説明

直播機

【課題】硬軟センサの設置位置を工夫することにより、苗植付深さ又は播種深さの制御度合いを高めた直播機を提供すること。
【解決手段】走行車体2の後部に複数条分の種子を圃場に移送する移送管93,95を備えた直播装置82と移送管93,95の種子排出口を圃場上に向けて保持するフロート55,56を走行車体に対して油圧シリンダ46とリンク装置3により昇降自在に設け、フロート55,56の前方に接地して地面を整地するロータ27a,27bを直播装置82に対して昇降自在に設け、フロート55,56とロータ27a,27bの間に圃場の硬軟センサ114を設け、該センサ114の検出値に応じて油圧シリンダ46を伸縮して直播装置82の播種深さを調節する制御装置101を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、施肥装置、播種装置あるいは薬剤散布装置等の粉粒体吐出機を備えた直播機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行車体の座席より後側に複数の粉粒体繰出部を機体左右方向に並べて設けると共に、粉粒体繰出部の上方に粉粒体を貯留するタンクを設け、粉粒体繰出部から送り出される粉粒体を送風器からの送風により送り出して圃場に連続的に吐出する粉粒体吐出機を備え、圃場面を滑る複数のフロートで前記粉粒体繰出部を支持しながら機体左右方向に配置した直播機が知られている。
【0003】
また、複数のフロートを機体左右方向に配置した苗植付装置を備えた苗移植機において、苗植付装置による苗植付の直前に圃場を均平化するためのロータを各フロートの直前に配置した構成が知られている(特許文献1)。
【0004】
また、苗植付装置を支持するフロートの傾斜角度を検出する昇降センサと、圃場の表面堅さを検出する硬軟センサを備え、昇降センサの検出値と硬軟センサの検出値に基づいて苗植付装置の昇降制御をする発明が知られている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2007−228807号公報
【特許文献2】特開2000−175525号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1には苗植付装置部分に硬軟センサを設けていないので、圃場の硬さを検出し得ないので圃場の硬さの程度に応じた苗植付深さを制御することは出来ない。
また、上記特許文献2には苗移植機の硬軟センサの検出値に基づき苗植付深さを制御出来る構成が開示されているが、硬軟センサをセンタフロートに直接取り付けているので、硬軟センサによる圃場の硬さの検出値は圃場に比較的広い接地面積で接触しているフロートの影響を受け易く、正確に圃場の硬さを検出していないおそれがある。
【0006】
このように従来技術では苗植付深さを精度よく制御することが出来なかった。そこで本発明の課題は硬軟センサの設置位置を工夫することにより、苗植付深さ又は播種深さの制御度合いを高めた直播機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は、次の解決手段で解決される。
すなわち、走行車体(2)の後部に複数条分の種子を圃場にそれぞれ移送する移送管(93,95)を備えた直播装置(82)と前記各移送管(93,95)の種子排出口を圃場に向けて保持するフロート(55,56)又は複数条分の苗を圃場に植え付けるための苗植付具を備えた苗植付装置(52)を保持するフロート(55,56)を走行車体に対して油圧シリンダ(46)とリンク装置(3)により昇降自在に設け、走行車体(2)の横幅方向に向けて前記フロート(55,56)の前方に配置され、接地して地面を整地する整地具(27a,27b)を直播装置(82)に対して昇降自在に設け、前記フロート(55,56)と整地具(27a,27b)の間に圃場の硬軟度合を検知する硬軟センサ(114)を設け、該硬軟センサ(114)の圃場の硬軟度合に応じて油圧シリンダ(46)を伸縮制御して直播装置(82)の播種深さを調節する制御装置(101)を設けた直播機である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、硬軟センサ(114)を前記特許文献2に開示されているようセンタフロートに直接取り付けてるのではなく、フロート(55,56)の直前であってロータ(27a,27b)の後方に配置することで、硬軟センサ(114)による圃場の硬さの検出値は圃場に広い接地面積で接触しているフロート(55,56)の影響を受けずに、正確に圃場の硬さを検出することができる。そのため、直播装置(82)の播種深さを精度良く制御できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
