説明

研磨装置および研磨方法

【課題】研磨時間全体を短縮することができ、研磨テープを容易に交換できる研磨装置を提供する。
【解決手段】本発明の研磨装置は、基板Wのノッチ部を研磨する研磨装置において、基板Wを水平に保持し、回転させる回転保持機構3と、研磨テープを用いて基板Wを研磨する複数の研磨ヘッドモジュール70A,70B,70C,70Dと、複数の研磨ヘッドモジュールを互いに独立して移動させる移動機構とを備える。複数の研磨ヘッドモジュールは、研磨テープを基板Wのノッチ部に摺接させる研磨ヘッド30と、研磨ヘッドに研磨テープを供給し、回収するテープ供給回収機構2A,2B,2C,2Dとをそれぞれ有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハなどの基板を研磨する研磨装置および研磨方法に関し、特に基板のベベル部を研磨するベベル研磨装置または基板のノッチ部を研磨するノッチ研磨装置に好適に使用される研磨装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造における歩留まり向上の観点から、ウエハの周縁部の表面状態の管理が近年注目されている。半導体製造工程では、多くの材料がウエハ上に成膜され、積層されていくため、製品に使用されない周縁部には不要な膜や表面荒れが形成される。近年では、ウエハの周縁部のみをアームで保持してウエハを搬送する方法が一般的になってきている。このような背景のもとでは、周縁部に残存した不要な膜が種々の工程を経ていく間に剥離してデバイス表面に付着し、歩留まりを低下させてしまう。そこで、研磨装置を用いて、ウエハの周縁部を研磨して不要な膜や表面荒れを除去することが従来から行われている。
【0003】
このような研磨装置として、研磨テープを用いて基板の周縁部を研磨する装置が知られている(特許文献1乃至7参照)。この種の研磨装置は、研磨テープの研磨面を基板の周縁部に摺接させることで基板の周縁部を研磨する。除去すべき不要膜の材質や厚さは基板によって異なるため、粗さの異なる複数の研磨テープを使用し、不要膜の除去や形状の成形を粗研磨で行い、次いで表面を滑らかに仕上げる仕上げ研磨を行うことが一般に行われている。
【0004】
基板の周縁部には、一般に、ベベル部とノッチ部が形成される。ベベル部とは、基板の周縁部において角取りされた部分であり、基板の欠けやパーティクルの発生などを防止するために形成される。一方、ノッチ部とは、結晶方位を特定するために基板の周縁部に形成された切り欠きである。上述した基板の周縁部を研磨する研磨装置は、ベベル部を研磨するベベル研磨装置とノッチ部を研磨するノッチ研磨装置に大別することができる。
【0005】
従来のベベル研磨装置としては、単一の研磨ヘッドを備えたものや、複数の研磨ヘッドを備えたものが知られている。単一の研磨ヘッドを備えた研磨装置では、研磨処理後に粗さの異なる研磨テープに交換する、または粗研磨の処理部から仕上げ研磨の処理部へ基板を移動させることによって多段研磨が行われる。複数の研磨ヘッドを備えた研磨装置においては、粗研磨後に仕上げ研磨を順次行うことができる。
【0006】
しかしながら、これらの従来の技術では、粗研磨終了後に仕上げ研磨を行うことになるため、全体としての研磨時間が長くなる。すなわち、研磨処理が終了するまでの時間は、粗研磨の時間と仕上げ研磨時間との加算時間となっていた。また、研磨テープは消耗品であるため定期的な交換が必要である。したがって、消耗品としての研磨テープの交換を容易にするとともに、できるだけ長尺の研磨テープを使うことによって交換頻度を少なくすることが要請されている。
【0007】
一方、従来のノッチ研磨装置として、特許文献2に示すように、粗さの異なる複数の研磨テープを基板の周縁部に順次押し当てて研磨を行う装置が知られている。しかしながら、このような従来の構成では、研磨ヘッドが隣接しており、研磨ヘッドのメンテナンスが困難であった。また、研磨テープを収容するリールが隣接しているために研磨テープの交換がしにくく、結果として研磨テープ交換時間を含む研磨処理時間が長くなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開US2007/0131653号公報
【特許文献2】特開2005−252288号公報
【特許文献3】特開平7−237100号公報
【特許文献4】特開2001−239445号公報
【特許文献5】特開2002−208572号公報
【特許文献6】特開2003−77872号公報
【特許文献7】特開2006−303112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、研磨時間全体を短縮することができ、研磨テープを容易に交換できる研磨装置を提供することを目的とする。また、本発明は、上記研磨装置を用いた研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、基板のノッチ部を研磨する研磨装置において、基板を水平に保持し、回転させる回転保持機構と、研磨テープを用いて基板を研磨する複数の研磨ヘッドモジュールと、前記複数の研磨ヘッドモジュールを互いに独立して移動させる移動機構とを備え、前記複数の研磨ヘッドモジュールは、研磨テープを基板のノッチ部に摺接させる研磨ヘッドと、前記研磨ヘッドに研磨テープを供給し、回収するテープ供給回収機構とをそれぞれ有することを特徴とする。
【0011】
本発明の好ましい態様は、前記移動機構は、互いに直交するX軸およびY軸に沿って前記複数の研磨ヘッドモジュールを移動させる1つのX軸移動機構および複数のY軸移動機構を有し、前記X軸移動機構は、前記複数の研磨ヘッドモジュールを前記X軸に沿って同期して移動させるように構成されており、前記Y軸移動機構は、前記複数の研磨ヘッドモジュールを前記Y軸に沿って互いに独立して移動させるように構成されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記移動機構は、前記複数の研磨ヘッドモジュールの前記研磨ヘッドを、それぞれ1つの移動軸に沿って基板のノッチ部に近接および離間させる方向に移動させることを特徴とする。
【0012】
本発明の好ましい態様は、前記回転保持機構は、基板のノッチ部を中心として前記基板をその表面に平行な平面内でスイングさせるスイング機構を有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記回転保持機構は、基板を保持する保持ステージと、前記保持ステージを上下動させる昇降機構とを備えることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記昇降機構は、前記保持ステージを基板の搬送位置から基板の研磨位置まで下降させ、かつ前記保持ステージを前記研磨位置から前記搬送位置まで上昇させるように構成され、基板のノッチ部を検出するノッチサーチユニットを前記搬送位置と同じ高さに設けたことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記複数の研磨ヘッドモジュールの少なくとも1つは、研磨テープのテンションを測定するテンションセンサを有し、前記研磨装置は、前記テンションセンサの出力信号に基づいて前記研磨テープのテンションを監視するモニタリングユニットをさらに備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の他の態様は、基板のノッチ部を研磨する研磨装置において、基板を水平に保持し、回転させる回転保持機構と、研磨テープを用いて基板を研磨する研磨ヘッドモジュールとを備え、前記研磨ヘッドモジュールは、研磨テープを基板のノッチ部に摺接させる研磨ヘッドと、前記研磨ヘッドに研磨テープを供給し、回収するテープ供給回収機構と、研磨テープのテンションを測定するテンションセンサとを有し、前記研磨装置は、前記テンションセンサの出力信号に基づいて前記研磨テープのテンションを監視するモニタリングユニットを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の他の態様は、複数の研磨ヘッド組立体および複数のテープ供給回収機構を備えた研磨装置を用いた研磨方法であって、回転保持機構により基板を回転させ、研磨テープを前記基板の周縁部の第1の領域に当接させて該第1の領域を研磨し、前記研磨テープを前記基板の周縁部の第2の領域に当接させて該第2の領域を研磨し、前記第2の領域の研磨中に、前記複数の研磨ヘッド組立体および前記複数のテープ供給回収機構の少なくとも1組に研磨テープに代えて取り付けられたテープ状洗浄布を前記第1の領域に当接させて該第1の領域を洗浄し、前記研磨テープによる前記第2の領域の研磨が終了した後、前記テープ状洗浄布を前記第2の領域に当接させて該第2の領域を洗浄すること特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨装置は、基板を水平に保持し、回転させる前記回転保持機構と、前記回転保持機構に保持された基板の周囲に配置された前記複数の研磨ヘッド組立体と、前記複数の研磨ヘッド組立体に研磨テープを供給し、回収する前記複数のテープ供給回収機構と、前記複数の研磨ヘッド組立体を、前記回転保持機構に保持された基板の径方向に沿って移動させる複数の移動機構とを備え、前記複数の研磨ヘッド組立体は、基板の周縁部に研磨テープを当接させる研磨ヘッドと、前記研磨ヘッドを基板の接線に平行な軸を中心として回転させるチルト機構とをそれぞれ有し、前記複数のテープ供給回収機構は、前記基板の径方向において前記複数の研磨ヘッド組立体の外側に配置されており、前記複数のテープ供給回収機構の位置は固定されていることを特徴とする。
本発明の他の態様は、上記研磨方法により研磨されたことを特徴とする基板である。
【0015】
本発明の一参考例は、基板の周縁部を研磨する研磨装置において、基板を水平に保持し、回転させる回転保持機構と、前記回転保持機構に保持された基板の周囲に配置された複数の研磨ヘッド組立体と、前記複数の研磨ヘッド組立体に研磨テープを供給し、回収する複数のテープ供給回収機構と、前記複数の研磨ヘッド組立体を、前記回転保持機構に保持された基板の径方向に沿って移動させる複数の移動機構とを備え、前記複数の研磨ヘッド組立体は、基板の周縁部に研磨テープを当接させる研磨ヘッドと、前記研磨ヘッドを基板の接線に平行な軸を中心として回転させるチルト機構とをそれぞれ有し、前記研磨ヘッドは、前記研磨テープを把持して所定の速度で送るテープ送り機構と、前記研磨テープの送り方向を前記基板の接線に直交する方向に案内するガイドローラとを有し、前記複数のテープ供給回収機構は、前記基板の径方向において前記複数の研磨ヘッド組立体の外側に配置されており、前記複数のテープ供給回収機構の位置は固定されていることを特徴とする。
【0016】
本参考例の好ましい態様は、前記複数の移動機構は互いに独立に動作可能であり、前記複数の研磨ヘッド組立体の前記チルト機構は互いに独立に動作可能であることを特徴とする。
本参考例の好ましい態様は、前記回転保持機構に保持された基板の上面に研磨液を供給する上供給ノズルと、前記回転保持機構に保持された基板の下面に研磨液を供給する下供給ノズルと、前記研磨ヘッドに洗浄液を供給する洗浄ノズルとをさらに備えたことを特徴とする。
本参考例の好ましい態様は、前記回転保持機構は、基板を保持する保持ステージと、前記保持ステージを上下動させる昇降機構とを備えることを特徴とする。
【0017】
本参考例の好ましい態様は、前記複数の研磨ヘッド組立体および前記複数のテープ供給回収機構は、所定の高さに位置する水平面よりも下方に配置され、前記昇降機構は、前記水平面よりも上方の搬送位置と前記水平面よりも下方の研磨位置との間で、前記保持ステージを上下動させることを特徴とする。
本参考例の好ましい態様は、前記研磨装置は、内部に研磨室が形成される隔壁をさらに備えており、前記複数の研磨ヘッド組立体および前記保持ステージは前記研磨室内に配置され、前記複数のテープ供給回収機構は前記研磨室外に配置されていることを特徴とする。
本参考例の好ましい態様は、前記複数の研磨ヘッド組立体の少なくとも1つの研磨テープの送り方向は、他の研磨ヘッド組立体における研磨テープの送り方向と逆であることを特徴とする。
【0018】
本参考例の好ましい態様は、傾斜角度が固定された研磨ヘッドを有する少なくとも1つの固定角度研磨ヘッド組立体をさらに備えたことを特徴とする。
本参考例の好ましい態様は、前記複数の移動機構に連結され、基板の中心を前記回転保持機構の回転軸に合わせる複数のセンタリングガイドをさらに備えたことを特徴とする。
本参考例の好ましい態様は、前記複数のセンタリングガイドは、前記複数の研磨ヘッド組立体と一体に移動可能であることを特徴とする。
本参考例の好ましい態様は、前記回転保持機構に保持された基板の偏心を検出する偏心検出手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0019】
