説明

歩行型車両

【課題】コストの上昇を抑制しつつ急旋回を防止して狙いとする旋回ラインが容易に得られる歩行型車両を提供する。
【解決手段】
車両1が所定速度以上で走行している際に、旋回操作子33が左方又は右方に旋回操作されたとき、該車両1を減速させる旋回時減速機構55を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操縦者が歩行しながら運転操作することにより走行させるようにした歩行型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の歩行型車両として、例えば、エンジンにより左,右のクローラ走行装置及びオーガ装置を駆動することにより走行しつつ除雪を行うようにした除雪機がある。
【0003】
このような除雪機の旋回装置として、例えば、特許文献1には、左,右のクローラ走行装置ごとに油圧式無段変速機を設け、操作ハンドルに配設された左,右何れかの旋回レバーを操作することにより、左,右何れかの無段変速機により旋回方向内側に位置するクローラ走行装置を減速させるようにしたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−278053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記従来の除雪機では、左,右のクローラ走行装置毎に油圧式無段変速機を設けており、それだけコストが上昇するという問題がある。また前記従来の除雪機では、旋回方向内側に位置するクローラ走行装置を減速させるようにしているので、除雪機の走行速度の如何によっては、旋回速度が速くなり、狙いとする旋回ラインが得難いという問題がある。
【0006】
本発明は、前記従来の実情に鑑みてなされたもので、コストの上昇を抑制しつつ狙いとする旋回ラインが容易に得られる歩行型車両を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、フレームと、該フレームに搭載された駆動源と、前記フレームに搭載され、前記駆動源からの回転を変速しつつ出力する変速機と、前記フレームに支持され、前記変速機からの回転により該車両を走行させる左,右の走行装置と、前記変速機と前記左,右の走行装置との間に配置され、前記回転を伝達又は遮断する左,右の旋回クラッチと、前記フレームに取り付けられ、操縦者が歩行しつつ把持する操作ハンドルと、該車両を左方又は右方に旋回させる旋回操作子とを備えた歩行型車両であって、該車両が所定速度以上で走行している際に、前記旋回操作子が左方又は右方に旋回操作されたとき、該車両を減速させる旋回時減速機構を備えたことを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の歩行型車両において、前記旋回操作子が左方又は右方に旋回操作されたとき、前記左の旋回クラッチ又は右の旋回クラッチを遮断状態とすると同時に、前記旋回時減速機構を車両減速状態とする旋回時制御回路を備えたことを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載の歩行型車両において、前記変速機は、変速軸を回動させることにより変速比を変化させる無段変速機であり、前記旋回時減速機構は、前記旋回操作子が操作されたとき前記変速軸を減速側に回動させることを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載の歩行型車両において、前記旋回時減速機構は、前記変速軸に固定された変速レバーと、該変速レバーに第1ケーブルを介して連結されたアクチュエータとを有し、前記旋回操作子が操作されたとき、前記アクチュエータが前記変速レバーを減速側に移動させることを特徴としている。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4に記載の歩行型車両において、前記変速レバーの一端に前記第1ケーブルを介して前記アクチュエータが連結され、他端に第2ケーブルを介して操縦者が操作する走行操作レバーが連結され、前記変速レバーと第2ケーブルとの接続部には、前記アクチュエータが前記変速レバーを減速側に移動させたとき、前記操縦者による走行操作レバーの操作量を保持する保持機構が介在されていることを特徴としている。
【0012】
請求項6の発明は、請求項5に記載の歩行型車両において、前記保持機構は、長孔を有し、前記操作ケーブルに接続されたホルダと、前記変速レバーに固定され、前記ホルダの長孔に相対移動可能に係合する連結ピンと、前記ホルダの長孔の一端と前記連結ピンとの間に配置され、前記連結ピンを前記長孔の他端に当接するよう付勢する付勢部材とを有し、前記アクチュエータが前記変速レバーを減速側に移動させたとき、該変速レバーの移動量を前記付勢部材が収縮することにより吸収することを特徴としている。
【0013】
請求項7の発明は、請求項6に記載の歩行型車両において、前記走行操作レバーを操作された位置に保持する走行操作レバー保持力,前記付勢部材の付勢力,前記アクチュエータの駆動力及び前記変速軸を回動させるのに必要な変速軸トルクの大きさは、変速軸トルク<付勢部材の付勢力<アクチュエータの駆動力<走行操作レバー保持力の関係にあることを特徴としている。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1に記載の歩行型車両において、前記旋回時減速機構は、該車両が前進している際に、前記旋回操作子が旋回操作されたとき、該車両を減速させることを特徴としている。
