説明

研磨装置の動作レシピの作成方法

【課題】研磨ヘッドの動作を決定するパラメータの数値入力に要する時間および労力を低減することができる研磨装置の動作レシピの作成方法を提供する。
【解決手段】研磨装置は、研磨テープ23を用いて基板Wの周縁部を研磨する複数の研磨ヘッド30A〜30Dと複数の研磨ヘッド30A〜30Dの動作を制御する動作制御部69とを備える。研磨装置の動作レシピは、研磨ヘッドの動作を決定する複数のパラメータを動作制御部69に記憶し、複数のパラメータから構成される少なくとも1つの研磨ヘッドレシピを動作制御部69内に生成し、複数の研磨ヘッド30A〜30Dを研磨ヘッドレシピに関連付けることによって生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハなどの基板の周縁部を研磨する研磨装置の動作レシピの作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造における歩留まり向上の観点から、ウエハの周縁部の表面状態の管理が近年注目されている。半導体製造工程では、多くの材料がウエハ上に成膜され、積層されていくため、製品に使用されない周縁部には不要な膜や表面荒れが形成される。近年では、ウエハの周縁部のみをアームで保持してウエハを搬送する方法が一般的になってきている。このような背景のもとでは、周縁部に残存した不要な膜が種々の工程を経ていく間に剥離してデバイス表面に付着し、歩留まりを低下させてしまう。そこで、研磨装置を用いて、ウエハの周縁部を研磨して不要な膜や表面荒れを除去することが従来から行われている。
【0003】
このような研磨装置として、研磨テープを用いて半導体ウエハなどの基板の周縁部を研磨する装置が知られている(特許文献1乃至7参照)。この種の研磨装置は、研磨テープの研磨面を基板の周縁部に摺接させることで基板の周縁部を研磨する。除去すべき不要膜の材質や厚さは基板によって異なるため、粗さの異なる複数の研磨テープを使用し、不要膜の除去や形状の成形を粗研磨で行い、次いで表面を滑らかに仕上げる仕上げ研磨を行うことが一般に行われている。
【0004】
基板の周縁部には、一般に、ベベル部とノッチ部が形成される。ベベル部とは、基板の周縁部において角取りされた部分であり、基板の欠けやパーティクルの発生などを防止するために形成される。一方、ノッチ部とは、結晶方位を特定するために基板の周縁部に形成された切り欠きである。上述した基板の周縁部を研磨する研磨装置は、ベベル部を研磨するベベル研磨装置とノッチ部を研磨するノッチ研磨装置に大別することができる。
【0005】
従来の研磨装置として、複数の研磨ヘッドを備えた装置が知られている。このような構造を備えた研磨装置によれば、基板を搬送することなく、粗研磨や仕上げ研磨などの異なるタイプの研磨を連続して行うことができる。例えば、第1の研磨ヘッドで基板の粗研磨を行い、第2の研磨ヘッドで基板の中間研磨を行い、そして第3の研磨ヘッドで基板の仕上げ研磨を行うことができる。
【0006】
各研磨ヘッドは、予め設定された動作レシピに従って動作する。動作レシピは、研磨ヘッドの動作を決定する複数のパラメータから構成され、それぞれの研磨ヘッドのパラメータは、予め研磨ヘッドごとに設定されている。パラメータとしては、例えば、研磨テープの基板に対する接触角度、研磨テープを基板に接触させる時間、研磨テープを基板に接触させる押圧力、研磨テープの送り速度などが含まれる。これらのパラメータの具体的数値は、ユーザーによって研磨装置に入力装置を介して入力される。
【0007】
しかしながら、研磨ヘッドの数およびパラメータの種類が多くなるに従い、動作レシピの編集に要する時間が長くなる。また、研磨ヘッドごとにパラメータが設定されるため、同じ動作をする研磨ヘッドについても、同じ内容の数値セットを繰り返し入力する必要があった。さらに、研磨ヘッドの動作が複雑になると、より多くのパラメータが必要となり、数値入力に要する時間が長くなってしまう。
【0008】
また、研磨ヘッドの角度を所定のパターンに従って繰り返し変化させながら基板を研磨する場合、従来の動作レシピでは、基板が均一に研磨されないことがある。すなわち、研磨ヘッドの動作は時間によって指定されるため、研磨ヘッドの研磨動作が上記所定のパターンの途中で終わってしまい、不均一な研磨となることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開US2007/0131653号公報
【特許文献2】特開2005−252288号公報
【特許文献3】特開平7−237100号公報
【特許文献4】特開2001−239445号公報
【特許文献5】特開2002−208572号公報
【特許文献6】特開2003−77872号公報
【特許文献7】特開2006−303112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した従来の問題点を解決するためになされたもので、研磨ヘッドの動作を決定するパラメータの数値入力に要する時間および労力を低減することができる研磨装置の動作レシピの作成方法を提供することを目的とする。また、本発明は、基板を均一に研磨することができる研磨装置の動作レシピの作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、研磨テープを用いて基板の周縁部を研磨する複数の研磨ヘッドと前記複数の研磨ヘッドの動作を制御する動作制御部とを備えた研磨装置の動作レシピを生成する方法であって、研磨ヘッドの動作を決定する複数のパラメータを前記動作制御部に記憶し、前記複数のパラメータから構成される少なくとも1つの研磨ヘッドレシピを前記動作制御部内に生成し、前記複数の研磨ヘッドを前記研磨ヘッドレシピに関連付けることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記複数の研磨ヘッドを前記研磨ヘッドレシピに関連付ける工程は、前記複数の研磨ヘッドに関連付けて設けられた動作シーケンスブロックに前記研磨ヘッドレシピを割り振る工程であることを特徴とする。
【0012】