本参考例の好ましい態様は、前記回転保持機構に保持された基板に液体を供給する供給ノズルと、前記複数の研磨ヘッド組立体の動作を制御する動作制御部とをさらに備え、前記動作制御部は、前記液体を回転する基板に供給している間、研磨を行っていない少なくとも1つの研磨ヘッドを、前記液体が前記基板に跳ね返らないように前記基板から離間させておくことを特徴とする。
本参考例の好ましい態様は、前記動作制御部は、前記少なくとも1つの研磨ヘッドと前記基板との距離を、前記基板の回転速度から決定することを特徴とする。
【0020】
本参考例の好ましい態様は、前記回転保持機構に保持された基板に液体を供給する供給ノズルと、前記複数の研磨ヘッド組立体の動作を制御する動作制御部とをさらに備え、前記動作制御部は、前記液体を回転する基板に液体を供給している間、研磨を行っていない少なくとも1つの研磨ヘッドを、前記液体が前記基板に跳ね返らないような傾斜角度に維持することを特徴とする。
本参考例の好ましい態様は、前記動作制御部は、前記少なくとも1つの研磨ヘッドの傾斜角度を、前記基板の回転速度から決定することを特徴とする。
本参考例の好ましい態様は、前記動作制御部は、前記傾斜角度を維持したまま前記少なくとも1つの研磨ヘッドを前記回転する基板に近づけ、該研磨ヘッドにより研磨テープを前記基板の周縁部に押圧させることを特徴とする。
【0021】
本発明の他の参考例は、基板の周縁部を研磨する研磨装置において、基板を水平に保持し、回転させる回転保持機構と、前記回転保持機構に保持された基板の周縁部に対向して配置された少なくとも1つの研磨ヘッド組立体と、前記研磨ヘッド組立体に研磨テープを供給し、回収する少なくとも1つのテープ供給回収機構と、前記研磨ヘッド組立体を、前記回転保持機構に保持された基板の径方向に沿って移動させる少なくとも1つの移動機構と、前記回転保持機構に保持された基板と前記研磨テープとの接触箇所に冷却液を供給するための供給ノズルとを備えたことを特徴とする研磨装置である。
【0022】
本参考例の好ましい態様は、前記少なくとも1つの研磨ヘッドは複数の研磨ヘッドであり、前記少なくとも1つのテープ供給回収機構は複数のテープ供給回収機構であり、前記少なくとも1つの移動機構は複数の移動機構であることを特徴とする。
本参考例の好ましい態様は、前記供給ノズルに前記冷却液を供給する冷却液供給部をさらに備えたことを特徴とする。
本参考例の好ましい態様は、前記冷却液供給部は、10℃以下の冷却液を生成するように構成されていること特徴とする。
【0023】
本発明の他の参考例は、回転保持機構により基板を回転させ、研磨テープを前記基板の周縁部に押圧して研磨し、研磨中に、前記基板と前記研磨テープとの接触箇所に10℃以下の冷却液を供給することを特徴とする研磨方法である。
本発明の他の参考例は、回転保持機構により基板を回転させ、前記回転する基板に液体を供給し、前記液体を回転する基板に供給している間、第1の研磨ヘッドにより研磨テープを前記基板の周縁部に押圧して該周縁部を研磨し、前記液体を回転する基板に供給している間、研磨を行っていない第2の研磨ヘッドを、前記液体が前記基板に跳ね返らないように前記基板から離間させておくことを特徴とする研磨方法である。
本発明の他の参考例は、回転保持機構により基板を回転させ、前記回転する基板に液体を供給し、前記液体を回転する基板に供給している間、第1の研磨ヘッドにより研磨テープを前記基板の周縁部に押圧して該周縁部を研磨し、前記液体を回転する基板に供給している間、研磨を行っていない第2の研磨ヘッドを、前記液体が前記基板に跳ね返らないような傾斜角度に維持することを特徴とする研磨方法である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、粗さの異なる研磨テープを取り付けた研磨ヘッドで基板を研磨することができる。また、研磨処理が終了した研磨ヘッドはチルト動作によって別の研磨角度へ移行し、既に研磨された箇所を別の研磨ヘッドで研磨することができる。したがって、1つの研磨ヘッド組立体による研磨が終了するのを待たずに、研磨が終了した箇所を別の研磨ヘッド組立体で研磨することができる。また、研磨テープの交換作業が容易に行えるので、研磨時間全体を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る研磨装置を示す平面図である。
【図2】図1に示す研磨装置の縦断面図である。
【図3】隔壁を示す斜視図である。
【図4】図4(a)は研磨ヘッドの拡大図であり、図4(b)は研磨テープの送り方向を逆にした研磨ヘッドを示す拡大図である。
【図5】研磨ヘッドの加圧機構を説明する図である。
【図6】ウエハの周縁部の拡大断面図である。
【図7】図7(a)はリニアアクチュエータにより研磨ヘッド組立体を前進させて研磨テープをウエハのベベル部に当接させている状態を示し、図7(b)はベベル部の上斜面に研磨テープを当接させるようにチルト機構によって研磨ヘッドを傾斜させた状態を示し、図7(c)はベベル部の下斜面に研磨テープを当接させるようにチルト機構によって研磨ヘッドを傾斜させた状態を示している。
【図8】図8(a)乃至図8(c)は、図7(a)乃至図7(c)に対応したウエハのベベル部と研磨テープとの接触部の拡大模式図である。
【図9】回転保持機構に保持されたウエハを複数の研磨ヘッドを用いて同時に研磨する研磨シーケンスを示す図である。
【図10】互いに粗さの異なる砥粒を持つ3つの研磨テープを用いて三段研磨の研磨を行う場合の研磨シーケンスを説明するための図である。
【図11】図11(a)はベベル部の上斜面を研磨している状態を示す図であり、図11(b)はベベル部の下斜面を研磨している状態を示す図である。
【図12】図12(a)および図12(b)は、研磨テープの送り方向が互いに反対の2つ研磨ヘッドを用いてウエハの上斜面および下斜面を研磨している様子を示す図である。
【図13】保持ステージが上昇位置にある状態を示す断面図である。
【図14】本発明の第2の実施形態に係る研磨装置を示す平面図である。
【図15】図14のA−A線断面図である。
【図16】図14の矢印Bで示す方向から見た側面図である。
【図17】図14のC−C線断面図である。
【図18】研磨ヘッドモジュールの断面図である。
【図19】図18のD−D線断面図である。
【図20】本発明の第2の実施形態に係る研磨装置の他の構成例を示す平面図である。
【図21】図20に示す研磨装置の矢印Eで示す方向から見た側面図である。
【図22】本発明の第3の実施形態に係る研磨装置を示す平面図である。
【図23】本発明の第3の実施形態に係る研磨装置の動作を示す平面図である。
【図24】本発明の第3の実施形態の他の構成例に係る研磨装置を示す平面図である。
【図25】第4の実施形態に係る研磨装置を示す平面図である。
【図26】図25のF−F線断面図である。
【図27】7つの研磨ヘッド組立体を設置した例を示す平面図である。
【図28】第5の実施形態に係る研磨装置を示す縦断面図である。
【図29】第6の実施形態に係る研磨装置を示す平面図である。
【図30】図29に示す研磨装置の縦断面図である。
【図31】第6の実施形態に係る研磨装置の変形例を示す平面図である。
【図32】図31に示す研磨装置の縦断面図である。
【図33】本発明の第7の実施形態に係る研磨装置を示す平面図である。
【図34】本発明の第7の実施形態に係る研磨装置を示す縦断面図である。
【図35】図35(a)は研磨液がウエハに跳ね返る様子を示す側面図であり、図35(b)は研磨ヘッドを離間させることによって研磨液の跳ね返りを防止する様子を示す側面図である。
【図36】図36(a)乃至図36(c)は研磨ヘッドを傾けることによって研磨液の跳ね返りを防止する様子を示す図である。
【図37】第1の実施形態に係る研磨装置および第2の実施形態に係る研磨装置を有する基板処理装置を示す上面図である。
【図38】図37に示すノッチ研磨ユニットをベベル研磨ユニットに置き換えた基板処理装置の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る研磨装置を示す平面図であり、図2は図1に示す研磨装置の縦断面図である。なお、この第1の実施形態に係る研磨装置は、基板のベベル部を研磨するベベル研磨装置に好適に使用される。研磨される基板の例としては、成膜された直径300mmの半導体ウエハが挙げられる。
【0027】
図1および図2に示すように、この研磨装置は、その中央部に、研磨対象物であるウエハWを水平に保持し、回転させる回転保持機構3を備えている。図1においては、回転保持機構3がウエハWを保持している状態を示している。回転保持機構3は、ウエハWの裏面を真空吸着により保持する皿状の保持ステージ4と、保持ステージ4の中央部に連結された中空シャフト5と、この中空シャフト5を回転させるモータM1とを備えている。ウエハWは、搬送機構のハンド(後述する)により、ウエハWの中心が中空シャフト5の軸心と一致するように保持ステージ4の上に載置される。
【0028】
中空シャフト5は、ボールスプライン軸受(直動軸受)6によって上下動自在に支持されている。保持ステージ4の上面には溝4aが形成されており、この溝4aは、中空シャフト5を通って延びる連通ライン7に接続されている。連通ライン7は中空シャフト5の下端に取り付けられたロータリジョイント8を介して真空ライン9に接続されている。連通ライン7は、処理後のウエハWを保持ステージ4から離脱させるための窒素ガス供給ライン10にも接続されている。これらの真空ライン9と窒素ガス供給ライン10を切り替えることによって、ウエハWを保持ステージ4の上面に真空吸着し、離脱させる。
【0029】
中空シャフト5は、この中空シャフト5に連結されたプーリーp1と、モータM1の回転軸に取り付けられたプーリーp2と、これらプーリーp1,p2に掛けられたベルトb1を介してモータM1によって回転される。モータM1の回転軸は中空シャフト5と平行に延びている。このような構成により、保持ステージ4の上面に保持されたウエハWは、モータM1によって回転される。
【0030】
ボールスプライン軸受6は、中空シャフト5がその長手方向へ自由に移動することを許容する軸受である。ボールスプライン軸受6はケーシング12に固定されている。したがって、本実施形態においては、中空シャフト5は、ケーシング12に対して上下に直線動作ができるように構成されており、中空シャフト5とケーシング12は一体に回転する。中空シャフト5は、エアシリンダ(昇降機構)15に連結されており、エアシリンダ15によって中空シャフト5および保持ステージ4が上昇および下降できるようになっている。
【0031】
ケーシング12と、その外側に同心上に配置されたケーシング14との間にはラジアル軸受18が介装されており、ケーシング12は軸受18によって回転自在に支持されている。このような構成により、回転保持機構3は、ウエハWを中心軸Crまわりに回転させ、かつウエハWを中心軸Crに沿って上昇下降させることができる。
【0032】
図1に示すように、回転保持機構3に保持されたウエハWの周囲には4つの研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dが配置されている。研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dの径方向外側にはテープ供給回収機構2A,2B,2C,2Dが設けられている。研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dとテープ供給回収機構2A,2B,2C,2Dとは隔壁20によって隔離されている。隔壁20の内部空間は研磨室21を構成し、4つの研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dおよび保持ステージ4は研磨室21内に配置されている。一方、テープ供給回収機構2A,2B,2C,2Dは隔壁20の外側(すなわち、研磨室21の外)に配置されている。それぞれの研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dおよびテープ供給回収機構2A,2B,2C,2Dは同一の構成を有している。以下、研磨ヘッド組立体1Aおよびテープ供給回収機構2Aについて説明する。
【0033】
テープ供給回収機構2Aは、研磨具である研磨テープ23を研磨ヘッド組立体1Aに供給する供給リール24と、ウエハWの研磨に使用された研磨テープ23を回収する供給リール24とを備えている。供給リール24と回収リール25は上下に配列されている。供給リール24および回収リール25にはカップリング27を介してモータM2がそれぞれ連結されている(図1には供給リール24に連結されるカップリング27とモータM2のみを示す)。それぞれのモータM2は、所定の回転方向に一定のトルクをかけ、研磨テープ23に所定のテンションをかけることができるようになっている。
【0034】
研磨テープ23は長尺のテープ状の研磨具であり、その片面は研磨面を構成している。研磨テープ23は供給リール24に巻かれた状態でテープ供給回収機構2Aにセットされる。研磨テープ23の側面は巻き崩れが生じないようにリール板で保持されている。研磨テープ23の一端は回収リール25に取り付けられ、研磨ヘッド組立体1Aに供給された研磨テープ23を回収リール25が巻き取ることで研磨テープ23を回収するようになっている。研磨ヘッド組立体1Aはテープ供給回収機構2Aから供給された研磨テープ23をウエハWの周縁部に当接させるための研磨ヘッド30を備えている。研磨テープ23は、研磨テープ23の研磨面がウエハWを向くように研磨ヘッド30に供給される。