【0015】
請求項9の発明は、請求項3に記載の歩行型車両において、前記旋回時減速機構は、該車両が前進している際及び後進している際に、前記旋回操作子が旋回操作されたとき、該車両を減速させることを特徴としている。
【0016】
請求項10の発明は、請求項9に記載の歩行型車両において、前記旋回時減速機構は、共通の揺動ピンにより揺動可能に支持され、閉方向に揺動されたとき前記変速レバーを後進減速方向及び前進減速方向に移動させる一対の後進減速アーム及び前進減速アームと、前記後進減速アーム及び前進減速アームに減速ケーブルを介して連結され、旋回操作子が操作されたとき前記後進減速アームと前進減速アームを閉方向に揺動させるアクチュエータとを備えたことを特徴としている。
【0017】
請求項11の発明は、請求項1に記載の歩行型車両において、前記旋回操作子が左方又は右方に旋回操作されたとき、前記旋回時減速機構を車両減速状態とし、その後前記左の旋回クラッチ又は右の旋回クラッチを遮断状態とする旋回時制御回路を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明に係る歩行型車両によれば、旋回操作子が操作されたときに、車両の走行速度を減速するようにしたので、高速で走行中に旋回させる場合の急旋回を回避することができ、狙いとする旋回ラインに沿って旋回させることができる。なお、本発明の旋回時減速機構は、請求項8に記載されているように、車両が前進している際に、旋回操作がなされると車両を減速させ、あるいは請求項9に記載されているように、車両が前進している際及び後進している際に、旋回操作がなされると車両を減速させる。
【0019】
また本発明は、駆動源からの回転力を変速して左,右の走行装置に伝達するので、従来の走行装置ごとに変速機を設ける場合に比べてコストを低減できる。
【0020】
請求項2の発明では、前記旋回操作子が旋回操作されたとき、前記左又は右の旋回クラッチを遮断状態とすると同時に、前記旋回時減速機構により車両を減速状態とするようにしたので、急旋回を回避することができ、狙いとする旋回ラインに沿って旋回させることができる。
【0021】
請求項3の発明では、前記変速機を、変速軸を回動させることにより変速比を変化させる無段変速機とし、前記旋回時減速機構を、前記旋回操作子が操作されたとき前記変速軸を減速側に回動させる構成としたので、簡単な構成により旋回時に車両を減速させることができ、急旋回を回避して狙いとする旋回ラインに沿って旋回させることができる。
【0022】
請求項4の発明では、旋回時減速機構を、前記変速軸に変速レバーを固定し、該変速レバーに第1ケーブルを介してアクチュエータを連結し、旋回操作子が操作されたとき、前記アクチュエータが前記変速レバーを減速側に移動させる構成としたので、簡単な構造でかつ低コストで旋回時の減速を行うことができる。
【0023】
請求項5の発明では、前記変速レバーの他端と、操縦者が操作する走行操作レバーが連結された第2ケーブルとの接続部に、前記アクチュエータが前記変速レバーを減速側に移動させたとき、前記操縦者による走行操作レバーの操作量を保持する保持機構を介在させたので、旋回時減速機構が変速レバーを回動させても、走行操作レバーは操縦者が操作した位置に保持される。その結果、旋回終了とともに走行操作レバーにより設定された走行速度に自動的に戻すことができ、新たな走行操作レバーの操作を行うことなくスムーズに直進走行に移行できる。
【0024】
請求項6の発明では、前記保持機構を、前記第2ケーブルに接続されたホルダの長孔に、前記変速レバーに固定された連結ピンを相対移動可能に係合させるとともに、前記ホルダの長孔の一端と前記連結ピンとの間に、前記連結ピンを前記長孔の他端に当接するよう付勢する付勢部材を配設する構成とした。そのため前記アクチュエータが前記変速レバーを減速側に移動させたとき、該変速レバーの移動量を前記付勢部材が収縮することとなり、簡単な構成で走行操作レバーを操縦者が操作した位置に保持することができ、旋回終了後にスムーズに直進走行に移行できる。
【0025】
請求項7の発明では、走行操作レバー保持力,前記付勢部材の付勢力,前記アクチュエータの駆動力及び変速軸トルクの大きさを、変速軸トルク<付勢力<駆動力<走行操作レバー保持力の関係に設定したので、旋回操作子が操作されたとき、前記アクチュエータにより前記変速レバーを減速側に移動させることにより減速でき、また走行操作レバーを操縦者が操作した位置に保持でき、旋回終了後にスムーズに直進走行に移行できる
請求項10の発明では、閉方向に揺動されたとき変速レバーを後進減速方向及び前進減速方向に移動させる一対の後進減速アーム及び前進減速アームを設けたので、後進時及び前進時の両方における旋回時に減速でき、後進時及び前進時の何れにおいても、狙った旋回ラインに沿って車両を旋回させることができる。
【0026】
請求項11の発明では、旋回操作がなされたとき、まず車両を減速させ、続いて左又は右の旋回クラッチを遮断状態とするようにしたので、より確実に急旋回を回避でき、狙いとする旋回ラインにより確実に沿って旋回できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例1による歩行型除雪機の側面図である。
