水田作業機
【課題】 マーカの姿勢切り換えを電動モータの駆動で行う水田作業機において、マーカの損傷を回避するとともに、マーカの出し忘れを防止し作業性を向上する。
【解決手段】 電動モータ42の駆動によって作用姿勢と格納姿勢とに姿勢切り換え自在なマーカ20を備えた水田作業機において、作業装置10の高さが所定高さ以上の高さで人為操作具61の作用姿勢への切り替え指令が入力されてもマーカ操作機構40の作用姿勢側への作動を阻止する牽制手段71と、牽制手段71によりマーカ操作機構40の作用姿勢側への作動が阻止されても作業装置10の高さが所定高さ以下の高さになればマーカ操作機構40の作用姿勢側への作動を開始するマーカ作用制御手段72とを備える。
【解決手段】 電動モータ42の駆動によって作用姿勢と格納姿勢とに姿勢切り換え自在なマーカ20を備えた水田作業機において、作業装置10の高さが所定高さ以上の高さで人為操作具61の作用姿勢への切り替え指令が入力されてもマーカ操作機構40の作用姿勢側への作動を阻止する牽制手段71と、牽制手段71によりマーカ操作機構40の作用姿勢側への作動が阻止されても作業装置10の高さが所定高さ以下の高さになればマーカ操作機構40の作用姿勢側への作動を開始するマーカ作用制御手段72とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーカの姿勢切り換えを電動モータの駆動で行う水田作業機のマーカを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水田作業機のマーカとしては、例えば特許文献1に開示されているように、苗植付装置の上昇作動力を利用してワイヤでマーカを吊り上げることによって、マーカの姿勢変更を行う機械式のものが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−250314号公報(図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では電動モータの機能向上に伴い、その小型化及びコストの低廉化が進んだため、従来のような苗植付装置の上昇作動力を利用してワイヤでマーカを吊り上げる構造に代えて、電動モータの駆動力を用いてマーカの姿勢変更を行う構造を採用したものが提唱されている。
【0005】
電動モータの駆動力を用いてマーカの姿勢変更操作を行うように構成されたマーカ操作機構では、マーカの駆動系を含めた全体構造を小型軽量化及び簡素化をすることができるとともに、マーカやその駆動系の配置上の制約も少ないため、全体として設計上の自由度を高めることができるという利点がある。
【0006】
しかし、その反面、作業装置の昇降動作や高さ位置とは関係なく人為操作具からの作用姿勢側への切り替え指令によってマーカの出し操作を行うように構成することが可能であるため、実際にはマーカを作用姿勢に切り替える必要がない条件下で不用意にマーカの出し操作が行われて、マーカが圃場の端の畦や立木等の障害物に接触してマーカを損傷するおそれがある。
【0007】
また、人為操作具から作用姿勢側への切り替え指令が入力されないと、マーカの出し操作を行うことができないように構成することが可能であるため、マーカを出し忘れるおそれがある。そうすると、後々の稲苗植付け作業に影響し、作業性が悪くなる。
【0008】
本発明は、マーカの姿勢切り換えを電動モータの駆動で行う水田作業機において、不適切な時点でマーカが姿勢変更操作されることによるマーカの損傷を回避するとともに、マーカの出し忘れを防止することによって作業性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、播種又は苗の植付けを行う作業装置を走行機体に対して昇降する昇降駆動機構と、前記走行機体の進行に伴って圃場面に指標を付ける作用姿勢と圃場面から離れた格納姿勢とに姿勢切り換え自在なマーカとを備えるとともに、前記マーカの姿勢切り換えを電動モータの駆動で行うマーカ操作機構と、そのマーカ操作機構に対して前記電動モータの作動を制御する制御指令を出力する制御装置と、前記マーカの姿勢切り換え指令を入力する人為操作具と、前記作業装置の高さ位置を判別する高さ位置判別手段と、前記人為操作具の操作に基づいて前記マーカ操作機構を作用姿勢側及び格納姿勢側に作動させる駆動制御手段とを備えた水田作業機において次のように構成することにある。
前記作業装置の高さが所定高さ以上の高さで前記人為操作具から作用姿勢側への切り替え指令が入力されても、マーカ操作機構の作用姿勢側への作動を阻止する牽制手段を備え、
前記作業装置の高さが所定高さ以上の高さで前記人為操作具から作用姿勢側への切り替え指令が入力され前記牽制手段によりマーカ操作機構の作用姿勢側への作動が阻止されても、前記作業装置の高さが所定高さ以下の高さになればマーカ操作機構を作用姿勢側に作動させるマーカ作用制御手段を備える。
【0010】
(作用)
本発明の第1特徴によると、作業装置の高さが所定高さ以上の高さで人為操作具の作用姿勢側への切り替え指令が入力されても、マーカ操作機構の作用姿勢側への作動を阻止する牽制手段を備えることにより、作業装置の高さが所定高さ以上の高さではマーカが作用姿勢側へ作動しない。そのため、例えば、作業装置が所定高さ以上の高さに存在する状態で、不用意に人為操作具の操作してしまった場合においても、確実にマーカの無用な作用姿勢側への姿勢変更を抑止することができる。
【0011】
例えば、上記牽制手段によりマーカ操作機構の作用姿勢側への作動が阻止されると、再び人為操作具の操作により作用姿勢側への切り換え指令が入力されない限りマーカ操作機構は作用姿勢側へ作動しない。そのため、操縦者が人為操作具の操作を怠れば、マーカを出し忘れた状態で作業を続行してしまうおそれがある。また、操縦者が人為操作具の操作を覚えていたとしても、再び人為操作具の操作が必要となり二度手間となる。
【0012】
本発明の第1特徴によると、作業装置の高さが所定高さ以上の高さで前記人為操作具から作用姿勢側への切り替え指令が入力され牽制手段によりマーカ操作機構の作用姿勢側への作動が阻止されても、作業装置の高さが所定高さ以下の高さになればマーカ操作機構を作用姿勢側に作動させるマーカ作用制御手段を備えることにより、再び人為操作具の操作を行わなくても自動的にマーカを作用姿勢側へ作動させることができる。そのため、上述した例に示したマーカの出し忘れを防止することができ二度手間作業を無くすことができる。
【0013】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、マーカの無用な作用姿勢側への姿勢変更を抑止することができるため、無用な姿勢変更によるマーカの損傷を回避することができる。
【0014】
また、マーカの出し忘れを防止することができ二度手間作業を無くすことができるため、稲苗の植付け作業の作業性を向上させることができる。
【0015】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の水田作業機において次のように構成することにある。
前記作業装置の上昇作動指令があると直ちに、前記マーカ操作機構を格納姿勢側に作動させるマーカ格納制御手段を備える。
【0016】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
【0017】
通常の田植機は、圃場の端に近づくと作業装置の上昇に伴って自動的にマーカ操作機構を格納姿勢側に作動させるように構成されている。そのため、作業装置が先に上昇し、作業装置の上昇に遅れてマーカ操作機構の格納姿勢側への作動が開始すると、マーカを格納させる電動モータの駆動力に加えて、作業装置の上昇力がマーカに作用する。そうすると、マーカが勢いよく田面から引き上げられることとなり、マーカを構成するマーカ輪体に付着した泥土が勢いを増して運転座席側に飛散することがある。
【0018】
本発明の第2特徴によれば、作業装置の上昇作動指令があると直ちに、マーカ操作機構を格納姿勢側に作動させるマーカ格納制御手段を備えることにより、マーカ操作機構を早く格納姿勢側へ作動させることができ、作業装置の上昇開始よりも先に、マーカを格納姿勢側へ作動させることができる。そのため、作業装置の上昇力がマーカに作用し難くなる。
【0019】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、作業装置の上昇力がマーカに作用し難くなるため、マーカを田面から引き上げられる際の勢いを緩和することができ、マーカを構成するマーカ輪体に付着した泥土等が運転座席側に飛散し難くなる。
【0020】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第1特徴又は第2特徴の水田作業機において次のように構成することにある。
前記人為操作具によって格納姿勢側への切り換え指令の入力がされると直ちに、前記マーカ操作機構を格納姿勢側に作動させるマーカ格納制御手段を備える。