【0035】
テープ供給回収機構2Aは複数のガイドローラ31,32,33,34を有しており、研磨ヘッド組立体1Aに供給され、研磨ヘッド組立体1Aから回収される研磨テープ23がこれらのガイドローラ31,32,33,34によってガイドされる。研磨テープ23は、隔壁20に設けられた開口部20aを通してテープ供給回収機構2Aの供給リール24から研磨ヘッド30へ供給され、使用された研磨テープ23は開口部20aを通って回収リール25に回収される。
【0036】
図2において、ウエハWの上面には上供給ノズル36が配置され、回転保持機構3に保持されたウエハWの上面中心に向けて研磨液を供給する。また、ウエハWの裏面と回転保持機構3の保持ステージ4との境界部(保持ステージ4の外周部)に向けて研磨液を供給する下供給ノズル37を備えている。研磨液には通常純水が使用されるが、研磨テープ23の砥粒としてシリカを使用する場合などはアンモニアを用いることもできる。
【0037】
さらに、研磨装置は、研磨処理後に研磨ヘッド30を洗浄する洗浄ノズル38を備えており、研磨処理後にウエハWが回転保持機構3により上昇した後、研磨ヘッド30に向けて洗浄水を噴射し、研磨処理後の研磨ヘッド30を洗浄できるようになっている。
【0038】
研磨ヘッド組立体1Aは、研磨処理時にウエハWから除去された銅などの研磨屑が付着し汚染される。一方、テープ供給回収機構2Aは隔壁20の外側に配置されているので、テープ供給回収機構2Aには研磨液が付着しないようになっている。したがって、研磨液に触れることなく、また研磨室21内に手を入れることなく、研磨テープ23を研磨室21の外で交換することができる。
【0039】
中空シャフト5がケーシング12に対して昇降した時にボールスプライン軸受6やラジアル軸受18などの機構を研磨室21から隔離するために、図2に示すように、中空シャフト5とケーシング12の上端とは上下に伸縮可能なベローズ19で接続されている。図2は中空シャフト5が下降している状態を示し、保持ステージ4が研磨位置にあることを示している。研磨処理後には、エアシリンダ15によりウエハWを保持ステージ4および中空シャフト5とともに搬送位置まで上昇させ、この搬送位置でウエハWを保持ステージ4から離脱させる。
【0040】
図3は、隔壁20を示す斜視図である。この隔壁20は、図3に示すように、研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dや保持ステージ4などを収容するボックス状の筐体として構成されている。隔壁20は、研磨テープ23が通る複数の開口部20aと、ウエハWを研磨室21に搬入および搬出するための搬送口20bを備えている。搬送口20bは、隔壁20の前面三面に形成されており、水平に延びる切り欠き状の開口として形成されている。したがって、搬送機構に把持されたウエハWは、水平な状態を保ちながら、搬送口20bを通って研磨室21内を横切ることが可能となっている。搬送口20bには図示しないシャッターが取り付けられ、ウエハWの搬送時以外はシャッターが閉じるようになっている。また、隔壁20の上面にはルーバー40(図2参照)に覆われた開口20cが設けられ、下面には回転保持機構3が貫通する開口20dや排気口20eが設けられている。
【0041】
図4(a)は研磨ヘッド30の拡大図である。図4(a)に示すように、研磨ヘッド30は、研磨テープ23の裏面を加圧してウエハWに研磨テープ23の研磨面を所定の力で加圧する加圧機構41を備えている。また、研磨ヘッド30は、研磨テープ23を供給リール24から回収リール25へ送るテープ送り機構42を備えている。研磨ヘッド30は複数のガイドローラ43,44,45,46,47,48,49を有しており、これらのガイドローラはウエハWの接線方向と直行する方向に研磨テープ23が進行するように研磨テープ23をガイドする。
【0042】
研磨ヘッド30に設けられたテープ送り機構42は、テープ送りローラ42aと、テープ把持ローラ42bと、テープ送りローラ42aを回転させるモータM3とを備えている。モータM3は研磨ヘッド30の側面に設けられ、モータM3の回転軸にテープ送りローラ42aが接続されている。テープ送りローラ42aには、その約半周だけ研磨テープ23が巻きつけられている。テープ送りローラ42aの隣にはテープ把持ローラ42bが設けられており、テープ把持ローラ42bは、図4(a)のNFで示す方向(テープ送りローラ42aに向かう方向)に力を発生するように図示しない機構で支持されており、テープ送りローラ42aを押圧するように構成されている。
【0043】
研磨テープ23は、テープ送りローラ42aに巻きつけられ、テープ送りローラ42aとテープ把持ローラ42bの間を通り、テープ送りローラ42aとテープ把持ローラ42bとによって把持されている。テープ送りローラ42aが研磨テープ23と接触する面は、その全体がウレタン樹脂でモールドされている。これにより、研磨テープ23との摩擦を大きくし、テープ送りローラ42aに対して滑りなく研磨テープ23を送られるようになっている。テープ送り機構42は研磨ポイント(研磨テープ23とウエハWとの接触箇所)よりもテープ送り方向において下流に配置されている。
【0044】
モータM3を図4(a)に示す矢印方向に回転すると、テープ送りローラ42aが回転して研磨テープ23を供給リール24から研磨ヘッド30を経由して回収リール25へ送ることができる。テープ把持ローラ42bはそれ自身の軸まわりに回転することができるように構成され、研磨テープ23が送られることによって回転する。このように、研磨テープ23とテープ送りローラ42aの表面との摩擦、巻き付け角度、テープ把持ローラ42bによる研磨テープ23の把持によって、モータM3の回転を研磨テープ23の送り動作に変換している。研磨ヘッド30内にテープ送り機構42を設けることによって、研磨ヘッド30がテープ供給回収機構2Aに対して相対移動しても、テープ送り動作以外の動作によってウエハWと接触する研磨テープ23の位置が変わることがない。
【0045】
図4(b)は研磨テープ23の送り方向を逆にした研磨ヘッド30を示す拡大図である。図4(a)においては、ウエハWとの接触位置において研磨テープ23が下方に送られるようになっている。一方、図4(b)では、ウエハWとの接触位置において研磨テープ23が上方に送られるように構成されている。テープ供給回収機構2Aにおいては、図4(a)の構成では供給リール24は回収リール25の上側に配置される一方で、図4(b)の構成においては回収リール25が供給リール24の上側に配置されている。図1に示す複数の研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dのうち、少なくとも1つの研磨ヘッド組立体の研磨ヘッド30のテープ送り方向を逆にすることが好ましい。
【0046】
図5は研磨ヘッド30の加圧機構41を説明する図である。この加圧機構41は、研磨ヘッド30の前面において上下に配置された2つのガイドローラ46,47の間に渡された研磨テープ23の裏面側に配置された加圧パッド50と、この加圧パッド50を保持するパッドホルダー51と、パッドホルダー51をウエハWに向かって移動させるエアシリンダ(駆動機構)52とを備えている。
【0047】
エアシリンダ52はいわゆる片ロッドシリンダであり、2つのポートを介して2つのエア配管53が接続されている。これらエア配管53には電空レギュレータ54がそれぞれ設けられている。電空レギュレータ54の一次側はエア供給源55に接続され、二次側がエアシリンダ52のポートに接続されている。電空レギュレータ54は信号によって制御され、エアシリンダ52に供給される空気圧を所望の圧力に調整することが可能になっている。このように、エアシリンダ52へ供給する空気圧を制御することによって加圧パッド50の押圧力を制御し、研磨テープ23の研磨面をウエハWに対して押圧する圧力を制御する。
【0048】
図1に示すように、研磨ヘッド30はアーム60の一端に固定され、アーム60は、ウエハWの接線に平行な軸Ctまわりに回転自在に構成されている。アーム60の他端はプーリーp3,p4およびベルトb2を介してモータM4に連結されている。モータM4が時計回りおよび反時計回りに所定の角度だけ回転することで、アーム60が軸Ctまわりに所定の角度だけ回転する。本実施形態では、モータM4、アーム60、プーリーp3,p4、およびベルトb2によって、研磨ヘッド30を傾斜させるチルト機構が構成されている。
【0049】
図2に示すように、チルト機構は、プレート状の移動台61に搭載されている。移動台61は、ガイド62およびレール63を介してベースプレート65に移動自在に連結されている。レール63は、回転保持機構3に保持されたウエハWの半径方向に沿って直線的に延びており、移動台61はウエハWの半径方向に沿って直線的に移動可能になっている。移動台61にはベースプレート65を貫通する連結板66が取り付けられ、連結板66にはリニアアクチュエータ67がジョイント68を介して取り付けられている。リニアアクチュエータ67はベースプレート65に直接または間接的に固定されている。
【0050】
リニアアクチュエータ67としては、エアシリンダや位置決め用モータとボールネジとの組み合わせなどを採用することができる。このリニアアクチュエータ67、レール63、ガイド62によって、研磨ヘッド30をウエハWの半径方向に沿って直線的に移動させる移動機構が構成されている。すなわち、移動機構はレール63に沿って研磨ヘッド30をウエハWへ近接および離間させるように動作する。一方、テープ供給回収機構2Aはベースプレート65に固定されている。
【0051】
ウエハWの周囲に配置された4つの研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dのチルト機構、加圧機構41、およびテープ送り機構42、各研磨ヘッド組立体を移動させる移動機構は、それぞれ独立に動作が可能なように構成されている。各研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dの研磨ヘッドの位置(研磨位置、待機位置)、研磨ヘッドの傾斜角度、ウエハWの回転速度、研磨テープ23の送り速度、各研磨ヘッドの研磨動作シーケンスなどの各研磨動作は、図1に示す動作制御部69によって制御されている。なお、本実施形態では4組の研磨ヘッド組立体およびテープ供給回収機構が設けられているが、本発明はこの例に限られず、2組、3組、または5組以上の研磨ヘッド組立体およびテープ供給回収機構を設けてもよい。
【0052】
上記構成の研磨装置によれば、研磨ヘッド30をチルト機構により傾斜させた場合、テープ送りローラ42aおよびテープ把持ローラ42bに把持された研磨テープ23の箇所も一緒に傾斜する。したがって、位置が固定されている供給リール24および回収リール25により研磨テープ23が巻き取りまたは送り出されても、研磨ヘッド30のチルト動作によって研磨テープ23のウエハWと接触している箇所が研磨ヘッド30に対して相対的に位置ずれすることがない。同様に研磨ヘッド組立体1AをウエハWの半径方向へ移動機構によって移動させても、テープ送りローラ42aおよびテープ把持ローラ42bに把持された研磨テープ23も一緒に移動するので、供給リール24および回収リール25から研磨テープ23が巻き取りまたは送り出されるだけである。
【0053】
このように、研磨ヘッド30がチルト動作および直線移動をしても、研磨ヘッド30に対する研磨テープ23の相対位置は変わらないので、既に研磨に供された研磨面を再び研磨に使用することがなく、研磨テープ23の新しい研磨面を連続して使用することができる。また、テープ供給回収機構2AのモータM2やリール24,25を研磨ヘッド30と一緒にチルトさせる必要がないので、チルト機構を小型化することができる。同様に、移動機構を小型化することができる。供給リール24および回収リール25を傾斜および移動させる必要がないということは、供給リール24および回収リール25を大きくできるということを意味する。したがって、長尺の研磨テープ23を用いることができ、その結果、研磨テープ23の交換頻度を少なくすることができる。さらに、テープ供給回収機構2Aの供給リール24および回収リール25は固定位置にあり、研磨室21の外にあるので、消耗品である研磨テープ23の交換が容易となる。
【0054】
上述した第1の実施形態の研磨装置はウエハWのベベル部の研磨に好適に使用される。図6はウエハWの周縁部の拡大断面図である。デバイスが形成される領域はウエハWの平坦部Dであり、端面Gから数ミリメートル内周の位置である。図6に示すように、本明細書では、デバイスが形成される領域より外側の平坦部をニアエッジ部E、上斜面Fから端面G、下斜面Fまでの傾斜を有する領域をベベル部Bと定義する。
【0055】