【図2】前記除雪機の平面図である。
【図3】前記除雪機の油圧式無段変速機の側面図である。
【図4】前記除雪機の旋回スイッチの斜視図である。
【図5】前記旋回スイッチの断面平面図である。
【図6】前記油圧式無段変速機の旋回時減速機構の側面図である。
【図7】前記旋回時減速機構の動作を示す側面図である。
【図8】前記除雪機の回路図である。
【図9】本発明の実施例2による除雪機の旋回時減速機構の側面図である。
【図10】前記旋回時減速機構の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0028】
図1ないし図8は、本発明の実施例1による歩行型車両を説明するための図である。なお、本実施例で前後,左右という場合は、操縦者が操作ハンドルを把持した状態で見た場合の前後,左右を意味する。
【0029】
図において、1は操縦者が歩行しながら運転操作することにより除雪を行うようにした歩行型除雪機を示している。
【0030】
前記除雪機1のフレーム2は、車体フレーム2aと走行フレーム2bとで構成されている。前記車体フレーム2aの、前部にはオーガ装置3が配設され、中央部には駆動源としてのエンジン4がクランク軸4aを車両前後方向に向けて搭載され、後部には、操縦者が把持する左,右グリップ6a,6bを有する操作ハンドル6が備えられている。また前記走行フレーム2bにより左,右一対のクローラ走行装置5L,5Rが支持されている。
【0031】
また前記除雪機1は、前記エンジン4の下方に搭載され、該エンジン4の回転力を変速して左,右のクローラ走行装置5L,5Rに伝達する油圧式の無段変速機(HST)7と、該無段変速機7からの回転力を前記左,右のクローラ走行装置5L,5Rに接続又は遮断する左,右一対の旋回クラッチ8L,8Rとを備えている。
【0032】
前記車体フレーム2aの、エンジン4の上方には燃料タンク12が配置され、エンジン4の後方にはバッテリ13が配置されている。
【0033】
前記オーガ装置3は、前方に開口するオーガハウジング15と、該オーガハウジング15により回転自在に支持されたオーガ軸16aに取り付けられたスパイラル形状のオーガ16と、前記オーガハウジング15に接続されたブロアハウジング18と、該ブロアハウジング18内に配設され、車両前後方向に延びるインペラ軸17aに取付けられたインペラ17と、前記ブロアハウジング18に上方に延びるように接続され、駆動モータ19aにより雪の排出方向を変化させるように構成されたシュータ19とを有する。
【0034】
前記インペラ軸17aの前端部には、減速ウォームギヤ20を介して前記オーガ軸16aが連結されている。また前記インペラ軸17aの後端部には、従動プーリ21が結合され、該従動プーリ21は、前記クランク軸4aの前端部に結合された駆動プーリ22にVベルト23を介して連結されている。クランク軸4aの回転によりインペラ軸17aを介してオーガ16及びインペラ17が回転することにより、雪はブロアハウジング18内に掻き込まれるとともに、インペラ17により巻き上げられてシュータ19から外方に排出される。
【0035】
前記操作ハンドル6の左,右グリップ6a,6bの間には、操作パネル25が配設されている。該操作パネル25には、エンジンスイッチ26,シュータ方向調整レバー27,シュータデフレクタ調整レバー28,オーガクラッチレバー29,後述する走行操作レバー30が配置されている。また左グリップ6aには、走行クラッチレバー31が配設され、右グリップ6bには、オーガハウジング高さ調整レバー32b及び旋回操作スイッチ(旋回操作子)33が配設されている。
【0036】
この旋回操作スイッチ33は、図5に示すように、スイッチボックス33a内に配設された左旋回スイッチ33L及び右旋回スイッチ33Rと、該左,右旋回スイッチ33L,33Rの何れかを押し込むように前記スイッチボックス33aに揺動軸33bを介して揺動可能に支持された操作ボタン33cとを有する。該操作ボタン33cとスイッチボックス33aとの隙間は蛇腹状の防水カバー33dにより覆われている。
【0037】
また本実施例の除雪機1は車体フレーム2a内に、エンジン始動,走行開始,左,右旋回,オーガオンオフ等を行う制御回路35を備えている。なお、この制御回路35の、オーガリレー35a及び減速リレー35dは、通電されるとオンする常開(ノーマルオープン)タイプであり、左旋回リレー35b及び右旋回リレー35cは、通電されるとオフする常閉(ノーマルクローズ)タイプである。
【0038】
前記左,右のクローラ走行装置5L,5Rは、前記エンジン4により回転駆動される駆動ホイール40,40と、従動ホイール41,41とをゴムからなる無端ベルト状のクローラ42,42により連結した構造を有する。
【0039】
前記左,右の駆動ホイール40の駆動軸40aは、減速歯車機構43を介して前記左,右の旋回クラッチ8L,8Rの出力軸8a,8aに連結され、前記左,右の従動ホイール41の従動軸41aは、前記走行フレーム2bに取り付けられたアイドル軸44により相対回転自在に支持されている。
【0040】
前記無段変速機7は、変速機ケース7a内にクランク軸4aと平行をなすよう配置された入力軸7bと、該入力軸7bの下方にこれと平行に配置された中間軸7cと、該中間軸7cの後方にこれと直交方向に向けて配置され、ベベルギヤ48を介して連結された変速出力軸7dとを有する(図6参照)。