本実施例の直播機は乗用4輪駆動走行形態の直播機であり、図1は、施肥装置付きの乗用型の直播機の左側面図を示すものであり、この乗用型の直播機は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して直播装置82が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。なお、本明細書では、直播機の前進方向に向って左右方向をそれぞれ左、右とし、前進方向を前、後進方向を後とする。
【0010】
走行車体2は、駆動輪である各左右一対の前輪10,10及び後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該前輪ファイナルケース13の操向方向を変えることができる前輪支持部から外向きに突出する前輪車軸に前輪10,10が取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸(図示せず)を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0011】
原動機となるエンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、第一ベルト伝動装置21及び第二ベルト伝動装置23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにて変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けたクラッチケース25に伝達され、施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。
【0012】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するボンネット32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びボンネット32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0013】
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム45の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、直播装置82がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0014】
直播装置82の下部にはセンターフロート55及びサイドフロート56,56が設けられている。これらフロート55,56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55,56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に直播装置82,…により種子が播かれる。各フロート55,56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、直播作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が上下動検出機構57により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて直播装置82を昇降させることにより、種子の播種深さを常に一定に維持する。
【0015】
施肥装置5は、肥料貯留タンク(粉粒体貯留タンク)60に貯留されている肥料(粉粒体)を走行車体2の左右方向に複数設けられた肥料繰出部(粉粒体繰出部)61,…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース(粉粒体移送ホース)62,…でフロート55,56,56の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず),…まで導き、施肥ガイド,…の前側に設けた播種用作溝器64,…によって播種条の側部近傍に形成される施肥溝内に吐出するようになっている。モータ(図示せず)で駆動のブロア(図示せず)で発生させた圧力風を左右方向に長いエアチャンバ69を経由して施肥ホース62,…内に吹き込み、施肥ホース62,…内の肥料を植付部側の肥料吐出口へ強制的に移送するようになっている。
【0016】
