説明

真空処理装置

【課題】基板表面への傷付きを防止すること。
【解決手段】基板8の斜め下側を向いた基板8裏面の周縁部を支持する複数の基板支持板52,53を備えた基板受け渡し機構により基板テーブル12と基板8との隙間が制御され、基板テーブル12には、基板受け面に配置される基板8の下側の端面を支持する基板支持突起33と、基板支持板52,53を受け入れる複数の凹所38,39とが設けられ、基板8の受け渡し時に、搬送部42に対して基板テーブル12が駆動機構により進退可能に構成されているとともに、搬送部42に対して基板支持板52,53が基板受け渡し機構により進退可能に構成され、基板受け渡し機構は、基板テーブル12と基板支持板52,53との隙間を制御することで基板テーブル12と基板8との隙間を制御するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空処理装置に関し、特に、プラズマCVD装置、ドライエッチング装置、スパッタリング装置に例示される真空処理装置、すなわち、基板や製膜済の基板に真空または減圧雰囲気のもとで処理を実施する真空処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、透光性ガラス板等の基板上に製膜を行う真空処理装置においては、種々の製膜処理を行う複数の製膜室と、基板固定用のトレイを使用せずに、基板をこれらの製膜室の間で搬送し、基板のみを製膜室内へ搬入搬出する搬送部と、を備えるものが知られている(例えば、特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−133692号公報
【特許文献2】特開2006−264826号公報
【0004】
前述の特許文献1には、基板を伸縮移動させるリンク機構の伸縮移動に連動し、ラック・アンド・ピニオンで基板支持爪部の保持や着脱する保持機構を備えた搬送部が記載されている。
このように拘束の少ない基板支持爪部によって基板を支持することで、搬送中の基板のずれ等を防止して不具合の発生を抑制するとともに、搬送速度を速めて搬送効率の向上を図っている。
【0005】
一方、特許文献2には、基板を基板テーブルに設置する際に、基板を支持する基板支持爪の開閉を制御する開閉リンク機構について記載されている。
このように開閉リンク機構を用いることで、搬送中の基板を確実に保持するとともに、基板を基板テーブルへ確実に設置することを可能としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2における基板テーブルへの基板の設置においては、鉛直方向から約10°傾斜している基板テーブル上で基板支持爪を開放して基板を置き、基板が自重で移動して基板保持位置に保持されるため、基板を基板テーブルへ受け渡す際に、基板面が全面的に基板テーブル面と接触しながら、約10mm摺動しながら移動していた。
【0007】
ここで、基板テーブルにおける基板と接触する面(表面:基板受け面)には、製膜時に付着した膜が容易に剥離や脱落等しないようにブラスト処理が施されており、表面には数μmの凹凸が形成されている。表面の凹凸には鋭角部分が含まれており、減圧雰囲気では摩擦係数が大きくなるため、この鋭角部分と基板との接触面圧が高くなり、基板に幅細ながらも深い傷を付けるおそれがあった。
【0008】
基板の非製膜面となる裏面は太陽電池の製品自体の表の面となる場合があるため、基板表面の傷は好ましくなく、さらに基板強度の低下要因になる場合もあるため、基板裏面の傷は好ましくないという問題があった。
【0009】
また、特許文献2における基板テーブルの四隅には、基板を支持する可動爪との干渉を避けるための窪みが設けられている。そのため、製膜時に窪みの周辺でプラズマが不均一になり、基板のこの部分付近の膜質が変化したり、製膜時に供給されたガスが窪みの中に入り込み、基板の裏面(太陽電池の場合は製品自体の表の面)の一部に余分(不要)な膜が形成され、外観上の不具合や時として入射光の減少要因となってしまうことがあった。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、搬送部と基板テーブルとの間で基板の受け渡しを行う際、基板表面への傷付きを防止するとともに、前述の課題を発生させないようにすることができる真空処理装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明に係る真空処理装置は、鉛直方向に対して斜めの状態で基板を搬送する搬送部と、鉛直方向に対して斜めに延び、鉛直方向に対して斜め上側を向いた基板受け面に前記基板が配置される基板テーブルとの間で前記基板の受け渡しが行われる真空処理装置であって、前記基板の斜め下側を向いた基板裏面の周縁部を支持する複数の基板支持板を備えた基板受け渡し機構により前記基板テーブルと前記基板との隙間が制御され、前記基板テーブルには、前記基板受け面に配置される前記基板の下側の端面を支持する基板支持突起と、前記基板支持板を受け入れる複数の凹所とが設けられ、前記基板の受け渡し時に、前記搬送部に対して前記基板テーブルが駆動機構により進退可能に構成されているとともに、前記搬送部に対して前記基板支持板が前記基板受け渡し機構により進退可能に構成され、前記基板受け渡し機構は、前記基板テーブルと前記基板支持板との隙間を制御することで前記基板テーブルと前記基板との隙間を制御する。
【0012】
本発明に係る真空処理装置によれば、搬送部と基板テーブルとの間で基板の受け渡しを行う際、搬送部には、例えば、基板を鉛直方向に対して斜め上下方向から挟んで保持する上側爪部および下側爪部と、基板の受け渡し時に、下側爪部を斜め下方に向かって移動させる下側駆動部と、基板の受け渡し時に、上側爪部を斜め上方に向かって移動させる上側駆動部とが設けられており、駆動機構により基板テーブルが、基板受け渡し機構により基板支持板が、一緒に、上側爪部および下側爪部を介して搬送部に支持された基板に接近する。
つぎに、基板の下側の端面が基板支持突起の上面に支持されたら、駆動機構による基板テーブルの基板への接近が停止され、基板受け渡し機構により基板テーブルと基板支持板との隙間を制御して、基板支持板のみがさらに基板に接近する。
つづいて、複数の基板支持板の先端部表面が基板裏面の周縁部と接することでの基板の支持と、上側爪部および下側爪部による基板の支持が両方ある状態になると、基板受け渡し機構による基板支持板の基板への接近が停止され、その後、上側爪部が斜め上方に向かって移動するとともに、下側爪部が斜め下方に向かって移動し、上側爪部が基板の上辺から離間し、下側爪部が基板の下辺から離間する。
つぎに、基板受け渡し機構により基板テーブルと基板支持板との隙間を制御して、基板支持板は基板とともに搬送部から離間し、基板テーブルに接近する。
つづいて、基板テーブルと基板との隙間を暫時に小さくなるように制御しながら、基板支持板が凹所内に収容され、基板の裏面が基板テーブルの基板受け面に接したら、駆動機構により基板テーブルを、基板受け渡し機構とともに基板支持板を搬送部から離間させ、搬送部と基板テーブルとの間で基板の受け渡しを終了する。
このように、本発明に係る真空処理装置によれば、搬送部と基板テーブルとの間における基板の受け渡しにおいて、基板の下側の端面のみが基板支持突起の上面と擦れ合うことになるので、それ以外の基板部分(特に、基板裏面)に擦り傷が付くのを防止することができる。
また、基板テーブルの四隅などに、基板受渡し時の基板を支持する可動爪との干渉を避けるための窪みがないので、製膜時に基板の窪み付近の膜質が変化したり、基板の裏面の一部に余分(不要)な膜が形成され、外観上の不具合や時として入射光の減少要因となることを防止することができる。
【0013】
本発明に係る真空処理装置は、鉛直方向に対して斜めの状態で基板を搬送する搬送部と、鉛直方向に対して斜めに延び、鉛直方向に対して斜め上側を向いた基板受け面に前記基板が配置される基板テーブルとの間で、前記基板の受渡しが行われる真空処理装置であって、前記基板の斜め下側を向いた基板裏面の周縁部を支持する複数の基板支持板を備えた基板受け渡し機構により、前記基板テーブルと前記基板との隙間が制御され、前記基板支持板の少なくとも2つには、前記基板受け面に配置される前記基板の下側の端面を支持する基板支持突起が設けられ、前記基板テーブルには、前記基板支持板を受け入れる複数の凹所が設けられ、前記基板の受け渡し時に、前記搬送部に対して前記基板テーブルが駆動機構により進退可能に構成されているとともに、前記搬送部に対して前記基板支持板が前記基板受け渡し機構により進退可能に構成され、前記基板受け渡し機構は、前記基板テーブルと前記基板支持板との隙間を制御することで前記基板テーブルと前記基板との隙間を制御する。
【0014】
本発明に係る真空処理装置によれば、搬送部と基板テーブルとの間で基板の受け渡しを行う際、搬送部には、例えば、基板を鉛直方向に対して斜め上下方向から挟んで保持する上側爪部および下側爪部と、基板の受け渡し時に、下側爪部を斜め下方に向かって移動させる下側駆動部と、基板の受け渡し時に、上側爪部を斜め上方に向かって移動させる上側駆動部とが設けられており、駆動機構により基板テーブルが、基板受け渡し機構により基板支持突起を備えた基板支持板が、一緒に所定の位置まで、上側爪部および下側爪部を介して搬送部に支持された基板に接近する。
つぎに、基板受け渡し機構により基板テーブルと基板支持板との隙間を制御して、基板支持板のみをさらに基板に接近させて、基板の下側の端面が基板支持突起の上面に支持させる。
つづいて、基板支持板のみをさらに基板に接近させて、複数の基板支持板の先端部表面が基板裏面の周縁部と接することでの基板の支持と、上側爪部および下側爪部による基板の支持が両方ある状態になると、基板受け渡し機構による基板支持板の基板への接近が停止され、その後、上側爪部が斜め上方に向かって移動するとともに、下側爪部が斜め下方に向かって移動し、上側爪部が基板の上辺から離間し、下側爪部が基板の下辺から離間する。