図7(a)はリニアアクチュエータ67により研磨ヘッド組立体1Aを前進させて研磨テープ23をウエハWのベベル部の端面に当接させている状態を示す。回転保持機構3によりウエハWを保持して回転させることによって研磨テープ23とウエハWのベベル部とを相対移動させ、ウエハWのベベル部を研磨する。図7(b)はベベル部の上斜面に研磨テープ23を当接させるようにチルト機構によって研磨ヘッド30を傾斜させた状態を示している。図7(c)はベベル部の下斜面に研磨テープ23を当接させるようにチルト機構によって研磨ヘッド30を傾斜させた状態を示している。チルト機構のモータM4には、サーボモータやステッピングモータなどの位置や速度を精密に制御できるモータが採用されており、研磨ヘッド30はプログラムされた所望の角度へ所望のスピードで回転し、位置決めができるようになっている。
【0056】
図8(a)乃至図8(c)は、図7(a)乃至図7(c)に対応したウエハWのベベル部と研磨テープ23との接触部の拡大模式図である。研磨ヘッド30はチルト機構によって図中の軸Ctを中心に回転する。図8(a)はウエハWの端面を研磨するように、研磨テープ23の研磨面とウエハWのベベル部の端面が平行になる角度とした位置を示す。図8(b)および図8(c)はそれぞれ、研磨テープ23がウエハWのベベル部の上斜面、下斜面と平行になる角度とした位置を示している。
【0057】
このように、ウエハWのベベル部の形状に合わせて研磨ヘッド30の傾斜角度を変えることで、ベベル部の所望の箇所を研磨することができる。また、断面形状が曲率をもったものである場合は、角度を細かく変化させて研磨することや、研磨ヘッド30の回転速度を緩やかにして連続的に角度を変化させることも可能である。
【0058】
ここで、チルト機構の回転中心は図8(a)乃至図8(c)の軸Ctで示すようにウエハWの内部にあり、軸Ctを中心に研磨ヘッド30が回転(傾斜)する。このため、図8(a)乃至図8(c)で示した位置関係においては、研磨テープ23上の点が軸Ctまわりに回転する。例えば、図8(a)乃至図8(c)に示すように、研磨テープ23上の点Tcを研磨ヘッド30の中心線上にとれば、研磨ヘッド30とともに点Tcが回転することがわかる。この時、研磨ヘッド30から見た点Tcは研磨ヘッド30の中心線上の同じ位置にある。すなわち、研磨テープ23上の点Tcと研磨ヘッド30との相対位置は変わらない。これは、研磨ヘッド30がチルト機構によって傾斜しても、研磨ヘッド30の中心線上にある研磨テープ23をウエハWに接触させることができることを意味している。このように、研磨ヘッド30を傾斜させても接触位置がずれないので、研磨テープ23を効率よく使用することができる。なお、研磨ヘッド30の回転軸Ctの位置は移動機構の位置決めによって所望の位置に設定することができる。
【0059】
次に、本実施形態の研磨装置の研磨動作の好適な例について、図9を参照して説明する。図9は、回転保持機構3に保持されたウエハWを複数の研磨ヘッド30を用いて同時に研磨する研磨シーケンスを示す図である。図9において、T1,T2,T3,T4は時刻を示している。
【0060】
図9に示すように、研磨ヘッド組立体1Aでは粗い砥粒を有する研磨テープ23Aを用いてベベル部の下斜面を研磨する(T1)。その後、研磨ヘッド組立体1Aの研磨ヘッド30はチルト機構によって角度を変えて、ベベル部の端面の研磨を行う(T2−A)。この時、研磨ヘッド組立体1Bでは、細かい砥粒を有する研磨テープ23Bを取り付けた研磨ヘッド30をウエハWに向けて移動させて、すでに研磨テープ23Aで研磨された下斜面に研磨テープ23Bを当接させ、下斜面を研磨する(T2−B)。次に、研磨ヘッド組立体1Aの研磨ヘッド30はその傾斜角度を変えて上斜面を研磨し(T3−A)、同時に、研磨ヘッド組立体1Bの研磨ヘッド30はその傾斜角度を変えて端面を研磨する(T3−B)。最後に、研磨ヘッド組立体1Bの研磨ヘッド30が上斜面を研磨して研磨処理を終了する(T4−B)。
【0061】
このようにベベル部の第1の領域の粗研磨を終了した直後に、第2の領域の粗研磨と第1の領域の仕上げ研磨を同時に開始することができるので、全体の研磨時間を短縮することができる。本実施形態のように4つの研磨ヘッド30を設けた場合、粗い砥粒の研磨テープ23Aを取り付ける研磨ヘッド30を2つ配置し、細かい砥粒の研磨テープ23Bを取り付ける研磨ヘッド30を2つ配置して研磨をすることも可能である。また、互いに粗さの異なる砥粒を有する複数の研磨テープを、砥粒が細かくなる順序でウエハWに接触させて、三段研磨、四段研磨などの多段研磨を行うことも可能である。さらに、同じ粗さの砥粒を持つ研磨テープを同時に研磨に使用することも可能であり、粗研磨に多くの時間を要する場合などは複数の研磨ヘッド組立体にて粗研磨することも可能である。
【0062】
研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dの少なくとも1つに研磨テープ23に代えて、研磨によって発生した塵埃を除去するためのテープ状洗浄布をセットし、上述と同様のやり方で最終仕上げに洗浄布によってウエハWの研磨された箇所を洗浄していくこともできる。この方法によれば、研磨と洗浄を短時間で行うことが可能となる。テープ状洗浄布としては、例えばPETフィルムの基材上にポリウレタン発砲体や不織布の層を有するものを用いることができる。
【0063】
また、砥粒を有する研磨テープ23に代えて、前述のテープ状洗浄布と同様なポリウレタン発砲体や不織布の層を有するテープ状の研磨布からなる研磨テープを取り付け、ウエハWに砥粒を含んだ研磨液(スラリー)を供給してウエハWを研磨することも可能である。この場合、上供給ノズル36と同様の配置でスラリー供給ノズルをさらに設け、研磨中にウエハWの上面にスラリーを供給すればよい。
【0064】
図10は、互いに粗さの異なる砥粒を有する3つの研磨テープ23A,23B,23Cを用いて三段研磨の研磨を行う場合の研磨シーケンスを説明するための図である。研磨ヘッド組立体1Aにて、粗い砥粒の研磨テープ23AでウエハWを粗研磨し、研磨テープ23Aで研磨された箇所を、研磨テープ23Aよりも細かい砥粒の研磨テープ23Bで研磨し、そして、研磨テープ23Bにより研磨された箇所を、研磨テープ23Bよりも細かい砥粒の研磨テープ23Cで仕上げ研磨していく。図10において、T1,T2,T3,T4,T5は時刻を示している。例えば、時刻T3においては、3つの研磨ヘッド30が同時にウエハWを研磨していることを示している。
【0065】
図11(a)はベベル部の上斜面を研磨している状態を示す図であり、図11(b)はベベル部の下斜面を研磨している状態を示す図である。図11(a)と図11(b)では、研磨テープ23の送り方向は同一である。この場合、研磨テープ23は位置TaでウエハWと接触し、位置TbでウエハWから離間する。このため、上斜面研磨時と下斜面研磨時において、研磨テープ23が接触を始める位置Taと離間するTbの位置が上下非対称になってしまう。研磨テープ23には研磨によって目詰まりが生じるため、この研磨方法では上下非対称な研磨プロファイルになってしまい、仕上がり形状が上斜面と下斜面とで異なる場合がある。
【0066】
図12(a)および図12(b)は、研磨テープ23の送り方向が互いに反対の2つ研磨ヘッド30を用いてウエハWの上斜面および下斜面を研磨している様子を示す図である。この場合、チルト機構により各研磨ヘッド30を上下対称の傾斜角にすると、研磨テープ23の接触開始位置Taと研磨テープ23の離間位置Tbを上下対称な位置とすることができる。したがって、上斜面と下斜面の研磨プロフィアルを上下対称にすることができる。なお、図12(a)および図12(b)において各研磨ヘッド30の傾斜角度を上下対称にした場合を示したが、各研磨ヘッド30を同じ傾斜角度にして、同じ面(例えば、上斜面)を研磨することもできる。この場合も、同様の作用効果を得ることができる。
【0067】
図13は、保持ステージ4が上昇位置にある状態を示す断面図である。
研磨終了後、研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dが移動機構により後退した後、チルト機構により研磨ヘッド30を水平位置に戻し、図13に示すように、エアシリンダ15により保持ステージ4を搬送位置まで上昇させる。この搬送位置において、ウエハWを搬送機構のハンド(後述する)で把持させ、ウエハWを保持ステージ4から離脱させる。保持ステージ4から搬送機構に受渡されたウエハWは隣接する洗浄ユニット(後述する)に搬送される。
【0068】
図13に示すように、研磨装置には、ベースプレート65の上面からの距離Hにある水平面K(一点鎖線で示す)が予め設定されている。この水平面Kは研磨室21を横切る仮想的な平面である。保持ステージ4はこの水平面Kより高い位置まで上昇し、研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dが水平面Kより低い位置にあるように研磨ヘッド30をチルト機構により回転させる。また、テープ供給回収機構2A,2B,2C,2Dは水平面Kよりも低い位置に配置されている。
【0069】
上述のように、隔壁20の上面には開口20cおよびルーバー40が設けられ、下面には排気口20e(図3参照)が設けられている。研磨処理時は、搬送口20bは図示しないシャッターで閉じられるようになっている。このため、排気口20eから図示しないファン機構により排気をすることで研磨室21の内部には清浄空気のダウンフローが形成されるようになっている。この状態において研磨処理がされるので、研磨液が上方へ飛散することが防止され、研磨室21の上部空間を清浄に保ちながら研磨処理をすることができる。
【0070】
水平面Kは、研磨処理によって生じる研磨屑などで汚染される下方空間と汚染が少ない上方空間とを分離する仮想的な平面であり、この水平面Kで清浄度の異なる空間を高さ方向で区分けする。そして、清浄度の高い位置(水平面Kより上)までウエハWと保持ステージ4を上昇させた後にウエハWを搬送するので、搬送機構のハンドが汚染されることがない。また、研磨処理後にシャッターが閉じた状態でウエハWを上方に上昇させた後に、洗浄ノズル38が洗浄水(洗浄液)を噴射して研磨ヘッド30を洗浄するように構成されている。このようにすれば、処理後のウエハWを汚染することなく清浄度の低い位置(水平面Kより下)で汚れた研磨ヘッド30を洗浄することができる。その後、シャッターを開きウエハWが搬送機構により搬送される。
【0071】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図14は、本発明の第2の実施形態に係る研磨装置を示す平面図である。図15は図14のA−A線断面図である。図16は、図14の矢印Bで示す方向から見た側面図である。図17は、図14のC−C線断面図である。なお、第1の実施形態と同一または相当する要素には同一の符号を用いて、その重複する説明を省略する。また、特に説明しない本実施形態の構成および動作は、上述した第1の実施形態と同様である。
【0072】
本実施形態の研磨装置は、ウエハWの周縁部に形成されたノッチ部を研磨するのに好適に用いられる装置である。図14に示すように、本実施形態の研磨装置は、2つの研磨ヘッドモジュール70A,70Bと、ウエハWを保持して回転させる回転保持機構3とを備えている。これら研磨ヘッドモジュール70A,70Bと回転保持機構3は、ハウジング71内に収容されている。このハウジング71には、ウエハWの搬入および搬出のための搬送口71aが設けられており、搬送口71aには開閉自在なシャッター72が設けられている。同様に、ハウジング71には、研磨テープを交換するための作業窓71bが設けられており、この作業窓71bにはシャッター73によって閉じられている。
【0073】
図15に示すように、保持ステージ4は第1の中空シャフト5−1の上端に連結されている。第1の中空シャフト5−1は、プーリーp5,p6およびベルトb3を介してモータM5に連結されており、このモータM5によって保持ステージ4が回転させられるようになっている。保持ステージ4、第1の中空シャフト5−1、プーリーp5,p6、ベルトb3、およびモータM5は1つのステージ組立体を構成している。
【0074】
第1の中空シャフト5−1の下方には第2の中空シャフト5−2が設けられている。これら第1の中空シャフト5−1および第2の中空シャフト5−2は互いに平行に延びている。第1の中空シャフト5−1および第2の中空シャフト5−2は、ロータリジョイント76を介して連通ライン7によって連結されている。第1の実施形態と同様に、連通ライン7の一端は保持ステージ4の上面に形成された溝(図2参照)に接続され、他端は、真空ライン9および窒素ガス供給ライン10(図2参照)に接続されている。これらの真空ライン9と窒素ガス供給ライン10を切り替えることによって、ウエハWを保持ステージ4の上面に真空吸着し、離脱させる。
【0075】
第2の中空シャフト5−2は、ロータリボールスプライン軸受77によって回転自在かつ直動自在に支持されている。ロータリボールスプライン軸受77はケーシング78に支持され、ケーシング78はベースプレート65に固定されている。第2の中空シャフト5−2は、プーリーp7,p8およびベルトb4を介してモータM6に連結されており、このモータM6によって第2の中空シャフト5−2が回転させられるようになっている。
