説明

移植機

【課題】左右の苗植付爪で同時に土面に植え付けられる多条の苗列の条間距離を変更するに適したものとした移植機を提供する。
【解決手段】多数のセル成形苗120を有する苗トレイ20を載置する苗載台21と、該苗トレイ20から取り出したセル成形苗120を受けて畝に植え付ける苗植付爪22を有する複数の苗植付ユニット24とを具備した多条型の移植機において、苗植付ユニット24と該苗植付ユニット24を取り付ける駆動ケースとの間に、苗植付ユニット24の取付角度を変更可能とするスペーサ50を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗トレイから苗植付爪によって取り出された一株分の玉葱等の野菜苗をそのまま直接的に圃場に植え付けるようにした移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
左右一対の苗植付爪と、これら苗植付爪を特定軌跡に沿って上下に往復作動させるものとした植付け駆動機構とを具備した移植部、及び、前記左右一対の苗植付爪の上方である搬送位置まで苗を順次に搬送し落下させるものとした苗供給部を備え、前記苗植付爪のそれぞれが前記特定軌跡の下位置でその苗を土面に挿し込み、このように挿し込まれた苗の左右側の土面を覆土輪で鎮圧するように作動する移植機は存在する。(特許文献1参照)
【0003】
この移植機は、左右の苗植付爪で土面に同時に植え付けられる二条の苗列の条間距離を適当に変更しうるものとなされているのであり、そのための二つの機構が開示されている。その一つ(前者機構)は苗植付爪を左右移動させるためのネジ送り機構を組み付けたものとなされており、また他の一つ(後者機構)は左右一対の苗植付爪を二種類用意し、条間距離の変更に際して一方の一対の苗植付爪から他方の一対の苗植付爪に交換するものとなされている。
【特許文献1】特開2002−84827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来の移植機における前者機構は、苗植付爪と一緒に左右移動される部品が多くて構造が複雑であり、また後者機構は左右一対の苗植付爪を二種類用意しなければならず、しかも一方の一対の苗植付爪が実装されないためにこの実装されていない方の一対の苗植付爪を紛失しないように管理する必要があって面倒である。
また、玉葱等の場合、植え付ける際の条間距離は一般的には20cm程度を標準としているが、地方によっては環境などの相違から24cm程度になされることもあり、地域によって植付条の間隔が異なることがある。
【0005】
本発明は、これらの何れかにも簡易に対応できるように、左右の苗植付爪で同時に土面に植え付けられる多条の苗列の条間距離を変更するに適したものとした移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、多数のセル成形苗を有する苗トレイを載置する苗載台と、該苗トレイから取り出したセル成形苗を受けて畝に植え付ける苗植付爪を有する複数の苗植付ユニットとを具備した多条型の移植機において、苗植付ユニットと該苗植付ユニットを取り付ける駆動ケースとの間に、苗植付ユニットの取付角度を変更可能とするスペーサを配置したものである。
請求項2においては、前記スペーサのすくなくとも一側の側面の角度を鉛直面に対して傾斜させたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0009】
請求項1の如く構成したので、角度の異なったスペーサに交換することにより植付部の傾きが変えられるため、少ない変換部品で様々な条間をとることができる。
請求項2の如く構成したので、取付角度を変更するためのスペーサは、簡単に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係る移植機の全体的な構成を示した側面図、図2は苗植付爪部の側面図、図3は苗植付ユニットの駆動説明図、図4は苗植付爪の駆動説明図、図5はロータリケースの断面図、図6はロータリケース内部の説明図、図7は揺動カム部の説明図、図8は苗植付爪部の側面説明図、図9は苗植付爪部の平面説明図、図10は苗押出部材の説明図、図11はスペーサを介した苗植付ユニットの背面説明図、図12は一側面に傾斜面を設けたスペーサの斜視図である。
