説明

熱電変換材料

【課題】高温で高い熱電特性を示す新規な熱電変換材料を提供する。
【解決手段】本発明の熱電変換材料は、(Ca3-xBix)(Co4-yy)O9で表される酸化物を有するものである。ここで、MはGa,Fe,Ti及びNbのうちの1つ以上の元素であり、xは0<x≦0.3を満たし、yはMがGa,Fe及びTiのうち1つ以上の元素である場合には0<y≦0.15を満たし、MがNbである場合には0<y<0.1を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換材料に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電変換とは、熱エネルギーと電気エネルギーを直接変換するものであり、物質から生じるゼーベック効果を用いて、効率良くエネルギー変換を行うものである。このような熱電変換が可能なP型、N型の素子を組み合わせたモジュールを用いて、大気中に廃棄されている熱エネルギー等を利用して発電することにより、エネルギー効率の改善を図ることが期待されている。このような使用を目的とする熱電変換材料には、ゼーベック係数が高く、電気伝導度が高く、かつ、熱伝導率が低い材料が好適であり、これらの物性を組み合わせた性能指数と呼ばれる指標で特性が評価されることもある。また、モジュールの出力は、熱電変換材料のゼーベック係数S(VK-1)及び導電率σ(Sm-1)によって定まる出力因子PF=S2×σ(Wm-1-2)に依存し、出力因子が大きいほど大きな出力が得られる。比較的特性が高いP型の熱電変換材料としては、金属間化合物系のものや、金属酸化物系のものが開発されている。
【0003】
このうち、金属酸化物系のものとしては、例えば、一般式:Ca3-xBixCo4y(0<x≦1、8.5≦y≦10)で表されるものが提案されている(例えば特許文献1参照)。また、一般式:Caa1bCoc2de(式中、A1は、Na、K、Li、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Pb、Sr、Ba、Al、Bi、Yおよびランタノイドからなる群から選択される一種又は二種以上の元素であり、A2は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Ag、Mo、W、Nb及びTaからなる群から選択される一種又は二種以上の元素であり、2.2≦a≦3.6;0≦b≦0.8;2.0≦c≦4.5;0≦d≦2.0;8≦e≦10である。)で表されるものや、一般式:BifPbg1hCoi2jk(式中、M1は、Na、K、Li、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Pb、Ca、Sr、Ba、Al、Yおよびランタノイドからなる群から選択される一種又は二種以上の元素であり、M2は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Ag、Mo、W、Nb及びTaからなる群から選択される一種又は二種以上の元素であり、1.8≦f≦2.2;0≦g≦0.4;1.8≦h≦2.2;1.6≦i≦2.2;0≦j≦0.5;8≦k≦10である。)で表されるものが提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3069701号公報
【特許文献2】特許第4595123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2に記載のものでは、高温での熱電特性が十分でない場合があり、高温で高い熱電特性を示す新規な熱電変換材料が望まれていた。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、Ca3-xBixCo4y系のものにおいて、高温で高い熱電特性を示す新規な熱電変換材料を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の熱電変換材料は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明の熱電変換材料は、(Ca3-xBix)(Co4-yy)O9(式中、MはGa,Fe,Ti及びNbのうちの1つ以上の元素であり、xは0<x≦0.3を満たし、yは前記MがGa,Fe及びTiのうち1つ以上の元素である場合には0<y≦0.15を満たし、前記MがNbである場合には0<y<0.1を満たす)で表される酸化物を有するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱電変換材料は、高温で高い熱電特性を示す。この理由は定かではないが、Ca3Co49におけるCaやCoを適切な元素で適切な量だけ置換した組成を有するため、結晶構造、キャリア濃度、バンド構造、微構造等が変化し、高温での熱電特性の向上に寄与するものと推察される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1のXRD測定結果。
