説明

無線通信装置

【課題】 ダイバーシティ受信を採用している携帯電話機等の無線通信機において、通話状態に生じるインピーダンスの不整合を短時間で解消し、かつ、安定したダイバーシティ受信動作を行ない、通信品質の劣化を軽減できる無線通信装置を提供する。
【解決手段】 ダイバーシティ受信動作する複数のアンテナ素子11A,11Bと、インピーダンスを調整しアンテナを整合する、アンテナ素子11A,11Bに接続した可変整合部12A,12Bと、アンテナ素子11A,11Bからの受信信号の受信電力を検出する受信電力検出部14と、受信電力検出部14により検出された値が最大となるように可変整合部12A,12Bを制御する制御部16とを備え、それぞれのアンテナ素子11A,11Bに対して、制御部16による可変整合部12A,12Bの制御が完了し、アンテナ素子が整合状態となった後の受信電力によって受信アンテナの選択を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機等の無線通信装置に係り、特にダイバーシティ受信を行なう無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等の移動無線端末機は、さまざまな電波が存在する多重波環境において使用される。また、この移動無線端末機は、移動を伴って使用されるため、受信電力の大きな変動を生じているが、これによる通信品質の劣化を防ぐため、ダイバーシティ受信を採用している。このダイバーシティ受信とは、複数のアンテナで受信し、受信電力の高い方のアンテナを受信アンテナとして選択する方法のことである。
【0003】
図8は、移動無線端末機の一例として携帯電話機を示している。この携帯電話機は、筐体101に、一方のアンテナとしてヘリカルアンテナ102と、他方のアンテナとして板状逆Fアンテナ103が装荷されており、ダイバーシティ受信を行なっている。
【0004】
次に、図9は、図8における携帯電話機に備える従来のアンテナ部分の回路構成を示すブロック図である。この携帯電話機には、ヘリカルアンテナである第1アンテナ201Aと、板状逆Fアンテナである第2アンテナ201Bとを備えており、それぞれ、整合回路部202A、202Bを介してアンテナ切り替えスイッチ203及び無線受信部204に接続されている。このような構成の携帯電話機では、通常、使用周波数において、自由空間で共振するように整合回路部202A、202Bが決定される。一例として、自由空間におけるヘリカルアンテナのVSWR(Voltage Standing Wave Ratio)の周波数特性を、図10に示している。
なお、VSWRとは電圧定在波比の略であり、この値が小さいほど次段の回路へ効率よく電力を伝送できる。また、VSWRの最小値は1である。ここでは、使用周波数を847.5MHzとし、使用周波数においてVSWRが約1.3と整合状態となっている。
【0005】
図11は、さまざまな電波が存在する多重波環境における、整合状態にあるアンテナの受信電力を示している。なお、横軸は時間、縦軸は受信電力を示しており、実線が第1アンテナ(図中、アンテナ1で示す)であるヘリカルアンテナにおける受信電力、破線が第2アンテナ(図中、アンテナ2で示す)である板状逆Fアンテナにおける受信電力、太線がアンテナ選択後の受信電力を示している。ダイバーシティ受信によりアンテナ選択後は、安定した高い受信電力を確保できる。また、この簡易なダイバーシティ受信の方法の一例については、例えば特許文献1などに開示されている。
【0006】
ところで、通話状態の際にアンテナ素子と使用者(人体)との距離が近いと、使用周波数においてインピーダンスが整合状態からずれて不整合状態となるおそれがある。また、この不整合損失が増大すると、受信電力が下がり、通信品質が大幅に劣化する、という不具合が起きる。
【0007】
図12と図13は、それぞれ、携帯電話機における通話状態を使用者の正面から示した図と側面から示した図である。
ここで、通話状態とは、携帯電話機の筐体301を手で保持し、レシーバからの音が聞こえるように筐体に開けられたレシーバ音孔部302を耳に当て、マイクへ音が到達しやすいように、つまり筺体に開けられたマイク音孔部303が口元にくるように、筺体301を地面に垂直方向から60°傾けた状態のことである。なお、図中符号304はヘリカルアンテナである第1アンテナを示し、305は板状逆Fアンテナである第2アンテナを示す。また、第1、第2アンテナ304、305と人体との距離とは、通話状態において、第1、第2アンテナ304、305の給電部と耳を含む人体頭部の最も近い距離のことであり、図12において、人体との距離はSp1、Sp2で示している部分に相当する。