【0021】
(作用)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1特徴又は第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
【0022】
例えば、通常の稲苗の植付け作業においては、圃場の端に近づくと作業装置を上昇させるとともに、マーカを格納して水田作業機を旋回させる。その際、操縦者は水田作業機の旋回操作と作業装置の上昇操作とに気を取られて、マーカが完全に格納されたか否かにまで注意が及ばないことが多い。そのため、人為操作具の操作からマーカ操作機構の格納姿勢側への作動開始までの間に時間差があると、マーカが格納したと操縦者が思ってもマーカが完全に格納していない場合がある。その場合に、マーカが格納しているものと考えて水田作業機を旋回すると、畦や立木等の障害物にマーカが接触してマーカを損傷するおそれがある。
【0023】
畦際の植付け作業においては、作業装置を下降させたままで、マーカを格納して稲苗の植付け作業を行う場合がある(例えば、畦際を畦に沿って走行する回り植え作業)。作業装置を下降させた状態で畦際に水田作業機を近づけて、マーカを格納しようとした場合に、人為操作具の操作からマーカ操作機構の格納姿勢側への作動開始までの間に時間差があると、畦や立木等の障害物にマーカが接触してマーカを損傷するおそれがある。
【0024】
本発明の第3特徴によれば、人為操作具によって格納姿勢側への切り換え指令の入力がされると直ちに、マーカ操作機構を格納姿勢側に作動させるマーカ格納制御手段を備えることにより、人為操作具の操作からマーカ操作機構の格納姿勢側への作動開始まで間の時間差を少なくすることができ、マーカを早く格納することができる。
【0025】
(発明の効果)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1特徴又は第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第3特徴によると、マーカを早く格納することができるため、例えば、上述した作用に記載したようなマーカの損傷を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1に示すように、水田作業機の一例である乗用型田植機は、操向操作自在な駆動型の前車輪1と駆動型の後車輪2を備えた走行機体4の前部にエンジン6、走行機体4の前方両側部に予備苗のせ台18、走行機体4の中央部に運転座席3を備えるとともに、走行機体4の後端部にリフトシリンダ8で昇降駆動するリンク機構5を介して作業装置の一例である苗植付装置10を備える。なお、この田植機には運転座席3の後部に圃場面に肥料を供給する施肥装置19を備える。
【0027】
この田植機は、稲苗の植付けを行なうものであり、昇降駆動機構の一例であるリフトシリンダ8を伸縮することにより、リンク機構5を介して苗植付け装置10を走行機体4に対して昇降する。苗植付け装置10を下降させて田植機を走行すると苗植付け装置10に備えた複数の苗植付け機構12によって苗のせ台14から一株分の稲苗を取り出し、整地フロート11で整地した圃場面に稲苗の植付けを行う。
【0028】
図2に示すように、苗植付け装置10の両横側にマーカ20を備える。マーカ20は、苗植付け装置10の機枠フレーム15から延出するマーカ支持アーム21に連結ピン22を介して回動自在に取り付けた取付部24、マーカアーム23、マーカアーム23の先端部に回動自在に設けたマーカ輪体25などを備える。マーカアーム23が連結ピン22の機体前後方向の軸芯回りで上下揺動することにより、マーカ輪体25の下端部が圃場泥土に接地した作用姿勢と、図2の二点鎖線で示すマーカ輪体25が圃場面から高く浮上した格納姿勢とに切り替わる。作用姿勢にマーカ20が操作されると、田植機の走行によってマーカ輪体25の外周部に設けたマーカ爪26が圃場泥土を持ち上げて、走行目標腺を圃場面上に形成する。
【0029】
なお、左右のマーカ20のマーカアーム23のマーカ輪体25側には、図2及び図13に示すように着脱可能な泥よけカバー28が固定されている。なお、図13は泥よけカバー28付近の側面図を示す。泥よけカバー28は軽量な樹脂製材料からなり、マーカ20を分解しなくても外部から取り付けることができるように2つの分割式カバーからなる。その分割式カバーの上下をボルト29で固定することによって、泥よけカバー28はマーカアーム23に固定されている。この泥よけカバー28は、マーカ20を格納姿勢に上昇させる際に、マーカ輪体25についた泥土がマーカ20の上昇とともに田植機の運転座席3に飛散することを防止するためのもので(図12参照)、泥よけカバー28を備えることにより、マーカ輪体25によって持ち上げられた泥土が泥よけカバー28に当たって、田植機の運転座席3に飛散しにくいようになっている。なお、泥よけカバー28の形状や寸法、材質、取付位置などは特に問わず、例えば、円形や多角形のカバー形状を採用してもよい。
【0030】
また、この田植機の機枠フレーム15には、先端にクッションゴム30を取り付けた抵抗バネ31がブラケット32を介して固定されている。図12はマーカ20が格納姿勢に作動した場合の抵抗バネ31の状態を示している。図12に示すように、この抵抗バネ31は、マーカ20が格納姿勢に上昇する際の勢いを吸収し、マーカ輪体25に付着した泥土が飛散する勢いを抵抗バネ31の反力によって和らげることによって、田植機の運転座席3に飛散しにくくするためのものである。なお、この田植機では、抵抗バネ31を用いた例を示したが、他の緩衝部材、例えば、ショックアブゾーバ(図示せず)などでもよい。
【0031】
図2に示すように、機枠フレーム15にはマーカ操作機構40を備える。なお、図2においては左マーカ20のマーカ操作機構40について示すが、右マーカ20についても同様のマーカ操作機構40を備える。マーカ操作機構40は、電動モータ42、操作ケース43、ギヤボックス44、前記操作ケース43の出力軸47に固定したアーム48などを備えるとともに、操作ケース43の出力軸47に固定したアーム48とマーカアーム23の取付部24とに亘って操作ロッド41を備え、機枠フレーム15に固着したブラケット16とマーカアーム23の取付部24とに亘ってスプリング49を備える。
【0032】
図3に示すように、電動モータ42は機枠フレーム15に固定した操作ケース43にギヤボックス44を介して固定されている。電動モータ42の出力はギヤボックス44において減速された後、操作ケース43に内装した出力ギヤ45と駆動ギヤ46によって更に減速されて出力軸47に出力される。電動モータ42を格納姿勢側に上昇駆動すると、出力軸47に固定したアーム48を機体正面視で反時計回りに回転することで、アーム48に連係した操作ロッド41がマーカ20を引き上げるとともに、スプリング49の弾性復元力を利用して、マーカ20を格納姿勢に切り替える。一方、電動モータ42を作用姿勢側に下降駆動すると、出力軸47に固定したアーム48を機体正面視で時計回りに回転することで、アーム48に連係した操作ロッド41がマーカ20を押し下げるとともに、マーカ20の自重を利用して、マーカ20を作用姿勢に切り替える。
【0033】
出力軸47には、スイッチ操作部57を備え、このスイッチ操作部57が出力軸47の回転とともに回動することにより、操作ケース43に備えた左マーカ上昇センサ67及び左マーカ下降センサ66と接触し、マーカ20の格納姿勢と作用姿勢を検知するように構成されている。
【0034】
図1に示すように、運転座席3の側部に昇降操作レバー36を備え、ステアリングハンドル17の右横側に人為操作具の一例である操作レバー61を、左横側に変速レバー77を備える。図4に示すように、昇降操作レバー36は、自動、上昇、中立、下降、植付クラッチ(入,切)のポジションを備え、「下降」位置に操作すると苗植付け装置10を下降させ、「上昇」位置に操作すると苗植付け装置10を上昇させ、「中立」位置に操作すると苗植付け装置10を現状の高さに維持する。また、昇降操作レバー36を植付クラッチ「入」の位置に操作すると植付クラッチ52が入り、植付クラッチ「切」の位置に操作すると植付クラッチ52が切れ、更に、昇降操作レバー36を「自動」の位置に操作すると、前記操作レバー61の操作に従って苗植付装置10の昇降を許容すると同時に苗植付装置10の上昇時には植付クラッチ52を自動的に切り操作する。
【0035】
図5及び図6に示すように、操作レバー61は「中立(N)」位置を基準に、上方に「上昇(U)」、下方に「下降・クラッチ(D)」、前方に「左マーカ(L)」、後方に「右マーカ(R)」のポジションを操作自在に備え、各ポジションへの操作を止めれば「中立(N)」位置に復帰するように構成されている。なお、変速レバー77は、図1に示す静油圧式無断変速装置76と連係されており、田植機の前進、後進及びこれらの変速を行うものである。