【0011】
図1に示すように、移植機においては、走行部1の前下部に走向輪となる前車輪2が支承され、後下部に後車輪3が支承されている。走行部1の前部上にエンジン4が搭載され、該エンジン4の後方にミッションケース5が配設されて、エンジン4の出力軸からミッションケース5を介して前車輪2及び後車輪3に動力が伝達され、前車輪2及び後車輪3が駆動するように構成されている。
【0012】
走行部1の中央上には運転操作部6が設けられ、該運転操作部6に操向ハンドル7と座席8とが配設されている。また、走行部1の前部に配置されたボンネット9の両側には予備苗台10が配設され、走行部1の後方に植付部11が配設されている。
植付部11はその前部に設けた支持フレーム13で走行部1の後端部とトップリング14及びロアリンク15を介して連結され、座席8の下方に配設された昇降シリンダ16の伸縮動作により昇降可能とされている。
【0013】
植付部11には、図2に示すように、多数のセル成形苗120を有する苗トレイ20を載置する苗載台21と、苗植付爪22を有する複数の苗植付ユニット24とが備えられ、走行部1の走行時に該苗植付ユニット24の苗植付爪22により苗トレイ20からセル成形苗120が取り出されて圃場の畝上面に一定間隔ごとに植え付けが行われるように構成されている。苗トレイ20は碁盤の目状に多数の凹部(ポット)を有し、用土が充填された各ポットでセル成形苗120を育てるものである。
【0014】
苗載台21は進行方向に対して前記苗植付ユニット24の前方に配置され、該苗載台21上に複数、本実施例では二つの苗トレイ20が左右に並設されている。図3に示すように、苗載台21の下方にはエンジン4からの動力を植付部11に伝達するための伝動ケース25が配設され、該伝動ケース25から左右方向に突出される軸26の一側が横送り軸26aとされている。そして、横送り軸26aと苗載台21とが連結され、該横送り軸26aの回転駆動により苗載台21、つまり苗トレイ20がガイドローラにガイドされながら左右方向に往復移動するように構成されている。
【0015】
前記伝動ケース25から突出される軸26の他側にはカム26b・26cが設けられ、該カム26b又はカム26cと軸26と軸27に設けられたカム27aとが当接可能とされている。該軸27は苗載台21の下部に軸26と平行に軸架されており、その左右両側に備えられたワンウェイクラッチ28を介して左右の苗トレイ20に対し備えられた縦送り軸29と連動連結されている。
【0016】
前記縦送り軸29の左右両側にはスプロケット30が設けられ、該スプロケット30に巻回されたチェーンに前記苗トレイ20が係止されて、縦送り軸29の回転駆動により苗トレイ20が苗載台21上を下方に移動するように構成されている。そして、縦送り軸29が間欠駆動とされて、苗トレイ20が右端又は左端に至ると縦送り軸29が苗トレイ20の一ポット分下方へ移動され、苗トレイ20を左右方向へ往復移動させるための駆動系と下方へ移動させるための駆動系の一本化が図られる。これにより、苗トレイ20を移動させる構造が簡単な構成とされ、部品点数が低減可能とされている。
【0017】
そして、左右の各苗トレイ20に対して二つの苗植付ユニット24が左右平行に並設され、これらの苗植付ユニット24により一つの苗トレイ20からそれぞれセル成形苗120が取り出されて、同時に二株のセル成形苗120の植え付けが行われるように構成されている。よって、本実施例では二つの苗トレイ20から四つの苗植付ユニット24によりそれぞれセル成形苗120が取り出され、一度に四株のセル成形苗120が圃場の畝上面に植え付けられる。
【0018】
図2に示すように、前記苗植付ユニット24には二つの苗植付爪22・22が備えられ、これらの苗植付爪22により一つの苗トレイ20でセル成形苗120の取り出し及び植付けが連続して行われるように構成されている。すなわち、苗植付ユニット24において、二組の苗植付爪22・22が同一植付軌跡H上に180度位相を異ならせて位置するように設けられ、これらの苗植付爪22により一つの植付軌跡H中で二回のセル成形苗120の取り出し及び植付けが行われて、二株のセル成形苗120が圃場に移植されるように構成されて、植付作業の高速化が図られている。