【0008】
次に、図14は、従来のヘリカルアンテナの通話状態におけるVSWRの周波数特性の一例を示している。これによれば、アンテナの共振周波数が使用周波数からずれ、使用周波数におけるVSWRが約9.3となっている。なお、ずれたインピーダンスを整合させる方法については、例えば特許文献2などに開示されている。
【特許文献1】特開2000−324030号公報
【特許文献2】特開2001−274652号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、インピーダンスを整合させる制御処理の途中では、例えば特許文献2における定数可変整合回路の回路定数をさまざまな値に変化させるため、制御処理完了前にダイバーシティ判定を行なうと、受信電力が改善されず安定した通信品質が確保できない場合がある。例えば図15には、従来の携帯電話機での通話状態において、インピーダンス整合制御処理完了前のアンテナにおける受信電力の変化を示している。これによれば、アンテナ選択後の受信電力が整合状態のアンテナと比較して大幅に下がり、通信品質が劣化する不具合を生じることが分かる。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ダイバーシティ受信の際、通話状態中に生じるインピーダンスの不整合を短時間で解消し、かつ、安定したダイバーシティ受信動作を行ない、通信品質の劣化を軽減できる無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の無線通信装置は、ダイバーシティ受信動作する複数のアンテナ素子と、インピーダンスを調整しアンテナを整合する、前記各アンテナ素子に接続した可変整合手段と、前記各アンテナ素子からの受信信号の受信電力又は受信感度のうち少なくともいずれか一方を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された検出結果に基づいて前記可変整合手段を制御する制御手段と、前記各アンテナ素子に対する前記制御手段による前記可変整合手段の制御が完了し、前記アンテナ素子が整合状態となった後の受信電力によって受信アンテナの選択を行なう手段とを備えたことを特徴とする。この構成によれば、検出手段では、インピーダンスが整合か不整合かを検出しており、インピーダンスが不整合となっているときには、可変整合手段を制御する。従って、それぞれのアンテナ素子に対してインピーダンス整合状態とすることができ、それぞれのアンテナ素子に対する制御が完了した後の受信電力を比較し、受信アンテナの選択を行なうことにより、受信アンテナ選択後の受信電力を高く保ち、安定したダイバーシティ受信を行ない、通信品質の劣化を抑えることができる。
【0012】
また、前記可変整合手段は、可変容量素子を含むことを特徴とする。この構成によれば、検出手段では、インピーダンスが整合か不整合かを検出しており、インピーダンスが不整合となっているときには、可変容量素子を制御する。従って、それぞれのアンテナ素子に対してインピーダンス整合状態とすることができ、それぞれのアンテナ素子に対する制御が完了した後の受信電力を比較し、受信アンテナの選択を行なうことにより、受信アンテナ選択後の受信電力を高く保ち、安定したダイバーシティ受信を行ない、通信品質の劣化を抑えることができる。
【0013】
また、前記各アンテナ素子が整合状態となる前記可変容量素子の容量値またはその容量値を与える電圧値を記憶した記憶手段を備えるとともに、前記制御手段は、前記可変容量素子を制御する際に、前記記憶手段から読み出した前記容量値または前記電圧値の制御情報を用いて前記可変容量素子の制御を行なうことを特徴とする。この構成によれば、インピーダンスが不整合となっているときには、例えば、前記記憶手段から読み出した制御情報を用いて可変容量素子を制御することにより、短時間にインピーダンス整合状態とすることができ、インピーダンスの不整合による電力損失を低減することができる。
【0014】
