説明

汎用コンバイン

【課題】従来、吸塵ファンを装備したコンベヤ室は、吸塵風を案内する装置がなく、整然とした風路が形成されず、扱室始端部分から塵埃を吸塵することが不充分であり、更には、搬送物にまで吸塵風が作用して乱し、適確な搬送を阻害する課題があった。
【解決手段】この発明は、扱室3の供給部6に、前部の刈取装置7や掻込みオーガ8に接続して設けたコンベヤ室10の終端部を臨ませて構成し、該コンベヤ室10の上部に設けた吸塵ファン11は、扱室3の始端部分からコンベヤ室10の内部を経由して塵埃を吸塵する構成とし、該コンベヤ室10には、搬送コンベヤ装置9によって搬送中の搬送物に吸塵風を作用させないように仕切る吸塵風案内板12を設けて風を誘導する構成とした汎用コンバインとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車台上に搭載している脱穀装置に、刈取物を供給する搬送コンベヤ装置を設け、該搬送コンベヤ装置を内装しているコンベヤ室に吸塵ファンを装備して、脱穀装置の始端部やコンベヤ室内の塵埃を吸塵して排塵する汎用コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の汎用コンバインは、車台上に搭載した全穀投入式の脱穀装置を、供給部を前側に位置させて搭載し、該脱穀装置の供給部に、刈取物を供給する搬送コンベヤ装置を内装したコンベヤ室の終端部を接続して構成している。
【0003】
そして、該コンベヤ室は、その始端部を、前側の刈取装置に臨ませた掻込みオーガの背後に接続して設け、上部に吸塵ファンを装備して構成している。そして、該吸塵ファンは、前記コンベヤ室や脱穀装置の始端部分に浮遊する塵埃を吸塵して機外に排塵する構成としている。
【0004】
このように、従来から、汎用コンバインは、刈取脱穀作業では避けられない塵埃を脱穀作業の前工程で、できる限り取り除いて、選別精度の向上を図りながら、併せて、オペレータ等に対して衛生的な農作業を行わんとする技術がある。
【0005】
そして、上記技術が開示されている特許文献は、例えば、本件出願人の出願に係る特開2003−174815号公報が公開されている。該公開特許公報に記載されている技術は、フィーダハウスの上部に吸引排塵ファンを装備し、その吸塵排塵ファンに接続させた排塵ダクトを、機体の下方に配管し、更に、排塵口を横向きに開口して構成した点に特徴がある。
【0006】
そして、上記排塵ダクトの排塵口は、圃場に植わっている穀稈の未刈地横側方に向けて排塵する構成として、外に排塵した塵埃が、吹き返しによって舞い上がったり、機体の各部に堆積したり、運転席側に影響がないように排塵できるものとしている。
【特許文献1】特開2003−174815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、吸塵ファンを上部に装備したコンベヤ室は、室内に吸塵風を案内する装置がないために、整然とした風路が形成されず、脱穀装置の扱室始端部分から塵埃を吸塵することが不充分であり、更には、コンベヤによって搬送中の穀稈にまで吸塵風が作用して搬送を乱し、適確に搬送できない課題があった。
【0008】
更に、扱胴始端部分のスパイラル胴は、コンベヤの終端部に接近させて設けてはいるが、扱室の選別受網の前端から前側に突出しておらず、下側に受継空間部分に相当する空間部分がないためにスパイラルの掻込み機能が働き難く、円滑な受け継ぎができ難く、搬送物が停滞して詰まる等の課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、車台(1)上に搭載した脱穀装置(2)の扱室(3)には、始端部をスパイラル胴(4)に形成した扱胴(5)を軸架して設け、該扱室(3)の供給部(6)には、前部に配置した刈取装置(7)や掻込みオーガ(8)に接続して設けた搬送コンベヤ装置(9)を内装したコンベヤ室(10)の終端部を臨ませて設け、該コンベヤ室(10)の中間上部に設けた吸塵ファン(11)は、前記扱室(3)の始端部分からコンベヤ室(10)の内部を経由して塵埃を吸塵する構成とし、該コンベヤ室(10)には、前記搬送コンベヤ装置(9)によって搬送中の搬送物に吸塵風が作用し難いように仕切る吸塵風案内板(12)を設けて風を誘導する構成とした汎用コンバインであって、吸塵ファン(11)は、コンベヤ室(10)の後部に繋がって連通している扱室(3)の始端部分に浮遊する塵埃までも適確に吸塵できるものとなっている。