本発明の他の態様は、研磨テープを用いて基板のベベル部を研磨する研磨ヘッドと、前記研磨ヘッドを前記基板の表面に対して傾動させるチルト機構と、前記研磨ヘッドおよび前記チルト機構の動作を制御する動作制御部とを備えた研磨装置の動作レシピを生成する方法であって、前記研磨ヘッドが傾動する角度範囲を特定するパラメータを前記動作制御部に記憶し、前記研磨ヘッドが前記角度範囲に亘って傾動する回数を特定するパラメータを前記動作制御部に記憶する工程を有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記2つのパラメータを含む研磨ヘッドレシピを前記動作制御部内に生成し、前記研磨装置の動作シーケンスブロックに前記研磨ヘッドレシピを入力する工程をさらに有することを特徴とする。
【0013】
本発明の他の態様は、研磨テープを用いて基板のノッチ部を研磨する研磨ヘッドと、前記研磨ヘッドを前記基板の表面に対して傾動させるチルト機構と、前記基板を前記ノッチ部を中心として水平面内でスイングさせるスイング機構と、前記研磨ヘッド、前記チルト機構、および前記スイング機構の動作を制御する動作制御部とを備えた研磨装置の動作レシピを生成する方法であって、前記基板の表面に対する前記研磨ヘッドのチルト角度を特定する第1のパラメータを前記動作制御部に記憶し、前記スイング機構により前記基板をスイングさせる回数を特定する第2のパラメータを前記動作制御部に記憶する工程を有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第1のパラメータを含む研磨ヘッドレシピを前記動作制御部内に生成し、前記第2のパラメータを含むステージレシピを前記動作制御部内に生成し、前記研磨装置の動作シーケンスブロックに前記研磨ヘッドレシピおよび前記ステージレシピを入力する工程をさらに有することを特徴とする。
【0014】
本発明の他の態様は、研磨テープを用いて基板のノッチ部を研磨する研磨ヘッドと、前記研磨ヘッドを前記基板の表面に対して傾動させるチルト機構と、前記基板を前記ノッチ部を中心として水平面内でスイングさせるスイング機構と、前記研磨ヘッド、前記チルト機構、および前記スイング機構の動作を制御する動作制御部とを備えた研磨装置の動作レシピを生成する方法であって、前記基板の径方向と前記研磨ヘッドとがなす角度を特定する第1のパラメータを前記動作制御部に記憶し、前記研磨ヘッドが傾動する角度範囲を特定する第2のパラメータを前記動作制御部に記憶し、前記研磨ヘッドが前記角度範囲に亘って傾動する回数を特定する第3のパラメータを前記動作制御部に記憶する工程を有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第1のパラメータを含むステージレシピを前記動作制御部内に生成し、前記第2のパラメータおよび前記第3のパラメータを含む研磨ヘッドレシピを前記動作制御部内に生成し、前記研磨装置の動作シーケンスブロックに前記研磨ヘッドレシピおよび前記ステージレシピを入力する工程をさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、1つの研磨ヘッドに使用される研磨ヘッドレシピを同じ動作を行う他の研磨ヘッドに流用することができるので、研磨ヘッドごとにパラメータの数値を入力する必要がない。したがって、動作レシピの作成に要する時間および労力を削減することができる。また、本発明によれば、研磨ヘッドと基板との相対移動の回数によって研磨動作が管理されるので、研磨テープと基板との接触時間を被研磨領域全体に亘って均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】研磨装置を示す平面図である。
【図2】図1に示す研磨装置の縦断面図である。
【図3】研磨ヘッドの拡大図である。
【図4】図4(a)はリニアアクチュエータにより研磨ヘッド組立体を前進させて研磨テープをウエハのベベル部に当接させている状態を示し、図4(b)はベベル部の上斜面に研磨テープを当接させるようにチルト機構によって研磨ヘッドを傾斜させた状態を示し、図4(c)はベベル部の下斜面に研磨テープを当接させるようにチルト機構によって研磨ヘッドを傾斜させた状態を示している。
【図5】研磨ヘッドレシピを作成するためのテーブルである。
【図6】研磨装置全体の動作を決定する動作レシピである。
【図7】研磨装置の他の例を示す平面図である。
【図8】図7のA−A線断面図である。
【図9】図7の矢印Bで示す方向から見た側面図である。
【図10】研磨ヘッドレシピを作成するためのテーブルである。
【図11】ステージレシピを作成するためのテーブルである。
【図12】研磨装置全体の動作を決定する動作レシピである。
【図13】図13(a)はノッチ部を示す平面図であり、図13(b)はノッチ部の研磨工程の一例を示す側面図である。
【図14】図14(a)はノッチ部を示す平面図であり、図14(b)はノッチ部の研磨工程の他の例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は研磨装置を示す平面図であり、図2は図1に示す研磨装置の縦断面図である。なお、この研磨装置は、基板のベベル部を研磨するベベル研磨装置に好適に使用される。
【0018】
図1および図2に示すように、この研磨装置は、その中央部に、研磨対象物である基板Wを水平に保持し、回転させる回転保持機構3を備えている。回転保持機構3は、基板Wの裏面を真空吸着により保持する皿状の保持ステージ4と、保持ステージ4の中央部に連結された中空シャフト5と、この中空シャフト5を回転させるモータM1とを備えている。基板Wは、搬送機構のハンド(後述する)により、基板Wの中心が中空シャフト5の軸心と一致するように保持ステージ4の上に載置される。
【0019】
中空シャフト5は、ボールスプライン軸受(直動軸受)6によって上下動自在に支持されている。保持ステージ4の上面には溝4aが形成されており、この溝4aは、中空シャフト5を通って延びる連通ライン7に接続されている。連通ライン7は中空シャフト5の下端に取り付けられたロータリジョイント8を介して真空ライン9に接続されている。連通ライン7は、処理後の基板Wを保持ステージ4から離脱させるための窒素ガス供給ライン10にも接続されている。これらの真空ライン9と窒素ガス供給ライン10を切り替えることによって、基板Wを保持ステージ4の上面に真空吸着し、離脱させる。
【0020】
