説明

砥石車のツルーイング方法および装置

【課題】ツルーイングロールと砥石車との接触を高感度に検出できるようにする。
【解決手段】支持剛性を制御可能な制御軸受35,36にツルーイングロール30を取付けたツルア軸34を非接触で回転可能に支持し、ツルーイングロールに砥石車25を接触させ、ツルーイングロールと砥石車との接触によるツルア軸の変位に基づいてツルーイングロールと砥石車とが接触した位置を検出し、ツルーイングロールと砥石車とが接触した位置を基準にして、ツルーイングロールによって砥石車をツルーイングする。また、制御軸受によるツルア軸の支持剛性を、ツルーイングロールと砥石車の接触検出時には小さく、砥石車のツルーイング時には大きくするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツルーイングロールと砥石車との接触を高感度に検出できるようにした砥石車のツルーイング方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に研削盤においては、工作物を予め定められた加工本数研削する毎に、ツルーイング工具によって砥石車の研削面をツルーイングするようになっている。ところで、例えばCBN等の硬質砥粒からなる砥石車を備えた研削盤においては、熱変位等によるツルーイング工具と砥石車との相対位置変化に係わらず、数ミクロンの精度で砥石車に対するツルーイング工具の切込み量を安定的に制御する必要があるため、接触検出機能を用いて砥石車とツルーイングロールの位置関係を把握するようになっている。
【0003】
接触検出は各種の方法で実施されており、その1つの方法として、特許文献1に記載されているように、砥石車をドレッシングするロータリドレッサを砥石車に接触させ、接触に伴って発生するAE波をAEセンサにより検出して、接触時の砥石車とロータリドレッサとの相対位置関係を求めるものである。また、他の方法として、特許文献2に記載されているように、テーブル側にツルーイング工具と一定の位置関係に設けられた検知ピンに砥石車を接触させ、接触に伴って発生するAE波をAEセンサにより検出して、接触時の砥石車とツルーイング工具との相対位置関係を検出するとともに、検知ピンに接触して位置検出するプローブを支持した測定ヘッドを備えたタッチセンサ(50)を砥石台側に旋回可能に設け、このタッチセンサによって検知ピンのピン長を測定して検知ピンの摩耗量を求め、砥石車とツルーイング工具との相対位置関係を補正するようにしたものである。
【特許文献1】特開平5−131364号公報(段落0013、図1、図2)
【特許文献2】特開平9−70755号公報(段落0019,0020、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたものにおいては、ロータリドレッサと砥石車とが接触した際に発生するAE波をAEセンサによって検出するものであるので、AE信号自体のレベルを高く取ることができず、このために、ノイズの影響を受けやすく、高感度な接触検出ができない問題がある。また、特許文献2に記載されたものにおいては、検知ピンと砥石車とが接触した際に発生するAE波をAEセンサによって検出するものであるので、上記したと同様な理由から、高感度な接触検出ができない問題があり、加えて、検知ピンのピン長を測定するために大掛かりな旋回機構をもったプローブ式のタッチセンサが必要であるため、装置のコストがアップするとともに、旋回機構を有する構成であるために測定精度にバラツキを生ずる問題があった。
【0005】
本発明は、上記した従来の不具合を解消するためになされたもので、ツルーイングロールと砥石車との接触を高感度に検出できるようにした砥石車のツルーイング方法および装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明に係る砥石車のツルーイング方法の構成上の特徴は、支持剛性を制御可能な制御軸受にツルーイングロールを取付けたツルア軸を非接触で回転可能に支持し、前記ツルーイングロールに砥石車を接触させ、前記ツルーイングロールと砥石車との接触による前記ツルア軸の変位に基づいて前記ツルーイングロールと砥石車との接触を検出し、前記ツルーイングロールと砥石車とが接触した位置を基準にして、前記ツルーイングロールによって砥石車をツルーイングするようにし、前記制御軸受による前記ツルア軸の支持剛性を、前記ツルーイングロールと砥石車との接触検出時には小さく、前記砥石車のツルーイング時には大きくするようにしたことである。
【0007】
