説明

空圧緩衝器

【課題】空圧緩衝器のチューニングを容易ならしめることである。
【解決手段】上記の目的を達成するため、本発明の課題解決手段における空圧緩衝器D1は、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されてシリンダ1内に二つの圧力室R1,R2を隔成するピストン2とを備え、シリンダ1外で二つの圧力室R1,R2を連通する通路3と、外部から通路3の途中に着脱自在とされるとともに通路3を通過する気体に抵抗を与える減衰バルブ4と、通路3へ気体を給排可能な気体給排孔5とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空圧緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空圧緩衝器としては、シリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入されたピストンと、シリンダにピストンを介して移動自在に挿通されるロッドとを備えて、作動流体を気体としたものが知られている。
【0003】
この空圧緩衝器では、ピストンに設けた伸側ポートと圧側ポートにそれぞれ減衰バルブを配しており、この減衰バルブで伸圧両側の減衰力を発揮するようにしている。なお、この空圧緩衝器では、特に、車両の車体と車軸との間といった振動入力が頻繁に行われる箇所にも適用可能とするため、ロッド外周とシール部材との摺動部を潤滑するようにしている。そのため、当該空圧緩衝器は、長期間に亘る継続使用によってピストン側室へ落下した潤滑油を、上方配置される貯油室へ循環させる通路を備えており、当該通路は通過流体に抵抗を与えるようになっており、空圧緩衝器の圧縮行程時には、当該通路も減衰力発生要素にもなっている。(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−349138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような従来の空圧緩衝器は、一度、気体が空圧緩衝器へ封入されると、空圧緩衝器内圧力をチューニングすることができず、ピストンに設けた減衰バルブのチューニングも容易に行うことができない。
【0005】
すなわち、空圧緩衝器内圧力や上記減衰バルブをチューニングする場合には、たとえば、ロッドを軸支しているヘッド部材をシリンダから取外す以外にはなく、チューニング後に、また、空圧緩衝器を製造時と同様の行程で組立てなければならず、作業が煩雑となって作業負担が大きく、作業に要する時間も長くなる。
【0006】
そこで、本発明は、上記した不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、空圧緩衝器のチューニングを容易ならしめることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の課題解決手段における空圧緩衝器は、シリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入されてシリンダ内に二つの圧力室を隔成するピストンとを備え、シリンダ外で二つの圧力室を連通する通路と、外部から通路の途中に着脱自在とされるとともに通路を通過する気体に抵抗を与える減衰バルブと、通路へ気体を給排可能な気体給排孔とを設けた。
【発明の効果】
【0008】
本発明の空圧緩衝器によれば、空圧緩衝器内圧力や上記減衰バルブのチューニングが非常に簡単となり、チューニング作業者の作業負担を軽減でき、作業時間も短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1は、一実施の形態における空圧緩衝器の概略縦断面図である。図2は、一実施の形態の一変形例における空圧緩衝器の概略縦断面図である。図3は、他の実施の形態における空圧緩衝器の概略縦断面図である。
【0010】
一実施の形態における空圧緩衝器D1は、図1に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されてシリンダ1内に二つの圧力室R1,R2を隔成するピストン2と、シリンダ1外で二つの圧力室R1,R2を連通する通路3と、外部から通路3の途中に着脱自在とされるとともに通路3を通過する気体に抵抗を与える減衰バルブ4と、通路3へ気体を給排可能な気体給排孔5とを備えて構成されている。
【0011】
以下、詳細に説明すると、シリンダ1は、筒状に形成され、その内部には、ピストン2が摺動自在に挿入されている。ピストン2は、シリンダ1内を図1中上方側の圧力室R1と下方の圧力室R2に区画しており、ピストン2の図1中上端には、ロッド7が連結されている。