また、前記制御手段は、一方のアンテナ素子で受信し、前記検出手段により検出された前記受信電力又は受信感度のうち少なくともいずれか一方の値の制御処理を完了し、そのときの前記容量値または前記電圧値の制御情報のうち前記いずれか一方の制御情報に対応する他方のアンテナ素子における制御情報を前記記憶手段から読み出し、その読み出した制御情報を用いて、前記他方のアンテナ素子で受信し、前記検出手段により検出された値の制御をすることを特徴とする。この構成によれば、前記他方のアンテナ素子をインピーダンス整合状態とするまでの時間を大幅に短縮することができる。
【0015】
また、前記記憶手段は、人体との距離に対して前記アンテナ素子が整合状態となる制御情報を予め記憶し、前記制御手段は、前記記憶手段に記憶されたいずれかの制御情報を初期制御情報として制御処理を開始することを特徴とする。この場合は、インピーダンスのずれが小さい状態で制御処理を開始することができ、インピーダンス整合状態とするまでに要する時間を短縮できる。
【0016】
また、前記アンテナ素子が現在どのような状態にあるかの情報を前記制御手段に入力する入力手段を具備することを特徴とする。この構成によれば、ユーザーにより入力された情報に対応する、記憶手段に予め記憶された初期値を読み出すことにより、インピーダンスのずれが小さい状態で制御処理を開始することになり、インピーダンス整合状態とするまでに要する時間を短縮できる。
【0017】
また、前記可変容量素子は、可変容量コンデンサで構成するとともに前記制御情報を当該可変容量コンデンサの容量値とするか、若しくは、可変容量ダイオードで構成するとともに前記制御情報を当該可変容量ダイオードに印加する制御電圧値とすることを特徴とする。この構成によれば、可変容量素子を可変容量コンデンサまたは可変容量ダイオードとし、容量値または制御電圧でそれぞれ制御することにより、簡易にインピーダンス整合状態とすることができる。
【0018】
また、前記可変容量素子は、容量の異なる複数のキャパシタと、前記複数のキャパシタを選択的に切り替えるスイッチ手段とを具備することを特徴とする。この構成によれば、容量の異なる複数のキャパシタを選択的に切り替えることにより、整合状態となる容量を連続的ではなく離散的に探索するので、短時間でインピーダンス整合状態とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ダイバーシティ受信動作させる各アンテナ素子に、インピーダンスを調整しアンテナを整合させる可変容量素子を含む可変整合手段をそれぞれ接続し、アンテナ素子からの受信信号の受信電力又は受信感度の少なくともいずれかの値が最大となるように制御を行ない、それぞれのアンテナに対する制御が完了した後の受信電力により受信アンテナの選択を行なうことによって、通話状態で生じるインピーダンスの不整合による受信電力の劣化を抑え、安定した通信品質を確保することができる無線通信装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態について、図1〜図3を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係る第1の実施形態に用いられる無線通信装置の回路ブロック構成を示す図であり、本実施形態の無線装置は、アンテナ素子11A、11Bと、可変整合手段である可変整合部12A、12Bと、アンテナ切り替えスイッチ13と、受信電力の検出手段である受信電力検出部14と、無線受信部15と、制御手段である制御部16とを備えている。
【0021】
このうち、アンテナ素子11A、11Bは、それぞれ、可変整合部12A、12Bを介してアンテナ切り替えスイッチ13に接続されている。無線受信部15は、受信電力検出部14を介してアンテナ切り替えスイッチ13に接続されている。また、制御部16は、受信電力検出部14に接続されている。
【0022】
可変整合部12A、12Bは、それぞれ、可変容量素子121A及び122A、可変容量素子121B及び122Bで構成されており、可変容量素子121A及び122A、可変容量素子121B及び122Bを制御してアンテナ素子11A、11Bが整合状態となるように、インピーダンスを調整する。
【0023】
アンテナ切り替えスイッチ13は、アンテナ素子11A、11Bの何れか一方が無線受信部15につながるようにアンテナ素子を切り替える。
【0024】