【図2】比較例2のXRD測定結果。
【図3】温度と出力因子との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の熱電変換材料は、(Ca3-xBix)(Co4-yy)O9を満たす酸化物を有する。ここで、MはGa,Fe,Ti及びNbのうちの1つ以上の元素である。また、xは0<x≦0.3を満たす。また、yは、MがGa,Fe及びTiのうち1つ以上の元素である場合には0<y≦0.15を満たす。このうち、0<y<0.10が好ましく、0<y≦0.05がより好ましい。M成分の添加量が少なくても、出力因子を向上させる効果が大きいからである。また、yは、MがNbである場合には0<y<0.1を満たす。このうち、0<y≦0.05であることが好ましい。M成分の添加量が少なくても、出力因子を向上させる効果が大きいからである。x,yは、例えばCa3-xBixCo4yと比べて700℃などの高温で出力因子が大きくなるように設定するが、700℃以下の温度での出力因子も大きいほうが好ましい。また、出力因子だけでなくゼーベック係数の絶対値も大きくなるように設定することが好ましい。ゼーベック係数の絶対値が大きいと、以下の利点がある。即ち、ゼーベック係数は起電力の大きさの指標であり、ゼーベック係数の絶対値が大きいほど大きな電圧が得られる。大電圧が要求される場合には、その電圧を得るのに必要な数の素子を直列につないだモジュールが用いられるが、各素子のゼーベック係数の絶対値が大きい、即ち、大きな電圧が得られる素子を用いた場合、素子の数を少なくすることができる。このため、素子同士の接触部を減らすことが可能であり、接触部の抵抗の影響を抑制できる。また、素子を直列につなぐ場合、1つの素子が壊れると全体が作動しなくなり故障状態となるが、素子の数を少なくすることで故障状態となる確率が下がり、モジュール全体の信頼性を高めることができる。なお、ゼーベック係数が正の値を示すものはホールをキャリアとするP型素子であり、負の値を示すものは電子をキャリアとするN型素子である。本発明の熱電変換材料は、ゼーベック係数が正の値を示すP型熱電変換材料である。なお、本発明の熱電変換材料は、化学量論組成のものでもよいし、元素の一部が欠損した非化学量論組成のものでもよいし、元素の一部が他の元素に置換されたものでもよい。
【0012】
本発明の熱電変換材料は、X線回折におけるピーク位置がCa9Co1228で表される酸化物と一致し、Ca、Bi、Co及びMを含むものとしてもよい。ここで、材料を粉末状とし、CuKα線を用いてXRD回折パターンを測定した場合、25°〜55°の範囲において、Ca9Co1228のピーク位置(2θ)は、29.063°,30.378°,33.369°,35.136°,37.329°,39.564°,40.491°,42.122°,43.495°,48.706°,50.978°,52.650°,53.112°,54.972°である。ここで、ピーク位置は上述した各々について±0.5°以内の範囲であれば、一致するものとして扱う。また、Ca9Co1228で表される酸化物が異相よりも十分に多いと考えられる範囲であれば、異相を示すピーク位置にピークが観察されても、ピーク位置が一致するものとして扱う。異相を示すピークとしては、例えば、Ca3Co26,Co34,CoO,CaO,CaCO3,Bi23,Ga23などのピークが観察されてもよい。
【0013】
以上説明した本発明の熱電変換材料では、700℃程度の高温において出力因子が大きく、高い熱電特性を示す。この出力因子PF(Wm-1-2)は、ゼーベック係数をS(VK-1)、導電率をσ(Sm-1)とすると、PF=S2×σで表される。
【0014】