中空シャフト5は、この中空シャフト5に連結されたプーリーp1と、モータM1の回転軸に取り付けられたプーリーp2と、これらプーリーp1,p2に掛けられたベルトb1を介してモータM1によって回転される。モータM1の回転軸は中空シャフト5と平行に延びている。このような構成により、保持ステージ4の上面に保持された基板Wは、モータM1によって回転される。
【0021】
ボールスプライン軸受6は、中空シャフト5がその長手方向へ自由に移動することを許容する軸受である。ボールスプライン軸受6はケーシング12に固定されている。したがって、本実施形態においては、中空シャフト5は、ケーシング12に対して上下に直線動作ができるように構成されており、中空シャフト5とケーシング12は一体に回転する。中空シャフト5は、エアシリンダ(昇降機構)15に連結されており、エアシリンダ15によって中空シャフト5および保持ステージ4が上昇および下降できるようになっている。
【0022】
ケーシング12と、その外側に同心上に配置されたケーシング14との間にはラジアル軸受18が介装されており、ケーシング12は軸受18によって回転自在に支持されている。このような構成により、回転保持機構3は、基板Wを中心軸Crまわりに回転させ、かつ基板Wを中心軸Crに沿って上昇下降させることができる。
【0023】
図1に示すように、回転保持機構3に保持された基板Wの周囲には4つの研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dが配置されている。研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dの径方向外側にはテープ供給回収機構2A,2B,2C,2Dが設けられている。研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dとテープ供給回収機構2A,2B,2C,2Dとは隔壁20によって隔離されている。隔壁20の内部空間は研磨室21を構成し、4つの研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dおよび保持ステージ4は研磨室21内に配置されている。一方、テープ供給回収機構2A,2B,2C,2Dは隔壁20の外側(すなわち、研磨室21の外)に配置されている。それぞれの研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dおよびテープ供給回収機構2A,2B,2C,2Dは同一の構成を有している。以下、研磨ヘッド組立体1Aおよびテープ供給回収機構2Aについて説明する。
【0024】
テープ供給回収機構2Aは、研磨具である研磨テープ23を研磨ヘッド組立体1Aに供給する供給リール24と、基板Wの研磨に使用された研磨テープ23を回収する回収リール25とを備えている。供給リール24および回収リール25にはカップリング27を介してモータM2がそれぞれ連結されている(図1には供給リール24に連結されるカップリング27とモータM2のみを示す)。それぞれのモータM2は、所定の回転方向に一定のトルクをかけ、研磨テープ23に所定のテンションをかけることができるようになっている。
【0025】
研磨テープ23は長尺のテープ状の研磨具であり、その片面は研磨面を構成している。研磨テープ23の一端は回収リール25に取り付けられ、研磨ヘッド組立体1Aに供給された研磨テープ23を回収リール25が巻き取ることで研磨テープ23を回収するようになっている。研磨ヘッド組立体1Aはテープ供給回収機構2Aから供給された研磨テープ23を基板Wの周縁部に当接させるための研磨ヘッド30Aを備えている。
【0026】
研磨テープ23は、隔壁20に設けられた開口部20aを通してテープ供給回収機構2Aの供給リール24から研磨ヘッド30Aへ供給され、使用された研磨テープ23は開口部20aを通って回収リール25に回収される。研磨テープ23は、研磨テープ23の研磨面が基板Wを向くように研磨ヘッド30Aに供給される。
【0027】
基板Wの上方には上側液体供給部36が配置され、回転保持機構3に保持された基板Wの上面中心に向けて研磨液または洗浄液を供給する。また、基板Wの裏面と回転保持機構3の保持ステージ4との境界部(保持ステージ4の外周部)に向けて研磨液または洗浄液を供給する下側液体供給部37を備えている。研磨液および洗浄液には通常純水が使用される。研磨テープ23の砥粒としてシリカを使用する場合などは、研磨液としてアンモニアを用いることもできる。さらに、研磨装置は、研磨処理後に研磨ヘッド30Aを洗浄する洗浄ノズル38を備えており、研磨処理後に基板Wが回転保持機構3により上昇した後、研磨ヘッド30Aに向けて洗浄液を噴射し、研磨処理後の研磨ヘッド30Aを洗浄できるようになっている。
【0028】
図2は中空シャフト5が下降している状態を示し、保持ステージ4が研磨位置にあることを示している。研磨処理後には、エアシリンダ15により基板Wを保持ステージ4および中空シャフト5とともに搬送位置まで上昇させ、この搬送位置で基板Wを保持ステージ4から離脱させる。隔壁20は、基板Wを研磨室21に搬入および搬出するための搬送口20bを備えている。搬送口20bは、水平に延びる切り欠き状の開口として形成されている。したがって、搬送機構の搬送アームに把持された基板Wは、水平な状態を保ちながら、搬送口20bを通って研磨室21内を横切ることが可能となっている。
【0029】
図3は研磨ヘッドの拡大図である。図3に示すように、研磨ヘッド30Aは、研磨テープ23の裏面を加圧して基板Wに研磨テープ23を所定の力で加圧する加圧機構41を備えている。また、研磨ヘッド30Aは、研磨テープ23を供給リール24から回収リール25へ送るテープ送り機構42を備えている。研磨ヘッド30Aは複数のガイドローラ43,44,45,46,47,48,49を有しており、これらのガイドローラは基板Wの接線方向と直行する方向に研磨テープ23が進行するように研磨テープ23をガイドする。
【0030】
研磨ヘッド30Aに設けられたテープ送り機構42は、テープ送りローラ42aと、テープ把持ローラ42bと、テープ送りローラ42aを回転させるモータM3とを備えている。テープ送りローラ42aの隣にはテープ把持ローラ42bが設けられており、テープ把持ローラ42bは、図3のNFで示す方向(テープ送りローラ42aに向かう方向)に力を発生するように図示しない機構で支持されており、テープ送りローラ42aを押圧するように構成されている。
