説明

球根類の植付機

【課題】本発明は、植付装置に種芋を供給する作業を自動化して作業者が極力走行操縦操作に専念できて、作業性及び作業効率の良い球根類の植付機を提供することを課題とする。
【解決手段】昇降する植付装置7の上部に多数の種芋類Aから一個ずつ取り込んで植付装置7へ繰り出す種芋類繰出し装置35を設け、この種芋類繰出し装置35を植付装置7の上昇タイミングに合わせて種芋類Aを一個ずつ底部から植付装置7へ繰り出させてなる種芋等の移植機とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種芋を含む球根類を圃場に植付ける球根類の植付機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
畝上を走行しながら作業者によって種芋供給部に供給された球根類を植付装置で圃場に植付ける球根類の植付機が知られている。
例えば、特許文献1に示されるように、種芋を貯留する種芋載せ台と該種芋載せ台から種芋が移動して収容される収容部と該収容部の下方に配置された複数の供給カップが周回する供給部と該供給部から受け取った種芋を圃場に植付ける植付装置を装備した球根類の植付機がある。作業者は、供給部の中央上方に配置された収容部から種芋を一個ずつ取出して供給部の各供給カップに種芋を入れることで植付作業を続ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−51613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成の球根類の植付機は、作業者が植付機の走行操縦操作を行いながら供給カップに種芋を入れる作業を行わなければならない。
そこで、本発明では、植付装置に種芋を供給する作業を自動化して作業者が極力走行操縦操作に専念出来る球根類の植付機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、昇降する植付装置7の上部に多数の種芋類Aから一個ずつ取り込んで植付装置7へ繰り出す種芋類繰出し装置35を設け、この種芋類繰出し装置35を植付装置7の上昇タイミングに合わせて種芋類Aを一個ずつ底部から植付装置7へ繰り出させてなる種芋等の移植機とする。
【0006】
この構成で、繰出し装置35の底部から繰り出された種芋類Aが植付装置7に自動的に供給されて圃場へ植え付けられる。
請求項2に係る発明は、種芋類繰出し装置35を種芋類Aを収容する供給ホッパ6とこの供給ホッパ6内部に設けた供給ローラ8で構成したことを特徴とする請求項1に記載の種芋等の移植機とする。
【0007】
この構成で、供給ホッパ6に収容された多数の種芋類Aが供給ローラ8で一個ずつ取出されて植付装置7へ繰り出されて植付装置7で圃場へ植え付けられる。
また、請求項3に係る発明は、種芋類繰出し装置35の側部に予備の種芋類Aを収容する補給ホッパ12を設け、適宜に補給ホッパ12から繰出し装置35側へ種芋類Aを補給可能にしたことを特徴とする請求項2に記載の種芋等の移植機とする。
【0008】
この構成で、請求項1に記載の発明の作用に加えて、補給ホッパ12内の種芋類Aを繰出し装置35側に補給しながら植付作業を長く続けられる。
また、請求項4に係る発明は、種芋類繰出し装置35を搬送室30を形成した搬送ベルト22で構成したことを特徴とする請求項1に記載の種芋等の移植機とする。
【0009】
この構成で搬送ベルト22の上側で搬送室30へ取り込まれた種芋類Aが搬送ベルト22の下側で植付装置7へ落下供給されて圃場へ植え付けられる。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、種芋類Aが繰出し装置35で自動的に一個ずつ植付装置7に供給されるので、作業者が機体の操縦操作に専念出来て、植付作業が楽に行える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例を示す植付機の左側面図である。
【図2】供給ローラの実施例を示す側断面図である。
【図3】供給装置の別実施例を示す斜視図である。
【図4】別実施例供給装置の一部斜視図である。
【図5】別実施例供給装置の一部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記本発明の技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について、以下に、図面を参照しつつ説明する。
種芋類の植付機1は、一体構成のエンジン2と主伝動ケース2a、機体前部を支持する左右の前輪4,4、左右の伝動支持部5a,5aを介して機体高さと左右高さを調整可能に駆動支持する左右の駆動輪5,5、主伝動ケース2aの後部から一体的に延びるハンドルフレーム3、その後端に一体形成した歩行操縦用の操縦ハンドル3aよりなる走行部1aと、ジャガイモ等の種芋やラッキョウ等を含む種芋類Aを圃場に植付けるための植付部1bとから構成される。尚、植付機1のエンジン2を設けた側を機体前部、操縦ハンドル3a側を機体後部と謂い、操縦ハンドル3a側の後部に立ってエンジン2側の前部に向かって左側を機体の左側、右側を機体の右側と謂う。
【0013】
植付部1bは、種芋類繰出し装置35を構成する種芋類Aを貯留して底部の供給口6aから一個ずつ落下する供給ホッパ6と該供給口6aから受け取った種芋類Aを植付カップ7aが昇降動作して畝に植え付ける植付装置7で構成する。
【0014】
供給ホッパ6の内部には、種芋類Aを受け入れる受穴8aを周面に等配形成した供給ローラ8を左右方向へ横架軸支している。この供給ローラ8の前側を供給ホッパ6内面に接近して受穴8aに入った一個の種芋類Aが供給口6aに向けて送られ、供給ローラ8の後側で供給ホッパ6内面が下り傾斜して種芋類Aが受穴8aに一個ずつ掬い上げられるようにしている。この供給ローラ8は、左側面視で左回りに間欠回動し、種芋類Aを上昇位置にある植付カップ7aに供給する。なお、供給ローラ8に設ける受穴8aは、軸方向に穴幅を調整可能にして種芋類Aを一個ずつ受け入れるようにしている。