【0012】
また、シリンダ1の上端は、環状のヘッド部材8が嵌合されており、ヘッド部材8は、内周に固定されるベアリング13を介してロッド7を摺動自在に軸支している。さらに、シリンダ1の下端には、筒状のバルブハウジング10が嵌合されており、バルブハウジング10の内部には減衰バルブ4が収容されている。
【0013】
そして、この空圧緩衝器D1の場合、シリンダ1を覆う外筒11を備えており、当該外筒11の下端は、シリンダ1の下端に嵌合するバルブハウジング10の外周に溶接等によって結合されている。また、シリンダ1の上端に嵌合するヘッド部材8は、外筒11内に収容され、その図1中上方に積層されてロッド7の外周と外筒11との間をシールするシール部材12とともに外筒11の上端開口端を加締めることによって外筒11に固定されている。このように構成することで、シリンダ1はヘッド部材8およびバルブハウジング10に挟持されて外筒11に径方向および軸方向に位置決められた状態で固定される。
【0014】
バルブハウジング10は、内部に連通される横孔10aと、横孔10aとシリンダ1と外筒11との間の隙間に臨む段部10bとを連通する縦孔10cと、下端開口部内周に設けた螺子部10dとを備えている。また、ヘッド部材8は、圧力室R1に臨む図1中下端からシリンダ1と外筒11との間の隙間に臨む段部8aとを連通する流路8bを備えている。したがって、圧力室R1と圧力室R2とは、上記したバルブハウジング10における内部、横孔10aおよび縦孔10c、シリンダ1と外筒11との間の隙間、ヘッド部材8の流路8bを介して連通されており、これらで圧力室R1と圧力室R2とをシリンダ1外で連通する通路3を形成している。なお、ヘッド部材8とシール部材12との間に潤滑油溜まりとしての空間を設けておき、シール部材12とロッド7との摺動部を潤滑するようにしてもよく、その際、圧力室R1と圧力室R2と潤滑油が充填される当該空間を介して連通させて、背景技術欄で説明した従来緩衝器のように潤滑油を圧力室R1と圧力室R2とを循環させるようにしてもよい。
【0015】
また、この実施の形態の場合、バルブハウジング10の内外を連通する気体給排孔5が設けられており、当該気体給排孔5を介して通路3へ気体を給排することができるようになっている。
【0016】
上記気体給排孔5内には、逆止弁6が設けられており、当該逆止弁6は、気体給排孔5の内周に設けた環状の弁座6aと、弁座6aより圧力室R2側に配置されて弁座6aに離着座する弁体6bと、弁体6bより圧力室R2側に配置されて弁体6bを弁座6a側へ向けて附勢するバネ6cとを備えて構成されている。この逆止弁6は、弁体6bが弁座6aに着座した状態では、気体給排孔5を遮断して通路3の外部への連通を断ち、弁体6bが弁座6aから後退すると、弁体6bの外周に設けた切欠6dを介して通路3を外部へと連通させる。また、弁体6bを気体給排孔5の内方へと押し込む力が、空圧緩衝器D1内の圧力とバネ6cによる弁体6bを外部側へ向けて押圧する力を上回らない限り、弁体6bは弁座6aに着座した状態に維持され、気体給排孔5を遮断するようになっている。
【0017】
そして、空圧緩衝器D1へ気体を供給する場合には、気体給排孔5の開口端を図示しないコンプレッサ等に接続して、弁体6bを気体供給圧或いは棒などで内方へと押し込んで弁座6aから離座させて通路3とコンプレッサ等とを連通状態にする事によって行うことができる。また、空圧緩衝器D1への気体供給が終了してコンプレッサ等を気体給排孔5の開口端から取外すと、弁体6bが圧力室R1,R2内の圧力とバネ6cとによって押圧され弁座6aに着座して通路3の外部への連通を断って空圧緩衝器D1内を気密状態に維持するようになっている。
【0018】
ちなみに、空圧緩衝器D1の使用時には当該気体給排孔5の開口端にプラグ23を螺着して、逆止弁6を保護するとともに、気体給排孔5からの気体漏洩を確実に阻止するようになっている。
【0019】
なお、本実施の形態にあっては、気体給排孔5に逆止弁6を設けて、気体の空圧緩衝器D1への給排を容易に行えるようになっているが、逆止弁6を省略して、プラグ23のみで気体給排孔5を密閉してもよく、さらに、逆止弁6の代わりに手動操作で気体給排孔5の開閉を行える開閉弁を設けるようにしてもよい。
【0020】
