説明

無線タグ

【課題】小型化しても受信感度の良い無線タグを提供する。
【解決手段】アンテナコイル2とコンデンサ3とを備える共振回路4と、共振回路4と電気的に接続されるICチップ5と、を備える無線タグ1において、共振回路4及びICチップ5は、防水性の保護シート6により被覆されており、保護シート6の外側であって、アンテナコイル2の上下に配置され、上下方向に移動可能なバルク状の磁性部材7を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アンテナコイルとコンデンサからなる共振回路とIC(Integrated Circuit)チップとを備えて構成される無線タグが知られている(例えば、特許文献1−3)。無線タグは識別コード等の識別情報を記憶し、食品等の製品に備えられて、製品管理に役立つと期待されている。さらに、無線タグが患者に着用されることにより、患者の取り間違えなどによる医療ミスを防止するなどの医療分野での利用も期待されている。
【0003】
無線タグを製品や患者に備えるためには無線タグの小型化が必要となるが、無線タグを小型化すると受信感度が低下してしまうという問題がある。無線タグの受信感度は、共振回路の共振周波数を調整することにより行われる。共振回路の共振周波数はアンテナコイルの磁気抵抗とコンデンサの静電容量により決まっている。そこで、アンテナコイルの内側領域又はコイルと重なるカバーシート上に導電性材料又は磁性材料のシートを設けることによりアンテナコイルの磁気抵抗を変化させて、共振回路の共振周波数を調整するものが知られている(例えば、特許文献1)。
また、無線タグのICチップにデータを書き込んだり、ICチップに記憶されているデータを読み込むことができる無線タグリーダライタも知られている(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開2003−188765号公報
【特許文献2】特開2005−165880号公報
【特許文献3】特開2002−049902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、アンテナコイルに設けられる導電性材料及び磁性材料はシートであるため、小型化された無線タグにおいては、調整できる共振周波数の範囲は狭くなり、十分に受信感度を向上することができないという問題がある。また、アンテナコイルに導電性材料を設けるとその分、無線電波がアンテナコイルを通れなくなるため、結果として、無線タグの受信感度が低下してしまうという問題もある。
【0005】
本発明の課題は、小型化しても受信感度の良い無線タグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、アンテナコイルとコンデンサとを備える共振回路と、前記共振回路と電気的に接続されるICチップと、を備える無線タグにおいて、
前記共振回路及び前記ICチップは、防水性の保護シートにより被覆されており、
前記保護シートの外側であって、前記アンテナコイルの上下に配置され、上下方向に移動可能なバルク状の磁性部材を備えることを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の発明は、アンテナコイルとコンデンサとを備える共振回路と、前記共振回路と電気的に接続されるICチップと、を備える無線タグにおいて、
前記共振回路及び前記ICチップは、防水性の保護シートにより被覆されており、
前記保護シートの内側に、前記コンデンサに接続され、前記アンテナコイルの上面側又は下面側に前記アンテナコイルの中心軸を中心として対称な位置に配置される板状の固定電極と、
前記保護シートの外側に、前記アンテナコイルの中心軸を回転軸として回動可能に備えられる板状の可動電極と、を備えることを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載の発明は、アンテナコイルとコンデンサとを備える共振回路と、前記共振回路と電気的に接続されるICチップと、を備える無線タグにおいて、
前記アンテナコイルの上下に配置され、上下方向に移動可能なバルク状の磁性部材を備えることを特徴としている。
【0009】
請求項4に記載の発明は、アンテナコイルとコンデンサとを備える共振回路と、前記共振回路と電気的に接続されるICチップと、を備える無線タグにおいて、
前記コンデンサに接続され、前記アンテナコイルの上面側又は下面側に前記アンテナコイルの中心軸を中心として対称な位置に配置される板状の固定電極と、