【0076】
ステージ組立体と第2の中空シャフト5−2とは、アーム80を介して互いに連結されている。モータM6は第2の中空シャフト5−2を時計周りおよび反時計周りに所定の角度だけ回転させるように制御されている。したがって、モータM6により第2の中空シャフト5−2を時計回りおよび反時計周りに回転させると、ステージ組立体も時計回りおよび反時計周りに回転する。第1の中空シャフト5−1の軸芯と第2の中空シャフト5−2の軸芯とはずれており、第2の中空シャフト5−2の延長線上には、保持ステージ4に保持されたウエハWのノッチ部が位置している。したがって、モータM6を駆動させると、ウエハWはノッチ部を中心に時計周りおよび反時計周りに所定の角度だけ水平面内で回転する(すなわちスイングする)ように構成されている。本実施形態では、ウエハWをノッチ部を中心としてスイングさせるスイング機構は、プーリーp7,p8、ベルトb4、モータM6、第2の中空シャフト5−2、アーム80などにより構成される。
【0077】
第2の中空シャフト5−2はエアシリンダ(昇降機構)15に連結されており、このエアシリンダ15によって第2の中空シャフト5−2およびステージ組立体が上昇および下降するようになっている。エアシリンダ15は、ベースプレート65に固定されたフレーム81に取り付けられている。図17に示すように、保持ステージ4上のウエハWは、エアシリンダ15により搬送位置と研磨位置との間で上下動する。すなわち、ウエハWを搬送するときは、ウエハWはエアシリンダ15により搬送位置まで上昇し、ウエハWを研磨するときは、ウエハWはエアシリンダ15により研磨位置まで下降するようになっている。ハウジング71の搬送口71aは、搬送位置と同じ高さに設けられている。
【0078】
回転保持機構3は、リンス液供給ノズル83および薬液供給ノズル84をさらに備えている。リンス液供給ノズル83からは、純水などのリンス液が保持ステージ4上のウエハWに供給され、薬液供給ノズル84からは、薬液が保持ステージ4上のウエハWに供給されるように構成されている。これらリンス液供給ノズル83および薬液供給ノズル84は、スイング機構によって、保持ステージ4と一体にノッチ部を中心として所定の角度だけ回転するようになっている。
【0079】
ウエハWの搬送位置には、ウエハWに形成されているノッチ部を検出するノッチサーチユニット82が設けられている。図14に示すように、ノッチサーチユニット82は、図示しないアクチュエータにより、ノッチサーチ位置と退避位置との間を移動するように構成されている。ノッチサーチユニット82によりノッチ部が検出されると、ノッチ部が研磨ヘッドモジュール70A,70Bの方を向くように保持ステージ4がモータM5によって回転するようになっている。図17に示すように、ノッチサーチユニット82は、ウエハWが搬送位置にあるときにノッチ部を検出する。
【0080】
従来では、ノッチサーチユニットは研磨位置に設けられていたため、リンス液や薬液がノッチサーチユニットに付着してノッチ部の位置を誤って検出することがあった。この点、本実施形態によれば、ノッチサーチユニット82は研磨位置よりも上方の搬送位置に配置されているので、ノッチサーチユニット82にリンス液や薬液が付着することがなく、リンス液や薬液などに起因するノッチサーチユニット82の誤検出が防止される。
【0081】
図14に示すように、2つの研磨ヘッドモジュール70A,70Bは、ウエハWのノッチ部を中心として対称に配置されている。これらの研磨ヘッドモジュール70A,70Bは同一の構成を有しているので、以下、研磨ヘッドモジュール70Aについてのみ説明する。
【0082】
研磨ヘッドモジュール70Aは、研磨テープ75をウエハWのノッチ部に摺接させる研磨ヘッド90と、研磨ヘッド90に研磨テープ75を供給する供給リール24と、ウエハWの研磨に使用された研磨テープ75を回収する供給リール24とを備えている。供給リール24と回収リール25は、ウエハWの径方向において研磨ヘッド90の外側に配置されており、供給リール24と回収リール25は上下に配列されている。供給リール24および回収リール25にはカップリング27を介してモータM2がそれぞれ連結されている。それぞれのモータM2は、所定の回転方向に一定のトルクをかけ、研磨テープ75に所定のテンションをかけることができるようになっている。本実施形態においても、テープ供給回収機構は、供給リール24、回収リール25、カップリング27、モータM2などから構成される。
【0083】
研磨ヘッド90と供給リール24との間には、ガイドローラ31,32,33およびテンションセンサ91が配置されている。研磨ヘッド90と回収リール25との間には、ガイドローラ34が配置されている。研磨テープ75に与えられるテンション(研磨荷重)は、テンションセンサ91によって測定されるようになっている。このテンションセンサ91の出力信号はモニタリングユニット92に送られ、このモニタリングユニット92により研磨テープ75のテンションが監視されている。本実施形態では、第1の実施形態で用いられる研磨テープ23よりも幅の狭い研磨テープ75が用いられる。
【0084】
図18は、研磨ヘッドモジュールの断面図であり、図19は、図18のD−D線断面図である。図18に示すように、研磨ヘッド90は、テープ送り機構42と、複数のガイドローラ46,47とを備えている。研磨ヘッド90の基本的構成は第1の実施形態の研磨ヘッド30と同様であるが、研磨ヘッド90は加圧機構を備えていない点で第1の実施形態の研磨ヘッド30と異なっている。図18および図19に示すように、研磨ヘッド90は揺動プレート93に固定されており、揺動プレート93はチルトプレート94にリニアガイド95を介して連結されている。揺動プレート93の端部にはU字型の揺動受けブロック97が固定されている。この揺動受けブロック97には、偏心軸98aを有する揺動シャフト98が連結されている。偏心軸98aには軸受99が取り付けられており、この軸受99は揺動受けブロック97の矩形状の収容スペースに緩やかに嵌合されている。
【0085】
揺動シャフト98はプーリーp9,p10およびベルトb5を介してモータM7に連結されている。モータM7を駆動すると、揺動シャフト98が回転し、揺動シャフト98の偏心軸98aが偏心回転運動する。偏心軸98aの偏心回転運動は、リニアガイド95により揺動プレート93の直線的な往復運動に変換され、揺動プレート93に固定されている研磨ヘッド90が直線往復運動(オシレーション運動)する。研磨ヘッド90がオシレーションする方向は、ウエハWの接線方向に対して直交する方向である。本実施形態では、揺動シャフト98、プーリーp9,p10、ベルトb5、モータM7、揺動受けブロック97などによりオシレーション機構が構成される。
【0086】
揺動シャフト98は、中空状のチルトシャフト100を貫通して延びており、チルトシャフト100の内周面に固定された軸受101,102によって揺動シャフト98が回転自在に支持されている。チルトシャフト100は、軸受103,104によって回転自在に支持されている。チルトシャフト100は、プーリーp11,p12およびベルトb6を介してモータM8に連結されている。したがって、チルトシャフト100は、揺動シャフト98とは独立してモータM8により回転するように構成されている。
【0087】
チルトシャフト100にはチルトプレート94が固定されている。したがって、チルトシャフト100を回転させると、リニアガイド95を介してチルトプレート94に連結されている揺動プレート93が回転し、揺動プレート93に固定されている研磨ヘッド90が回転する。モータM8は時計周りおよび反時計回りに所定の角度だけ回転するように制御されている。したがって、モータM8を駆動することにより、研磨ヘッド90は、図15に示すように、研磨テープ75とウエハWとの接触箇所を中心として所定の角度で回転(傾斜)する。本実施形態では、プーリーp11,p12、ベルトb6、モータM8、チルトシャフト100、チルトプレート94などによりチルト機構が構成される。
【0088】
研磨ヘッドモジュール70AはX軸移動機構およびY軸移動機構を介してベースプレート65に設置されている。X軸移動機構は、保持ステージ4上のウエハWの中心とノッチ部とを結ぶ線に対して直交する方向に延びるX軸レール106と、X軸レール106にスライド自在に取り付けられたX軸ガイド108とを有している。Y軸移動機構は、X軸レール106に対して直交する方向に延びるY軸レール107と、Y軸レール107にスライド自在に取り付けられたY軸ガイド109とを有している。X軸レール106はベースプレート65に固定されており、X軸ガイド108は連結プレート110を介してY軸レール107に固定されている。Y軸ガイド109は研磨ヘッドモジュール70Aに固定されている。なお、X軸およびY軸は、水平面内で互いに直交する仮想的な移動軸である。
【0089】
2つの研磨ヘッドモジュール70A,70BはX軸方向に沿って配列されており、互いに平行に配置されている。これら研磨ヘッドモジュール70A,70Bは1本の連結シャフト111を介してX軸エアシリンダ(X軸アクチュエータ)113に連結されている。X軸エアシリンダ113はベースプレート65に固定されている。このX軸エアシリンダ113によって、2つの研磨ヘッドモジュール70A,70Bは同期してX軸方向に移動される。研磨ヘッドモジュール70A,70Bには、Y軸エアシリンダ(Y軸アクチュエータ)114がそれぞれ連結されており、各Y軸エアシリンダ114は連結プレート110に固定されている。このY軸エアシリンダ114によって、2つの研磨ヘッドモジュール70A,70Bは互いに独立してY軸方向に移動される。
【0090】
このような構成により、2つの研磨ヘッドモジュール70A,70Bは、回転保持機構3に保持されたウエハWと平行な面内で移動することができ、かつ研磨ヘッドモジュール70A,70Bの各研磨ヘッド90は互いに独立してウエハWのノッチ部に近接および離間することが可能となっている。また、研磨ヘッドモジュール70A,70Bは同期してX軸方向に移動するので、研磨ヘッドモジュール70A,70Bの切り替えの時間を短縮することができる。なお、本実施形態のテープ供給回収機構は研磨ヘッドモジュールの一部を構成し、研磨ヘッド90と一体に移動する点で、第1の実施形態のテープ供給回収機構と異なっている。
【0091】
次に、本実施形態に係る研磨装置の動作について説明する。
ウエハWが搬送機構によって搬送口71aからハウジング71内に挿入されると、保持ステージ4が上昇し、ウエハWは保持ステージ4の上面に吸着保持される。この状態で、ノッチサーチユニット82は、ウエハWに形成されているノッチ部の位置を検出し、回転保持機構3は、ウエハWを研磨位置まで下降させつつ、ノッチ部が研磨ヘッドモジュール70A,70Bの方を向くようにウエハWを回転させ、同時にリンス液供給ノズル83からリンス液を、又は薬液供給ノズル84から薬液の供給を開始する。
【0092】
次に、研磨ヘッドモジュール70Aがノッチ部に近接し、研磨ヘッド90により研磨テープ75をノッチ部に摺接させて研磨する。すなわち、研磨ヘッド90をオシレーション動作させることで研磨テープ75をノッチ部に摺接させる。研磨中は、スイング機構によりウエハWをノッチ部を中心としてスイングさせ、さらに研磨ヘッド90をノッチ部を中心として傾斜させる。
【0093】
研磨ヘッドモジュール70Aによる研磨が終了すると、研磨ヘッドモジュール70AがウエハWから離間し、代わりに研磨ヘッドモジュール70BがウエハWのノッチ部に近接する。そして、同様に、研磨ヘッド90をオシレーション動作させることで研磨ヘッド90により研磨テープ75をノッチ部に摺接させて研磨する。研磨中は、スイング機構によりウエハWをノッチ部を中心として水平面内でスイングさせ、さらに研磨ヘッド90をノッチ部を中心として傾斜させる。研磨が終了した後、リンス液または薬液の供給を停止し、保持ステージ4が上昇し、ウエハWは搬送機構により搬送口71aから搬出される。
【0094】
研磨ヘッドモジュール70Aで用いられる研磨テープと、研磨ヘッドモジュール70Bで用いられる研磨テープとは異なるタイプのものとすることができる。例えば、研磨ヘッドモジュール70Aが粗い砥粒の研磨テープを用いて粗研磨を行い、次いで研磨ヘッドモジュール70Bが細かい砥粒の研磨テープを用いて仕上げ研磨を行うことができる。このようにすれば、ウエハWを保持ステージ4に保持させた状態で、粗研磨と仕上げ研磨を行うことができ、研磨全体の時間を短縮することができる。
【0095】
供給リール24および回収リール25に連結されているモータM2により、研磨テープ75のテンション(研磨荷重)は一定に維持されている。研磨中、モニタリングユニット92は、テンションセンサ91からの出力信号(すなわち研磨テープ75のテンション)を監視しており、研磨テープ75のテンションがある閾値を超えたか否かを判断するようになっている。研磨テープ75のテンションの変化は、各部品の経時変化に起因すると考えられる。したがって、研磨テープ75のテンションの変化を監視することにより、各部品の寿命を判断することができる。また、研磨荷重の最大値および最小値が分かるため、極度の高荷重研磨による研磨不良を事前に検知することができる。
