説明

田植機の苗送り装置

【課題】 苗載せ台の横移送及び苗縦送り部材が構造簡単かつ耐久性に富んだ苗送り装置によって行なえるようにする。
【解決手段】 植付けミッションケース24に往復摺動及び回動自在に貫設した苗送り軸40を、苗載せ台と一体移動するように苗載せ台に支持させてある。苗送り軸40は、苗載せ台が有する苗縦送り輪体を回転操作するように苗縦送り輪体に連動させてある。苗植付け機構の駆動に連動して駆動回動される横送り駆動軸64、横送り駆動軸64によって往復移送されて苗送り軸40を往復移送する横送り体65、苗載せ台の左右の横移送ストロークエンドにおいて、駆動爪66によって操作アーム67を揺動操作することによって苗送り軸40を設定回転角だけ回転駆動する苗送り軸駆動手段69を、植付けミッションケース24の内部に設けてある。苗送り軸40の植付けミッションケース24から突出する部分に、伸縮自在なカバー70を外嵌してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗植付け機構に苗供給する苗載せ台を走行機体横方向に往復移動自在に設け、前記苗載せ台に載置された苗を苗植付け機構に向けて縦送りする苗縦送り部材を前記苗載せ台に設けた田植機の苗送り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記田植機において、従来、たとえば特許文献1に示されるように、苗送り装置を構成されたものがあった。
すなわち、苗載せ台5に取付けブラケット17及び連結用フレーム16を介して一体移動自在に連結された螺旋軸13、螺旋軸13に回動自在に外嵌した筒軸11、螺旋軸13の螺旋溝14に突起14Aで係合した状態で筒軸11に連結しているコマ部材15を備え、筒軸11が回転駆動されることにより、螺旋軸13が植付伝動ケース2に対して往復横摺動するように移送されて苗載せ台5を走行機体横方向に往復移送する。苗載せ台5の回転送り具18の駆動軸19に、ワンウエイクラッチ20、ワンウエイクラッチ20の作動アーム21を介して連動された中継軸22を苗載せ台5に設け、植付伝動ケース2にストライカ24を回転軸10によって駆動自在に設け、苗載せ台5の横移動スロトークエンドにおいて、ストライカ24が中継軸22の被動部材23に作用して、回転送り具18を所定回転角だけ駆動するように構成されたものがあった。
【0003】
【特許文献1】特開昭62−69916号公報(第2,3頁、第6図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の苗送り装置を採用すると、苗載せ台を横移送するための専用の操作軸としての螺旋軸を備えるとともに、回転送り具(苗縦送り部材に相当)を駆動するための専用の操作軸としての中継軸を備える必要があり、構造面などで不利になっていた。
【0005】
本発明の目的は、苗載せ台の横移送及び苗縦送り部材の駆動が構造簡単に行なうことができ、しかも、耐久性の面で富んだ田植機の苗送り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明にあっては、苗植付け機構に苗供給する苗載せ台を走行機体横方向に往復移動自在に設け、前記苗載せ台に載置された苗を苗植付け機構に向けて縦送りする苗縦送り部材を前記苗載せ台に設けた田植機の苗送り装置において、
前記苗載せ台と走行機体横方向に一体移動するように苗載せ台の左右一対の連結部に連結され、かつ、前記苗縦送り部材に動力伝達するように連動されるとともに前記左右一対の連結部に回動自在に連結された苗送り軸を、植付けミッションケースに往復摺動及び回動自在に貫設し、
前記植付けミッションケースの内部に回動自在に支持されるとともに前記苗植付け機構の駆動に連動して駆動回動される横送り駆動軸、及び、前記横送り駆動軸によって走行機体横方向に往復横送り移送されて前記苗送り軸を往復移送するように前記横送り駆動軸及び前記苗送り軸に係合された横送り体を備え、
前記植付けミッションケースの内部に、苗載せ台が左右の横移送ストロークエンドに到達した際に前記苗送り軸を設定回転角だけ回転駆動する苗送り軸駆動手段を設け、
