説明

水田作業機

【課題】 残留肥料を円滑に排出することができるとともに、排出ホースの固定構造の簡素化と、固定部に対する排出ホースの着脱に際しての操作性の改善を図り得る水田作業機を提供する。
【解決手段】粉粒体供給装置を設けた水田作業機において、ホッパー内の残留粉粒体を排出位置に誘導する排出管路を、粉粒体供給装置の複数の排出口に対して各別に接続された複数本の排出ホース5で構成し、この排出ホース5の複数本を一組として先端側を連結する連結体50を備え、連結体50に、一組の排出ホース5の先端開口を閉塞するための蓋体52と、走行機体側の排出ホース止め部61に設けたフック63に対して係脱可能な係合部51とを設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体に施肥あるいは薬剤の散布などで用いる粉粒体供給装置を備え、その走行機体に対して、播種または苗植付けを行う植播系作業装置を備えるとともに、貯留ホッパー内に残留する粉粒体を排出する排出管路を有している水田作業機に関する。
尚、本明細書では、圃場での播種あるいは植付の作業を行うための装置を総称して「植播系作業装置」と称する。
【背景技術】
【0002】
上記のようにホッパーからの残留粉体を回収するための排出管路を有する水田作業機としては、従来より下記[1]〜[3]に記載のものが知られている。
[1] 運転座席の後方に設けた貯留ホッパーより繰り出し機構を介して延出された排出管路は、ホッパーに連なる始端側の端部が、ホッパー側の複数個の供給口の夫々に対して複数のホース部分が接続され、終端側では前記複数のホース部分が一本のホース部分に集められ、その一本に集められた終端側ホース部分が、フェンダーの下方に於いてフックに係止されていた(たとえば特許文献1参照)。
[2] ホッパーから延出された排出管路の先端部の肥料取り出し口を、車体に固定のホースホルダーに抜き差しできるようにして支持するようにしたもの(たとえば特許文献2参照)。
[3] ホッパーから延出された排出管路を構成する複数本の排出ホースの先端部を連結体で連結し、この連結体ごと、車体に固定のブラケットに嵌め込み係合させて支持するようにしたもの(たとえば特許文献3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−89357号公報(段落「0047」〜「0048」、図1,2,10,11)
【特許文献2】特開2003−310017号公報(段落「0069」、図24,26)
【特許文献3】特開2001−95321号公報(段落「0031」〜「0033」、図2,4,9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記[1]に記載の従来技術のように、後輪フェンダーの下側に設けたフックに対して排出ホースの先端部を係脱させる構造のものでは、終端側ホース部分に至る前に始端側の複数のホース部分を合流させることで、フックに係止させる終端側のホース部分の本数を少なくしているが、排出ホースとして、このような中間で合流させる特殊な構造のホースを採用しなければ、終端側でフックに係合させるホースの本数が増し、フック係合箇所を多く設ける必要がある。前述の特殊なホースを用いると、コスト面での不利と、詰まりが生じた場合のメンテナンスの行い難さを招く不具合がある。
上記[2]に記載の従来技術のように、ホッパーから延出された排出管路の先端部の肥料取り出し口を、車体に固定のホースホルダーに抜き差しできるようにして支持させる構造のものでは、複数の肥料取り出し口を一つのホルダーで支持できるので、固定構造の個数が少なくて済む利点はあるが、個々の肥料取り出し口を個別にホルダーのキャップ部分に挿抜する必要があり、その着脱操作が煩わしいという不具合がある。
