説明

熱硬化性樹脂組成物、Bステージ化した樹脂フィルムおよび多層ビルドアップ基板

【課題】耐熱性、低膨張係数であり、(セミ)アディティブ工法に適合した粗化後の表面粗さが小さい(Ra 0.3μm以下)ところでの引きはがし強さに優れ、その際の小径レーザービア底のスミア除去性にも優れ、かつ弾性率、破断強度、破断伸びなどのバランスのとれた樹脂物性を有する熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂組成物は、 (a) 25℃での粘度が1.0〜120Pa・sの液状エポキシ樹脂を20〜70重量%含むエポキシ樹脂、(b)トリアジン変性フェノールノボラック樹脂およびベンゾオキサジン樹脂、および(c)
Tg(ガラス転移温度:DSC法)が120℃以上のフェノキシ樹脂を含む。(a)エポキシ樹脂及び(b)トリアジン変性フェノールノボラック樹脂及びベンゾオキサジン樹脂の合計量を100重量部としたとき、(c)フェノキシ樹脂の量が10重量部以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Bステージ化した樹脂フィルムに関するものであり、低膨張係数で、低粗度-高接着強度、高耐熱、高信頼性の高密度ビルドアッププリント配線板等に使用される。ここで、Bステージとは、樹脂組成物を半硬化させた状態をさす。
【背景技術】
【0002】
近年、MPUやASIC用のパッケージ基板には、細線化、小径狭パッドピッチ化、多層化、接続の最短化、低伝送損失化等が求められている。このためには基板構造的には高密度ビルドアップ基板又は高密度一括成形基板が必要であり、細線化対応のためにはサブトラ法から(セミ)アディティブ法へ、小径狭パッドピッチ化対応のためには小径レーザービア化が必要であり、厚さ方向の接続もスタックビアなどでの接続が必要となる。このため基板材料に求められる主特性は、細線化小径化のためのレーザー穴あけおよび(セミ)アディティブ法に対応する必要がある。小径でのレーザー加工性と低粗化での高ピール強度とレーザービア底のスミア除去性がある。さらに信頼性向上、寸法精度、位置精度向上のための低膨張係数と弾性率、破断強度、破断伸びなどのバランスのとれた樹脂物性、低誘電率・低誘電正接といった電気特性などがある。このうち、低誘電率・低誘電正接化については、MPUの性能向上の手法が高周波数化から並列度のアップの方向に移行したため、その重要度が少し低下している。
【0003】
しかし、前記の要求を十分に満たす材料は現在なく、特にビルドアップ基板用の層間絶縁材料については特に顕著である。すなわち、高耐熱で低膨張係数であり、(セミ)アディティブ工法に適合した粗化後の表面粗さが小さいところでの引きはがし強さに優れ、かつ低粗化条件でのレーザービア底のスミア除去性に優れ、更に弾性率、破断強度、破断伸びなどのバランスのとれた樹脂物性の熱硬化性樹脂組成物が望まれる。
【0004】
本出願人は、特許文献1〜3において、この問題を解決するための組成物を開示した。
【特許文献1】特開2005−248164
【特許文献2】特開2005−272722
【特許文献3】特開2005−281673
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
低膨張係数化は、ベース樹脂での低膨張率化を前提に無機フィラーを添加することにより、ある程度実現できるが、ベース樹脂自体の熱膨張係数の低下を実現しないと限界がある。エポキシ樹脂の熱膨張係数を低下させるためには、硬化剤の選択が重要である。更に、特定の高分子化合物(可溶性ポリイミドやシロキサン変性ポリアミドイミドなど)により、熱膨張係数の低下、低粗化での接着強度、可とう性、Tgを低下させることなくフィルム物性を向上させることが可能であった(特許文献1)。
【0006】
しかし、特許文献1記載のような樹脂変性では、変性量が多くなると、低粗化条件での小径レーザービア底のスミア除去性が劣るという欠点があることを発見した。残スミアは、接続信頼性を悪化させる傾向がある。
【0007】
本発明の課題は、高耐熱(Tg: 150℃以上)で低膨張係数(25℃〜150℃で40ppm/℃以下)であり、(セミ)アディティブ工法に適合した粗化後の表面粗さが小さい(Ra 0.3μm以下)ところでの引きはがし強さに優れ、その際の小径レーザービア底のスミア除去性にも優れ、かつ弾性率、破断強度、破断伸びなどのバランスのとれた樹脂物性を有する熱硬化性樹脂組成物を提供することである。
【0008】
また、本発明の課題は、このような熱硬化性樹脂組成物を層間絶縁材料として用いて製造された高密度ビルドアッププリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、
(a) 25℃での粘度が1.0〜120Pa・sの液状エポキシ樹脂を20〜70重量%含むエポキシ樹脂、