つづいて、バルブハウジング10に収容される減衰バルブ4は、バルブハウジング10の下端開口部内周に設けた螺子部10dに螺合してバルブハウジング10の下端開口端を閉塞する蓋14と、蓋14から起立される軸15と、軸15に図1中下から順に組み付けられる圧側リーフバルブ16、仕切部材17および伸側リーフバルブ18と、圧側リーフバルブ16、仕切部材17および伸側リーフバルブ18を軸15に固定するナット19とを備えて構成されている。
【0021】
詳しくは、蓋14は、外部からバルブハウジング10への取付および取外しが可能なように、下端に図示しない凹部等を備えており、同じく図示しないドライバ等の工具を上記凹部に挿入して蓋14を外部から回動操作することができるようになっている。したがって、この実施の形態の場合、減衰バルブ4は蓋14を回動操作することでバルブハウジング10に着脱可能とされている。
【0022】
仕切部材17は、空圧緩衝器D1が伸長する際に上方の圧力室R1から通路3を介して下方の圧力室R2へ向かう気体が通過する伸側ポート17aと、空圧緩衝器D1が収縮する際に下方の圧力室R2から通路3を介して上方の圧力室R1へ向かう気体が通過する圧側ポート17bとを備えており、バルブハウジング10の内周に収容されると、外周に設けたシールリング17cがバルブハウジング10の内周面に密着してバルブハウジング10内を上方の圧力室R1側と下方の圧力室R2側とに仕切るようになっている。すなわち、仕切部材17は、通路3を上方の圧力室R1側と下方の圧力室R2側とに仕切っている。
【0023】
また、圧側リーフバルブ16は、この場合、複数枚の環状のリーフを積層して構成した積層リーフバルブとして構成され、仕切部材17の図1中下端に積層されて圧側ポート17bの出口端を開閉するようになっており、圧力室R2から通路3を介して圧力室R1へ向かう気体の流れに抵抗を与えるとともに、圧力室R1から圧力室R2へ向かう気体の流れに対しては圧側ポート17bを閉じて逆止弁としても機能するようになっている。
【0024】
他方、伸側リーフバルブ18も複数枚の環状のリーフを積層して構成した積層リーフバルブとして構成され、仕切部材17の図1中上端に積層されて伸側ポート17aの出口端を開閉するようになっており、圧力室R1から通路3を介して圧力室R2へ向かう気体の流れに抵抗を与えるとともに、圧力室R2から圧力室R1へ向かう気体の流れに対しては伸側ポート17aを閉じて逆止弁としても機能するようになっている。
【0025】
そして、このように構成された減衰バルブ4は、空圧緩衝器D1の外部からバルブハウジング10内に収容することができ、蓋14をバルブハウジング10の螺子部10dに螺合することで、バルブハウジング10の外方側の開口端となる下端開口端を閉塞することができるとともに、減衰バルブ4をバルブハウジング10に固定および減衰バルブ4をバルブハウジング10から取外すことが可能となっている。
【0026】
なお、蓋14の外周にはシールリング20が装着され、バルブハウジング10の下端開口端を密閉して気体の漏洩を防止している。また、バルブハウジング10のシリンダ1への嵌合部位の外周には、シールリング21が装着され、バルブハウジング10とシリンダ1との間がシールされ、シリンダ1内とシリンダ1と外筒11との間の隙間とがバルブハウジング10内をショートカットして通じてしまうことが無いように配慮されるとともに、バルブハウジング10の外筒11への嵌合部位の外周にもシールリング22が装着されており、空圧緩衝器D1内からの気体の漏洩が阻止されている。
【0027】
このように構成された空圧緩衝器D1は、ピストン2が図1中上方へ移動して伸長する際には、気体が圧縮される圧力室R1から通路3を介して膨張する圧力室R2へ移動する。そして、この気体の流れに、バルブハウジング10内に収容された減衰バルブ4における伸側リーフバルブ18で抵抗を与えて、この空圧緩衝器D1は伸側減衰力を発生する。
【0028】
他方、ピストン2が図1中下方へ移動して収縮する際には、気体が圧縮される圧力室R2から通路3を介して膨張する圧力室R1へ移動する。そして、この気体の流れに、バルブハウジング10内に収容された減衰バルブ4における圧側リーフバルブ16で抵抗を与えて、この空圧緩衝器D1は圧側減衰力を発生する。
【0029】
空圧緩衝器D1は、上述のように作動するが、圧力室R1,R2内の圧力をチューニングするには、以下のようにする。
【0030】
まず、空圧緩衝器D1内の圧力を上昇させるには、気体給排孔5より気体を供給する。この場合には、上述したように、気体給排孔5の開口端にコンプレッサ等に接続して、弁体6bを気体供給圧や棒などで内方へと押し込んで弁座6aから離座させて通路3とコンプレッサ等とを連通状態にし、空圧緩衝器D1内の圧力が所望する圧力に達するまで気体を供給することになる。
【0031】