【0036】
図6に示すように、この田植機の制御装置54は、前記操作レバー61の操作ポジションの状態を検知するスイッチ62、63、64、65と、左右のマーカ20の格納姿勢と作用姿勢を検知するマーカ上昇センサ67及びマーカ下降センサ66、苗植付装置10が上限位置にあることを検出する上限センサ69、苗植付装置10の圃場面に対する高さ位置を検出する整地フロート11に設けたフロートセンサ13及びキー操作により制御装置54への電源を断接するステアリングハンドル17の右横側に備えたメインスイッチ70と、前記昇降操作レバー36の操作位置を検出するレバー位置検出スイッチ37などの検出機器類を備える。なお、この田植機の制御装置54には、操作レバー61の操作によってマーカ操作機構40を作動させる駆動制御手段68と、フロートセンサ13からの入力信号に基づいて苗植付装置10の高さ位置を判別する高さ位置判別手段75と、後述する牽制手段71、マーカ作用制御手段72及びマーカ格納制御手段73を備える。
【0037】
前記検出機器類からの入力信号をもとに、後述する作動フローに基づいて制御を行い、前記制御装置54から各電動機器類に制御指令を出力することで各種作動を行う。すなわち、リフトシリンダ8の伸縮は、電磁弁51に備えた上昇又は下降用のソレノイド(図示せず)に電流を供給することにより行い、左右の電動モータ42やクラッチモータ53に電流を供給することで、マーカ20の出し入れや植付クラッチ52の断接を行う。なお、マーカ20が作用姿勢にある場合には、図1に示す機体前方中央部に設けたセンタマーカ9上部のマーカランプ74を点灯させることにより、操縦者にマーカ20が作用姿勢にあるか否かを伝える。
【0038】
図7は本発明に係る田植機の制御手段のメインルーチンを示す。メインスイッチ70が入り操作にある場合には(#1.YES)、後述する昇降シリンダ制御(#2)、作業クラッチ制御(#3)、マーカ作用制御(#4)及びマーカ格納制御(#5)を行い、メインスイッチ70が切り操作されれば(#6・YES)これらの制御を終了する。以下図8〜図11に基づいてこれらの制御について説明する。
【0039】
図8に苗植付装置10の昇降シリンダ制御の作動フローを示す。昇降操作レバー36が「上昇」に操作されるか又は、昇降操作レバー36が「自動」に操作された状態で操作レバー61が「上昇(U)」方向に操作されて上昇作動指令が入力されると(#11)、クラッチモータ53により植付クラッチ52を停止させて、電磁弁51の上昇ソレノイドに電流を供給し、リフトシリンダ8を短縮させる(#12)。リフトシリンダ8の短縮により苗植付装置10が上限位置に達したか否かを上限センサ69により検出し(#13)、上限位置に達した場合には(#13・YES)、電磁弁51への電流の供給を止め、リフトシリンダ8を停止させる(#18)。
【0040】
一方、昇降操作レバー36が「下降」に操作されるか又は、昇降操作レバー36が「自動」に操作された状態で操作レバー61が「下降・クラッチ(D)」方向に操作されて下降作動指令が入力されると(#15)、電磁弁51の下降ソレノイドに電流を供給し、リフトシリンダ8を伸長させる(#16)。リフトシリンダ8の伸長により苗植付装置10が下限位置に達したか否かをフロートセンサ13により検出し(#17)、下限位置に達した場合には(#17・YES)、電磁弁51への電流の供給を止め、リフトシリンダ8を停止させる(#18)。
【0041】
図9に苗植付装置10の作業クラッチ制御の作動フローを示す。昇降操作レバー36が「自動」に操作された状態で(#21・自動)、操作レバー61を「下降・クラッチ(D)」方向に操作してクラッチ作動指令が入力されると(#22)、フロートセンサ13により苗植付装置10が下限位置にあるか否か判別する(#23)。苗植付装置10が下限位置にある場合には(#23・YES)、クラッチモータ53に電流を供給し、植付クラッチ52を作動させる(#24)。一方、苗植付装置10が下限位置にない場合には、作業クラッチ制御を終了する(#23・NO)。植付クラッチ52が作動している状態で、再び操作レバー61を「下降・クラッチ(D)」方向に操作してクラッチ停止指令が入力されると(#25)、クラッチモータ53への電流の供給を止め、植付クラッチ52を停止させる(#26)。なお、昇降操作レバー36が「自動」以外のポジションに操作されている場合には、昇降操作レバー36のマニュアル操作に従って植付クラッチ52の入り切りを行う(#21・手動)。なお、この実施例では、苗植付装置10が下限位置にある場合にのみ植付クラッチ52を作動させることができる例を示したが、図9のフローの一部(#23)を省略して、苗植付け装置10が下限位置になくても、操作レバー61を「下降・クラッチ(D)」方向に操作して下降作動指令を入力した後に、再度、操作レバー61を「下降・クラッチ(D)」方向に操作してクラッチ作動指令が入力されると、植付クラッチ52が作動するように構成することも可能である。
【0042】
図10に苗植付装置10の昇降高さに基づいたマーカ作用制御の作動フローを示す。なお、図10においては左マーカ20の作動フローについて示すが、右マーカ20についても同様のマーカ作用制御を行う。操縦者が操作レバー61を「左マーカ」方向に操作すると(#31)、まず、右電動モータ42を一旦上昇駆動させるとともに(#32)、右マーカ20が格納姿勢にあるか否かを右マーカ上昇センサ67により判別する(#33)。格納姿勢にない場合には右電動モータ42を駆動し続け右マーカ20を格納姿勢に上昇させて(#33・NO)、右電動モータ42を停止させる(#34)。このように右マーカ20が格納姿勢にある場合にのみ左マーカ20を作動させるのは、左右両方のマーカ20が同時に作動することを防止するためである。なお、この実施例では、左右両方のマーカ20が同時に作動しないように構成した例を示したが、図10のフローの一部(#32〜#34)を省略し、左右両方のマーカ20が同時に作動するように構成することも可能である。
【0043】
右マーカ20が格納姿勢にある場合又は格納姿勢に上昇した場合には(#33・YES,#34)、整地フロート11に設けたフロートセンサ13からの入力信号に基づいて、高さ位置判別手段75によって苗植付装置10の高さ位置を判別し(#36)、苗植付装置10が予め設定した所定高さ以下の高さ位置に存在する場合には(#37・YES)、左電動モータ42を下降駆動する(#38)。次に、左マーカ20が作用姿勢に下降したか否かを左マーカ下降センサ66の検出結果に基づいて判別する(#39)。左マーカ20が作用姿勢に下降するまで左電動モータ42を駆動し続け(#39・NO)、左マーカ20が作用姿勢に下降した場合には(#39・YES)、左電動モータ42を停止し(#40)、マーカランプ74を点灯させる(#41)。
【0044】
一方、苗植付装置10が予め設定した所定高さ以上の高さ位置に存在する場合には(#37・NO)、牽制手段71によって左電動モータ42を駆動せず、再度、苗植付装置10の高さ位置をフロートセンサ13により判別する(#42,#43・NO,#36)。すなわち、苗植付装置10が所定高さ以上の高さで操作レバー61によってマーカ20の作用姿勢側への操作が行われても、牽制手段71によってマーカ操作機構40の作用姿勢側への作動を阻止する。
【0045】
このループを繰り返している間(左マーカタイマ・#35,#42,#43)に苗植付装置10が下降され予め設定した所定高さ以下の高さに苗植付装置10が下降した場合には(#37・YES)、左電動モータ42を下降駆動し左マーカ20を作用姿勢に下降させる(#38〜#41)。すなわち、牽制手段71によりマーカ20の作用姿勢側への作動が阻止されても、苗植付装置10が所定高さ以下の高さに下降した場合には、マーカ作用制御手段72によってマーカ20を作用姿勢に下降させる。
【0046】
なお、この作動フローには左マーカタイマ(#35,#42,#43)を備える。これは、操作レバー61の操作後、左マーカタイマ(#35)で設定した一定時間内(例えば、5秒とか10秒)は上述したループにより苗植付装置10の高さ位置の判別を繰り返し(#37・NO,#43・NO)、前記一定時間内に苗植付装置10が所定高さ以下に下降した場合には(#37・YES)、左マーカ20を作用姿勢に下降させる(#38〜#41)。左マーカタイマで設定した一定時間を超えると上述したループを止め、その後、苗植付装置10が設定高さ以下に下降したとしても左マーカ20を作動させないように構成している(#43・YES)。これは、操作レバー61の操作後、一定時間経過した後は、新たな操作レバー61の操作が必要であることを操縦者が認識していることが多く、一定時間経過後に苗植付装置10が所定高さ以下に下降しマーカ20が作動すると却って作業の妨げとなるためこれを防止するためである。
【0047】