(b)トリアジン変性フェノールノボラック樹脂およびベンゾオキサジン樹脂、および
(c) Tg(ガラス転移温度:DSC法)が120℃以上のフェノキシ樹脂を含み、
(a)エポキシ樹脂及び前記(b)トリアジン変性フェノールノボラック樹脂及びベンゾオキサジン樹脂の合計量を100重量部としたときのフェノキシ樹脂の量が10重量部以下であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記組成物から作成された、Bステージ化した樹脂フィルムに係るものである。
【0011】
また、本発明は、前記樹脂フィルムを含むことを特徴とする、多層ビルドアップ基板に係るものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明者は、硬化剤としてトリアジン変性フェノールノボラック樹脂及びベンゾオキサジン樹脂の適性配合をし、かつ高分子化合物の量的な制限をすることにより、低熱膨張係数、低粗化での接着強度、可とう性、Tgをあまり低下させることなくフィルム物性を向上させ、しかも低粗化条件での小径レーザービア底のスミア除去性に優れることが可能であることを発見した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
((a) 25℃での粘度が1.0〜120Pa・s の液状エポキシ樹脂を20〜70重量%含むエポキシ樹脂)
「25℃での粘度が1.0〜120Pa・s の液状エポキシ樹脂」を20〜70重量%使用するのは、以下の理由による。細線化対応、具体的にはL/Sを20/20μm以下とするためには、サブトラ法から(セミ)アディティブ法へ移行し、低Ra(0.3μm以下)で高ピール強度(0.7kN/m以上)を実現することが必須条件となる。この(セミ)アディティブ工程における粗化工程に入る時の絶縁層の平坦性も、これに大きく影響を与えるためである。即ち、粗化工程の前の表面凹凸は、低粗度面では、そのRaにも影響を与えてしまうからである。
【0014】
これを防ぐには、粗化工程の前、即ち真空ラミネート−平坦化、初回硬化工程後において、表面が平坦化されていることが必要となる。この平坦化の基準は、諸工程条件により変化するが、我々の実験では、表面凹凸がパターン密度に関係なく、各パターントップとそのエッチング面トップの差(段差)で1.5μm以下であることが必要であると実証されている。これを実現するためには、各工程条件の最適化に加えて、真空ラミネート−平坦化工程と初回硬化時での適度の流動性が必要である。
【0015】
この観点から、本発明の樹脂系では、25℃での粘度が1.0〜120Pa・s の液状エポキシ樹脂を20〜70重量%使用することが最も有効であることを発見した。この量を20重量%以上とすることによって、前記の効果が著しく向上する。また、25℃での粘度が120Pa・s以上の液状エポキシ樹脂でもこの平坦性に効果があるが、その効果は著しく減少する。さらに、25℃での粘度が1.0Pa・s未満の液状エポキシ樹脂では、耐熱性を満足させるものがない。一方、25℃での粘度が1.0〜120Pa・s
の液状エポキシ樹脂の量が70重量%を超えると、目標とする熱膨張係数およびTgが得られない。
【0016】
「25℃での粘度が1.0〜120Pa・s の液状エポキシ樹脂」の量は、30重量%以上とすることが好ましく、また、60重量%以下とすることが更に好ましい。
【0017】
「25℃での粘度が1.0〜120Pa・s の液状エポキシ樹脂」としては、ビスA型エポキシ樹脂、ビスF型エポキシ樹脂、水添ビスA型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ターシャリーブチルカテコール型エポキシ樹脂などがあり、単独、又は2種以上組み合わせて用いることができる。好適には、1.2Pa・sから100Pa・sの粘度が良好である。この粘度は、E型粘度計を用いて測定した値で定義する。
【0018】
(a)エポキシ樹脂において、前記液状エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂は、25℃での粘度が1.0Pa・s以上のエポキシ樹脂を除くものであり、かつ、後述する(c)フェノキシ樹脂を除くものである。
【0019】
このようなエポキシ樹脂は、2個以上のグリシジル基を持つエポキシ樹脂ならば、すべて使用することができるが、Tg(ガラス転移温度:TMA法)が150℃以上である硬化物を得るには、ノ
ボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂などが好適であり、単独、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0020】
