記足竜骨とを連結する連結要素の中の一つである請求項12記載の義足。
【請求項16】
前記装置は前記腓脛部の後方に配置されている請求項12記載の義足。
【請求項17】
前記装置は、前記腓脛部の前記上部と前記義足の前記下部とに接続された少なくとも一つの柔軟な帯と、エネルギーを蓄えるために前記腓脛部の前記上端の前へのき動に応答して前記少なくとも一つの帯によって弾性的に付勢された少なくとも一つのばねとを含む請求項12記載の義足。
【請求項18】
前記少なくとも一つのばねに予め張力を掛けることができるよう前記帯の長さを調節するための手段を含む請求項17記載の義足。
【請求項19】
前記少なくとも一つのばねは、前記帯の向きを変えるために前記少なくとも一つの柔軟な帯に隣接している請求項17記載の義足。
【請求項20】
前記少なくとも一つの柔軟な帯は、前記少なくとも一つのばねとして作用する前記足竜骨の弾性を有する部分に接続されている請求項17記載の義足。
【請求項21】
縦方向に延在する足竜骨と、
前記足竜骨に連結された下端、前記下端から上向きに延出して前に突出するように湾曲した下部、および人の下肢端部に装着されたソケットの下端と連結するための上端を備えた弾性を有する腓脛部と、
弾性を有する後部腓装置と、を有する義足において、
前記上端は、前記義足の使用時に前記腓脛部に対する力の負荷および力からの解放に応答して前記足竜骨の縦方向に運動することが可能であり、
前記後部腓装置は、前記腓脛部の上部と前記義足の下部とに連結されていて、前記義足に力が負荷されたときエネルギーを蓄え、また、前記義足が力から解放されたとき蓄えたエネルギーを戻して、歩行中に推進力として前記義足が発生する運動力に追加し、
さらに、前記腓脛部と前記後部腓装置とは一体に形成されている義足。
【請求項22】
前記足竜骨の少なくとも後部も、また、前記腓脛部並びに前記後部腓装置と一体に形成されている請求項21記載の義足。
【請求項23】
前記後部腓装置の下端は、前記足竜骨の後部に枢動可能に連結されている請求項21記載の義足。
【請求項24】
前記足竜骨も、また、前記腓脛部並びに前記後部腓装置と一体に形成されている請求項21記載の義足。
【請求項25】
縦方向に延在する足竜骨と、
前記足竜骨に連結された下端、前記下端から上向きに延出して前に突出するように湾曲した下部、および人の下肢端部に装着されたソケットの下端と連結するための上端を備えた弾性を有する腓脛部と、
弾性を有する後部腓装置と、を有する義足において、
前記上端は、前記義足の使用時に前記腓脛部に対する力の負荷および力からの解放に応答して前記足竜骨の縦方向に運動することが可能であり、
前記後部腓装置は、前記腓脛部の上部と前記義足の下部とに連結されていて、前記義足に力が負荷されたときエネルギーを蓄え、また、前記義足が力から解放されたとき蓄えたエネルギーを戻して、歩行中に推進力として前記義足が発生する運動力に追加し、
さらに、前記義足は、それぞれが足竜骨部、腓脛部、および後部腓装置部を有する複数の縦分割体を含み、前記縦分割体は、各々の先端が独立して動くことが可能であり、かつ、基部側端部が一体化されている義足。
【請求項26】
前記縦分割体は、異なる幅の前記縦分割体を含む請求項25記載の義足。
【請求項27】
前記縦分割体は、前記足竜骨の先端の面が異なる高さにある縦分割体を含む請求項25記載の義足。
【請求項28】
三つの縦分割体が並べて配置されており、その中の中央の縦分割体は、その足竜骨の先端の面が隣接した他の縦分割体の先端の面より高い位置にある請求項25記載の義足。
【請求項29】
前記縦分割体の各々が一体に形成されているとともに、前記縦分割体の腓脛部の基部側端部が一体に形成されている請求項25記載の義足。
【請求項30】
縦方向に延在する足竜骨と、
前記足竜骨に連結された下端、前記下端から上向きに延出して前に突出するように湾曲した下部、および人の下肢端部に装着されたソケットの下端と連結するための上端を備えた弾性を有する腓脛部と、
装置と、を有する義足において、
前記上端は、前記義足の使用時に前記腓脛部に対する力の負荷および力からの解放に応答して前記足竜骨の縦方向に運動することが可能であり、
前記装置は、前記腓脛部の上部と前記義足の下部とに連結されていて、前記義足の使用時に、前記腓脛部の前記上端を前記足竜骨に対して縦方向に運動させる矢状面の屈曲特性を変化させ、