つぎに、基板受け渡し機構により基板テーブルと基板支持板との隙間を制御して、基板支持板は基板とともに搬送部から離間し、基板テーブルに接近する。
つづいて、基板テーブルと基板との隙間を制御しながら、基板支持板が凹所内に収容され、基板の裏面が基板テーブルの基板受け面に接したら、駆動機構により基板テーブルを、基板受け渡し機構とともに基板支持板を搬送部から離間させ、搬送部と基板テーブルとの間で基板の受け渡しを終了する。
このように、本発明に係る真空処理装置によれば、搬送部と基板テーブルとの間における基板の受け渡しにおいて、基板の下側の端面のみが基板支持板に設けた基板支持突起の上面と擦れ合うことになるので、それ以外の基板部分(特に、基板裏面)に擦り傷が付くのをさらに防止することができる。
また、基板テーブルの四隅などに、基板受渡し時の基板を支持する可動爪との干渉を避けるための窪みがないので、製膜時に基板の窪み付近の膜質が変化したり、基板の裏面の一部に余分(不要)な膜が形成され、外観上の不具合や時として入射光の減少要因となることを防止することができる。
さらにまた、搬送部と基板テーブルとの間における基板の受け渡し時点において、基板の下側の端面が基板支持板に設けた基板支持突起の上面に支持されるので、駆動機構により基板テーブルを基板間近まで進退させる必要がなくなるので、基板の受け渡し時における基板テーブルの位置管理を容易にし、基板支持板の位置調整のみで基板受渡し位置を適切な位置に調整することができ、基板の受け渡し時における動作をより確実なものとすることができる。
【0015】
本発明に係る真空処理装置は、水平面に対して平行な状態で基板を搬送する搬送部と、水平面に対して平行に延び、鉛直方向に対して上側を向いた基板受け面に前記基板が配置される基板テーブルとの間で、前記基板の受け渡しが行われる真空処理装置であって、前記基板の下側を向いた基板裏面の周縁部を支持する複数の基板支持板を備えた基板受け渡し機構により、前記基板テーブルと前記基板との隙間が制御され、前記基板テーブルには、前記基板支持板を受け入れる複数の凹所が設けられ、前記基板の受け渡し時に、前記搬送部に対して、前記基板テーブルが駆動機構により進退可能に構成されているとともに、前記搬送部に対して前記基板支持板が前記基板受け渡し機構により進退可能に構成され、前記基板受け渡し機構は、前記基板テーブルと前記基板支持板との隙間を制御することで前記基板テーブルと前記基板との隙間を制御する。
【0016】
本発明に係る真空処理装置によれば、搬送部と基板テーブルとの間で基板の受け渡しを行う際、搬送部には、水平面に対して平行な状態で基板が保持されており、駆動機構により基板テーブルが、基板受け渡し機構により基板支持板が、一緒に所定の位置まで、搬送部の上に水平の状態で載置された基板に向かって上昇して、搬送部に支持された基板に接近する。
つぎに、基板受け渡し機構により基板テーブルと基板支持板との隙間を制御しながら、基板支持板のみをさらに基板に接近させて、基板裏面の平行となる二つの周縁部が基板支持板の上面に支持され、基板が搬送部の基板保持部分の上面からわずかに離間したら、基板受け渡し機構による基板支持板の移動が停止され、基板は基板支持板で支持される。
つづいて、搬送部が退避したら、基板受け渡し機構により、基板テーブルと基板支持板との隙間を制御して基板支持板を下降させる。さらにつづいて、基板テーブルと基板との隙間を制御しながら、基板支持板が凹所内に収容され、基板の裏面が基板テーブルの基板受け面に接したら、駆動機構により基板テーブルを、基板受け渡し機構により基板支持板を、ほぼ一緒に搬送部の受渡し位置から離間させ、搬送部と基板テーブルとの間で基板の受け渡しを終了する。
このように、本発明に係る真空処理装置によれば、搬送部と基板テーブルとの間における基板の受け渡しにおいて、基板の一つの端面を支持する基板支持突起が不要となり、基板を支持する部材と基板面とが擦れ合うことはないので、基板部分(特に、基板裏面)に擦り傷が付くのを一層に防止することができる。
また、基板テーブルの四隅などに、基板受渡し時の基板を支持する可動爪との干渉を避けるための窪みがないので、製膜時に基板の窪み付近の膜質が変化したり、基板の裏面の一部に余分(不要)な膜が形成され、外観上の不具合や時として入射光の減少要因となることを防止することができる。
さらにまた、搬送部と基板テーブルとの間における基板の受け渡し時点において、駆動機構により基板テーブルを基板間近まで進退させる必要がなくなるので、基板の受け渡し時における基板テーブルの位置管理を容易にし、基板支持板の位置調整のみで基板受渡し位置を適切に調整することができ、基板の受け渡し時における動作をより確実なものとすることができる。
【0017】
上記真空処理装置において、前記基板テーブルと前記基板支持板とが、ともに前記搬送部との間で移動する際に、前記基板テーブルと前記基板支持板の移動速度の差により、前記基板テーブルと前記基板支持板の隙間が変化しないように、前記基板受け渡し機構に前記基板テーブルに追従する移動を許容する滑り機構を具備させるとさらに好適である。
すなわち、前記基板受け渡し機構に、前記基板テーブルと、前記基板支持板とが、ともに前記搬送部の側へ移動する際の、前記基板テーブルの移動速度が、前記基板支持板の移動速度よりも早くなった場合、または前記基板テーブルと、前記基板支持板とが、ともに前記搬送部から離間する側へ移動する際の、前記基板テーブルの移動速度が、前記基板支持板の移動速度よりも遅くなった場合、前記基板テーブルの移動を妨げることなく、前記基板テーブルとともに移動する前記基板支持板の、前記基板テーブルに追従する移動を許容する滑り機構を具備させるとさらに好適である。
【0018】
このような真空処理装置によれば、基板を搬出のために、基板テーブルと基板支持板とが、搬送部の側へ移動する際に、基板テーブルの移動速度が、基板支持板の移動速度よりも早くなったとしても滑り機構のところで滑りが生じ、基板テーブルの移動が妨げられないようになっている。また基板を受け取り後に、基板テーブルと基板支持板とが、搬送部と離間する側へ移動する際に、基板テーブルの移動速度が、基板支持板の移動速度よりも遅くなったとしても滑り機構のところで滑りが生じ、基板テーブルの移動が妨げられないようになっている。
これにより、基板支持板が基板テーブルと離れて基板が基板支持突起から脱落することを防止でき、さらに基板テーブルおよび基板支持板の移動時の相互干渉による振動を防止することができ、基板の脱落を防止することができる。
【0019】
上記真空処理装置において、前記凹所が、受け入れる前記基板支持板の幅と同じ幅から+1%広い幅の間にあり、および前記基板支持板の厚みと同じ深さから+5%深さの間にあるとさらに好適である。
【0020】
このような真空処理装置によれば、各凹所内に受け入れる各基板支持板が嵌り込み、基板支持板によって凹所が埋められる(塞がれる)ことになるので、製膜時に凹所の周辺で発生する不均一なプラズマを防止することができ、全体の膜質の均一性を向上させることができるとともに、凹所の中に入り込むガス量を少なくすることができ、基板の裏面に余分(不要)な膜が形成されてしまうことを防止することができる。
【0021】
上記真空処理装置において、前記基板支持板の基端部が、前記基板受け面に対して平行に位置変更するスライド・回動機構を介して取り付けられ、前記凹所に嵌り込む前記基板支持板の先端面および両側面が、前記基板裏面と対向する基板支持板の表面の面積が基板支持板の裏面の面積よりも大きくなるように形成されたテーパー面とされているとさらに好適である。
【0022】
このような真空処理装置によれば、基板支持板の基端部が、基板受け面に対して平行に位置変更するスライド・回動機構を介して取り付けられているので、各部材の熱膨張等により、基板テーブルと基板受け渡し機構との間、より詳しくは、各凹所と各基板支持板との間に多少の位置ズレが生じた場合でも、各基板支持板が各凹所内に嵌り込む際に、基板支持板が基板受け面のある基板テーブルに対して平行にスライドおよび/または基端部回りに回動することになる。
これにより、各部材の熱膨張等により、基板テーブルと基板受け渡し機構との間、より詳しくは、各凹所と各基板支持板との間に多少の位置ズレが生じた場合でも、基板支持板を凹所内に円滑に嵌り込ませる(収容させる)ことができ、基板テーブルの各凹所と各基板支持板との間で嵌り込み不良による段差発生により基板裏面と基板受け面との間の隙間を生じることなく、基板テーブルおよび基板支持板の振動を防止することができて、基板の脱落や基板テーブル面からの浮きあがりを防止することができる。
また、基板支持板と凹所との間の隙間、および基板裏面と基板受け面との間の隙間がより小さなものとなるので、製膜時に凹所の周辺で発生する不均一なプラズマをより防止することができ、全体の膜質の均一性をさらに向上させることができるとともに、凹所の中に入り込むガス量をより少なくすることができ、基板の裏面に余分(不要)な膜が形成されてしまうことをさらに防止することができる。
【0023】
上記真空処理装置において、前記基板支持板の先端面および両側面と対向する前記凹所の壁面が、前記テーパー面と合致するテーパー面とされているとさらに好適である。
【0024】
このような真空処理装置によれば、基板テーブルの各凹所と各基板支持板との間で嵌り込み不良による段差による基板裏面と基板受け面との間の隙間をさらに生じることなく、各基板支持板と各凹所との間の隙間がより小さなものとなるので、製膜時に凹所の周辺で発生する不均一なプラズマをより防止することができ、全体の膜質をさらに向上させることができるとともに、凹所の中に入り込むガス量をより少なくすることができ、基板の裏面に余分(不要)な膜が形成されてしまうことをさらに防止することができる。