各種硬化剤の中でも、特にトリアジン変性ノボラック樹脂は、従来のノボラック樹脂と比較すると低誘電率・低誘電正接で耐燃性に優れる硬化物をつくり、ベンゾオキサジン化合物は低誘電率・低誘電正接・低膨張係数の硬化物をつくることができる。ただし、ベンゾオキサジン化合物のみでは、エポキシ樹脂との反応性に劣り、かつ開環重合も起こす為、本発明によるトリアジン変性ノボラック樹脂との併用硬化剤が最も優れた硬化物物性を示すことを発見した。
【0021】
本発明において、(b)トリアジン変性フェノールノボラック樹脂硬化剤は、ベンゾグアナミン変性ビスフェノールA型ノボラック樹脂、ベンゾグアナミン変性クレゾールノボラック型フェノール樹脂、ベンゾグアナミン変性フェノールノボラック型フェノール樹脂、メラミン変性ビスフェノールA型ノボラック樹脂、メラミン変性クレゾールノボラック型フェノール樹脂、メラミン変性フェノールノボラック型フェノール樹脂等がある。
【0022】
好適な実施形態においては、(a)エポキシ樹脂のエポキシ当量数を1としたとき、(b)トリアジン変性フェノールノボラック樹脂の水酸基当量数が0.5〜1.0である。これを0.5以上とすることによって、適正な熱膨張係数が得られる。これを1.0以下とすることによって、バランスの良い破断強度、破断伸びが得られる。
【0023】
ここで、(a)エポキシ樹脂のエポキシ当量数は、以下のものである。
エポキシ樹脂のエポキシ当量数=
(組成物中のエポキシ樹脂の重量(固形分重量))/(エポキシ樹脂のエポキシ当量)
(b)トリアジン変性フェノールノボラック樹脂の水酸基当量数は、以下のものである。
(b)トリアジン変性フェノールノボラック樹脂の水酸基当量数=
(組成物中のトリアジン変性フェノールノボラック樹脂の重量)/
(トリアジン変性フェノールノボラック樹脂の水酸基当量)
【0024】
(a)エポキシ樹脂のエポキシ当量数を1としたときの(b)トリアジン変性フェノールノボラック樹脂硬化剤の水酸基当量数は、両者の比率(無名数)なので、以下の式で計算される。
(トリアジン変性フェノールノボラック樹脂の水酸基当量数)/
(エポキシ樹脂のエポキシ当量数)
【0025】
(b)硬化剤として使用するベンゾオキサジン化合物は、特に限定されない。好ましくは、一般式(1式)、(2式)で表される化合物、この化合物の異性体、またはこの化合物のオリゴマーであり、熱により開環しフェノール性水酸基と第3級アミンを発生する。このためエポキシ樹脂の硬化剤としての作用も期待できる。しかし、ベンゾオキサジン化合物は熱による自己縮合が可能なため、このような用途に使用できる構造には制約があり、低温での開環重合が可能なものは適さない。この観点からは、100℃以上での熱による開環重合が可能な化合物が適している。
【0026】
【化1】

【0027】
好適な実施形態においては、(a)エポキシ樹脂のエポキシ当量数を1としたとき、ベンゾオキサジン化合物の熱分解後の水酸基当量数を0.1以上、0.5以下とする。これを0.1以上とすることによって、樹脂の低誘電率・低誘電正接化、低膨張係数化の効果が高くなる。これが0.5を超えると、硬化時間が大幅に遅延するので、0.5以下とすることが好ましく、0.3以下とすることが更に好ましい。
【0028】
(b) ベンゾオキサジン化合物の熱分解後の水酸基当量数は、以下のものである。
(b) ベンゾオキサジン化合物の熱分解後の水酸基当量数=
(組成物中のベンゾオキサジン化合物の重量)/
(ベンゾオキサジン化合物の熱分解後の水酸基当量)
【0029】
(a)エポキシ樹脂のエポキシ当量数を1としたときの(b) ベンゾオキサジン化合物の熱分解後の水酸基当量数は、両者の比率(無名数)なので、以下の式で計算される。
((b) ベンゾオキサジン化合物の熱分解後の水酸基当量数)/
(エポキシ樹脂のエポキシ当量数)
【0030】
上述した2種類の硬化剤併用による効果という観点からは、両者合計の当量比を制御するのが更に有効である。具体的には、(a)エポキシ樹脂の当量数を1としたとき、(b)トリアジン変性フェノールノボラック樹脂硬化剤の水酸基当量数と (b)ベンゾオキサジン樹脂の熱分解後の水酸基当量数との合計を0.6〜1.2とすることが更に好ましい。
【0031】
(c) フェノキシ樹脂は、高分子エポキシ樹脂に含まれるものであり、分子量(Mw)が10,000以上のものである。フェノキシ樹脂の種類は限定されないが、樹脂骨格としては、BPA/BPS型、BP/BPS型、BP型、BPS型などのようなものでTg(DSC)法が120℃以上(更に好ましくは130℃以上)の耐熱骨格を有するものが好適である。
【0032】