請求項2に記載の発明に係る砥石車のツルーイング方法の構成上の特徴は、 請求項1において、前記制御軸受は、磁気軸受により構成されていることである。
【0008】
請求項3に記載の発明に係る砥石車のツルーイング装置の構成上の特徴は、 支持剛性を制御可能な制御軸受と、該制御軸受に非接触で回転可能に支持されたツルア軸と、前記制御軸受に対して相対移動可能な砥石台に回転可能に支持された砥石車と、前記ツルア軸に取付けられ前記砥石車をツルーイングするツルーイングロールと、該ツルーイングロールと前記砥石車との接触による前記ツルア軸の変位に基づいて前記ツルーイングロールと砥石車とが接触した位置を検出する変位検出手段と、前記ツルーイングロールと砥石車とが接触した位置を基準にして前記ツルーイングロールによって砥石車をツルーイングするツルーイング制御手段と、前記ツルーイングロールと前記砥石車との接触検出時には前記制御軸受による前記ツルア軸の支持剛性を小さくし、前記ツルーイングロールによる前記砥石車のツルーイング時には前記制御軸受による前記ツルア軸の支持剛性を大きくするように前記制御軸受を制御する制御軸受制御手段とによって構成したことである。
【0009】
請求項4に記載の発明に係る砥石車のツルーイング装置の構成上の特徴は、請求項3において、前記制御軸受は、前記ツルア軸をラジアル方向に支持するラジアル制御軸受と、前記ツルア軸をアキシャル方向に支持するアキシャル軸受とから構成され、前記ツルーイングロールと前記砥石車との接触検出時には、前記ラジアル制御軸受による支持剛性を小さくしたことである。
【0010】
請求項5に記載の発明に係る砥石車のツルーイング装置の構成上の特徴は、請求項4において、前記ラジアル制御軸受は、軸方向に離間した2組のラジアル制御軸受からなり、前記ツルーイングロールと前記砥石車との接触検出時には、前記ツルーイングロール側に配置された先端側のラジアル制御軸受による支持剛性を小さくしたことである。
【0011】
請求項6に記載の発明に係る砥石車のツルーイング装置の構成上の特徴は、請求項4において、前記ラジアル制御軸受は、前記ツルア軸を前後方向にラジアル支持する前後ラジアル制御軸受および上下方向にラジアル支持する上下ラジアル制御軸受からなり、前記ツルーイングロールと前記砥石車との接触検出時には、前記前後ラジアル制御軸受による支持剛性を小さくしたことである。
【0012】
請求項7に記載の発明に係る砥石車のツルーイング装置の構成上の特徴は、請求項3ないし請求項6のいずれか1項において、前記制御軸受は、磁気軸受により構成されていることである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、砥石車に接触するツルーイングロールを取付けたツルア軸を制御軸受に非接触で回転可能に支持させ、ツルーイングロールと砥石車との接触によるツルア軸の変位に基づいてツルーイングロールと砥石車との接触を検出するようにし、制御軸受によるツルア軸の支持剛性を、ツルーイングロールと砥石車の接触検出時には小さく、砥石車のツルーイング時には大きくするようにしたので、ツルーイングロールと砥石車との接触によってツルア軸を容易に変位させることができ、このツルア軸の変位に基づいてツルーイングロールと砥石車との接触位置を的確に把握することができるようになる。しかも、従来のようなAEセンサやプローブ式タッチセンサを用いることなくツルーイングロールと砥石車との接触を検出できるので、高感度で高精度な接触検出を行うことができる。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、制御軸受は、磁気軸受により構成されているので、磁気軸受によってツルア軸の支持剛性を変化させることにより、請求項1と同様な効果を奏することができる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、ツルア軸に取付けられたツルーイングロールと砥石車との接触によるツルア軸の変位に基づいてツルーイングロールと砥石車とが接触した位置を検出する変位検出手段と、ツルーイングロールと砥石車とが接触した位置を基準にしてツルーイングロールによって砥石車をツルーイングするツルーイング制御手段と、ツルーイングロールと砥石車との接触検出時には制御軸受によるツルア軸の支持剛性を小さくし、ツルーイングロールによる砥石車のツルーイング時には制御軸受によるツルア軸の支持剛性を大きくするように制御軸受を制御する制御軸受制御手段とによって構成したので、請求項1と同様に、ツルーイングロールと