また、整地ロータ27a,27bの支持構造には、左右方向の支持杆と上下方向に伸びる両側辺部材からなる矩形の支持枠体65の両側辺部材に上端を回動自在に支持された梁部材66と該梁部材66の両端に固着した支持アーム67と該支持アーム67に回動自在に取り付けられたロータ支持フレーム68が設けられている。該ロータ支持フレーム68の下端には整地ロータ27aの駆動軸(図示せず)が取り付けられている。センタフロート55の前方にあるロータ27bはサイドフロート56の前方にあるロータ27aより前方に配置されている。また、ロータ27bは梁部材66に上端部が支持された一対のリンク部材76,77によりスプリング78を介して吊り下げられている。なお、整地ロータ27a,27bはロータ上下位置調節レバー81と該ロータ上下位置調節レバー81の作動位置を検出するロータ上下位置調節レバーセンサ81aにより上下動させることができる。
【0017】
本実施例の直播機の直播装置82は、図1の直播機の側面図と図2の直播装置82部分の拡大側面図と図3の直播装置82部分の背面図に示す構成を備えている。直播装置82は、上部の種子タンク85から種子を繰り出す種子繰出部87、種子を繰出案内する種子ロート88、更に、この種子ロート88から繰出案内される種子を下方へ空気搬送により放出する放出筒90と種子導管91等からなり、左右方向に延びるフレーム89により支持されている。そして、放出筒90は、種子ロート88に接続する第一移送管93と該第一移送管93の下方に接続した比較的体積の大きな空気圧均等箱体94と該箱体94の下方に接続される第二移送管95と前記空気圧均等箱体94の隣接位置に配置され、該箱体94内に種子搬送用に空気を供給する空気分配管97と該空気分配管97に空気を供給するブロア99からなる。
【0018】
第一移送管93の下端の開口部は空気圧均等箱体94の天井面を貫通して箱体94内に入り込んでおり、また、第二移送管95の上端の開口部は空気圧均等箱体94の底面を貫通して前記箱体94内部に入り込んでいる。そして第二移送管95の上端は広口の開口部95aを有しており、該広口の開口部95aに隙間を開けて第一移送管93の下端の開口部が入り込んでいる。
【0019】
放出筒90の第一移送管93と第二移送管95の鉛直方向の管中心軸が同一軸線となるように第一移送管93と第二移送管95を配置し、また第一移送管93の下端開口部と第二移送管95の上端開口部の間に設ける前記隙間は前記管中心軸の回りに均等の幅で形成されている。
【0020】
従って、空気分配管97から空気圧均等箱体94へ導入された空気が前記第一移送管93の下端開口部と第二移送管95の上端開口部の隙間(ベンチュリー部)から流れる際に高速で圧力風として流れ出るので、種子と空気の混合が混乱なく行なわれ、第一移送管93を通って流下する種子は第二移送管95内の内壁に接触することなく土中に向けて安定した状態で高速で送り出すことができる。
【0021】
第二移送管95の下端開口部の回りには間隔を開けて種子導管91が設けられている。該種子導管91は水平断面が後方開口状のU字状をしており、また側面視で上方から下方に向けて幅が狭くなっている。上記したように種子ホッパ85から繰出部87を経由して供給された種子が種子導管91等に接触しにくいように放出筒90と種子導管91を配置した。
【0022】
本実施例の直播装置82を用いると、空気分配管97から供給される空気が上方から下方に向けて鉛直方向を向き、しかも種子の播種深度を確保するために空気流で種子の流下速度を加速させた状態で土中に種子を打ち込むことができる。
【0023】
直播装置82の下方には、播種フレーム100の下方に吊持され、土壌面に接地して滑走するフロート55,56を配置しており、また、フロート55,56の両側には一対の播種用作溝器64と該播種用作溝器64でできた圃場の溝を埋める一対の覆土板59が設けられているので、圃場の溝内に打ち込まれた種子の上を覆土板59により土で覆うことができる。
【0024】
このように本実施例の直播機は次のような特徴点を有する。
(1)種子の播種深度を確保するために空気流で加速し、土中に種子を打ち込ませる。またその空気流で圃場面の水分を排除して種子が土中に入る条件を安定させる。
(2)種子が空気と混乱なく合流するようにベンチュリー部の周囲に空気圧が均等になるような空間を確保する箱体94を設けた。
(3)種子繰出部87から供給された種子が導管93,95等に接触しにくいように繰出部87、ロート88、放出筒(導管93,95)90及び種子導管91を垂直に配置した。
【0025】
また、図5に示すように苗植付部4を支持枠体65に支持させて装着することができる。苗植付部4を設ける場合には直播装置82は取り外す。また図5に示すように本実施例の苗植付部4は6条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50などを備えている。また、図示しない苗載台の苗取出口、…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52、…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ(図示せず)等を備えている。