さらに、前記装置が連結されている前記義足の前記下部は、前記腓脛部の下部、前記足竜骨、および前記腓脛部と前記足竜骨とを連結する連結要素の一つである義足。
【請求項31】
足関節と脚下方の補綴部とを形成するとともに、人の下肢端部に装着された義足用ソケットの下端に連結される弾性を有する腓脛部に取り付けられた縦方向に延在する足竜骨を有する義足を準備することと、
前記義足に力が負荷されたときエネルギーを蓄え、また、前記義足が力から解放されたとき蓄えたエネルギーを戻して、歩行中に推進力として前記義足が発生する運動力に追加するために前記義足に装着された後部腓装置を用いることと、を含み、
前記腓脛部は、前記足竜骨から上方に延出し、かつ、前に突出した湾曲部を有し、
さらに、前記後部腓装置によってエネルギーを蓄えることが、前記腓脛部の前記上端の前への運動中に前記後部腓装置の少なくとも一つのばねを弾性的に付勢することを含む義足に推進力のための動力を発生させる方法。
【請求項32】
歩行中の後への動きに対して前記腓脛部の前記上端を弾性的に付勢するために、前記後部腓装置の少なくとも一つのばねに初期張力を与えることを含む請求項31記載の方法。
【請求項33】
歩行中の力の負荷と力からの解放に伴う後への動きと前への動きに対する前記腓脛部の相対屈曲特性を変化させるために、前記少なくとも一つのばねに与える初期張力の大きさを調節することを含む請求項31記載の方法。
【請求項34】
前記調節することが、前記足関節のトルク比を、歩行後期の終端相において前記義足に発生する前記足関節の最大背屈トルクを、歩行中の踵接地に応答して最初の足底接地時に足底の屈曲により前記義足に発生する前記足関節のトルクによって割った比率として定義したとき、歩行中の前記義足の前記足関節のトルク比を人の足のトルク比に近似させることによって実行される請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記調節することが、歩行後期の終端相において前記義足に発生する前記足関節の最大背屈トルクを増大させ、かつ、歩行中の踵接地に応答して最初の足底接地時に足底の屈曲により前記義足に発生する前記足関節のトルクを減少させ、これにより前者が後者より値が一桁大きくなるようにして実行される請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記足関節のトルク比の値は約11対1に増大される請求項33記載の方法。
【請求項37】
前記足竜骨は、前記足の足中央に縦方向のアーチによって形成された凹面部を有し、前記凹面部は、前記力の負荷時に伸張されてエネルギーを蓄え、さらに、蓄えたエネルギーを歩行の立脚相の前記後期に放出して、人の体に対する推進力に加える請求項31記載の方法。
【請求項38】
内側が、外側との比較において、より大きい動的応答特性を有するように前記縦方向のアーチを形成することを含む請求項37記載の方法。
【請求項39】
内側が、外側より大きい曲率半径を有するように前記縦方向のアーチの前記凹面部を形成することを含む請求項37記載の方法。
【請求項40】
足関節と、縦方向に延在した足竜骨、並びに、人の下肢端部に装着される義足用ソケットの下端に連結されるとともに前記足関節の上方に位置する長い直立した脛部と、を形成する弾性を有する腓脛部と、を有する義足を準備することと、
前記義足に装着された後部腓装置を用いて歩行中の前記義足の前記足関節のトルク比を変化させることと、を含む義足に推進力のための動力を発生させる方法において、
前記腓脛部は、前記足竜骨から上向きに延出して前に突出するように湾曲した下部と、前記義足の使用時に前記義足に対する力の負荷時および力からの解放時に前記足竜骨に対して縦方向に運動する上端と、を有し、
さらに、前記足関節のトルク比を調節することによって、前記足関節のトルク比を、歩行後期の終端相において前記義足に発生する前記足関節の最大背屈トルクを、歩行中の踵接地に応答して最初の足底接地時に足底の屈曲により前記義足に発生する前記足関節のトルクによって割った比率として定義したとき、前記義足の使用時の力の負荷および力からの解放に応答して前記腓脛部の前記上端の前記足竜骨の縦方向の運動に対する矢状面の屈曲特性が変更される義足に推進力のための動力を発生させる方法。
【請求項41】
前記足関節のトルク比は、人の足のトルク比に近似するように変更される請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記足関節のトルク比が、歩行後期の終端相において発生する前記足関節の最大背屈トルクが、歩行中の踵接地に応答して最初の足底接地時に足底の屈曲により発生する前記足関節のトルクより一桁大きい値になるように変更される請求項40記載の方法。