砥石車との接触位置を的確に把握することができるとともに、ツルーイングロールと砥石車との接触を高感度かつ高精度に検出することができる砥石車のツルーイング装置を容易に得ることができる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、制御軸受は、ツルア軸をラジアル方向に支持するラジアル制御軸受と、ツルア軸をアキシャル方向に支持するアキシャル軸受とから構成され、ツルーイングロールと砥石車との接触検出時には、ラジアル制御軸受による支持剛性を小さくしたので、ツルーイングロールと砥石車との接触検出時には、ツルーイングロールと砥石車との接触によってツルア軸をラジアル方向に容易に変位させることができ、これによって、砥石車に傷等を付けることなく、接触を高感度に検出することができる。しかも、ツルーイングロールによる砥石車のツルーイング時には、ツルア軸を高剛性に支持できるので、高精度なツルーイングを実施することができる。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、ラジアル制御軸受は、軸方向に離間した2組のラジアル制御軸受からなり、ツルーイングロールと砥石車との接触検出時には、ツルーイングロール側に配置された先端側のラジアル制御軸受による支持剛性を小さくしたので、ツルーイングロールと砥石車との接触によってツルーイングロール側に位置するツルア軸の先端側のみラジアル方向に容易に変位させることができる。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、ラジアル制御軸受は、ツルア軸を前後方向にラジアル支持する前後ラジアル制御軸受および上下方向にラジアル支持する上下ラジアル制御軸受からなり、ツルーイングロールと砥石車との接触検出時には、前後ラジアル制御軸受による支持剛性を小さくしたので、ツルーイングロールと砥石車との接触によってツルア軸を砥石台の進退方向に平行な前後方向にのみ確実に変位させることができる。
【0019】
請求項7に係る発明によれば、制御軸受は、磁気軸受により構成されているので、磁気軸受を制御する制御手段によってツルア軸の支持剛性を変化させることにより、請求項3ないし請求項6と同様な効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、砥石車のツルーイング装置を備えた研削盤10の全体を示すもので、研削盤10のベッド11上には、テーブル12が水平なZ軸方向に移動可能に案内支持され、サーボモータ13によりボールねじを介してZ軸方向に移動される。テーブル12上には主軸台15と心押台16とが対向して配置され、主軸台15と心押台16との間に工作物WがZ軸方向と平行な軸線の回りに回転可能にセンタ支持されるようになっている。主軸台15には、主軸駆動モータ17によって回転駆動される主軸18が回転可能に軸承され、工作物Wは主軸18に駆動金具等を介して連結され、回転駆動される。
【0021】
また、ベッド11上には、砥石台20がテーブル12の移動方向と直交する水平なX軸方向に移動可能に支持され、サーボモータ21によりボールねじを介してX軸方向に移動される。砥石台20には砥石軸22が主軸18と平行な軸線の回りに回転可能に軸承され、砥石駆動モータ23によりベルト伝動機構を介して回転駆動される。砥石軸22の先端には、外周にZ軸に平行な研削面25aを有する砥石車25が取付けられている。
【0022】
テーブル12上には、砥石車25をツルーイングするツルーイングロール30を回転可能に備えたツルーイングユニット31が配設されている。ツルーイングユニット31は、図2に示すように、テーブル12に取付けられたハウジング33と、ハウジング33に砥石車25と平行な水平軸線の回りに回転可能に配置されたツルア軸34と、ハウジング33内に設けられ、ツルア軸34を非接触でラジアル方向に回転可能に支持する軸方向に離間した2組の制御軸受としての制御型ラジアル磁気軸受35、36と、ツルア軸34を非接触でアキシャル方向に支持する制御軸受としての制御型アキシャル磁気軸受37と、ツルア軸34を回転駆動するビルトインモータ38とによって構成されている。ビルトインモータ38は、ツルア軸34上に配設されたロータ部38aと、ロータ38aを取巻くようにハウジング33内に配設されたステータ部38bとを備えている。ステータ部38bはモータ制御手段40に接続され、モータ制御手段40によってビルトインモータ38の回転速度を制御するようになっている。
【0023】