上記[3]に記載の従来技術のように、ホッパーから延出された排出管路を構成する複数本の排出ホースの先端部を連結体で連結し、この連結体ごと、車体に固定のブラケットに嵌め込み係合させて支持するようにした構造のものでは、連結体で連結された複数本の排出ホースの先端部をひとまとめにして固定側のブラケットに係脱させることができるので、固定構造の個数が少なくて済み、操作も2本ひとまとめで行えるので操作性も優れている点で有利であるが、連結体とブラケットとの固定構造が、ブラケットの弾性挟持力を利用した挟み込みによるものであるため、固定保持を確実にしようとすれば着脱に強い操作力を要して扱い難いという問題があり、操作性を優先すると、機体振動の影響などで不測に排出ホースが外れてしまう虞がある。
【0005】
本発明の目的は、残留肥料を円滑に排出することができるとともに、排出ホースの固定構造の簡素化と、固定部に対する排出ホースの着脱に際しての操作性の改善を図り得る水田作業機を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために講じた本発明による水田作業機では、下記の技術手段を講じたものである。
〔解決手段1〕
粉粒体を貯留するホッパーと、このホッパーから送られてくる粉粒体を供給口に所定量ずつ繰り出す繰出し機構との複数個を並設してなる粉粒体供給装置を走行機体に装備し、前記ホッパーより繰り出し機構で取り出した粉粒体を圃面の所定供給位置に誘導する供給管路と、前記ホッパー内の残留粉粒体を排出位置に誘導する排出管路とを設けた水田作業機において、
前記排出管路を、粉粒体供給装置の複数の排出口に対して各別に接続された複数本の排出ホースで構成し、この排出ホースの複数本を一組として先端側を連結する連結体を備え、
前記連結体に、前記一組の排出ホースの先端開口を閉塞するための蓋体と、走行機体側の排出ホース止め部に設けたフックに対して係脱可能な係合部とを設けてある。
【0007】
〔解決手段1にかかる発明の作用及び効果〕
上記のように、排出ホースの複数本を一組として先端側を連結する連結体を備えているので、排出ホースを個別に固定部に固定する場合に比べ、固定部の個数を削減し、全体構造の簡素化につながる。
そして、連結体に、前記一組の排出ホースの先端開口を閉塞するための蓋体と、走行機体側の固定部に設けたフック部に対して係脱可能な係合部とを設けてあるので、連結体が、単なる複数の排出ホース同士を連結するための手段だけではなく、フック部に対する係合手段を形成するための手段と、蓋体の取付手段とを兼ねることにもなる。したがって、この点でも部品の兼用化による構造の簡素化を図ることができる。
また、排出ホースの固定部への脱着は、固定部側のフックに対して連結体の係合部を係脱させるだけの、きわめて簡便な操作で行えるので、固定側の筒部に対する挿抜操作や、弾性復元力に抗しての嵌合部への出し入れ操作に比べて、操作性の点で優れている。
【0008】
〔解決手段2〕
上記解決手段1に記載の水田作業機において、排出ホースの先端部を、走行機体の左右方向に沿い、かつ端部開口が外向きとなる姿勢で排出ホース止め部に支持されるとともに、その端部開口が走行機体の左右方向での外端部に近く位置するように排出ホース止め部の位置を設定するとよい。
【0009】
〔解決手段2にかかる発明の作用及び効果〕
解決手段2にかかる発明では、排出ホースの先端部の固定に際して、排出ホースの先端部が走行機体の左右方向に沿い、かつ端部開口が外向きとなる姿勢で固定部に支持されるとともに、その端部開口が走行機体の左右方向での外端部に近く位置するように固定部の位置を設定してある。つまり、固定部に支持された状態で、排出ホースの端部が機体の外側端近くに位置し、しかもその排出方向も外向きとなっている。
したがって、排出ホースで残留粉粒体を取り出す際に、回収用の容器を狭い機体の下部空間に設置するなどの作業を要さず、機体の横側部に置いた状態で楽な作業で行い易くなる。
また、連結体に設けた蓋体を開放すれば、排出ホース端部を固定部に支持させたままでも粉粒体の取り出しが可能となり、より一層楽な取り出し作業が可能となる。