【0025】
上記真空処理装置において、前記基板支持板を前記基板テーブルの側に付勢する付勢部材が設けられているとさらに好適である。
【0026】
このような真空処理装置によれば、基板を搬出のために、基板テーブルと基板支持板とが、搬送部の側へ移動する際に、基板テーブルの移動速度が、基板支持板の移動速度よりも早くなったとしても、その差は付勢手段の弾性力により吸収されることになるので、基板テーブルの移動が妨げられないようになっている。また基板を受け取り後に、基板テーブルと基板支持板とが、搬送部と離間する側へ移動する際に、基板テーブルの移動速度が、基板支持板の移動速度よりも遅くなったとしても、その差は付勢手段の弾性力により吸収されることになるので、基板テーブルの移動が妨げられないようになっている。
これにより、基板支持板が基板テーブルと離れて基板が基板支持突起から脱落することを防止でき、さらに基板テーブルおよび基板支持板の移動時の相互干渉による振動を防止することができ、基板の脱落を防止することができる。
また、基板テーブルを放電電極の側に移動させて製膜位置を少量補正するような場合に、駆動機構による基板テーブルの移動量が、基板受け渡し機構による基板支持板の移動量よりも大きくなったとしても、その差は付勢手段の弾性力により吸収されることになるので、基板支持板に過大な力が加わるのを防止することができ、基板テーブルおよび基板支持板の振動を防止することができて、基板の脱落を防止することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る真空処理装置によれば、搬送部と基板テーブルとの間で基板の受け渡しを行う際、基板表面への傷付きを防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係る製膜装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1の処理室の構成を説明する模式図である。
【図3】対向電極と搬送アームとの間における基板の受け渡しを説明するための斜視図である。
【図4】対向電極、および対向電極の周囲に配置された基板受け渡し機構の構成を説明するための模式図である。
【図5】図4の要部を拡大して示す断面図である。
【図6】対向電極と架台との間での基板の受け渡しを説明するための模式図である。
【図7】対向電極と架台との間での基板の受け渡しを説明するための模式図である。
【図8】対向電極と架台との間での基板の受け渡しを説明するための模式図である。
【図9】対向電極と架台との間での基板の受け渡しを説明するための模式図である。
【図10】対向電極と架台との間での基板の受け渡しを説明するための模式図である。
【図11】対向電極と架台との間での基板の受け渡しを説明するための模式図である。
【図12】対向電極と架台との間での基板の受け渡しを説明するための模式図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る対向電極、および対向電極の周囲に配置された基板受け渡し機構の構成を説明するための模式図である。
【図14】本発明の第3実施形態に係る対向電極、および対向電極の周囲に配置された基板受け渡し機構の構成を説明するための図であって、図5と同様の図である。
【図15】図14の要部を斜め方向から見た斜視図である。
【図16】本発明の第4実施形態に係る対向電極と搬送アームとの間における基板の受け渡しを説明するための斜視図である。
【図17】本発明の第4実施形態に係る対向電極、および対向電極の周囲に配置された基板受け渡し機構の構成を説明するための模式図である。
【図18】本発明の第5実施形態に係る対向電極、および対向電極の周囲に配置された基板受け渡し機構の構成を説明するための図であって、図5と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について図1から図12を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る製膜装置の概略構成を示す斜視図である。
【0030】
本実施形態においては、本発明を一辺が1mを超える大型基板に、アモルファス太陽電池や微結晶太陽電池や液晶ディスプレイ用TFT(Thin Film Transistor)等に用いられる非晶質シリコン、微結晶シリコン、窒化シリコン等からなる膜の大面積製膜処理を行うことが可能な製膜装置(真空処理装置)1に適用して説明する。
【0031】
製膜装置1には、図1に示すように、基板8(図2参照)に対して製膜処理が行われる複数の処理室3と、内部で基板8が搬送される搬送室2と、製膜される基板8が搬入されるロード室4と、製膜された基板8が搬出されるアンロード室5と、が設けられている。
なお、基板8としては、1辺が1mを超えるサイズ(例えば、縦横が3.3m×2.8m)であって、板厚が3.5mmから4.5mmのガラス基板を一例として挙げることができる。
【0032】
処理室3や、搬送室2や、ロード室4や、アンロード室5等は真空容器であり、ステンレス系材料により形成されたものを例示することができる。このように、ステンレス系材料により真空容器を形成することにより、耐食性と部材強度を満足することができる。
【0033】
処理室3は、更に、内部での製膜に用いられるプラズマの発生を阻害しないために、非磁性または弱磁性材料であるステンレス系材料(例えば、SUS304)やアルミニウム合金により形成されることが望ましい。
【0034】
なお、複数の処理室3、搬送室2、ロード室4、および、アンロード室5は、内部の真空雰囲気中で行われる処理内容や、これら真空容器の設計内容等に応じて他材質(例えば表面をメッキ処理した鉄系材料等)により形成されていてもよく、特に限定するものではない。
【0035】
図2は、図1の処理室の構成を説明する模式図である。
処理室3には、図2に示すように、真空容器である製膜室16と、導電性の板である対向電極(基板テーブル)12と、対向電極12の温度分布を均一化する均熱板15と、均熱板15および対向電極12を保持する均熱板保持機構21と、対向電極12との間にプラズマを発生させる放電電極13と、膜が形成される範囲を制限する防着板14と、防着板14を支持する支持部17と、高周波電力を放電電極13に供給する同軸給電部22a,22bおよび整合器23a,23bと、製膜室16内の気体を排気する高真空排気部31および低真空排気部35と、製膜室16を保持する台37と、が設けられている。対向電極12は基板テーブルとして、基板8を設置する基板受け面の機能を保有している。
なお、本図において、ガス供給に関する構成は省略している。
【0036】
製膜室16は真空容器であり、その内部で基板8にアモルファスシリコン膜や微結晶シリコン膜等を製膜するものである。
【0037】
ここで、X方向は、処理室3が並ぶ方向(図2の左右方向)であり、Y方向は搬送室2から処理室3に向かう方向(図2の紙面に対して垂直方向)である。また、製膜室16は、鉛直方向から角度αだけ傾けて台37上に保持される。傾きの角度αは鉛直方向に対して7°から12°までの範囲内の所定角度である。この鉛直方向から角度αだけ傾き、かつ、Y方向と垂直な方向をZ方向とする。
【0038】
製膜室16を傾けて保持することで、対向電極12における基板8と製膜処理面の法線が、X方向に対して角度αだけ上(鉛直方向の上方)に向く。このように基板8を垂直から僅かに傾けることは、装置の設置スペースの増加を抑えながら基板8の自重を利用して少ない手間で基板8を保持することができ、更に基板8と対向電極12の密着性を向上して基板8の温度分布と電位分布とを均一化することができて好ましい。
【0039】
対向電極12は、基板8を保持可能な保持手段(図示せず)を有する非磁性材料の導電性の板である。セルフクリーニングを行う場合は耐フッ素ラジカル性を備えることが好ましく、ニッケル合金やアルミニウムやアルミニウム合金の板を使用することが望ましい。
【0040】
対向電極12は、放電電極13に対向する電極(例えば、接地側電極)となる。対向電極12は、一方の面が均熱板15の表面と密接し、製膜時に他方の面が基板8の裏面と密接する。
さらに、対向電極12における基板8と密着する面(表面:基板受け面)の下側には、当該面から突出して基板8を支持する基板支持突起33が設けられている(図4、図6から図12参照)。
【0041】
基板支持突起33は基板8を支持するために、基板8の下辺の少なくとも両端付近に各1箇所の合計2箇所に設けられている。後述の搬送アーム42の下側爪部44(図3、図6から図12参照)と干渉しないように、基板支持突起33と下側爪部44とは、Y方向に設置位置を変更する等の工夫がしてある。
【0042】
均熱板15は、内部に温度制御された熱媒体を循環したり、または温度制御されたヒーターを組み込んだりすることで、自身の温度を制御して、全体が概ね均一な温度を有し、接触している対向電極12の温度を所定の温度に均一化する機能を有する。
【0043】
前述の熱媒体は非導電性媒体であり、水素やヘリウム等の高熱伝導性ガス、フッ素系不活性液体、不活性オイル、及び純水等が熱媒体として使用できる。中でも150℃から250℃の範囲でも圧力が上がらずに制御が容易であることから、フッ素系不活性液体(例えば、商品名:ガルデン、F05等)の使用が好適である。
【0044】
均熱板保持機構21は、均熱板15及び対向電極12を製膜室16の側面(図2の右側の側面)に対して略平行、すなわちZ軸方向に対して略平行となるように保持するとともに、均熱板15、対向電極12および基板8を、放電電極13に接近離間可能に保持するものである。
【0045】