【請求項43】
前記足関節のトルク比は約11対1に変更される請求項40記載の方法。
【請求項44】
前記足関節のトルク比は、前記腓脛部の前記上端の前記後への動きに力を補填することと、前記腓脛部の前記上端の前記前への動きを制限することと、の少なくとも一方の作用をする前記後部腓装置を用いて変更される請求項40記載の方法。
【請求項45】
前記後部腓装置は、前記腓脛部の前記上端の前記方への動きに対して、前記後への動きが容易になるよう前記上端を弾性的に付勢する請求項44記載の方法。
【請求項46】
前記後部腓装置は、前記腓脛部の前記上端の前への運動中に前記後部腓装置の少なくとも一つの部材に対して前記義足に力が負荷されたときにエネルギーを蓄え、また、前記義足が力から解放されたときにエネルギーを戻すよう前記上端を弾性的に付勢することによって、前記腓脛部の前記上端の前記前への動きを制限する請求項44記載の方法。
【請求項47】
前記足竜骨、前記腓脛部、および前記後部腓装置を一体に形成することを含む請求項40記載の方法。
【請求項48】
前記義足が力から解放されたときに戻されるエネルギーを前記義足に力が負荷されているときに蓄えるために、歩行中に伸張することができる弾性を有する縦方向のアーチを前記足竜骨に形成することを含む請求項40記載の方法。
【請求項49】
内側が外側より大きい曲率半径を有するように前記縦方向のアーチを形成することを含む請求項48記載の方法。
【請求項1】
足、足関節、および足関節の上方に直立した長い脛部を含む下肢補綴装具に推進力のための動力を発生させる方法において、
前記補綴装具の前記足関節と前記脛部とを構成する一体に形成された弾性部材を設け、前記弾性部材を、前に突出するように湾曲した少なくとも足関節の領域に用いることと、
前記補綴装具の使用時に、前記弾性部材の上端の後への動きに対して力を補填し、また、前記弾性部材の前記上端の前への動きを制御することと、を含む方法。
【請求項2】
前記後への動きに対して力を補填することが、前記補綴装具に設けられた装置を用いて、後への動きに対して前記弾性部材の前記上端を弾性的に付勢することを含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記前への動きを制御することが、前記補綴装具に設けられた装置を用いて、前記弾性部材の前記上端の前への動きの範囲を制限することを含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記前への動きを制御することが、前記補綴装具に設けられた装置を用いて、前記弾性部材の前記上端の前への動きに対して抵抗することを含む請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記前への動きを制御することが、歩行中に前記補綴装具に力が負荷されたとき前記装置にエネルギーを蓄え、前記補綴装具が力から解放されたとき前記装置が蓄えたエネルギーを戻して歩行中の人の体のための推進力に追加するために、前記弾性部材の前記上端が前へ動くとき前記補綴装具に装着された装置を弾性的に付勢することを含む方法。
【請求項6】
前記力を補填すること、並びに、前記制御することとは、前記足関節のトルク比が、歩行後期の終端相において前記補綴装具に発生する前記足関節の最大背屈トルクを、歩行中の踵接地に応答して最初の足底接地時に足底の屈曲により前記補綴装具に発生する前記足関節のトルクによって割った比率として定義されたとき、歩行中の前記補綴装具の前記足関節のトルク比を増大させる請求項1記載の方法。
【請求項7】
歩行中に人の足に発生する前記足関節のトルク比に近似させるために前記足関節のトルク比を増大させることを含む請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記足関節の前記最大背屈トルクが前記足底の屈曲による前記足関節のトルクより一桁大きくなるように前記足関節のトルク比を増大させることを含む請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記足関節のトルク比を約11対1の値に増大させることを含む請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記足に高低の動的応答能力を有するようにさせることを含む請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記足は足竜骨を含み、前記足に高低の動的応答能力を有するようにさせることが、内側が外側より大きい曲率半径を有し、また、内側が外側より比較的高い応答能力を有する縦方向のアーチの形状に前記足竜骨の前記足中央部を形成することを含む請求項10記載の方法。