【0096】
モニタリングユニット92により研磨直前にテンションセンサ91の出力信号を検出し、供給リール24に連結されているモータM2の出力トルクを調整することで、研磨テープ75が所望のテープテンションになるように制御することもできる。
【0097】
研磨テープ75の交換作業は、研磨ヘッドモジュール70A,70Bのうちのいずれか一方を保持ステージ4の方に移動させることによって容易に行うことができる。例えば、研磨ヘッドモジュール70Aに搭載されている研磨テープ75を交換するときは、研磨ヘッドモジュール70Bを保持ステージ4の方に移動させ、この状態で研磨ヘッドモジュール70Aの研磨テープ75を交換する。研磨テープ75の交換は、作業窓71bを介して作業員によって行われる。
【0098】
図20は、本実施形態に係る研磨装置の他の構成例を示す平面図である。図21は、図20に示す研磨装置の矢印Eで示す方向から見た側面図である。この構成例では、4つの研磨ヘッドモジュール70A,70B,70C,70DがウエハWの中心に対して対称に配置されている。4つの研磨ヘッドモジュール70A,70B,70C,70Dは1本の連結シャフト111によって互いに連結されており、すべての研磨ヘッドモジュール70A,70B,70C,70DがX軸方向へ同期して動くようになっている。
【0099】
連結シャフト111にはボールねじサポート120が固定されており、このボールねじサポート120にはボールねじ121が螺合している。ボールねじ121の端部はカップリング122を介してX軸駆動モータM9が連結されている。このような構成により、4つの研磨ヘッドモジュール70A,70B,70C,70DはX軸駆動モータM9によってX軸方向に同期して移動する。なお、4つの研磨ヘッドモジュール70A,70B,70C,70DのY軸方向への移動は、Y軸移動機構(Y軸レール107、Y軸ガイド109、Y軸エアシリンダ114)によって、互いに独立して行うことができるようになっている。
【0100】
図22は、本発明の第3の実施形態に係る研磨装置を示す平面図である。なお、特に説明しない構成および動作は第2の実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
図22に示すように、本実施形態に係る研磨装置は、第2の実施形態のX軸移動機構(X軸レール106、X軸ガイド108、X軸エアシリンダ113)に相当する機構は備えていなく、第2の実施形態のY軸移動機構(Y軸レール107、Y軸ガイド109、Y軸エアシリンダ114)に相当する直線移動機構を備えている。各直線移動機構は、直動レール130、直動ガイド、直動アクチュエータを備えており、これらの各要素は第2の実施形態のY軸移動機構の各要素と同一の構成である。
【0101】
2つの研磨ヘッドモジュール70A,70Bは、これら直線移動機構によってそれぞれ直線的に移動する。すなわち、研磨ヘッドモジュール70A,70Bがそれぞれ移動する移動軸は1つである。直線移動機構による研磨ヘッドモジュール70A,70Bの移動方向は互いに平行ではない。2つの研磨ヘッドモジュール70A,70Bの各研磨ヘッド90は、互いに接触することなく、図22および図23に示すように直線移動機構によって保持ステージ4上のウエハWのノッチ部に近接および離間する方向に互いに独立して移動する。この構成例によれば、第2の実施形態のX軸移動機構(X軸レール106、X軸ガイド108、X軸エアシリンダ113)に相当する機構が不要であるので、安価な研磨装置を提供することができる。
【0102】
なお、図22および図23に示すように、ウエハWの研磨前に、ウエハWの中心とノッチ部とを結ぶ線が研磨ヘッドモジュール70Aまたは70Bの移動方向と一直線上に並ぶように(すなわち、ノッチ部が研磨テープ75の研磨面を向くように)保持ステージ4を回転させ、この位置をウエハWのスイング動作の中心位置とすることが好ましい。
【0103】
図24は、第3の実施形態の他の構成例に係る研磨装置を示す平面図である。
図24に示すように、本構成例の研磨装置は、図22に示す2つの研磨ヘッドモジュール70A,70Bに加えて、2つの研磨ヘッドモジュール70C,70Dを備えている。これら研磨ヘッドモジュール70C,70Dの構成は、研磨ヘッドモジュール70A,70Bの構成と同一である。研磨ヘッドモジュール70C,70Dは、直線移動機構によって、矢印で示すようにウエハWのノッチ部に近接および離間する方向に移動可能となっている。
【0104】
図25は、第4の実施形態に係る研磨装置を示す平面図である。図26は図25のF−F線断面図である。なお、第4の実施形態に係る研磨装置は、基板のベベル部を研磨するベベル研磨装置に好適に使用される。
図25に示すように、本実施形態に係る研磨装置は、5つの研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1D,140を有している。より詳しくは、この研磨装置は、第1の実施形態に係る研磨装置に、研磨ヘッド組立体140が付加された構成を有している。研磨ヘッド組立体140は、研磨ヘッド組立体1B,1Cの間に設置されている。この研磨ヘッド組立体140は、図26に示すように、傾斜角度が固定された研磨ヘッド141を有している。ここで、固定された傾斜角度とは、研磨中には研磨ヘッド141の傾斜角度を変えられないことを意味する。ただし、研磨ヘッド141の設置角度を変えることでウエハWへの接触角度を調整することは可能である。なお、この例では、研磨ヘッド141は、ウエハWに接触する研磨テープ23の研磨面がウエハWの表面に対して垂直となる角度に設置されている。
【0105】
テープ供給回収機構142は、テープ供給回収機構2A,2B,2C,2Dと同じ構造であるが、図26に示すように、研磨ヘッド141の上方に位置している。より詳しくは、テープ供給回収機構142は、隔壁20の上面に設置されており、研磨テープ23を研磨ヘッド141に供給する供給リール143と、研磨ヘッド141から研磨テープ23を回収する回収リール144とを有している。テープ供給回収機構142をこの位置に配置することで、他の研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dのメンテナンス作業の邪魔にならないようになっている。図26に示すように、研磨ヘッド141は、研磨テープ23の研磨面をウエハWのベベル部に押圧する加圧機構145と、研磨テープ23を送るテープ送り機構146を有している。加圧機構145は第1の実施形態に係る加圧機構41(図5参照)と同一の構造である。
【0106】
テープ送り機構146は、テープ送りローラ147と、テープ把持ローラ148と、テープ送りローラ147を回転させるモータM10とを備えている。テープ送りローラ147とモータM10とは離間しており、ベルトb7によって互いに連結されている。すなわち、テープ送りローラ147はベルトb7を介してモータM10によって回転駆動され、これによって研磨テープ23がその長手方向に移動する。研磨ヘッド141の下部にはリニアアクチュエータ150が連結されており、このリニアアクチュエータ150により研磨ヘッド141は、ウエハWに近接および離間する方向に移動される。なお、リニアアクチュエータ150としては、エアシリンダや位置決め用モータとボールネジとの組み合わせなどを採用することができる。
【0107】
研磨ヘッドの角度が可変な研磨ヘッド組立体(以下、可変角度研磨ヘッド組立体という)1A,1B,1C,1Dと、研磨ヘッドの角度が固定された固定角度(以下、固定角度研磨ヘッド組立体という)140の配置および組み合わせは、図25に示す例に限定されない。しかしながら、5つ以上の研磨ヘッド組立体を設置する場合には、少なくとも1つの固定角度研磨ヘッド組立体を組み入れることが好ましい。これは、固定角度研磨ヘッド組立体は、可変角度研磨ヘッド組立体よりもコンパクトであるからである。したがって、固定角度研磨ヘッド組立体の数を増やすことにより、6つまたは7つの研磨ヘッド組立体を設置することが可能である。
【0108】
図27は、7つの研磨ヘッド組立体を設置した例を示している。この例では、2つの可変角度研磨ヘッド組立体1A,1Bと5つの固定角度研磨ヘッド組立体140A,140B,140C,140D,140Eが設置されている。これら固定角度研磨ヘッド組立体140A,140B,140C,140D,140Eは、図25に示す固定角度研磨ヘッド組立体140と同一の構成を有している。
【0109】
固定角度研磨ヘッド組立体140Cに研磨テープ23を供給し回収するテープ供給回収機構は、図26に示すテープ供給回収機構142と同様の構成であり、同様の位置に配置されている。固定角度研磨ヘッド組立体140A,140B,140D,140EのウエハWの径方向外側には、テープ供給回収機構142A,142B,142D,142Eがそれぞれ配置されている。これらのテープ供給回収機構142A,142B,142D,142Eは、研磨室21の外部に配置されており、上述したテープ供給回収機構2A,2B,2C,2Dと同一の構成を有している。
【0110】
このように研磨ヘッドの数が増えることによって研磨時間が短縮され、スループット向上が可能となる。固定角度研磨ヘッド組立体140A,140B,140C,140D,140Eの研磨ヘッドの設置角度の一例は、比較的長い研磨時間を必要とする部位に対応する角度である。なお、固定角度研磨ヘッド組立体140A,140B,140C,140D,140Eの研磨ヘッド141の角度は、互いに異なってもよく、または互いに同一でもよい。固定角度研磨ヘッド組立体140A,140B,140C,140D,140Eは、研磨ヘッド141(図26参照)を傾けるためのチルトモータが不要であるので、可変角度研磨ヘッド組立体に比べて、コンパクトで、かつ低コストである。また、研磨ヘッド141を前後移動させるための移動機構(すなわちリニアアクチュエータ150、図26参照))をコンパクトにすることができ、該移動機構を研磨室21内に配置することができる。さらに、使用される研磨テープ23の種類を増やすことができ、ウエハWにより適した研磨条件で研磨することが可能となる。
【0111】
図28は、第5の実施形態に係る研磨装置を示す縦断面図である。この実施形態に係る研磨装置は、上供給ノズル36および下供給ノズル37に冷却液を供給する冷却液供給部160を備えている。本実施形態のその他の構成および動作は、第1の実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。冷却液供給部160は、公知の液体冷却装置と基本的に同一の構成を有しているが、接液部にテフロン(登録商標)などのウエハWを汚染しない材料が用いられている点で異なっている。また、冷却液供給部160は、冷却液を4℃程度にまで冷却する能力を備えている。冷却液供給部160によって冷却された冷却液は、上供給ノズル36および下供給ノズル37からウエハWを経由して研磨テープ23に供給される。冷却液としては、純水または超純水が好適に使用される。
【0112】
研磨中に冷却液を供給する目的は、ウエハWと研磨テープ23との摩擦によって発生する熱を奪うことにある。研磨テープ23としては、ダイヤモンド、シリカ、セリアなどの硬質の砥粒を溶融した樹脂(バインダー)に分散させ、該砥粒を含有する樹脂をPETシートなどのテープ基材の表面に塗布し、乾燥させたものが一般に使用されている。研磨中に発生する熱により樹脂が軟らかくなると、研磨性能が低下する。これは、樹脂が砥粒を保持する力が弱くなるためと考えられている。また、樹脂が軟らかくなると、砥粒が樹脂から脱落してしまう。
【0113】
そこで、本実施形態では、研磨中に冷却液を研磨テープ23とウエハWとの接触部に供給することにより、研磨テープ23を冷却する。より具体的には、冷却液は、回転保持機構3によって回転させられているウエハWに供給され、遠心力によりその表面上を移動して、研磨テープ23に接触する。そして、冷却液は、研磨中に発生する熱を研磨テープ23から奪う。その結果、研磨テープ23の研磨性能を維持することができ、研磨速度(除去速度)の低下を防止することができる。
【0114】
以下、冷却液を用いて研磨テープを冷却した実験結果について説明する。第1の実験では、冷却液として常温(18℃)の超純水を使用した。ウエハの研磨は、1つの研磨ヘッド組立体、2つの研磨ヘッド組立体、3つの研磨ヘッド組立体、および4つの研磨ヘッド組立体を用いて別々に行った。その結果、1つの研磨ヘッド組立体を用いた研磨と、2つの研磨ヘッド組立体を用いた研磨では、研磨速度の低下ほとんど見られなかった。3つの研磨ヘッド組立体を用いた研磨では、研磨速度の低下が見られ、4つの研磨ヘッド組立体を用いた研磨では、研磨速度は顕著に低下した。
【0115】