前記アンテナコイルの中心軸を回転軸として回動可能に備えられる板状の可動電極と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、アンテナコイルの上下に配置され、上下方向に移動可能なバルク状の磁性部材を備えるので、当該磁性部材の上下方向の位置を調整することにより、アンテナコイルの磁気抵抗を調整でき、これにより共振回路の共振周波数を調整することができることとなって、無線タグの受信感度を調整することができる。
また、磁性部材はバルク状であるため、例えば、シート状のものに比べて、当該磁性部材の上下方向の位置を調整することによる共振回路の共振周波数の調整範囲が広く、無線タグを小型化することによって受信感度が低下してしまった場合でも、当該無線タグの受信感度を十分に向上させることができる。
また、共振回路及びICチップは防水性の保護シートにより被覆されているので、無線タグの使用範囲を広げることができ、例えば、医療分野など水に晒される可能性のある分野においても当該無線タグを使用することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、コンデンサに接続され、アンテナコイルの上面側又は下面側にアンテナコイルの中心軸を中心として対称な位置に配置される板状の固定電極と、アンテナコイルの中心軸を回転軸として回動可能に備えられる板状の可動電極と、を備えるので、可動電極を回動させることにより、可動電極と固定電極とが重なる面積を調整することができ、これによりコンデンサの静電容量を調整することができることとなって、無線タグの受信感度を調整することができる。
また、固定電極と可動電極の面積を所望の大きさにすることにより、コンデンサの静電容量の調整範囲を所望の範囲とすることができ、無線タグを小型化することによって受信感度が低下してしまった場合でも、可動電極と固定電極とが重なる面積を調整することにより、当該無線タグの受信感度を十分に向上させることができる。
また、共振回路及びICチップは防水性の保護シートにより被覆されているので、無線タグの使用範囲を広げることができ、例えば、医療分野など水に晒される可能性のある分野においても当該無線タグを使用することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、アンテナコイルの上下に配置され、上下方向に移動可能なバルク状の磁性部材を備えるので、当該磁性部材の上下方向の位置を調整することにより、アンテナコイルの磁気抵抗を調整でき、これにより共振回路の共振周波数を調整することができることとなって、無線タグの受信感度を調整することができる。
また、磁性部材はバルク状であるため、例えば、シート状のものに比べて、当該磁性部材の上下方向の位置を調整することによる共振回路の共振周波数の調整範囲が広く、無線タグを小型化することによって受信感度が低下してしまった場合でも、当該無線タグの受信感度を十分に向上させることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、コンデンサに接続され、アンテナコイルの上面側又は下面側にアンテナコイルの中心軸を中心として対称な位置に配置される板状の固定電極と、アンテナコイルの中心軸を回転軸として回動可能に備えられる板状の可動電極と、を備えるので、可動電極を回動させることにより、可動電極と固定電極とが重なる面積を調整することができ、これによりコンデンサの静電容量を調整することができることとなって、無線タグの受信感度を調整することができる。
また、固定電極と可動電極の面積を所望の大きさにすることにより、コンデンサの静電容量の調整範囲を所望の範囲とすることができ、無線タグを小型化することによって受信感度が低下してしまった場合でも、可動電極と固定電極とが重なる面積を調整することにより、当該無線タグの受信感度を十分に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図を参照して、本発明に係る無線タグを実施するための最良の形態を詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る無線タグ1は、例えば、図1,図2に示すように、アンテナコイル2,コンデンサ3等を備える共振回路4と、共振回路4と電気的に接続されるICチップ5と、共振回路4及びICチップ5を被覆する保護シート6と、保護シート6の外側であって、アンテナコイル2の上下に配置され、上下方向に移動可能なバルク状の磁性部材7,7と、保護シート6の外側を覆う樹脂部材8等を備えて構成されている。
