説明

田植機

【課題】苗載台を正確に苗台端位置に移動させて、欠株を防止することができる田植機を提供することである。
【解決手段】苗載台41を苗台端位置に移動させる信号が入力されると、苗載台41が第一所定速度で移動するように変速モータ71を駆動制御して、苗台位置検出により前記苗載台41が前記苗台端位置より手前の所定位置に到達したことを検出すると、前記植付クラッチ55が「切」となるように植付クラッチモータ73を駆動制御するとともに、前記苗載台41が前記第一所定速度よりも遅い第二所定速度で移動するように変速モータ71を駆動制御するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は田植機の技術に関し、より詳細には、苗載台を苗台端位置に移動させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植付作業開始時に、植付爪が苗載台に載置された苗マットの左右一端側から苗を掻き取ることができるように、苗載台を横方向の苗台端位置に移動させるように構成された田植機は公知となっている。例えば、特許文献1に示す田植機においては、苗載台が横方向の苗台端位置に移動してオンとなる検出センサを配備し、このセンサの検出値に基づいて、植付クラッチを「切」として、苗載台を苗台端位置で停止させるように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−319325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような田植機においては、苗載台が苗台端位置に到達した後に植付クラッチを「切」とするため、植付クラッチに動作遅れが生じる場合、例えば、モータ等を介して植付クラッチを作動させる場合は、動力の遮断が遅れて、苗載台がオーバーランすることがあった。また、苗載台を高速度で移動させた場合は、苗載台に働く慣性力によって、同様に、前記苗載台がオーバーランすることがあった。そして、このように苗載台がオーバーランした状態で苗マットがセットされると、欠株が生じることとなった。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、苗載台を正確に苗台端位置に移動させて、欠株を防止することができる田植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、エンジンと、前記エンジンの動力を変速する変速機と、前記変速機で変速された動力で苗載台を左右往復動させる横送り機構と、前記横送り機構に伝達される動力を断接するクラッチと、前記苗載台と該苗載台を摺動可能に支持する植付フレームとの間に設けられ、前記苗載台の位置を検出する苗台位置検出手段と、前記エンジンの回転数及び前記変速機の変速比のうち少なくとも一つを変更して前記苗載台の移動速度を変更する第一アクチュエータと、前記クラッチを作動させる第二アクチュエータと、前記第一アクチュエータ及び前記第二アクチュエータを駆動制御する制御装置と、を備える田植機であって、前記制御装置は、前記苗載台を苗台端位置に移動させる信号が入力されると、前記苗載台が第一所定速度で移動するように前記第一アクチュエータを駆動制御して、前記苗台位置検出手段により前記苗載台が前記苗台端位置より手前の所定位置に到達したことを検出すると、前記クラッチが「切」となるように第二アクチュエータを駆動制御するとともに、前記苗載台が前記第一所定速度よりも遅い第二所定速度で移動するように第一アクチュエータを駆動制御するものである。
【0008】
請求項2においては、前記第一アクチュエータを操作する操作具と、前記操作具の操作量を検出する操作量検出手段と、を備え、前記制御装置は、前記苗載台が前記所定位置に到達する前において、前記操作量が予め設定した閾値以上となると、前記苗載台が前記第一所定速度で移動するように前記第一アクチュエータを駆動制御して、前記操作量が前記閾値未満となると、前記苗載台が停止するように前記第一アクチュエータを駆動制御するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、クラッチに動作遅れが生じる場合であっても、クラッチの動作遅れに基づいて、所定位置、第一所定速度及び第二所定速度を適切に設定することで、動力遮断時の苗載台の停止位置を変更できる。これにより、苗載台を正確に苗台端位置に停止させることができる。また、第一所定速度を低速度とすることで、苗載台に働く慣性力等を低減することができるので、苗載台のオーバーランを抑制して、欠株を防止できる。
【0011】
請求項2においては、操作具を操作して、操作量が閾値以上となる場合にのみ、苗載台が第一所定速度で移動することとなる。これにより、苗載台を苗台端寄位置に移動させる必要がない場合に、誤って移動させることがなくなる。すなわち、誤操作を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る田植機の全体側面図。
【図2】本発明の一実施形態に係る田植機の全体平面図
【図3】本発明の一実施形態に係る田植機の植付部の正面図。
【図4】本発明の一実施形態に係る田植機の前車輪および後車輪への動力伝達構造を示す図。
【図5】本発明の一実施形態に係る田植機の植付部への動力伝達構造を示す図。
【図6】本発明の一実施形態に係る田植機の制御の構成を示すブロック図。
【図7】苗台位置検出スイッチの近傍の構造を示す図。