ツルア軸34の先端部には、砥石車25をツルーイングするツルーイングロール30が取付けられ、このツルーイングロール30は砥石車25より薄幅に構成されている。
【0024】
2組のラジアル磁気軸受35、36は、ツルア軸34をラジアル方向に支持するもので、ツルーイングロール30側に配置された先端側のラジアル磁気軸受35は、ツルア軸34を互いに直交する2方向のラジアル方向、すなわち、X軸方向に平行な前後方向とこれに直交する上下方向の両側から挟むように配置された2対のラジアル電磁石35a、35bを備えている。ツルーイングロール30と反対側に配置された後端側のラジアル磁気軸受36も、同様の2対のラジアル電磁石36a、36bを備えている。これらラジアル電磁石35a、35b、36a、36bは、ツルア軸34を磁力により吸引してこれをラジアル方向に非接触で支持するものであり、制御軸受制御手段としての磁気軸受制御手段43に接続されている。
【0025】
先端側のラジアル磁気軸受35の近傍には、ツルア軸34の互いに直交するラジアル方向(前後方向および上下方向)の変位を検出するための2つのラジアル変位センサ45a、45bがハウジング33に配設されている。他方のラジアル磁気軸受36の近傍には、ツルア軸34の互いに直交するラジアル方向(前後方向および上下方向)の変位を検出するための2つのラジアル変位センサ46a、46bがハウジング33に配設されている。これらのラジアル変位センサ45a、45b、46a、46bは、変位検出手段47に接続されている。
【0026】
アキシャル磁気軸受37は、ツルア軸34をアキシャル方向(水平方向)に支持するもので、ツルア軸34の後部に設けたフランジ部34aを左右両側から挟むように配置された一対のアキシャル電磁石37a、37bを備えている。アキシャル電磁石37a、37bは、フランジ部34aを磁力により吸引してツルア軸34をアキシャル方向に非接触で支持するものであり、磁気軸受制御手段43に接続されている。ハウジング33には、ツルア軸34のアキシャル方向の変位を検出するアキシャル変位センサ48が配設されている。アキシャル変位センサ48は、変位検出手段47に接続されている。
【0027】
変位検出手段47は、ラジアル変位センサ45a、45b、46a、46bおよびアキシャル変位センサ48を駆動し、ラジアル変位センサ45a、45b、46a、46bの出力に基づいてツルア軸34のラジアル方向の変位を検出するとともに、アキシャル変位センサ48の出力に基づいてツルア軸34のアキシャル方向の変位を検出するものである。
【0028】
また、磁気軸受制御手段43は、変位検出手段47の出力に基づいて、ツルア軸34の位置が所定の目標位置となるようにラジアル電磁石35a、35b、36a、36bおよびアキシャル電磁石37a、37bを制御するものである。かかる磁気軸受制御手段43には、ツルア軸34を異なる支持剛性で支持できるように、ツルア軸34の支持剛性を切替える支持剛性制御手段50が備えられている。
【0029】
支持剛性制御手段50は、ツルーイングロール30と砥石車25の接触検出時には、ラジアル磁気軸受35、36によるツルア軸34の支持剛性を小さくし、砥石車25のツルーイング時には、ラジアル磁気軸受35、36によるツルア軸34の支持剛性を大きくするものである。すなわち、ツルーイングロール30と砥石車25の接触検出時には、ツルア軸34に作用する接触負荷によってツルア軸34を容易に変位できるようにするとともに、砥石車25のツルーイング時には、ツルア軸34に作用するツルーイング負荷に対してツルア軸34がほとんど変位しないように、ツルア軸34の変位に比例してラジアル磁気軸受35、36を制御する制御特性を変更するようにしている。具体的には、砥石車25のツルーイング時には、ラジアル磁気軸受35、36を比例および積分(PI)制御することによってツルア軸34の支持剛性を高め、ツルーイングロール30に作用する負荷によってツルア軸34がラジアル方向に変位するのを抑制するようにしており、また、ツルーイングロール30と砥石車25の接触検出時には、ラジアル磁気軸受35、36を比例(P)制御に切替えることによってツルア軸34の支持剛性を低下させ、ツルーイングロール30に作用する負荷に対してツルア軸34を変位しやすくするようにしている。
【0030】
なお、2組のラジアル磁気軸受35、36のうち、支持剛性を低下させるラジアル磁気軸受は、ツルーイングロール30側に配置された先端側のラジアル磁気軸受35だけでもよく、このようにすることにより、ツルーイングロール30と砥石車25との接触によってツルーイングロール30側に位置されたツルア軸34の先端側のみラジアル方向に容易に変位させることができるようになる。