次に、本発明の熱電変換材料の製造方法について説明する。この熱電変換材料の製造方法は、(a)Ca源、Bi源、Co源及びM源、を配合して混合材料を得る混合工程と、(b)混合材料を焼成して酸化物を得る焼成工程とを含むものとしてもよい。
【0015】
(a)混合工程
混合工程では、(Ca3-xBix)(Co4-yy)O9(式中、MはGa,Fe,Ti及びNbのうちの1つ以上の元素であり、xは0<x≦0.3を満たし、yは前記MがGa,Fe及びTiのうち1つ以上の元素である場合には0<y≦0.15を満たし、前記MがNbである場合には0<y<0.1を満たす)となるような混合比で、Ca源、Bi源、Co源及びM源を配合し、混合する。(Ca3-xBix)(Co4-yy)O9の詳細については、上述した熱電変換材料と同様であるため、ここでは記載を省略する。Ca源、Bi源、Co源及びM源は特に限定されないが、Ca,Bi,Co,Mのうちの1種以上を含む酸化物や水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、アルコキシドなどを用いることができる。より具体的には、Ca源としてはCaCO3、Bi源としてはBi23、Co源としてはCo34、M源としてはM23などを好適に用いることができる。
【0016】
混合工程では、遊星ミル、ポットミル、アトライターなどを用いて、原料粒子を混合粉砕するものとしてもよい。混合粉砕は、乾式法で行ってもよいし、湿式法で行ってもよい。湿式法で行う際には、環境負荷の低い水を用いてもよいし、アルコールやアセトンなど、揮発性の高い有機溶媒を用いてもよい。このようにして混合材料を得ることができる。
【0017】
(b)焼成工程
焼成工程では、混合材料を焼成して酸化物を得る。この焼成工程では、混合材料を成形したのちに焼成してもよいし、混合材料を仮焼して仮焼粉とし、仮焼粉を成形した後に焼成してもよい。成形方法は、例えば、一軸プレスや、静水圧プレス、ヒートプレス、押出成形などを用いることができる。成形する形状は、角柱状、円柱状など望まれる形状とすればよい。焼成は、例えば、大気雰囲気や酸化性雰囲気などで行うことができ、常圧下で行ってもよいし、加圧下で行ってもよいし、減圧下で行ってもよい。焼成温度は、例えば、973K以上1223K以下が好ましく、1103K以上1173K以下がより好ましい。このようにして、熱電変換材料を作製することができる。
【0018】
以上詳述した本実施形態の製造方法で得られた熱電変換材料は、(Ca3-xBix)(Co4-yy)O9となるものと考えられるが、これに限定されない。例えば、Ca以外の元素をBiで置換した構造のものでもよいし、Co以外の元素をMで置換した構造のものでもよい。
【0019】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。例えば、本発明の熱電変換材料は、上述した製造方法以外の方法で製造してもよい。
【実施例】
【0020】
以下には、本発明の熱電変換材料を具体的に製造した例を実施例として説明する。
【0021】
[実施例1]
CaCO3粉末(純度4N,品番CAH08PB)と、Co34粉末(純度3Nup,品番COO09PB)と、Bi23粉末(純度4N,粒径2μm,品番BIO10PB)と、Ga23粉末(純度4N,品番GAO02PB)とを混合した。このとき、CaCO3:Co34:Bi23:Ga23が2.7:1.317:0.15:0.025のモル比で、バッチサイズが15g/回となるようにした。なお、前記粉末はいずれも株式会社高純度化学研究所製のものを用いた。これらを乳鉢・乳棒を用いて15〜20分、手動で混合粉砕した。続いて、大気中で900℃まで2時間かけて昇温した後、900℃で20時間保持し、その後2〜7時間かけて室温まで降温(炉冷)する仮焼を行い、仮焼粉を得た。得られた仮焼粉を、乳鉢・乳棒を用いて15〜20分、手動で粉砕した。このような仮焼と粉砕とを合計4回繰り返した。続いて、得られた粉末を、直径20mmの円筒型の型に詰め、一軸加圧120MPaで2minの成型を行った。成型体の形状は直径20mm厚さ4mm程度の円板状であった。得られた成型体をアルミナ板で挟み、成型体が動かない程度に圧力をかけ、大気中で850℃まで1時間で昇温した。そして、850℃に達した時点で16kNの圧力を加えた。圧力を加えたまま850℃で10時間保持し、さらに圧力を加えたまま3時間かけて降温(炉冷)し、焼結体を得た。このようにして得られた焼結体を、実施例1の熱電変換材料とした。そして、得られた焼結体から試験片を切り出し、XRD、ゼーベック係数、比抵抗を測定し、出力因子を算出して評価を行った。