【0026】
苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56,56がそれぞれ設けられることになるが、これらフロート55,56,56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55,56,56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52、…により苗が植付けられる。各フロート55,56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎い角センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0027】
図4の背面図にロータ支持構造の要部を示し、図5にロータ27a,27bとフロート55,56と苗植付装置52部分の要部平面図を示す。
ロータ支持構造には、苗載台(図示せず)の前記支持枠体65の両側辺部材(図示せず)に上端を回動自在に支持された梁部材66と該梁部材66の両端に固着した支持アーム67と該支持アーム67に回動自在に取り付けられたロータ支持フレーム68が設けられている。該ロータ支持フレーム68の下端にはロータ27(27a,27b)の駆動軸部70(70a,70b)が取り付けられている。また、該ロータ支持フレーム68の下端部近くは伝動ケース50に回動自在に取り付けられた連結部材71に連結している。
【0028】
なお、図5に示すようにロータ駆動ケース102のクラッチシフター103及び該シフター103作動用のクラッチケーブル104を後輪ギアケース18の内側で、かつ機体中央部へ配置している。
【0029】
ロータ昇降用モータ63が梁部材66の軸方向延長線上に設けられている。
図5に示すように、フロート55,56との配置位置の関係でセンタフロート55の前方にあるロータ(センタロータということがある)27bはサイドフロート56の前方にあるロータ(サイドロータということがある)27aより前方に配置されている。そのため、左側のロータ27aの駆動軸部70aへの動力は後輪11のギアケース18内のギアからロータ駆動ケース102内のギアに伝達され、該ロータ駆動ケース102から自在継手72等を介して伝達され、ロータ27bの駆動軸部70bは左側のロータ27aの駆動軸部70aの車体内側の端部から動力が伝達されるチェーンケース73内のチェーン(図示せず)から動力伝達される。また、右側のロータ27aの駆動軸部70aはロータ27bの駆動軸部70bから右側のチェーン(図示せず)を介して動力伝達される。
【0030】
ロータ27bの駆動軸部70bは左右一対のチェーンケース73,73を介して支持されているだけなので、チェーンケース73,73の補強のために左右一対のチェーンケース73,73を橋渡しする補強部材74が設けられている。
【0031】
また、ロータ27bは梁部材66に上端部が支持された一対のリンク部材76,77によりスプリング78を介して吊り下げられている。
該一対のリンク部材76,77は梁部材66に一端部が固着支持された第一リンク部材76と該第一リンク部材76の他端部に一端が回動自在に連結した第二リンク部材77からなり、該第二リンク部材77の他端部と補強部材74に回動自在に支持された取付片74aとの間に前記スプリング78が接続している。
【0032】
ロータ昇降用モータ63の作動により第一リンク部材76を上方へ回動する向きに梁部材66が回動し、該梁部材66の回動に伴って、第一リンク部材76と第二リンク部材77とスプリング78を介してロータ27bを上方に上げることができる。ロータ27bを上方に移動させると、駆動軸部70bと駆動軸部70aを介してロータ27aも同時に上方に移動する。
【0033】
本実施例では標準位置で圃場面より40mmの高さにあるロータ27a,27bをロータ昇降用モータ63の回動で標準位置より最大15mm高くでき、またロータ昇降用モータ63の逆向きの回動で標準位置より最大15mm低くできるように設定している。
【0034】
図4に示すように、上記ロータ27a,27bをロータ昇降用モータ63で上下動できる構成にしているので、畦際でロータ27a,27bが整地作業していても、機体の旋回時などには速やかにロータ27a,27bを上昇するように苗植付部4の上昇に連動させてロータ昇降用モータ63で自動的に行う構成とすることができる。
【0035】
苗植付部4の上昇時にロータ27bが昇降リンク装置3の下リンク41,41から逃げるように苗植付部4に対してスプリング78などを介して支持されているので、ロータ27aが融通性をもって苗植付部4に支持される。
また、操縦座席31近傍に設ける図示しないメータパネル上に設けたロータ高さ調節ダイヤルによりロータ27a,27bを設定高さに調整する構成にしても良い。