【図8】図7におけるA1―A2線断面図。
【図9】(a)通常作業時における回動角βと回動角γの関係を示すマップ。(b)苗台端寄制御時における回動角βと回動角γの関係を示すマップ。
【図10】苗台端寄制御のタイムチャート。
【図11】苗台端寄制御のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明の一実施形態に係る田植機1の全体構成について説明する。なお、本実施形態においては、田植機は八条植えの田植機とするが、これは特に限定するものではなく、例えば六条植えや十条植えの田植機であってもよい。
【0014】
図1および図2に示すように、田植機1は、走行部10と植付部40とを有し、走行部10により走行しながら、植付部40により苗を圃場に植え付けることができるように構成される。植付部40は、走行部10の後方に配置されて、この走行部10の後部に昇降機構30を介して昇降可能に連結される。
【0015】
昇降機構30は、走行部10と植付部40との間に設けられる。具体的には、トップリンク31とロワリンク32とが走行部10と植付部40との間に架設され、昇降用シリンダがロワリンク32と走行部10との間に連結される。そして、この昇降用シリンダの伸縮動作によって、植付部40が走行部10に対して上下方向に回動可能、即ち昇降可能とされる。
【0016】
走行部10においては、エンジン14が車体フレーム11の前部に設けられて、ボンネット15により被覆される。ミッションケース20が車体フレーム11の前部に支持されて、エンジン14の後方に配置される。図4に示すように、ミッションケース20の内部には、油圧−機械式無段変速機(HMT:HydroMechanicalTransmission)21と、HMT21からの動力を複数段に変速する主変速機構22と、HMT21から主変速機構22への動力の伝達の可否を切り換える主クラッチ23と、主変速機構22の出力軸の回動を制動する制動装置24と、が搭載される。
【0017】
前記HMT21は、エンジン14からの動力を無段階に変速可能な油圧式無段変速機(HST:HydroStaticTransmission)21aと、エンジン14からの動力及びHST21aからの動力を合成することが可能な遊星歯車機構21bと、を組み合わせたものである。
【0018】
走行部10においては、フロントアクスルケース6が車体フレーム11の前部に支持され、前車輪12が当該フロントアクスルケース6の左右両側に取り付けられる。リアアクスルケース7が車体フレーム11の後部に支持され、後車輪13が当該リアアクスルケース7の左右両側に取り付けられる。
【0019】
走行部10においては、予備苗載台17が車体フレーム11の前部の左右両側から立設された各取付フレーム16に取り付けられて、ボンネット15の左右両側方に配置される。そして、予備苗が予備苗載台17に載置されて、植付部40への苗補給が可能とされる。
【0020】
走行部10においては、車体フレーム11の前後中途部に運転操作部60が設けられる。運転操作部60の前部には、ダッシュボード61が配置され、ダッシュボード61の左右中央部には、操向ハンドル64が配置され、操向ハンドル64の後方には、運転席62が配置され、運転席62の下方には、一部を乗降用ステップとする車体カバー63が配置される。運転操作部60においては、主変速レバー65やクロスレバー66や変速ペダル67を含む複数の操作具が配置され、これらの操作具によって、走行部10および植付部40に対して適宜の操作を行うことが可能とされる。
【0021】
植付部40においては、植付ミッションケース50が植付フレーム49の下部中央付近に支持されて、伝動軸51が当該植付ミッションケース50から左右両側方に延設される。四つの植付伝動ケース46がそれぞれ伝動軸51から後方に延設されて、左右方向に適宜の間隔をとって配置される(図5参照)。
【0022】
ロータリケース44が各植付伝動ケース46の後端部左右両側に回動自在に支持される。ロータリケース44は植付条数と同数、即ち本実施形態では八つ備えられる。そして、二つの植付爪45が、ロータリケース44の回転支点を挟むように、このロータリケース44の長手方向両側にそれぞれ取り付けられる。
【0023】
苗載台41が植付伝動ケース46の上方に前高後低の傾斜状態で配置される。図3に示すように、苗載台41は、植付フレーム49の後部に上ガイドレール121及び下ガイドレール122を介して左右方向に往復動可能に取り付けられる。苗載台41は、横送り機構52により左右往復横送り可能とされる。
【0024】
横送り機構52は、横送り軸52aと、滑子受け52bと、を備える(図3及び図5参照)。横送り軸52aは、植付ミッションケース50から右方向に突設され、その先端が軸受けを介して植付フレーム49に回転自在に支持される。横送り軸52aの左右中途部外周面には、ネジ状の溝(ネジ溝)が形成される。滑子受け52bは、前記ネジ溝に外嵌されるとともに、苗載台41の左右中央下部前側に取り付けられた苗台アーム41aに固設される。
【0025】
複数条(8条)の苗マット載置部を備える苗載台41は、それぞれの下端側が一つのロータリケース44と対向するように、左右方向に並べられる。そして、苗マットが各苗載台41に載置されて、ロータリケース44の回転時に植付爪45により1株の苗が当該苗載台41上の苗マットから切り取り可能とされる。
【0026】