【0019】
さらに、前記苗植付ユニット24には、二つの苗植付爪22に加えて、第一ロータリケース31と、該第一ロータリケース31の側方に配置される第二ロータリケース32と、各第二ロータリケース32の側方に配置される爪ケース33と、該爪ケース33に支持される苗植付爪22・22を首振り動作させるための首振り用溝カム34(図6参照)と、苗植付爪22・22の左右の爪体73・74(図9参照)を開閉する開閉カム35と、左右の爪体73・74で挟持されるセル成形苗120を押し出すための苗押出部材80を動作させるための苗押出カム36とが備えられている。
【0020】
苗植付ユニット24は、前記支持フレーム13に固設された植付フレーム17から後方に延出される植付駆動部であるチェーンケース37の後部に鉛直方向に対し左右内側に傾斜するよう支持されて、左右一対の苗植付ユニット24が一つの苗トレイ20に対し後面視「ハ」字状に配置されている。これらの苗植付ユニット24を支持するチェーンケース37はその前部で植付フレーム17の左右両側と左右中央にステー38を介して固定され、所定間隔で左右平行に配置されている。すなわち、内側で左右に隣接する二つの苗植付ユニット24は一つのチェーンケース37の左右両側にそれぞれ支持されるように構成されている。
【0021】
また、各チェーンケース37前部を貫通するように前記伝動ケース25から伝動軸40が軸26と平行に左右方向に突出され、伝動軸40に各チェーンケース37内でスプロケット41が固設されている。そして、該スプロケット41とチェーンケース37後部内に支持された入力軸42に固設されたスプロケット43とにチェーン44が巻回されて、伝動ケース25からの動力がチェーン44を介して入力軸42より苗植付ユニット24に伝達されるように構成されている。
【0022】
図4から図7に示すように、前記チェーンケース37の後部においては、その内側側面に受軸45が所定角度で固定されるとともに、前記入力軸42が内側側方に突出され、該入力軸42の先端に外筒軸46がスプライン嵌合されている。外筒軸46はその中央で受軸45に回転自在に支持され、その先端で第一ロータリケース31の中央に固定されている。
【0023】
第一ロータリケース31内において、前記外筒軸46上にサンギヤ47が遊嵌され、該サンギヤ47の一端が受軸45に噛合されている。また、第一ロータリケース31の入力軸42の両側に中間軸48が支持され、該中間軸48上に遊嵌されたアイドルギヤ49が前記サンギヤ47に噛合されている。
【0024】
さらに、第一ロータリケース31の両端に出力軸51が回転自在に支持され、該出力軸51に固設されたプラネタリギヤ52が前記アイドルギヤ49に噛合されている。こうして、プラネタリギヤ52がサンギヤ47とアイドルギヤ49を介して連動され、サンギヤ47とアイドルギヤ49とが同一歯数に、プラネタリギヤ52とサンギヤ47(アイドルギヤ49)とのギヤ比が1:3とされて、第一ロータリケース31が一方向に一回転するときに、出力軸51が逆方向に二回転するように構成されている。
【0025】
また、第一ロータリケース31の左右一側の長手方向両端に第二ロータリケース32が配置され、該第二ロータリケース32の一端に前記出力軸51が固定されている。出力軸51には、爪出力軸53が第一ロータリケース31から第二ロータリケース32にわたって回転自在に内挿され、該爪出力軸53の第一ロータリケース31側にギヤ53aが形成されている。そして、図7に示すように、該ギヤ53aに揺動アーム54の一端側に形成された扇形状の部分ギヤ55が噛合されている。
【0026】
一方、揺動アーム54の他端側にローラ56が回転自在に支持され、該揺動アーム54がその中間部で第一ロータリケース31に支点軸57により揺動自在に支持されている。そして、ローラ56が前記受軸45に入力軸42を略中心として形成されたエンドレス状の溝カム34内に嵌合されて、該ローラ56により揺動アーム54が案内されながら揺動するように構成されている。
