説明

粉粒体繰出装置

【課題】肥料タンク下方の傾斜状面周辺での粉粒体のブリッジを良好に防止して、粉粒体の下方への誘導を円滑にし、粉粒体が適正に繰出すことを可能とした粉粒体繰出し装置を提供することである。
【解決手段】ホッパ60内の粉粒体をその下方の繰出部61で繰り出して施用する粉粒体繰出装置において、ホッパ60は繰出部61へ粉粒体を誘導する傾斜案内壁60gを備え、該傾斜案内壁に加圧空気を供給する供給口60cを設けた粉粒体繰出装置である。
ホッパ60内の傾斜案内壁60gに加圧空気の供給口60bを設けたことにより、傾斜案内壁部周辺での粉粒体のブリッジを良好に防止し、粉粒体が加圧空気によってホッパ下方の繰出部61へ円滑に誘導される。したがって粉粒体の繰出しを適正に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施肥装置や薬剤散布装置等の粉粒体繰出し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉粒体ホッパ内の粉粒体をその下側に設けた繰出部によって繰り出し、繰り出された粉粒体をエアチャンバから供給されるエアによって圃場まで搬送するようにした粉粒体繰出し装置がある。該粉粒体繰出し装置は、田植え機などの施肥装置によく設置されるが、肥料繰出し装置から繰り出された肥料が放出されるまでの肥料移送管内における移送時間があることから、苗植え付け開始と同時に施肥装置の繰り出し作用を開始してもタイムラグのため植えつけられた苗に対して無肥料部分ができるという問題点があった。
【0003】
そして必要時に必要量の肥料を放出することを目的として開発が行われており、タイムラグが生じないように、肥料移送管の排出部近くに肥料切れや肥料有りを検出できる肥料通過検出器を設けたり、該検出器とクラッチ作動機構を連動させる構成が知られている(特許文献1の図3)。このように今までは、肝心の粉粒体繰出し装置自体というよりも、田植え機全体の構成、主に制御装置に着目した開発が行われていた。
【0004】
一方粉粒体繰出し装置においては、肥料タンクの下方が一部傾斜状になっており、また肥料タンクの上方から熱風が送風され、肥料タンク内の粒状肥料は乾燥状態に保たれて、傾斜面を下って繰出し装置へ移送される構成(特許文献1の図8)が知られている。
【0005】
なお、本明細書では施肥装置や薬剤散布装置の前進方向を向いて左右方向をそれぞれ左、右と言い、前進方向を前、後退方向を後と言うことにする。
【特許文献1】特開平3−113138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載された粉粒体繰出し装置は、肥料タンクの上方から熱風が送風されることによって肥料タンク内の粒状肥料は乾燥状態に保たれて、繰出し装置での繰り出しが円滑になり、繰り出された肥料は、詰まることなく、圧風移送される。
【0007】
しかし粉粒体が集まる肥料タンク下方の傾斜状面周辺では、どうしても粉粒体が付着、固着するために、粉粒体のブリッジを形成する不具合がある。上記特許文献1のように肥料タンクの上方から熱風を送っても、肥料タンク下方の繰出し部への粉粒体の誘導が円滑に行われない場合が生じる。したがって肥料タンク下方の傾斜状面周辺での粉粒体のブリッジを防止する必要がある。
【0008】
本発明の課題は、肥料タンクなどのホッパ内の下方の傾斜状面周辺での粉粒体のブリッジを良好に防止して、粉粒体の下方への誘導を円滑にし、粉粒体が適正に繰り出すことを可能とした粉粒体繰出し装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記課題は次の手段によって達成される。
【0010】
請求項1記載の発明は、ホッパ60内の粉粒体をその下方の繰出部61で繰り出して施用する粉粒体繰出装置5において、ホッパ60は繰出部61へ粉粒体を誘導する傾斜案内壁60gを備え、該傾斜案内壁60gに加圧空気の供給口60bを設けたことを特徴とする粉粒体繰出装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粉粒体繰出装置によれば、粉粒体が集まる傾斜案内壁周辺での粉粒体のブリッジを良好に防止し、傾斜案内壁部での粉粒体の下方への誘導を円滑にし、粉粒体の適正な繰出しが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0013】
図1及び図2は本発明を用いた一実施例である粉粒体繰出し装置として施肥装置を装着した施肥装置付き乗用型田植機を表している。この施肥装置付き乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0014】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10、10及び左右一対の後輪11、11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13、13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13、13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10、10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18、18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18、18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11、11が取り付けられている。
【0015】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、第一ベルト伝動装置21及びHST23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13、13に伝達されて前輪10、10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18、18に伝達されて後輪11、11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構27によって施肥装置5へ伝動される。
【0016】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10、10を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するように成っている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0017】
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38、38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。
【0018】