図2に示すように、各植付条に対して二つの苗縦送りベルト47が苗載台41に設けられる。苗縦送りベルト47は、苗載台41が左右往復横送りのストローク端に到達するごとに、縦送り機構53により苗載台41上の苗マットを下方へ向かって縦送りするように作動可能とされる。
【0027】
縦送り機構53は、縦送り軸53aを備え(図3及び図5参照)、縦送り軸53aは、植付ミッションケース50から左方向に突設され、その先端が軸受けを介して植付フレーム49に回転自在に支持される。縦送り軸53aは、前記横送り軸52aと同軸上に相対回転不能に連結され、その外周には、軸心に対して垂直に突出する二つの突出部53b・53bが左右方向に適宜な間隔を開けて設けられる。
【0028】
植付部40においては、圃場面を整地する複数のフロート42と、旋回後の荒れた枕地を整地する整地ロータ43と、がそれぞれ上下動自在となるように植付フレーム49に支持されている。また、圃場に線引きを行う左右の線引きマーカ48が植付フレーム49の左右両側に回動可能に支持される。
【0029】
このような田植機1においては、図4に示すように、エンジン14の動力がミッションケース20に伝達され、ミッションケース20の内部にあるHMT21及び主変速機構22を介して左右の前車輪12と左右の後車輪13とにそれぞれ伝達されて、前車輪12および後車輪13が回転作動するように構成される。これにより、走行部10が前進または後進走行可能とされる。
【0030】
また、図4及び図5に示すように、エンジン14の動力がミッションケース20、株間変速ケース54、植付ミッションケース50などを介して各ロータリケース44に伝達されて、このロータリケース44が回転作動するように構成される。これにより、ロータリケース44の回転作動にともなって、二つの植付爪45が交互に苗を苗載台41上の苗マットから取り出して圃場に植付可能とされる。
【0031】
また、エンジン14の動力が植付ミッションケース50から横送り機構52に伝達されて、横送り軸52aが回動作動するように構成される。これにより、横送り軸52aの回転作動にともなって滑子受け52bがネジ溝に沿って左右に摺動して、この滑子受け52bとともに苗載台41が左右方向に摺動することとなる。
【0032】
また、エンジン14の動力が植付ミッションケース50から縦送り機構53に伝達されて、縦送り軸53aが回動作動するように構成される。これにより、苗載台41が左右の苗台端位置に到達すると、縦送り軸53aの回転作動にともなって突出部53b・53bが苗縦送りベルト47の作動部位47a(図3参照)を押し込み、苗縦送りベルト47が作動する。こうして、苗載台41上の苗マットが縦送りされて、植付爪45に対して適切な位置に移動することとなる。
【0033】
ここで、エンジン14からロータリケース44、横送り機構52及び縦送り機構53に動力を伝達するための動力伝達機構は、図5に示す植付クラッチ55を含み、植付クラッチ55の断接に応じて、エンジン14の動力がロータリケース44、横送り機構52及び縦送り機構53に伝達され、または、伝達されないように構成される。
【0034】
次に、本実施形態に係る田植機1の制御に関する構成について説明する。
【0035】
図6に示す制御装置100が走行部10の任意位置に設けられる。制御装置100は、CPUや、ROM、RAM、インターフェイス、バスなどを備える。制御装置100には、各種プログラムが記憶される。
【0036】
図2及び図6に示す主変速レバー65は、主変速機構22の変速段(変速比)を変更するための操作具である。主変速レバー65は、ダッシュボード61の左端部(操向ハンドル64の左方)に配置される。主変速レバー65はリンク機構を介して主変速機構22(図4参照)に連結される。
【0037】
主変速レバー65は、「路上走行位置」、「植付位置」、「苗継ぎ位置」、「中立位置」又は「後進位置」に操作可能である。「路上走行位置」に操作された場合は、主変速機構22の変速段が「高速」に変更され、「植付位置」に操作された場合は、主変速機構22の変速段が低速に変更され、「苗継ぎ位置」及び「中立位置」に操作された場合は、主変速機構22の変速段が中立に変更され、「後進位置」に操作された場合は、主変速機構22の変速段が逆転に変更される。
【0038】
主変速レバー65は、操作位置を検出する操作位置検出スイッチ65aを備える。操作位置検出スイッチ65aは、制御装置100と接続されて、その操作位置に対応する信号を制御装置100に送信する。
【0039】
図2及び図6に示すクロスレバー66は、植付部40の昇降操作、線引きマーカ48の操作及び植付クラッチ55の操作を行う操作具であり、ダッシュボード61の後方右端部に配置される。クロスレバー66は、前後左右に操作可能であり、その操作方向を検出するための操作方向検出スイッチ66aが回動基部に備えられる。操作方向検出スイッチ66aは、制御装置100と接続され、その操作方向に対応する信号を制御装置100に送信する。操作後は中立位置に自動復帰するように構成される。
【0040】
図2及び図6に示す変速ペダル67は、田植機1の走行速度(後述する苗台端寄制御時においては、苗載台41の移動速度)を変更するための操作具であり、詳細には、後述する変速モータ71の回動角度を変更するための操作具である。変速ペダル67はダッシュボード61の右下方に配置される。
【0041】