【請求項12】
縦方向に延在する足竜骨と、
前記足竜骨に連結された下端、前記下端から上向きに延出して前に突出するように湾曲した下部、および人の下肢端部に装着されたソケットの下端と連結するための上端を備えた弾性を有する腓脛部と、
前記腓脛部の上部と前記義足の下部とに連結されて、前記腓脛部の上端の後への動きに力を補填し、また、前記腓脛部の前記上端の前への動きを制御するための装置と、を有する義足において、
前記上端は、前記義足の使用時に前記腓脛部に対する力の負荷および力からの解放に応答して前記足竜骨の縦方向に運動することができる義足。
【請求項13】
前記装置は、弾性伸びが制限されている少なくとも一つの柔軟な帯を含む請求項12記載の義足。
【請求項14】
前記装置は、前記少なくとも一つの帯に掛かる張力を調節するための手段を含む請求項13記載の義足。
【請求項15】
前記装置が連結された前記義足の前記下部は、前記腓脛部の下部、前記足竜骨、および前記腓脛部と前記足竜骨とを連結する連結要素の中の一つである請求項12記載の義足。
【請求項16】
前記装置は前記腓脛部の後方に配置されている請求項12記載の義足。
【請求項17】
前記装置は、前記腓脛部の前記上部と前記義足の前記下部とに接続された少なくとも一つの柔軟な帯と、エネルギーを蓄えるために前記腓脛部の前記上端の前へのき動に応答して前記少なくとも一つの帯によって弾性的に付勢された少なくとも一つのばねとを含む請求項12記載の義足。
【請求項18】
前記少なくとも一つのばねに予め張力を掛けることができるよう前記帯の長さを調節するための手段を含む請求項17記載の義足。
【請求項19】
前記少なくとも一つのばねは、前記帯の向きを変えるために前記少なくとも一つの柔軟な帯に隣接している請求項17記載の義足。
【請求項20】
前記少なくとも一つの柔軟な帯は、前記少なくとも一つのばねとして作用する前記足竜骨の弾性を有する部分に接続されている請求項17記載の義足。
【請求項21】
縦方向に延在する足竜骨と、
前記足竜骨に連結された下端、前記下端から上向きに延出して前に突出するように湾曲した下部、および人の下肢端部に装着されたソケットの下端と連結するための上端を備えた弾性を有する腓脛部と、
弾性を有する後部腓装置と、を有する義足において、
前記上端は、前記義足の使用時に前記腓脛部に対する力の負荷および力からの解放に応答して前記足竜骨の縦方向に運動することが可能であり、
前記後部腓装置は、前記腓脛部の上部と前記義足の下部とに連結されていて、前記義足に力が負荷されたときエネルギーを蓄え、また、前記義足が力から解放されたとき蓄えたエネルギーを戻して、歩行中に推進力として前記義足が発生する運動力に追加し、
さらに、前記腓脛部と前記後部腓装置とは一体に形成されている義足。
【請求項22】
前記足竜骨の少なくとも後部も、また、前記腓脛部並びに前記後部腓装置と一体に形成されている請求項21記載の義足。
【請求項23】
前記後部腓装置の下端は、前記足竜骨の後部に枢動可能に連結されている請求項21記載の義足。
【請求項24】
前記足竜骨も、また、前記腓脛部並びに前記後部腓装置と一体に形成されている請求項21記載の義足。
【請求項25】
縦方向に延在する足竜骨と、
前記足竜骨に連結された下端、前記下端から上向きに延出して前に突出するように湾曲した下部、および人の下肢端部に装着されたソケットの下端と連結するための上端を備えた弾性を有する腓脛部と、
弾性を有する後部腓装置と、を有する義足において、
前記上端は、前記義足の使用時に前記腓脛部に対する力の負荷および力からの解放に応答して前記足竜骨の縦方向に運動することが可能であり、
前記後部腓装置は、前記腓脛部の上部と前記義足の下部とに連結されていて、前記義足に力が負荷されたときエネルギーを蓄え、また、前記義足が力から解放されたとき蓄えたエネルギーを戻して、歩行中に推進力として前記義足が発生する運動力に追加し、