他方、空圧緩衝器D1内の圧力を下降させるには、気体給排孔5より気体を排出する。この場合には、気体給排孔5の開口端から棒状の工具等を挿入して弁体6bを内方へと押し込んで弁座6aから離座させて通路3と外部とを連通して、空圧緩衝器D1内の圧力が所望する圧力に達するまで気体を排出させることになる。
【0032】
このように、チューニング作業者は、空圧緩衝器D1を分解し、事後組立をすることなく、気体給排孔5を介して、空圧緩衝器D1内の圧力のチューニングを非常に簡単に行うことができる。
【0033】
さらに、空圧緩衝器D1における減衰バルブ4をチューニングするには、減衰バルブ4を外部から取外し可能であるので、空圧緩衝器D1の他所を分解する必要がなく、減衰バルブ4を取外してチューニングを終了することができる。
【0034】
減衰バルブ4のチューニングとしては、具体的には、たとえば、圧側リーフバルブ16あるいは伸側リーフバルブ18あるいはその両方のリーフの積層枚数の変更、リーフの板厚の変更、リーフの材質の変更、初期撓み量の変更等によって行うことができる。なお、上記したリーフバルブ16,18を仕切部材17へ向けて附勢するバネを設けた減衰バルブの場合には、当該バネの附勢力を変更することによって行うことができる。
【0035】
このように、本実施の形態の空圧緩衝器D1にあっては、チューニング作業者は、減衰バルブ4のチューニングに際し、空圧緩衝器D1の他所を分解することなく、減衰バルブ4に外部からアクセスして、減衰バルブ4を取外して各種設定の変更を行うことができるから、空圧緩衝器D1の減衰バルブ4のチューニングを非常に簡単に行うことができる。
【0036】
なお、減衰バルブ4を空圧緩衝器D1から取外すと、気体が空圧緩衝器D1から漏れることになるが、通路3を外部へと連通することが可能な気体給排孔5を備えているので、減衰バルブ4を空圧緩衝器D1に装着した後に気体給排孔5から簡単に気体を空圧緩衝器D1に充填することができ、この点でも減衰バルブ4のチューニングが容易となる。
【0037】
したがって、この空圧緩衝器D1によれば、空圧緩衝器内圧力や上記減衰バルブのチューニングが非常に簡単となり、チューニング作業者の作業負担を軽減でき、作業時間も短縮することができる。
また、シリンダ1の端部に設けられ内部が通路に連通されるとともに当該内部に減衰バルブ4を収容する中空なバルブハウジング10を設け、減衰バルブ4が外部からバルブハウジング10に収容および取外し可能とされるので、減衰バルブ4のみを取外し可能となって、チューニング作業がより一層簡単となる。
【0038】
さらに、減衰バルブ4が、仕切部材17を備えてバルブハウジング10の内部を一方の圧力室R1側と他方の圧力室R2側と仕切る仕切部材17に連結されるとともにバルブハウジング10の開口部に螺着されて開口部を閉塞する蓋14を備えているので、減衰バルブ4をバルブハウジング10に収容する作業を行えば、自動的に空圧緩衝器D1内が密閉状態となるとともに、蓋14の外部操作で減衰バルブ4をバルブハウジング10に着脱可能となるので、チューニング作業がこの点でも非常に簡単となる。
【0039】
また、シリンダ1とシリンダ1を覆う外筒11との間の隙間で通路3を形成しているので、通路3の形成が簡単となるとともに通路3を保護することができる。
【0040】
なお、図2に示す一実施の形態の一変形例の空圧緩衝器D2のように、バルブハウジング24は、シリンダ1の側方に減衰バルブ4を収容する筒部24aを備えていてもよい。
【0041】
このバルブハウジング24は、シリンダ1の外部側方に配置される有底筒状の筒部24aと、シリンダ1と外筒11の端部に嵌合固定される基部24bと、筒部24aと基部24bとを接続する接続部24cと、筒部24a内と圧力室R2とを連通する連通路24dと、筒部24a内とシリンダ1と外筒11との間の隙間とを連通する連通路24eとを備えており、筒部24a内に収容される減衰バルブ4の仕切部材17によって筒部24a内は圧力室R1側と圧力室R2側とに仕切られるとともに、蓋14によって筒部24aの図2中上端開口部が密閉されることになる。
【0042】
なお、このバルブハウジング24にあっては、筒部24aの底部側方から開口して連通路24dに連通される気体給排孔25を備えており、当該気体給排孔25には逆止弁6が設けられている。
【0043】
したがって、この一変形例における空圧緩衝器D2にあっても、チューニング作業者は、空圧緩衝器D2を分解し、事後組立をすることなく、気体給排孔25を介して、空圧緩衝器D2内の圧力のチューニングを非常に簡単に行うことができる。
【0044】