変速ペダル67は、変速ペダル用ポテンショメータ67aを備える。変速ペダル用ポテンショメータ67aは、変速ペダル67を操作することで回動する検出軸の回動角(以下、回動角βとする)を検出する構成とされる。変速ペダル用ポテンショメータ67aは、制御装置100と接続され、その検出信号を制御装置100に送信する。回動角βは、変速ペダル67の操作量に対応する。
【0042】
図6に示すブレーキペダル68は、田植機1を制動するための操作具である。ブレーキペダル68はダッシュボード61の右下方であって、変速ペダル67の左方に配置される。ブレーキペダル68は、リンク機構を介して制動装置24(図4参照)に連結され、ブレーキペダル68が操作されると、制動装置24が作動し、田植機1の前車輪12及び後車輪13の回動が制動される。
【0043】
ブレーキペダル68は、その踏み込み操作を検出するブレーキ操作検出スイッチ68aを備える。ブレーキ操作検出スイッチ68aは、制御装置100と接続される。ブレーキペダル68が操作されると、ブレーキ操作検出スイッチ68aはブレーキペダル68と接触して「ON」となり、その信号を制御装置100に送信する。
【0044】
図6に示す苗台位置検出スイッチ69は、苗載台41が左右方向の所定位置に到達したことを検出するものである。苗台位置検出スイッチ69は、制御装置100と接続され、その所定位置に対応する信号を制御装置100に送信する。苗台位置検出スイッチ69については後述する。
【0045】
図6に示す苗台端寄制御開始スイッチ70は、苗台端寄制御を開始するための操作具である。苗台端寄制御開始スイッチ70は、ダッシュボード61の右部(操向ハンドル64のハンドル軸の右方)に配置される。苗台端寄制御開始スイッチ70は、制御装置100と接続されて、苗台端寄制御開始スイッチ70が操作されると「ON」となり、その信号を制御装置100に送信する。苗台端寄制御については後述する。
【0046】
図6に示す変速モータ71は、エンジン14の回転数の変更、HMT21の変速比の変更、主クラッチ23の断接の切り換え及び制動装置24の動作の切り換え、を行うものである。変速モータ71は、その出力軸がリンク機構を介してエンジン14(詳細にはエンジン14の回転数を調節する調速装置14a)、HMT21(詳細にはHST21aの可動斜板の角度を変更する変速アーム21c)、主クラッチ23(詳細には主クラッチ23を入切操作するクラッチアーム23a)及び制動装置24(詳細には制動装置24を制動操作するブレーキアーム24a)と連結される。変速モータ71は、制御装置100と接続され、制御装置100から送信された信号に基づいて駆動制御される。
【0047】
変速モータ71は、変速モータ用ポテンショメータ71aを備える。変速モータ用ポテンショメータ71aは、変速モータ71の出力軸の回動角(以下、回動角γとする)を検出するように構成される。変速モータ用ポテンショメータ71aは、制御装置100と接続され、その検出信号を制御装置100に送信する。回動角γは、前記変速モータ71の動作量に対応する。
【0048】
昇降アクチュエータ72は、昇降機構30を作動させて植付部40を昇降させるものである。昇降アクチュエータ72は、昇降機構30における昇降用シリンダへの圧油の送油量や方向を切り換える電磁弁等を備える。昇降アクチュエータ72は、制御装置100と接続され、制御装置100から送信された信号に基づいて駆動制御される。
【0049】
植付クラッチモータ73は、植付クラッチ55を作動させるものである。植付クラッチモータ73は、株間変速ケース54の左上方に配置される。植付クラッチモータ73の出力軸は、リンク機構を介して植付クラッチ55と連結される。植付クラッチモータ73は、制御装置100と接続され、制御装置100から送信された信号に基づいて駆動制御される。
【0050】
植付クラッチモータ73は、植付クラッチモータ用ポテンショメータ73aを備える。植付クラッチモータ用ポテンショメータ73aは、植付クラッチモータ73の出力軸の回動角(以下、回動角θとする)を検出するように構成される。植付クラッチモータ用ポテンショメータ73aは、制御装置100と接続され、その検出信号を制御装置100に送信する。回動角θは、前記植付クラッチモータ73の動作量に対応する。
【0051】
線引きマーカモータ74は、線引きマーカ48を作動させるものである。線引きマーカモータ74は、それぞれ植付フレーム49の左右下部に設けられる(図3参照)。線引きマーカモータ74は、制御装置100と接続され、制御装置100から送信された信号に基づいて駆動制御される。
【0052】
制御装置100は、本実施形態においては、クロスレバー66が前方に操作されると、昇降アクチュエータ72を作動させて植付部40を下降させる。さらにもう一度前方に操作されると、植付クラッチモータ73が駆動され、植付クラッチ55を「入」(植付部40に動力が伝達される状態)とする。
【0053】
また、クロスレバー66が後方へ操作されると、植付クラッチモータ73を駆動させ、植付クラッチ55を「切」(植付部40に動力が伝達されない状態)とする。さらにもう一度後方に操作されると、昇降アクチュエータ72を作動させて植付部40を上昇させる。但し、クロスレバー66の前後操作は植付部40の昇降のみの操作とし、植付クラッチ55の操作具を別途設けることも可能である。
【0054】
また、クロスレバー66を左方向に操作すると、線引きマーカモータ74が作動されて、左側の線引きマーカ48が左方に傾倒され、クロスレバー66を右方向に操作すると、線引きマーカモータ74が作動されて、右側の線引きマーカ48が右方に傾倒される。