【0031】
研磨テープ23は、テープ送りローラ42aとテープ把持ローラ42bとによって把持されている。モータM3を図3に示す矢印方向に回転すると、テープ送りローラ42aが回転して研磨テープ23を供給リール24から研磨ヘッド30Aを経由して回収リール25へ送ることができる。テープ把持ローラ42bはそれ自身の軸まわりに回転することができるように構成され、研磨テープ23が送られることによって回転する。
【0032】
図1に示すように、研磨ヘッド30Aはアーム60の一端に固定され、アーム60は、基板Wの接線に平行な軸Ctまわりに回転自在に構成されている。アーム60の他端はプーリーp3,p4およびベルトb2を介してモータM4に連結されている。モータM4が時計回りおよび反時計回りに所定の角度だけ回転することで、アーム60が軸Ctまわりに所定の角度だけ回転する。モータM4、アーム60、プーリーp3,p4、およびベルトb2によって、研磨ヘッド30Aを傾斜させるチルト機構が構成されている。
【0033】
図2に示すように、チルト機構は、移動台61に搭載されている。移動台61は、ガイド62およびレール63を介してベースプレート65に移動自在に連結されている。レール63は、回転保持機構3に保持された基板Wの半径方向に沿って直線的に延びており、移動台61は基板Wの半径方向に沿って直線的に移動可能になっている。移動台61にはベースプレート65を貫通する連結板66が取り付けられ、連結板66にはリニアアクチュエータ67がジョイント68を介して取り付けられている。リニアアクチュエータ67はベースプレート65に直接または間接的に固定されている。
【0034】
リニアアクチュエータ67としては、エアシリンダや位置決め用モータとボールネジとの組み合わせなどを採用することができる。このリニアアクチュエータ67、レール63、ガイド62によって、研磨ヘッド30Aを基板Wの半径方向に沿って直線的に移動させる移動機構が構成されている。すなわち、移動機構はレール63に沿って研磨ヘッド30Aを基板Wへ近接および離間させるように動作する。一方、テープ供給回収機構2Aはベースプレート65に固定されている。
【0035】
図4(a)はリニアアクチュエータ67により研磨ヘッド組立体1Aを前進させて研磨テープ23を基板Wのベベル部の端面に当接させている状態を示す。回転保持機構3により基板Wを保持して回転させることによって研磨テープ23と基板Wのベベル部とを相対移動させ、基板Wのベベル部を研磨する。図4(b)はベベル部の上斜面に研磨テープ23を当接させるようにチルト機構によって研磨ヘッド30Aを傾斜させた状態を示している。図4(c)はベベル部の下斜面に研磨テープ23を当接させるようにチルト機構によって研磨ヘッド30Aを傾斜させた状態を示している。図4(b)および図4(c)から分かるように、チルト機構によって研磨ヘッド30Aは基板Wの表面に対して所定のチルト角度だけ傾くことができる。チルト機構のモータM4には、サーボモータやステッピングモータなどの位置や速度を精密に制御できるモータが採用されている。
【0036】
なお、研磨ヘッド組立体1B,1C,1Dの研磨ヘッド30B,30C,30Dも研磨ヘッド30Aと同様の構成を有し、同様に動作する。なお、本実施形態では4組の研磨ヘッド組立体およびテープ供給回収機構が設けられているが、本発明はこの例に限られず、2組、3組、または5組以上の研磨ヘッド組立体およびテープ供給回収機構を設けてもよい。
【0037】
基板Wの周囲に配置された4つの研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dのチルト機構、加圧機構41、およびテープ送り機構42、各研磨ヘッド組立体を移動させる移動機構は、それぞれ独立に動作が可能なように構成されている。各研磨ヘッド組立体1A,1B,1C,1Dの研磨ヘッドの位置(研磨位置、待機位置)、研磨ヘッドの傾斜角度、基板Wの回転速度、研磨テープ23の送り速度、各研磨ヘッドの研磨動作シーケンスなどの各研磨動作は、図1に示す動作制御部69によって制御されている。より具体的には、研磨装置の基板処理は、動作制御部69に記憶されている動作レシピに従って行われる。
【0038】
研磨装置の動作レシピは、回転保持機構3、液体供給部36,37、研磨ヘッド30A〜30Dを動作させるための指令テーブルである。この動作レシピは、研磨ヘッドの動作を定める研磨ヘッドレシピを含んでいる。研磨ヘッドレシピは、研磨ヘッドの動作を決定する種々のパラメータから構成される。研磨ヘッドレシピの編集および確定は、各パラメータを特定すること、すなわち各パラメータに数値を指定することにより行われる。パラメータの数値は、図示しない入力装置を介してユーザーにより動作制御部69に入力され、動作制御部69に記憶される。
【0039】
図5は研磨ヘッドレシピを作成するためのテーブルである。図5に示すように、研磨ヘッドレシピを構成するパラメータとしては、研磨圧力(研磨ヘッドが研磨テープを基板に押圧する力[N])、研磨テープの送り速度[mm/min]、研磨ヘッドのチルト速度[min−1]、一定角度研磨の角度[度]およびその研磨時間[秒]、連続研磨のチルト角度範囲[度]およびその研磨時間[秒]、往復研磨のチルト角度範囲[度]および往復回数が含まれる。なお、研磨ヘッドのチルト速度は、研磨テープと基板との接触点を中心とした研磨ヘッドの回転速度である。
【0040】
一定角度研磨とは、研磨ヘッドを所定のチルト角度(図4(a)乃至図4(c)参照)に維持しつつ基板の周縁部を研磨することである。このチルト角度は複数設定することができる。例えば、図5に示す例では、No.1からNo.3までのチルト角度を設定することができる。研磨時間はチルト角度ごとに設定することができる。図5に示す研磨ヘッドレシピ1の例では、チルト角度0度(すなわち研磨テープは基板に対して垂直)でT1秒、チルト角度−45度でT2秒、チルト角度45度でT3秒で研磨するように設定されている。一定角度研磨におけるチルト速度は、あるチルト角度から他のチルト角度に研磨ヘッドが傾くときの速度である。
【0041】