受信電力検出部14は、アンテナ素子11A、11Bで受信した受信用周波数frの信号(これを、受信信号とよぶ)の電力(これを、「受信電力」とよぶ)を検出し、この受信電力検出部14に含まれる検波ダイオードが受信電力を検波したときの電圧値を制御部16に出力する。
【0025】
無線受信部15は、アンテナ素子11A、11Bで受信された受信用周波数frの信号にA/D変換、復調、復号等の受信処理を行なう。
【0026】
制御部16は、受信電力検出部14に含まれる検波ダイオードが受信電力を検波したときの電圧値が最大になるように、それぞれ、可変容量素子121A、122A、可変容量素子121B、122Bの容量値Cp1、Cs1、容量値Cp2、Cs2を制御する。これにより、アンテナ素子11A、11Bについて、インピーダンス整合をとることができる。
【0027】
次に、制御部16における処理手順について説明する。
(1)アンテナ切り替えスイッチ13により、アンテナ素子11A側が無線受信部15につながるように切り替える。
(2)その後、受信電力検出部14に含まれる検波ダイオードが受信電力を検波したときの電圧値を測定し、その電圧値を制御部16に送る。
(3)制御部16では、可変容量素子121A及び122Aの容量値Cp1、Cs1を変化させて、可変容量素子121A及び122Aの容量値Cp1、Cs1を設定する。
(4)上記の(2)〜(3)を繰り返して、受信電力検出部14で検出された電圧値が最大となるように、制御部16において制御処理を行なう。
(5)これにより、アンテナ素子11Aにおける制御処理が完了する。このとき、アンテナ素子11Aにおいて、図2のようにインピーダンス整合状態になる。
【0028】
(6)次に、アンテナ切り替えスイッチ13により、アンテナ素子11B側が無線受信部15につながるように切り替える。
(7)その後、受信電力検出部14では、アンテナ素子11Aのときと同様に、この受信電力検出部14に含まれる検波ダイオードが受信電力を検波したときの電圧値を測定し、その電圧値を制御部16に送る。
(8)制御部16では、可変容量素子121B及び122Bの容量値Cp2、Cs2を変化させて、可変容量素子121B及び122Bの容量値Cp2、Cs2を設定する。
(9)上記の(7)〜(8)を繰り返して、受信電力検出部14で検出された電圧値が最大となるように、制御部16において制御処理を行なう。
(10)これにより、アンテナ素子11Bにおける制御処理が完了する。このとき、アンテナ素子11Bにおいて、アンテナ素子11Aと同様にインピーダンス整合状態になる。
(11)ここで、(5)における受信電力の値と、(10)における受信電力の値を比較し、大きい方のアンテナ素子を受信アンテナとして選択し、アンテナ切り替えスイッチ13を切り替える。
【0029】
このように、本実施形態によれば、制御部16における処理を行なうことにより、通話状態においても、それぞれのアンテナ素子11A、11Bがインピーダンス整合状態になり、不整合による受信電力の劣化を抑えることができる。これにより、図3のように、ダイバーシティ受信における受信電力を高く保つことができ、良好な通信品質を確保することができる。
【0030】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について、図4、図5を用いて詳細に説明する。
図4は、本発明に係る第2の実施形態に係る無線通信装置の回路ブロック構成を示す図であり、本実施形態の無線通信装置は、第1の実施形態と同様に、アンテナ素子21A、21Bと、可変整合手段である可変整合部22A、22Bと、アンテナ切り替えスイッチ23と、受信電力の検出手段である受信電力検出部24と、無線受信部25と、制御手段である制御部26とを備えるとともに、これ以外にさらに、記憶部27を備えている。
【0031】
このうち、本実施形態の制御部26は、受信電力検出部24と、記憶部27とに接続されている。また、この制御部26は、第1の実施形態と同様、受信電力検出部24に含まれる検波ダイオードが受信電力を検波したときの電圧値を測定する。そして、この測定結果に基づいて、記憶部27に記憶されている容量値を初期値として受信電力を検波した電圧値が最大となるように、可変容量素子221A、222A、可変容量素子221B、222Bの容量値Cp1、Cs1、容量値Cp2、Cs2を制御する。これにより、アンテナ素子21A、21Bについて、インピーダンス整合をとることができる。