【0031】
あるいはまた、2組のラジアル磁気軸受35、36のツルア軸34を前後方向(X軸方向)の両側から挟むように配置された一対のラジアル磁気軸受(ラジアル電磁石35a)およびツルア軸34を上下方向の両側から挟むように配置された一対のラジアル磁気軸受(ラジアル電磁石35b)のうち、支持剛性を低下させるラジアル磁気軸受は、ツルーイングロール30と砥石車25の接触検出によってツルア軸34に接触負荷が作用する方向の前後方向に配置されたラジアル磁気軸受だけであってもよく、このようにすることにより、ツルーイングロール30と砥石車25との接触によってツルア軸34を砥石台20の進退方向に平行な前後方向にのみ確実に変位させることができるようになる。
【0032】
研削盤10を制御するCNC装置51は、図1に示すように、中央処理装置52と、種々の制御値およびプログラムを記憶するメモリ53と、インターフェィス54、55から主に構成されている。メモリ53には、研削加工プログラム、ツルーイングプログラム、接触検出位置データ、ツルーイング切込み量データ、ならびに砥石径データ、砥石幅データ等、研削加工サイクルおよびツルーイングサイクルを実行するのに必要な種々のデータが記憶されている。CNC装置51には、入力装置56を介して種々のデータが入力されるようになっており、入力装置56は、データの入力等を行うためのキーボード、データの表示を行うCRT等の表示装置を備えている。
【0033】
CNC装置51は、X軸モータ駆動ユニット57を介して砥石台20をX軸方向へ移動させるX軸サーボモータ21に駆動信号を与えるとともに、Z軸モータ駆動ユニット58を介してテーブル12をZ軸方向へ移動させるZ軸サーボモータ13に駆動信号を与えるようになっている。
【0034】
また、CNC装置51は、砥石車25による工作物Wの加工本数をカウントし、加工本数が予め定められた値に達するとツルーイング動作の開始を指令する。かかるツルーイング動作は、図4に示す接触検出サイクルと、図5に示すツルーイングサイクルからなり、以下、接触検出サイクルの処理を、図3に示す動作説明図と、図4に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0035】
まず、CNC装置51の中央処理装置52は、ツルーイング動作の開始指令に基づいて、図4に示すステップ102〜ステップ112の接触検出サイクルを順次実行する。ステップ102では、Z軸およびX軸サーボモータ13、21を駆動してテーブル12および砥石台20をZ軸方向およびX軸方向に移動制御し、砥石車25を図3(A)の実線で示すように、研削面25aがツルーイングユニット31に支持されたツルーイングロール30に対応する接触検出開始位置に位置決めする。次いで、ステップ104において、磁気軸受制御手段43の支持剛性制御手段50によって、ラジアル磁気軸受35、36の支持剛性を「低」側に切替える。ステップ106においては、ツルーイングロール30および砥石車25を回転駆動するとともに、X軸サーボモータ21を駆動して砥石台20をテーブル12側に向かって前進させ、砥石車25をツルーイングロール30に対して図3(A)の矢印方向に相対移動させる。
【0036】
次いで、ステップ108においては、砥石車25とツルーイングロール30との接触によるツルア軸34の前後方向(X軸方向)の変位を検出するラジアル変位センサ45a、46aより変位信号が出力されたか否かが判断され、ラジアル変位センサ45a、46aより変位信号が出力されていない場合(判断結果がN0の場合)には、ステップ106に戻ってX軸サーボモータ21による砥石台20の前進動作が続行される。砥石車25の研削面25aが図3(A)の2点鎖線で示すように、ツルーイングロール30に接触すると、その接触負荷によってツルア軸34がX軸方向に変位し、これがラジアル変位センサ45a、46aによって検出され、変位信号が変位検出手段47に出力される。これにより、ステップ108における判断結果がYESになり、このときの砥石台20のX軸方向の位置X1がステップ110においてメモリ52の所定の記憶エリアに記憶されるとともに、砥石台20の前進が停止される。次いで、ステップ112で砥石台20がX軸サーボモータ21によって所定量(XA)後退される。
【0037】
この際、砥石台20がラジアル変位センサ45a、46aより変位信号が出力された時点(記憶位置X1)よりオーバランして停止しても、接触検出精度には何ら影響ない。