【0041】
また前記無段変速機7は、前記入力軸7bの回転により駆動される斜板式油圧ポンプ(不図示)と、該油圧ポンプにより吐出された作動油により前記中間軸7cを回転駆動する油圧モータ(不図示)と、前記油圧ポンプの作動油の吐出量を変化させる揺動可能な可変斜板7eと、該可変斜板7eの揺動角度を変化させる回動可能な変速軸7fと、該変速軸7fの外端部に結合された変速レバー7gとを有する。
【0042】
前記入力軸7bの前端部は変速機ケース7aから前方に突出しており、該入力軸7bの前端部には従動プーリ45が結合されている。該従動プーリ45は、前記クランク軸4aに結合された駆動プーリ46にVベルト47を介して連結されている。47aはVベルト47をプーリで押圧して緩み状態から張り状態にすることで動力を伝達するベルト式の走行クラッチである。
【0043】
前記変速出力軸7dは、変速機ケース7aから車幅方向外方に突出し、前記左,右の旋回クラッチ8L,8Rを介して前記左,右の出力軸8a,8aに接続されている。前記変速出力軸7dの回転が、前記左,右の旋回クラッチ8L,8Rにより前記左,右の出力軸8aに伝達又は遮断される。
【0044】
前記変速レバー7gは、プッシュプル式の操作ケーブル(第2ケーブル)50を介して前記走行操作レバー30に接続されている。該走行操作レバー30を前後に回動させることにより、操作ケーブル50,変速レバー7gを介して前記変速軸7fが回動し、前記無段変速機7の回転速度が変化する。
【0045】
前記走行操作レバー30は、回動軸30aにより回動可能に支持された回動プレート30bに固定されている。
【0046】
前記操作ケーブル50は、車体に対して相対移動不能に支持されたアウタチューブ50a内にインナケーブル50bを押引自在に挿入した構造を有する。該インナケーブル50bの一端部が前記回動プレート30bに連結され、他端部が前記変速レバー7gに連結されている。
【0047】
図3,図6に示すように、走行操作レバー30をニュートラル位置Nに回動操作すると、変速レバー7gを介して変速軸7fが可変斜板7eを入力軸7bに対し軸直角方向に揺動させる。これにより入力軸7bから中間軸7cへの作動油の吐出が停止され、除雪機1は停止する。
【0048】
操縦者が走行操作レバー30をニュートラル位置Nから前方に回動させると、変速レバー7gを介して変速軸7fが反時計周りに回動し、可変斜板7eが前進F側に切り換わり、走行操作レバー30をさらに前方に回動させると、可変斜板7eが反時計回りに傾斜し、入力軸7bから中間軸7cへの回転が増速される。ここで、図6は、変速レバー7gひいては可変斜板7eが前進F側の最高速位置にある状態を示している。
【0049】
操縦者が前記走行操作レバー30をニュートラル位置Nから後方に回動させると、変速軸7fが時計周りに回動し、可変斜板7eが後進R側に切り換わり、走行操作レバー30をさらに後方に回動させると、可変斜板7eが時計回りに傾斜し、中間軸7cへの回転が増速される。本実施例の場合、具体的には、前進F時の最高速度は3.0km/hに設定され、後進R時の最高速度は2.0km/hに設定されている。
【0050】
ここで前記走行操作レバー30を操縦者が操作した位置に保持する走行操作レバー保持力と、前記付勢ばね63のばね力(付勢力)と、前記ソレノイド57aの駆動力及び前記変速軸7fを回動させるのに必要な変速軸トルクの大きさは、
変速軸トルク<ばね力<駆動力<走行操作レバー保持力
の関係になるように設定されている。
【0051】
本実施例の除雪機1は、前記旋回操作スイッチ33が操作されたとき、該除雪機1の走行速度を減速させる旋回時減速機構55を備えている。
【0052】
この旋回時減速機構55は、旋回操作スイッチ33が操作されたとき前記変速レバー7gを減速側に機械的に回動させるよう構成されており、詳細には以下の構造を有する。
【0053】
前記旋回時減速機構55は、前記変速レバー7gに連結された減速ケーブル(第1ケーブル)56と、前記旋回操作スイッチ33が操作されたとき、前記減速ケーブル56を介して前記変速レバー7gひいては変速軸7fを減速側に回動させるソレノイド(アクチュエータ)57aとを有する(図3参照)。なお、前記ソレノイドは、モータやシリンダ機構等であってもよい。
【0054】
前記変速レバー7gは、上下方向に延びる大略く字形状をなしており、上下方向中央部に前記変速軸7fが接続固定されている。この変速レバー7gの上端部(一端)に前記減速ケーブル56が連結され、下端部(他端)に保持機構60を介して前記操作ケーブル50が連結されている。
【0055】
前記減速ケーブル56は、車体に対して相対移動不能に支持されたアウタチューブ56a内にインナケーブル56bを押引自在に挿入した構造を有する。該インナケーブル56bの一端部が前記ソレノイド57aに接続され、他端部がリンク部材58を介して前記変速レバー7gに連結されている。
【0056】
前記ソレノイド57aは、旋回スイッチ33が左,右何れかに旋回操作されるとインナケーブル56b及びリンク部材58を介して前記変速レバー7gを減速側に回動させ、旋回スイッチ33の操作が解除されると引っ張りを解除する。
【0057】