【0032】
なお、本実施形態において、アンテナ素子21A、21B、可変整合手段である可変整合部22A、22B、アンテナ切り替えスイッチ23、受信電力検出部24、及び無線受信部25は、第1の実施形態のものと同様の構成であるので、その詳しい説明も省略する。
【0033】
一方、記憶部27には、アンテナと人体との距離に対してインピーダンス整合する、可変容量素子221A、222A、可変容量素子221B、222Bの容量値(制御情報)が予め記憶されている。また、この記憶部27には、可変容量素子221A、222A、可変容量素子221B、222Bの容量値の初期値も記憶されている。初期値の一例としては、自由空間においてインピーダンス整合する、可変容量素子221A、222A、可変容量素子221B、222Bの容量値が記憶される。これらの値は、携帯電話機の工場出荷前の実験において、決定され記憶される。
【0034】
ここで、記憶部27について、さらに具体的に説明する。
図5は、記憶部27に記憶された人体(使用者)とアンテナ素子21A、21Bとの距離に対してインピーダンス整合する可変容量素子の容量値を示す図である。この記憶部27には、受信周波数frにおいてインピーダンス整合する、可変容量素子221A、222A、可変容量素子221B、222Bの容量値が予め記憶されている。
【0035】
次に、制御部26における処理手順について説明する。
(1)初めに、アンテナ切り替えスイッチ23により、アンテナ21A側が無線受信部25につながるように切り替え、記憶部27から可変容量素子221A、222Aの初期値を読み出して、可変容量素子の容量値Cp1及びCs1を設定する。
(2)この状態で、受信電力検出部24は、受信電力を、この受信電力検出部14に含まれる検波ダイオードにより検波したときの電圧値を測定し、その電圧値を制御部26に出力する。
(3)制御部26では、可変容量素子221A及び222Aの容量値を変化させて、可変容量素子221A及び222Aの容量値Cp1、Cs1を設定する。
(4)ここで、上記(2)〜(3)を繰り返して、受信電力検出部24で受信電力を検波した電圧値が最大となるように、制御部26において制御処理を行なう。
(5)これにより、アンテナ素子21Aにおける制御処理が完了する。このとき、アンテナ素子21Aにおいて、インピーダンス整合状態になる。
【0036】
(6)次に、アンテナ切り替えスイッチ23により、アンテナ素子21B側が無線受信部25につながるように切り替える。図5より、(5)でアンテナ素子21Aがインピーダンス整合状態となった可変整合部22Aにおける最適容量値に対応する人体とアンテナ素子21A、21Bとの距離を割り出し、その人体とアンテナ素子21A、21Bとの距離に対応する可変整合部22Bにおける容量値を読み出し、初期値として、可変容量素子221B及び222Bの容量値Cp2、Cs2を設定する。
(7)この状態で、受信電力検出部24で受信電力を検波した電圧値を測定し、値を制御部26に送る。
(8)制御部26では、可変容量素子221B及び222Bの容量値を変化させて、可変容量素子221B及び222Bの容量値Cp2、Cs2を設定する。
(9)上記の(7)〜(8)の動作を繰り返して、受信電力検出部24で受信電力を検波した電圧値が最大となるように、制御部26において制御処理を行なう。
(10)これにより、アンテナ素子21Bにおける制御処理が完了する。このとき、アンテナ素子21Bにおいて、インピーダンス整合状態になる。
(11)ここで、(5)における受信電力の値と、(10)における受信電力の値を比較し、大きい方のアンテナ素子を受信アンテナとして選択し、アンテナ切り替えスイッチ23を切り替える。
【0037】
このように、本実施の形態によれば、制御部26における処理を行なうことにより、通話状態においても、それぞれのアンテナ素子がインピーダンス整合状態になり、不整合による受信電力の劣化を抑えることができる。これにより、ダイバーシティ受信における受信電力を高く保つことができ、良好な通信品質を確保することができる。
【0038】
さらに、何れか一方のアンテナ素子アンテナ素子21Aまたは21Bの可変整合部22Aまたは22Bにおいてインピーダンス整合状態としたときの容量値に対応する他方のアンテナ素子の可変整合部における容量値を、他方のアンテナにおける制御処理の初期値とすることにより、最適値との差が小さい初期値から制御処理を始めることになり、インピーダンス整合状態とするまでに要する時間を短縮することができる。