【0027】
また、前記爪出力軸53の第二ロータリケース32側にはサンギヤ59が固設され、該サンギヤ59に第二ロータリケース32の略中央に支持された中間軸60に遊嵌された第一アイドルギヤ61が噛合されている。そして更に、第二ロータリケース32の爪出力軸53と反対側に出力軸62が回動自在に支持され、該出力軸62の一端に形成されたプラネタリギヤである出力ギヤ63に前記第一アイドルギヤ61が噛合されている。
【0028】
さらに、第二ロータリケース32の左右一側に爪ケース33が配置され、該爪ケース33の一端に前記出力軸62が固定されている。出力軸62にはカム軸64が第二ロータリケース32から爪ケース33にわたって回転自在に内挿され、該カム軸64の第二ロータリケース32側にプラネタリギヤである出力ギヤ65が設けられている。
【0029】
そして、出力ギヤ65に前記第一アイドルギヤ61と一体的に構成された第二アイドルギヤ66が噛合されて、出力軸62の出力ギヤ63及びカム軸64の出力ギヤ65が爪出力軸53のサンギヤ59とそれぞれ第一及び第二アイドルギヤ61・66を介して連動され、爪出力軸53の回転駆動により出力軸62とカム軸64とが同時に回転駆動されるように構成されている。
【0030】
前記サンギヤ59と第一及び第二アイドルギヤ61・66とカム軸64の出力ギヤ65とが同一歯数に、第一アイドルギヤ61と出力軸62の出力ギヤ63とのギヤ比が2:3とされて、出力軸62の出力ギヤ63とカム軸64の出力ギヤ65の回転差が一回転となるように設定されている。そして、出力軸62に連結される苗植付爪22の揺動時にカム軸64が苗植付爪22に対し常にほぼ一定回転され、無理のない溝カム34形状でカム軸64上の開閉カム35及び苗押出カム36がスムーズに回転されるように構成されている。
【0031】
こうして、第一ロータリケース31が入力軸42を中心として図2における反時計回り方向に一回転されるときに、その両端に支持された第二ロータリケース32が図2における時計回り方向に二回転され、苗植付爪22の支点部となるカム軸64によって図2におけるKに示すような略三角形状の植付基本軌跡Kが描かれる。
【0032】
図8,図9に示すように、カム軸64の爪ケース33側には板状の開閉カム35と苗押出カム36とが平行に固設されている。爪ケース33の一側には、カム軸64に対し直角方向に左右の開閉軸71・72が回動可能に支持され、爪ケース33より突出されている。そして、これらの開閉軸71・72の突出部に苗植付爪22の左右の爪体73・74がそれぞれ固定され、爪ケース33内側の基部に左右の開閉板75・76が左右中央側に突出するように固設され、その先端が爪ケース33の中央で当接するように構成されている。
【0033】
また、爪ケース33において、左右の開閉板75・76の後方に凹部33aが形成され、該凹部33a内に開用バネ77が収納されている。該凹部33aは開閉板75・76側が解放するように配置されて、開用バネ77の一側が左開閉板75に当接されている。つまり、左開閉板75と爪ケース33との間に開用バネ77が介設され、該開用バネ77の付勢力により開閉板75・76が押されて爪体73・74が開く方向に付勢されている。右開閉板76の左開閉板75と反対側には開閉用操作部76aが第二ロータリケース32側に突出するように形成されている。
【0034】
そして、前記開閉用操作部76aとカム軸64上の開閉カム35との間に中間部材78が配置されている。中間部材78は爪ケース33に支持された中間軸79に揺動可能に支持され、その一側が開閉用操作部76aに当接され、他側が開閉カム35の外周面に当接されている。開閉カム35には大径部35aと小径部35bとが形成され、該開閉カム35の回動により中間部材78が揺動されて、小径部35bに中間部材78の一側が当接されたときに開用バネ77の付勢力により爪体73・74が開くように構成されている。
【0035】