連続研磨とは、研磨ヘッドのチルト角度を連続的に変化させながら所定の時間だけ研磨テープを基板に接触させることである。この連続研磨では、研磨ヘッドは、研磨テープと基板との接触点を中心として所定の角度範囲内で揺動する。図5に示す研磨ヘッドレシピ2の例では、−45〜45度の角度範囲で研磨ヘッドを連続的に傾動させながら、研磨ヘッドにより研磨テープを基板にT4秒間押し付ける。研磨中、研磨ヘッドは、指定されたチルト速度[min−1]で傾動する。
【0042】
往復研磨とは、研磨ヘッドのチルト角度を連続的に変化させながら所定の回数だけ研磨ヘッドを傾動(往復)させることである。往復研磨での研磨ヘッドの動作は、上述した連続研磨での研磨ヘッドの動作と同じであり、研磨ヘッドは、研磨テープと基板との接触点を中心として所定の角度範囲内で揺動する。しかしながら、往復研磨は、研磨ヘッドの傾動動作の往復回数によって管理される点で、上述の連続研磨と異なっている。傾動動作の往復回数は、0.5刻みで設定することができる。
【0043】
図5に示す研磨ヘッドレシピ3の例では、研磨ヘッドは、指定された角度範囲−45〜45度を2回往復(傾動)する。この場合、傾動動作を開始する角度と終了する角度は同じである。研磨中、研磨ヘッドは、指定されたチルト速度[min−1]で傾動する。この往復研磨によれば、研磨テープと基板の周縁部とが接触する時間は、指定された角度範囲全体に亘って均一である。したがって、指定された角度範囲内の領域を均一に研磨することができる。
【0044】
研磨ヘッドレシピは、テーブル内のパラメータを具体的な数値で指定することにより編集され、確定される。図5に示す例では、研磨ヘッドレシピ1は、一定角度研磨を行うための内容となっている。すなわち、研磨ヘッドレシピ1では、連続研磨および往復研磨に関連するパラメータには数値は指定されていなく、一定角度研磨に関するパラメータには具体的な数値(角度および対応する研磨時間)が指定されている。研磨ヘッドレシピ2は、連続研磨を行う内容となっている。すなわち、研磨ヘッドレシピ2では、一定角度研磨および往復研磨に関連するパラメータには数値は指定されていなく、連続研磨に関するパラメータには具体的な数値(角度範囲および往復回数)が指定されている。研磨ヘッドレシピ3は、往復研磨を行うための内容となっている。すなわち、研磨ヘッドレシピ3では、一定角度研磨および連続研磨に関連するパラメータには数値は指定されていなく、往復研磨に関するパラメータには具体的な数値(角度範囲および往復回数)が指定されている。
【0045】
図6は、ベベル研磨装置全体の動作を決定する動作レシピである。研磨装置が行う動作には、基板の研磨、基板の回転、基板への液体供給が含まれる。したがって、研磨装置の動作レシピは、基板の回転および基板への液体供給に関するパラメータのほかに、上述した研磨ヘッドレシピから構成されている。これらのパラメータおよび研磨ヘッドレシピは、時間軸に沿って配列された動作シーケンスブロックに入力される。動作レシピは、時間軸に沿って配列された時系列ステップとして構成され、各ステップ上には動作シーケンスブロックが機能ごとに配置されている。
【0046】
4つの研磨ヘッド30A〜30Dのそれぞれに関連付けられた動作シーケンスブロックには、上述のように生成された研磨ヘッドレシピが入力される。すなわち、それぞれの研磨ヘッド30A〜30Dには研磨ヘッドレシピが割り振られ、各研磨ヘッド30A〜30Dは、関連付けられた研磨ヘッドレシピに従って動作する。図6に示す例では、図5に示す研磨ヘッドレシピ1は4つの研磨ヘッド30A〜30Dのうちの2つに割り振られ、研磨ヘッドレシピ3は他の2つに割り振られている。このように、研磨装置の動作レシピは、研磨ヘッドレシピ単位で構築されるので、すべての研磨ヘッド30A〜30Dについてパラメータを入力する必要がない。したがって、研磨動作の設定に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0047】
それぞれの研磨ヘッド30A〜30Dに割り振られた研磨ヘッドレシピは、時系列ステップ上に配列される。したがって、それぞれの研磨ヘッド30A〜30Dは、時間軸に沿って研磨ヘッドレシピに従って動作する。図6に示す動作レシピでは、純水供給(ステップ1)、一定角度研磨(ステップ2)、往復研磨(ステップ3)、純水供給(ステップ4)の順に行われる。より具体的には、ステップ1では、基板を速度100min−1で回転させながら、上側液体供給部36および下側液体供給部37から純水を基板に供給する。ステップ2では、基板を速度700min−1で回転させながら、基板に純水を供給し、2つの研磨ヘッドが研磨ヘッドレシピ1に従って一定角度研磨を行う。ステップ3では、基板を速度700min−1で回転させながら、基板に純水を供給し、他の2つの研磨ヘッドが研磨ヘッドレシピ3に従って往復研磨を行う。ステップ4では、基板を速度100min−1で回転させながら、上側液体供給部36および下側液体供給部37から純水を基板に供給する。各工程における基板の回転速度は、研磨装置の動作レシピを構成するパラメータの1つとして設定されている。
【0048】
上述した動作レシピの作成方法は、基板のノッチ部を研磨するノッチ研磨装置に適用することもできる。図7は、ノッチ研磨装置の例を示す平面図である。図8は図7のA−A線断面図である。図9は、図7の矢印Bで示す方向から見た側面図である。なお、上述したベベル研磨装置と同一または相当する要素には同一の符号を用いて、その重複する説明を省略する。
【0049】
この研磨装置は、基板Wの周縁部に形成されたノッチ部を研磨するのに好適に用いられる装置である。図7に示すように、研磨装置は、2つの研磨ヘッドモジュール70A,70Bと、基板Wを保持して回転させる回転保持機構3とを備えている。これら研磨ヘッドモジュール70A,70Bと回転保持機構3は、ハウジング71内に収容されている。このハウジング71には、基板Wの搬入および搬出のための搬送口71aが設けられており、搬送口71aには開閉自在なシャッター72が設けられている。同様に、ハウジング71には、研磨テープを交換するための作業窓71bが設けられており、この作業窓71bにはシャッター73によって閉じられている。
【0050】
