説明

発熱体の固定構造および固定方法

【課題】基板の耐熱温度以上の温度で発熱する発熱体であっても被加熱体に対して精度良く接触して固定することが可能な発熱体の固定構造および固定方法を提供する。
【解決手段】発熱体3の固定構造は、基板1と、基板1に接続して固定された足部3bを有し、基板1から足部3bを介して印加された電気信号に基づいて発熱する発熱体3とを備え、発熱体3は、基板1の一部の領域を捨て基板として取り除いた後の孔部に位置し、発熱体3の主面に接触して発熱体3を支持しつつ、基板1に固定され、発熱体3の発熱により加熱される被加熱体4をさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に配設され、被加熱体に接触して固定される発熱体の固定構造および固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気製品の制御回路などを構成する際、制御回路に搭載される回路素子の発熱を制御することは、製品の性能を確保する上で極めて重要である。
【0003】
回路素子としてレーザ素子の発光を制御する場合において、レーザ素子の制御温度は、上限だけでなく下限も設定する必要がある。従って、レーザの性能を確保するためには、高温時にはレーザ素子の発熱を冷却し、低温時にはヒータなどの発熱体をレーザ素子に近接してレーザ素子を加熱する必要がある。
【0004】
発熱体を基板上に配設する場合には、発熱体の熱を冷却する、あるいは発熱体の熱を用いて加熱するために、発熱体の熱を受熱する被加熱体に発熱体を接触するように配設する。また、発熱体の熱を冷却するために、空気伝導によって発熱体の熱を放熱させることもある。発熱体を被加熱体に接触して配設する場合は、被加熱体との接触を保持するために精度良く配設・固定する必要があり、また、発熱体の熱を放熱する場合は、発熱体を安定して配設・固定する必要がある。
【0005】
従来、発熱体の熱を放熱させることを目的とした、発熱体を基板に固定する構造としては、捨て基板で形成された部品支持部材によって、発熱体を基板面から浮かせた状態で保持する構造がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3117684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、捨て基板によって発熱体を保持しているため、基板(捨て基板)の耐熱温度以上の温度で発熱する発熱体を保持することができないという問題があった。
【0008】
また、例えば、特許文献1の発熱体を被加熱体に接触させる場合には、被加熱体が基板に直接固定されない部分が多くなるため、発熱体と被加熱体との位置精度が保ちにくいという問題があった。
【0009】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、基板の耐熱温度以上の温度で発熱する発熱体であっても被加熱体に対して精度良く接触して固定することが可能な発熱体の固定構造および固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明による発熱体の固定構造は、基板と、基板に接続して固定された足部を有し、基板から足部を介して印加された電気信号に基づいて発熱する発熱体とを備え、発熱体は、基板の一部の領域を捨て基板として取り除いた後の孔部に位置し、発熱体の主面に接触して発熱体を支持しつつ、基板に固定され、発熱体の発熱により加熱される被加熱体をさらに備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、基板と、基板に接続して固定された足部を有し、基板から足部を介して印加された電気信号に基づいて発熱する発熱体とを備え、発熱体は、基板の一部の領域を捨て基板として取り除いた後の孔部に位置し、発熱体の主面に接触して発熱体を支持しつつ、基板に固定され、発熱体の発熱により加熱される被加熱体をさらに備えるため、基板の耐熱温度以上の温度で発熱する発熱体であっても被加熱体に対して精度良く接触して固定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態による発熱体の固定構造の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態による発熱体の固定構造の側面図である。
【図3】本発明の実施形態による発熱体を基板上に載置した状態を示す図である。
【図4】本発明の実施形態による発熱体の固定構造の分解構成図である。
【図5】前提技術による発熱体の固定構造の構成図である。