【0038】
続いて、CNC装置51の中央処理装置52は、図5に示すステップ202〜ステップ216のツルーイングサイクルを順次実行する。まず、ステップ202では、ツルーイングのトラバース回数をカウントするカウンタNの内容が0にクリヤされる。ステップ204においては、テーブル12がZ軸サーボモータ13によって所定量移動され、次いでステップ206において、X軸サーボモータ21によって砥石台20が上記した後退量(XA)にツルーイング切込み量ΔXだけ加算した距離だけ前進される。これによって図3(B)に示すように、砥石車25の研削面25aがツルーイングロール30の外周面の側方に対応するツルーイング開始位置に位置決めされる。すなわち、砥石台20は、前述したステップ110において記憶されたツルーイングロール30と砥石車25との接触位置X1に、ツルーイング切込み量ΔXだけ切込まれたX軸方向位置(X1+ΔX)に位置決めされる。厳密には、ラジアル変位センサ45a、46aが変位信号を出力するまでに、ツルア軸34が1〜2μm程度変位することが必要であるため、実際にツルーイングロール30が砥石車25に切込まれる量は、上記したツルーイング切込み量ΔXより、ラジアル変位センサ45a、46aが変位信号を出力するに要した1〜2μm減算した値となる。
【0039】
次にステップ208において、ラジアル磁気軸受35、36の支持剛性が「高」側に切替えられ、ステップ210では、テーブル12がZ軸サーボモータ21によって所定量トラバースされ、砥石車25に対してツルーイングロール30が1往復され、ツルーイングロール30によって砥石車25の研削面25aが所定の切込み量でツルーイングされる。この場合には、ラジアル磁気軸受35、36の支持剛性が高くなっているため、ツルーイング抵抗によってツルア軸34がほとんど変位することがなく、ツルア軸34の支持は安定したものとなり、砥石車25の研削面25aが高精度にツルーイングされる。
【0040】
1回目のツルーイングが終了すると、ステップ212において、トラバース回数カウント用のカウンタNに1が加算され、次いで、ステップ214において、カウンタNの内容が設定回数NAに達したか否かが判断され、未だ設定回数に達していない場合(判断結果がN0の場合)には、ステップ216に移行して、砥石車25が図3(B)に示す位置でツルーイングロール30に対してさらに切込み量ΔXだけ切込まれ、次いで上記したステップ210に戻って、上記したと同様にテーブル12が再びトラバースされ、これによって砥石車25の研削面25aが切込み量ΔXでツルーイングされる。
【0041】
このようにして、ツルーイングロール30により砥石車25の研削面25aが設定回数だけツルーイングされて、定められたツルーイングサイクルが完了すると、ステップ214における判断結果がYESになり、砥石台20は原位置に復帰され、プログラムはリターンされる。上記したステップ202〜216からなる機能手段によって、請求項におけるツルーイング制御手段を構成している。
【0042】
なお、特にCBN等の超砥粒からなる砥石車25においては、砥石車25に対するツルーイングロール30の切込み量を大きくできない制約があるため、順次切込みを付与しながらツルーイングを数回(例えば2〜3回)繰り返すことにより、砥石車25の研削面25aの目直しおよび整形を的確に行えるようになるが、かかるツルーイング回数は特に限定されるものではなく、例えば、砥石車25の研削面25aのダメージが小さな状態でツルーイングを行う場合には、1回の切込みでツルーイングを完了することも可能である。
【0043】
上記した第1の実施の形態によれば、ツルーイングロール30と砥石車25との接触検出時には、磁気軸受35、36によるツルア軸34の支持剛性を小さくし、ツルーイングロール30による砥石車25のツルーイング時には、磁気軸受35,36によるツルア軸34の支持剛性を大きくするようにしたので、ツルーイングロールと砥石車との接触検出時には、ツルア軸34に作用する接触負荷によってツルア軸34を容易に変位でき、砥石車25に傷等を付けることなく、接触を高感度に検出することができるようになる。また、ツルーイングロール30による砥石車25のツルーイング時には、ツルア軸34に作用するツルーイング負荷に対してツルア軸34をほとんど変位しないようにできるので、ツルア軸34を高剛性に支持でき、高精度なツルーイングを実施することができるようになる。
【0044】