【0036】
手動でロータ高さを設定する場合にはロータ27a,27bを収納位置に移動したままで次の苗植付作業時にロータ27a,27bを使用できないことがあるが、自動的にロータ27a,27bを設定高さに調整する構成にすると、そのような不具合を防ぐことができる。
【0037】
図4に示すように梁部材66の一端にロータ昇降用モータ63を取り付けておき、苗植付部4が上昇するとロータ27a,27bは下降するようにし、また苗植付部4が下降するとロータ27a,27bは上昇するような構成としても良い。これにより、畦際旋回時にロータ27a,27bを下降させて、旋回跡のみを整地することができる。この場合は苗植付部4の上下リンク40,41の昇降リンクセンサ(図示せず)とロータ連動入切スイッチ(図示せず)のオンにより制御装置101がロータ昇降用モータ63の駆動制御を行う。この様な構成の場合はロータ昇降用モータ63を自動で作動させることができるので、操作性が向上する。
【0038】
前述のように通常はロータ昇降用モータ63を作動させることでロータ27a,27bは上昇される構成であるが、本実施例では苗植付具(図示せず)にエンジン動力を伝達させるための畦クラッチ(図示せず)が畦クラッチレバー(図示せず)の操作により切りになると、ロータ昇降用モータ63が作動して自動的にロータ27a,27bを下降させて整地作業を行わせる構成になっている。そのために畦クラッチレバーの入・切を検知する畦クラッチレバーセンサ19a(図4)を設けている。
【0039】
従って、枕地及びその近傍では植付条数あわせのために畦クラッチレバーの操作により畦クラッチを切りにしたときに、該畦クラッチレバーセンサ19aが畦クラッチレバーの切りを検出し、制御装置101(図4)により自動的にロータ27a,27bを下降させて整地作業を行わせることができる。
このことにより、圃場内において荒れやすい枕地又は枕地の近くを確実に整地することができる。
【0040】
本実施例の直播機では、機体中央に配置したロータ27bとセンタフロート55の間に圃場の硬さを検知できる硬軟センサ114(図5)を配置する。
硬軟センサ114を前記特許文献2に開示されているようにセンタフロート55に直接取り付けるのではなく、センタフロート55の直前であってロータ27bの後方に配置することで、硬軟センサ114による圃場の硬さの検出値は圃場に比較的広い接地面積で接触しているフロート55の影響を受けずに、正確に圃場の硬さを検出することができる。そのため、苗植付装置52の圃場に対する高さ位置を精度良く制御できるので、苗植付具(図示せず)による苗植付深さの制御度合いを高めることができる。
【0041】
なお、硬軟センサ114は左右一対のチェーンケース73の間に橋渡し状に支持された土壌検出具114aと土壌に突入する硬軟検出具114bからなり、土壌検出具114aと硬軟検出具114bが接地又は土壌に突入する構成となっている。土壌検出具114aと硬軟検出具114bは、各々上下回動自在の後下がりのアーム部114aa、114baと該アーム部114aa、114baの後端に取り付けた回転自在のローラ部114ab、114bbとを備えている。また、ここで硬軟検出具114bのローラ部114bbは土壌に突入し易いように中央が尖っている。さらに、土壌検出具114aのアーム部114aaと硬軟検出具114bのアーム部114baとのなす角度の相対関係をポテンショメータで検出して土壌の硬軟度を検出する構成からなっている。
【0042】
硬軟センサ114はロータ27b駆動用の左右一対のチェーンケース73の間に配置されるので、硬軟センサ114を土壌近くに配置でき、土壌の硬軟度合いの検出精度が良い。また、硬軟センサ114の土壌の硬軟度合に基づいて自動的に覆土板59(図1、図2)の傾斜角度を変更して、覆土の度合を制御する構成としている。なお土壌検出具114aのアーム部114aaのアーム長を硬軟検出具114bのアーム部114baのアーム長より長く構成しているので、土壌の硬軟度合の検出を安定して精度良く行うことができる。
【0043】
機体の横幅方向に長い直播装置82の種子タンク85は、その蓋を開けるとタンク85の下方部は機体の横幅方向に複数の漏斗状の小タンク85a,85b,・・・からなる。図6に種子タンク85の一方の端部側にある隣接配置された2つの小タンク85a,85b部分の平面図(図6(a))と側断面図(図6(b))を示す。図6に示すように最端部側の小タンク85aの容量をそれに隣接する小タンク85bの容量より小さくしている。そしてより容量の小さいタンク85aに肥料の残量センサ115を配置している。
【0044】