【0039】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態について、図6を用いて詳細に説明する。
図6は、本発明の第3の実施形態に係る無線通信装置の回路構成を示すブロック図であり、この無線通信装置は、第2の実施形態と同様、アンテナ素子31A、31Bと、可変整合手段である可変整合部32A、32Bと、アンテナ切り替えスイッチ33と、受信電力の検出手段である受信電力検出部34と、無線受信部35と、制御手段である制御部36と、記憶部37とを備えるほかに、本実施形態では、さらに入力部38を備えている。
【0040】
このうち、本実施形態の制御部36には、受信電力検出部34と、記憶部37と、ユーザーが現在の状態を入力できる入力部38が接続されている。この制御部36は、後述する入力部38から通知された内容に応じて、記憶部37に記憶された容量値を読み出し、この読み出した容量値を初期値として制御に用いる。なお、制御部36における処理は、第2の実施形態と同様なので、その詳しい説明は省略する。また、本実施形態において、アンテナ素子31A、31B、可変整合手段である可変整合部32A、32B、アンテナ切り替えスイッチ33、受信電力検出部34、及び無線受信部35は、第1の実施形態のものと同様の構成であるので、その詳しい説明も省略する。
【0041】
記憶部37は、第2の実施形態と同様に、アンテナと人体との距離に対してインピーダンス整合する、可変容量素子321A、322A、可変容量素子321B、322Bの容量値(制御情報)が予め記憶されている。また、この記憶部37には、可変容量素子321A、322A、可変容量素子321B、322Bの容量値の初期値も記憶されている。初期値の一例としては、第2の実施形態と同様に、自由空間または通話状態においてインピーダンス整合する、可変容量素子321A、322A、可変容量素子321B、322Bの容量値が記憶される。通話状態の場合の初期値は、複数の被験者による実験で、アンテナ素子と人体との距離の平均を取り、その距離に対してインピーダンス整合する容量値が記憶される。これらの値は、携帯電話機の工場出荷前の実験において、決定され記憶される。
【0042】
入力部38は、スイッチやボタン等を備えており、ユーザーやボタン等がスイッチを切り替えることにより、アンテナ素子31A、31Bが自由空間または通話状態のいずれの状態であるかを制御部606に通知する。
【0043】
このように本実施形態によれば、通話状態においてインピーダンス整合となる容量を初期値として予め用意し、状態に応じて初期値を選択し、選択した初期値を用いて制御処理を行なう。これにより最適値との差が小さい初期値から制御処理を始めることになり、インピーダンス整合状態となるまでに要する時間を短縮することができ、安定した通信品質を確保できる。
【0044】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態について、図7を用いて詳細に説明する。
本実施形態では、アンテナ素子41A、41Bと接続する可変整合手段である可変整合部42A、42Bの構成が、第1の実施形態〜第3の実施形態と異なる。なお、本実施形態でも、アンテナ切り替えスイッチ43と、以下、何れも図示しないが、受信電力の検出手段である受信電力検出部と、無線受信部と、制御手段である制御部と、記憶部と、入力部を備える。
【0045】
アンテナ素子41A、41Bは、それぞれ可変整合部42A、42Bを介してアンテナ切り替えスイッチ43に接続されている。
【0046】
可変整合部42Aは、可変容量素子として、それぞれ異なる容量値Cpa1〜CpaN、Csa1〜CsaNを持つ複数のキャパシタ421A・・・、422A・・・と、切り替えスイッチS1A、S2Aで構成されており、切り替えスイッチS1A、S2Aのオンオフでアンテナ素子41Aが整合状態となるように、インピーダンスを調整する。
【0047】
