説明

歩行型農作業機

【課題】耕耘装置等の耕耘深さを設定する共に機体の後部を支えるための接地体を備えた歩行型農作業機において、前記接地体の耕耘土壌に対する埋没抵抗を軽減させて機体の旋回操作を容易にする。
【解決手段】機体の操向方向を検出する操向方向検出手段32L,32Rを設けると共に、該操向方向検出手段32L,32Rによって検出した機体の操向方向に、前記接地体25,26を自動的に追従させる接地体追従手段35を設け、機体旋回時における当該接地体25,26の耕耘土壌に対する埋没抵抗を低減できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体に装着したロータリ耕耘装置等により耕耘作業や除草作業を行うことができる歩行型農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機体に装着したロータリ耕耘装置等により耕耘作業や除草作業を行うことができる歩行型農作業機においては、左右一対の推進車輪の後方に耕耘装置を設け、機体の前部にエンジンを配設すると共に、機体の後方に向けて操縦ハンドルを延設している。そして、機体の後端には、サイドクラッチの「切」操作に連動する昇降駆動機構により尾輪を延出させると共に、車速を自動的に低速側に変更し、更にロータリ耕耘装置の作動を停止することによって、機体の旋回操作を容易に行えるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実用新案第2582906号公報(第2頁、図1−図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述した従来の歩行型農作業機では、サイドクラッチの「切」操作に連動して尾輪の出量が大きくなり、それによって当該尾輪の耕耘土壌に対する埋没抵抗が増大することから、十分な効果が得られていないのが実状である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、耕耘装置の耘深さを設定する接地体を備えた歩行型農作業機において、機体の操向方向を検出する操向方向検出手段を設けると共に、該操向方向検出手段によって検出した機体の操向方向に、前記接地体を自動的に追従させる接地体追従手段を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、機体の操向方向を検出する操向方向検出手段を設けると共に、この操向方向検出手段によって検出した機体の操向方向に、前記接地体を自動的に追従させる接地体追従手段を設けたことによって、前記接地体を常時機体の操向方向に沿って自動的に追従させることができるので、機体旋回時における当該接地体の耕耘土壌に対する埋没抵抗を低減でき、それによって歩行型農作業機の旋回操作がスムーズに行えるようになる。また、上述した従来の歩行型農作業機の如く、サイドクラッチの「切」操作に連動して尾輪を下方に延出させるものにおいても、当該尾輪の耕耘土壌に対する埋没抵抗の増大を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明が適用される歩行型農作業機であるテーラー型作業機11の側面図であって、該テーラー型作業機11は、下部に走行車輪12を軸支すると共に上部に操縦ハンドル13を配置したミッションケース(伝動ケース)14を備え、このミッションケース14に機体フレーム15を固設し、更に該機体フレーム15の前部にエンジン16を搭載し、且つ機体フレーム15の後部に形成したヒッチ17にロータリ耕耘装置18を装着している。
【0007】
更に詳しくは、前記ロータリ耕耘装置18は、複数の耕耘爪19を備えたロータリ20の中程を耕耘ケース21の下部に軸支すると共に、ヒッチ17の後方に耕耘フレーム22を取り付け、更にこの耕耘フレーム22の両側にロータリ20の上方及び側方を覆うロータリカバー23を設けている。
【0008】
そして、前記ミッションケース14内の変速機構を介して変速された動力は、該ミッションケース14の上部から伝動ケース24を介して耕耘ケース21に伝動され、次いでこの耕耘ケース21の下部に軸支したロータリ20が回転駆動されるようになっている。
【0009】
また、耕耘フレーム22の後部には、ロータリ耕耘装置18の耕耘深さを設定する共に機体の後部を支える接地体として、耕耘土壌の状態に応じた尾輪25または、尾ソリ26(図2参照)等を高さ調節可能に取り付けることができるようになっている。
【0010】
そして、前記尾輪25または尾ソリ26は、ハンドル27の回転操作により高さ調節できるようになっており、その高さ調節機構は、図示しないハンドル軸に形成した昇降ネジに尾輪25または尾ソリ26を軸支するネジ筒を螺挿すると共に、このネジ筒にスライド可能に外嵌させた支持筒28等から構成されている。
【0011】
また、上述した従来技術(特許文献1)のように、図示しないハンドル軸にベベルギヤを介して減速機付モータを連動連結して、前記尾輪25または尾ソリ26の昇降駆動機構を構成したものでもよい。
【0012】
そして、本発明は、接地体である尾輪25または尾ソリ26を、機体の操向方向と車速に基づいて機体の操向方向に追従可能に構成することによって、当該接地体の耕耘土壌に対する埋没抵抗を軽減させて機体の旋回操作を容易に行えるようにしようとするものであり、その構成について以下説明する。