このように直播装置82の種子タンク85の中の並列配置された複数の小タンク85a,85b,・・・の中の最少容量の小タンク85a内に重量検知式の残量センサ115を配置しておくことで、一番早く肥料が送り出される最少容量の小タンク85a内に種子が無いことが残量センサ115で確認できると、種子タンク85内の各小タンク85a,85b,・・・に肥料を補給するサインとすることができる。
こうして、すべての小タンク85a,85b,・・・に残量センサ115を配置する必要がないので、多数の残量センサ115を配置する手間とコストの低減効果がある。
【0045】
ところで、操縦座席31の近傍に設けた播種昇降レバー83を操作すると、播種昇降レバー位置センサ83aからの入力により制御部101を介して図示しない電磁油圧バルブへ出力され、油圧シリンダ46の作動により昇降リンク装置3を回動させてメインフレーム15に対して直播装置82を昇降させるようになっている。また、前記播種昇降レバー83の操作で直播装置82を下降させると、該直播装置82の下部に設けたフロート55,56が圃場面に接地したことを該フロート55,56の前後傾斜角を検出するフロートセンサ(図示せず)で検出し、該フロートセンサの検出値が所定値となるよう電磁油圧バルブが制御されて直播装置82とフロート55,56の対地高さが維持される構成となっている。
【0046】
なお、操縦座席31の近傍に設けた感度設定ダイヤル(図示せず)の操作により、前記フロートセンサの制御目標を変更して圃場の硬軟に応じて直播装置82とフロート55,56の昇降制御における制御感度を変更できる構成となっている。そして、圃場の畦際での旋回時には、前記播種昇降レバー83の操作により直播装置82とフロート55,56を上昇させて機体を旋回させるようになっている。また、播種昇降レバー83の操作により、図示しない繰出クラッチを操作して後述する直播装置82の種子繰出部87の駆動を入切できる構成となっている。
【0047】
そして前記フロートセンサの感度に応じてブロア99からの風量を調節することで播種深さを安定化できる。すなわち、送風播種の場合は圃場の泥より水よけ効果が大きいので、泥と水の多い圃場が柔らかい場合は送風強さを大きくして、種子が確実に土壌中に侵入できるようにし、播種深さを適正にできる。泥と水の少ない圃場が硬い場合は送風強さを弱くしても、種子が飛び散ることを抑えながら、種子は確実に土壌中に侵入できるようになる。
【0048】
図1〜図3などで説明したように直播装置82の種子タンク85からの種子はブロア99の送風により繰出部87と施肥ホース62などを経由してフロート55,56に取り付けた播種用作溝器64により圃場に形成された溝に供給される。
【0049】
そして、図7のフロート55,56の設置部分の平面図(図7(a))と側面図(図7(b))に示すように、覆土板59は、前述した作溝器64の後方部位のフロート55,56に取り付けられているので、覆土板59と作溝器64の外側に防水板47を取り付けると圃場の作溝時に溝内に水が入らないようにでき、種子の植え付け効果が期待できる、
ハンドル34を左側に切ったとき、ロータ昇降用モータ63を駆動させて自動的にロータ27a,27bを少し圃場から浮かせる制御を行う必要がある。これはハンドル34を左側に切ったときにはロータ27a,27bにエンジン20の動力が伝達されない構成になっているため、ロータ27a,27bが圃場に接地したまま旋回するとロータ27a,27bが回転しない状態で圃場の泥を押すだけとなるので、このような不具合を防止するために、機体の旋回時にはロータ27a,27bを圃場から少し浮かせることが重要となる。
【0050】
また、図1に示すように、ロータ27a,27bの後ろ上方には、ロータカバー37を設け、フロート55,56上に泥がかからないようにしている。
さらに、ロータ27a,27bの前方に位置するようにロータカバー37にフロート120を連結することでロータ27a,27bに浮力を受けることができ、ロータ27a,27bの油圧負荷を軽減して、その制御感度の精度を高めることができる。
【0051】
図5に示すようにロータ27bの前側にポテンショメータ116aと接地板116bからなる夾雑物センサ116を設けておくと、該センサ116がロータ27bの前方で夾雑物を検知すると機体の前進を自動的に減速させることができ、苗植付装置52を設けている場合は苗の植え付け性能が安定化する。
また、夾雑物センサ116が夾雑物を検知すると、苗植付装置52の昇降油圧シリンダ46の制御感度を鈍感側にシフトさせることで、少々の夾雑物の検知があっても、苗植付装置52が上下方向に振動することがなくなる。
【0052】
また図8(a)の側面図と図8(b)の平面図に示すように藁くず等の夾雑物を検知出来る櫛状夾雑物センサ117をロータ27a,27bの前方に設けておくと、この櫛状夾雑物センサ117では藁くずなどを検知すると自動的にロータ27a,27bを圃場に接地させるように降ろして藁などをロータ27a,27bの下に敷き込むようにすることができる。