図11に苗植付装置10の昇降高さに基づいたマーカ格納制御の作動フローを示す。なお、図11においては左マーカ20の作動フローについて示すが、右マーカ20についても同様のマーカ格納制御を行う。操縦者が操作レバー61を「左マーカ」方向に操作することによって、格納姿勢側への切り替え指令が入力されると(#51)、直ちに左電動モータ42を上昇駆動させる(#52)。また、昇降操作レバー36が「上昇」に操作されるか、又は、昇降操作レバー36が「自動」に操作された状態で操作レバー61が「上昇(U)」方向に操作されて、苗昇降装置10の上昇作動指令が入力されると(#51)、直ちに、左電動モータ42を上昇駆動させる(#52)。すなわち、操作レバー61によって格納姿勢側への切り替え指令が入力されるか、又は、苗植付装置10の上昇作動指令が入力されると、マーカ格納制御手段73によって、直ちにマーカ操作機構40を格納姿勢側に作動させる。
【0048】
次に、左マーカ上昇センサ67によって左マーカ20が格納姿勢に上昇したか否かを判別し(#53)、格納姿勢に上昇した場合には(#53・YES)、左電動モータ42の上昇駆動を停止するとともに(#54)、マーカランプ74を消灯させる(#55)。
【0049】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]に示した田植機においては、マーカ輪体25に付着した泥土の飛散防止のために、抵抗バネ31を設けた例を示したが、以下に示す図14及び図15のような抵抗板33を設けてもよい。
【0050】
図14(イ)及び(ロ)は、抵抗板33をマーカ20の格納姿勢側に設けた場合の詳細図である。なお、図14(ロ)は、抵抗板33付近の平面図を示す。帯板バネ状の抵抗板33がブラケット32に固着され、機枠フレーム15に固定されている。マーカ20のマーカアーム23が抵抗板33に当接しながら格納姿勢に上昇することによって、その摩擦力によってマーカ20が格納姿勢に上昇する際の勢いを緩和し、マーカ輪体25に付着した泥土が飛散する勢いを和らげ、田植機の運転座席3に飛散しにくいようになっている。
【0051】
図15(イ)及び(ロ)は、抵抗板33をマーカ20の作用姿勢側に設けた場合の詳細図である。なお、図15(ロ)は、抵抗板33付近の側面図を示す。帯板バネ状の抵抗板33がブラケット32に固着され、機枠フレーム15に固定されている。このように、抵抗板33をマーカ20のマーカアーム23に当接するように設けて、その当接する摩擦力によってマーカ輪体25を田面から引き上げる直後の勢いを緩和し、マーカ輪体25に付着した泥土が飛散する勢いを和らげ、田植機の運転座席3に飛散しにくいようになっている。なお、図14及び図15においては、帯板バネ状の抵抗板33を示したが、抵抗板33に限らず、例えば、棒状の抵抗棒(図示せず)などでもよい。
【0052】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]において示した田植機のマーカ20は、平面視で図16(イ)のような配置になるが、図16(ロ)のように配置してもよい。図16(イ)のように、機体左右方向の軸芯P1に対してマーカ20を配置して、格納姿勢に引き上げると、マーカ輪体25に付着した泥土が運転座席3に向って飛散する。一方、図16(ロ)のように、やや機体前方に傾けた軸芯P2に対してマーカ20を配置することにより、格納姿勢にマーカ20を引き上げる際に、マーカ輪体25に付着した泥土が運転座席3の後方に向って飛散する。そのため、運転座席3への泥土の飛散を少なくすることが可能となる。
【0053】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]における昇降操作レバー36は図4に示すようなポジション配置をしたレバーであるが、操作レバー61をステアリングハンドル17に備えていない田植機においては図17の実線で示すようにポジション配置をした昇降操作レバー36を設けてもよい。
【0054】
図17の点線で示めすレバー部38の形状は従来の形状である。すなわち、前後方向のレバー操作から前側左右方向へのレバー操作の切り換えが無理なく行えるように、前後方向の長穴から左右方向の長穴に亘って大きめの曲面39が設けられており、また、左右方向のマーカ操作用の長穴は短めに設けられている。
【0055】
従来の図17の点線で示すレバー部38では、上述した曲面39によりレバーが入り易いため、誤って昇降操作レバー36に触れてしまったような場合には、マーカ20が操縦者の意図に反して作動してしまうという問題点があった。そこで、図17の実線で示すように、上下方向の長穴から左右方向の長穴に亘って設けた曲面39を小さくするとともに、左右方向の長穴を長めに設けることにより、上述した誤作動を防止することができる。
【0056】
[発明の実施の第4別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]においてはマーカ20を苗植付装置10の機枠フレーム15の両横側に設けた例を示したが、図18に示すように走行車体4の前方で予備苗のせ台18の両外側に設けてもよい。マーカ20はサポート55を介して走行機体4から側方に延出したブラケット56に固定されている。このサポート55には、筒状のゴム58が内装されており、当該ゴム58に設けた上下方向の貫通穴にマーカ棒59が上下方向に移動可能に取り付けられている。このようにマーカ棒59を取り付けることによって、マーカ棒59取り付け用のブラケット(図示せず)を別途設ける場合に比べ、サポート55をマーカ棒59取り付け用のブラケットとして兼用することにより、部品点数を削減することができ、コスト削減を図ることができる。
【0057】
[発明の実施の第5別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、水田作業機の一例として乗用型田植機を示したが、マーカの姿勢切り換えを電動モータの駆動で行う水田作業機であれば、乗用型田植機に限らず他の水田作業機にも適用できる。また、作業装置の一例として苗植付装置10を示したが、他の作業装置の場合にも適用できる。さらには、人為操作具の一例として操作レバー61を示したが、マーカ20の姿勢切り替え指令を入力する人為操作具であれば同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】乗用型田植機の全体側面図
【図2】マーカ及びマーカ操作機構を示す正面図
【図3】マーカ操作機構の詳細を示す正面図
【図4】昇降操作レバーの操作面詳細図
【図5】操作レバーのポジション位置を示す詳細図
【図6】制御装置のブロック図
【図7】制御装置のメインルーチンを示すフローチャート
【図8】昇降シリンダ制御を示すフローチャート
【図9】作業クラッチ制御を示すフローチャート
【図10】マーカ作用制御を示すフローチャート
【図11】マーカ格納制御を示すフローチャート
【図12】抵抗バネの伸縮状態を示す正面図
【図13】泥よけカバー付近の平面図
【図14】発明の実施の第1別形態における抵抗板の取付詳細図
【図15】発明の実施の第1別形態における抵抗板の取付詳細図
【図16】発明の実施の第2別形態におけるマーカの配置を示す平面図
【図17】発明の実施の第3別形態における昇降操作レバーの操作面詳細図
【図18】発明の実施の第4別形態におけるマーカ棒の取付詳細図
【符号の説明】
【0059】
4 走行機体
8 リフトシリンダ
10 苗植付装置
20 マーカ
40 マーカ操作機構
42 電動モータ
54 制御装置
61 操作レバー
68 駆動制御手段
71 牽制手段
72 マーカ作用制御手段
73 マーカ格納制御手段
75 高さ位置判別手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーカの姿勢切り換えを電動モータの駆動で行う水田作業機のマーカを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水田作業機のマーカとしては、例えば特許文献1に開示されているように、苗植付装置の上昇作動力を利用してワイヤでマーカを吊り上げることによって、マーカの姿勢変更を行う機械式のものが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−250314号公報(図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では電動モータの機能向上に伴い、その小型化及びコストの低廉化が進んだため、従来のような苗植付装置の上昇作動力を利用してワイヤでマーカを吊り上げる構造に代えて、電動モータの駆動力を用いてマーカの姿勢変更を行う構造を採用したものが提唱されている。
【0005】
電動モータの駆動力を用いてマーカの姿勢変更操作を行うように構成されたマーカ操作機構では、マーカの駆動系を含めた全体構造を小型軽量化及び簡素化をすることができるとともに、マーカやその駆動系の配置上の制約も少ないため、全体として設計上の自由度を高めることができるという利点がある。