図6は、本発明の第2の実施の形態を示すもので、第1の実施の形態と異なる点は、外周面125aと端面125bに研削面をもつ砥石車125を備えた研削盤において、砥石車125の外周面125aと端面125bをそれぞれツルーイングロール30によってツルーイングするようにしたものである。かかる第2の実施の形態においても、図1および図2で示した研削盤10およびツルーイングユニット31をそのまま利用できる。なお、砥石車125の外周面125aをツルーイングするツルーイング動作については、第1の実施の形態と同じであるので、以下においては、主に砥石車125の端面125bをツルーイングするツルーイング動作について説明する。
【0045】
このような砥石車125をツルーイングする場合には、磁気軸受制御手段43の支持剛性制御手段50によって、ラジアル磁気軸受35、36およびアキシャル磁気軸受37の支持剛性を順次低くして、まず、上記した第1の実施の形態で述べたと同様に、砥石車125の外周面125aとツルーイングロール30の外周面とが接触した砥石台20のX軸方向の位置X1を検出する。 次いで、図6(A)に示すように、テーブル12のZ軸方向の移動により、砥石車125の端面125bをツルーイングロール30の端面に接触させ、そのときのツルア軸34のアキシャル方向の変位をアキシャル変位センサ48により検出し、このアキシャル変位センサ48の変位信号に基づいて、砥石車125の端面125bとツルーイングロール30の端面とが接触したテーブル12のZ軸方向の位置Z1を検出し、その位置Z1を記憶する。
【0046】
しかる後、磁気軸受制御手段43の支持剛性制御手段50によって、ラジアル磁気軸受35、36およびアキシャル磁気軸受37の支持剛性をそれぞれ高く制御し、その状態で、第1の実施の形態で述べたように、上記したX軸方向位置X1を基準にして砥石車125の外周面125aをツルーイングロール30にてツルーイングする。次いで、図6(B)に示すように、テーブル12を上記したZ軸方向位置Z1にツルーイング切込み量ΔZだけ切込んだZ軸方向位置(Z1+ΔZ)に位置決めし、その状態で、砥石台20をX軸方向に前進して砥石車125の端面125bをツルーイングロール30にてツルーイングする。
【0047】
なお、端面にのみ研削面を有するカップ形などの砥石車に本発明を適用することも可能であり、この場合のツルーイングユニット31は、アキシャル磁気軸受37の支持剛性のみ、ツルーイングロール30と砥石車25との接触検出時と、ツルーイングロール30による砥石車25のツルーイング時とで切替えるようにすればよい。
【0048】
上記した実施の形態においては、ツルーイングロール30をテーブル12上に設置した例について述べたが、ツルーイングロール30は、砥石台20に対してZ軸方向およびX軸方向に相対移動可能な、例えば主軸台15や心押台16に設置してもよい。
【0049】
また、上記した実施の形態においては、ツルア軸34を支持するラジアル磁気軸受35、36の支持剛性を、通常時は、比例および積分(PI)制御してツルア軸34の支持剛性を高め、ツルーイングロール30と砥石車25との接触検出時には、ラジアル磁気軸受35,36を比例(P)制御に切替えてツルア軸34の支持剛性を低下させるように制御する支持剛性制御手段50について述べたが、支持剛性制御手段50はそのような制御構成に限定されることなく、ツルア軸34の変位に比例してラジアル磁気軸受35、36を制御する制御特性を変更して支持剛性を変更できるあらゆる構成を採り得るものである。
【0050】
また、上記した実施の形態においては、軸受として磁気軸受35、36、37を用いた例で説明したが、これに限定されるものではなく、ツルア軸34の変位を検出して、その検出信号を基に軸位置を制御する機能、すなわち、支持剛性を任意に変更可能な制御軸受であればよい。したがって、例えば、流体軸受を用いることによっても達成できる。
【0051】
なお、図4および図5に示すフローチャートは、本発明を実施するうえで好適な一例を示すものにすぎず、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の態様を採り得るものであることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す砥石車のツルーイング装置を備えた研削盤の平面図である。
【図2】図1におけるツルーイング装置を支持する磁気軸受を示す断面図である。
【図3】ツルーイング動作を示す動作説明図である。
【図4】接触検出サイクルを示すフローチャートである。