基板搬送時であって後述の搬送アーム42(図3参照)が進入する場合には、均熱板保持機構21は放電電極13から離れ、対向電極12と放電電極13の間を広く保持する。その一方で、製膜時であって搬送アーム(搬送部)42が進入していない場合には、均熱板保持機構21は放電電極13に接近し、均熱板15等を放電電極13に接近させて、基板8を放電電極13から、例えば、3mmから20mmの範囲内に位置させることができる。
【0046】
防着板14は、接地されプラズマの広がる範囲を抑えることにより、膜が製膜される範囲を制限するものである。本実施形態の場合、図2に示すように、製膜室16の内側における防着板14の後ろ側(基板8と反対の側)の壁に膜が製膜されないようにしている。
【0047】
支持部17は、製膜室16の側面(図2における左側の側面)から内側へ垂直に延びている部材である。支持部17は防着板14と結合され、放電電極13における対向電極12と反対側の空間を覆うように防着板14を保持している。それと共に、支持部17は放電電極13と絶縁的に結合され、放電電極13を製膜室16の側面(図2における左側の側面)に対して略平行に保持している。
【0048】
高真空排気部31は、粗引き排気された製膜室16内の気体をさらに排気して、製膜室16内を高真空とする高真空排気用の真空ポンプである。弁32は、高真空排気部31と製膜室16との経路を開閉する弁である。
低真空排気部35は、初めに製膜室16内の気体を排気して、製膜室16内を低真空とする粗引き排気用の真空ポンプである。製膜時における製膜排出ガスも低真空排気部35から排気される。弁34は、低真空排気部35と製膜室16との経路を開閉する。
【0049】
台37は、上面に配置された保持部36を介して製膜室16を保持するものである。台37の内部には低真空排気部35が配置される領域が形成されている。低真空排気部35は必ずしも台37の内部にある必要は無く、製膜室16側に設けてもよいし高真空排気部31と同様に製膜室16の上部から排気してもよい。
【0050】
図3は、対向電極12(図2参照)と搬送アーム42との間における基板8の受け渡しを説明するための斜視図である。
搬送室2(図1参照)には、図3に示すように、搬送室2内を移動して基板8を搬送する架台41が設けられている。
架台41は、図1において全体が搬送室2の内部を、X方向である処理室3が並ぶ方向(図3において左右方向)に移動して、各処理室3へ基板8を搬送するものである。
【0051】
また、架台41には、対向電極12に沿って略並行に延び、基板8を把持する搬送アーム(搬送部)42が設けられている。搬送アーム42は、Y方向である搬送室2から処理室3に向かう方向(図6から図12の紙面に対して垂直方向)に移動されるものである。
【0052】
搬送アーム42には、当該搬送アーム42の鉛直方向の下方に向いた面における上側に配置された上側爪部43と、搬送アーム42の下方に向いた面における下側に配置された下側爪部44と、が設けられている。
言い換えると、搬送アーム42の対向電極12と対向する面における上側に上側爪部43が配置され、搬送アーム42の対向電極12と対向する面における下側に下側爪部44が配置されている。
【0053】
図3は、架台柱41C、アーム支持部41Bおよび搬送アーム42がスライドベース41Dの右方向(+Y方向)へと移動し始めた状態を示している。
架台41は、図3に示すように、ボールネジ等図示しない駆動装置により、全体として移動レール48に沿ってX方向に移動される。また、架台柱41C、アーム支持部41Bおよび搬送アーム42は、スライドベース41Dの上に設けられた移動レール47に沿ってY方向に移動される。
【0054】
架台柱41CがY方向に移動すると、アーム支持部41Bは架台柱41CからさらにY方向に移動する。そして、搬送アーム42はアーム支持部41BからさらにY方向に移動する。これにより、搬送アーム42はY方向に移動して処理室3の中の所定の位置に配置される。
【0055】
その一方で、基板8は上側爪部43により基板上両端付近を把持され、下側爪部44により基板下両端部分付近を把持される。
【0056】
図4は、対向電極12、および対向電極12の周囲に配置された基板受け渡し機構51の構成を説明するための模式図、図5は、図4の要部を拡大して示す断面図である。
図4および図5に示すように、本実施形態に係る処理室3は、対向電極12と基板受け渡し機構51とを備えている。
【0057】
対向電極12は、駆動機構187(図18参照)もしくは均熱板保持機構21(図2参照)により搬送アーム42に対して進退可能に構成されている(図6から図12参照)。
対向電極12における基板8と密着する面の下側には、前述の基板支持突起33(図4参照)が設けられており、対向電極12における基板8と密着する面の下側で、基板支持突起33と基板支持突起33との間には、後述する基板支持板52を受け入れる平面視矩形状の凹所38が、対向電極12の縦方向(図4および図5において上下方向)に沿って設けられている。また、対向電極12における基板8と密着する面の上側で、凹所38の直上には、後述する基板支持板53を受け入れる平面視矩形状の凹所39が、対向電極12の縦方向(図4および図5において上下方向)に沿って設けられている。
【0058】
図5は対向電極12の上部分を示している。対向電極12の下側は省略してあるが、類似した構造である。図5に示すように、凹所39は、対向電極12の上辺から基板8の上側に位置する周縁部の裏側まで延びており、基板支持板53の厚みと同じか、あるいは基板支持板53の厚みよりも若干大きい深さと、基板支持板53の幅と同じか、あるいは基板支持板53の幅よりも若干大きい幅とを有している。
一方、凹所38は、対向電極12の下辺から基板8の下側に位置する周縁部の裏側まで延びており、基板支持板52の厚みと同じか、あるいは基板支持板52の厚みよりも若干大きい深さと、基板支持板52の幅と同じか、あるいは基板支持板52の幅よりも若干大きい幅とを有している。
【0059】
さらに具体的には、凹所38および凹所39は、基板支持板52,53の幅と同じ幅から+1%広い幅の間にあり、かつ、基板支持板52,53の厚みと同じ深さから+5%深さの間にあることが好ましい。凹所38,39内に受け入れる基板支持板52,53が嵌り込み、基板支持板によって凹所が埋められる(塞がれる)が、相互の位置関係のずれによる誤差を許容するように凹所の幅と深さは若干大きくする必要がある。要素試験の結果、製膜時に凹所の周辺で発生する不均一なプラズマを防止するためには、基板支持板53の幅の+1%よりも広い幅にならないことが必要である。また、要素試験の結果、対向電極12の表面の凹所の周辺において、基板支持板の表面とで大きな段差が生じることによる不均一なプラズマを防止するためには、基板支持板52,53の深さの+5%よりも深さにならないことが必要である。
【0060】
また、図4では凹所38と基板支持板52、凹所39と基板支持板53が、対向電極12の上部と下部に2組ずつ記載してあるが、この数量は限定されるものではなく、基板8のサイズに応じて適宜選定できる。従って、基板サイズが大きくなると、凹所38,39と基板支持板52,53が、上部と下部に3組ずつ、4組ずつ、などと増加してもよい。
【0061】
図4に示すように、基板受け渡し機構51は、基板支持板52,53と、フレーム(基板支持板保持枠)54と、二組のラック・アンド・ピニオン55と、回転伝達機構56と、モータ(駆動源)57とを備えている。
基板支持板52,53はそれぞれ、平面視矩形状(長方形状)の板状部材であり、一端部(先端部)の表面は、基板8の周縁部裏面と接する接触面とされ、他端部(基端部)は、複数本(本実施形態では二本)の締結部材(例えば、皿ねじ)58を介して、後述するL型アングル材59の一端部(先端部)に固定されている。基板支持板52,53は、非磁性材料が好ましく、対向電極12と同様な材質である、SUS304、インコネルやアルミニウム合金などが使用できる。また更にプラズマ発生分布に影響を生じないよう、アルミナなどのセラミックスを用いることが好ましい。
基板支持板52,53は、基板8の主要面に接触して傷付けないとともに、基板8を安定して支持できるように、基板8の基板端からの距離が略10mmから略25mmの間の周縁部裏面と接することが好ましい。
【0062】
フレーム54は、L型アングル材59と、平板60とを備えている。
L型アングル材59は、基板支持板52,53の幅と同じか、あるいは基板支持板52,53の幅よりも若干小さい幅を有する断面視L字形状の板状の部材であり、一端側(先端側)は、基板支持板52,53の延在方向と同じ方向に延び、他端側(基端側)は、対向電極12における基板8と密着する面よりも後側(対向電極12の裏面(基板8と密着する面と反対側の面)側)に向かって延びている。また、L型アングル材59は、その外側面が平板60の内側面と密着するようにして平板60に固定されている。
平板60は、所定の幅、所定の厚み、所定の長さを有する板状部材であり、その内側面の長さ方向における両端部付近にはそれぞれ、基板支持板52,53およびフレーム54をX方向(平板60の幅方向)のみに案内する直動ガイド(スライダー)61が設けられている。また、平板60の長さ方向における中央部には、X方向に沿って延びるラック62が固定されており、ラック62の歯部には、所定の場所(一所)で回転するピニオン(平歯車)63の歯部が噛合している。そして、ピニオン63が一方向または他方向に回転すると、ラック62が+X方向または−X方向に移動して、直動ガイド61に案内された基板支持板52,53およびフレーム54が、対向電極12に対して進退するようになっている。
【0063】