前記リンク部材58には、スライド孔58aが前後方向に延びるように形成されており、該スライド孔58a内に前記変速レバー7gに固定されたスライドピン59が移動可能に係合している。また前記リンク部材58とアウタチューブ56aとの間には、該リンク部材58を非減速時位置に向けて付勢するばね58bが介設されている。
【0058】
前記リンク部材58のスライド孔58aは、走行操作レバー30が前進F側の高速位置Hにあるときに、その前端部58a′がスライドピン59に当接するように形成されている。なお、前記走行操作レバー30を前記高速位置からこれより低速側に少し回動させると、前記スライド孔58aの前端部58a′とスライドピン59との間に少し隙間が生じる。高速で前進走行中に旋回操作スイッチ33が操作されると、ソレノイド57aにより減速ケーブル56を介してリンク部材58が引っ張られ、これに伴って変速レバー7gがrだけ減速側に回動する(図7参照)。具体的には、前進時の車速が2〜3.0km/hのときに、旋回操作すると2.0km/h程度に減速する。
【0059】
なお、前記走行操作レバー30が前進F側の高速位置Hにあるときに、前記スライド孔58aの前端部58a′とスライドピン59との間に隙間があっても構わない。要はソレノイド57aの作動により変速レバー7gを所定角度だけ回動可能であれば良い。
【0060】
ここで、前進時の車速が2km/hより遅い低速域では、減速制御は行われない。即ち、低速域では、スライドピン59とスライド孔58aの前端部58a′との隙間がソレノイド57aのストロークより大きいため、リンク部材58が引っ張られても変速レバー7fが回動することはなく、このため減速は行われない。なお、本実施例では、後進時には、速度の如何に関わらず旋回時減速は行われない。
【0061】
前記保持機構60は、前記旋回操作スイッチ33の操作により変速レバー7gを減速側に回動させた際にも、走行操作レバー30を旋回操作前の回動位置に保持する機構であり、以下の構造を有する。
【0062】
前記保持機構60は、前記操作ケーブル50のインナケーブル50bが接続固定され、軸方向に延びる長孔61aを有する筒状のホルダ61と、前記変速レバー7gに固定され、前記ホルダ61の長孔61aに相対移動可能に係合する連結ピン62と、該連結ピン62を前記ホルダ61の長孔61aの一端61a′に当接するよう付勢する付勢ばね63とを有する。
【0063】
前記ホルダ61の長孔61aの開口部にはボルト64が螺着されており、該ボルト64と連結ピン62との間に前記付勢ばね63が介設されている。この付勢ばね63の付勢力は、走行操作レバー30の回動操作により変速レバー7gを回動させることが可能で、かつ前記ソレノイド57aによる減速ケーブル56の引っ張り力により収縮する大きさに設定されている。
【0064】
前記保持機構60は前記ソレノイド57aにより減速ケーブル56を介して変速レバー7gがrだけ減速側に回動されると、連結ピン62が付勢ばね63を収縮させつつ長孔61a内を移動し、走行操作レバー30は高速位置Hに保持される。
【0065】
本実施形態の除雪機1では、操縦者がメインスイッチ26をオンし、スタータボタン27を押すとエンジン4が始動し、スロットルレバー29の位置調整によりエンジン回転速度が調整される。
【0066】
そして操縦者が、走行クラッチレバー31を把持し、走行クラッチ47aと左,右の旋回クラッチ8L,8Rをオンにして、走行操作レバー30を前進側に回動させるとエンジン回転が無段変速機7及び左,右の旋回クラッチ8L,8Rを介して左,右の走行装置5L,5Rに伝達され、除雪機1は前進する。この場合に、前記走行操作レバー30を前進側に大きく回動させるほど走行速度が速くなる。なお、前記走行操作レバー30を後進側に回動させると除雪機1は後進する。
【0067】
また操縦者がオーガクラッチレバー29をオン位置に操作すると、オーガスイッチ29aがオンし、続いてオーガリレー35aがオンして電磁式のオーガクラッチ57bをオンさせ、これによりエンジン回転がオーガ16に伝達され、オーガ16が回転し、雪がシュータ19から排出される。この際に、操縦者がオーガハウジング高さ調節レバー32bを回動させることにより前記オーガ16の高さが調節される。
【0068】
そして除雪機1の左,右旋回は以下のように行われる。操縦者が、前記旋回操作スイッチ33の操作ボタン33cを、例えば左側に押し込む。すると左旋回スイッチ33Lがオンし、左旋回リレー35bが通電され、該左旋回リレー35bが開放される。これにより左の電磁式の旋回クラッチ8Lがオフし、左のクローラ行装置5Lへのエンジン回転が遮断され、ブレーキが作動して除雪機1は左方に旋回する。同様に、操縦者が前記操作ボタン33cを右側に押し込むと、除雪機1は右方に旋回する。
【0069】
そして前記左旋回スイッチ33L又は右旋回スイッチ33Rのオン操作により、左旋回リレー35b又は右旋回リレー35cへの通電と同時に減速リレー35dにも通電され、該減速リレー35dがオン、減速用のソレノイド57aがオンする。すると前記ソレノイド57aにより減速ケーブル56を介してリンク部材58が引っ張られ、これに伴って変速レバー7gはrだけ減速側に回動して減速位置Mに移動する(図7参照)。具体的には、前進時の車速が2〜3.0km/hのときに、旋回操作すると2.0km/h程度に減速する。
【0070】