同様に、可変整合部42Bは、可変容量素子として、それぞれ異なる容量値Cpb1〜CpbN、Csb1〜CsbNを持つ複数のキャパシタ421B・・・、422B・・・と、切り替えスイッチS1B、S2Bとで構成されており、切り替えスイッチS1B、S2Bのオンオフでアンテナ素子41Bが整合状態となるように、インピーダンスを調整する。なお、ここでは、オンする切り替えスイッチS1A、S2A、S1B、S2Bが制御情報に相当する。
【0048】
なお、第4実施形態における回路構成は、可変容量素子として複数のキャパシタと切り替えスイッチを用いていること以外は、第3の実施形態と同様なので、その詳しい説明は省略する。また、制御部における処理は、記憶部に予め記憶されている制御情報がオンする切り替えスイッチS1A、S2A、S1B、S2Bであること以外は、第3の実施形態と同様なので、その詳しい説明は省略する。
【0049】
上記のように、本実施形態によれば、アンテナ素子と人体(使用者)との距離に対してインピーダンス整合状態となる、つまりオンする切り替えスイッチを記憶部において予め記憶し、制御の際には記憶部から読み出し、切り替えスイッチを制御し、接続するキャパシタを切り替えることによって、整合状態となる容量を連続的ではなく離散的に探索する。従って、インピーダンス整合状態となるまでに要する時間を短縮することができ、安定した通信品質を確保できる。
【0050】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施し得るものである。例えば、上述した各実施形態において、受信信号の電力を検出したが、本発明はこれに限らず、受信信号、受信感度のいずれかを検出するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の通信端末装置は、ダイバーシティ受信動作させるアンテナ素子に、インピーダンスを調整しアンテナを整合させる可変容量素子を含む可変整合手段を接続し、アンテナ素子からの受信信号の受信電力と受信感度のいずれかの値が最大となるように制御を行ない、それぞれのアンテナに対する制御が完了した後の受信電力により受信アンテナの選択を行なうことによって、通話状態で生じるインピーダンスの不整合による受信電力の劣化を抑えることができるので、安定した通信品質を確保することができる効果を有し、携帯電話機等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る無線通信装置の回路構成を示すブロック図
【図2】その第1の実施形態に係る無線通信装置の制御手段による可変容量素子を制御後のアンテナのVSWRの周波数特性を示す説明図
【図3】その第1の実施形態に係る無線通信装置の受信電力を示す説明図
【図4】本発明の第2の実施形態に係る無線通信装置の回路構成を示すブロック図
【図5】その第2の実施形態に係る無線通信装置の記憶部に記憶された、アンテナと人体との距離に対して整合する可変容量素子の容量値を示す説明図
【図6】本発明の第3の実施形態に係る無線通信装置の回路構成を示すブロック図
【図7】本発明の第4の実施形態に係る無線通信装置の回路構成を示すブロック図
【図8】従来の無線通信装置の構成図
【図9】従来の無線通信装置の回路構成を示すブロック図
【図10】従来の無線通信装置において、自由空間におけるヘリカルアンテナのVSWRの周波数特性を示す説明図
【図11】従来の無線通信装置において、整合状態のアンテナにおける受信電力を示す説明図
【図12】通話状態を人体の正面から示した説明図
【図13】通話状態を人体の側面から示した説明図
【図14】従来の無線通信装置において、通話状態におけるヘリカルアンテナのVSWRの周波数特性を示す説明図
【図15】従来の無線通信装置において、通話状態でのアンテナのインピーダンス整合制御処理完了前における受信電力を示す説明図
【符号の説明】
【0053】
11A、11B、21A、21B、31A、31B、41A、41B アンテナ素子
12A、12B、22A、22B、32A、32B、42A、42B 可変整合部(可変整合手段)
121A、121A、122A、122B 可変容量素子
221A、221B、222A、222B 可変容量素子
321A、321B、322A、322B 可変容量素子
421A、421B、422A、422B 可変容量素子
13、23、33、43 アンテナ切り替えスイッチ
14、24、34 受信電力検出部(検出手段)
15、25、35 無線受信部
16、26、36 制御部(制御手段)
27、37 記憶部
38 入力部
421A、421B、422A、422B キャパシタ