次に、10℃の超純水(冷却液)を用いて研磨テープを冷却しながら研磨を行った。研磨方法は上述の実験例の研磨方法と同じである。その結果、3つの研磨ヘッド組立体および4つの研磨ヘッド組立体を用いた研磨のいずれも、研磨テープ本来の研磨性能が発揮されたことが分かった。つまり、3つの研磨ヘッド組立体を用いた研磨では、1つの研磨ヘッド組立体を用いた場合の研磨性能の3倍の研磨性能が得られ、4つの研磨ヘッド組立体を用いた研磨では、1つの研磨ヘッド組立体を用いた場合の研磨性能の4倍の研磨性能が得られた。
【0116】
さらに、1つの研磨ヘッド組立体を用いて、超純水の温度を常温から徐々に下げながら研磨を行った。その結果、超純水の温度が低い方が研磨速度が高くなり、かつ研磨速度のばらつきが小さくなることが分かった。
上記実験に加え、様々な研磨条件の下で研磨を行った。その結果、冷却液の温度と研磨速度との関係は、研磨テープの物性、ウエハの回転速度(すなわち研磨テープとウエハとの相対速度)、および研磨テープの粒度によって影響されることが分かった。特に、シリカ粒子やダイヤモンド粒子などの機械研磨作用の大きい砥粒を有する研磨テープ、粒度が小さい(粗さが細かい)研磨テープを用いた場合や、ウエハと研磨テープとの相対速度が大きい場合に、冷却液の効果が顕著であった。
【0117】
以上の実験結果から、10℃以下の冷却液を使用することで、研磨速度の低下防止および研磨速度の安定化などの効果が実現され、しかもこれらの効果の勾配が小さくなることが分かった。したがって、研磨中は、10℃以下の温度の冷却液を研磨テープに供給することが好ましい。なお、冷却液供給部160は、低温の冷却液(純水または超純水)と常温の冷却液を選択的に上供給ノズル36および下供給ノズル37に供給するように構成されていることが好ましい。例えば、研磨中は低温の冷却液をウエハに供給し、研磨後のウエハの洗浄時には常温の冷却液をウエハに供給するようにしてもよい。
【0118】
図29は、第6の実施形態に係る研磨装置を示す平面図である。図30は、図29に示す研磨装置の縦断面図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は第1の実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
【0119】
図29および図30に示すように、リニアアクチュエータ(移動機構)67には、複数の(この例では4つの)センタリングガイド165が研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dを介してそれぞれ連結されている。より具体的には、センタリングガイド165は、研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dの各移動台61の上部に設けられており、リニアアクチュエータ67により研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dと一体に移動するようになっている。すなわち、センタリングガイド165は、リニアアクチュエータ67によりウエハWの周縁部に近接および離間する方向に移動する。センタリングガイド165は、上下に延びるガイド面165aを有している。これらのガイド面165aは、ウエハの搬送位置に配置されており、いずれも回転保持機構3の回転軸を向いている。
【0120】
ウエハWは、搬送機構の一対のハンド171に取り付けられた複数の保持爪171aによりその周縁部を把持された状態で、該ハンド171により研磨室21内に搬送される。この状態で、ハンド171がやや下降し、次いで、センタリングガイド165がウエハWに近接する。センタリングガイド165は、そのガイド面165aがウエハWの最外端面に接触するまでウエハWに向かって移動し、ウエハWはセンタリングガイド165によって保持される。この状態にあるウエハWの中心は、回転保持機構3の回転軸上に位置している。その後、ハンド171がウエハWから離間する。そして、回転保持機構3の保持ステージ4が上昇し、ウエハWの裏面を真空吸着する。その後、センタリングガイド165は、ウエハWから離れる方向に移動し、次いで、ウエハWを保持した保持ステージ4が研磨位置まで下降する。
【0121】
センタリングガイド165は、研磨装置に組み込まれているので、回転保持機構3と同じ構造体の中でウエハWの中心合わせが行われる。したがって、中心合わせの精度を向上させることができる。また、センタリングガイド165は、研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dを移動させるためのリニアアクチュエータ67に連結されているので、センタリングガイド165を移動させるための専用の移動機構は不要である。なお、搬送機構のハンド171は、図29および図30に示す例に限られず、センタリングガイド165にウエハWを受け渡しできるものであればよい。
【0122】
図31は、第6の実施形態に係る研磨装置の変形例を示す平面図である。図32は、図31に示す研磨装置の縦断面図である。この例の研磨装置は、回転保持機構3によって保持されたウエハWの偏心を検出する偏心検知手段170を備えている。この偏心検知手段170はセンタリングガイド165のうちの1つに取り付けられており、ウエハWの周縁部を挟むように配置された投光部170aおよび受光部170bを有している。投光部170aは帯状の光を発し、受光部170bはその光を受光する。投光部170aの光源としては、レーザやLEDなどを用いることができる。ウエハWの周縁部が投光部170aと受光部170bとの間に位置していると、光の一部がウエハWにより遮られる。受光部170bは、ウエハWによって遮られた光の部分の長さを計測するように構成されている。このような偏心検知手段170は、一般に、透過型センサと呼ばれている。なお、偏心検知手段170として、投光部および受光部が同方向を向いた反射型センサを用いることも可能である。
【0123】
偏心検知手段170は、次のようにしてウエハWの偏心を検出する。ウエハWが回転保持機構3により保持された後、センタリングガイド165を僅かにウエハWから離間させる。そして、回転保持機構3によりウエハWを回転させる。この状態で、投光部170aは受光部170bに向かって光を投光し、受光部170bはそれを受光する。ウエハWの周縁部によって遮られる光の部分の長さが一定であれば、ウエハWの中心は回転保持機構3の回転軸上に位置していることを示している。一方、ウエハWの周縁部によって遮られる光の部分の長さが変動していれば、ウエハWの中心が回転保持機構3の回転軸上に位置していないこと、すなわちウエハWが偏心していることを示している。
【0124】
ウエハWの偏心量が所定のしきい値よりも大きい場合は、再度、センタリングを実施するか、またはセンタリングガイド165の位置を調整することを促すような警告を研磨装置が発するようになっている。このような動作により、研磨すべきウエハWを精度よく研磨することができる。また、ウエハWの偏心に起因する研磨中のウエハWの破損を防止することができる。
【0125】
図33は、本発明の第7の実施形態に係る研磨装置を示す平面図である。図34は、本発明の第7の実施形態に係る研磨装置を示す縦断面図である。なお、特に説明しない構成および動作は、第1の実施形態と同様であるので、その重複する説明を省略する。
図33および図34に示すように、回転保持機構3に保持されたウエハWを囲むように円筒状のシュラウドカバー175が設けられている。このシュラウドカバー175は、図示しない支柱によって回転保持機構3のケーシング14に取り付けられている。シュラウドカバー175の位置は固定されており、シュラウドカバー175はウエハWと一緒には上昇しない。
【0126】
シュラウドカバー175には、各研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dの研磨ヘッドに対応する位置において開口部(または間隙)が形成されており、各研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dの研磨ヘッドは、これらの開口部を通じてウエハWに近接することが可能となっている。シュラウドカバー175はウエハWに近接して配置されており、シュラウドカバー175とウエハWの外周部との間の隙間は数ミリメートルである。
【0127】
シュラウドカバー175の上端は、研磨位置にあるウエハWの表面から約10mm高い位置にある。このシュラウドカバー175を設ける目的は、研磨中にウエハWの上面および下面に供給された研磨液(通常は純水)が、ウエハWの回転によって周囲に飛び散ることを防止し、さらにウエハWに跳ね返ってくることを防止することにある。
【0128】
しかしながら、研磨液は、図35(a)に示すように、研磨動作を行っていない研磨ヘッド30に当たって、ウエハWに跳ね返ることがある。ウエハWに跳ね返った研磨液は、砥粒などを含んでおり、ウエハWの汚染の原因ともなる。そこで、本実施形態では、このような研磨液の跳ね返りを防止するために、研磨ヘッド30のウエハWからの距離または研磨ヘッド30の傾斜角度を調整することとしている。研磨ヘッド30の距離および傾斜角度は、動作制御部69(図1参照)により制御される。
【0129】
図35(b)に示す例では、回転するウエハWに研磨液が供給される間、ウエハWから振り落とされた研磨液がウエハWに跳ね返らないような位置に、研磨ヘッド30が離間される。ここで、回転するウエハWから振り落とされる研磨液の速度は、ウエハWの回転速度に依存する。したがって、動作制御部69は、ウエハWの回転速度から研磨ヘッド30の位置(ウエハWからの距離)を決定することができる。より具体的には、ウエハWの回転速度と研磨ヘッド30のウエハWからの距離との関係を数式で表し、研磨ヘッド30とウエハWとの距離を数式を用いて計算により求めることができる。なお、研磨液がウエハWに跳ね返らないような研磨ヘッド30の位置(ウエハWからの距離)は、実験や計算により求めることができる。
【0130】
研磨ヘッド30の距離ではなく、研磨ヘッド30の傾斜角度を調整することによっても、研磨液の跳ね返りを防止することができる。具体的には、図36(a)に示すように、研磨ヘッド30の正面が下方を向くように、研磨ヘッド30を傾ける。このように研磨ヘッド30を傾けることにより、研磨ヘッド30に当たった研磨液を下方に流すことができる。この場合も同様に、動作制御部69は、ウエハWの回転速度から研磨ヘッド30の傾斜角度を決定することができる。また、この場合は、図36(b)に示すように、シュラウドカバー175の内周面と略同じ位置(すなわちウエハWから同じ径方向距離)に研磨ヘッド30の正面を位置させることが好ましい。これは、シュラウドカバー175と研磨ヘッド30との間の段差を最小にして研磨液の跳ね返りを防止するためである。さらに、図36(c)に示すように、研磨ヘッド30の正面が上方を向くように、研磨ヘッド30を傾けてもよい。この場合でも、研磨ヘッド30に当たった研磨液を下方に流すことができる。
【0131】
ウエハWの周縁部を研磨するときは、図36(a)または図36(c)に示す傾斜角度を維持したまま研磨ヘッド30をウエハWに近づけ、研磨テープ23を研磨ヘッド30によりウエハWの周縁部に押し付ける。このような動作により、研磨液の跳ね返りを抑えつつ、研磨ヘッド30をウエハWに近づけることができる。なお、研磨液を供給する場合に限らず、上述した冷却液や洗浄水を供給する場合にも、本実施形態を適用することができる。さらに、研磨ヘッド30の位置と傾斜角度との組み合わせにより、研磨液の跳ね返りを防止することもできる。
【0132】
図37は、第1の実施形態に係る研磨装置および第2の実施形態に係る研磨装置を有する基板処理装置を示す上面図である。
本基板処理装置は、ウエハWを基板処理装置に投入する2つのロードポート240、ロードポート240上のウエハカセット(図示せず)からウエハWを取り出す第1の搬送ロボット245、ウエハWのノッチ位置を検出するとともに、ノッチ部が所定の位置になるようにウエハWを回転させ、仮置台を兼用するノッチアライナ248、ノッチアライナ248を直線的に移動させるノッチアライナ移動機構250、ノッチ部を研磨するノッチ研磨ユニット(第2の実施形態に係る研磨装置)255、ノッチアライナ248からノッチ研磨ユニット255へウエハWを搬送する第2の搬送ロボット257、ウエハWのベベル部を研磨するベベル研磨ユニット(第1の実施形態に係る研磨装置)256、研磨されたウエハWを洗浄する洗浄ユニット260、洗浄されたウエハWを乾燥させる乾燥ユニット265、ノッチ研磨ユニット255からベベル研磨ユニット256、洗浄ユニット260、乾燥ユニット265の順にウエハWを順次搬送する搬送機構270を備えている。
【0133】