図8に示すように、保持ステージ4は第1の中空シャフト5−1の上端に連結されている。第1の中空シャフト5−1は、プーリーp5,p6およびベルトb3を介してモータM5に連結されており、このモータM5によって保持ステージ4が回転させられるようになっている。保持ステージ4、第1の中空シャフト5−1、プーリーp5,p6、ベルトb3、およびモータM5は1つのステージ組立体を構成している。
【0051】
第1の中空シャフト5−1の下方には第2の中空シャフト5−2が設けられている。これら第1の中空シャフト5−1および第2の中空シャフト5−2は互いに平行に延びている。第1の中空シャフト5−1および第2の中空シャフト5−2は、ロータリジョイント76を介して連通ライン7によって連結されている。連通ライン7の一端は保持ステージ4の上面に形成された溝(図2の符号4a参照)に接続され、他端は、真空ライン9および窒素ガス供給ライン10(図2参照)に接続されている。これらの真空ライン9と窒素ガス供給ライン10を切り替えることによって、基板Wを保持ステージ4の上面に真空吸着し、離脱させる。
【0052】
第2の中空シャフト5−2は、ロータリボールスプライン軸受77によって回転自在かつ直動自在に支持されている。ロータリボールスプライン軸受77はケーシング78に支持され、ケーシング78はベースプレート65に固定されている。第2の中空シャフト5−2は、プーリーp7,p8およびベルトb4を介してモータM6に連結されており、このモータM6によって第2の中空シャフト5−2が回転させられるようになっている。
【0053】
ステージ組立体と第2の中空シャフト5−2とは、アーム80を介して互いに連結されている。モータM6は第2の中空シャフト5−2を時計周りおよび反時計周りに所定の角度だけ回転させるように制御されている。したがって、モータM6により第2の中空シャフト5−2を時計回りおよび反時計周りに回転させると、ステージ組立体も時計回りおよび反時計周りに回転する。第1の中空シャフト5−1の軸芯と第2の中空シャフト5−2の軸芯とはずれており、第2の中空シャフト5−2の延長線上には、保持ステージ4に保持された基板Wのノッチ部が位置している。したがって、モータM6を駆動させると、基板Wはノッチ部を中心に時計周りおよび反時計周りに所定の角度だけ水平面内で回転する(すなわちスイングする)ように構成されている。本実施形態では、基板Wをノッチ部を中心としてスイングさせるスイング機構は、プーリーp7,p8、ベルトb4、モータM6、第2の中空シャフト5−2、アーム80などにより構成される。
【0054】
第2の中空シャフト5−2はエアシリンダ(昇降機構)15に連結されており、このエアシリンダ15によって第2の中空シャフト5−2およびステージ組立体が上昇および下降するようになっている。エアシリンダ15は、ベースプレート65に固定されたフレーム81に取り付けられている。基板Wを搬送するときは、基板Wはエアシリンダ15により搬送位置まで上昇し、基板Wを研磨するときは、基板Wはエアシリンダ15により研磨位置まで下降するようになっている。ハウジング71の搬送口71aは、搬送位置と同じ高さに設けられている。
【0055】
回転保持機構3は、液体供給部83および薬液供給部84をさらに備えている。液体供給部83からは、研磨液および洗浄液としての純水が保持ステージ4上の基板Wに供給され、薬液供給部84からは、薬液が保持ステージ4上の基板Wに供給されるように構成されている。これら液体供給部83および薬液供給部84は、スイング機構によって、保持ステージ4と一体にノッチ部を中心として所定の角度だけ回転するようになっている。
【0056】
基板Wの搬送位置には、基板Wに形成されているノッチ部を検出するノッチサーチユニット82が設けられている。図7に示すように、ノッチサーチユニット82は、図示しないアクチュエータにより、ノッチサーチ位置と退避位置との間を移動するように構成されている。ノッチサーチユニット82によりノッチ部が検出されると、ノッチ部が研磨ヘッドモジュール70A,70Bの方を向くように保持ステージ4がモータM5によって回転するようになっている。
【0057】
図7に示すように、2つの研磨ヘッドモジュール70A,70Bは、基板Wのノッチ部を中心として対称に配置されている。これらの研磨ヘッドモジュール70A,70Bは同一の構成を有しているので、以下、研磨ヘッドモジュール70Aについてのみ説明する。
【0058】
研磨ヘッドモジュール70Aは、研磨テープ75を基板Wのノッチ部に摺接させる研磨ヘッド90Aと、研磨ヘッド90Aに研磨テープ75を供給する供給リール24と、基板Wの研磨に使用された研磨テープ75を回収する回収リール25とを備えている。供給リール24と回収リール25は、基板Wの径方向において研磨ヘッド90Aの外側に配置されている。供給リール24および回収リール25にはカップリング27を介してモータM2がそれぞれ連結されている。それぞれのモータM2は、所定の回転方向に一定のトルクをかけ、研磨テープ75に所定のテンションをかけることができるようになっている。テープ供給回収機構は、供給リール24、回収リール25、カップリング27、モータM2などから構成される。
【0059】
研磨ヘッド90Aは、研磨テープ75を供給リール24から回収リール25へ送るテープ送り機構42を備えている。研磨ヘッド90Aは、オシレーション機構95Aを介してチルト機構96Aに連結されている。図8に示すように、研磨ヘッド90Aは、研磨テープ75と基板Wとの接触箇所を中心としてチルト機構96Aにより所定の角度で回転(傾斜)する。オシレーション機構95Aは、研磨ヘッド90A全体を振動(オシレーション)させて研磨テープ75を基板Wのノッチ部に摺接させるものである。研磨ヘッド90Aのオシレーション方向は、基板Wに接触している研磨テープ75の長手方向、すなわち、基板Wの接線方向に対して垂直な方向である。オシレーション機構95Aとしては、クランク軸またはカムなどの回転要素と、この回転要素の回転を直線運動に変換する直動要素とを組み合わせた公知の機構を用いることができる。このオシレーション機構95Aは、チルト機構96Aにより研磨ヘッド90Aと一体に傾動する。チルト機構96Aとしては、サーボモータなどを用いることができる。
【0060】