【0053】
また、図5に示すようにロータ27bの前側に設けた夾雑物センサ116の他に圃場の表土高さセンサ119を設けておくと、圃場に凹凸が多かったり、夾雑物が多いと、自動的にロータ27a,27bを圃場に接地させるように降ろして圃場を均平化し、また夾雑物をロータ27a,27bの下に敷き込むようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は田植機をはじめとして各種の施肥用、直播用又は薬剤散布用の粉粒体の吐出機である直播装置を備えた作業機として利用可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施例の直播機の側面図である。
【図2】図1の直播機の直播装置部分の側面図である。
【図3】図1の直播機の直播装置部分の背面図である。
【図4】図1の直播機のロータ設置部の背面図である。
【図5】図1の直播機ロータ設置部の要部平面図である。
【図6】図1の直播機の種子タンク内部の平面図(図6(a))と側断面図(図6(b))である。
【図7】図1の直播機のフロート設置部分の平面図(図7(a))と側面図(図7(b))である。
【図8】図1の直播機の櫛状夾雑物センサの設置部分の側面図(図8(a))と平面図(図8(b))である。
【符号の説明】
【0056】
2 走行車体 3 昇降リンク装置
4 苗植付部 5 施肥装置
10 前輪 11 後輪
12 ミッションケース 13 前輪ファイナルケース
15 メインフレーム 18 後輪ギヤケース
19a 畦クラッチレバーセンサ
20 エンジン 21 第一ベルト伝動装置
23 第二ベルト伝動装置 25 クラッチケース
27(27a,27b) 整地ロータ
28 施肥伝動機構 30 エンジンカバー
31 座席 32 ボンネット
34 ハンドル 35 フロアステップ
36 リヤステップ 37 ロータカバー
40 上リンク 41 下リンク
42 リンクベースフレーム 43 縦リンク
45 スイングアーム 46 昇降油圧シリンダ
47 防水板 50 伝動ケース
52 苗植付装置 55 センターフロート
56 サイドフロート 57 上下動検出機構
59 覆土板 60 肥料貯留タンク
61 肥料繰出部 62 施肥ホース
63 ロータ昇降用モータ 64 播種用作溝器
65 支持枠体 66 梁部材
67 支持アーム 68 ロータ支持フレーム
69 エアチャンバ
70(70a,70b) 駆動軸部
71 連結部材 72 自在継手
73 チェーンケース 74 補強部材
74a 取付片 76 第一リンク部材
77 第二リンク部材 78 スプリング
81 ロータ上下位置調節レバー
81a ロータ上下位置調節レバーセンサ
82 直播装置 83 播種昇降レバー
83a 播種昇降レバー位置センサ
85 種子タンク
87 種子繰出部 88 種子ロート
89 フレーム 90 放出筒
91 種子導管 93 第一移送管
94 空気圧均等箱体 95 第二移送管
97 空気分配管 99 ブロア
100 播種フレ−ム 101 制御装置
102 ロータ駆動ケース 103 クラッチシフター
104 クラッチケーブル 114 硬軟センサ
115 残量センサ 116 夾雑物センサ
117 櫛状夾雑物センサ 119 表土高さセンサ
120 フロート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)の後部に複数条分の種子を圃場にそれぞれ移送する移送管(93,95)を備えた直播装置(82)と前記各移送管(93,95)の種子排出口を圃場に向けて保持するフロート(55,56)又は複数条分の苗を圃場に植え付けるための苗植付具を備えた苗植付装置(52)を保持するフロート(55,56)を走行車体に対して油圧シリンダ(46)とリンク装置(3)により昇降自在に設け、
走行車体(2)の横幅方向に向けて前記フロート(55,56)の前方に配置され、接地して地面を整地する整地具(27a,27b)を直播装置(82)に対して昇降自在に設け、
前記フロート(55,56)と整地具(27a,27b)の間に圃場の硬軟度合を検知する硬軟センサ(114)を設け、該硬軟センサ(114)の圃場の硬軟度合に応じて油圧シリンダ(46)を伸縮制御して直播装置(82)の播種深さを調節する制御装置(101)を設けたことを特徴とする直播機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−51211(P2010−51211A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218369(P2008−218369)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】