【0010】
そして、吸塵風案内板(12)は、前記吸塵ファン(11)に風を誘導する確実な吸塵補助を行いながら、搬送コンベヤ装置(9)によって搬送されている搬送物を乱すような吸塵風の流れをなくして、適確に吸塵風の誘導ができる。
【0011】
つぎに、請求項2に記載した発明は、前記コンベヤ室(10)には、扱室(3)へ搬送する搬送物に対して、吸塵風が働かず、前記搬送コンベヤ装置(9)の搬送力が働く側に案内する搬送物案内板(13)を設け、該搬送物案内板(13)は、搬送物を、前記搬送コンベヤ装置(9)側に案内する形状に構成した請求項1記載の汎用コンバインであって、搬送物を搬送コンベヤ装置(9)側に強制的に案内し、吸塵風による搬送物への悪影響をなくしたものであり、搬送物を適確に、扱室(3)の始端側に案内できる。
【0012】
つぎに、請求項3に記載した発明は、前記扱室(3)に軸架している扱胴(5)は、始端部のスパイラル胴(4)を扱室(3)の選別受網(14)の始端部から搬送コンベヤ装置(9)の終端部側に近づくように突出させて設け、前記スパイラル胴(4)は、その下方に受継空間部(15)を形成して構成した請求項1記載の汎用コンバインであって、スパイラル胴(4)は、扱室(3)の選別受網(14)より前方に突出させ、その下方に受継空間部(15)を形成しているから、搬送コンバヤ装置(9)の終端部分に達した搬送物にスパイラルを働かせながら受け継いで扱室(3)に供給できるものとなっている。
【発明の効果】
【0013】
まず、請求項1に記載した発明は、吸塵ファン(11)がコンベヤ室(10)の後部に繋がって連通している扱室(3)の始端部分に浮遊する塵埃までも適確に吸塵できる特徴がある。そして、吸塵風案内板(12)は、前記吸塵ファン(11)に風を誘導して確実な吸塵補助を行いながら、搬送コンベヤ装置(9)によって搬送されている搬送物を乱すような風の流れをなくして、適確に吸塵風の誘導ができる。
【0014】
そして、請求項2に記載した発明は、搬送物を搬送コンベヤ装置(9)側に強制的に案内し、吸塵風による搬送物への悪影響をなくしたものであり、搬送物を適確に、扱室(3)の始端側に案内できる特徴がある。
【0015】
そして、請求項3に記載した発明は、スパイラル胴(4)を、扱室(3)の選別受網(14)より前方に突出させ、その下方に受継空間部(15)を形成しているから、搬送コンバヤ装置(9)の終端部分に達した搬送物に直接スパイラルが働らいて掻き込みながら受け継いで扱室(3)に供給できる特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
まず、この出願の請求項1の発明は、コンベヤ室10の中間上部に設けた吸塵ファン11が、扱室3の始端部分からコンベヤ室10の内部を経由して塵埃を吸塵する構成とし、該コンベヤ室10には、搬送コンベヤ装置9によって搬送中の搬送物に吸塵風が作用し難いように仕切る吸塵風案内板12を設けて風を誘導する構成としたものであるから、吸塵風が搬送物へ悪影響することがほとんどない状態で、脱穀装置の始端部分からコンベヤ室内の塵埃を適確に吸塵できるものである。
【0017】
そして、請求項2の発明は、コンベヤ室10には、扱室3へ搬送する搬送物に対して、吸塵風が働かず、前記搬送コンベヤ装置9の搬送力が働くように搬送物案内板13を設けたものである。この場合、搬送物案内板13は、搬送物を、前記搬送コンベヤ装置9側に案内する形状に構成して、搬送中の穀物に吸塵風の悪影響を避けながら、搬送物をコンベヤ側に適確に誘導する形状にして扱室3の供給部6に搬送するものとなっている。
【0018】
そして、請求項3の発明は、扱室3に軸架している扱胴5は、始端部のスパイラル胴4を、扱室3の選別受網14の始端部から搬送コンベヤ装置9の終端部側に近づくように突出させて設け、前記スパイラル胴4は、その下方に受継空間部15を形成した構成としている。したがって、受継空間部15に達した搬送物は、搬送コンベヤ装置9の終端部から離れると、スパイラル胴4が作用して扱胴5側に受け継がれ、適確に扱室3側に掻込み誘導される。