前記植付けミッションケースの外部で前記苗送り軸に外嵌されるとともに苗送り軸の軸芯方向に伸縮自在なカバーを備えてある。
【0007】
すなわち、横送り駆動軸が苗植付け機構の駆動に連動して回動駆動されて横送り体を往復移送してこの横送り体を介して苗送り軸を植付けミッションケースに対して走行機体横方向に往復移送する。そして、苗送り軸が苗載せ台の連結部に一体移動自在に連結していることにより、苗載せ台が横送り軸によって走行機体横方向に往復移送される。これに伴って苗載せ台が左右の横移送ストロークエンドに到達すると、苗送り軸駆動手段が苗送り軸を設定回転角だけ回転駆動して苗送り軸が苗縦送り部材に動力伝達する。これにより、苗縦送り部材が苗送り軸によって駆動される。
【0008】
苗送り軸には植付けミッションケースに対して出退する部分が存在するが、苗送り軸の植付けミッションケースから突出した部分はカバーによって覆われて泥土が付着しにくく、苗送り軸によって植付けミッションケースの内部に泥土が持ち込まれる事態が発生しにくくなる。
【0009】
苗送り軸が回転駆動されて苗縦送り部材を駆動する際、カバーが苗送り軸に付いて回転してカバーに捩れが発生しても、苗送り軸は設定回転角だけ回転駆動されるものであることから、カバーに大幅な捩れが発生しなくてカバー損傷が発生しにくくなる。
【0010】
従って、本第1発明によれば、苗送り軸が苗載せ台の横移送軸にもなり、苗縦送り部材の駆動軸にもなって苗載せ台の横移送も、苗縦送り部材の駆動も行なうように構造の簡略化を図って経済面や重量面で有利に得ることができる。しかも、カバーによって植え付けミッションケースの泥土入り込みを回避でき、かつ、カバーの損傷が発生しにくくて泥土の入り込みによる故障が発生しにくいように優れた耐久性を発揮させることができる。
【0011】
本第2発明にあっては、本第1発明の構成において、前記カバーの一端側が前記苗送り軸に一体回転自在に連結されている。
【0012】
すなわち、苗送り軸が回転駆動されて苗縦送り部材に動力伝達する際、カバーが苗縦送り軸と共に回転し、カバーと苗送り軸の間から泥土が入り込みにくくなる。
【0013】
従って、本第2発明によれば、苗送り軸とカバーの間を精度よくシールし、植付けミッションケースの泥土の入り込みをより精度よく防止して一層優れた耐久性を発揮させることができる。
【0014】
本第3発明にあっては、本第1又は第2発明の構成において、前記左右一対の連結部に、前記苗送り軸と平行又はほぼ平行に配置した補強杆を架設してある。
【0015】
すなわち、苗送り軸を苗載せ台の極力横端側に移送力を伝達するように長くしても、苗送り軸に苗載せ台の横移送抵抗などに起因する撓みが発生しにくいように補強杆によって補強される。
【0016】
従って、本第3発明によれば、苗送り軸による横移送力が苗載せ台の極力横端側に作用するように苗送り軸を長くしても、苗送り軸にも撓みなどの歪みが発生しにくく、苗載せ台を歪みが発生しにくい状態にしながらスムーズに横移送することができる。
【0017】
本第4発明にあっては、本第1〜第3発明のいずれか一つの構成において、前記左右一対の連結部に、前記苗載せ台上の苗に支持作用する苗ステーを支持させてある。
【0018】
すなわち、左右一対の連結部が苗ステーによって支持されて撓むなど変形しにくくなり、苗送り軸を歪みにくいように強固に支持するようになる。
【0019】
従って、本第4発明によれば、苗ステーを補強手段に利用した簡単な構造により、苗送り軸を歪みにくように補強して苗載せ台がスムーズに横移送されるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1,2に示すように、左右一対の駆動自在な車輪1によって自走する走行機体の前端部に、前記車輪1などに動力伝達するエンジン2、エンジン用の燃料タンク3を備えた原動部を設け、前記走行機体の後部に、走行機体の機体フレーム20から後方に延出する操縦ハンドル4などを備えた操縦部A、及び、走行機体の横方向に並ぶ四つの苗植付け機構31などを備えた苗植え作業部30を設け、前記走行機体の下方に、左右車輪1,1の間に位置するセンター接地フロート5、左右車輪1,1の両横外側に分かれて位置する左右一対のサイド接地フロート6を設け、左右車輪1,1の上方に位置する予備苗載せ台7を支柱8を介して走行機体に支持させて、4条植え可能な歩行型田植機を構成してある。