ピニオン63は、Y方向に沿って延びる(第1の)回転軸64の一端部(図4において左側の端部)に設けられており、回転軸64の他端部(図4において右側の端部)には、所定の場所(一所)で回転する(第1の)かさ歯車65が設けられている。かさ歯車65の歯部には、Z軸方向に沿って延びる(第2の)回転軸66の一端部(図4において上側の端部)または他端部(図4において下側の端部)に設けられて、所定の場所(一所)で回転する(第2の)かさ歯車67の歯部が噛合している。
【0064】
回転軸66の中央部には、Y方向に沿って延びる(第3の)回転軸68の一端部(図4において左側の端部)におけるY方向周りの回転をZ方向周りの回転に変換する回転方向変換機構69が設けられており、回転軸68の他端部(図4において右側の端部)には、モータ57が接続されている。そして、モータ57により回転軸68が一方向または他方向に回転すると、回転軸66,64が一方向または他方向に回転して、ラック62が+X方向または−X方向に移動し、ラック62と固定した平板60、L型アングル材59、基板支持板52,53が+X方向または−X方向に移動するようになっている。
これにより、基板支持板52,53と対向電極12との間の隙間をモータ57の回転により制御ができる。
なお、図4中の符号70は、軸シール(例えば、磁性流体シール)であり、これにより、モータ57を処理室3の外側の大気雰囲気下に設置し、軸シール70を介して、以降の部品を処理室3内の真空雰囲気下に設置できるよう、処理室3のケーシング188(図18参照)を貫通する回転軸68周りが軸封されることになる。
また、本実施形態の場合、回転伝達機構56は、回転軸64,66,68、かさ歯車65,67、回転方向変換機構69により構成されている。
【0065】
図6から図12は、対向電極12(基板テーブル)と架台41との間での基板8の受け渡しを説明するための模式図である。
以下、対向電極12(基板テーブル)と架台41との間での基板8の受け渡しを、図6から図12を用いて順に説明する。
図6および図7に示すように、処理室3内への搬送アーム42の進入が完了すると、駆動機構187(図18参照)により対向電極12(基板テーブル)が、上側爪部43および下側爪部44を介して搬送アーム42に支持された基板8に接近するとともに、ラック・アンド・ピニオン55(図4参照)、回転伝達機構56(図4参照)、およびモータ57(図4参照)により、基板支持板52,53およびフレーム54(図4参照)が、対向電極12とほぼ一緒に、上側爪部43および下側爪部44を介して搬送アーム42に支持された基板8に接近する。
【0066】
つぎに、基板8の下側の端面(側面)が基板支持突起33の上面に支持されたら、駆動機構187による対向電極12(基板テーブル)の基板8への接近が停止され、図8に示すように、対向電極12と基板支持板52,53との隙間を制御して、ラック・アンド・ピニオン55、回転伝達機構56、およびモータ57により、基板支持板52,53およびフレーム54のみが基板8に接近する。ここで、基板支持突起33と下側爪部44はY方向(紙面の垂直方向)で位置が異なっており、相互に干渉することは無い。
つづいて、図9に示すように、基板支持板52,53の一端部表面が基板8の周縁部裏面と接することでの基板の支持と、上側爪部43および下側爪部44による基板8の支持が両方ある状態になると、ラック・アンド・ピニオン55、回転伝達機構56、およびモータ57による基板支持板52,53およびフレーム54の基板8への接近が停止され、基板8の裏面と対向電極12(基板テーブル)の表面との間に所定の隙間を形成される。その後、この所定の隙間により対向電極12の表面と干渉することなく、上側爪部43が斜め上方に向かって移動するとともに、下側爪部44が斜め下方に向かって移動し、上側爪部43が基板8の上辺から離間し、下側爪部44が基板8の下辺から離間する。このとき、基板8は、基板支持突起33の上面および基板支持板52,53の一端部表面により支持されている。
【0067】
つぎに、図10に示すように、対向電極12(基板テーブル)と基板支持板52,53との隙間を制御して、モータ57の回転により、基板支持板52,53およびフレーム54は、基板8とともに搬送アーム42から離間し、対向電極12に接近する。
つづいて、図11に示すように、対向電極12(基板テーブル)と基板8との隙間を暫時に小さくなるように制御しながら、基板8の裏面が対向電極12における基板8と密着する面に接したら、駆動機構187により対向電極12を、ラック・アンド・ピニオン55、回転伝達機構56、およびモータ57の回転により、基板支持板52,53およびフレーム54を、対向電極12とほぼ一緒に搬送アーム42から離間させる。このとき、基板8は、対向電極12における基板8と密着する面、基板支持突起33の上面、および基板支持板52,53の一端部表面により支持されている。
そして、図12に示すように、駆動機構187により対向電極12が待機位置(搬送アーム42を出し入れできるスペースを設ける元の位置)に戻されるとともに、ラック・アンド・ピニオン55、回転伝達機構56、およびモータ57により、基板支持板52,53およびフレーム54が待機位置(元の位置)に戻されて、対向電極12と架台41との間での基板8の受け渡し工程が終了する。
【0068】
本実施形態に係る真空処理装置によれば、搬送アーム42と対向電極12(基板テーブル)との間で基板8の受け渡しを行う際、駆動機構187により対向電極12が、上側爪部43および下側爪部44を介して搬送アーム42に支持された基板8に接近するとともに、基板受け渡し機構51により基板支持板52,53が、対向電極12とほぼ一緒に、上側爪部43および下側爪部44を介して搬送アーム42に支持された基板8に接近する。
つぎに、基板8の下側の端面が基板支持突起33の上面に支持されたら、駆動機構187による対向電極12の基板8への接近が停止され、基板受け渡し機構51により対向電極12(基板テーブル)の基板受け面と基板支持板52,53との隙間を制御して、基板支持板52,53のみが基板8に接近する。
つづいて、基板支持板52,53の先端部表面が基板8裏面の周縁部と接することでの基板の支持と、上側爪部43および下側爪部44による基板の支持が両方ある状態になると、基板受け渡し機構51による基板支持板52,53の基板8への接近が停止され、その後、対向電極12の表面と干渉することなく、上側爪部43が斜め上方に向かって移動するとともに、下側爪部44が斜め下方に向かって移動し、上側爪部43が基板8の上辺から離間し、下側爪部44が基板8の下辺から離間する。
つぎに、基板受け渡し機構51により基板支持板52,53は基板8とともに搬送アーム42から離間し、基板テーブル8に接近する。
つづいて、対向電極12(基板テーブル)の基板受け面と基板8との隙間を制御しながら、基板支持板52,53が凹所38,39内に収容され、基板8の裏面が基板受け面に接したら、駆動機構187により対向電極12を、基板受け渡し機構51により基板支持板52,53を、ほぼ一緒に搬送アーム42から離間させ、搬送アーム42と対向電極12との間で基板8の受け渡しを終了する。
このように、本発明に係る真空処理装置によれば、搬送アームと対向電極12(基板テーブル)との間における基板8の受け渡しにおいて、基板8の下側の端面のみが基板支持突起33の上面と擦れ合うことになるので、それ以外の基板部分(特に、基板8の裏面)に対向電極12の基板受け面との擦り傷が付くのを防止することができる。
【0069】
また、本実施形態に係る真空処理装置によれば、基板支持板52,53の幅と略同じ幅、および基板支持板52,53の厚みと略同じ深さを有している凹所38,39内に受け入れる基板支持板52,53が嵌り込み、基板支持板52,53によって凹所38,39が埋められる(塞がれる)ことになるので、製膜時に凹所38,39の周辺で発生する不均一なプラズマを防止することができ、全体の膜質の均一性を向上させることができるとともに、凹所38,39の中に入り込むガス量を少なくすることができ、基板8の裏面に余分(不要)な膜が形成されてしまうことを防止することができる。
また、基板テーブルの四隅などに、基板受渡し時の基板を支持する可動爪との干渉を避けるための窪みがないので、製膜時に基板の窪み付近の膜質が変化したり、基板の裏面の一部に余分(不要)な膜が形成され、外観上の不具合や時として入射光の減少要因となることを防止することができる。
【0070】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態について図13を参照して説明する。
図13は、本実施形態に係る対向電極(基板テーブル)、および対向電極の周囲に配置された基板受け渡し機構の構成を説明するための模式図である。
本実施形態の製膜装置の基本構成は、第1実施形態と同様であるが、基板支持突起33が対向電極12の下側に設けた基板支持板52の少なくとも2つの一端部表面に配置され、基板支持突起33を対向電極12(基板テーブル)の表面に具備していないという点で前述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については前述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、前述した第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0071】
図13に示すように、本実施形態においては、基板支持突起33が基板8の両端付近にある基板支持板52の一端部表面に配置され、基板支持突起33は、基板支持板52,53とともにX方向に移動するようになっている。
また、図13では凹所38と基板支持板52、凹所39と基板支持板53が、対向電極12の上部と下部に4組ずつ記載してあるが、この数量は限定されるものではなく、基板8のサイズに応じて適宜選定できる。