【0019】
以下、実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
まず、この出願の汎用コンバインは、主としてひまわりを収穫するものとして製造するものである。そして、汎用コンバインは、図1、及び図2に示すように、左右一対のクローラ18を装備した車台1上に、供給部6を前側にして脱穀装置2を搭載し、その供給部6に搬送コンベヤ装置9の搬送終端部を臨ませて、コンベヤ室10を接続して構成している。実施例では、上記搬送コンベヤ装置9は、図面に示すように、コンベヤ室10に内装して回動自由に軸架し、搬送終端部を扱室3の供給部6に臨ませ、搬送始端部を前側の掻込みオーガー8の背後に臨ませて設けた構成としている。そして、搬送コンベヤ装置9は、図1に示すように、コンベヤ始端部のドラム20にも、前記掻込みオーガー8と同様に掻込みフィンガー21を設けてひまわりの花托部を確実に掻き込む構成としている。
【0020】
そして、前記脱穀装置2は、図1に示すように、上部に扱胴5を前後方向に軸架して下側に選別受網14を張設した扱室3を配置し、その下側には、選別室22を設けて構成している。
【0021】
そして、前記扱胴5は、図面に示すように、下側の選別受網14と平行状態を保つ部位より前の始端部側にスパイラル胴4を形成して、前記扱室3の選別受網14の前端縁よりも前方側に突出させて設け、その下方部分に空間部を形成して受継空間部15とした構成としている。そして、実施例の場合、受継空間部15は、図面から解るように、すぐ前側に前記搬送コンベヤ装置9の搬送終端部を臨ませて配置した構成としている。
【0022】
したがって、搬送物は、搬送コンバヤ装置9の終端部分に達した後、更に前側から送られてくる後続のひまわり花托の搬送圧を受けながら押されて移動し、直接スパイラル胴4のスパイラルが作用する圏内に達して掻込まれ、受継がれて扱室3の供給部6から扱室3内に送り込まれる。
【0023】
つぎに、吸塵ファン11は、図1、及び図2に示すように、コンベヤ室10の中間部で上側の位置に配置して設け、室10内から扱室3に至る間の塵埃を吸塵して、側方に排塵する構成としている。そして、吸塵風案内板12と搬送物案内板13は、図1に示すように、上面で吸塵風を誘導案内する機能を持ち、下面で搬送物を誘導案内して搬送コンベヤ装置9に押し付けるような下向きの形状にして、前記吸塵ファン11の下方位置で、扱室3側に寄せた部位に取り付けて構成している。
【0024】
したがって、上記吸塵風案内板12は、上側の吸塵ファン11に吸塵風を誘導して確実な吸塵補助を行いながら、下側の搬送コンベヤ装置9によって搬送されている搬送物を乱すような風の流れをなくして、適確に吸塵風の誘導ができる特徴がある。そして、この場合、吸塵範囲は、吸塵ファン11が、コンベヤ室10の後部に繋がって連通している扱室3の始端部分にも働き、浮遊する塵埃を適確に吸塵することができる特徴がある。特に、ひまわりの種子は、比重が軽いために吸塵風を弱くすると、一番物に種子の皮が混入することが知られている。そのため、吸塵風は、弱くしないで搬送物に悪影響を与えないで、必要な吸塵作用ができるように、吸塵風案内板12を設けたものである。
【0025】
そして、搬送物案内板13は、搬送物を搬送コンベヤ装置9側に強制的に案内し、吸塵風による搬送物への悪影響をなくしたものであり、搬送物を適確に、扱室3の始端側に案内できる特徴がある。
【0026】
つぎに、図3に示す実施例は、上述した構成例とは異なり、吸塵ファン11の回転を逆方向に駆動して、圧風をコンベヤ室10に送り込んで扱室3側に向けて噴出す構成としている。そして、傾斜板25は、図3に示すように、圧風を搬送コンベヤ装置9側に流して搬送補助ができる構成としている。したがって、搬送物は、実施例の場合、図3に矢印に示すように、圧風作用を受けて扱室3側に強制的に送られ、軽い種子も一緒に送られる。そのため、実施例は、損傷粒やロスが軽減されて、一番に夾雑物が混入するのも減って選別精度が向上する利点がある。
【0027】