また、前記保持機構60は、前記ソレノイド57aにより減速ケーブル56を介して変速レバー7gがrだけ減速側に回動されると、連結ピン62が付勢ばね63を収縮させつつ長孔61a内を移動し、走行操作レバー30は高速位置Hに保持される。
【0071】
本実施例の除雪機1によれば、旋回操作スイッチ33の例えば左旋回スイッチ33Lがオンされると、旋回時減速機構55のソレノイド57aが変速レバー7gを減速側に回動させ、除雪機1が減速すると同時に、左の旋回クラッチ8Lが旋回方向内側に位置する左のクローラ走行装置5Lへの動力を遮断する。これにより高速で前進走行中に旋回操作した場合の急旋回を回避することができ、狙いとする旋回ラインに沿って容易に旋回することができる。
【0072】
また本実施例では、アクチュエータとしてソレノイド57aを採用したので、動作速度が速く、減速時の応答性を高めることができる。
【0073】
また本実施例では、エンジン4の回転を無段変速機7で変速し、該無段変速機7の回転を左,右一対の旋回クラッチ8L,8Rを介して左,右のクローラ走行装置5L,5Rに伝達するように構成したので、従来の走行装置ごとに無段変速機を設ける場合に比べてコストを低減できる。
【0074】
本実施例では、前記旋回時減速機構55を、無段変速機7の変速レバー7gに減速ケーブル56を介してソレノイド57aを連結し、旋回操作スイッチ33が操作されたときソレノイド57aが減速ケーブル46を介して変速レバー7gを減速側に回動させるように構成したので、簡単かつ低コストの構造で、旋回時の減速を行うことができる。
【0075】
また、前記変速レバー7gの他端と、操縦者が操作する走行操作レバー30が連結された操作ケーブル50との接続部に、前記ソレノイド57aが前記変速レバー7gを減速側に移動させたとき、前記操縦者による走行操作レバー30の操作量を保持する保持機構60を介在させたので、旋回時減速機構55が変速レバー7gを回動させても、走行操作レバー30は操縦者が操作した位置に保持される。その結果、旋回終了とともに走行操作レバー30により設定された走行速度に自動的に戻すことができ、走行操作レバー30の新たな操作を行うことなくスムーズに直進走行に移行できる。
【0076】
前記保持機構60を、前記操作ケーブル50に接続されたホルダ61の長孔61aに、前記変速レバー7gに固定された連結ピン62を相対移動可能に係合させるとともに、前記長孔61aの開口部に螺挿されたボルト64と前記連結ピン62との間に、該連結ピン62を前記長孔61aの一端61a′に当接するよう付勢する付勢ばね63を配設する構成とした。そのため前記ソレノイド57aが前記変速レバー7gを減速側に移動させたとき、該変速レバー7gの移動量を前記付勢ばね63が収縮して吸収することとなり、簡単な構成で走行操作レバー30を操縦者が操作した位置に保持することができ、旋回終了後にスムーズに直進走行に移行できる。
【0077】
そして前記走行操作レバー30を操縦者が操作した位置に保持する走行操作レバー保持力と、前記付勢ばね63のばね力(付勢力)と、前記ソレノイド57aの駆動力及び前記変速軸7fを回動させるのに必要な変速軸トルクの大きさを、変速軸トルク<ばね力<駆動力<走行操作レバー保持力、の関係になるように設定したので、旋回操作スイッチ33が操作されたとき、前記ソレノイド57aにより前記変速レバー7gを減速側に回動させて減速することができる。また走行操作レバー30を操縦者が操作した位置に保持でき、旋回終了後にスムーズに直進走行に移行できる。
【0078】
本実施例では、除雪機1が高速走行している際に旋回操作が行われた場合のみ減速し、低速走行している際に旋回操作が行われた場合は減速しないので、無段変速機7のストールを防止できる。
【実施例2】
【0079】
図9及び図10は、本発明の実施例2による除雪機の旋回時減速機構を説明するための図である。図中、図3及び図6と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0080】
本実施例の旋回時減速機構は、前進時及び後進時の両方において旋回時に減速でき、かつ走行操作レバー30の操作量を保持できるように構成されており、詳細には以下の構造を有する。
【0081】
油圧式の無段変速機7の変速レバー7gの上端部にはプル式の走行操作ケーブル65が保持ばね66を介在させて連結され、下端部にはプル式の走行操作ケーブル67が保持ばね68を介在させて連結されている。これらの操作ケーブル65,67は、走行操作レバー30の回動プレート30bに連結されている。なお、前記保持ばね66,68のばね力の設定については、前記実施例2の付勢ばね63と同様である。
【0082】
走行操作レバー30を前方に回動させると、走行操作ケーブル67を介して変速レバー7gが反時計周りに回動し、後方に回動させると、走行操作ケーブル65を介して変速レバー7fgが時計周りに回動する。これにより前,後進の切り換え及び走行速度の増減が行われる。
【0083】
本実施例の旋回時減速機構70は、変速機ケース7aに固定された揺動ピン71により前後に揺動可能に支持された一対の後進減速アーム72及び前進減速アーム73と、該各アーム72,73の内側下端部に取り付けられた減速ピン74a,74bとを有する。前記前進,後進減速アーム73,72の間には、該両アームを拡開方向に付勢するばね74が介在されている。なお、75は前記前進,後進減速アーム73,72の減速時の移動量を規制するストッパであり、該ストッパ75は前記変速機ケース7aに取り付けられている。