【0010】
〔解決手段3〕
粉粒体を貯留するホッパーと、このホッパーから送られてくる粉粒体を供給口に所定量ずつ繰り出す繰出し機構との複数個を並設してなる粉粒体供給装置を走行機体に装備し、前記ホッパーより繰り出し機構で取り出した粉粒体を圃面の所定供給位置に誘導する供給管路と、前記ホッパー内の残留粉粒体を排出位置に誘導する排出管路とを設けた水田作業機において、
前記排出管路を、粉粒体供給装置の排出口に対して接続された排出ホースで構成し、この排出ホースの先端部と、走行機体側の排出ホース止め部と間に、磁力による引き寄せ作用で固定可能な排出ホース固定手段を設けてある。
【0011】
〔解決手段3にかかる発明の作用及び効果〕
解決手段3にかかる発明では、排出ホースの先端部と、走行機体側の排出ホース止め部と間に、磁力による引き寄せ作用で固定可能な固定手段を設けたものであるから、排出ホースの先端部とその固定とのためのホース止め部との相対位置関係をあまり気にすることなく、磁力の働き具合を感覚的に確認しながら着脱することができ、例えば目視し難い隠れた場所にホース止め部が存在するような設計であっても、比較的容易に着脱させ易いという利点がある。
特に、排出ホースの先端部側に磁石を設けた場合には、走行機体側には格別何も設けなくとも、走行機体自体が鉄系金属製であることから、排出ホース止め部として任意の場所を適用することができるとか、粉粒体供給装置を備えていなかった走行機体に新たに本発明の粉粒体供給装置を後付けで設けても支障なく用いることができるという利点がある。
【0012】
〔解決手段4〕
上記解決手段3に記載の水田作業機において、走行機体側の排出ホース止め部に、排出ホース止め部に対する排出ホース先端部の遠近方向での移動を案内し、前記遠近方向に交差する方向での動きを規制するガイド体を設けるとよい。
【0013】
〔解決手段4にかかる発明の作用及び効果〕
解決手段4にかかる発明では、排出ホース止め部に対する排出ホース先端部の遠近方向での移動を案内し、前記遠近方向に交差する方向での動きを規制するガイド体を設けているので、排出ホースや排出ホース止め部に雨水や泥土が付着して磁力による引き寄せ作用が低下した場合でも、ガイド体が支えて排出ホース止め部からの排出ホースの脱落を抑制する。したがって、強い機体振動等が作用しても、排出ホースの脱落を容易に抑制することができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態一例を図面に基づいて説明する。
〔水田作業機の全体構成〕
図1に示すように、操向操作自在な左右一対の前輪11及び左右一対の後輪12を備えた走行機体1の前部に、エンジン13及びミッションケース14を備え、走行機体1の中央部にステアリングハンドル等を装備した操縦部15と運転座席16とを設け、走行機体1の後部には粉粒体供給装置としての施肥装置2が配置されている。
前記エンジン13の左右両側、及び前記操縦部15と運転座席16との間、ならびに前記運転座席16の左右両側には、ほぼ平坦なステップ部分を有した運転部ステップ10が設けられ、この運転部ステップ10のさらに外側で前記エンジン13の配設箇所と対向する箇所に予備苗のせ台17が配設され、運転部ステップ10の最後部に立ち上がり部10Aを設けて、前記平坦なステップ部分よりも高くした搭載面を備える搭載台7が配設され、この搭載台7の上側に前記施肥装置2の肥料ホッパー20が配設されている。
走行機体1の後方には、リンク機構4を昇降操作自在に連結して、リンク機構4に植播系作業装置の一例である苗植付装置3を装着して、水田作業機の一例である乗用型田植機を構成してある。
苗植付装置3は8条植えに構成されており、4個の植付伝動ケース30、植付伝動ケース30の左右両側に回転駆動自在に支持される回転ケース31、回転ケース31の両端に配備される一対の植付爪32、5個の接地フロート33、及び苗のせ台34等によって構成してある。
【0015】