研磨ヘッドモジュール70AはX軸移動機構およびY軸移動機構を介してベースプレート65に設置されている。X軸移動機構は、図9に示すように、保持ステージ4上の基板Wの中心とノッチ部とを結ぶ線に対して直交する方向に延びるX軸レール106と、X軸レール106にスライド自在に取り付けられたX軸ガイド108とを有している。Y軸移動機構は、X軸レール106に対して直交する方向に延びるY軸レール107と、Y軸レール107にスライド自在に取り付けられたY軸ガイド109とを有している。X軸レール106はベースプレート65に固定されており、X軸ガイド108は連結プレート110を介してY軸レール107に固定されている。Y軸ガイド109は研磨ヘッドモジュール70Aに固定されている。なお、X軸およびY軸は、水平面内で互いに直交する仮想的な移動軸である。
【0061】
2つの研磨ヘッドモジュール70A,70BはX軸方向に沿って配列されており、互いに平行に配置されている。これら研磨ヘッドモジュール70A,70Bは1本の連結シャフト111を介してX軸エアシリンダ(X軸アクチュエータ)113に連結されている。X軸エアシリンダ113はベースプレート65に固定されている。このX軸エアシリンダ113によって、2つの研磨ヘッドモジュール70A,70Bは同期してX軸方向に移動される。研磨ヘッドモジュール70A,70Bには、Y軸エアシリンダ(Y軸アクチュエータ)114がそれぞれ連結されており、各Y軸エアシリンダ114は連結プレート110に固定されている。このY軸エアシリンダ114によって、2つの研磨ヘッドモジュール70A,70Bは互いに独立してY軸方向に移動される。
【0062】
このような構成により、2つの研磨ヘッドモジュール70A,70Bは、回転保持機構3に保持された基板Wと平行な面内で移動することができ、かつ研磨ヘッドモジュール70A,70Bの各研磨ヘッド90A,90Bは互いに独立して基板Wのノッチ部に近接および離間することが可能となっている。また、研磨ヘッドモジュール70A,70Bは同期してX軸方向に移動するので、研磨ヘッドモジュール70A,70Bの切り替えの時間を短縮することができる。
【0063】
研磨装置の基板処理は、図7に示す動作制御部69に記憶されている動作レシピに従って行われる。この動作レシピは、研磨ヘッドの動作を定める研磨ヘッドレシピを含んでいる。図10は研磨ヘッドレシピを作成するためのテーブルである。この研磨ヘッドレシピは、図5に示す研磨ヘッドレシピと基本的に同様であるが、パラメータとして研磨ヘッドのオシレーション速度をさらに含んでいる。すなわち、図10に示すように、ノッチ部研磨用の研磨ヘッドレシピを構成するパラメータとして、研磨圧力(研磨ヘッドが研磨テープを基板に押圧する力[N])、研磨テープの送り速度[mm/min]、研磨ヘッドのチルト速度[min−1]、研磨ヘッドのオシレーション速度、一定角度研磨の角度[度]およびその研磨時間[秒]、連続研磨のチルト角度範囲[度]およびその研磨時間[秒]、往復研磨のチルト角度範囲[度]および往復回数が含まれる。研磨ヘッドのオシレーション速度は、上述したオシレーション機構により、研磨ヘッドがオシレーションする速度である。
【0064】
研磨装置の動作レシピは、研磨ヘッドレシピに加え、基板のスイング動作を定めるステージレシピをさらに含んでいる。基板のスイング動作は、上述したスイング機構によって行われる。図11は、ステージレシピを作成するためのテーブルである。図11に示すように、ステージレシピを構成するパラメータとしては、一定角度動作、連続動作、および往復動作を決定するためのパラメータが含まれる。一定角度動作のパラメータには、ツイスト角度[度]が含まれる。この一定角度動作とは、基板をノッチ部を中心として水平面内で所定のツイスト角度だけ回転させ、その角度を保つことである。ツイスト角度とは、基板の径方向と研磨ヘッドとのなす角度である。
【0065】
連続動作のパラメータには、スイング角度範囲[度]およびスイング速度[min−1]が含まれる。往復動作のパラメータには、スイング角度範囲[度]、スイング速度[min−1]、およびスイング動作の往復回数が含まれる。連続動作および往復動作とは、上述した連続研磨および往復研磨と同様に、基板をノッチ部を中心として所定のスインク角度範囲で回転(スイング)させることである。スイング角度範囲は、回転保持機構3上の基板がノッチ部を中心としてスイングする角度範囲である。スイング速度は、ノッチ部を中心とした基板の水平面内での回転速度である。スイング動作の往復回数は、0.5刻みで設定することができる。
【0066】
図12は、ノッチ研磨装置全体の動作を決定する動作レシピである。研磨装置の動作レシピは、基板への液体供給に関するパラメータのほかに、上述した研磨ヘッドレシピおよびステージレシピから構成されている。これらのパラメータ、研磨ヘッドレシピ、およびステージレシピは、時間軸に沿って配列された動作シーケンスブロックに入力される。
【0067】
2つの研磨ヘッド90A,90Bのそれぞれに関連付けられた動作シーケンスブロックには、上述のように生成された研磨ヘッドレシピが入力される。すなわち、それぞれの研磨ヘッド90A,90Bには研磨ヘッドレシピが割り振られ、各研磨ヘッド90A,90Bは、関連付けられた研磨ヘッドレシピに従って動作する。図12に示す例では、同一の研磨ヘッドレシピ1が2つの研磨ヘッド90A,90Bにそれぞれ割り振られている。
【0068】
研磨ヘッドレシピとステージレシピとの組み合わせにより、様々な研磨を行うことができる。例えば、研磨ヘッドの一定角度研磨とスイング機構の往復動作との組み合わせにより、図13(a)および図13(b)に示すような研磨が実施できる。図13(a)はノッチ部を示す平面図であり、図13(b)はノッチ部の研磨工程の一例を示す側面図である。図13(b)に示すように、ステップ1では、研磨ヘッドをチルト角度A1に保ちつつ、基板を一回スイングさせ、ステップ2では、研磨ヘッドをチルト角度A2に保ちつつ、基板を一回スイングさせ、ステップ3では、研磨ヘッドをチルト角度A3に保ちつつ、基板を一回スイングさせる。
【0069】