(c)フェノキシ樹脂を用いた場合には、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂又は溶剤可溶性ポリイミド樹脂を用いた場合と比較して、熱膨張係数、低粗化での接着強度、Tg の点ではわずかに劣るが、添加量を制限したことによりその影響が低減される。そしてスミア除去性に関しては、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂又は溶剤可溶性ポリイミド樹脂より優れる。
【0033】
(c)フェノキシ樹脂の使用量を10重量部以下(好ましくは9重量部以下、更に好ましくは8重量部以下)とすることによって、低粗化条件での小径レーザービア底のスミア除去性が著しく向上する。また、これを1重量部以上とすることによって、接着性、可とう性の効果が向上する。
【0034】
本発明の組成物中には、(d)フィラーを添加することができる。(d)フィラーは、具体的には、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素 、酸化マグネシウムなどが好適である。
【0035】
また、(a)エポキシ樹脂、(b)硬化剤、(c) フェノキシ樹脂の合計量を100重量部としたときに、(d)フィラーの量を40〜100重量部とすることが好ましい。低膨張係数を加味する場合にはシリカ主体が良い。この場合、シリカは表面処理(エポキシシラン処理、アミノシラン処理、ビニルシラン処理など)されたシリカを用いても良い。また、粒径としては狭ピッチ対応(L/S≦20/20μm)と表面粗さの低減(Ra≦0.3μm)の観点から平均粒径が0.5μm以下の球状ものが望ましい。また0.5kN/m以上のピール強度をRa≦0.3μmで出し、かつC.T.Eを40ppm/℃以下とする為には、シリカ添加量を40重量部以上添加するのが良い。ただし100重量部以上添加するとレーザー加工性などの加工性やピール強度などを悪化させるので、100重量部以下とすることが好ましい。
【0036】
その他のフィラーとしては、アルミナ、チッ化アルミニウム、チッ化ホウ素、酸化マグネシウムなどのフィラーを同様に用いることができる。
【0037】
また、本発明の組成物には、必要に応じて硬化促進剤を併用することができる。硬化促進剤としては各種イミダゾール類や有機ホスフィン系化合物などの一般的なものを使用することができる。主に反応速度(硬化速度)、ポットライフの観点から選択する。例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、4,4’-メチレンビス(2-エチル-5-メチルイミダゾール)やTPPなどがある。
【0038】
本発明の組成物には、難燃性の付与のために難燃剤を添加することができる。特にハロゲンフリーの難燃剤としては、縮合型リン酸エステル類、ホスファゼン類、ポリリン酸塩類、HCA(9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド)誘導体等が良好である。
【0039】
本発明の熱硬化性樹脂組成物に使用可能な溶媒は特に限定されないが、NMPやジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの高沸点溶剤とシクロヘキサノンやMEKなどの中、低沸点溶剤を組み合わせることが特に好ましい。
【0040】
本発明の熱硬化性樹脂組成物をBステージ化することにより、樹脂フィルムを得ることができる。すなわち、以上述べてきた本発明の樹脂組成物は、必要ならばこれをNMP、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート/MEK
、シクロヘキサノン等の好適な混合有機溶剤で希釈してワニスとなし、これを必要に応じて離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上にダイコーターなどで塗布し、加熱するという通常の方法によりB状態の熱硬化性樹脂フィルムを製造する事が出来る。
【0041】
又、本発明の熱硬化性樹脂組成物を金属箔にダイコーターなどで塗工することにより、接着剤付き金属箔を製造する事ができる。この金属箔としては、表面粗化した銅箔、アルミニウム箔を例示できるが、銅箔が特に好ましい。
【0042】
本発明のフィルム付き製品は、リジッドコアなどを有するビルドアップ多層板などのHDI材料としてレーザービアなどの非貫通ビアホールを持つプリント配線板に使用することができる。
【実施例】
【0043】
(実施例1)
260重量部のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂「HP-7200H」(大日本インキ化学工業社製、エポキシ当量283、樹脂固形分80重量%)、98重量部の「EPICLON