〔施肥装置の構成〕
次に、粉粒体供給装置の一例である施肥装置2の構成について説明する。
図1,2,3に示すように、走行機体1の後部においてリンク機構4が連結される機体フレーム100の上部に、走行機体1の左右方向に沿って支持フレーム101が固定されて、4個の肥料繰出し機構21が支持フレーム101に連結されている。透明樹脂製の肥料ホッパー20が、4個の肥料繰出し機構21の上部に亘って取付けられて、図2及び図4に示すように、蓋部20a(透明樹脂製)が、後側の横軸芯周りに開閉自在に備えられている。これにより、図1及び図3に示すように、肥料繰出し機構21と肥料ホッパー20とで成る繰出し部が、運転座席16の後側に左右に並べて配置されている。
【0016】
図1に示すように苗植付装置3の植付爪32によって植え付けられた苗の横側部に、溝を形成しながら肥料を田面に送り込んでいく作溝器35が備えられ、8個の作溝器35が接地フロート33に各々2個ずつ取付けられている。図1,2,3,4に示すように、1個の肥料繰出し機構21と2個の作溝器35とが、2個の漏斗部22及び2本の搬送ホース36によって接続されている。
【0017】
図4及び図5に示すように、肥料繰出し機構21は、外周に粉粒体入込み用の凹部23aが周方向に沿って多数形成された繰出しロール23を、肥料ホッパー20の粉粒体排出口24の下方で、かつ、漏斗部(肥料供給経路の始端部の一例)22の上方に回転可能に配置して構成するとともに、繰り出しロール23を、この繰り出しロール23の軸部25と一体形成された従動ギヤ25aと、動力が入力される駆動軸26の駆動ギヤ26aとの咬合によって駆動回転するように構成してある。尚、図中の符号23bは、繰り出しロール23の周面に摺接して、すり切り作用するブラシである。
【0018】
図1及び図3に示すように、苗植付装置3に動力を伝達するPTO軸40がミッションケース14から延出され、PTO軸40から横向きに動力を取り出すクランク軸41が、機体フレーム100に固定された伝動ケース42に枢支されている。クランク軸41の出力が、前記駆動軸26に外嵌されたワンウェイクラッチ44へ、連係ロッド43を介して連結されている。
【0019】
図1及び図2に示すように、支持フレーム101の端部にブロア27及びブロア27を駆動するモータ27Aが支持されるとともに、ブロア27で生起された風を各漏斗部22に供給するためのパイプ状の送風ダクト28を、ブロア27から支持フレーム101に沿う状態に横臥配置して延出配備してある。
図5に示すように、肥料繰出し機構21の下部に接続された2個の漏斗部22において、漏斗部22の供給口(送風取り込み経路の一例)22aを、シールゴムを介して送風ダクト28に挿入し、固定してある。
【0020】
以上の構造により、PTO軸40の動力によって苗植付装置3の回転ケース31が回転駆動され、一対の植付爪35により苗のせ台34から交互に苗が取り出され田面に植え付けられて、苗の植付作業が行われる。これと同時に、クランク軸41の回転運動による連係ロッド43の往復運動が、ワンウェイクラッチ44により回転運動に変換されて、駆動軸26を介して回転軸25が間欠的に回転駆動される。
これにより、図3乃至図5に示すように、繰り出しロール23の凹部23aに肥料ホッパー20から肥料が入込み、駆動軸15の間欠的な回転により肥料が漏斗部22に繰出される。そして、ブロア27からの高圧の風が、送風ダクト28を介して漏斗部22に供給され、高圧の風により肥料が搬送ホース36を通って作溝器35に迅速に供給され、作溝器35により田面に形成された溝に肥料が送り込まれて施肥作業が行われるのである。
【0021】
図5に示すように、繰り出しロール23の上側に、シャッター45が挿入自在及び抜き取り自在に配置されている。このシャッター45は、図示しないが、繰り出しロール23の長手方向で複数に分割された板状部材から構成されていて、各別に板状部材を抜き差しすることにより、繰り出しロール23の凹部23aに対する肥料の量を調節することができるように構成されている。