【0055】
次に、本発明の要部となる苗台端寄制御について説明する。
【0056】
苗台端寄制御は、苗載台41を左右方向の苗台端位置(本実施形態では進行方向左端位置)に移動させる制御である。苗台端寄制御は、植付作業開始前や植付作業終了後に苗載台41の左右一側を折り畳む場合等に行われる。ここで、苗載台41の位置を検出する苗台位置検出手段について説明する。
【0057】
苗台位置検出手段は、検知部材としての苗台位置検出スイッチ69と、非検知部材としてのアーム部材123と、から構成される。苗台位置検出スイッチ69とアーム部材123のいずれか一方は、固定側の上ガイドレール121に取り付けられ、他方は、移動側の苗載台41に取り付けられる。本実施形態では、苗台位置検出スイッチ69が苗載台41を摺動可能に支持する植付フレーム49に取り付けられ、アーム部材123が移動側となる苗載台41を支持固定する上ガイドレール121に取り付けられる。図7及び図8を用いて、苗台位置検出スイッチ69とアーム部材123の取付構成を詳述する。
【0058】
苗台位置検出スイッチ69は、直方体形状のマイクロスイッチであり、本体から左方に突設するスイッチ部69aを有する。苗台位置検出スイッチ69は、植付フレーム49を構成する上フレーム131の右側であって、その左右中途部に配置される(図3参照)。苗台位置検出スイッチ69は、平板状の台座112の上部に取り付けられる。
【0059】
台座112は、上フレーム131に設けられた側面視略L字状の取付部材115に設けられる。詳細には、台座112の下部に、左右方向を長手方向とした左右二つの長孔112a・112bが穿設されて、一方の長孔112bに、取付部材115に設けられた円柱状の突出部115aが外嵌され、他方の長孔112aに、取付部材115に設けられた不図示の穿設孔とともにボルト116が挿嵌されて固設される。この際、ボルト116を弛緩して、台座112を取付部材115に対して左右方向に摺動させることで、台座112の取り付け位置が調整可能とされる。
【0060】
前記苗台位置検出スイッチ69の左側であって、台座112上部には、検出板111が配置される。検出板111は、側面視において略長方形状で、その基部111aには、台座112に対して立設する支軸113が付勢部材114とともに挿嵌される。こうして、検出板111は、付勢部材114によって、苗台位置検出スイッチ69側(図7における反時計方向側)に付勢され、検出板111の右側面でスイッチ部69aを押圧する。
【0061】
前記アーム部材123は、上ガイドレール121の右側における左右中途部に配置される(図3参照)。図8に示すように、アーム部材123は、側面視略L字形状で、その基部123aがボルト124によって上ガイドレール121の下面121aに取り付けられ、その先端部123bが、側面視において検出板111と重複する位置に配置される。図7に示すように、アーム部材123の先端部123bは、苗載台41の往復動にともない、右端位置123Rから左端位置123Lまで往復動する。これら右端位置123R及び左端位置123Lは、それぞれ苗載台41の苗台端位置に対応する。右端位置123Rから左端位置123Lまでの距離はL1であり、縦送り機構53の突出部53b・53b間の距離とほぼ同じである。前記検出板111は、左端位置123LからL2だけ手前の位置に配置される。
【0062】
このような構成によると、苗載台41が左方向に移動して、アーム部材123の先端部123bが検出板111と当接すると、検出板111が支軸113を中心として図7における時計方向に回動する。そして、検出板111と、苗台位置検出スイッチ69のスイッチ部69aと、が離間されて、スイッチ部69aの押圧が停止される。こうして、苗台位置検出スイッチ69は、「OFF」となり、「OFF」に対応する信号を制御装置100に送信する。そして、この苗台位置検出スイッチ69が「OFF」時には、苗載台41は、苗台端位置(左側)からL1だけ手前の所定位置に位置することとなる。
【0063】
制御装置100は、苗台端寄制御開始信号(前記苗載台41を苗台端位置に移動させる信号)を受信すると、苗台端寄制御を開始する。本実施形態においては、制御装置100が主変速レバー65の「中立位置」を検出した状態で、苗台端寄制御開始スイッチ70が操作されて「ON」となると、制御装置100がその信号を受信して、苗台端寄制御を開始する。この際、制御装置100は、植付クラッチ55が「切」の状態ならば、植付クラッチモータ73を駆動して、植付クラッチ55を「入」とする。
【0064】
制御装置100には、図9に示すような、変速ペダル67の操作量(回動角β)と、変速モータ71の動作量(回動角γ)との関係を示すマップが記憶される。変速ペダル67が操作されると、回動角βがβ0からβmaxまで変化するが、制御装置100は、これら回動角β(β0からβmax)に対応する回動角γ(γからγmax)となるように、変速モータ71を駆動制御する。図9(a)は、田植機1の移動や植付作業等が行われる時に用いられる通常制御時のマップであり、図9(b)は、苗台端寄制御時のマップである。制御装置100は、苗台端寄制御を開始すると、図9(a)のマップから、図9(b)のマップに切り換える。
【0065】
苗台端寄制御時において、図9(b)の実線に示すように、回動角βがβ0以上でβ3未満の範囲では、制御装置100は、回動角γが一定の値γに保持されるように変速モータ71を駆動制御する。そして、γとなると、変速モータ71の出力軸と連結された主クラッチ23が「切」となり、かつ、制動装置24が作動する。これにより、横送り機構52に動力が伝達されず、苗載台41は停止する。