【図6】前提技術による発熱体の固定構造の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について、図面に基づいて以下に説明する。なお、以下では、本実施形態による発熱体の固定構造について説明するが、本実施形態によって本発明が限定されるものではない。
【0014】
〈前提技術〉
まず、本発明の前提となる技術(前提技術)について説明する。
【0015】
図5は、前提技術による発熱体の固定構造の構成図であり、図6は、図5の縦断面図である。図5,6に示すように、発熱体30の足部30bは、基板10上に半田付けして固定されている。また、発熱体30の本体部30aは、部品支持部材60によって保持されている。部品保持部材60は、基板10に形成された貫通孔10aの基板下側(裏面側)から貫通され、取付片部60aにて基板10に半田付けして固定されている。また、部品支持部材60は、捨て基板で構成され、部品受け部60bにて発熱体30の底面を支持している。
【0016】
前提技術による発熱体30を基板10に固定する構造では、上述のように、基板(捨て基板)の耐熱温度以上の温度で発熱する発熱体を保持することができないという問題があった。また、発熱体を被加熱体に接触させる場合には、被加熱体が基板に直接固定されない部分が多くなるため、発熱体と被加熱体との位置精度が保ちにくいという問題があった。
【0017】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、以下に詳細を説明する。
【0018】
〈実施形態〉
図1は、本発明の実施形態による発熱体3の固定構造の一例を示す図であり、図2は、図1の側面図である。また、図3は、発熱体3を基板1上に載置した状態を示す図であり、図4は、図1の分解構成図である。
【0019】
図1〜4に示すように、発熱体3は、基板1に接続して固定された足部3bを有し、基板1から足部3bを介して印加された電気信号に基づいて発熱する。ブロック4(被加熱体)は、発熱体3の主面に接触して発熱体3を支持しつつ、基板1に固定され、発熱体3の発熱により加熱される。例えば、被温度制御素子としてのレーザ素子(図示せず)は、ブロック4の上に固定され、ブロック4は土台としても機能する。保持部材5は、基板1とブロック4との間に配置され、基板1上に爪形状等によって仮固定される。ネジ6は締結部品であり、発熱体3とブロック4との固定(ネジ止め)に用いられるネジ6aと、保持部材5を介して基板1とブロック4とを固定(ネジ止め)するために用いられるネジ6bとがある。
【0020】
次に、発熱体3の保持の詳細について説明する。図3に示すように、発熱体3の足部3bは、基板1に半田付けされる。ここで、足部3bのうちの、半田に接する部分を半田付け部3cとしている。発熱体3の本体部3aは、基板1の一部の領域である捨て基板2上に当接して配置されているため、本体部3aにおける面内垂直方向の位置は一定に(精度良く)保たれる。発熱体3は、基板1からの電気信号(例えば、電流)が、足部3bを介して本体部3aに印加されることによって発熱する。
【0021】
図3に示すように、基板1に対する発熱体3の半田付けが完了した後、捨て基板2のミシン目21をニッパ等で切断して、捨て基板2を基板1から分離する。捨て基板2を分離した後の発熱体3は、図4に示すように、本体部3aが基板1から浮遊した状態となる(すなわち、発熱体3は、捨て基板2を取り除いた後の孔部に位置している)が、発熱体3の足部3bが基板1に半田付けされているため、基板1に対する発熱体3の固定状態は保持される。
【0022】
捨て基板2を基板1から分離した後、保持部材5を爪形状等によって基板1に仮固定する。仮固定した保持部材5上にブロック4を載置し、ネジ6bによって基板1、保持部材5、およびブロック4が固定(ネジ止め)される。このとき、発熱体3の本体部3aは、ブロック4と当接した状態となっている。発熱体3の本体部3aはネジ孔を有しており、ネジ6aによって本体部3aおよびブロック4が接触して固定(ネジ止め)される。
【0023】
また、本来、発熱体3の足部3bを基板1に半田付けした後に、本体部3aを他の部分とネジ6aによって固定することは、半田付け部3cに恒久的な負荷を与えてしまうため信頼性上好ましくない。しかし、図3に示すように、発熱体3の足部3bの長さである寸法pを、通常は3〜5mm程度の長さであるのに対して、15〜20mm程度の充分な長さに設定している。従って、発熱体3の本体部3aをブロック4にネジ6aによって固定しても、半田付け部3cへの負荷が問題ないレベルにまで緩和され、半田付け部3cに不要な負荷がかからない。