【0022】
図4及び図5に示すように、漏斗部22の粉粒体排出口24内に切換板46が横軸芯周りに揺動操作自在に支持されており、切換板46の下側から排出ホース5が下方に延出されている。通常の苗の植付作業時には、切換板46は図5の実線で示す閉姿勢に操作されており、肥料ホッパー20からの肥料は漏斗部22に繰り出される。通常の苗の植付作業を終了した場合等において、ブロア27及び苗植付装置3の駆動(具体的にはPTO軸40の駆動)を停止させた状態で、切換板46を開姿勢に操作すると、肥料ホッパー20に残った肥料が排出ホース5に入って排出される。
【0023】
〔排出管路の構造〕
肥料ホッパー20内の粉粒体を排出するための排出管路は、漏斗部22の粉粒体排出口24の夫々に接続された前記排出ホース5によって構成されている。
図4、図6に示すように、排出ホース5は4個の肥料繰出し機構21の夫々に各一個設けてあり、各排出ホース5は、比較的軟質で可撓性を有した合成樹脂製材料で構成されている。
図2及び図4に示すように、施肥装置2の搭載台7に設けた透孔74に挿通された4個の排出ホース5は夫々下向きに延出され、そのうちの2本ずつが走行機体の左右に振り分けられて、先端開口部が走行機体の左右に設けた排出ホース止め部6に係止固定されている。
【0024】
〔排出ホース固定手段の構造〕
前記排出ホース5の先端開口部を走行機体に固定するための手段は次のように構成されている。
図6乃至図8に示すように、排出ホース5の先端開口部を走行機体に固定するための手段としての排出ホース止め部6は、走行機体側に装備される機体側止め部61と、排出ホース5側に装備されるホース側止め部62との組み合わせで構成されている。
【0025】
走行機体の運転部ステップ10左右両側には、乗降用ステップ102が連設されており、この乗降用ステップ102を支える取付ブラケット103が前記運転部ステップ10の下面側に設けられている。
走行機体側に装備される機体側止め部61は、前記運転部ステップ10を支えるための取付ブラケット103の後方外側面に、後方に向けて立設したフック63によって構成されている。
排出ホース5側に装備されるホース側止め部62は、2本の前記排出ホース5の先端部同士を連結する連結体50に一体に設けた係合孔51(係合部の一例)によって構成されている。この連結体50は、2本の前記排出ホース5の先端開口部を閉塞する蓋体52部分も一体的に備えていて、前記排出ホース5の先端部を前記フック63に支持させた状態で、その先端部開口を蓋体52で閉塞した状態に維持できるように構成されている。連結体50のフック63に対する係脱操作と、蓋体52の開閉操作とは、夫々独立した操作で各別に行うことができるものであり、連結体50をフック63に係合させたままで蓋体52を開閉操作することもできる。
前記フック63の位置は、図6に示すように、このフック63に係合された状態の排出ホース5の先端部が乗降用ステップ102の左右方向の外端部から外方へはみ出さない状態で、その下面近くにあり、平面視でなるべく機体の左右外端部近くに位置し、上下方向では、このフック63に係合された状態の排出ホース5の先端部が乗降用ステップ102の最下段よりも上方に位置するように位置設定して設けられている。また、前記排出ホース5は、前記フック63に固定された状態で、その先端部開口が最も下位となるように、施肥装置2の粉粒体排出口24から下向き傾斜を維持するように全体長さを設定してある。
【0026】
〔搭載台〕
前記施肥装置2を搭載する搭載台7は、図2に示すように、合成樹脂材料のブロー成形で構成された左右対称の一対の分割体70a、70bの組み合わせで構成され、個々の分割体70a、70bの夫々が、運転部ステップ10の立ち上がり部10Aと、機体フレーム100から立設された支持体104に固定されることによってほぼ面一な扁平板状の搭載台7が構成されている。