【0013】
図1及び図2に示すように、操縦ハンドル13に備える左右のサイドクラッチレバー31L,31Rには、その把持操作によって作動する検出スイッチ32L,32Rが設けてあり、この検出スイッチ32L,32RのON作動により機体の操向(進行)方向を検出すると共に、図3に示す制御系統図の如く、ミッションケース14の走行駆動系の出力軸に設けた回転センサ33によって、当該出力軸の回転速度を車速として検出し、これらの検出信号が制御部34に入力されるようになっている。
【0014】
そして、接地体である尾輪25または尾ソリ26を機体の操向方向に追従させる追従手段として減速機を内装した電動モータ35が設けてあり、この電動モータ35は前記制御部34から出力される制御信号によって作動制御されるようになっている。
【0015】
更に詳しくは、図4に示すように、尾輪25または尾ソリ26の支軸36は、その上部を筒体状のホルダ37に回動可能に支承すると共に、その上端にはギヤ38が固設してあり、このギヤ38に電動モータ35の出力軸35aに固設したピニオン39を歯合させ、且つこれらギヤ38、ピニオン39の上部及び電動モータ35とを一体的なカバー体41で覆っている。尚、ホルダ37の一側上部には、尾輪25または尾ソリ26の昇降駆動機構を構成するアクチュエータ42が取り付けてある。
【0016】
以上説明したように、本発明においては、機体の操向方向を検出する操向方向検出手段として、左右のサイドクラッチレバー31L,31Rの把持操作によってON作動する検出スイッチ32L,32Rを設けると共に、車速を検出する車速検出手段として、ミッションケース14の走行駆動系の出力軸に回転センサ33を設け、更にこれらの検出結果に基づき、機体の操向方向に沿って尾輪25または尾ソリ26を車速に比例して自動的に追従させる接地体追従手段として、減速機を内装した電動モータ35を設けている。
【0017】
したがって、図5にモデル的に図示するように、左右のサイドクラッチレバー31L,31Rを把持しない直進走行状態、即ち左右の検出スイッチ32L,32Rが共にOFF状態から、左側サイドクラッチレバー31Lを把持すると左側検出スイッチ32LがON作動して機体の左旋回が検出され、次いで回転センサ33によって検出した車速に比例して、減速機を内装した電動モータ35がL矢印方向に尾輪25を自動的に追従させる。
【0018】
一方、左右のサイドクラッチレバー31L,31Rを把持しない直進走行状態、即ち左右の検出スイッチ32L,32Rが共にOFF状態から、右側サイドクラッチレバー31Lを把持すると右側検出スイッチ32RがON作動して機体の右旋回が検出され、次いで回転センサ33によって検出した車速に比例して、減速機を内装した電動モータ35がR矢印方向に尾輪25を自動的に追従させることができるようになっている。
【0019】
即ち、本発明によれば、機体の操向方向を検出する操向方向検出手段である左右の検出スイッチ32L,32Rと、この操向方向検出手段2L,32Rによって検出した機体の操向方向に、接地体である尾輪25または尾ソリ26を自動的に追従させる接地体追従手段である減速機を内装した電動モータ35を設けたことによって、前記接地体25,26を常時機体の操向方向に沿って自動的に追従させることができるので、機体旋回時における当該接地体25,26の耕耘土壌に対する埋没抵抗を低減でき、それによって歩行型農作業機11の旋回操作がスムーズに行えるようになる。
【0020】
また、上述した従来の歩行型農作業機の如く、サイドクラッチの「切」操作に連動して尾輪を下方に延出させるものにおいても、当該尾輪の耕耘土壌に対する埋没抵抗の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】尾輪を装着したテーラー型作業機の側面図。
【図2】尾ソリを装着したテーラー型作業機の側面図。
【図3】接地体の制御系統図。
【図4】接地体追従手段を示す一部省略側断面。
【図5】左右旋回時の接地体の追従動作を示した概要図。
【符号の説明】
【0022】
11 歩行型農作業機
18 耕耘装置
25 接地体(尾輪)
26 接地体(尾ソリ)
32L 操向方向検出手段
32R 操向方向検出手段
35 接地体追従手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕耘装置(18)の耘深さを設定する接地体(25,26)を備えた歩行型農作業機(11)において、機体の操向方向を検出する操向方向検出手段(32L,32R)を設けると共に、該操向方向検出手段(32L,32R)によって検出した機体の操向方向に、前記接地体(25,26)を自動的に追従させる接地体追従手段(35)を設けたことを特徴とする歩行型農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−115719(P2006−115719A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−304988(P2004−304988)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】