つぎに、刈取前処理装置26は、図1、及び図2に示すように、前記コンベヤ室10の搬送始端部に収集テーブル27を連結して設け、このテーブル27上に横向きにして横軸28に軸架した掻込みオーガー8を設けて構成している。そして、刈取前処理装置26は、図面に示すように、上記収集テーブル27の前側に刈取装置7を設け、この刈取装置7が刈り取った茎稈上部のひまわりの花托部(種子部)を、上記掻込みオーガー8が搬送過程で収集しながら、前記コンベヤ室10の搬送始端部に供給する構成としている。
【0028】
このように構成した刈取前処理装置26は、刈取装置7を高刈り位置にセットして前進走行しながら、ひまわりの上部にある花托部を刈り取って掻込みオーガー8によって収集し、コンベヤ室10の搬送始端部に供給するものである。そして、ひまわりの花托部は、既に説明したように、コンベヤ室10内を搬送コンベヤ装置9によって搬送されて扱室3に供給されて脱穀処理されるものである。
【0029】
つぎに、ひまわりの収穫作業時に使用する茎稈誘導バー30について実施例を説明する。
既に、広く知られているように、ひまわりは、長い茎稈の上部に集合した種子によって形成されている大きな花托部を有し、この花托部を収穫対象とすると共に、茎稈部も別に集めてバイオエタノールを抽出する等の加工処理を行う。
【0030】
しかしながら、従来の汎用コンバインは、ひまわりの長い茎稈を、前部上方の掻込みリール31が掻き込んで、長い茎稈と共に刈り取り、脱穀装置に供給することが多く花托部分のみを収穫することが困難な課題があった。
【0031】
まず、茎稈誘導バー30は、図4、及び図5に示すように、掻込みリール31を支持している左右リールアーム32,32の先端部分に連結して、その掻込みリール31の前側を迂回して一体の棒状に構成している。
【0032】
このように構成した茎稈誘導バー30は、車体1の前進に伴ってひまわりの茎稈の中間部から前側に押し倒す状態にして前進し、順次接触位置が上部に移り、下側後方の刈取装置7に長い茎稈の首部分が達して刈り取られることになる。そして、ひまわりの花托は、刈り取られると収集テーブル27上に載り、掻込みオーガー8側に掻き込まれる。このようにして、花托部は、一連の搬送系路を経由して脱穀装置2に達して脱穀されるが、そのとき、余分な茎稈部分が短いために、脱穀負荷が大幅に軽減されるばかりでなく、選別精度も向上する。更には、左右一対のリールアーム32,32は、図4に示すように、先端の自由端部分が茎稈誘導バー30で一体に連結される構成になるから、剛性が向上し、リールの回転、掻込み等に際して揺れが少なくなって安定した作用ができる特徴もある。
【0033】
つぎに、茎稈誘導バー30は、図6に示す実施例の場合、掻込みリール31の前後調節部33に連動ロット34で連結して設け、リール31を前方に調節すると高さ位置が下がり、逆に、後方に調節すると上がるように連動調節できる構成としている。
【0034】
したがって、実施例の場合、茎稈誘導バー30は、図6に実線と仮想線とで上下に示すように、ひまわりの茎稈丈に対応させて上下に調節しながら収穫作業ができる利点がある。このような調節によって、ひまわりは、茎稈丈の長短にかかわらず、花托から茎稈長さの略同じ様な位置(花托の首に相当する部位)が刈取装置7に誘導することができるから、花托からの刈取位置が揃って短く刈り取り収穫することができ、ロスが低減されて脱穀作用も安定する特徴がある。
【0035】
つぎに、茎稈誘導バー30は、図7に示すように、左右両側にひまわりの茎稈を外側に誘導できる外向きに傾斜させたナローガイド形状部30a(前側が狭く、後側が外側に広がる)を形成し、両側に接触してきた茎稈を外側に分草する構成としている。このように、図7に示す茎稈誘導バー30は、図面から解るように、両外側のナローガイド形状部30aがナローガイドとして働き、未刈茎稈側に誘導して脱粒や、茎稈の損傷を未然に防止できる特徴がある。
【0036】
つぎに、茎稈誘導バー30は、図8、及び図9に示すように、第一刈刃7(刈取装置7)と第二刈刃35(円板刈刃)とを結んだ仮想の前後方向直線ライン(A−A線)上に窪ませて茎稈を受け止める誘導凹部36を形成して、この部分に一株のひまわり茎稈のみを誘導できる構成としている。したがって、ひまわりは、多条に植えられていても、真ん中の一条のみが中央位置の誘導凹部36に誘導されて、車台1の前進に伴って、上部と下部とが第一刈刃7、及び第二刈刃35によって刈り取られることになる。
【0037】