【0006】
しかし、その反面、作業装置の昇降動作や高さ位置とは関係なく人為操作具からの作用姿勢側への切り替え指令によってマーカの出し操作を行うように構成することが可能であるため、実際にはマーカを作用姿勢に切り替える必要がない条件下で不用意にマーカの出し操作が行われて、マーカが圃場の端の畦や立木等の障害物に接触してマーカを損傷するおそれがある。
【0007】
また、人為操作具から作用姿勢側への切り替え指令が入力されないと、マーカの出し操作を行うことができないように構成することが可能であるため、マーカを出し忘れるおそれがある。そうすると、後々の稲苗植付け作業に影響し、作業性が悪くなる。
【0008】
本発明は、マーカの姿勢切り換えを電動モータの駆動で行う水田作業機において、不適切な時点でマーカが姿勢変更操作されることによるマーカの損傷を回避するとともに、マーカの出し忘れを防止することによって作業性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、播種又は苗の植付けを行う作業装置を走行機体に対して昇降する昇降駆動機構と、前記走行機体の進行に伴って圃場面に指標を付ける作用姿勢と圃場面から離れた格納姿勢とに姿勢切り換え自在なマーカとを備えるとともに、前記マーカの姿勢切り換えを電動モータの駆動で行うマーカ操作機構と、そのマーカ操作機構に対して前記電動モータの作動を制御する制御指令を出力する制御装置と、前記マーカの姿勢切り換え指令を入力する人為操作具と、前記作業装置の高さ位置を判別する高さ位置判別手段と、前記人為操作具の操作に基づいて前記マーカ操作機構を作用姿勢側及び格納姿勢側に作動させる駆動制御手段とを備えた水田作業機において次のように構成することにある。
前記作業装置の高さが所定高さ以上の高さで前記人為操作具から作用姿勢側への切り替え指令が入力されても、マーカ操作機構の作用姿勢側への作動を阻止する牽制手段を備え、
前記作業装置の高さが所定高さ以上の高さで前記人為操作具から作用姿勢側への切り替え指令が入力され前記牽制手段によりマーカ操作機構の作用姿勢側への作動が阻止されても、前記作業装置の高さが所定高さ以下の高さになればマーカ操作機構を作用姿勢側に作動させるマーカ作用制御手段を備える。
【0010】
(作用)
本発明の第1特徴によると、作業装置の高さが所定高さ以上の高さで人為操作具の作用姿勢側への切り替え指令が入力されても、マーカ操作機構の作用姿勢側への作動を阻止する牽制手段を備えることにより、作業装置の高さが所定高さ以上の高さではマーカが作用姿勢側へ作動しない。そのため、例えば、作業装置が所定高さ以上の高さに存在する状態で、不用意に人為操作具の操作してしまった場合においても、確実にマーカの無用な作用姿勢側への姿勢変更を抑止することができる。
【0011】
例えば、上記牽制手段によりマーカ操作機構の作用姿勢側への作動が阻止されると、再び人為操作具の操作により作用姿勢側への切り換え指令が入力されない限りマーカ操作機構は作用姿勢側へ作動しない。そのため、操縦者が人為操作具の操作を怠れば、マーカを出し忘れた状態で作業を続行してしまうおそれがある。また、操縦者が人為操作具の操作を覚えていたとしても、再び人為操作具の操作が必要となり二度手間となる。
【0012】
本発明の第1特徴によると、作業装置の高さが所定高さ以上の高さで前記人為操作具から作用姿勢側への切り替え指令が入力され牽制手段によりマーカ操作機構の作用姿勢側への作動が阻止されても、作業装置の高さが所定高さ以下の高さになればマーカ操作機構を作用姿勢側に作動させるマーカ作用制御手段を備えることにより、再び人為操作具の操作を行わなくても自動的にマーカを作用姿勢側へ作動させることができる。そのため、上述した例に示したマーカの出し忘れを防止することができ二度手間作業を無くすことができる。
【0013】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、マーカの無用な作用姿勢側への姿勢変更を抑止することができるため、無用な姿勢変更によるマーカの損傷を回避することができる。
【0014】
また、マーカの出し忘れを防止することができ二度手間作業を無くすことができるため、稲苗の植付け作業の作業性を向上させることができる。
【0015】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の水田作業機において次のように構成することにある。
前記作業装置の上昇作動指令があると直ちに、前記マーカ操作機構を格納姿勢側に作動させるマーカ格納制御手段を備える。
【0016】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
【0017】
通常の田植機は、圃場の端に近づくと作業装置の上昇に伴って自動的にマーカ操作機構を格納姿勢側に作動させるように構成されている。そのため、作業装置が先に上昇し、作業装置の上昇に遅れてマーカ操作機構の格納姿勢側への作動が開始すると、マーカを格納させる電動モータの駆動力に加えて、作業装置の上昇力がマーカに作用する。そうすると、マーカが勢いよく田面から引き上げられることとなり、マーカを構成するマーカ輪体に付着した泥土が勢いを増して運転座席側に飛散することがある。
【0018】
本発明の第2特徴によれば、作業装置の上昇作動指令があると直ちに、マーカ操作機構を格納姿勢側に作動させるマーカ格納制御手段を備えることにより、マーカ操作機構を早く格納姿勢側へ作動させることができ、作業装置の上昇開始よりも先に、マーカを格納姿勢側へ作動させることができる。そのため、作業装置の上昇力がマーカに作用し難くなる。
【0019】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、作業装置の上昇力がマーカに作用し難くなるため、マーカを田面から引き上げられる際の勢いを緩和することができ、マーカを構成するマーカ輪体に付着した泥土等が運転座席側に飛散し難くなる。
【0020】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第1特徴又は第2特徴の水田作業機において次のように構成することにある。
前記人為操作具によって格納姿勢側への切り換え指令の入力がされると直ちに、前記マーカ操作機構を格納姿勢側に作動させるマーカ格納制御手段を備える。
【0021】
(作用)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1特徴又は第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
【0022】
例えば、通常の稲苗の植付け作業においては、圃場の端に近づくと作業装置を上昇させるとともに、マーカを格納して水田作業機を旋回させる。その際、操縦者は水田作業機の旋回操作と作業装置の上昇操作とに気を取られて、マーカが完全に格納されたか否かにまで注意が及ばないことが多い。そのため、人為操作具の操作からマーカ操作機構の格納姿勢側への作動開始までの間に時間差があると、マーカが格納したと操縦者が思ってもマーカが完全に格納していない場合がある。その場合に、マーカが格納しているものと考えて水田作業機を旋回すると、畦や立木等の障害物にマーカが接触してマーカを損傷するおそれがある。
【0023】
畦際の植付け作業においては、作業装置を下降させたままで、マーカを格納して稲苗の植付け作業を行う場合がある(例えば、畦際を畦に沿って走行する回り植え作業)。作業装置を下降させた状態で畦際に水田作業機を近づけて、マーカを格納しようとした場合に、人為操作具の操作からマーカ操作機構の格納姿勢側への作動開始までの間に時間差があると、畦や立木等の障害物にマーカが接触してマーカを損傷するおそれがある。
【0024】
本発明の第3特徴によれば、人為操作具によって格納姿勢側への切り換え指令の入力がされると直ちに、マーカ操作機構を格納姿勢側に作動させるマーカ格納制御手段を備えることにより、人為操作具の操作からマーカ操作機構の格納姿勢側への作動開始まで間の時間差を少なくすることができ、マーカを早く格納することができる。
【0025】
(発明の効果)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1特徴又は第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第3特徴によると、マーカを早く格納することができるため、例えば、上述した作用に記載したようなマーカの損傷を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1に示すように、水田作業機の一例である乗用型田植機は、操向操作自在な駆動型の前車輪1と駆動型の後車輪2を備えた走行機体4の前部にエンジン6、走行機体4の前方両側部に予備苗のせ台18、走行機体4の中央部に運転座席3を備えるとともに、走行機体4の後端部にリフトシリンダ8で昇降駆動するリンク機構5を介して作業装置の一例である苗植付装置10を備える。なお、この田植機には運転座席3の後部に圃場面に肥料を供給する施肥装置19を備える。