【0084】
前記後進減速アーム72には、減速ケーブル56のインナケーブル56bが連結され、前進減速アーム73にはアウタチューブ56aが連結されている。
【0085】
前記減速ケーブル56はソレノイド57aに接続されている。このソレノイド57aは、旋回操作スイッチ33が操作されると、インナケーブル56bを引き込む。これにより後進減速アーム72が後方に回動するとともに前進減速アーム73が前方に回動し、減速ピン74a,74bが互いに近接する。
【0086】
操縦者が、例えば前記走行操作レバー30を前進側の高速域に回動すると、変速レバー7gは図10に一点鎖線で示す前進高速位置に回動し、除雪機1は高速で前進する。この状態で操縦者が旋回操作スイッチ33を例えば左旋回方向に操作すると、前記ソレノイド57aがインナケーブル56bを引き込み、後進減速アーム72及び前進減速アーム73が互いに近接するように回動する。この回動により前進側の減速ピン74bが変速レバー7gを時計回りに、前記ストッパ75に当たるまで回動させ、これにより車速が2km/h程度に減速する。これと同時に旋回方向内側に位置する左の旋回クラッチ8Lがオフし、左のクローラ走行装置5Lへの動力が遮断され、除雪機1は左方に旋回する。
【0087】
前記変速レバー7gが反時計回りに少し回動すると、前記走行操作ケーブル67と変速レバー7gとの間に介在された保持ばね68が伸びることによって、前記変速レバー7gの回動量を吸収し、変速操作レバー30は操縦者によって操作された位置に保持される。
【0088】
また操縦者が、前記走行操作レバー30が後進側の高速域に回動すると、変速レバー7gは図10に二点鎖線で示す後進高速位置に回動し、除雪機1は高速で後進する。この状態で操縦者が旋回操作スイッチ33が例えば左旋回方向に操作すると、前記ソレノイド57aがインナケーブル56bを引き込み、後進減速アーム72及び前進減速アーム73が互いに近接するように回動する。この回動により後進側の減速ピン74aが変速レバー7gを反時計回りに少し回動させ、これにより減速される。これと同時に旋回方向内側に位置する左の旋回クラッチ8Lがオフし、左のクローラ走行装置5Lへの動力が遮断され、除雪機1は左方に旋回する。
【0089】
前記変速レバー7gが時計回りに少し回動すると、前記走行操作ケーブル665と変速レバー7gとの間に介在された保持ばね66が伸びることによって、前記変速レバー7gの回動量を吸収し、変速操作レバー30は操縦者によって操作された位置に保持される。
【0090】
本実施例によれば、旋回時減速機構70により、前進時及び後進時の両方において、旋回時に減速させるようにしたので、前進時及び後進時の両方における急旋回を回避できる。
【0091】
そして、前記旋回時減速機構70を、揺動ピン71により前後に揺動可能に支持された一対の後進減速アーム72及び前進減速アーム73を1本の減速ケーブル56を介してソレノイド57aで活動させる構成としたので、簡単かつ低コストの構成により前進時と後進時の両方における旋回時減速を実現できる。
【0092】
また走行操作ケーブル67と変速レバー7gとの間に保持ばね68を介在させ、走行操作ケーブル65と変速レバー7gとの間に保持ばね66を介在させたので、旋回時減速機構70が変速レバー7gを減速側に回動させた場合でも、走行操作レバー30を旋回操作前の位置に保持できる。そのため旋回終了とともに走行操作レバー30により設定された走行速度に自動的に戻すことができ、走行操作レバー30の新たな操作を行うことなくスムーズに直進走行に移行できる。
【0093】
なお、前記実施例では、旋回操作がなされた場合、除雪機1の減速と同時に旋回方向内側の旋回クラッチをオフするようにしたが、旋回操作がなされたとき、まず除雪機1を減速させ、続いて左又は右の旋回クラッチを遮断状態とするようにしてもよい。このようにした場合は、より確実に急旋回を回避でき、狙いとする旋回ラインにより確実に沿って旋回できる。
【0094】
また前記実施例では、旋回操作子が押しボタン式スイッチで構成されている場合を説明したが、本発明の旋回操作子はこれに限るものではなく、例えばレバーにより機械的に連動させるタイプでもよい。また前記実施形態では、走行装置がクローラ式のものである場合を説明したが、これはタイヤ式のものでもよい。さらにまた前記実施形態では、旋回時減速機構がソレノイドで構成されている場合を説明したが、これは電動モータで構成してもよい。
【0095】
また前記実施例では、前後進可能の除雪機の場合を説明したが、本発明は、前進機能のみを有し、後進機能を有しない除雪機であっても適用できる。
【0096】
また前記実施例では、歩行型車両として除雪機を例に説明したが、本発明の適用範囲は、除雪機限られるものではない。例えば、耕運機,田植機,芝刈機等の農作業車、運搬車、あるいは左,右の電動モータにより左,右の車輪(走行装置)を回転駆動して走行するようにした電動車椅子等の歩行型車両にも適用でき、要は、旋回操作子を操作することにより左,右何れかの旋回クラッチを遮断して旋回させるようにした歩行型車両であれば何れにも適用可能である。
【符号の説明】
【0097】
1 歩行型除雪機
2 フレーム
4 エンジン(駆動源)