このように、実施例の場合、ひまわりの茎稈は、上部(第一刈刃7)と下部(第二刈刃35)とが前後方向に揃った位置で刈り取られるから、刈跡が揃い、刈取後の放出状態も前後方向に揃って、後続する左右のクローラ18が踏み付けることもほとんどなく、整然とした地干列となる利点がある。
【0038】
なお、実施例の汎用コンバインは、図10、及び図11に示すように、左右クローラ18の内側に茎稈排除板38を設けて、刈取後の茎稈をクローラ18側に巻き込まないように排除する構成としている。そして、該茎稈排除版38,38は、図面に示すように、左右のクローラ18のすぐ内側において、クローラ18の全長に渡って設け、少なくとも転輪の高さより高く(図11参照)形成し、前端部をクローラ18の前端部の前側で外に曲げた誘導部38aを形成して刈取後に地干列となった茎稈を車台1の下側を通過するように誘導する構成としている。
【0039】
以上のように、左右クローラ18,18は、すぐ内側に茎稈排除板38,38を設け、更には、前部には外側に曲げた誘導部38aを形成して、刈取茎稈をクローラ18に踏み付けたり、巻き込まないように排除して、できる限り茎稈に損傷を少なくすることができるものとしている。このように、ひまわりの茎稈は、損傷の少ない状態で収穫しておくと、事後のバイオエタノールに転換する作業を支障なく行うことができる特徴がある。
【0040】
つぎに、茎稈誘導バー30は、図12、及び図13に示すように、左右両側にある分草杆40,40に両端部を接続連結して構成したものである。この場合、茎稈誘導バー30は、図面から解るように、リールアーム32,32に取り付けた実施例と比較すると、低い位置で茎稈を誘導できるから、穀稈丈の低いひまわりに対して有効である。そして、茎稈誘導バー30は、分草杆40,40に取り付ける部位に弾性素材を介して装着し、強い抵抗力に合うと、上側に逃げる構成にすると、作業中に下方から無理な力が働くと、上方に逃げることができて破損を未然に防止することができる。
【0041】
このように、茎稈誘導バー30は、低位置にある分草杆40,40の如く、低い位置に取り付けた場合には、茎稈の誘導位置が株元に近いから強い力が働くことが多く、安全に上方に退避できる構成にすれば、破損から護ることができる。
【0042】
つぎに、別実施例のひまわり収穫機について説明する。
まず、脱穀装置50は、図14、及び図15に示すように、左右一対のクローラ51を装備した車台52上に、ひまわり花托の供給口53を前側に位置させて搭載し、側部に収穫用タンク54を併設した構成としている。55は操縦座席を示している。そして、脱穀装置50は、前記供給口53の前側に、傾斜した供給漏斗56を設けて花托を供給口53を経由して扱室58に流し込むことができる構成としている。
【0043】
そして、供給漏斗56は、図16に示す実施例の場合、強制駆動する移送具57を装備した構成としており、このように構成すると、移送具57は、ひまわりの花托を確実に移送して扱室58に供給することができる。
【0044】
そして、刈取搬送装置60は、図面に示すように、車台52側に基部を上下回動自由に枢着して取り付けた刈取フレーム61の前部に、左右の分草杆62,62が設けられている。そして、株元挟持搬送装置63は、図14、及び図15に示すように、始端部が前記刈取フレーム61の前部に取り付け、平面視で横斜め後方で外側に向けて延長し、側面視で後部を高くした傾斜状態にし、茎稈の株元を挟持して後方に搬送する構成としている。
【0045】
つぎに、上部搬送装置65は、図面から解るように、ラグベルトと案内杆とで茎稈上部を係合状態で搬送する構成にして、前記株元挟持搬送装置63より間隔を隔てた上方に始端部を位置させ、終端部を前記供給漏斗56に上部まで延長して設けた構成としている。
【0046】
そして、第一刈刃66は、前記株元挟持搬送装置63の始端部の下方位置に装備し、前記上部搬送装置65の終端部分の下側位置に、第二刈刃67(この場合「切断装置」と同義語であって、第一に対する「第二刈刃」と呼ぶ)を装備した構成としている。この場合、第一刈刃66も第二刈刃67も共に、左右一対の回転板からなり、一方を刃縁とし、他方を係合縁にしてひまわりの茎稈を適確に切断できる構成としている。69はドロッパーを示している。
【0047】