【0066】
他方、回動角βがβ3以上でβmax以下の範囲では、制御装置100は、回動角γが一定の値γに保持されるように変速モータ71を駆動制御する。そして、γとなると、変速モータ71の出力軸と連結された主クラッチ23が「入」となり、かつ、制動装置24が停止する。これにより、γに対応するエンジン14の回転数やHMT21の変速比となって、これら回転数や変速比に対応する動力が横送り機構52に伝達される。こうして、横送り機構52が駆動して、苗載台41がγに対応する低速度となる第一所定速度で左端位置123Lに向けて移動する。
【0067】
このように、β3は、苗載台41を移動させるか停止させるかを決定する閾値であり、予め制御装置100に設定される。ただし、閾値β3を設けずに、苗台端寄制御を開始すると、回動角βの値にかかわらず、回動角γが一定の値γに保持されるように変速モータ71を駆動制御することも可能である。これにより、苗台端寄制御を開始すると、変速ペダル67を操作することなく、苗載台41が自動的に第一所定速度で左端位置123Lに向けて移動する。
【0068】
さらに、植付クラッチ55に動作遅れが生じている間は(詳細は後述する)、二点鎖線に示すように、制御装置100は、回動角βの値にかかわらず、回動角γが一定の値γに保持されるように変速モータ71を駆動制御する。そして、γとなると、変速モータ71の出力軸と連結された主クラッチ23が「切」となり、かつ、制動装置24が作動する。これにより、γに対応するエンジン14の回転数やHMT21の変速比となって、これら回転数や変速比に対応する動力が横送り機構52に伝達される。こうして、横送り機構52が駆動して、苗載台41がγに対応する前記第一所定速度よりも遅い第二所定速度で左端位置123Lに向けて移動する。
【0069】
次に、図10に示すフローチャートに基づいて苗台端寄制御を説明する。
【0070】
ステップS1において、制御装置100が苗台端寄制御開始信号を受信したか否かを判断する。受信した場合は、ステップS2に移行する。受信していない場合は、受信するまでステップS1を繰り返す。
【0071】
ステップS2において、制御装置100は、苗載台41が第一所定速度で移動するように変速モータ71を駆動制御する(回動角γがγとなるように変速モータ71を駆動制御する)。これにより、苗載台41が左端位置123Lに向けて第一所定速度で移動することとなる。但し、変速ペダル67が操作されて、回動角βがβ3以上となっているものとする。そして、ステップS3に移行する。
【0072】
ステップS3において、制御装置100は、苗台位置検出スイッチ69が「OFF」か否かを判断する。「OFF」である場合は、ステップS4に移行する。「OFF」でない場合、すなわち、「ON」である場合は、ステップS2に移行して、再度フローを繰り返す。
【0073】
ステップS4において、制御装置100は、植付クラッチ55が「切」となるように植付クラッチモータ73を駆動して、同時に、苗載台41が第二所定速度で移動するように変速モータ71を駆動制御する(回動角γがγとなるように変速モータ71を駆動制御する)。これにより、植付クラッチ55に動作遅れが生じている間は、苗載台41が左端位置123Lに向けて第二所定速度で移動することとなる。そして、ステップS5に移行する。
【0074】
ステップS5において、植付クラッチ55が「切」となるまでの動作時間(動作遅れ時間)が経過したかを判断する。
【0075】
ステップS6において、動作遅れ時間が経過すると、植付クラッチ55が「切」となり、横送り機構52への動力が遮断されて、苗載台41が停止する。この際、植付クラッチ55の動作遅れ時間や、苗載台41に働く慣性力等、が予め考慮され、苗載台41の検出位置(所定位置)及び移動速度(第一所定速度及び第二所定速度)が適切に設定されているので、苗載台41は左端位置123Lで停止することとなる。そして、植付クラッチモータ用ポテンショメータ73aの回動角θが、植付クラッチ55が確実に「切」となるθoff以上となると、制御装置100に苗台端寄制御終了信号が送信されて、苗台端寄制御を終了する。
【0076】
次に、図11に示すタイムチャートに基づいて苗台端寄制御を説明する。
【0077】
t0において、制御装置100は、苗台端寄制御開始信号を受信する。これにより、制御装置100は、苗台端寄制御を開始する。この際、回動角βがβ3以上となるので、制御装置100は、回動角γがγとなるように変速モータ71を駆動制御する(図9(b)参照)。そして、回動角γが徐々に減少して、t1の時にγとなる。
【0078】
t1からt3において、回動角γがγに保持される。すなわち、苗載台41がγに対応する第一所定速度で左端位置123Lに向けて移動する。この間のt2において、変速ペダル67の操作を停止する。つまり、変速ペダル67から足を放すと、t2から回動角βが徐々に減少して、t3の時に、回動角βがβ3未満となる。すなわち、t3において、制御装置100は、回動角γがγとなるように変速モータ71を減速側に駆動する。
【0079】