【0015】
植付装置7の植付カップ7aは、主伝動ケース2aの後部に装着した副伝動ケース2bから後方へ延ばした上下リンク9で昇降動作し、降下した位置で畝に突き刺さって植付カップ7aが前後に開いて種芋類Aを土中に植え付ける。
【0016】
植付カップ7aの昇降と供給ローラ8の回転を同期させ、植付カップ7aが最上昇位置で供給ローラ8が受穴8a一個分回動して種芋類Aを植付カップ7aに供給する。
供給ホッパ6の前側に、補給ホッパ12を支軸10に枢支して副伝動ケース2bの支台13に載置している。この補給ホッパ12の後底面12aを後方に向かって登り傾斜させ、支軸10に固着した供給ハンドル11を下方へ押し下げると、補給ホッパ12が立ち上がって、内部の種芋類Aを供給ホッパ6に補給する。なお、補給ホッパ12の支軸10にトーションスプリングを介在させて補助ホッパ12を起立付勢することで、供給ハンドル11による押し上げを楽に行えるようにすると良い。
【0017】
図2に供給ローラ8の詳細構造を示している。
この供給ローラ8は、中心に固定の吸引軸17を設け、この吸引軸17に対して供給ローラ8を回転するようにしている。
【0018】
供給ローラ8の受穴8aから中心に向かって通口16を設け、吸引軸17の周囲に設けた吸引溝17aと通口16が一致すると受穴8a内の種芋類Aが吸引される。なお、吸引溝17aから吸引するコンプレッサーの吸引側にフィルタを設けて、受穴8aの土や肥料を分離するようにしている。
【0019】
吸引軸17の真下位置には中心の吐出口18に通じる排出孔19を設け、供給ローラ8の通口16が排出孔19に通じると空気と共に種芋類Aを下方に向かって噴き出すようにして種芋類Aの排出を確実に行う。なお、吐出口18には粒状の肥料を混入し、種芋類Aと共に肥料を噴き出すようにしている。
【0020】
供給ローラ8の受穴8aの回転前側角部8bを緩やかな曲面として種芋類Aを受け入れやすくし、回転後側角部に弾性フィン15を立設して供給ホッパ6の前側内周面に摺接するようにしている。
【0021】
図3〜図5は、種芋類Aを植付装置7に供給する種芋類繰出し装置35の別実施例で、左右で前後方向に軸支したローラ20,21に搬送ベルト22を巻き掛け、該搬送ベルト22に搬送仕切23を種芋類Aの収容間隔を空けて立設し、搬送ベルト22を前後で挟むサイド壁28,29を設け、サイド壁28,29と隣接する搬送仕切23で種芋類Aの一個分の搬送室30を形成する。送り先側のローラ21上から植付装置7上位置までには、前後サイド壁28,29を繋いで覆う天板24を設けて、植付装置7の上昇タイミングで搬送ベルト22を搬送室30一個分ずつ間欠的に移動させて、前記搬送室30に入った種芋類Aを植付装置7の供給ホッパ7bに落下する。
【0022】
前側サイド壁29の前に補給ホッパ25を支軸27で枢支しバネ26で前側を浮かせ気味に支持している。この補給ホッパ25に種芋類Aを収容しておいて、搬送ベルト22の空の搬送室30が移動してくると、種芋類Aが補給ホッパ25底部のガイド溝25aを通って搬送室30に収容される。なお、支軸27は前側サイド壁29に近付けて補給ホッパ25が昇降しても搬送室30への供給位置が変動しないようにしている。
【0023】
図5は、天板24の植付装置7上位置の別構成で、支軸31で搬送仕切23のシャッタ32を植付装置7の上昇タイミングで開閉するように設けて種芋類Aの落下供給を確実にしている。33は落下ガイドである。
【0024】
図1の構成の移植機1は、作業者が操縦ハンドル3aの後側を歩きながら機体を走行させる。すると、供給ホッパ6内の種芋類Aが自動的に供給ローラ8で一個ずつ植付装置7に供給され、該植付装置7で圃場へ植え付けられる。
【0025】
そして、供給ホッパ6内の種芋類Aが少なくなると、供給ハンドル11を押し下げて補給ホッパ12の種芋類Aを供給ホッパ6へ補給する。再度、供給ホッパ6の種芋類Aが無くなると、機体を畦に近付けて種芋類Aを供給ホッパ6と補給ホッパ12に積み込むのである。
【符号の説明】
【0026】
A 種芋類
6 供給ホッパ
7 植付装置
8 供給ローラ
12 補給ホッパ
22 搬送ベルト
30 搬送室
35 繰出し装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降する植付装置(7)の上部に多数の種芋類(A)から一個ずつ取り込んで植付装置(7)へ繰り出す種芋類繰出し装置(35)を設け、この種芋類繰出し装置(35)を植付装置(7)の上昇タイミングに合わせて種芋類(A)を一個ずつ底部から植付装置(7)へ繰り出させてなる種芋等の移植機。
【請求項2】
種芋類繰出し装置(35)を種芋類(A)を収容する供給ホッパ(6)とこの供給ホッパ(6)内部に設けた供給ローラ(8)で構成したことを特徴とする請求項1に記載の種芋等の移植機。
【請求項3】
種芋類繰出し装置(35)の側部に予備の種芋類(A)を収容する補給ホッパ(12)を設け、適宜に補給ホッパ(12)から繰出し装置(35)側へ種芋類(A)を補給可能にしたことを特徴とする請求項2に記載の種芋等の移植機。
【請求項4】
種芋類繰出し装置(35)を搬送室(30)を形成した搬送ベルト(22)で構成したことを特徴とする請求項1に記載の種芋等の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−39921(P2012−39921A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183177(P2010−183177)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】