なお、上記ドロッパー69は、株元挟持搬送装置63の終端部分と、上部搬送装置65、及び第二刈刃67より後方位置に設けるが、図17、及び図18に示す別の実施例のように、数本のガイド杆70を設ければ、上部の花托が刈り取られた後、落下してきたひまわり茎稈を確実にドロッパー69内に案内することができる利点がある。
【0048】
以上のように構成したひまわり収穫機は、前進に伴って株元を第一刈刃66で刈り取ったひまわりの茎稈を、株元挟持搬送装置63で株元を挟持して搬送し、上部は上部搬送装置65の搬送ラグによる係合によって搬送される。このような搬送過程において、ひまわりの茎稈は、順次株元側に引かれる状態で斜めになり、搬送の終端部分に達したとき、株元側に引き抜かれているから、花托の首部分が第二刈刃67に達して切断される。
【0049】
そして、上部の花托部分は、供給漏斗56、移送具57を経由して扱室58に供給されて脱穀処理され、茎稈部分は、ガイド杆70(図17、図18参照)上を滑って落下し、ドロッパー69に収集されて所定量に達すると地上にまとめて落下するのである。
【0050】
従来から、稲、麦のコンバインでは知られているように、ドロッパー69は、落下する茎稈をガイド杆70で集めて収集し、これをまとめて地面上に落下すると、事後の集める作業が楽になり、茎稈に損傷を負わすことが少ない特徴がある。
【0051】
そして、図17、及び図18に示すひまわり収穫機は、株元挟持搬送装置63を圃場面に対して略平行状態に設け、脱穀装置50に代えてコンテナ71を搭載した構成としている。そして、該収穫機は、側面視で傾斜している上部搬送装置65の終端上方に、第二刈刃67を軸架して設け、その上側に搬送ラグによって花托部を送る上部送りラグ72を設けた構成としている。73は落下案内板を示し、上部送りラグ72とコンテナ71との間に設けている。
【0052】
この構成によれば、株元挟持搬送装置63は、上部搬送装置65との間隔を長く取ることが可能であるから、ひまわりの長茎の品種の場合でも充分対応することができる特徴がある。そして、花托部は、首部分が切断されると、上部送りラグ72によって落下案内板73側に送られて、コンテナ71に送り込みができる。
【0053】
この場合、ひまわりの花托部は、第二刈刃67のすぐ上と下とに保持部(上部送りラグ72と上部搬送装置65)があって、茎稈が係止状態にあるから、適確な切断ができる利点もある。
【0054】
つぎに、ひまわり収穫機は、図19、及び図20に示すように、多条刈(実施例は2条刈)にした実施例について説明する。この場合、前部掻込み搬送ラグ装置75は、図面に示すように、平面視で左右から逆ハ字状に形成して後部で合流させ、その合流直前に第一刈刃66で刈取、2条の茎稈を合流させて後方上部に搬送する構成としている。そして、この収穫機は、2条のひまわり茎稈を一度に刈り取って収穫する構成が、主要部であって、合流後の構成については、既に説明した図14、及び図15の実施例、又は図17、及び図18の実施例と同様な構成となっている。
【0055】
このように多条刈の収穫機は、当然のことながら作業能率が大幅にアップし、一度の走行刈取で2条の茎稈列を刈り取るから、次回、回刈りしてくると、広い刈跡空間ができて長いひまわりの茎稈のドロッパー放出には都合が良い利点がある。
【0056】
そして、2条刈りひまわり収穫機は、図19に点線で示すように、通常、ひまわりは畝上に栽培されているから、車台1の左右クローラ51を畝上に載せて走行する構成にしている。したがって、収穫機は、車台1の傾きがほとんど起こらず、安定した走行と刈り取りができると共に、比較的高い位置で刈取ができるから、溝の走行時(1条刈の場合)に比較して、長い茎稈対応がやり易い利点がある。
【0057】
つぎに、ひまわりは、第二刈刃67で花托の首部を切断するとき、常に、花托の高さが揃うことが理想であって、花托側に残る茎稈を短くすることが望ましい。そこで、実施例のひまわり収穫機は、既に、図17、及び図18において、基本型を説明した収穫機であるが、この場合、図21、及び図22に示すように、株元挟持搬送装置63の後半部位に挟持をしない開放部77を一部に構成している。
【0058】