そして、カム軸64の回転駆動により開閉カム35が回転されて、該開閉カム35の大径部に中間部材78が当接されると、中間部材78が爪体73・74側へ揺動される。該中間部材78の揺動により右開閉板76の開閉用操作部も爪体73・74側へ押されて、右開閉板76が左開閉板75とともに開用バネ77の付勢力に抗してカム軸64側に回動され、右開閉軸72に固設された右爪体74が図9における反時計回り方向に、左開閉軸71に固設された左爪体73が図9における時計回り方向に回動される。このようにして苗植付爪22が閉じられた状態とされ、左右の爪体73・74でセル成形苗120が挟持可能とされている。
【0036】
前述のように苗植付爪22が閉じられた状態から、カム軸64の回転に伴って開閉カム35が更に回転され、該開閉カム35の小径部35bに中間部材78が当接されると、左開閉板75が開用バネ77の付勢力により常時開方向に付勢されていることから、左開閉板75が右開閉板76とともに開用バネ77に押されて爪体73・74側へ回動され、左開閉軸71に固設された左爪体73が図9における反時計回り方向に、右開閉軸72に固設された右爪体74が図9における時計回り方向に回動される。このようにして苗植付爪22が開かれた状態とされ、左右の爪体73・74により挟持されたセル成形苗120が開放可能とされている。
【0037】
また、図10に示すように、左右の爪体73・74により挟持したセル成形苗120を圃場の畝上面に植付ける際に押出すための苗押出部材80が爪ケース33から左右の爪体73・74の間にわたって挿入されている。苗押出部材80は二枚のゴム或いは樹脂材などの弾性板81と一本の取付棒82とから構成されており、左右の弾性板81の先端側が爪体73・74の内側にそれぞれ摺接され、該弾性板81の基端側が爪ケース33内から突出される取付棒82の先端側に固定されて、平面視で「Y」字状に形成されている。そして、爪ケース33内において取付棒82がその中途部でガイド部材83により位置規制され、基端側で押出アーム85の先端側に回動可能に支持された軸86に枢支されている。
【0038】
押出アーム85は、その基端側で爪ケース33にカム軸64と平行に配置されたアーム軸87に回動可能に枢支され、カム軸64に対し左右の爪体73・74と反対側に配置されている。そして、押出アーム85と爪ケース33との間に弾性部材としてバネ88が介装されてアーム軸87上に外嵌され、該バネ88の付勢力により押出アーム85がアーム軸87を中心として左右の爪体73・74側へ回動するように付勢されている。
【0039】
また、前記押出アーム85の基端側に凸部85aがカム軸64側に突出するように形成され、前記カム軸64に固設された苗押出カム36の外周面に当接されている。苗押出カム36には大径部36aと小径部36bとが形成され、大径部36aに押出アーム85の凸部85aが当接されると、押出アーム85がバネ88の付勢力に抗して爪体73・74と反対側に回動されて、苗押出部材80が左右の爪体73・74に対し後退した位置に移動される。
【0040】
そして、カム軸64の回転に伴って苗押出カム36が更に回転され、該苗押出カム36の小径部36bに押出アーム85の凸部85aが当接されると、押出アーム85がバネ88に押されて爪体73・74側に回動されて、苗押出部材80が左右の爪体73・74に対し進出した位置に移動される。このとき、苗押出部材80の弾性板81がその先端側が左右爪体73・74の内面に沿って摺動するように移動されて、爪体73・74の内面に付着した土が落とされる。
【0041】
こうして、苗押出カム36の回転により押出アーム85を介して苗押出部材80が往復移動可能とされ、セル成形苗120が左右の爪体73・74に挟持される際には爪体73・73に対し後退した位置に移動され、左右の爪体73・74に挟持されたセル成形苗120が圃場の畝上面に植付ける際には爪体73・74に対し進出した位置にセル成形苗120を押出しながら移動されるように構成されている。
【0042】
さらに、図1に示すように、各苗植付ユニット24の後部下方にはそれぞれ左右一対の覆土輪90が設けられている。覆土輪90は苗植付ユニット24の苗植付爪22を中心として後面視で略「V」字状に傾斜して配置され、植付直後のセル成形苗120に覆土を行うように構成されている。
【0043】
次に本発明であるスペーサ50の実施例について、図11、図12を用いて説明する。