730A」(大日本インキ化学工業社製、エポキシ当量180、粘度850dPa・s(8.50 Pa・s)/25℃)、157重量部のメラミン変性クレゾールノボラック樹脂「EXB-9854」(大日本インキ化学工業社製、水酸基価151、樹脂固形分80重量%)、42重量部のベンゾオキサジン樹脂「F−a」(四国化成社製、水酸基価217)、110重量部のフェノキシ樹脂「YL6954BH30」(ジャパンエポキシレジン社製、Mw=約39,000、樹脂固形分30重量%)、27重量部のホスファゼン化合物「SPB-100」(大塚化学社製)、0.7重量部の2-エチル-4メチルイミダゾール、272重量部のエポキシシラン処理シリカ(平均粒径
0.3μm)からなる混合物に、溶媒としてNMP/MEK混合溶剤を加えて樹脂固形分60重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0044】
(実施例2)
260重量部のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂「HP-7200H」(大日本インキ化学工業社製、エポキシ当量283、樹脂固形分80重量%)、98重量部の「EPICLON
730A」(大日本インキ化学工業社製、エポキシ当量180、粘度 850dPa・s/25℃)、157重量部のメラミン変性クレゾールノボラック樹脂「EXB-9854」(大日本インキ化学工業社製、水酸基価151、樹脂固形分80重量%)、42重量部のベンゾオキサジン樹脂「F−a」(四国化成社製、水酸基価217)、83重量部のフェノキシ樹脂「FX280AXM40」(東都化成社製、Mw=約45,000、樹脂固形分40重量%)、27重量部のホスファゼン化合物「SPB-100」(大塚化学社製)、0.7重量部の2-エチル-4メチルイミダゾール、272重量部のエポキシシラン処理シリカ(平均粒径
0.3μm)からなる混合物に、溶媒としてNMP/MEK混合溶剤を加えて樹脂固形分60重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0045】
(実施例3)
260重量部のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂「HP−7200H」(大日本インキ化学工業社製、エポキシ当量283、樹脂固形分80重量%)、98重量部の「EPICLON
730A」(大日本インキ化学工業社製、エポキシ当量180、粘度 850dPa・s/25℃)、157重量部のメラミン変性クレゾールノボラック樹脂「EXB-9854」(大日本インキ化学工業社製、水酸基価151、樹脂固形分80重量%)、42重量部のベンゾオキサジン樹脂「F−a」(四国化成社製、水酸基価217)、83重量部のフェノキシ樹脂「FX293AXM40」(東都化成社製、Mw=約43,000、樹脂固形分40重量%)、27重量部のホスファゼン化合物「SPB-100」(大塚化学社製)、0.7重量部の2-エチル-4メチルイミダゾール、272重量部のエポキシシラン処理シリカ(平均粒径
0.3μm)からなる混合物に、溶媒としてNMP/MEK混合溶剤を加えて樹脂固形分60重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0046】
(実施例4)
260重量部のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂「HP-7200H」(大日本インキ化学工業社製、エポキシ当量283、樹脂固形分80重量%)、98重量部の「EPICLON
730A」(大日本インキ化学工業社製、エポキシ当量180、粘度 850dPa・s/25℃)、157重量部のメラミン変性クレゾールノボラック樹脂「EXB-9854」(大日本インキ化学工業社製、水酸基価151、樹脂固形分80重量%)、42重量部のベンゾオキサジン樹脂「F−a」(四国化成社製、水酸基価217)、110重量部のフェノキシ樹脂「YX8100BH30」(ジャパンエポキシレジン社製、Mw=約38,000、樹脂固形分30重量%)、27重量部のホスファゼン化合物「SPB-100」(大塚化学社製)、0.7重量部の2-エチル-4メチルイミダゾール、272重量部のエポキシシラン処理シリカ(平均粒径
0.3μm)からなる混合物に、溶媒としてNMP/MEK混合溶剤を加えて樹脂固形分60重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0047】
(比較例1)
260重量部のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂「HP-7200H」(大日本インキ化学工業社製、エポキシ当量283、樹脂固形分80重量%)、57重量部の「EPICLON