【0022】
(XRD測定)
作製した実施例1の熱電変換材料を、乳鉢・乳棒を用いて粉砕して粉末状とし、XRD回折装置(リガク社製,型式RINT−2500)を用い、XRD回折パターンを測定した。測定は、Cukα線を用い、スキャンスピード0.5deg/minで行った。得られた回折パターンはJCPDSカード番号00−021−0139のCa9Co1228のピークで同定された。
【0023】
(評価試験)
ゼーベック係数S(VK-1)は、大気中で定常直流法(試料の両端に温度差を発生させ熱起電力を測定する方法)にて測定した。導電率σ(Sm-1)は、大気中で直流四端子法にて測定した。なお、導電率及びゼーベック係数は、300℃、400℃、500℃、600℃、700℃の各温度で大気中で測定した。このようにして求めた、ゼーベック係数S及び導電率σから、各温度における出力因子PF(Wm-1-2)をPF=S2×σの式により求めた。
【0024】
[比較例1,2]
Ga23粉末を用いず、CaCO3:Co34:Bi23が2.7:1.333:0.15のモル比となるようにした以外は、実施例1と同様の工程を経て比較例1の熱電変換材料を製造し、評価を行った。また、Bi23を用いず、CaCO3:Co34:Ga23が3:1.317:0.025のモル比となるようにした以外は、実施例1と同様の工程を経て比較例2の熱電変換材料を製造し、評価を行った。
【0025】
[比較例3]
Ga23粉末にかえて、MnO2粉末(純度4N,品番MNO03PB)を用い、CaCO3:Co34:Bi23:MnO2が2.7:1.317:0.15:0.05のモル比となるようにした以外は、実施例1と同様の工程を経て比較例3の熱電変換材料を製造し、評価を行った。
【0026】
(結果と考察)
図1は、実施例1の粉末XRD測定結果を示すグラフである。図1では、Ca9Co1228を示すピークが確認され、異相を示すピークが確認されなかった。このことから、実施例1の酸化物は、Ca9Co1228様の構造を有するCa2.7Bi0.3Co3.95Ga0.059であると推定された。また、図2は、比較例2の粉末XRD測定結果を示すグラフである。図2では、Ca9Co1228を示すピークが確認され、異相を示すピークが確認されなかった。このことから比較例2の酸化物は、Ca9Co1228様の構造を有するCa3Co3.95Ga0.059であると推定された。なお、一般にCa3Co49と称される物質は酸素不定比性を有するため、酸素量に幅がある。
【0027】
表1に、実施例1及び比較例1〜3のゼーベック係数、導電率、出力因子を示す。この結果から、実施例1では、比較例1〜3と比較して高温(700℃)での出力因子が大きく、ゼーベック係数も大きいことがわかった。具体的には、(Ca3-xBix)(Co4-yy)O9においてy=0である比較例1や、x=0である比較例2では、実施例1と比較して出力因子が小さく、Bi及びMの両方の成分が必要、即ちx>0,y>0を満たすことが必要であることがわかった。さらに、MがMnである比較例3も、実施例1と比較して出力因子が小さく、Mの種類にも好適なものがあることがわかった。
【0028】
【表1】

【0029】
表2及び図3に実施例1及び比較例1,2における温度と出力因子との関係を示す。実施例1では、300℃〜700℃の全温度範囲にわたって、比較例1,2と比較して出力因子が高かった。また、Gaを単独で用いた場合(比較例2,x=0)には、600℃から700℃に向けて出力因子が低下する傾向にあるが、Biを加えたところ、600℃から700℃に向けて出力因子は低下しなかった。このことから、BiとMとの両方を加えることにより、相乗効果が得られ、高温における出力特性を高めることができることがわかった。
【0030】
【表2】

【0031】
[実施例2〜7,比較例4〜6]
原料粉末の混合比を、表3に示すものとした以外は、実施例1と同様に実施例2〜7及び比較例4〜6の熱電変換材料を作成し、XRD、ゼーベック係数、比抵抗を測定し、出力因子を算出して評価を行った。
【0032】
【表3】

【0033】
粉末XRD測定の結果、実施例2〜7及び比較例4〜6の全てにおいて、Ca9Co1228を示すピークが確認され、異相を示すピークが確認されなかった。このことから、実施例2〜7及び比較例4〜6の酸化物は、いずれもCa9Co1228様の構造を有するものと推定された。