【0027】
この田植機は、稲苗の植付けを行なうものであり、昇降駆動機構の一例であるリフトシリンダ8を伸縮することにより、リンク機構5を介して苗植付け装置10を走行機体4に対して昇降する。苗植付け装置10を下降させて田植機を走行すると苗植付け装置10に備えた複数の苗植付け機構12によって苗のせ台14から一株分の稲苗を取り出し、整地フロート11で整地した圃場面に稲苗の植付けを行う。
【0028】
図2に示すように、苗植付け装置10の両横側にマーカ20を備える。マーカ20は、苗植付け装置10の機枠フレーム15から延出するマーカ支持アーム21に連結ピン22を介して回動自在に取り付けた取付部24、マーカアーム23、マーカアーム23の先端部に回動自在に設けたマーカ輪体25などを備える。マーカアーム23が連結ピン22の機体前後方向の軸芯回りで上下揺動することにより、マーカ輪体25の下端部が圃場泥土に接地した作用姿勢と、図2の二点鎖線で示すマーカ輪体25が圃場面から高く浮上した格納姿勢とに切り替わる。作用姿勢にマーカ20が操作されると、田植機の走行によってマーカ輪体25の外周部に設けたマーカ爪26が圃場泥土を持ち上げて、走行目標腺を圃場面上に形成する。
【0029】
なお、左右のマーカ20のマーカアーム23のマーカ輪体25側には、図2及び図13に示すように着脱可能な泥よけカバー28が固定されている。なお、図13は泥よけカバー28付近の側面図を示す。泥よけカバー28は軽量な樹脂製材料からなり、マーカ20を分解しなくても外部から取り付けることができるように2つの分割式カバーからなる。その分割式カバーの上下をボルト29で固定することによって、泥よけカバー28はマーカアーム23に固定されている。この泥よけカバー28は、マーカ20を格納姿勢に上昇させる際に、マーカ輪体25についた泥土がマーカ20の上昇とともに田植機の運転座席3に飛散することを防止するためのもので(図12参照)、泥よけカバー28を備えることにより、マーカ輪体25によって持ち上げられた泥土が泥よけカバー28に当たって、田植機の運転座席3に飛散しにくいようになっている。なお、泥よけカバー28の形状や寸法、材質、取付位置などは特に問わず、例えば、円形や多角形のカバー形状を採用してもよい。
【0030】
また、この田植機の機枠フレーム15には、先端にクッションゴム30を取り付けた抵抗バネ31がブラケット32を介して固定されている。図12はマーカ20が格納姿勢に作動した場合の抵抗バネ31の状態を示している。図12に示すように、この抵抗バネ31は、マーカ20が格納姿勢に上昇する際の勢いを吸収し、マーカ輪体25に付着した泥土が飛散する勢いを抵抗バネ31の反力によって和らげることによって、田植機の運転座席3に飛散しにくくするためのものである。なお、この田植機では、抵抗バネ31を用いた例を示したが、他の緩衝部材、例えば、ショックアブゾーバ(図示せず)などでもよい。
【0031】
図2に示すように、機枠フレーム15にはマーカ操作機構40を備える。なお、図2においては左マーカ20のマーカ操作機構40について示すが、右マーカ20についても同様のマーカ操作機構40を備える。マーカ操作機構40は、電動モータ42、操作ケース43、ギヤボックス44、前記操作ケース43の出力軸47に固定したアーム48などを備えるとともに、操作ケース43の出力軸47に固定したアーム48とマーカアーム23の取付部24とに亘って操作ロッド41を備え、機枠フレーム15に固着したブラケット16とマーカアーム23の取付部24とに亘ってスプリング49を備える。
【0032】
図3に示すように、電動モータ42は機枠フレーム15に固定した操作ケース43にギヤボックス44を介して固定されている。電動モータ42の出力はギヤボックス44において減速された後、操作ケース43に内装した出力ギヤ45と駆動ギヤ46によって更に減速されて出力軸47に出力される。電動モータ42を格納姿勢側に上昇駆動すると、出力軸47に固定したアーム48を機体正面視で反時計回りに回転することで、アーム48に連係した操作ロッド41がマーカ20を引き上げるとともに、スプリング49の弾性復元力を利用して、マーカ20を格納姿勢に切り替える。一方、電動モータ42を作用姿勢側に下降駆動すると、出力軸47に固定したアーム48を機体正面視で時計回りに回転することで、アーム48に連係した操作ロッド41がマーカ20を押し下げるとともに、マーカ20の自重を利用して、マーカ20を作用姿勢に切り替える。
【0033】
出力軸47には、スイッチ操作部57を備え、このスイッチ操作部57が出力軸47の回転とともに回動することにより、操作ケース43に備えた左マーカ上昇センサ67及び左マーカ下降センサ66と接触し、マーカ20の格納姿勢と作用姿勢を検知するように構成されている。
【0034】
図1に示すように、運転座席3の側部に昇降操作レバー36を備え、ステアリングハンドル17の右横側に人為操作具の一例である操作レバー61を、左横側に変速レバー77を備える。図4に示すように、昇降操作レバー36は、自動、上昇、中立、下降、植付クラッチ(入,切)のポジションを備え、「下降」位置に操作すると苗植付け装置10を下降させ、「上昇」位置に操作すると苗植付け装置10を上昇させ、「中立」位置に操作すると苗植付け装置10を現状の高さに維持する。また、昇降操作レバー36を植付クラッチ「入」の位置に操作すると植付クラッチ52が入り、植付クラッチ「切」の位置に操作すると植付クラッチ52が切れ、更に、昇降操作レバー36を「自動」の位置に操作すると、前記操作レバー61の操作に従って苗植付装置10の昇降を許容すると同時に苗植付装置10の上昇時には植付クラッチ52を自動的に切り操作する。
【0035】
図5及び図6に示すように、操作レバー61は「中立(N)」位置を基準に、上方に「上昇(U)」、下方に「下降・クラッチ(D)」、前方に「左マーカ(L)」、後方に「右マーカ(R)」のポジションを操作自在に備え、各ポジションへの操作を止めれば「中立(N)」位置に復帰するように構成されている。なお、変速レバー77は、図1に示す静油圧式無断変速装置76と連係されており、田植機の前進、後進及びこれらの変速を行うものである。
【0036】
図6に示すように、この田植機の制御装置54は、前記操作レバー61の操作ポジションの状態を検知するスイッチ62、63、64、65と、左右のマーカ20の格納姿勢と作用姿勢を検知するマーカ上昇センサ67及びマーカ下降センサ66、苗植付装置10が上限位置にあることを検出する上限センサ69、苗植付装置10の圃場面に対する高さ位置を検出する整地フロート11に設けたフロートセンサ13及びキー操作により制御装置54への電源を断接するステアリングハンドル17の右横側に備えたメインスイッチ70と、前記昇降操作レバー36の操作位置を検出するレバー位置検出スイッチ37などの検出機器類を備える。なお、この田植機の制御装置54には、操作レバー61の操作によってマーカ操作機構40を作動させる駆動制御手段68と、フロートセンサ13からの入力信号に基づいて苗植付装置10の高さ位置を判別する高さ位置判別手段75と、後述する牽制手段71、マーカ作用制御手段72及びマーカ格納制御手段73を備える。
【0037】
前記検出機器類からの入力信号をもとに、後述する作動フローに基づいて制御を行い、前記制御装置54から各電動機器類に制御指令を出力することで各種作動を行う。すなわち、リフトシリンダ8の伸縮は、電磁弁51に備えた上昇又は下降用のソレノイド(図示せず)に電流を供給することにより行い、左右の電動モータ42やクラッチモータ53に電流を供給することで、マーカ20の出し入れや植付クラッチ52の断接を行う。なお、マーカ20が作用姿勢にある場合には、図1に示す機体前方中央部に設けたセンタマーカ9上部のマーカランプ74を点灯させることにより、操縦者にマーカ20が作用姿勢にあるか否かを伝える。
【0038】
図7は本発明に係る田植機の制御手段のメインルーチンを示す。メインスイッチ70が入り操作にある場合には(#1.YES)、後述する昇降シリンダ制御(#2)、作業クラッチ制御(#3)、マーカ作用制御(#4)及びマーカ格納制御(#5)を行い、メインスイッチ70が切り操作されれば(#6・YES)これらの制御を終了する。以下図8〜図11に基づいてこれらの制御について説明する。
【0039】
図8に苗植付装置10の昇降シリンダ制御の作動フローを示す。昇降操作レバー36が「上昇」に操作されるか又は、昇降操作レバー36が「自動」に操作された状態で操作レバー61が「上昇(U)」方向に操作されて上昇作動指令が入力されると(#11)、クラッチモータ53により植付クラッチ52を停止させて、電磁弁51の上昇ソレノイドに電流を供給し、リフトシリンダ8を短縮させる(#12)。リフトシリンダ8の短縮により苗植付装置10が上限位置に達したか否かを上限センサ69により検出し(#13)、上限位置に達した場合には(#13・YES)、電磁弁51への電流の供給を止め、リフトシリンダ8を停止させる(#18)。