730A」(大日本インキ化学工業社製、エポキシ当量180、粘度 850dPa.s/25℃)、110重量部のメラミン変性クレゾールノボラック樹脂「EXB-9854」(大日本インキ化学工業社製、水酸基価151、樹脂固形分80重量%)、60重量部のベンゾオキサジン樹脂「F-a」(四国化成社製、水酸基価217)、216重量部のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂(日立化成工業社製、アミド当量620、Mw=約80,000、樹脂固形分28重量%)、15重量部の縮合型リン酸エステル「PX-200」(大八化学社製)、0.7重量部の2-エチル-4メチルイミダゾール、120重量部のエポキシシラン処理シリカ(平均粒径
0.3μm)からなる混合物に、溶媒としてNMP/MEK混合溶剤を加えて樹脂固形分60重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0048】
(比較例2)
362重量部のビフェニル型エポキシ樹脂「NC-3000H」(日本化薬社製、エポキシ当量275、樹脂固形分80重量%)、177重量部のメラミン変性フェノールノボラック樹脂「LA-7054」(大日本インキ化学工業社製、水酸基価125、樹脂固形分60重量%)、60重量部のベンゾオキサジン樹脂「F-a」(四国化成社製、水酸基価217)、302重量部の可溶性ポリイミド樹脂「Q-VR-X0163」(ピーアイ技術研究所社製、Mw≒25,000、樹脂固形分20重量%)、25重量部の縮合型リン酸エステルPX-200(大八化学社製)、1.0重量部の1-シアノ-2-ウンデシルイミダゾール、120重量部のエポキシシラン処理シリカ(平均粒径
0.3μm)からなる混合物に、溶媒としてNMP/MEK混合溶剤を加えて樹脂固形分55重量%の樹脂ワニスを調整した。
【0049】
(比較例3)
260重量部のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂「HP-7200H」(大日本インキ化学工業社製、エポキシ当量283、樹脂固形分80重量%)、98重量部の「EPICLON
730A」(大日本インキ化学工業社製、エポキシ当量180、粘度850dPa・s/25℃)、157重量部のメラミン変性クレゾールノボラック樹脂「EXB-9854」(大日本インキ化学工業社製、水酸基価151、樹脂固形分80重量%)、42重量部のベンゾオキサジン樹脂「F-a」(四国化成社製、水酸基価217)、118重量部のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂(日立化成工業社製、アミド当量620、Mw=約80,000、樹脂固形分28重量%)、27重量部のホスファゼン化合物「SPB-100」(大塚化学社製)、0.7重量部の2-エチル-4メチルイミダゾール、272重量部のエポキシシラン処理シリカ(平均粒径
0.3μm)からなる混合物に、溶媒としてNMP/MEK混合溶剤を加えて樹脂固形分60重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0050】
前記各例の樹脂ワニスは3本ロールを用いて良く分散した。これを必要により離型処理した25μmポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上にダイコーターで塗布し、120℃の温度で乾燥して厚さ40μmのB状態の熱硬化性樹脂フィルム(A)を製造した。揮発分は3.0wt%に調整した。また保護フィルムとしてポリエチレンフィルム(PEフィルム)をラミネートした。
【0051】
これを18μmの表面処理なし銅箔と重ねあわせ、真空プレスに仕込み180℃×120分、0.65MPaで加熱・加圧(真空度5torr)成形した(成形物(1))
同様に処理足付きの銅箔と重ねあわせ、真空プレスに仕込み180℃×120分、0.65MPaで加熱・加圧(真空度5torr)成形した。(成形物(2))
【0052】
一方、厚さ0.6mmの高TgハロゲンフリーFR-4両面銅張積層板(銅箔18μm)[商品名TLC-W-552Y、京セラケミカル社製]に回路を形成し、導体に黒色酸化銅処理後に、真空ラミネーターで、この面に上記フィルムAを保護フィルムを剥離してラミネートを両面に行い、平坦化プレス工程を経て平坦化を行う。これをトンネル乾燥炉で190℃×30分の初回加熱硬化する。冷却取り出し後、CO2レーザーで所定孔径(60μm、100μm)のブラインドビアを形成した。
過マンガン酸デスミア溶液で表面粗化を行い、同時に孔内底部の残存樹脂も溶解除去した。これに無電解銅メッキ0.8μm、電解銅メッキ20μmを付け、190℃×60分のアフターベーキングを行った。これを繰り返しビルドアップ層が片側2層の6層ビルドアップ多層プリント配線板(I)を作製した(ビルトアップ部パターン形成なし、ただしピール測定可のベタ銅部は有り)。
【0053】