t3からt4において、回動角γが徐々に減少して、t4の時にγとなる。t4からt8において、回動角γがγに保持される。すなわち、苗載台41が停止する。停止すると端寄せができないため、変速ペダル67を操作して苗載台41を移動させる。このとき、t5からt6のように少し変速ペダル67を操作しただけでは、変速モータ71を駆動させることはできない。つまり、変速ペダル67の回動角βがβ3未満の場合は変速モータ71を駆動しないように制御している。変速ペダル67の誤操作を防止するためである。また、苗台端寄制御開始スイッチ70が誤って操作された場合でも、苗載台41が自動的に移動することがないので、必要な時のみ苗台端寄制御を行うことができる。
【0080】
t7において、変速ペダル67を大きく踏み込み、t8で回動角βがβ3以上となる。すると、t8において、回動角γがγとなるように変速モータ71を駆動する。t8からt9において、回動角γが徐々に増加して、t9の時にγとなる。そして、t9からt10において、回動角γがγに保持される。すなわち、苗載台41がγに対応する第一所定速度で左端位置123Lに向けて移動する。
【0081】
t10において、アーム部材123が検出板111と当接して、苗台位置検出スイッチ69が「OFF」となると、制御装置100は、その信号を受信して、回動角γがγとなるように変速モータ71を駆動制御し、同時に、植付クラッチ55が「切」となるように植付クラッチモータ73を駆動制御する。
【0082】
この際、制御装置100が苗台位置検出スイッチ69が「OFF」となる信号を受信してから、植付クラッチ55が「切」となって、苗載台41が停止するまでに要する時間(動作遅れ時間)は、t10からt12までかかるものとする。
【0083】
t10からt11において、回動角γが徐々に減少して、t11の時点でγとなる。そして、t11からt12において、回動角γはγに保持される。すなわち、苗載台41がγに対応する第二所定速度で左端位置123Lに向けて移動する。
【0084】
t12において、制御装置100が苗台端寄制御終了信号を受信する。すなわち、制御装置100は、植付クラッチモータ用ポテンショメータ73aの回動角θが、植付クラッチ55が「切」となる規定値θoff以上となったことを検出する。これにより、苗台端寄制御は終了する。この時、前述のように植付クラッチ55の動作遅れ時間や、苗載台41に働く慣性力等、が予め考慮され、苗載台41の検出位置(所定位置)及び移動速度(第一及び第二所定速度)が適切に設定されているので、苗載台41は左端位置123Lで停止することとなる。
【0085】
尚、t10における苗台位置検出スイッチ69が「OFF」となった時に、二点鎖線に示すように、回動角γをγとし、苗載台41の移動速度を第一所定速度のまま保持するように構成してもよい。
【0086】
以上のように、本発明に係る田植機1においては、エンジン14と、前記エンジン14の動力を変速する変速機となるHMT21と、前記HMT21で変速された動力で苗載台41を左右往復動させる横送り機構52と、前記横送り機構52に伝達される動力を断接する植付クラッチ55と、前記苗載台41と該苗載台41を摺動可能に支持する植付フレーム49との間に設けられ、前記苗載台41の位置を検出する苗台位置検出手段(アーム部材123及び苗台位置検出スイッチ69)と、前記エンジン14の回転数及び前記HMT21の変速比のうち少なくとも一つを変更して前記苗載台41の移動速度を変更する第一アクチュエータとなる変速モータ71と、前記植付クラッチ55を作動させる第二アクチュエータとなる植付クラッチモータ73と、前記変速モータ71及び前記植付クラッチモータ73を駆動制御する制御装置100と、を備える田植機1であって、前記制御装置100は、前記苗載台41を苗台端位置に移動させる信号が入力されると、前記苗載台41が第一所定速度で移動するように前記変速モータ71を駆動制御して、前記苗台位置検出により前記苗載台41が前記苗台端位置より手前の所定位置に到達したことを検出すると、前記植付クラッチ55が「切」となるように植付クラッチモータ73を駆動制御するとともに、前記苗載台41が前記第一所定速度よりも遅い第二所定速度で移動するように変速モータ71を駆動制御するものである。
【0087】
こうして、植付クラッチ55に動作遅れが生じる場合であっても、植付クラッチ55の動作遅れに基づいて、所定位置、第一所定速度及び第二所定速度を適切に設定することで、動力遮断時の苗載台41の停止位置を変更できる。これにより、苗載台41を正確に苗台端位置に停止させることができる。また、第一所定速度を低速度とすることで、苗載台41に働く慣性力等を低減することができるので、苗載台41のオーバーランを抑制して、欠株を防止できる。
【0088】
また、前記変速モータ71を操作する操作具となる変速ペダル67と、前記変速ペダル67の操作量(回動角β)を検出する操作量検出手段となる変速ペダル用ポテンショメータ67aと、を備え、前記制御装置100は、前記苗載台41が前記所定位置に到達する前において、前記回動角βが予め設定した閾値β3以上となると、前記苗載台41が前記第一所定速度で移動するように前記変速モータ71を駆動制御して、前記回動角βが予め設定した前記閾値β3未満となると、前記苗載台41が停止するように前記変速モータ71を駆動制御するものである。
【0089】
したがって、変速ペダル67を操作して、回動角βが閾値β3以上となる場合にのみ、苗載台41が第一所定速度で移動することとなる。これにより、苗載台41を苗台端寄位置に移動させる必要がない場合に、誤って移動させることがなくなる。すなわち、誤操作を防止できる。
【0090】