【図5】ツルーイングサイクルを示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施の形態を示す砥石車のツルーイング装置を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
12・・・テーブル、13、21・・・サーボモータ、15・・・主軸台、16・・・心押台、20・・・砥石台、25、125・・・砥石車、25a、125a、125b・・・研削面、30・・・ツルーイングロール、31・・・ツルーイングユニット、34・・・ツルア軸、35、36・・・ラジアル制御軸受(ラジアル磁気軸受)、37・・・アキシャル制御軸受(アキシャル磁気軸受)、38・・・ビルトインモータ、40・・・モータ制御手段、43・・・制御軸受制御手段(磁気軸受制御手段)、45a、45b、46a、46b・・・ラジアル変位センサ、47・・・変位検出手段、48・・・アキシャル変位センサ、50・・・支持剛性制御手段、51・・・CNC装置、52・・・中央処理装置、53・・・メモリ、W・・・工作物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持剛性を制御可能な制御軸受にツルーイングロールを取付けたツルア軸を非接触で回転可能に支持し、前記ツルーイングロールに砥石車を接触させ、前記ツルーイングロールと砥石車との接触による前記ツルア軸の変位に基づいて前記ツルーイングロールと砥石車との接触を検出し、前記ツルーイングロールと砥石車とが接触した位置を基準にして、前記ツルーイングロールによって砥石車をツルーイングするようにし、前記制御軸受による前記ツルア軸の支持剛性を、前記ツルーイングロールと砥石車との接触検出時には小さく、前記砥石車のツルーイング時には大きくするようにしたことを特徴とする砥石車のツルーイング方法。
【請求項2】
請求項1において、前記制御軸受は、磁気軸受により構成されていることを特徴とする砥石車のツルーイング方法。
【請求項3】
支持剛性を制御可能な制御軸受と、該制御軸受に非接触で回転可能に支持されたツルア軸と、前記制御軸受に対して相対移動可能な砥石台に回転可能に支持された砥石車と、前記ツルア軸に取付けられ前記砥石車をツルーイングするツルーイングロールと、該ツルーイングロールと前記砥石車との接触による前記ツルア軸の変位に基づいて前記ツルーイングロールと砥石車とが接触した位置を検出する変位検出手段と、前記ツルーイングロールと砥石車とが接触した位置を基準にして前記ツルーイングロールによって砥石車をツルーイングするツルーイング制御手段と、前記ツルーイングロールと前記砥石車との接触検出時には前記制御軸受による前記ツルア軸の支持剛性を小さくし、前記ツルーイングロールによる前記砥石車のツルーイング時には前記制御軸受による前記ツルア軸の支持剛性を大きくするように前記制御軸受を制御する制御軸受制御手段とによって構成したことを特徴とする砥石車のツルーイング装置。
【請求項4】
請求項3において、前記制御軸受は、前記ツルア軸をラジアル方向に支持するラジアル制御軸受と、前記ツルア軸をアキシャル方向に支持するアキシャル軸受とから構成され、前記ツルーイングロールと前記砥石車との接触検出時には、前記ラジアル制御軸受による支持剛性を小さくしたことを特徴とする砥石車のツルーイング装置。
【請求項5】
請求項4において、前記ラジアル制御軸受は、軸方向に離間した2組のラジアル制御軸受からなり、前記ツルーイングロールと前記砥石車との接触検出時には、前記ツルーイングロール側に配置された先端側のラジアル制御軸受による支持剛性を小さくしたことを特徴とする砥石車のツルーイング装置。
【請求項6】
請求項4において、前記ラジアル制御軸受は、前記ツルア軸を前後方向にラジアル支持する前後ラジアル制御軸受および上下方向にラジアル支持する上下ラジアル制御軸受からなり、前記ツルーイングロールと前記砥石車との接触検出時には、前記前後ラジアル制御軸受による支持剛性を小さくしたことを特徴とする砥石車のツルーイング装置。
【請求項7】
請求項3ないし請求項6のいずれか1項において、前記制御軸受は、磁気軸受により構成されていることを特徴とする砥石車のツルーイング装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−260809(P2007−260809A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−86915(P2006−86915)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】