図14(a)はノッチ部を示す平面図であり、図14(b)はノッチ部の研磨工程の他の例を示す側面図である。この例では、ステップ1では、基板をツイスト角度A1に保ちつつ、研磨ヘッドを一回傾動(往復)させ、ステップ2では、基板をツイスト角度A2に保ちつつ、研磨ヘッドを一回傾動(往復)させ、ステップ3では、基板をツイスト角度A3に保ちつつ、研磨ヘッドを一回傾動(往復)させ、ステップ4では、基板をツイスト角度A4に保ちつつ、研磨ヘッドを一回傾動(往復)させ、ステップ5では、基板をツイスト角度A5に保ちつつ、研磨ヘッドを一回傾動(往復)させる。図13(b)および図14(b)に示す研磨方法によれば、研磨テープをノッチ部に均一に接触させることができるので、均一な研磨が実現される。
【0070】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。
【符号の説明】
【0071】
1A〜1D 研磨ヘッド組立体
2A〜2D テープ供給回収機構
3 回転保持機構
4 保持ステージ
5,5−1,5−2 中空シャフト
6 ボールスプライン軸受
7 連通ライン
8 ロータリジョイント
9 真空ライン
10 窒素ガス供給ライン
12 ケーシング
14 ケーシング
15 エアシリンダ
18 ラジアル軸受
20 隔壁
21 研磨室
23 研磨テープ
24 供給リール
25 回収リール
27 カップリング
30A〜30D 研磨ヘッド
41 加圧機構
42 テープ送り機構
60 アーム
61 移動台
62 ガイド
63 レール
65 ベースプレート
66 連結板
67 リニアアクチュエータ
68 ジョイント
69 動作制御部
70A,70B 研磨ヘッドモジュール
71 ハウジング
72,73 シャッター
75 研磨テープ
76 ロータリジョイント
77 ロータリボールスプライン軸受
78 ケーシング
80 アーム
81 フレーム
82 ノッチサーチユニット
90A,90B 研磨ヘッド
106 X軸レール
107 Y軸レール
108 X軸ガイド
109 Y軸ガイド
110 連結プレート
111 連結シャフト
113 X軸エアシリンダ
114 Y軸エアシリンダ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨テープを用いて基板の周縁部を研磨する複数の研磨ヘッドと前記複数の研磨ヘッドの動作を制御する動作制御部とを備えた研磨装置の動作レシピを生成する方法であって、
研磨ヘッドの動作を決定する複数のパラメータを前記動作制御部に記憶し、
前記複数のパラメータから構成される少なくとも1つの研磨ヘッドレシピを前記動作制御部内に生成し、
前記複数の研磨ヘッドを前記研磨ヘッドレシピに関連付けることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記複数の研磨ヘッドを前記研磨ヘッドレシピに関連付ける工程は、前記複数の研磨ヘッドに関連付けて設けられた動作シーケンスブロックに前記研磨ヘッドレシピを割り振る工程であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
研磨テープを用いて基板のベベル部を研磨する研磨ヘッドと、前記研磨ヘッドを前記基板の表面に対して傾動させるチルト機構と、前記研磨ヘッドおよび前記チルト機構の動作を制御する動作制御部とを備えた研磨装置の動作レシピを生成する方法であって、
前記研磨ヘッドが傾動する角度範囲を特定するパラメータを前記動作制御部に記憶し、
前記研磨ヘッドが前記角度範囲に亘って傾動する回数を特定するパラメータを前記動作制御部に記憶する工程を有することを特徴とする方法。
【請求項4】
前記2つのパラメータを含む研磨ヘッドレシピを前記動作制御部内に生成し、
前記研磨装置の動作シーケンスブロックに前記研磨ヘッドレシピを入力する工程をさらに有することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
研磨テープを用いて基板のノッチ部を研磨する研磨ヘッドと、前記研磨ヘッドを前記基板の表面に対して傾動させるチルト機構と、前記基板を前記ノッチ部を中心として水平面内でスイングさせるスイング機構と、前記研磨ヘッド、前記チルト機構、および前記スイング機構の動作を制御する動作制御部とを備えた研磨装置の動作レシピを生成する方法であって、
前記基板の表面に対する前記研磨ヘッドのチルト角度を特定する第1のパラメータを前記動作制御部に記憶し、
前記スイング機構により前記基板をスイングさせる回数を特定する第2のパラメータを前記動作制御部に記憶する工程を有することを特徴とする方法。
【請求項6】
前記第1のパラメータを含む研磨ヘッドレシピを前記動作制御部内に生成し、
前記第2のパラメータを含むステージレシピを前記動作制御部内に生成し、
前記研磨装置の動作シーケンスブロックに前記研磨ヘッドレシピおよび前記ステージレシピを入力する工程をさらに有することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
研磨テープを用いて基板のノッチ部を研磨する研磨ヘッドと、前記研磨ヘッドを前記基板の表面に対して傾動させるチルト機構と、前記基板を前記ノッチ部を中心として水平面内でスイングさせるスイング機構と、前記研磨ヘッド、前記チルト機構、および前記スイング機構の動作を制御する動作制御部とを備えた研磨装置の動作レシピを生成する方法であって、
前記基板の径方向と前記研磨ヘッドとがなす角度を特定する第1のパラメータを前記動作制御部に記憶し、
前記研磨ヘッドが傾動する角度範囲を特定する第2のパラメータを前記動作制御部に記憶し、
前記研磨ヘッドが前記角度範囲に亘って傾動する回数を特定する第3のパラメータを前記動作制御部に記憶する工程を有することを特徴とする方法。
【請求項8】
前記第1のパラメータを含むステージレシピを前記動作制御部内に生成し、
前記第2のパラメータおよび前記第3のパラメータを含む研磨ヘッドレシピを前記動作制御部内に生成し、
前記研磨装置の動作シーケンスブロックに前記研磨ヘッドレシピおよび前記ステージレシピを入力する工程をさらに有することを特徴とする請求項7に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−260140(P2010−260140A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113277(P2009−113277)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】