さらに、前記義足は、それぞれが足竜骨部、腓脛部、および後部腓装置部を有する複数の縦分割体を含み、前記縦分割体は、各々の先端が独立して動くことが可能であり、かつ、基部側端部が一体化されている義足。
【請求項26】
前記縦分割体は、異なる幅の前記縦分割体を含む請求項25記載の義足。
【請求項27】
前記縦分割体は、前記足竜骨の先端の面が異なる高さにある縦分割体を含む請求項25記載の義足。
【請求項28】
三つの縦分割体が並べて配置されており、その中の中央の縦分割体は、その足竜骨の先端の面が隣接した他の縦分割体の先端の面より高い位置にある請求項25記載の義足。
【請求項29】
前記縦分割体の各々が一体に形成されているとともに、前記縦分割体の腓脛部の基部側端部が一体に形成されている請求項25記載の義足。
【請求項30】
縦方向に延在する足竜骨と、
前記足竜骨に連結された下端、前記下端から上向きに延出して前に突出するように湾曲した下部、および人の下肢端部に装着されたソケットの下端と連結するための上端を備えた弾性を有する腓脛部と、
装置と、を有する義足において、
前記上端は、前記義足の使用時に前記腓脛部に対する力の負荷および力からの解放に応答して前記足竜骨の縦方向に運動することが可能であり、
前記装置は、前記腓脛部の上部と前記義足の下部とに連結されていて、前記義足の使用時に、前記腓脛部の前記上端を前記足竜骨に対して縦方向に運動させる矢状面の屈曲特性を変化させ、
さらに、前記装置が連結されている前記義足の前記下部は、前記腓脛部の下部、前記足竜骨、および前記腓脛部と前記足竜骨とを連結する連結要素の一つである義足。
【請求項31】
足関節と脚下方の補綴部とを形成するとともに、人の下肢端部に装着された義足用ソケットの下端に連結される弾性を有する腓脛部に取り付けられた縦方向に延在する足竜骨を有する義足を準備することと、
前記義足に力が負荷されたときエネルギーを蓄え、また、前記義足が力から解放されたとき蓄えたエネルギーを戻して、歩行中に推進力として前記義足が発生する運動力に追加するために前記義足に装着された後部腓装置を用いることと、を含み、
前記腓脛部は、前記足竜骨から上方に延出し、かつ、前に突出した湾曲部を有し、
さらに、前記後部腓装置によってエネルギーを蓄えることが、前記腓脛部の前記上端の前への運動中に前記後部腓装置の少なくとも一つのばねを弾性的に付勢することを含む義足に推進力のための動力を発生させる方法。
【請求項32】
歩行中の後への動きに対して前記腓脛部の前記上端を弾性的に付勢するために、前記後部腓装置の少なくとも一つのばねに初期張力を与えることを含む請求項31記載の方法。
【請求項33】
歩行中の力の負荷と力からの解放に伴う後への動きと前への動きに対する前記腓脛部の相対屈曲特性を変化させるために、前記少なくとも一つのばねに与える初期張力の大きさを調節することを含む請求項31記載の方法。
【請求項34】
前記調節することが、前記足関節のトルク比を、歩行後期の終端相において前記義足に発生する前記足関節の最大背屈トルクを、歩行中の踵接地に応答して最初の足底接地時に足底の屈曲により前記義足に発生する前記足関節のトルクによって割った比率として定義したとき、歩行中の前記義足の前記足関節のトルク比を人の足のトルク比に近似させることによって実行される請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記調節することが、歩行後期の終端相において前記義足に発生する前記足関節の最大背屈トルクを増大させ、かつ、歩行中の踵接地に応答して最初の足底接地時に足底の屈曲により前記義足に発生する前記足関節のトルクを減少させ、これにより前者が後者より値が一桁大きくなるようにして実行される請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記足関節のトルク比の値は約11対1に増大される請求項33記載の方法。
【請求項37】
前記足竜骨は、前記足の足中央に縦方向のアーチによって形成された凹面部を有し、前記凹面部は、前記力の負荷時に伸張されてエネルギーを蓄え、さらに、蓄えたエネルギーを歩行の立脚相の前記後期に放出して、人の体に対する推進力に加える請求項31記載の方法。
【請求項38】
内側が、外側との比較において、より大きい動的応答特性を有するように前記縦方向のアーチを形成することを含む請求項37記載の方法。
【請求項39】