さらに、チューニング作業者は、減衰バルブ4のチューニングに際し、空圧緩衝器D2の他所を分解することなく、減衰バルブ4に外部からアクセスして、減衰バルブ4を取外して各種設定の変更を行うことができるから、空圧緩衝器D2の減衰バルブ4のチューニングを非常に簡単に行うことができる。
【0045】
すなわち、この空圧緩衝器D2にあっても、空圧緩衝器内圧力や上記減衰バルブのチューニングが非常に簡単となり、チューニング作業者の作業負担を軽減でき、作業時間も短縮することができる。
また、この一変形例の空圧緩衝器D2にあっては、シリンダ1の側方に設けた筒部24aに減衰バルブ4を収容するようになっているので、空圧緩衝器D2を使用箇所に設置したままチューニングすることができる。具体的にはたとえば、空圧緩衝器D2を車両の車体と車軸との間に介装したまま減衰バルブ4のチューニングを行うことができるようになるので、よりチューニング作業が容易となるとともに実用性が向上することになる。
【0046】
このバルブハウジング24は、シリンダ1の外部側方に配置される有底筒状の筒部24aと、シリンダ1と外筒11の端部に嵌合固定される基部24bと、筒部24aと基部24bとを接続する接続部24cと、筒部24a内と圧力室R2とを連通する連通路24dと、筒部24a内とシリンダ1と外筒11との間の隙間とを連通する連通路24eとを備えており、筒部24a内に収容される減衰バルブ4の仕切部材17によって筒部24a内は圧力室R1側と圧力室R2側とに仕切られるとともに、蓋14によって筒部24aの図2中上端開口部が密閉されることになる。
【0047】
つづいて、他の実施の形態における空圧緩衝器D3について説明する。この他の実施の形態における空圧緩衝器D3が一実施の形態における空圧緩衝器D1と異なるのは、図3に示すように、シリンダ1と外筒11の下端には、減衰バルブ26の仕切部材27に連なる蓋28が嵌合固定されるようになっており、シリンダ1の内周に仕切部材27が嵌合されるようになっている点である。
【0048】
なお、以下の説明では、一実施の形態と異なる構成について詳細に説明することとして、一実施の形態における空圧緩衝器D1と同様の部材については、同様の符号を付するのみとして、その詳しい説明を省略することとする。
【0049】
この空圧緩衝器D3における減衰バルブ26は、シリンダ1と外筒11の図3中下端に嵌合するとともに、外筒11に螺着されることで外筒11に固定される蓋28と、蓋28から立ち上がる軸29と、軸29に図3中下から順に組み付けられる圧側リーフバルブ30、仕切部材27および伸側リーフバルブ31と、圧側リーフバルブ30、仕切部材27および伸側リーフバルブ31を軸29に固定するナット32とを備えて構成されており、仕切部材27は外周にシールリング33を備えシリンダ1の内周に嵌合されることでシールリング33を密着させてシリンダ1の下方に通路3の一部を成す空間を仕切っている。
【0050】
また、蓋28は、シリンダ1内に望む上端28aからシリンダ1と外筒11との間の隙間に臨む段部28bに通じる連通孔28cを備えて、当該連通孔28cを介して圧力室R1と圧力室R2とを連通している。さらに、蓋28は、下端から開口して上端28aに通じる気体給排孔34を備えており、当該気体給排孔34内には逆止弁6が設けられ、やはり、プラグ35で気体給排孔34の開口部が閉塞されている。
【0051】
なお、蓋28のシリンダ1に嵌合する部位の外周にはシールリング36が装着され、蓋28とシリンダ1との間がシールされ、蓋28の外筒11に嵌合する部位の外周にはシールリング37が装着されて、蓋28と外筒11との間がシールされている。
【0052】
このように構成されて他の実施の形態における空圧緩衝器D3にあっても、上述の一実施の形態における空圧緩衝器D1と同様に作動し、チューニング作業者は、空圧緩衝器D3を分解し、事後組立をすることなく、気体給排孔34を介して、空圧緩衝器D3内の圧力のチューニングを非常に簡単に行うことができる。
【0053】
さらに、チューニング作業者は、減衰バルブ26のチューニングに際し、空圧緩衝器D3の他所を分解することなく、減衰バルブ26に外部からアクセスして、減衰バルブ26を取外して各種設定の変更を行うことができるから、空圧緩衝器D3の減衰バルブ26のチューニングを非常に簡単に行うことができる。
【0054】
すなわち、この空圧緩衝器D3にあっても、空圧緩衝器内圧力や上記減衰バルブのチューニングが非常に簡単となり、チューニング作業者の作業負担を軽減でき、作業時間も短縮することができる。