尚、苗台位置検出スイッチ69は、本実施形態においては、左端位置123Lの手前の位置に設ける構成とされるが、右端位置123Rの手前の位置に設ける構成としてもよい。
【0091】
尚、二つの苗台位置検出スイッチ69・69を、左端位置123Lの手前の位置と、右端位置123Rの手前の位置と、にそれぞれ設ける構成としてもよい。これにより、左右何れか一方に設ける場合は、苗載台41の移動距離は最大でL1×2となるが、左右ともに設ける場合は最大でL1となり、苗載台41を左右端位置に移動させる時間を短縮することができる。
【0092】
尚、苗台位置検出スイッチ69は、植付フレーム49に対する苗載台41の相対的な位置が検出可能であればよく、苗台位置検出スイッチ69及びアーム部材123を設ける位置等は限定されるのものではない。例えば、苗台位置検出スイッチ69を植付フレーム49側に設けて、アーム部材123を苗載台41側に設ける構成とすることも可能である。
【0093】
尚、苗台位置検出スイッチ69の代わりにポテンショメータを設けて、このポテンショメータによって苗載台41の所定位置(左右端位置より手前の位置)を検出する構成とすることも可能である。
【0094】
尚、従来の田植機において、変速ペダルを操作して左右端位置に移動させる場合は、作業者が後ろを見ながら変速ペダルを操作することがあり、このような場合は、左右端位置がわかり辛く、不慣れであるならば、二人作業となることがあった。本発明によると、苗載台の端寄せを自動化することになるので、作業者は一人で作業可能となり、また、後ろ向きになる必要もなく、効率よく苗載台41を左右端位置に移動させることができる。
【0095】
尚、植付条数が多く、折り畳み収納可能に構成した田植機の場合、苗載台41の左右端位置は、苗載台41を折り畳む時の収納位置として利用される。すなわち、植付作業終了後に苗台端寄制御を行うように構成して、一側の条の苗載台を折り畳んで横幅を狭くした状態として田植機1の搬送作業の高効率化が図れる。
【0096】
尚、苗継ぎのタイミングを検出する苗継ぎセンサを設けて、この苗継ぎセンサが「ON」となる時、すなわち、苗載台41に苗マットが載置された時は、苗台端寄制御に移行しないように構成することも可能である。これにより、苗台端寄制御を行う前に苗載台41に苗マットを載置した場合でも、誤って苗を掻き取ることがない。
【0097】
尚、横送り機構52への動力を断接するクラッチを、植付クラッチ55の代わりに、植付条の条止めを行う条止めクラッチとすることも可能である。これにより、苗台端寄制御を行う前に苗載台41に苗マットを載置した場合でも、各植付伝動ケース46に動力が伝達されず、苗台端寄制御中に誤って苗を掻き取ることを防止できる。
【符号の説明】
【0098】
1 田植機
14 エンジン
21 HMT
22 主変速機構
23 主クラッチ
24 制動装置
40 植付部
41 苗載台
49 植付フレーム
52 横送り機構
53 縦送り機構
55 植付クラッチ(クラッチ)
67 変速ペダル(操作具)
67a 変速ペダル用ポテンショメータ(操作量検出手段)
69 苗台位置検出スイッチ
71 変速モータ(第一アクチュエータ)
73 植付クラッチモータ(第一アクチュエータ)
100 制御装置
111 検出板
121 上ガイドレール
123 当接部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンの動力を変速する変速機と、
前記変速機で変速された動力で苗載台を左右往復動させる横送り機構と、
前記横送り機構に伝達される動力を断接するクラッチと、
前記苗載台と該苗載台を摺動可能に支持する植付フレームとの間に設けられ、前記苗載台の位置を検出する苗台位置検出手段と、
前記エンジンの回転数及び前記変速機の変速比のうち少なくとも一つを変更して前記苗載台の移動速度を変更する第一アクチュエータと、
前記クラッチを作動させる第二アクチュエータと、
前記第一アクチュエータ及び前記第二アクチュエータを駆動制御する制御装置と、を備える田植機であって、
前記制御装置は、前記苗載台を苗台端位置に移動させる信号が入力されると、前記苗載台が第一所定速度で移動するように前記第一アクチュエータを駆動制御して、前記苗台位置検出手段により前記苗載台が前記苗台端位置より手前の所定位置に到達したことを検出すると、前記クラッチが「切」となるように第二アクチュエータを駆動制御するとともに、前記苗載台が前記第一所定速度よりも遅い第二所定速度で移動するように第一アクチュエータを駆動制御することを特徴とする田植機。
【請求項2】
前記第一アクチュエータを操作する操作具と、
前記操作具の操作量を検出する操作量検出手段と、を備え、
前記制御装置は、前記苗載台が前記所定位置に到達する前において、前記操作量が予め設定した閾値以上となると、前記苗載台が前記第一所定速度で移動するように前記第一アクチュエータを駆動制御して、前記操作量が前記閾値未満となると、前記苗載台が停止するように前記第一アクチュエータを駆動制御することを特徴とする請求項1に記載の田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−143180(P2012−143180A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3401(P2011−3401)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】