5L,5R クローラ走行装置
6 操作ハンドル
7 油圧式無段変速機
7g 変速レバー
8L,8R 旋回クラッチ
30 走行操作レバー
33 旋回操作スイッチ(旋回操作子)
50,65,67 操作ケーブル
55,70 旋回時減速機構
56 減速ケーブル
57a ソレノイド(アクチュエータ)
60 保持機構
61 ホルダ
61a 長孔
62 連結ピン
63 付勢ばね(付勢部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
該フレームに搭載された駆動源と、
前記フレームに搭載され、前記駆動源からの回転を変速しつつ出力する変速機と、
前記フレームに支持され、前記変速機からの回転により該車両を走行させる左,右の走行装置と、
前記変速機と前記左,右の走行装置との間に配置され、前記回転を伝達又は遮断する左,右の旋回クラッチと、
前記フレームに取り付けられ、操縦者が歩行しつつ把持する操作ハンドルと、
該車両を左方又は右方に旋回させる旋回操作子と
を備えた歩行型車両であって、
該車両が所定速度以上で走行している際に、前記旋回操作子が左方又は右方に旋回操作されたとき、該車両を減速させる旋回時減速機構を備えたことを特徴とする歩行型車両。
【請求項2】
請求項1に記載の歩行型車両において、
前記旋回操作子が左方又は右方に旋回操作されたとき、前記左の旋回クラッチ又は右の旋回クラッチを遮断状態とすると同時に、前記旋回時減速機構を車両減速状態とする旋回時制御回路を備えたことを特徴とする歩行型車両。
【請求項3】
請求項2に記載の歩行型車両において、
前記変速機は、変速軸を回動させることにより変速比を変化させる無段変速機であり、
前記旋回時減速機構は、前記旋回操作子が操作されたとき前記変速軸を減速側に回動させることを特徴とする歩行型車両。
【請求項4】
請求項3に記載の歩行型車両において、
前記旋回時減速機構は、前記変速軸に固定された変速レバーと、該変速レバーに第1ケーブルを介して連結されたアクチュエータとを有し、前記旋回操作子が操作されたとき、前記アクチュエータが前記変速レバーを減速側に移動させることを特徴とする歩行型車両。
【請求項5】
請求項4に記載の歩行型車両において、
前記変速レバーの一端に前記第1ケーブルを介して前記アクチュエータが連結され、他端に第2ケーブルを介して操縦者が操作する走行操作レバーが連結され、
前記変速レバーと第2ケーブルとの接続部には、前記アクチュエータが前記変速レバーを減速側に移動させたとき、前記操縦者による走行操作レバーの操作量を保持する保持機構が介在されていることを特徴とする歩行型車両。
【請求項6】
請求項5に記載の歩行型車両において、
前記保持機構は、長孔を有し、前記操作ケーブルに接続されたホルダと、前記変速レバーに固定され、前記ホルダの長孔に相対移動可能に係合する連結ピンと、前記ホルダの長孔の一端と前記連結ピンとの間に配置され、前記連結ピンを前記長孔の他端に当接するよう付勢する付勢部材とを有し、
前記アクチュエータが前記変速レバーを減速側に移動させたとき、該変速レバーの移動量を前記付勢部材が収縮することにより吸収することを特徴とする歩行型車両。
【請求項7】
請求項6に記載の歩行型車両において、
前記走行操作レバーを操作された位置に保持する走行操作レバー保持力,前記付勢部材の付勢力,前記アクチュエータの駆動力及び前記変速軸を回動させるのに必要な変速軸トルクの大きさは、
変速軸トルク<付勢部材の付勢力<アクチュエータの駆動力<走行操作レバー保持力
の関係にあることを特徴とする歩行型車両。
【請求項8】
請求項1に記載の歩行型車両において、
前記旋回時減速機構は、該車両が前進している際に、前記旋回操作子が旋回操作されたとき、該車両を減速させることを特徴とする歩行型車両。
【請求項9】
請求項3に記載の歩行型車両において、
前記旋回時減速機構は、該車両が前進している際及び後進している際に、前記旋回操作子が旋回操作されたとき、該車両を減速させることを特徴とする歩行型車両。
【請求項10】
請求項9に記載の歩行型車両において、
前記旋回時減速機構は、共通の揺動ピンにより揺動可能に支持され、かつ拡開方向に付勢され、さらに閉方向に揺動されたとき前記変速レバーを後進減速方向及び前進減速方向に移動させる一対の後進減速アーム及び前進減速アームと、
前記後進減速アーム及び前進減速アームに減速ケーブルを介して連結され、旋回操作子が操作されたとき前記後進減速アームと前進減速アームを閉方向に揺動させるアクチュエータと
を備えたことを特徴とする歩行型車両。
【請求項11】
請求項1に記載の歩行型車両において、
前記旋回操作子が左方又は右方に旋回操作されたとき、前記旋回時減速機構を車両減速状態とし、その後前記左の旋回クラッチ又は右の旋回クラッチを遮断状態とする旋回時制御回路を備えたことを特徴とする歩行型車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−236579(P2010−236579A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83154(P2009−83154)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000201766)ヤマハモーターパワープロダクツ株式会社 (39)
【Fターム(参考)】