スペーサ50は、苗植付ユニット24を構成している第一ロータリケース31と、植付駆動ケースとなるチェーンケース37との間に挟持固定されている。前記チェーンケース37は背面視略矩形状で、底面は畝面と略平行に配置されている。スペーサ50は略円筒形または角柱状で中央に入力軸42を貫通させるための孔50aを開口し、その周囲に複数のボルト孔68を開口している。そして、軸心を左右方向とした場合の左右の側面のうち少なくとも一方の面は、傾斜した面としている。即ち、図12に示すように軸心に対して直角の面から角度θ傾斜した面50bを形成している。この一方の側面は、チェーンケース37の側面に固定され、他方の面は第一ロータリケース31の軸受45に固定される。このスペーサ50の一側または両側の面を傾斜させることにより、チェーンケース37に対して第一ロータリケース31は図11に示すように傾斜して取り付けることができる。なお、図5に示すように、入力軸42もスペーサ50の軸心に合わせて傾斜させるため、チェーンケース37の後部に横架した出力軸39と入力軸42の間にユニバーサルジョイント100などの継手が介装される。
そして、前記スペーサ50の大きさはチェーンケース37よりも略小さく、該スペーサ50の厚さについては、チェーンケース37の両側で同じ厚さとしているが異なる厚さとすることもできる。
【0044】
このように、二つの第一ロータリケース31・31が、チェーンケース37との間に二つのスペーサ50を挟んで取り付けることにより後面視逆「ハ」字状(図11)に配置することができ、前記角度θ及び厚さが異なるスペーサ50を予め交換品として用意しておくことで、適宜、植付部11の傾きが変えられ、苗取位置は変更されることなく、左右方向の植付条間の距離を変更することができ、野菜の種類や地域に合わせた植付間隔に設定することができて、精度良く条間を設定することができる。また、スペーサ50の厚さ又は角度θを変更することによっても条間を変更することが可能であり、このとき苗トレイ20の載置位置を、苗取位置の移動距離に合わせて変更することにより条間を変更して欠株等が生じることなく植え付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施例に係る移植機の全体的な構成を示した側面図。
【図2】苗植付爪部の側面図。
【図3】苗植付ユニットの駆動説明図。
【図4】苗植付爪の駆動説明図。
【図5】ロータリケースの断面図。
【図6】ロータリケース内部の説明図。
【図7】揺動カム部の説明図。
【図8】苗植付爪部の側面説明図。
【図9】苗植付爪部の平面説明図。
【図10】苗押出部材の説明図。
【図11】スペーサを介した苗植付ユニットの背面説明図。
【図12】一側面に傾斜面を設けたスペーサの斜視図。
【符号の説明】
【0046】
10 予備苗台
11 植付部
20 苗トレイ
21 苗載台
22 苗植付爪
24 苗植付ユニット
31 第一ロータリケース
32 第二ロータリケース
37 チェーンケース
50 スペーサ
100 ユニバーサルジョイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のセル成形苗を有する苗トレイを載置する苗載台と、該苗トレイから取り出したセル成形苗を受けて畝に植え付ける苗植付爪を有する複数の苗植付ユニットとを具備した多条型の移植機において、苗植付ユニットと該苗植付ユニットを取り付ける駆動ケースとの間に、苗植付ユニットの取付角度を変更可能とするスペーサを配置したことを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記スペーサのすくなくとも一側の側面の角度を鉛直面に対して傾斜させたことを特徴とする請求項1に記載の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−191902(P2006−191902A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−9336(P2005−9336)
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】