このように構成すると、株元挟持搬送装置63は、一連の挟持搬送径路の一部分に、搬送中の茎稈の挟持状態から開放する開放部77を形成したから、搬送中の茎稈が、第二刈刃67に達する直前で下方にずれ下がって上部の花托部位置が揃うことになる。したがって、搬送茎稈は、図22に作用を示すように、上部送りラグ72の上に花托部が揃って搬送され、すぐ下側の首部が第二刈刃67で切断され、適確に揃った状態で花托側に短い茎稈が残る状態に切断される特徴がある。
【0059】
つぎに、別実施例のひまわり収穫機は、図23、及び図24に示すように、クローラ51,51を装備した車台52上において、右側前部に操縦座席55を配置し、後部位置にコンテナ71の搭載台78を設け、操縦座席55の横側から前方に延長して刈取搬送装置60を設けた構成としている。
【0060】
そして、刈取搬送装置60は、図23、及び図24に示すように、レシプロ式の第一刈刃66を前部に配置し、その前側に複数の茎稈誘導杆79を配列して間に誘導溝を形成し、更に、第一刈刃66の後方には、掻込み輪体80を縦軸に軸受けして設け、その後方には、ベルトコンバヤ装置81を設けて構成している。
【0061】
そして、上記刈取搬送装置60は、図面に示すように、後部を車台52上の支持台82に回動自由に枢着して支持し、中間部位の下側に設けた昇降油圧シリンダ83によって、後部を回動支点にして前部が上下に調節できる構成としている。
【0062】
そして、刈取搬送装置60は、実施例の場合、上限が略水平な位置とし、以下、昇降油圧シリンダ83に作動範囲で下降できる構成としている。
67は第二刈刃を示している。
【0063】
そして、前記ベルトコンバヤ装置81は、終端部の後方位置に後方のコンテナ71側に傾斜した案内板85を設けて搬送されてきた花托をコンテナに落下供給する構成となっている。
【0064】
そして、ひまわり収穫機は、実施例の場合、前部の茎稈誘導杆79の誘導溝に摩擦抵抗部材86を装着して設け、誘導されてきたひまわりの茎稈を、前記摩擦抵抗部材86が前方側に押し倒しながら第一刈刃66側に誘導できる構成としている。
【0065】
したがって、ひまわりの茎稈は、車台52の前進に伴って、第一刈刃66に近づきながら下方に順次引き抜かれるように移動し、花托部に近い首部に相当する部分が刈り取られる。このように、実施例は、長茎品種でも、又は、茎稈の長さにバラツキがあっても、茎稈が稈身方向に引き抜かれながら移動して揃えられて花托の首部分が刈り取られることになる。
【0066】
そして、実施例に係る刈取搬送装置60は、前述のとおり、昇降油圧シリンダ83によってひまわりの茎稈丈に合わせて高さ調節を行いながら作業をするが、第二刈刃67は、低位置に固定されて刈取作業をしている。このように、第一刈刃66は、茎稈丈に対応して適確な刈り取りができ、一方の第二刈刃67は、常に、刈跡を短く刈り取りながら作業ができる特徴がある。
【0067】
そして、ひまわり収穫機は、収穫されてベルトコンベヤ装置81の終端部から案内板85を経由してコンテナ71に順次集められる。このように、実施例は、簡易な構成で低コストで製作できる利点があり、更に、コンテナ搭載台78上には複数のコンテナ71を載置できるから、これの交換をすれば連続的にひまわり収穫作業を続けることができる特徴がある。
【0068】
なお、刈取搬送装置60は、図24に仮想線で示すように、低刈り時は勿論のこと、収納時も低くできるから、周囲に対して安全に収納できる特徴もある。
つぎに、歩行用簡易型ひまわり収穫機について、図25、乃至図27に基づいて実施例を説明する。
【0069】
まず、車体フレーム90は、図26に示すように、前輪91,91と後輪92,92とを設けて枠組みし、後部にハンドル93を設け、中央部分に原動機94と伝動装置95とを搭載して構成している。96はコンテナであって、ハンドル93のすぐ前に配置している。
【0070】
つぎに、刈取搬送装置97は、図25、及び図27に示すように、前部から左右一対の分草案内杆98,98、円板刈刃99、99、掻込み輪体100,100、ベルトコンベヤ装置101の順に配置して一体に枠組み構成して、後部を前記車体フレーム90上の支持台102に上下回動自由に取り付けて設け、中間下部と車体フレーム90との間に昇降油圧シリンダ105を設けて上下調節可能に支持した構成としている。
【0071】