S1A、S2A、S1B、S2B 切り替えスイッチ
Cp1、Cs1、Cp2、Cs2 可変整合部における直列接続された可変容量素子の容量
Cp11〜Cp1N 可変整合部における並列接続された可変容量素子の容量
Cs11〜Cs1N 可変整合部における直列接続された可変容量素子の容量
Cp21〜Cp2N 可変整合部における並列接続された可変容量素子の容量
Cs21〜Cs2N 可変整合部における直列接続された可変容量素子の容量
Cpa1〜CpaN 可変整合部における並列接続された複数キャパシタ
Csa1〜CsaN 可変整合部における直列接続された複数キャパシタ
Cpb1〜CpbN 可変整合部における並列接続された複数キャパシタ
Csb1〜CsbN 可変整合部における直列接続された複数キャパシタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイバーシティ受信動作する複数のアンテナ素子と、
インピーダンスを調整しアンテナを整合する、前記各アンテナ素子に接続した可変整合手段と、
前記各アンテナ素子からの受信信号の受信電力又は受信感度のうち少なくともいずれか一方を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された検出結果に基づいて前記可変整合手段を制御する制御手段と、
前記各アンテナ素子に対する前記制御手段による前記可変整合手段の制御が完了し、前記アンテナ素子が整合状態となった後の受信電力によって受信アンテナの選択を行なう手段と
を備えた無線通信装置。
【請求項2】
前記可変整合手段は、可変容量素子を含む請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記各アンテナ素子が整合状態となる前記可変容量素子の容量値またはその容量値を与える電圧値を記憶した記憶手段を備えるとともに、
前記制御手段は、前記可変容量素子を制御する際に、前記記憶手段から読み出した前記容量値または前記電圧値の制御情報を用いて前記可変容量素子の制御を行なう請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記制御手段は、一方のアンテナ素子で受信し、前記検出手段により検出された前記受信電力又は受信感度のうち少なくともいずれか一方の値の制御処理を完了し、そのときの前記容量値または前記電圧値の制御情報のうち前記いずれか一方の制御情報に対応する他方のアンテナ素子における制御情報を前記記憶手段から読み出し、その読み出した制御情報を用いて、前記他方のアンテナ素子で受信し、前記検出手段により検出された値の制御をする請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記記憶手段は、人体との距離に対して前記アンテナ素子が整合状態となる制御情報を予め記憶し、
前記制御手段は、前記記憶手段に記憶されたいずれかの制御情報を初期制御情報として制御処理を開始する請求項3又は4に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記アンテナ素子が現在どのような状態にあるかの情報を前記制御手段に入力する入力手段を具備する請求項1から5のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記可変容量素子は、可変容量コンデンサで構成するとともに前記制御情報を当該可変容量コンデンサの容量値とするか、若しくは、可変容量ダイオードで構成するとともに前記制御情報を当該可変容量ダイオードに印加する制御電圧値とする請求項2から6のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記可変容量素子は、容量の異なる複数のキャパシタと、前記複数のキャパシタを選択的に切り替えるスイッチ手段とを具備することを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−324984(P2006−324984A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146753(P2005−146753)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】