【0021】
この田植機は、稲苗の植付け作業を行なうものであり、エンジン2の下方に位置する油圧式の昇降シリンダ9を伸縮操作すると、この昇降シリンダ9が左右車輪1の車輪支持体に兼用の車輪駆動ケース10を走行機体の機体フレーム20に対して上下に揺動操作して左右車輪1,1を機体フレーム20に対して昇降操作することにより、走行機体を各接地フロート5,6が田面に接地した下降作業状態と、各接地フロート5,6が田面から上昇して離れた上昇非作業状態とに昇降操作する。走行機体を前記下降作業状態にして走行させると、各接地フロート5,6が田面上を滑って整地していき、苗植え作業部30が前記四つの苗植付け機構31によって田面の接地フロート5,6による整地箇所に苗植付けを行なっていく。
【0022】
図2に示すように、走行機体の前部の前記エンジン3の後方近くに設けたミッションケース21、このミッションケース21の前部から前方に延出するエンジン搭載フレーム22、前記ミッションケース21の後部から後方に延出する角形鋼管材で成る伝動ケース23、この伝動ケース23の後端部に連結された植付けミッションケース24、この植付けミッションケース24の両横側部から走行機体横外向きに延出する円筒形の伝動ケース25、前記各伝動ケース25の延出端部に連結された植付け駆動ケース26のそれぞれによって前記機体フレーム20を構成し、前記エンジン搭載フレーム22の上面側に前記エンジン2を設け、前記ミッションケース21の両横側に前記車輪駆動ケース10を介して前記車輪1を支持させてある。
【0023】
図1,2に示すように、操縦ハンドル4は、前記植付けミッションケース24の両横側から走行機体後方上方向きに延出された角形鋼管材で成る基部側ハンドル杆4aと、この左右一対の基部側ハンドル杆4aの延出端部に固定されるとともに左右一対の握り部4cを備えた円形鋼管材で成る先端側ハンドル杆4bとによって構成してある。
【0024】
苗植え作業部30について詳述すると、図2,3,4に示すように、苗植え作業部30は、走行機体の横方向での中心部に位置する前記植付けミッションケース24、この植付けミッションケース24の下部ケース24aの両横側に位置する前記植付け駆動ケース26、前記植付けミッションケース24の両横側に駆動自在に装着した前記苗植付け機構31、前記各植付け駆動ケース26の走行機体内方側の横側に駆動自在に装着した前記苗植付け機構31、前記植付けミッションケース24及び前記各植付け駆動ケース26よりも走行機体後方側で、前記操縦ハンドル4の基部側ハンドル杆4aの上端側の前方側近くに設けた一つの苗載せ台32を備えて構成してある。
【0025】
図3,4に示すように、各苗植付け機構31は、植付けミッションケース24や植付け駆動ケース26が駆動回動自在に支持する駆動アーム33に中間部が相対回動自在に連結され、植付けミッションケース24や植付け駆動ケース26が往復揺動自在に支持する揺動アーム34に一端側が相対回動自在に連結された植付けアーム35、この植付けアーム35の他端側に位置する植付け爪36に沿って往復摺動するように植え付けアーム35に摺動自在に支持されるとともに植え付けアーム35の内部に位置する押し出し駆動機構(図示せず)によって摺動駆動されるように構成した苗押し出し具37を備えて構成してある。
これにより、各苗植付け機構31は、植付けアーム35が揺動アーム34によって支持される一端側を揺動支点にした状態で走行機体上下方向に往復揺動するように駆動アーム33によって駆動されて、植付け爪36の先端側が苗載せ台32の下端側に位置するガイドレール38に設けてある苗取り出し口38aと、田面との間を回動軌跡Tを描きながら上下に往復移動し、苗取り出し口38aにおいて苗載せ台上のマット状苗から一株分のブロック苗を切断するとともに取り出して下降搬送し、田面に下降すると、そのブロック苗を苗押し出し具37によって植付け爪36から田面の泥土に押し出して植え付け、この苗植付けの後、田面から上昇して苗取り出し口38aに戻るという苗植え運動を行なう。