また、減衰バルブ26がシリンダ1および外筒11の下端を閉塞する蓋28を備えているので、バルブハウジングを省略することができ、減衰バルブ26をシリンダ1に固定する作業を行えば、自動的に空圧緩衝器D3内が密閉状態となるとともに、蓋28の外部操作で減衰バルブ26を空圧緩衝器D3に着脱可能となるので、チューニング作業がこの点でも非常に簡単となる。
【0055】
なお、上記した各実施の形態では、ピストン2に圧力室R1と圧力室R2とを連通するとともに通過気体に抵抗を与える流路を設けていないが、このような流路を設けるようにしてもよい。
【0056】
さらに、減衰バルブ4,26には、リーフバルブを採用しているが、オリフィスやチョーク等の他の形式のバルブを採用してもよく、また、リーフバルブに他の形式のバルブを組み合わせたものとしてもよい。
【0057】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】一実施の形態における空圧緩衝器の概略縦断面図である。
【図2】一実施の形態の一変形例における空圧緩衝器の概略縦断面図である。
【図3】他の実施の形態における空圧緩衝器の概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 シリンダ
2 ピストン
3 通路
4,26 減衰バルブ
5,25,34 気体給排孔
6 逆止弁
6a 弁座
6b 弁体
6c バネ
6d 切欠
7 ロッド
8 ヘッド部材
8a ヘッド部材における段部
8b ヘッド部材における流路
10,24 バルブハウジング
10a バルブハウジングにおける横孔
10b バルブハウジングにおける段部
10c バルブハウジングにおける縦孔
10d バルブハウジングにおける螺子部
11 外筒
12 シール部材
13 ベアリング
14,28 減衰バルブにおける蓋
15,29 減衰バルブにおける軸
16,30 減衰バルブにおける圧側リーフバルブ
17,27 減衰バルブにおける仕切部材
17a 仕切部材における伸側ポート
17b 仕切部材における圧側ポート
18,31 減衰バルブにおける伸側リーフバルブ
19,32 減衰バルブにおけるナット
20,21,22,33,37 シールリング
23,35 プラグ
24a バルブハウジングにおける筒部
24b バルブハウジングにおける基部
24c バルブハウジングにおける接続部
24d,24d バルブハウジングにおける連通路
28a 蓋における上端
28b 蓋における段部
28c 蓋における連通孔
D1,D2,D3 空圧緩衝器
R1,R2 圧力室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入されてシリンダ内に二つの圧力室を隔成するピストンとを備えた空圧緩衝器において、シリンダ外で二つの圧力室を連通する通路と、外部から通路の途中に着脱自在とされるとともに通路を通過する気体に抵抗を与える減衰バルブと、通路へ気体を給排可能な気体給排孔とを設けたことを特徴とする空圧緩衝器。
【請求項2】
シリンダの端部に設けられ内部が通路に連通されるとともに当該内部に減衰バルブを収容する中空なバルブハウジングを設け、減衰バルブは外部からバルブハウジングに収容および取外し可能とされてなることを特徴とする請求項1に記載の空圧緩衝器。
【請求項3】
減衰バルブは、通路を一方の圧力室側と他方の圧力室側とに仕切る仕切部材と、仕切部材に設けた伸側ポートおよび圧側ポートと、仕切部材の一端に積層されて伸側ポートの出口端を開閉する伸側リーフバルブと、仕切部材の他端に積層されて圧側ポートの出口端を開閉する圧側リーフバルブと、を備えてなることを特徴とする請求項2に記載の空圧緩衝器。
【請求項4】
減衰バルブは、バルブハウジングの内部を一方の圧力室側と他方の圧力室側と仕切る仕切部材に連結されるとともにバルブハウジングの開口部に螺着されて開口部を閉塞する蓋を備えてなることを特徴とする請求項2または3に記載の空圧緩衝器。
【請求項5】
減衰バルブは、シリンダの端部に嵌合される仕切部材と、仕切部材に設けた伸側ポートおよび圧側ポートと、仕切部材の一端に積層されて伸側ポートの出口端を開閉する伸側リーフバルブと、仕切部材の他端に積層されて圧側ポートの出口端を開閉する圧側ポートと、シリンダを閉塞する蓋を備えたことを特徴とする請求項1に記載の空圧緩衝器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−144758(P2009−144758A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320427(P2007−320427)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】