【0016】
アンテナコイル2は、例えば、コイルが中心軸Pを中心に層状に巻回されて構成されており、アンテナコイル2の磁気抵抗が変化すると共振回路4の共振周波数が変化する。
【0017】
コンデンサ3は、例えば、アンテナコイル2と電気的に接続されており、コンデンサ3の静電容量が変化すると共振回路4の共振周波数が変化する。
【0018】
ICチップ5は、例えば、トランジスタ,抵抗,コンデンサ,ダイオード等が基板上に集積されてなる電子回路であって、無線タグ1が装着される物の識別情報等を記憶している。
【0019】
保護シート6は、例えば、ガラス又は合成樹脂等からなる防水シート等であって、無線タグ1の損傷を防ぐ。
【0020】
磁性部材7は、例えば、透磁率が高く機械強度が強い磁性材料等により成形され、より好ましくは、フェライトなどの人体に触れても酸化しない磁性材料により成形される。また、磁性部材7は、例えば、略円柱状に成形されており、その側面に雄ねじ(図示省略)が切ってあり、後述する樹脂部材8の穴部80の側面に切られた雌ねじ(図示省略)に螺合されるようになっている。
【0021】
樹脂部材8は、例えば、樹脂等が、保護シート6の周囲を覆うように、所定の形状に成形された部材である。本実施形態では、略直方体状に成形されたものを例示して示す。樹脂部材8が成形される大きさは、直径10mmの球体と同程度或いは直径10mmの球体より小さい大きさであることが望ましい。
また、樹脂部材8は、アンテナコイル2の上下に、磁性部材7が挿入される穴部80を備えている。
【0022】
穴部80は、その側面に、磁性部材7の側面に切られた雄ねじ(図示省略)に螺合する雌ねじ(図示省略)が切られている。そして、穴部80の所望の高さまで磁性部材7を挿入することにより、アンテナコイル2の磁気抵抗が調整されるようになっている。また、磁性部材7が穴部80に挿入される高さが調整された後、穴部80に接着剤等を流し入れて固めることにより、磁性部材7が穴部80に固定される。
【0023】
以上に説明した本発明の第1の実施形態に係る無線タグ1によれば、アンテナコイル2の上下に配置され、上下方向に移動可能なバルク状の磁性部材7を備えるので、当該磁性部材7の上下方向の位置を調整することにより、アンテナコイル2の磁気抵抗を調整でき、これにより共振回路4の共振周波数を調整することができることとなって、無線タグ1の受信感度を調整することができる。
また、磁性部材7はバルク状であるため、例えば、シート状のものに比べて、当該磁性部材7の上下方向の位置を調整することによる共振回路4の共振周波数の調整範囲が広く、無線タグ1を小型化することによって受信感度が低下してしまった場合でも、当該無線タグ1の受信感度を十分に向上させることができる。
また、共振回路4及びICチップ5は防水性の保護シート6により被覆されているので、無線タグ1の使用範囲を広げることができ、例えば、医療分野など水に晒される可能性のある分野においても当該無線タグ1を使用することができる。
【0024】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る無線タグ100は、例えば、図3に示すように、磁性部材7が備えられず、固定電極9,9、可動電極10,樹脂部材11の構成のみが第1の実施形態に係る無線タグ1と異なるので、同一の構成については同一の符号を付すとともに、その説明を省略する。
【0025】
第2の実施形態に係る無線タグ100は、例えば、図3に示すように、アンテナコイル2,コンデンサ3等を備える共振回路4と、共振回路4と電気的に接続されるICチップ5と、共振回路4及びICチップ5を被覆する保護シート6と、保護シート6の外側を覆う樹脂部材11等を備えて構成されている。
【0026】
また、第2の実施形態に係る無線タグ100は、例えば、図3に示すように、固定電極9,9,可動電極10等を備えて構成される。
【0027】
固定電極9,9は、例えば、台形形状の板状の電極であって、保護シート6の内側において、コンデンサ3に電気的に接続され、アンテナコイル2の上面側にアンテナコイル2の中心軸Pを中心として対称な位置に配置されている。なお、固定電極9の形状は、台形形状に限られるものではない。
【0028】