上記各例の各パラメーターを表1にまとめて示す。また、各例の特性評価結果を表2、表3示す。表2、表3のPWB(II)は、PWB(I)の製造法に準拠して作製したJPCA-HD01のテストパターン基板である。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
【表3】

【0057】
(平坦性): PWB(II)平坦化プレス後の表面凹凸で、各パターントップとそのエッチング面トップの差
(段差); (レーザー顕微鏡による)
(LVHビア底スミア除去性): デスミア後のビア底のSEM二次電子像(×1,000)により目視判断する。
(表面粗さ): レーザー顕微鏡による。
(PWB(II)) : PWB(I)の製造方法に準拠して作製したJPCA-HD01準拠のテストパターン基板。
(フィルム物性): オートグラフによる。
(信頼性) : JPCA-BU01による。
(a) 熱衝撃試験 :150℃×30minおよび−65℃×30min (1 cycle)
判定基準 : 導通抵抗10%変化
(b) 高温高湿バイアス試験 85℃×85%RH,DC=30V L/S=30/30μm
判定基準 : 絶縁抵抗 1×107Ω以上(槽内測定)
PWB(III) : 0.1mm厚さの全面エッチングしたコアにフィルムを片側2層ずつラミネートした基板。
【0058】
以上述べたように、本発明によれば、低膨張係数で、低粗度-高接着強度、高耐熱、高信頼性、高スミア除去性の高密度ビルドアッププリント配線板用の樹脂組成物を提供することができる。そして、このような諸特性を付与したプリント配線板は半導体プラスチックパッケージ用などに使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 25℃での粘度が1.0〜120Pa・sの液状エポキシ樹脂を20〜70重量%含むエポキシ樹脂、
(b)トリアジン変性フェノールノボラック樹脂およびベンゾオキサジン樹脂、および
(c) Tg(ガラス転移温度:DSC法)が120℃以上のフェノキシ樹脂を含み、
前記(a)エポキシ樹脂及び前記(b)トリアジン変性フェノールノボラック樹脂及びベンゾオキサジン樹脂の合計量を100重量部としたときの前記(c)フェノキシ樹脂の量が10重量部以下であることを特徴とする、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
更に(d)フィラーを含み、前記(a)エポキシ樹脂、前記(b)トリアジン変性フェノールノボラック樹脂及びベンゾオキサジン樹脂、および前記(c)フェノキシ樹脂の合計量を100重量部としたときの前記(d)フィラーの量が40重量部以上であることを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記(a)エポキシ樹脂のエポキシ当量数を1としたとき、前記(b)トリアジン変性フェノールノボラック樹脂硬化剤の水酸基当量数が0.5〜1.0であり、
前記(b)ベンゾオキサジン樹脂の熱分解後の水酸基当量数が0.1〜0.5 であり、
かつ前記(b)トリアジン変性フェノールノボラック樹脂の水酸基当量数と前記(b)ベンゾオキサジン樹脂の熱分解後の水酸基当量数との合計が0.6〜1.2であることを特徴とする、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
前記(b)トリアジン変性フェノールノボラック樹脂硬化剤が、メラミン変性フェノールノボラック樹脂、メラミン変性クレゾールノボラック樹脂、ベンゾグアナミン変性フェノールノボラック樹脂およびベンゾグアナミン変性クレゾールノボラック樹脂からなる群より選ばれていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の組成物。
【請求項5】
前記(d)フィラーが、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素および酸化マグネシウムからなる群より選ばれていることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一つの請求項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つの請求項に記載の組成物から作成された、Bステージ化した樹脂フィルム。
【請求項7】
請求項6記載の樹脂フィルムを含むことを特徴とする、多層ビルドアップ基板。

【公開番号】特開2008−37957(P2008−37957A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−212204(P2006−212204)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000108823)タムラ化研株式会社 (23)
【Fターム(参考)】