【0040】
一方、昇降操作レバー36が「下降」に操作されるか又は、昇降操作レバー36が「自動」に操作された状態で操作レバー61が「下降・クラッチ(D)」方向に操作されて下降作動指令が入力されると(#15)、電磁弁51の下降ソレノイドに電流を供給し、リフトシリンダ8を伸長させる(#16)。リフトシリンダ8の伸長により苗植付装置10が下限位置に達したか否かをフロートセンサ13により検出し(#17)、下限位置に達した場合には(#17・YES)、電磁弁51への電流の供給を止め、リフトシリンダ8を停止させる(#18)。
【0041】
図9に苗植付装置10の作業クラッチ制御の作動フローを示す。昇降操作レバー36が「自動」に操作された状態で(#21・自動)、操作レバー61を「下降・クラッチ(D)」方向に操作してクラッチ作動指令が入力されると(#22)、フロートセンサ13により苗植付装置10が下限位置にあるか否か判別する(#23)。苗植付装置10が下限位置にある場合には(#23・YES)、クラッチモータ53に電流を供給し、植付クラッチ52を作動させる(#24)。一方、苗植付装置10が下限位置にない場合には、作業クラッチ制御を終了する(#23・NO)。植付クラッチ52が作動している状態で、再び操作レバー61を「下降・クラッチ(D)」方向に操作してクラッチ停止指令が入力されると(#25)、クラッチモータ53への電流の供給を止め、植付クラッチ52を停止させる(#26)。なお、昇降操作レバー36が「自動」以外のポジションに操作されている場合には、昇降操作レバー36のマニュアル操作に従って植付クラッチ52の入り切りを行う(#21・手動)。なお、この実施例では、苗植付装置10が下限位置にある場合にのみ植付クラッチ52を作動させることができる例を示したが、図9のフローの一部(#23)を省略して、苗植付け装置10が下限位置になくても、操作レバー61を「下降・クラッチ(D)」方向に操作して下降作動指令を入力した後に、再度、操作レバー61を「下降・クラッチ(D)」方向に操作してクラッチ作動指令が入力されると、植付クラッチ52が作動するように構成することも可能である。
【0042】
図10に苗植付装置10の昇降高さに基づいたマーカ作用制御の作動フローを示す。なお、図10においては左マーカ20の作動フローについて示すが、右マーカ20についても同様のマーカ作用制御を行う。操縦者が操作レバー61を「左マーカ」方向に操作すると(#31)、まず、右電動モータ42を一旦上昇駆動させるとともに(#32)、右マーカ20が格納姿勢にあるか否かを右マーカ上昇センサ67により判別する(#33)。格納姿勢にない場合には右電動モータ42を駆動し続け右マーカ20を格納姿勢に上昇させて(#33・NO)、右電動モータ42を停止させる(#34)。このように右マーカ20が格納姿勢にある場合にのみ左マーカ20を作動させるのは、左右両方のマーカ20が同時に作動することを防止するためである。なお、この実施例では、左右両方のマーカ20が同時に作動しないように構成した例を示したが、図10のフローの一部(#32〜#34)を省略し、左右両方のマーカ20が同時に作動するように構成することも可能である。
【0043】
右マーカ20が格納姿勢にある場合又は格納姿勢に上昇した場合には(#33・YES,#34)、整地フロート11に設けたフロートセンサ13からの入力信号に基づいて、高さ位置判別手段75によって苗植付装置10の高さ位置を判別し(#36)、苗植付装置10が予め設定した所定高さ以下の高さ位置に存在する場合には(#37・YES)、左電動モータ42を下降駆動する(#38)。次に、左マーカ20が作用姿勢に下降したか否かを左マーカ下降センサ66の検出結果に基づいて判別する(#39)。左マーカ20が作用姿勢に下降するまで左電動モータ42を駆動し続け(#39・NO)、左マーカ20が作用姿勢に下降した場合には(#39・YES)、左電動モータ42を停止し(#40)、マーカランプ74を点灯させる(#41)。
【0044】
一方、苗植付装置10が予め設定した所定高さ以上の高さ位置に存在する場合には(#37・NO)、牽制手段71によって左電動モータ42を駆動せず、再度、苗植付装置10の高さ位置をフロートセンサ13により判別する(#42,#43・NO,#36)。すなわち、苗植付装置10が所定高さ以上の高さで操作レバー61によってマーカ20の作用姿勢側への操作が行われても、牽制手段71によってマーカ操作機構40の作用姿勢側への作動を阻止する。
【0045】
このループを繰り返している間(左マーカタイマ・#35,#42,#43)に苗植付装置10が下降され予め設定した所定高さ以下の高さに苗植付装置10が下降した場合には(#37・YES)、左電動モータ42を下降駆動し左マーカ20を作用姿勢に下降させる(#38〜#41)。すなわち、牽制手段71によりマーカ20の作用姿勢側への作動が阻止されても、苗植付装置10が所定高さ以下の高さに下降した場合には、マーカ作用制御手段72によってマーカ20を作用姿勢に下降させる。
【0046】
なお、この作動フローには左マーカタイマ(#35,#42,#43)を備える。これは、操作レバー61の操作後、左マーカタイマ(#35)で設定した一定時間内(例えば、5秒とか10秒)は上述したループにより苗植付装置10の高さ位置の判別を繰り返し(#37・NO,#43・NO)、前記一定時間内に苗植付装置10が所定高さ以下に下降した場合には(#37・YES)、左マーカ20を作用姿勢に下降させる(#38〜#41)。左マーカタイマで設定した一定時間を超えると上述したループを止め、その後、苗植付装置10が設定高さ以下に下降したとしても左マーカ20を作動させないように構成している(#43・YES)。これは、操作レバー61の操作後、一定時間経過した後は、新たな操作レバー61の操作が必要であることを操縦者が認識していることが多く、一定時間経過後に苗植付装置10が所定高さ以下に下降しマーカ20が作動すると却って作業の妨げとなるためこれを防止するためである。
【0047】
図11に苗植付装置10の昇降高さに基づいたマーカ格納制御の作動フローを示す。なお、図11においては左マーカ20の作動フローについて示すが、右マーカ20についても同様のマーカ格納制御を行う。操縦者が操作レバー61を「左マーカ」方向に操作することによって、格納姿勢側への切り替え指令が入力されると(#51)、直ちに左電動モータ42を上昇駆動させる(#52)。また、昇降操作レバー36が「上昇」に操作されるか、又は、昇降操作レバー36が「自動」に操作された状態で操作レバー61が「上昇(U)」方向に操作されて、苗昇降装置10の上昇作動指令が入力されると(#51)、直ちに、左電動モータ42を上昇駆動させる(#52)。すなわち、操作レバー61によって格納姿勢側への切り替え指令が入力されるか、又は、苗植付装置10の上昇作動指令が入力されると、マーカ格納制御手段73によって、直ちにマーカ操作機構40を格納姿勢側に作動させる。
【0048】
次に、左マーカ上昇センサ67によって左マーカ20が格納姿勢に上昇したか否かを判別し(#53)、格納姿勢に上昇した場合には(#53・YES)、左電動モータ42の上昇駆動を停止するとともに(#54)、マーカランプ74を消灯させる(#55)。
【0049】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]に示した田植機においては、マーカ輪体25に付着した泥土の飛散防止のために、抵抗バネ31を設けた例を示したが、以下に示す図14及び図15のような抵抗板33を設けてもよい。
【0050】
図14(イ)及び(ロ)は、抵抗板33をマーカ20の格納姿勢側に設けた場合の詳細図である。なお、図14(ロ)は、抵抗板33付近の平面図を示す。帯板バネ状の抵抗板33がブラケット32に固着され、機枠フレーム15に固定されている。マーカ20のマーカアーム23が抵抗板33に当接しながら格納姿勢に上昇することによって、その摩擦力によってマーカ20が格納姿勢に上昇する際の勢いを緩和し、マーカ輪体25に付着した泥土が飛散する勢いを和らげ、田植機の運転座席3に飛散しにくいようになっている。
【0051】
図15(イ)及び(ロ)は、抵抗板33をマーカ20の作用姿勢側に設けた場合の詳細図である。なお、図15(ロ)は、抵抗板33付近の側面図を示す。帯板バネ状の抵抗板33がブラケット32に固着され、機枠フレーム15に固定されている。このように、抵抗板33をマーカ20のマーカアーム23に当接するように設けて、その当接する摩擦力によってマーカ輪体25を田面から引き上げる直後の勢いを緩和し、マーカ輪体25に付着した泥土が飛散する勢いを和らげ、田植機の運転座席3に飛散しにくいようになっている。なお、図14及び図15においては、帯板バネ状の抵抗板33を示したが、抵抗板33に限らず、例えば、棒状の抵抗棒(図示せず)などでもよい。