なお、本実施形態において、搬送アーム42との間で基板8の受け渡しを行う際、駆動機構187(図18参照)により対向電極12(基板テーブル)をX方向に所定の位置まで移動させればよい。対向電極12(基板テーブル)と基板支持板52,53をほぼ一緒に、X方向に所定の位置まで移動させた後は、ラック・アンド・ピニオン55、回転伝達機構56、およびモータ57(図4参照)により、基板支持板52,53およびフレーム54のみがX方向に移動させられるようになっている。またラック・アンド・ピニオン55を長くすることで、対向電極12(基板テーブル)の所定の位置を待機位置とし、すなわちX方向に移動させずに、基板支持板52,53およびフレーム54のみのX方向への移動量を大きくして、基板8の受け渡しをすることも可能である。
【0072】
本実施形態に係る真空処理装置によれば、搬送部アーム42と対向電極12(基板テーブル)との間で基板8の受け渡しを行う際、基板受け渡し機構51により基板支持突起33を備えた基板支持板52と基板支持板53が、上側爪部43および下側爪部44を介して搬送アーム42に支持された基板8に接近する。
つぎに、基板8の下側の端面が基板支持突起33の上面に支持されたら、基板受け渡し機構51により基板支持板52,53をさらに基板8に接近させる。
つづいて、基板支持板52,53の先端部表面が基板8裏面の周縁部と接することでの基板8の支持と、上側爪部43および下側爪部44による基板8の支持が両方ある状態になると、基板受け渡し機構51による基板支持板52,53の基板8への接近が停止され、基板8の裏面と対向電極12(基板テーブル)の表面との間に所定の隙間が形成される。その後、上側爪部43が斜め上方に向かって移動するとともに、下側爪部44が斜め下方に向かって移動し、上側爪部43が基板8の上辺から離間し、下側爪部44が基板8の下辺から離間する。
つぎに、基板受け渡し機構51により対向電極12(基板テーブル)と基板支持板52,53との隙間を制御して、基板支持板52,53は基板8とともに搬送アーム42から離間し、基板テーブル8に接近する。
つづいて、対向電極12と基板8との隙間を制御しながら、基板支持板52,53が凹所38,39内に収容され、基板8の裏面が対向電極12の基板受け面に接したら、駆動機構187により対向電極12を、基板受け渡し機構51とともに基板支持板52,53を、ほぼ一緒に搬送アーム42から離間させ、搬送アーム42と対向電極12との間で基板8の受け渡しを終了する。
このように、本発明に係る真空処理装置によれば、搬送アーム42と対向電極12(基板テーブル)との間における基板8の受け渡しにおいて、基板8の下側の端面のみが基板支持突起33の上面と擦れ合うことになるので、それ以外の基板部分(特に、基板8裏面)に擦り傷が付くのを防止することができる。
また、搬送アーム42と対向電極12(基板テーブル)との間における基板8の受け渡し時点において、基板8の下側の端面が基板支持板52に設けた基板支持突起33の上面に支持されるので、駆動機構187により対向電極12を基板間近まで進退させる必要がなくなるので、基板8の受け渡し時における対向電極12の位置管理を容易にし、基板支持板52,53の位置調整のみで基板受渡し位置を適切な位置への調整を容易なものとすることができ、基板8の受け渡し時における動作をより確実なものとすることができる。
基板支持突起33が基板支持板52の一端部表面に配置されているので、基板8の受渡しがより容易であり、さらに大型サイズの基板に対応することが可能である。
【0073】
また、本実施形態に係る真空処理装置によれば、基板支持板52,53の幅と略同じ幅、および基板支持板52,53の厚みと略同じ深さを有している凹所38,39内に受け入れる基板支持板52,53が嵌り込み、基板支持板52,53によって凹所38,39が埋められる(塞がれる)ことになるので、製膜時に凹所38,39の周辺で発生する不均一なプラズマを防止することができ、全体の膜質の均一性を向上させることができるとともに、凹所38,39の中に入り込むガス量を少なくすることができ、基板8の裏面に余分(不要)な膜が形成されてしまうことを防止することができる。
また、基板テーブルの四隅などに、基板受渡し時の基板を支持する可動爪との干渉を避けるための窪みがないので、製膜時に基板の窪み付近の膜質が変化したり、基板の裏面の一部に余分(不要)な膜が形成され、外観上の不具合や時として入射光の減少要因となることを防止することができる。
【0074】
〔第3実施形態〕
本発明の第3実施形態について図14および図15を参照して説明する。
図14は、本実施形態に係る対向電極、および対向電極の周囲に配置された基板受け渡し機構の構成を説明するための図であって、図5と同様の部位を示した図、図15は、図14の要部を斜め方向から見た斜視図である。
本実施形態の製膜装置の基本構成は、前述した実施形態と同様であるが、基板支持板52,53の代わりに基板支持板141を備え、凹所38,39の代わりに凹所142を備えるとともに、基板支持板141が微調整ガイド機構(スライド・回動機構)143を介してL型アングル材59に取り付けられているという点で前述した実施形態のものと異なる。その他の構成要素については前述した実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、前述した実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0075】
図14および図15に示すように、凹所142に嵌り込む基板支持板141の先端面(L型アングル材59に対向する面と反対側の端面)および両側面は、基板支持板141の表面の面積が基板支持板141の裏面の面積よりも大きくなるように形成されたテーパー面144とされている。
一方、基板支持板141の先端面および両側面と対向して凹所142を形成する凹所142の壁面(周面)も、基板支持板141の先端面および両側面と同じ傾斜を有するテーパー面145とされている。
【0076】
微調整ガイド機構143は、スライド板146と、一本の締結部材(例えば、皿ねじ)147とを備えている。
スライド板146の中央部および基板支持板141の他端部(基端部)には、Y方向に沿って、締結部材147の軸部が貫通する長穴148が設けられており、スライド板146は基板支持板141の上面に固定され、締結部材147はL型アングル材59に固定されている。そして、スライド板146および基板支持板141は、Y軸方向に沿ってわずかにスライド(移動)できるとともに、締結部材147の中心線C回りにわずかに回動できるようになっている。基板支持板141の基端部が、対向電極12の基板受け面に対して、平行を保ちながらわずかに位置変更をすることが可能となる。
【0077】
本実施形態に係る真空処理装置によれば、基板支持板141の基端部が、微調整ガイド機構143を介して取り付けられているので、各部材の熱膨張等により、対向電極12と基板受け渡し機構51との間、より詳しくは、凹所142と基板支持板141との間に多少の位置ズレが生じた場合でも、基板支持板141が凹所142内に嵌り込む際に、基板支持板141が基板受け面のある対向電極12に対して平行にスライドおよび/または基端部回りに回動することになる。
これにより、各部材の熱膨張等により、対向電極12と基板受け渡し機構51との間、より詳しくは、凹所142と基板支持板141との間に多少の位置ズレが生じた場合でも、基板支持板141を凹所142内に円滑に嵌り込ませる(収容させる)ことができ、対向電極12の凹所142と基板支持板141との間で嵌り込み不良による段差発生により基板裏面と対向電極12の基板受け面との間の隙間を生じることなく、対向電極12および基板支持板141の振動を防止することができて、基板8の脱落や対向電極12の基板受け面からの浮きあがりを防止することができる。
また、対向電極12の凹所142と基板支持板141との間で嵌り込み不良による段差発生により基板裏面と基板受け面との間の隙間をさらに生じることなく、基板支持板141と凹所142との間の隙間、および基板8裏面と基板受け面との間の隙間がより小さなものとなるので、製膜時に凹所142の周辺で発生する不均一なプラズマをより防止することができ、全体の膜質の均一性をさらに向上させることができるとともに、凹所142の中に入り込むガス量をより少なくすることができ、基板8の裏面に余分(不要)な膜が形成されてしまうことをさらに防止することができる。
その他の作用効果は、上述した実施形態のものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0078】
また、本実施形態に係る真空処理装置によれば、凹所142に嵌り込む基板支持板141の先端面および両側面が、基板8裏面と対向する基板支持板141の表面の面積が裏面の面積よりも大きくなるように形成されたテーパー面144とされ、基板支持板141の先端面および両側面と対向する凹所142の壁面が、テーパー面144と合致するテーパー面145とされ、基板支持板141と凹所142との間の隙間、および基板8裏面と基板受け面との間の隙間がより小さなものとなるので、製膜時に凹所142の周辺で発生する不均一なプラズマをより防止することができ、全体の膜質の均一性をさらに向上させることができるとともに、凹所142の中に入り込むガス量をより少なくすることができ、基板8の裏面に余分(不要)な膜が形成されてしまうことをさらに防止することができる。
【0079】
〔第4実施形態〕
本発明の第4実施形態について図16および図17を参照して説明する。
図16は、本実施形態に係る対向電極と搬送アームとの間における基板の受け渡しを説明するための斜視図、図17は、対向電極、および対向電極の周囲に配置された基板受け渡し機構の構成を説明するための模式図である。