【0026】
苗載せ台32は、前記複数の苗植付け機構31に各別に供給する複数枚のマット状苗を走行機体横方向に並べて載置するように構成して、かつ、苗載せ台32の上端側ほど走行機体後方側に位置する状態の傾斜姿勢にして、前記各植付け駆動ケース26から走行機体後方向きに延出する支持フレーム11(図4参照)によって支持される前記ガイドレール38などに走行機体横方向に摺動自在に支持されている。図4などに示すように、苗載せ台32の走行機体横方向に沿うところの苗載せ台横方向に並ぶ複数の苗載置部それぞれの裏面側の苗載せ台縦方向での二箇所に苗縦送り輪体39を設けてある。苗載せ台縦方向での上方側に位置する全ての苗縦送り輪体39も、苗載せ台縦方向での下方側に位置する全ての苗縦送り輪体39もそれぞれ一本の回転支軸39aによって一体回転自在に支持されている。上方側の苗縦送り輪体39と下方側の苗縦送り輪体39が連動して回転するように、上方側の苗縦送り輪体39の回転支軸39aと、下方側の苗縦送り輪体39の回転支軸39aとが無端チェーン(図示せず)によって連動されている。
【0027】
図3,4に示すように、前記植付けミッションケース24は、前記伝動ケース23,25及び前記苗植付け機構31が連結している下部ケース部24aと、この下部ケース部24aとは別体のケースに製作して前記下部ケース部24aの上端面上に載置して連結ボルトによって脱着自在に連結した上部ケース部24bとによって構成してある。前記植付けミッションケース24に、前記上部ケース部24bを走行機体横方向に摺動自在に貫通した苗送り軸40を設けるとともに、この苗送り軸40を、苗載せ台32の下端側の両端部に連結部構成部材を付設して苗載せ台32から前方向きに延出する状態に設けた連結部41に走行機体横方向に一体移動するように連結してある。前記苗送り軸40を、植付けミッションケース24の上部ケース部24bに対して回動するように構成するとともに苗載せ台32の前記左右一対の連結部41に回動自在に支持させ、前記苗送り軸40の一端側に一体回動自在に設けた苗縦送りアーム42を、苗載せ台32の前記上方側の苗縦送り輪体39の回転支軸39aに一方向回転クラッチ(図示せず)を介して連結された輪体駆動アーム39bに連動ロッド43を介して連動させてある。植付けミッションケース24の前記下部ケース部24aの内部に、前記伝動ケース23及び前記ミッションケース21を介してエンジン2から伝達される駆動力を入力して駆動されて前記苗植付け機構31の駆動アーム33を駆動する植付け機構用駆動機構50(図5参照)を設け、前記各植付け駆動ケース26の内部に、前記植付けミッションケース内の植付け機構用駆動機構50から前記伝動ケース25を介して伝達される駆動力を前記苗植付け機構31の駆動アーム33に伝達してこの駆動アーム33を駆動するチェーン利用の伝動機構(図示せず)を設け、植付けミッションケース24の前記上部ケース部24bの内部に、前記下部ケース部内の植付け機構用駆動機構50から駆動力を入力して駆動されて前記苗送り軸40を往復摺動するように駆動し、かつ、苗載せ台32が左右の横送りストロークエンドに到達する都度に苗送り軸40を設定回転だけ回転駆動して苗縦送りアーム42を駆動する苗載せ台用駆動機構60(図5参照)を設けてある。
【0028】
これにより、植付けミッションケース24は、下部ケース部24aの内部に位置する植付け機構用駆動機構50によって植付けミッションケース24の両横側に位置する苗植付け機構31の駆動アーム33を駆動することによってその両苗植付け機構31,31を前記苗植え運動を行なうように駆動し、各植付け駆動ケース26は、植付け駆動ケース26の内部に位置する伝動機構によって植え付け駆動ケース24の内側に位置する苗植付け機構31の駆動アーム33を駆動することによってその苗植付け機構31を前記苗植え運動を行なうように駆動する。また、植付けミッションケース24は、上部ケース部24bの内部に位置する苗載せ台用駆動機構60によって苗送り軸40を摺動駆動することにより、苗載せ台32を前記各苗植付け機構31の駆動に連動させて前記ガイドレール38に沿って走行機体横方向に往復移動するように横送り移送する。さらに、植付けミッションケース24は、苗載せ台32が左右の横移動ストロークエンドに到達する都度、上部ケース部24bの内部に位置する苗載せ台用駆動機構60によって苗送り軸40を回転駆動して苗縦送りアーム42を揺動操作することにより、苗載せ台32の全ての苗縦送り輪体39を苗縦送り方向に回動駆動する。