そして、実施例は、原動機94から伝動装置95を介して後部のベルトコンベヤ装置101に入力し、順次前方側に回転動力が伝動されて回転各部を駆動する構成としている。
以上のように、歩行用簡易型ひまわり収穫機は、文字通り軽量小型であるから、低コストで製作できると共に、小区画の圃場で小回りの効く作業ができる利点があり、小型四輪車で運搬可能な特徴がある。更に、該収穫機は、車体フレーム90を中央に配して低い位置に原動機94や伝動装置95を搭載し、前部の刈取搬送装置97と後部のコンテナ96の配置によって、機体の前後バランスが安定よく保たれ、安全な走行ができる特徴がある。
【0072】
そして、コンテナ96は、運転者のすぐ前に配置しているから、見易く、扱い易く走行中でも空コンテナとの交換が容易にできる特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】汎用コンバインの内部構造を示す側面図
【図2】汎用コンバインの平面図
【図3】汎用コンバインの内部構造を示す側面図
【図4】汎用コンバインの平面図
【図5】汎用コンバインの内部構造を示す側面図
【図6】主として茎稈誘導バーの作用側面図
【図7】汎用コンバインの平面図
【図8】汎用コンバインの平面図
【図9】汎用コンバインの側面図
【図10】汎用コンバインの平面図
【図11】汎用コンバインの側面図
【図12】汎用コンバインの平面図
【図13】汎用コンバインの側面図
【図14】ひまわり収穫機の平面図
【図15】ひまわり収穫機の内部構造を示す側面図
【図16】ひまわり収穫機の内部構造を示す側面図
【図17】ひまわり収穫機の平面図
【図18】ひまわり収穫機の側面図
【図19】ひまわり収穫機の平面図
【図20】ひまわり収穫機の側面図
【図21】ひまわり収穫機の平面図
【図22】ひまわり収穫機の側面図
【図23】ひまわり収穫機の平面図
【図24】ひまわり収穫機の作用側面図
【図25】歩行用簡易型ひまわり収穫機の平面図
【図26】歩行用簡易型ひまわり収穫機の車体フレームの平面図
【図27】歩行用簡易型ひまわり収穫機の側面図。
【符号の説明】
【0074】
1 車台 2 脱穀装置
3 扱室 4 スパイラル胴
5 扱胴 6 供給部
7 刈取装置 8 掻込みオーガー
9 搬送コンベヤ装置 10 コンベヤ室
11 吸塵ファン 12 吸塵風案内板
13 搬送物案内板 14 選別受網
15 受継空間部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車台(1)上に搭載した脱穀装置(2)の扱室(3)には、始端部をスパイラル胴(4)に形成した扱胴(5)を軸架して設け、該扱室(3)の供給部(6)には、前部に配置した刈取装置(7)や掻込みオーガ(8)に接続して設けた搬送コンベヤ装置(9)を内装したコンベヤ室(10)の終端部を臨ませて設け、該コンベヤ室(10)の中間上部に設けた吸塵ファン(11)は、前記扱室(3)の始端部分からコンベヤ室(10)の内部を経由して塵埃を吸塵する構成とし、該コンベヤ室(10)には、前記搬送コンベヤ装置(9)によって搬送中の搬送物に吸塵風が作用し難いように仕切る吸塵風案内板(12)を設けて風を誘導する構成とした汎用コンバイン。
【請求項2】
前記コンベヤ室(10)には、扱室(3)へ搬送する搬送物に対して、吸塵風が働かず、前記搬送コンベヤ装置(9)の搬送力が働く搬送物案内板(13)を設け、該搬送物案内板(13)は、搬送物を、前記搬送コンベヤ装置(9)側に案内する形状に構成した請求項1記載の汎用コンバイン。
【請求項3】
前記扱室(3)に軸架している扱胴(5)は、始端部のスパイラル胴(4)を、扱室(3)の選別受網(14)の始端部から搬送コンベヤ装置(9)の終端部側に近づくように突出させて設け、前記スパイラル胴(4)は、その下方に受継空間部(15)を形成して構成した請求項1記載の汎用コンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2007−28943(P2007−28943A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−214342(P2005−214342)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】