本実施形態の製膜装置の基本構成は、前述した実施形態と同様であるが、搬送アーム、対向電極12、および基板受け渡し機構51がXY平面に沿って配置され、基板8がXY平面(水平面)上で受け渡されるという点で前述した実施形態のものと異なる。その他の構成要素については前述した実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、前述した実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。また、図17は本実施形態に係る技術的思想を第1実施形態に適用した場合を示す図であり、図面の簡略化を図るため図17には基板支持板52,53のみを示している。
【0080】
図16に示すように、本実施形態に係る架台161は、その上面に水平面に対して平行な状態で基板8が載置され、その内部に入れ子状に配置された(第1の)アーム支持部162の移動レール163に対してスライド可能に構成された搬送アーム(搬送部)164と、その内部に入れ子状に配置された(第2の)アーム支持部165の移動レール166に対してスライド可能に構成された(第1の)アーム支持部162と、スライドベース167の上面にX方向に沿って設けられた移動レール47に対してスライド可能に構成された(第2の)アーム支持部165と、移動レール47と垂直な方向に沿って設けられた移動レール48(図3参照)に対してスライド可能に構成されたスライドベース167とを備えている。
なお、本実施形態において、搬送アーム164は上側爪部43および下側爪部44を具備しておらず、処理室3(図1から図3参照)、および処理室3の側面に設けられて搬送アーム164を受け入れる開口(図3において破線で示す開口に相当)は、本実施形態に適合するよう水平な向きに変更されている。
【0081】
また、図17に示すように、本実施形態においては、対向電極12および基板受け渡し機構51が、水平面であるXY平面に沿って配置されることになる。
なお、本実施形態において、対向電極12および基板支持板52,53は基板支持突起33を具備していない。図17では凹所38と基板支持板52、凹所39と基板支持板53が、対向電極12の平行となる一端辺側と他端辺側に4組ずつ記載してあるが、この数量は限定されるものではなく、基板8のサイズに応じて適宜選定できる。
また、本実施形態において、搬送アーム164との間で基板8の受け渡しを行う際、駆動機構187(図18参照)により対向電極12(基板テーブル)所定の位置まで移動させればよい。対向電極12と基板支持板52,53をほぼ一緒に、Z方向に所定の位置まで移動させた後は、ラック・アンド・ピニオン55、回転伝達機構56、およびモータ57(図4参照)により、基板支持板52,53およびフレーム54のみがZ方向に移動させられるようになっている。またラック・アンド・ピニオン55を長くすることで、対向電極12(基板テーブル)の所定の位置を待機位置とし、すなわちZ方向に移動させずに、基板支持板52,53およびフレーム54のみのZ方向への移動量を大きくして、基板8の受け渡しをすることも可能である。
【0082】
以下、対向電極12と架台161との間での基板8の受け渡しについて順に説明する。
図16または図17に示すように、処理室3内への搬送アーム164の進入が完了すると、ラック・アンド・ピニオン55、回転伝達機構56、およびモータ57により、対向電極12と基板支持板52,53との隙間を制御しながら、基板支持板52,53およびフレーム54が+Z方向に移動し、搬送アーム164の上に載置された基板8に接近する。
【0083】
つぎに、基板8の平行となる二つの周縁部が基板支持板52,53の上面に支持され、基板8が搬送アーム164の基板保持部分の上面(図示せず)からわずかに離間したら、ラック・アンド・ピニオン55、回転伝達機構56、およびモータ57による基板支持板52,53およびフレーム54のZ方向への移動が停止され、基板8は基板支持板52,53で支持される。その後、搬送アーム164、アーム支持部162,165がX方向に沿って縮められ、処理室3内から搬送アーム164が退避する。
つづいて、ラック・アンド・ピニオン55、回転伝達機構56、およびモータ57により、対向電極12と基板支持板52,53との隙間を制御して、基板支持板52,53およびフレーム54が−Z方向に移動し、さらにつづいて、対向電極12と基板8との隙間を制御しながら、基板支持板52,53が凹所38,39内に収容され、基板8の裏面が対向電極12の基板受け面に接したら、駆動機構187により対向電極12を、基板受け渡し機構51により基板支持板52,53を、ほぼ一緒に搬送アーム164の受渡し位置から離間させ、待機位置(元の位置)に戻されて、対向電極12と架台161との間での基板8の受け渡し工程が終了する。
【0084】
本実施形態に係る真空処理装置によれば、搬送アーム164と対向電極12との間で基板8の受け渡しを行う際、基板受け渡し機構51により対向電極12(基板テーブル)と基板支持板52,53との隙間を制御しながら、基板支持板52,53が、搬送アーム164の上に水平の状態で載置された基板8に向かって上昇する。
つぎに、基板8の平行となる二つの周縁部が基板支持板52,53の上面に支持され、基板8が搬送アーム164の上面からわずかに離間したら、基板受け渡し機構51による基板支持板52,53の移動が停止される。
つづいて、搬送アーム164が退避したら、基板受け渡し機構51により、対向電極12と基板支持板52,53との隙間を制御して基板支持板52,53を下降させ、さらにつづいて、対向電極12と基板8との隙間を制御しながら、基板8の裏面が基板受け面に接したら、駆動機構187により対向電極12を、基板受け渡し機構51により基板支持板52,53を受渡し位置から離間させ、搬送アーム164と対向電極12との間で基板8の受け渡しを終了する。
このように、本発明に係る真空処理装置によれば、搬送アーム164と対向電極12との間における基板8の受け渡しにおいて、基板8の一つの端面を支持する基板支持突起33が不要となり、基板8を支持する部材と基板8とが擦れ合うことはないので、基板8部分(特に、基板8の裏面)に擦り傷が付くのをより一層防止することができる。
基板支持突起33がないので、基板8の受渡しがより容易であり、さらに大型サイズの基板に対応することが可能である。
また、搬送アーム164と対向電極12との間における基板8の受け渡し時点において、駆動機構187により対向電極12を基板間近まで進退させる必要がなくなるので、基板8の受け渡し時における対向電極12の位置管理を容易にし、基板支持板52,53の位置調整のみで基板受渡し位置の適切な調整を容易なものとすることができ、基板8の受け渡し時における動作をより確実なものとすることができる。
さらにまた、対向電極12(基板テーブル)の四隅などに、基板受渡し時の基板8を支持する可動爪との干渉を避けるための窪みがないので、製膜時に基板8の窪み付近の膜質が変化したり、基板8の裏面の一部に余分(不要)な膜が形成され、外観上の不具合や時として入射光の減少要因となることを防止することができる。
【0085】
〔第5実施形態〕
本発明の第5実施形態について図18を参照して説明する。
図18は、本実施形態に係る対向電極、および対向電極の周囲に配置された基板受け渡し機構の構成を説明するための図であって、図5と同様の部位を示した図である。
本実施形態の製膜装置の基本構成は、前述した実施形態と同様であるが、L型アングル材59の代わりにT型アングル材181を備え、このT型アングル材181が直動ガイド(スライダー)182および引張コイルバネ(付勢部材)183を介して平板60に取り付けられているという点で前述した実施形態のものと異なる。その他の構成要素については前述した実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、前述した実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。また、図18は本実施形態に係る技術的思想を第1実施形態に適用した場合を示す図であり、図面の簡略化を図るため図18には基板支持板53のみを示している。
【0086】
図18に示すように、T型アングル材181は、基板支持板52,53の幅と同じか、あるいは基板支持板52,53の幅よりも若干小さい幅を有する断面視T字形状の板状の部材であり、Tという字の頂部を形成する部分184は、基板支持板52,53の延在方向と同じ方向に延び、Tという字の軸部を形成する部分185は、対向電極12における基板8と密着する面よりも後側(対向電極12の裏面(基板8と密着する面と反対側の面)側)に向かって延びている。また、Tという字の軸部を形成する部分185の外側面と、平板60の内側面との間には、基板支持板52,53およびT型アングル材181をX方向(平板60の幅方向)のみに案内する直動ガイド182が設けられ、Tという字の軸部を形成する部分185の端面と、平板60の幅方向における中央部内側面から突出してY方向に沿って延びる断面視矩形状の凸部186との間には、基板支持板52,53およびT型アングル材181を凸部186の側に付勢する引張コイルバネ183が設けられている。
【0087】
なお、図18中の符号187は、対向電極12を搬送アーム42または放電電極13に対して進退させる駆動機構(直線導入機:直進導入装置)であり、処理室3のケーシング188を貫通する直線導入軸(直進導入軸)189周りは、真空シール190により軸封され、駆動機構187を処理室3の外の大気雰囲気下に設置することができる。
また、Tという字の頂部を形成する部分184のうち、基板支持板52,53が取り付けられた側と反対側の端部と、平板60の長さ方向に沿って延びる側面とは、互いに接して所定の移動量の限度を制御するストッパーとして機能するようになっている。
【0088】