この搭載台7は、図9に示すように、全体形状としては概ね扁平板状に形成された上層部分71と、所定間隔置きに上方への突出部分を備えた下層部分72とが重ね合わされ、かつ、前記下層部分72の上方への突出部分の頂部が上層部分71の下面側に当てつけられた重合状態で接合されている接合部73を備えて全体が一体の中空状に構成されている。前記接合部73のうち、施肥装置2の粉粒体排出口24の近く位置に相当する箇所に存在する比較的大きな径の接合部73には、排出ホース5を挿通するための透孔74が穿設されている。
前記運転部ステップ10は、その最後部が、運転座席16の前方側における操縦部床面となる前端側よりも少し高く突出した立ち上がり部10Aとなっていて、その高くなっている箇所に前記搭載台7を設置するのであるが、図1,図4、及び図9に示すように、搭載台7の前端側が運転部ステップ10の前記立ち上がり部10Aが存在している箇所よりも前方側にはみ出す状態で固定されている。
換言すれば、運転部ステップ10の平坦部分が極力後方にまで延設されていることになる。このようにすると、操縦者が、機体前部側の予備苗のせ台17に搭載されている予備苗を機体後部の苗植付装置7に補給する際に、一方の足を搭載台7に掛け、他方の足を立ち上がり部10Aの直前まで入り込ませることで、できるだけ足を機体後方に位置させた状態での苗補給作業が行い易くなる点で有利である。
【0027】
〔別実施形態の1〕
図10に示すように、前記排出ホース5の先端部を走行機体に固定するための手段としては、前述の実施形態で説明した排出ホース止め部6の構造に限らず、次のように構成してもよい。
すなわち、2本の前記排出ホース5の先端部同士を連結する連結体50の横側面に永久磁石65を埋め込んで固定するように構成してある。この横側面とは、走行機体側の固定部である前記運転部ステップ10を支えるための取付ブラケット103の後方外側面に対向する側の面であり、ここに永久磁石65を装着して、その永久磁石65の磁力による引き寄せ作用で固定可能に構成したものである。
このように排出ホース5先端部を受け止める固定手段として磁力を利用した構成のものを採用すると、走行機体側の機体側止め部61の位置設定に自由度が増し、取付ブラケット103の任意の面、あるいはその近傍の位置にも止め付けることが可能となる。
この機体側止め部61での位置の自由度が特に必要ない場合には、排出ホース5の端部側にではなく、走行機体側に永久磁石65を設けて、排出ホース5には磁性体を装着しておいて止め付けられるようにしてもよい。
また、排出ホース5側と走行機体側との夫々に、互いに極性の異なる永久磁石65,65を設けて止め付けられるようにしてもよい。
【0028】
〔別実施形態の2〕
図11に示すように、前記排出ホース5の先端部を走行機体に固定するための手段として、さらに別の実施形態を採用してもよい。
すなわち、上記「別実施形態の1」で説明した、磁力を利用した構造を採用することに加えて、機体側止め部61に棒状のガイド体66を立設し、連結体50に前記ガイド体66を挿入可能なガイド穴67を設け、ガイド穴67にガイド体66を挿入した状態で連結体50を機体側止め部61となる取付ブラケット103に対する遠近方向に移動自在に案内できるように構成してある。
このように構成すると、連結体50に設けられた永久磁石65と取付ブラケット103とが十分に近接し難い状況下、たとえば、接触面に泥土が付着していたような状態でも、磁力での固定作用の他に、ガイド体66による支持作用が働いているので、大きな機体振動が作用するなどして、排出ホース5の先端部が固定箇所から脱落しようとしても、これを阻止し得る利点がある。
【0029】
〔別実施形態の3〕