【0029】
つまり、苗植え作業部30は、植付けミッションケース24の両横側に装着されている苗植付け機構31を植付けミッションケース24による駆動アーム33の駆動によって前記苗植え運動を行なうように駆動し、各植付け駆動ケース26に装着されている苗植付け機構31を植付け駆動ケース26による駆動アーム33の駆動によって前記苗植え運動を行なうように駆動し、各苗植付け機構31によって苗載せ台32に載置されたマット状苗から一株分のブロック苗を切断して取り出し、田面に下降搬送して泥土部に植え付けるようになっている。
【0030】
そして、植付けミッションケース24による苗送り軸40の往復摺動駆動によって苗載せ台32を苗植付け機構31の苗植え運動に連動させて走行機体横方向に往復移送し、各苗植付け機構31が苗植付け機構31に供給するべきマット状苗の下端部の横一端側から他端側に向けて順次に一株分のブロック苗を切断して取り出していくように各マット状苗をこのマット状苗に対応する前記苗取り出し口38aに対して走行機体横方向に往復移送するようになっている。また、苗載せ台32が左右の横移動ストロークエンドに到達すると、植え付けミッションケース24による苗送り軸40の設定回転角だけの回転駆動によって苗載せ台32の全ての苗縦送り輪体39を回動駆動して、苗載せ台32に載置されている全てのマット状苗を苗植付け機構31による苗載せ台縦方向での取り出し長さに対応した分だけ苗取り出し口38aに向けて縦送りするようになっている。
【0031】
図5,6,7に示すように、植付けミッションケース24の下部ケース部24aの内部に位置する前記植付け機構用駆動機構50は、前記伝動ケース23の伝動軸23aに入力部材51aが連結されたトルクリミッター51、このトルクリミッター51の出力軸51bが一体回転自在に備えている伝動ギヤ52に入力ギヤ53aが噛合った植付けクラッチ53、この植付けクラッチ53の筒軸形の出力部材53bを挿通しているとともにこの出力部材53bに一体回動自在に連結されている植付け駆動軸54、この植付け駆動軸54が一体回転自在に備えている出力スプロケット54aに巻回された伝動チェーン55、この伝動チェーン55に入力スプロケット56aが噛合っている爪側出力軸56、前記伝動チェーン55に入力スプロケット57aが噛合っている苗載せ台側出力軸57を備えて構成してある。
【0032】
すなわち、植付け機構用駆動機構50は、エンジン2から伝動ケース23に伝達された駆動力をトルクリミッター51に入力し、このトルクリミッター51の出力を植え付けクラッチ53を介して植付け駆動軸54に伝達してこの植付け駆動軸54によって植付けミッションケース24の両横側に位置する前記苗植付け機構31の駆動アーム33を駆動し、前記植付け駆動軸54の駆動力を伝動チェーン55を介して爪側出力軸56に伝達し、この爪側出力軸56の駆動力を爪側出力軸56の一端側から前記伝動ケース25を介して前記一方の植付け駆動ケース26に、爪側出力軸56の他端側から前記伝動ケース25を介して前記他方の植付け駆動ケース26にそれぞれ伝達する。
【0033】
図5,7に示すように、植付けミッションケース24の上部ケース部24bの内部に位置する前記苗載せ台用駆動機構60は、下部ケース部24aの前記苗載せ台側出力軸57と一体軸になっている入力軸61、この入力軸61が一体回転自在に備えている伝動ギヤ62に受動ギヤ63で連動している横送り駆動軸64、この横送り駆動軸64に係合筒部65bが相対回転自在に外嵌している横送り体65、前記横送り駆動軸64の両端部に設けた駆動爪66を備えた苗送り軸駆動手段69を備えて構成してある。
【0034】