【0052】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]において示した田植機のマーカ20は、平面視で図16(イ)のような配置になるが、図16(ロ)のように配置してもよい。図16(イ)のように、機体左右方向の軸芯P1に対してマーカ20を配置して、格納姿勢に引き上げると、マーカ輪体25に付着した泥土が運転座席3に向って飛散する。一方、図16(ロ)のように、やや機体前方に傾けた軸芯P2に対してマーカ20を配置することにより、格納姿勢にマーカ20を引き上げる際に、マーカ輪体25に付着した泥土が運転座席3の後方に向って飛散する。そのため、運転座席3への泥土の飛散を少なくすることが可能となる。
【0053】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]における昇降操作レバー36は図4に示すようなポジション配置をしたレバーであるが、操作レバー61をステアリングハンドル17に備えていない田植機においては図17の実線で示すようにポジション配置をした昇降操作レバー36を設けてもよい。
【0054】
図17の点線で示めすレバー部38の形状は従来の形状である。すなわち、前後方向のレバー操作から前側左右方向へのレバー操作の切り換えが無理なく行えるように、前後方向の長穴から左右方向の長穴に亘って大きめの曲面39が設けられており、また、左右方向のマーカ操作用の長穴は短めに設けられている。
【0055】
従来の図17の点線で示すレバー部38では、上述した曲面39によりレバーが入り易いため、誤って昇降操作レバー36に触れてしまったような場合には、マーカ20が操縦者の意図に反して作動してしまうという問題点があった。そこで、図17の実線で示すように、上下方向の長穴から左右方向の長穴に亘って設けた曲面39を小さくするとともに、左右方向の長穴を長めに設けることにより、上述した誤作動を防止することができる。
【0056】
[発明の実施の第4別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]においてはマーカ20を苗植付装置10の機枠フレーム15の両横側に設けた例を示したが、図18に示すように走行車体4の前方で予備苗のせ台18の両外側に設けてもよい。マーカ20はサポート55を介して走行機体4から側方に延出したブラケット56に固定されている。このサポート55には、筒状のゴム58が内装されており、当該ゴム58に設けた上下方向の貫通穴にマーカ棒59が上下方向に移動可能に取り付けられている。このようにマーカ棒59を取り付けることによって、マーカ棒59取り付け用のブラケット(図示せず)を別途設ける場合に比べ、サポート55をマーカ棒59取り付け用のブラケットとして兼用することにより、部品点数を削減することができ、コスト削減を図ることができる。
【0057】
[発明の実施の第5別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、水田作業機の一例として乗用型田植機を示したが、マーカの姿勢切り換えを電動モータの駆動で行う水田作業機であれば、乗用型田植機に限らず他の水田作業機にも適用できる。また、作業装置の一例として苗植付装置10を示したが、他の作業装置の場合にも適用できる。さらには、人為操作具の一例として操作レバー61を示したが、マーカ20の姿勢切り替え指令を入力する人為操作具であれば同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】乗用型田植機の全体側面図
【図2】マーカ及びマーカ操作機構を示す正面図
【図3】マーカ操作機構の詳細を示す正面図
【図4】昇降操作レバーの操作面詳細図
【図5】操作レバーのポジション位置を示す詳細図
【図6】制御装置のブロック図
【図7】制御装置のメインルーチンを示すフローチャート
【図8】昇降シリンダ制御を示すフローチャート
【図9】作業クラッチ制御を示すフローチャート
【図10】マーカ作用制御を示すフローチャート
【図11】マーカ格納制御を示すフローチャート
【図12】抵抗バネの伸縮状態を示す正面図
【図13】泥よけカバー付近の平面図
【図14】発明の実施の第1別形態における抵抗板の取付詳細図
【図15】発明の実施の第1別形態における抵抗板の取付詳細図
【図16】発明の実施の第2別形態におけるマーカの配置を示す平面図
【図17】発明の実施の第3別形態における昇降操作レバーの操作面詳細図
【図18】発明の実施の第4別形態におけるマーカ棒の取付詳細図
【符号の説明】
【0059】
4 走行機体
8 リフトシリンダ
10 苗植付装置
20 マーカ
40 マーカ操作機構
42 電動モータ
54 制御装置
61 操作レバー
68 駆動制御手段
71 牽制手段
72 マーカ作用制御手段
73 マーカ格納制御手段
75 高さ位置判別手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
播種又は苗の植付けを行う作業装置を走行機体に対して昇降する昇降駆動機構と、前記走行機体の進行に伴って圃場面に指標を付ける作用姿勢と圃場面から離れた格納姿勢とに姿勢切り換え自在なマーカとを備えるとともに、
前記マーカの姿勢切り換えを電動モータの駆動で行うマーカ操作機構と、そのマーカ操作機構に対して前記電動モータの作動を制御する制御指令を出力する制御装置と、前記マーカの姿勢切り換え指令を入力する人為操作具と、前記作業装置の高さ位置を判別する高さ位置判別手段と、前記人為操作具の操作に基づいて前記マーカ操作機構を作用姿勢側及び格納姿勢側に作動させる駆動制御手段とを備えた水田作業機であって、
前記作業装置の高さが所定高さ以上の高さで前記人為操作具から作用姿勢側への切り替え指令が入力されても、マーカ操作機構の作用姿勢側への作動を阻止する牽制手段を備え、
前記作業装置の高さが所定高さ以上の高さで前記人為操作具から作用姿勢側への切り替え指令が入力され前記牽制手段によりマーカ操作機構の作用姿勢側への作動が阻止されても、前記作業装置の高さが所定高さ以下の高さになればマーカ操作機構を作用姿勢側に作動させるマーカ作用制御手段を備えた水田作業機。
【請求項2】
前記作業装置の上昇作動指令があると直ちに、前記マーカ操作機構を格納姿勢側に作動させるマーカ格納制御手段を備えた請求項1記載の水田作業機。
【請求項3】
前記人為操作具によって格納姿勢側への切り換え指令の入力がされると直ちに、前記マーカ操作機構を格納姿勢側に作動させるマーカ格納制御手段を備えた請求項1又は請求項2記載の水田作業機。
【請求項1】
播種又は苗の植付けを行う作業装置を走行機体に対して昇降する昇降駆動機構と、前記走行機体の進行に伴って圃場面に指標を付ける作用姿勢と圃場面から離れた格納姿勢とに姿勢切り換え自在なマーカとを備えるとともに、
前記マーカの姿勢切り換えを電動モータの駆動で行うマーカ操作機構と、そのマーカ操作機構に対して前記電動モータの作動を制御する制御指令を出力する制御装置と、前記マーカの姿勢切り換え指令を入力する人為操作具と、前記作業装置の高さ位置を判別する高さ位置判別手段と、前記人為操作具の操作に基づいて前記マーカ操作機構を作用姿勢側及び格納姿勢側に作動させる駆動制御手段とを備えた水田作業機であって、
前記作業装置の高さが所定高さ以上の高さで前記人為操作具から作用姿勢側への切り替え指令が入力されても、マーカ操作機構の作用姿勢側への作動を阻止する牽制手段を備え、
前記作業装置の高さが所定高さ以上の高さで前記人為操作具から作用姿勢側への切り替え指令が入力され前記牽制手段によりマーカ操作機構の作用姿勢側への作動が阻止されても、前記作業装置の高さが所定高さ以下の高さになればマーカ操作機構を作用姿勢側に作動させるマーカ作用制御手段を備えた水田作業機。
【請求項2】
前記作業装置の上昇作動指令があると直ちに、前記マーカ操作機構を格納姿勢側に作動させるマーカ格納制御手段を備えた請求項1記載の水田作業機。
【請求項3】
前記人為操作具によって格納姿勢側への切り換え指令の入力がされると直ちに、前記マーカ操作機構を格納姿勢側に作動させるマーカ格納制御手段を備えた請求項1又は請求項2記載の水田作業機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2007−306814(P2007−306814A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136722(P2006−136722)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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