ノッチ研磨ユニット255、ベベル研磨ユニット256、洗浄ユニット260、乾燥ユニット265(以下適宜、総称して処理ユニットという)は直線上に配置され、搬送機構270はこれら処理ユニットの配列方向に沿って配置されている。搬送機構270は、ハンドユニット270A、ハンドユニット270B、およびハンドユニット270Cを有している。各ハンドユニット270A,270B,270Cは、ウエハWを保持する1組のハンド171を有しており、隣り合う処理ユニット間でウエハWを搬送する。すなわち、ハンドユニット270Aはノッチ研磨ユニット255からウエハWを取り出してベベル研磨ユニット256へ搬送し、ハンドユニット270Bはベベル研磨ユニット256からウエハWを取り出して洗浄ユニット260へ搬送する。そしてハンドユニット270Cは洗浄ユニット260からウエハWを取り出して乾燥ユニット265へ搬送する。それぞれのハンドユニット270A、ハンドユニット270B、ハンドユニット270Cは、処理ユニットの配列方向に沿って直線的に移動可能に構成されている。
【0134】
ハンドユニット270A、ハンドユニット270B、ハンドユニット270Cは同時にそれぞれの搬出すべきウエハWを取り出し、同時に直線移動し、隣接した下流の処理ユニットに同時にウエハWを搬入する。図37に示すように、3つのハンドユニット270A,270B,270Cが移動すべき距離は、隣接する2つの処理ユニットでの受渡し時のウエハW中心間の距離(ピッチ)に応じて異なっている。3つのハンドユニット270A,270B,270Cはそれぞれ異なる距離を互いに独立して移動可能に構成されており、受渡しすべき位置にそれぞれのハンドユニット270A,270B,270Cが移動できる。したがって、処理ユニットの組み合わせの自由度が増す。なお、ハンドユニットの数は3つに限らず、処理ユニットの数に応じて適宜選択することができる。
【0135】
次にウエハWの全体の流れを説明する。
複数(例えば25枚)のウエハWを収容可能なウエハカセットがロードポート240に載置されると、自動的にウエハカセットが開き、ウエハWを基板処理装置に投入可能な状態となる。ウエハカセットが開いた後、第1の搬送ロボット245がウエハWをウエハカセットから取り出し、ウエハWをノッチアライナ248に載置する。ノッチアライナ248はウエハWとともにノッチアライナ移動機構250により、第2の搬送ロボット257の近傍位置まで移動する。この時、ノッチアライナ248はウエハWのノッチ位置を検出し、ノッチ部が所定の位置になるようにウエハWを回転させておく。
【0136】
そして、第2の搬送ロボット257がノッチアライナ248からウエハWを受け取り、ノッチ研磨ユニット255に搬入する。ノッチの位置決めはノッチアライナ248によって既に行われているので、ノッチ部が所定の位置にある状態でウエハWはノッチ研磨ユニット255に搬入される。なお、ノッチアライナ248でノッチの位置決めを行わずに、ノッチ研磨ユニット255で上述したようにノッチの位置決めを行うこともできる。
【0137】
ノッチ研磨ユニット255で処理されたウエハWは前述のように搬送機構270の3つのハンドユニット270A,270B,270Cにより順次、ベベル研磨ユニット256、洗浄ユニット260、乾燥ユニット265の順に搬送され処理される。乾燥ユニット265で処理が終了したウエハWは第1の搬送ロボット245によりロードポート240上のウエハカセットに収容される。
【0138】
図37に示す基板処理装置では、ノッチ研磨ユニット255として第2の実施形態に係る研磨装置を用いたが、第3の実施形態に係る研磨装置を用いてもよい。
【0139】
図38は、図37に示すノッチ研磨ユニットをベベル研磨ユニットに置き換えた基板処理装置の変形例を示す平面図である。ベベル研磨ユニットの構成は第1の実施形態で説明した構成とまったく同じである。
【0140】
本基板処理装置は、上流側のベベル研磨ユニット256Aの4つの研磨ヘッドで砥粒の粗い研磨テープで研磨を行い、下流のベベル研磨ユニット256Bの4つの研磨ヘッドで砥粒の細かい研磨テープで研磨を行うように構成されている。本基板処理装置によれば、装置の処理能力(単位時間当たりの処理ウエハWの枚数)を上げることができる。なお、この処理ユニットの組み合わせは、ノッチ研磨処理を必要としない処理プロセスに適用することができる。
【0141】
また、上流側のベベル研磨ユニット256Aでは、砥粒がテープ基材に固定された研磨テープによる研磨を行い、下流側のベベル研磨ユニット256Bをテープ状の研磨布を取り付けてスラリーを供給して遊離砥粒で研磨を行うように構成することも可能である。さらに、下流側のベベル研磨ユニット256Bの1つの研磨ヘッドにテープ状洗浄布を取り付け、研磨テープの砥粒による研磨、スラリーによる研磨、洗浄布による洗浄を順次行うように構成することも可能である。
【0142】
搬送機構270は上流側のベベル研磨ユニット256AでのウエハWの受渡しと下流側のベベル研磨ユニット256BでのウエハWの受渡しは同時に行われるので、ウエハWを速やかに搬送することができる。この場合でも、先に説明したように、ウエハWを水平面Kよりも上方の清浄な空間に位置させている間に研磨ヘッドを洗浄することができる。したがって、洗浄のためにウエハWを一旦ベベル研磨ユニットから取り出す必要がなく、研磨が行われるごとに研磨ヘッドを洗浄することができる。
【符号の説明】
【0143】
1A〜1D,140,140A〜140E 研磨ヘッド組立体
2A〜2D,142,142A〜142E テープ供給回収機構
3 回転保持機構
4 保持ステージ
5,5−1,5−2 中空シャフト
6 ボールスプライン軸受
7 連通ライン
8 ロータリジョイント
9 真空ライン
10 窒素ガス供給ライン
12 ケーシング
14 ケーシング
15 エアシリンダ
18 ラジアル軸受
19 ベローズ
20 隔壁
21 研磨室
23 研磨テープ
24,143 供給リール
25,144 回収リール
27 カップリング
30,141 研磨ヘッド
31〜34 ガイドローラ
36 上供給ノズル
37 下供給ノズル
38 洗浄ノズル
40 ルーバー
41,145 加圧機構
42,146 テープ送り機構
43〜49 ガイドローラ
50 加圧パッド
51 パッドホルダー
52 エアシリンダ(駆動機構)
53 エア配管
54 電空レギュレータ
60 アーム
61 移動台
62 ガイド
63 レール
65 ベースプレート
66 連結板
67,150 リニアアクチュエータ
68 ジョイント
69 動作制御部
70A,70B,70C,70D 研磨ヘッドモジュール
71 ハウジング
72,73 シャッター
75 研磨テープ
76 ロータリジョイント
77 ロータリボールスプライン軸受
78 ケーシング
80 アーム
81 フレーム
82 ノッチサーチユニット
83 リンス液供給ノズル
84 薬液供給ノズル
90 研磨ヘッド
91 テンションセンサ
92 モニタリングユニット
93 揺動プレート
94 チルトプレート
95 リニアガイド
97 揺動受けブロック
98 揺動シャフト
99 軸受
100 チルトシャフト
101,102,103,104 軸受
106 X軸レール
107 Y軸レール
108 X軸ガイド
109 Y軸ガイド
110 連結プレート
111 連結シャフト
113 X軸エアシリンダ
114 Y軸エアシリンダ
120 ボールねじサポート
121 ボールねじ
122 カップリング
130 直動レール
160 冷却液供給部
165 センタリングガイド
170 偏心検知手段
171 ハンド
175 シュラウドカバー
240 ロードポート
245 第1の搬送ロボット
248 ノッチアライナ
250 ノッチアライナ移動機構
255 ノッチ研磨ユニット
256 ベベル研磨ユニット
257 第2の搬送ロボット
260 洗浄ユニット
265 乾燥ユニット
270 搬送機構
M1〜M10 モータ
p1〜p12 プーリー
b1〜b7 ベルト
W ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のノッチ部を研磨する研磨装置において、
基板を水平に保持し、回転させる回転保持機構と、
研磨テープを用いて基板を研磨する複数の研磨ヘッドモジュールと、
前記複数の研磨ヘッドモジュールを互いに独立して移動させる移動機構とを備え、
前記複数の研磨ヘッドモジュールは、研磨テープを基板のノッチ部に摺接させる研磨ヘッドと、前記研磨ヘッドに研磨テープを供給し、回収するテープ供給回収機構とをそれぞれ有することを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
前記移動機構は、互いに直交するX軸およびY軸に沿って前記複数の研磨ヘッドモジュールを移動させる1つのX軸移動機構および複数のY軸移動機構を有し、
前記X軸移動機構は、前記複数の研磨ヘッドモジュールを前記X軸に沿って同期して移動させるように構成されており、
前記Y軸移動機構は、前記複数の研磨ヘッドモジュールを前記Y軸に沿って互いに独立して移動させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
前記移動機構は、前記複数の研磨ヘッドモジュールの前記研磨ヘッドを、それぞれ1つの移動軸に沿って基板のノッチ部に近接および離間させる方向に移動させることを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記回転保持機構は、基板のノッチ部を中心として前記基板をその表面に平行な平面内でスイングさせるスイング機構を有することを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【請求項5】
前記回転保持機構は、基板を保持する保持ステージと、前記保持ステージを上下動させる昇降機構とを備えることを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【請求項6】
前記昇降機構は、前記保持ステージを基板の搬送位置から基板の研磨位置まで下降させ、かつ前記保持ステージを前記研磨位置から前記搬送位置まで上昇させるように構成され、
基板のノッチ部を検出するノッチサーチユニットを前記搬送位置と同じ高さに設けたことを特徴とする請求項5に記載の研磨装置。
【請求項7】
前記複数の研磨ヘッドモジュールの少なくとも1つは、研磨テープのテンションを測定するテンションセンサを有し、
前記研磨装置は、前記テンションセンサの出力信号に基づいて前記研磨テープのテンションを監視するモニタリングユニットをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【請求項8】
基板のノッチ部を研磨する研磨装置において、
基板を水平に保持し、回転させる回転保持機構と、
研磨テープを用いて基板を研磨する研磨ヘッドモジュールとを備え、
前記研磨ヘッドモジュールは、研磨テープを基板のノッチ部に摺接させる研磨ヘッドと、前記研磨ヘッドに研磨テープを供給し、回収するテープ供給回収機構と、研磨テープのテンションを測定するテンションセンサとを有し、
前記研磨装置は、前記テンションセンサの出力信号に基づいて前記研磨テープのテンションを監視するモニタリングユニットを備えることを特徴とする研磨装置。
【請求項9】
複数の研磨ヘッド組立体および複数のテープ供給回収機構を備えた研磨装置を用いた研磨方法であって、
回転保持機構により基板を回転させ、
研磨テープを前記基板の周縁部の第1の領域に当接させて該第1の領域を研磨し、
前記研磨テープを前記基板の周縁部の第2の領域に当接させて該第2の領域を研磨し、
前記第2の領域の研磨中に、前記複数の研磨ヘッド組立体および前記複数のテープ供給回収機構の少なくとも1組に研磨テープに代えて取り付けられたテープ状洗浄布を前記第1の領域に当接させて該第1の領域を洗浄し、
前記研磨テープによる前記第2の領域の研磨が終了した後、前記テープ状洗浄布を前記第2の領域に当接させて該第2の領域を洗浄すること特徴とする研磨方法。
【請求項10】
前記研磨装置は、
基板を水平に保持し、回転させる前記回転保持機構と、
前記回転保持機構に保持された基板の周囲に配置された前記複数の研磨ヘッド組立体と、
前記複数の研磨ヘッド組立体に研磨テープを供給し、回収する前記複数のテープ供給回収機構と、
前記複数の研磨ヘッド組立体を、前記回転保持機構に保持された基板の径方向に沿って移動させる複数の移動機構とを備え、
前記複数の研磨ヘッド組立体は、基板の周縁部に研磨テープを当接させる研磨ヘッドと、前記研磨ヘッドを基板の接線に平行な軸を中心として回転させるチルト機構とをそれぞれ有し、
前記複数のテープ供給回収機構は、前記基板の径方向において前記複数の研磨ヘッド組立体の外側に配置されており、前記複数のテープ供給回収機構の位置は固定されていることを特徴とする請求項9に記載の研磨方法。
【請求項11】
請求項9に記載の研磨方法により研磨されたことを特徴とする基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2012−231191(P2012−231191A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−189768(P2012−189768)
【出願日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【分割の表示】特願2008−292193(P2008−292193)の分割
【原出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】