横送り体65の係合筒部65bに設けてある爪体65aが横送り駆動軸64の周面に設けられた螺旋溝64aに係入していることにより、横送り体65は、横送り駆動軸64によってこの横送り駆動軸64に沿って往復移送されるように横送り駆動軸64に対して係合している。横送り体65は、この横送り体65の前記係合筒部65bとは反対側の端部に位置する一対の連結部65cで前記横送り軸40と共に植付けミッションケース24の上部ケース部24bに対して摺動するように横送り軸40に対して係合されている。
【0035】
前記苗送り軸駆動手段69は、横送り駆動軸64の両端部に一体回動自在に連結された前記駆動爪66、前記横送り体65の両横側で横送り軸40に一体回動及び一体移動自在に設けた操作アーム67、各操作アーム67に作用するリターンばね68などを備えて構成してある。
【0036】
苗載せ台32が左右の横移動ストロークエンドに到達すると、その横移動ストロークエンドに対応した方の操作アーム67が駆動爪66の回動範囲に入り込み、駆動爪66が回動するに伴って操作アーム67に当接して操作アーム67を揺動操作することによって苗送り軸40を回動駆動する。駆動爪66が操作アーム67から外れると、操作アーム67がリターンばね68の復元操作のために待機位置に復帰するようになっている。
【0037】
すなわち、苗載せ台用駆動機構60は、下部ケース部24aの苗載せ台側出力軸57の駆動力を入力軸61によって入力して受動ギヤ63に伝達して苗送り軸64を常に回動するように駆動し、この横送り軸64によって横送り体65を横送り軸64に沿って走行機体横方向に往復移動するように横送り駆動してこの横送り体65によって苗送り軸40を走行機体横方向に往復移送し、これにより、苗載せ台32を走行機体横方向に往復移送する。そして、苗送り軸40が左右の横移動ストロークエンドに到達して苗載せ台32が左右の横移動ストロークエンドに到達した際、苗送り軸駆動手段69のそのストロークエンドに対応した側の駆動爪66と操作アーム67とによって苗送り軸40を必要な苗縦送り量に対応したものとして設定された設定回転角だけ回動操作し、これにより、前記苗縦送りアーム42を所定角度だけ揺動駆動して各苗縦送り輪体39を回動駆動し、苗載せ台32上のマット状苗を苗縦送り輪体39によって苗植付け機構31に向けて苗植付け機構31の苗載せ台縦方向での苗取り量に対応する分を縦送りする。
【0038】
図2,5に示すように、前記苗送り軸40の植付けミッションケース24から両横側に突出する部分に、苗送り軸40への泥土付着を防止するようにゴム製のカバー70を外嵌してある。
【0039】
各カバー70は、苗送り軸40の軸芯方向に伸縮するように蛇腹形に構成してある。各カバー70の苗送り軸40の端側に位置する方の端部71に突条71aを設け、この突条71aが苗送り軸40の環状溝に入り込んでいることにより、かつ、カバー70がゴム製のために備える弾性復元力によってカバー70の端部71が苗送り軸40に嵌着していることにより、各カバー70の苗送り軸40の端側に位置する方の端部71が苗送り軸40に一体移動及び一体回転自在に連結されている。各カバー70の植付けミッションケース24の方に位置する端部72に突条72aを設け、この突条72aが上部ケース部24bの筒部24cの環状溝に入り込んでいることにより、かつ、カバー70がゴム製のために備える弾性復元力によってカバー70の端部72が上部ケース部24bの筒部24cに嵌着していることにより、各カバー70の植付けミッションケース24の方に位置する端部72が上部ケース部24bに回転不能に連結されている。
【0040】
つまり、各カバー70は、苗送り軸40の摺動に伴って伸縮しながら、苗送り軸40の回動に伴ってカバー端部71の方で苗送り軸40と共に回動しながら苗送り軸40をカバーするようになっている。
【0041】
図2,8などに示すように、前記苗送り軸40と平行又はほぼ平行に位置して苗送り軸40を補強するように配置した金属製の補強杆75を苗載せ台32の前記左右一対の連結部41にわたって連結してある。図3に示すように、前記補強杆75に苗支持面75aを備えさせるとともに、この苗支持面75aは、苗載せ台32の下端部に位置した苗の苗葉を植付け爪36の回動軌跡Tから上方に退避した位置に受け止め支持して苗葉が苗植付け機構31の植付け爪36に干渉することを防止するようになっている。
【0042】