可動電極10は、例えば、長尺な矩形形状の板状の電極であって、保護シート6の外側において、アンテナコイル2の中心軸Pを回転軸として回動可能に備えられている。そして、可動電極10が回動されることにより、固定電極9,9と可動電極10とが重なり合う面積が変化し、当該面積を所望の面積となるように可動電極10を回動させることにより、コンデンサ3の静電容量が調整されるようになっている。また、可動電極10の回動角度が調整された後、当該可動電極10は接着剤により固定され、保護シート6の外側が樹脂部材11により覆われる。
【0029】
以上に説明した本発明の第2の実施形態に係る無線タグ100によれば、コンデンサ3に接続され、アンテナコイル2の上面側にアンテナコイル2の中心軸Pを中心として対称な位置に配置される板状の固定電極9,9と、アンテナコイル2の中心軸Pを回転軸として回動可能に備えられる板状の可動電極10と、を備えるので、可動電極10を回動させることにより、可動電極10と固定電極9,9とが重なる面積を調整することができ、これによりコンデンサ3の静電容量を調整することができることとなって、無線タグ100の受信感度を調整することができる。
また、固定電極9,9と可動電極10の面積を所望の大きさにすることにより、コンデンサ3の静電容量の調整範囲を所望の範囲とすることができ、無線タグ100を小型化することによって受信感度が低下してしまった場合でも、可動電極10と固定電極9,9とが重なる面積を調整することにより、当該無線タグ100の受信感度を十分に向上させることができる。
また、共振回路4及びICチップ5は防水性の保護シート6により被覆されているので、無線タグ100の使用範囲を広げることができ、例えば、医療分野など水に晒される可能性のある分野においても当該無線タグ100を使用することができる。
【0030】
なお、無線タグ1及び100は、直径10mmの球体程度の大きさ或いは直径10mmの球体より小さいに成形されればよく、指輪に成形されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る無線タグを示す平面図(図1(a))及び側面図(図1(b))である。
【図2】本発明に係る無線タグを示す斜視図である。
【図3】本発明に係る無線タグを示す平面図(図3(a))及び図3(a)におけるB‐B矢視側面図(図3(b))である。
【符号の説明】
【0032】
1,100 無線タグ
2 アンテナコイル
3 コンデンサ
4 共振回路
5 ICチップ
6 保護シート
7 磁性部材
9 固定電極
10 可動電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナコイルとコンデンサとを備える共振回路と、前記共振回路と電気的に接続されるICチップと、を備える無線タグにおいて、
前記共振回路及び前記ICチップは、防水性の保護シートにより被覆されており、
前記保護シートの外側であって、前記アンテナコイルの上下に配置され、上下方向に移動可能なバルク状の磁性部材を備えることを特徴とする無線タグ。
【請求項2】
アンテナコイルとコンデンサとを備える共振回路と、前記共振回路と電気的に接続されるICチップと、を備える無線タグにおいて、
前記共振回路及び前記ICチップは、防水性の保護シートにより被覆されており、
前記保護シートの内側に、前記コンデンサに接続され、前記アンテナコイルの上面側又は下面側に前記アンテナコイルの中心軸を中心として対称な位置に配置される板状の固定電極と、
前記保護シートの外側に、前記アンテナコイルの中心軸を回転軸として回動可能に備えられる板状の可動電極と、を備えることを特徴とする無線タグ。
【請求項3】
アンテナコイルとコンデンサとを備える共振回路と、前記共振回路と電気的に接続されるICチップと、を備える無線タグにおいて、
前記アンテナコイルの上下に配置され、上下方向に移動可能なバルク状の磁性部材を備えることを特徴とする無線タグ。
【請求項4】
アンテナコイルとコンデンサとを備える共振回路と、前記共振回路と電気的に接続されるICチップと、を備える無線タグにおいて、
前記コンデンサに接続され、前記アンテナコイルの上面側又は下面側に前記アンテナコイルの中心軸を中心として対称な位置に配置される板状の固定電極と、
前記アンテナコイルの中心軸を回転軸として回動可能に備えられる板状の可動電極と、を備えることを特徴とする無線タグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−133651(P2007−133651A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325979(P2005−325979)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】