【0034】
表3に示したように、MがGaでありy=0.15である実施例2では、MがGaでありy=0.05である実施例1に比して出力因子が小さかったものの、比較例1〜3に比して出力因子が高かった。また、MがMnでありy=0.15である比較例4では、MがMnでありy=0.05である比較例3に比して出力因子が大きかったものの、M成分を含まない比較例1に比して出力因子が小さかった。このことから、M成分としてMnを添加した場合には、添加量を増減させても、出力因子が低いことがわかった。また、MがFeでありy=0.05である実施例3や、y=0.15である実施例4では、比較例1〜3に比して出力因子が大きかった。このことから、FeはM成分として好適であることがわかった。また、MがTiでありy=0.05である実施例5や、MがTiでありy=0.15である実施例6では、比較例1〜3に比して出力因子が大きかった。このことから、TiはM成分として好適であることがわかった。また、MがNbである場合、y=0.05である実施例7は、比較例1〜3に比して出力因子が大きく好ましいことがわかった。一方で、MがNbであっても、y=0.10である比較例5や、y=0.15である比較例6では、M成分を含まない比較例1に比して出力因子が小さかった。
【0035】
表4に実施例2〜7及び比較例4〜6における温度と出力因子との関係を示す。実施例2〜7では、700℃での出力因子が比較例1より大きく、300℃〜600℃での出力因子は、比較例1と同等かそれ以上であった。以下、各例について詳しく説明する。実施例2(MはGa,y=0.15)は、比較例1(y=0)に比して600℃及び700℃において出力因子が高かった。このことから、実施例2では高温における出力特性を高めることができることがわかった。比較例4(MはMn,y=0.15)は、比較例1に比して300℃〜700℃の全温度範囲にわたって、出力因子が低かった。このため、MがMnである場合には、高温だけでなく、低温においても出力特性の向上の効果が小さいことがわかった。実施例3,4(MはFe,y=0.05,0.15)では、比較例1に比して300℃〜700℃の全温度範囲にわたって、おおむね出力因子が高かった。このため、MがFeである場合には、高温だけでなく、低温においても出力特性を高めることができることがわかった。実施例5(MはTi,y=0.05)では、比較例1に比して600℃,700℃において特に出力因子が高かった。実施例6(MはTi,y=0.15)では、比較例1に比して600℃での出力因子が若干低かったものの、それ以外では出力因子が高かった。このことから、MがTiである場合にも、高温での出力特性を高めることができることがわかった。また、実施例7(MはNb,y=0.05)では、300℃〜700℃の全温度範囲にわたって、出力因子が高かった。このため、MがNbであり、y=0.05である場合には、高温だけでなく、低温においても出力特性を高めることができることがわかった、また、比較例5(MはNb,y=0.10)及び比較例6(MはNb,y=0.15)では、300℃〜700℃の全温度範囲にわたって出力因子が低かった。このため、MがNbであっても、yの量が適切でないと、高温だけでなく低温においても出力特性の向上の効果が小さいことがわかった。
【0036】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(Ca3-xBix)(Co4-yy)O9(式中、MはGa,Fe,Ti及びNbのうちの1つ以上の元素であり、xは0<x≦0.3を満たし、yは前記MがGa,Fe及びTiのうち1つ以上の元素である場合には0<y≦0.15を満たし、前記MがNbである場合には0<y<0.1を満たす)で表される酸化物を有する、熱電変換材料。
【請求項2】
X線回折におけるピーク位置がCa9Co1228で表される酸化物と一致する、請求項1に記載の熱電変換材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−58721(P2013−58721A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−29875(P2012−29875)
【出願日】平成24年2月14日(2012.2.14)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】