内側が、外側より大きい曲率半径を有するように前記縦方向のアーチの前記凹面部を形成することを含む請求項37記載の方法。
【請求項40】
足関節と、縦方向に延在した足竜骨、並びに、人の下肢端部に装着される義足用ソケットの下端に連結されるとともに前記足関節の上方に位置する長い直立した脛部と、を形成する弾性を有する腓脛部と、を有する義足を準備することと、
前記義足に装着された後部腓装置を用いて歩行中の前記義足の前記足関節のトルク比を変化させることと、を含む義足に推進力のための動力を発生させる方法において、
前記腓脛部は、前記足竜骨から上向きに延出して前に突出するように湾曲した下部と、前記義足の使用時に前記義足に対する力の負荷時および力からの解放時に前記足竜骨に対して縦方向に運動する上端と、を有し、
さらに、前記足関節のトルク比を調節することによって、前記足関節のトルク比を、歩行後期の終端相において前記義足に発生する前記足関節の最大背屈トルクを、歩行中の踵接地に応答して最初の足底接地時に足底の屈曲により前記義足に発生する前記足関節のトルクによって割った比率として定義したとき、前記義足の使用時の力の負荷および力からの解放に応答して前記腓脛部の前記上端の前記足竜骨の縦方向の運動に対する矢状面の屈曲特性が変更される義足に推進力のための動力を発生させる方法。
【請求項41】
前記足関節のトルク比は、人の足のトルク比に近似するように変更される請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記足関節のトルク比が、歩行後期の終端相において発生する前記足関節の最大背屈トルクが、歩行中の踵接地に応答して最初の足底接地時に足底の屈曲により発生する前記足関節のトルクより一桁大きい値になるように変更される請求項40記載の方法。
【請求項43】
前記足関節のトルク比は約11対1に変更される請求項40記載の方法。
【請求項44】
前記足関節のトルク比は、前記腓脛部の前記上端の前記後への動きに力を補填することと、前記腓脛部の前記上端の前記前への動きを制限することと、の少なくとも一方の作用をする前記後部腓装置を用いて変更される請求項40記載の方法。
【請求項45】
前記後部腓装置は、前記腓脛部の前記上端の前記方への動きに対して、前記後への動きが容易になるよう前記上端を弾性的に付勢する請求項44記載の方法。
【請求項46】
前記後部腓装置は、前記腓脛部の前記上端の前への運動中に前記後部腓装置の少なくとも一つの部材に対して前記義足に力が負荷されたときにエネルギーを蓄え、また、前記義足が力から解放されたときにエネルギーを戻すよう前記上端を弾性的に付勢することによって、前記腓脛部の前記上端の前記前への動きを制限する請求項44記載の方法。
【請求項47】
前記足竜骨、前記腓脛部、および前記後部腓装置を一体に形成することを含む請求項40記載の方法。
【請求項48】
前記義足が力から解放されたときに戻されるエネルギーを前記義足に力が負荷されているときに蓄えるために、歩行中に伸張することができる弾性を有する縦方向のアーチを前記足竜骨に形成することを含む請求項40記載の方法。
【請求項49】
内側が外側より大きい曲率半径を有するように前記縦方向のアーチを形成することを含む請求項48記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【公表番号】特表2007−530246(P2007−530246A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506487(P2007−506487)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/010584
【国際公開番号】WO2005/097008
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(503224611)
【出願人】(503224622)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/010584
【国際公開番号】WO2005/097008
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(503224611)
【出願人】(503224622)
【Fターム(参考)】
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