本実施形態に係る真空処理装置によれば、基板支持板53を対向電極12の側に付勢する引張コイルバネ183が設けられ、対向電極12(基板テーブル)と基板支持板52,53を各々駆動させる機構間の緩衝を抑制し、対向電極12と基板支持板52,53が、ほぼ一緒に移動することに効果を発揮する。
基板8を搬出のために、対向電極12と基板支持板52,53とが、搬送アーム42の側へ移動する際に、対向電極12の移動速度が、基板支持板52,53の移動速度よりも早くなったとしても、その差は付勢手段の引張コイルバネ183の弾性力により吸収されることになるので、対向電極12の移動が妨げられないようになっている。また基板を受け取り後に、対向電極12と基板支持板52,53とが、搬送アーム42と離間する側へ移動する際に、対向電極12の移動速度が、基板支持板52,53の移動速度よりも遅くなったとしても、その差は付勢手段の引張コイルバネ183の弾性力により吸収されることになるので、対向電極12の移動が妨げられないようになっている。
また、Tという字の頂部を形成する部分184のうち、基板支持板52,53が取り付けられた側と反対側の端部と、平板60の長さ方向に沿って延びる側面とは、互いに接して所定の移動量の限度を制御するストッパーとなる。対向電極12と、基板支持板52,53とが、引張コイルバネ183により緩衝機能を保持しながら密着し、対向電極12と基板支持板52,53との隙間を制御して基板支持板52,53を移動させる際には、このストッパーにより確実に平板60の移動を基板支持板52,53の移動とさせることが可能となる。
これにより、対向電極12と基板支持板52,53とが、ともに搬送アーム42との間で移動する際に、対向電極12と基板支持板52,53の移動速度の差が若干発生しても、対向電極12と基板支持板52,53に生じる隙間は、両者が密着すようとする付勢力により、所定の隙間値より大きく変化しない。このため基板支持板52,53が対向電極12と離れて基板8が基板支持突起33から脱落することを防止でき、さらに対向電極12および基板支持板52,53の移動時の相互干渉による振動を防止することができ、基板8の脱落を防止することができる。
さらにまた、対向電極12を放電電極13の側に移動させて製膜位置を少量補正するような場合に、駆動機構187による対向電極12の移動量が、基板受け渡し機構51による基板支持板53の移動量よりも大きくなったとしても、その差は引張コイルバネ183の弾性力により吸収されることになるので、処理室3における基板受渡し位置の再調整を実施しないままでも、基板支持板53に過大な力が加わるのを防止することができ、対向電極12および基板支持板53の振動を防止することができて、基板8の脱落を防止することができるので、メンテナンス調整時間と手間を短縮可能となる。
【0089】
ここで、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種変更・変形が可能である。
例えば、前述した実施形態において、モータ57と軸シール70との間に位置する回転軸68に、所定の負荷以上の回転力が作用すると滑りを生じる図示しないクラッチ(滑り機構)が配置されているとさらに好適である。
すなわち、対向電極12と、基板支持板52,53およびフレーム54とが、搬送アーム42または放電電極13の方へ移動する際に、対向電極12の移動速度が、基板支持板52,53およびフレーム54の移動速度よりも早くなったとしてもクラッチの滑り機構のところで滑りが生じ、対向電極12の移動が妨げられないようになっている。また基板8を受け取り後に、対向電極12と基板支持板52,53とが、搬送アーム42と離間する側へ移動する際に、対向電極12の移動速度が、基板支持板52,53の移動速度よりも遅くなったとしてもクラッチの滑り機構のところで滑りが生じ、対向電極12の移動が妨げられないようになっている。
これにより、基板支持板52,53が対向電極12と離れて基板8が基板支持突起33から脱落することを防止でき、さらに対向電極12および基板支持板52,53の移動時の相互干渉による振動を防止することができ、基板8の脱落を防止することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 製膜装置(真空処理装置)
8 基板
12 対向電極(基板テーブル)
33 基板支持突起
38 凹所
39 凹所
42 搬送アーム(搬送部)
43 上側爪部
44 下側爪部
51 基板受け渡し機構
52 基板支持板
53 基板支持板
141 基板支持板
142 凹所
143 微調整ガイド機構(スライド・回動機構)
144 テーパー面
145 テーパー面
164 搬送アーム(搬送部)
183 引張コイルばね(付勢部材)
187 駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に対して斜めの状態で基板を搬送する搬送部と、鉛直方向に対して斜めに延び、鉛直方向に対して斜め上側を向いた基板受け面に前記基板が配置される基板テーブルとの間で前記基板の受け渡しが行われる真空処理装置であって、
前記基板の斜め下側を向いた基板裏面の周縁部を支持する複数の基板支持板を備えた基板受け渡し機構により前記基板テーブルと前記基板との隙間が制御され、前記基板テーブルには、前記基板受け面に配置される前記基板の下側の端面を支持する基板支持突起と、前記基板支持板を受け入れる複数の凹所とが設けられ、前記基板の受け渡し時に、前記搬送部に対して前記基板テーブルが駆動機構により進退可能に構成されているとともに、前記搬送部に対して前記基板支持板が前記基板受け渡し機構により進退可能に構成され、前記基板受け渡し機構は、前記基板テーブルと前記基板支持板との隙間を制御することで前記基板テーブルと前記基板との隙間を制御することを特徴とする真空処理装置。
【請求項2】
鉛直方向に対して斜めの状態で基板を搬送する搬送部と、鉛直方向に対して斜めに延び、鉛直方向に対して斜め上側を向いた基板受け面に前記基板が配置される基板テーブルとの間で、前記基板の受渡しが行われる真空処理装置であって、
前記基板の斜め下側を向いた基板裏面の周縁部を支持する複数の基板支持板を備えた基板受け渡し機構により、前記基板テーブルと前記基板との隙間が制御され、前記基板支持板の少なくとも2つには、前記基板受け面に配置される前記基板の下側の端面を支持する基板支持突起が設けられ、前記基板テーブルには、前記基板支持板を受け入れる複数の凹所が設けられ、前記基板の受け渡し時に、前記搬送部に対して前記基板テーブルが駆動機構により進退可能に構成されているとともに、前記搬送部に対して前記基板支持板が前記基板受け渡し機構により進退可能に構成され、前記基板受け渡し機構は、前記基板テーブルと前記基板支持板との隙間を制御することで前記基板テーブルと前記基板との隙間を制御することを特徴とする真空処理装置。
【請求項3】
水平面に対して平行な状態で基板を搬送する搬送部と、水平面に対して平行に延び、鉛直方向に対して上側を向いた基板受け面に前記基板が配置される基板テーブルとの間で、前記基板の受け渡しが行われる真空処理装置であって、
前記基板の下側を向いた基板裏面の周縁部を支持する複数の基板支持板を備えた基板受け渡し機構により、前記基板テーブルと前記基板との隙間が制御され、前記基板テーブルには、前記基板支持板を受け入れる複数の凹所が設けられ、前記基板の受け渡し時に、前記搬送部に対して、前記基板テーブルが駆動機構により進退可能に構成されているとともに、前記搬送部に対して前記基板支持板が前記基板受け渡し機構により進退可能に構成され、前記基板受け渡し機構は、前記基板テーブルと前記基板支持板との隙間を制御することで前記基板テーブルと前記基板との隙間を制御することを特徴とする真空処理装置。
【請求項4】
前記基板テーブルと前記基板支持板とが、ともに前記搬送部との間で移動する際に、前記基板テーブルと前記基板支持板の移動速度の差により、前記基板テーブルと前記基板支持板の隙間が変化しないように、前記基板受け渡し機構に前記基板テーブルに追従する移動を許容する滑り機構を具備していることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の真空処理装置。
【請求項5】
前記凹所が、受け入れる前記基板支持板の幅と同じ幅から+1%広い幅の間にあり、および前記基板支持板の厚みと同じ深さから+5%深さの間にあることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の真空処理装置。
【請求項6】
前記基板支持板の基端部が、前記基板受け面に対して平行に位置変更するスライド・回動機構を介して取り付けられ、前記凹所に嵌り込む前記基板支持板の先端面および両側面が、前記基板裏面と対向する基板支持板の表面の面積が基板支持板の裏面の面積よりも大きくなるように形成されたテーパー面とされていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の真空処理装置。
【請求項7】
前記基板支持板の先端面および両側面と対向する前記凹所の壁面が、前記テーパー面と合致するテーパー面とされていることを特徴とする請求項6に記載の真空処理装置。
【請求項8】
前記基板支持板を前記基板テーブルの側に付勢する付勢部材が設けられていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の真空処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−233823(P2011−233823A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105202(P2010−105202)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】