【0024】
例えば、発熱体3の足部3bを、本体部3a側を固定した片持ち梁とみなすと、半田付け部3cにかかる荷重(すなわち、負荷)は、図4に示す寸法pの3乗に反比例する。従って、寸法pを通常の3倍以上の長さとすれば、半田付け部3cにかかる負荷は27分の1以下となって問題ないレベルとなる。すなわち、具体的には、通常の寸法pを3〜5mmのうちの最大値である5mmに対して、本実施形態では15mm以上とすることによって半田付け部3cに不要な負荷がかからない。
【0025】
上記より、発熱体3の固定構造の組み立てが完了する(図1,2参照)と、基板1の動作が可能となる。発熱体3は、基板1の制御によって発熱してブロック4を加熱する。
【0026】
なお、実際には、熱伝導の損失を最小限にするために、発熱体3とブロック4との間にサーマルシートあるいはグリス等の熱伝導体を配設してもよいが、本実施形態では図示を省略している。
【0027】
以上のことから、基板1に発熱体3の足部3bを半田付けにより固定する際に、発熱体3の本体部3aを捨て基板2上に当接して配置されているため、本体部3aにおける面内垂直方向の位置は一定に(精度良く)保たれ、捨て基板2の分離後であっても、発熱体3をブロック4に精度良く密接して固定させることができる。また、基板の耐熱温度以上の温度で発熱する発熱体であっても被加熱体に対して精度良く接触して固定することができる。
【0028】
また、足部3bの長さ(図4の寸法p)を、15mm以上の充分な長さに設定することによって、発熱体3の本体部3aをブロック4に固定しても、半田付け部3cに不要な負荷がかからない。
【0029】
なお、本実施形態では、ブロック4を被加熱体として説明したが、ブロック4を発熱体3を冷却する冷却材として構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、基板上に配設され、被加熱体に接触して固定するよう構成される発熱体の固定構造に活用できる。
【符号の説明】
【0031】
1 基板、2 捨て基板、3 発熱体、3a 本体部、3b 足部、3c 半田付け部、4 ブロック、5 保持部材、6 ネジ、10 基板、10a 貫通孔、21 ミシン目、30 発熱体、30a 本体部、30b 足部、60 部品支持部材、60a 取付片部、60b 部品受け部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に接続して固定された足部を有し、前記基板から前記足部を介して印加された電気信号に基づいて発熱する発熱体とを備え、
前記発熱体は、前記基板の一部の領域を捨て基板として取り除いた後の孔部に位置し、
前記発熱体の主面に接触して前記発熱体を支持しつつ、前記基板に固定され、前記発熱体の発熱により加熱される被加熱体をさらに備える、発熱体の固定構造。
【請求項2】
前記足部の長さが15mm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の発熱体の固定構造。
【請求項3】
前記被加熱体は、前記基板にネジ止めされ、
前記発熱体は、前記被加熱体にネジ止めされることを特徴とする、請求項1または2に記載の発熱体の固定構造。
【請求項4】
発熱体を基板に固定する方法であって、
(a)一部の領域に捨て基板を含む前記基板を準備する工程と、
(b)前記発熱体を前記捨て基板上に配置し、前記発熱体が前記基板からの電気信号に基づいて発熱可能にするために、前記発熱体の足部を前記捨て基板以外の前記基板に接続して固定する工程と、
(c)前記捨て基板を前記基板から取り除いて孔部を形成し、当該孔部に前記発熱体を位置させる工程と、
(d)前記発熱体の発熱により加熱される被加熱体を、前記発熱体の主面に接触させて当該発熱体を支持させつつ、前記基板に固定する工程と、
を備える、発熱体の固定方法。
【請求項5】
前記足部の長さが15mm以上であることを特徴とする、請求項4に記載の発熱体の固定方法。
【請求項6】
前記工程(d)において、
前記被加熱体は、前記基板にネジ止めされ、
前記発熱体は、前記被加熱体にネジ止めされることを特徴とする、請求項4または5に記載の発熱体の固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−227412(P2012−227412A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94864(P2011−94864)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】