運転座席16を構成するにあたり、図12(イ),(ロ)に示すように、着座面16Aと背もたれ面16Bとが別体で構成された二つ折り可能な構造とし、かつ、図14(イ)に示すように、着座面16Aの前側を持ち上げて二つ折りした状態と、図14(ロ)に示すように、背もたれ面16Bを前に倒して二つ折りした状態とに、何れの側からでも折り畳めるようにしてもよい。このように構成すると、運転部ステップ10上での保守点検作業を行う場合などに、運転座席16の折りたたみ方向を適宜選択して、運転部空間での作業スペースを確保し易いという利点がある。
【0030】
〔別実施形態の4〕
粉粒体供給装置としては、施肥装置2を例示したが、これに限らず、除草剤などの薬剤を散布する施薬装置や、それらの混合物を供給するようにしたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】乗用型田植機の側面図
【図2】乗用型田植機の平面図
【図3】施肥装置部分の背面図
【図4】繰出し部への動力伝達構造を示す側面図
【図5】繰出し機構部分の構造を示す断面図
【図6】排出ホースの取り出し部分を示す正面図
【図7】排出ホース止め部の構造を示す斜視図
【図8】排出ホース止め部の構造を示し、(イ)が側面図、(ロ)が断面図
【図9】搭載台の断面図
【図10】排出ホース止め部の別実施形態示す断面図
【図11】排出ホース止め部の別実施形態示す断面図
【図12】運転座席の別実施形態を示す側面図
【符号の説明】
【0032】
1 走行機体
2 施肥装置(粉粒体供給装置)
5 排出ホース
6 排出ホース止め部
20 ホッパー
21 繰出し機構
22a 供給口
24 排出口
50 連結体
52 蓋体
63 フック
66 ガイド体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体を貯留するホッパーと、このホッパーから送られてくる粉粒体を供給口に所定量ずつ繰り出す繰出し機構との複数個を並設してなる粉粒体供給装置を走行機体に装備し、前記ホッパーより繰り出し機構で取り出した粉粒体を圃面の所定供給位置に誘導する供給管路と、前記ホッパー内の残留粉粒体を排出位置に誘導する排出管路とを設けた水田作業機であって、
前記排出管路を、粉粒体供給装置の複数の排出口に対して各別に接続された複数本の排出ホースで構成し、この排出ホースの複数本を一組として先端側を連結する連結体を備え、
前記連結体に、前記一組の排出ホースの先端開口を閉塞するための蓋体と、走行機体側の排出ホース止め部に設けたフックに対して係脱可能な係合部とを設けてある水田作業機。
【請求項2】
排出ホースの先端部は、走行機体の左右方向に沿い、かつ端部開口が外向きとなる姿勢で排出ホース止め部に支持されているとともに、その端部開口が走行機体の左右方向での外端部に近く位置するように排出ホース止め部の位置を設定してある請求項1記載の水田作業機。
【請求項3】
粉粒体を貯留するホッパーと、このホッパーから送られてくる粉粒体を供給口に所定量ずつ繰り出す繰出し機構との複数個を並設してなる粉粒体供給装置を走行機体に装備し、前記ホッパーより繰り出し機構で取り出した粉粒体を圃面の所定供給位置に誘導する供給管路と、前記ホッパー内の残留粉粒体を排出位置に誘導する排出管路とを設けた水田作業機であって、
前記排出管路を、粉粒体供給装置の排出口に対して接続された排出ホースで構成し、この排出ホースの先端部と、走行機体側の排出ホース止め部と間に、磁力による引き寄せ作用で固定可能な排出ホース固定手段を設けてある水田作業機。
【請求項4】
走行機体側の排出ホース止め部に、排出ホース止め部に対する排出ホース先端部の遠近方向での移動を案内し、前記遠近方向に交差する方向での動きを規制するガイド体を設けた請求項3記載の水田作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−89499(P2007−89499A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284403(P2005−284403)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】