図3などに示すように、苗載せ台32の下端側の上方に苗ステー76を設けてある。図2,9などに示すように、この苗ステー76は、前記苗送り軸40と平行又はほぼ平行に位置するように配置して苗載せ台32の前記左右一対の連結部41に支持させた連結杆76aと、この連結杆76aの複数箇所から苗載せ台32の上端側に向けて延出された支持杆76bとを備えて構成してある。
【0043】
すなわち、苗ステー76の各支持杆76bは、苗載せ台32上のマット状苗の床土部に支持作用してマット状苗が苗載せ台32から浮き上がることを抑制する。また、苗ステー76の連結杆76aは、苗載せ台32の連結部41に撓みが発生しにくくなるように左右一対の連結部41を連結し、これにより、苗送り軸40が歪みにくい状態で連結部41に支持されるように連結部41による苗縦送り軸40の支持強度を向上させている。
【0044】
〔別実施例〕
上記実施例の如く苗縦送り輪体39を採用したものに替え、苗縦送りベルトや苗縦送り爪を採用したものにも本発明は適用できるのであり、苗縦送り輪体39、苗縦送りベルト、苗縦送り爪などを総称して苗縦送り部材39と呼称する。
【0045】
本発明は、歩行型田植機の他、乗用型田植機にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】歩行型田植機全体の側面図
【図2】歩行型田植機全体の平面図
【図3】苗植え作業部の機体中央部での側面図
【図4】苗植え作業部の機体横外側部での側面図
【図5】植付け機構用駆動機構、苗載せ台用駆動機構の正面図
【図6】植付け機構用駆動機構の側面図
【図7】植付け機構用駆動機構、苗載せ台用駆動機構の側面図
【図8】苗載せ台の平面図
【図9】苗載せ台の補強杆配設部での断面図
【符号の説明】
【0047】
24 植付けミッションケース
31 苗植付け機構
32 苗載せ台
39 苗縦送り部材
40 苗送り軸
41 連結部
64 苗送り駆動軸
65 横送り体
69 苗送り軸駆動手段
70 カバー
75 補強杆
76 苗ステー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗植付け機構に苗供給する苗載せ台を走行機体横方向に往復移動自在に設け、前記苗載せ台に載置された苗を苗植付け機構に向けて縦送りする苗縦送り部材を前記苗載せ台に設けた田植機の苗送り装置であって、
前記苗載せ台と走行機体横方向に一体移動するように苗載せ台の左右一対の連結部に連結され、かつ、前記苗縦送り部材に動力伝達するように連動されるとともに前記左右一対の連結部に回動自在に連結された苗送り軸を、植付けミッションケースに往復摺動及び回動自在に貫設し、
前記植付けミッションケースの内部に回動自在に支持されるとともに前記苗植付け機構の駆動に連動して駆動回動される横送り駆動軸、及び、前記横送り駆動軸によって走行機体横方向に往復横送り移送されて前記苗送り軸を往復移送するように前記横送り駆動軸及び前記苗送り軸に係合された横送り体を備え、
前記植付けミッションケースの内部に、苗載せ台が左右の横移送ストロークエンドに到達した際に前記苗送り軸を設定回転角だけ回転駆動する苗送り軸駆動手段を設け、
前記植付けミッションケースの外部で前記苗送り軸に外嵌されるとともに苗送り軸の軸芯方向に伸縮自在なカバーを備えてある田植機の苗送り装置。
【請求項2】
前記カバーの一端側が前記苗送り軸に一体回転自在に連結されている請求項1記載の田植機の苗送り装置。
【請求項3】
前記左右一対の連結部に、前記苗送り軸と平行又はほぼ平行に配置した補強杆を架設してある請求項1又は2記載の田植機の苗送り装置。
【請求項4】
前記左右一対の連結部に、前記苗載せ台上の苗に支持作用する苗ステーを支持させてある請求項1〜3のいずれか1項に記載の田植機の苗送り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−230349(P2006−230349A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−53138(P2005−53138)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】