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41、41を備えている。これらリンク40、41、41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム45の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダを油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0019】
苗植付部4は6条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口51a、…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a、…に供給すると苗送りベルト51b、…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a、…に供給された苗を苗植付具52aで圃場に植付ける苗植付装置52、…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ53、53等を備えている。苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56、56がそれぞれ設けられている。これらフロート55、56、56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55、56、56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52、…により苗が植付けられる。各フロート55、56、56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が上下動検出機構57により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0020】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61、…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62、…でフロート55、56、56の左右両側に取り付けた施肥ガイド63、…まで導き、施肥ガイド63、…の前側に設けた作溝体64、…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。電動モータ66で駆動のブロア67で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ68を経由して施肥ホース62、…に吹き込まれ、施肥ホース62、…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0021】
以下、図3〜図14に示す施肥装置本体部の各部の構成について説明する。
肥料ホッパ60は各条共用で、上部に開閉可能な蓋60aが取り付けられている。肥料ホッパ60の下部は施肥条数分に分岐して漏斗状になっており、その下部が繰出部61、…の上端に接続されている。肥料ホッパ60は、左右方向に長い施肥フレーム70に支持された左右2箇所の回動アーム71に取り付けられていて、この回動アーム71の下端部を支点に後方に回動させて繰出部61、…から分離させられるようになっている。回動アーム71は外側から1条目の繰出部と2条目の繰出部との間に配置されている(左右対称位置に2つ設けられている)。肥料ホッパ60の下部を肥料繰出部61、…の上端に接続した通常位置では、係止具72により肥料ホッパ60を固定しておく。
【0022】
繰出部61は、肥料ホッパ60内の肥料を下方に繰り出す2個の繰出ロール73A、73Bを内蔵している。これらの繰出ロール73A、73Bは、外周部に溝状の凹部74、…が形成された回転体で、左右方向に設けた共通の繰出軸75の角軸部75a(図示例は四角軸)にそれぞれ一体回転するように嵌合している。繰出ロール73A、73Bが図6の矢印方向に回転することにより、肥料ホッパ60から落下供給される肥料が凹部74に収容されて下方に繰り出される。両繰出ロール73A、73Bにより繰り出された肥料は、下端の吐出口61aから吐出される。
【0023】
図示例の繰出ロール73A、73Bの凹部の数は6個であり、両者の凹部の位相を異ならせてある。このため、両繰出ロール73A、73Bの凹部が交互に肥料を繰り出すこととなり、吐出口61aから吐出される肥料の量が時間的に均等化されている。いずれかの繰出ロール73A又は73Bを繰出軸75から外して位相を適当に変更して付け直すことにより、両繰出ロール73A、73Bの凹部の位相を等しくすることもできる。これで、圃場に点状に肥料を散布する場合に適用可能となる。
【0024】
また、繰出部61の内部には、凹部74が下方に移動する側(前側)の繰出ロール73の外周面に摺接するブラシ76が着脱自在に設けられている。このブラシ76によって繰出ロール73A、73Bの凹部74に肥料が摺り切り状態で収容され、繰出ロール73A、73Bによる肥料繰出量が一定に保たれる。
【0025】
さらに、ブラシ76の上側には、繰出ロール73A、73Bの上方に突出して肥料ホッパ60から繰出部61に肥料が落下供給されないようにする繰出停止シャッタ77A、77B(図7)が設けられている。繰出停止シャッタ77A、77Bは、繰出部ケース78のスライド支持部79(図6)にスライド自在に支持されていて、ケース外の前端部に形成された把手77aをつかんでスライドさせるようになっている。
【0026】
繰出部61の吐出口61aには、前後方向に連通する接続管80(図3)が接続されている。そして、この接続管80の後端部に施肥ホース62(図5)が接続されている。施肥ホース62の外周螺旋溝に施肥フレーム70の下端部が係合しているので、施肥ホース62が接続管80から抜けにくい。一方、各条の接続管80の前端部はエアチャンバ68(図4、図5)の背面部に挿入連結されている。エアチャンバ68の左端部はエア切替管81を介してブロア67(図3、図4)に接続されており、該ブロア67からのエアがエアチャンバ68を経由し接続管80から施肥ホース62に吹き込まれるようになっている。尚、ブロア67は、図3、図4に仮想線で示すように、そのエア吐出口67aをエア切替管81から外して機体内方に回動収納できる構成としている。
【0027】
エアチャンバ68は、接続管80が取り付けられたゴム管68aと、中間部分の樹脂管68bとを交互に繋ぎ合わせて構成されている。この構成とすると、エアチャンバ68を簡単に分解、組み立てできるので、繰出部61を一体的に取り外してのメンテナンスが容易である。ゴム管68aの長さを一対の繰出部の間隔よりも長くしておくと、樹脂管68bからゴム管68aを抜きやすい。
【0028】
また、繰出部ケース78の背面部には、肥料ホッパ内の肥料を取り出すための肥料排出口83(図6)が形成されている。この肥料排出口83には、上端側を支点にして開閉自在な排出シャッタ84が取り付けられている。各繰出部の肥料排出口83は、繰出部61の後方に設けた左右方向に長い肥料回収管85に接続されている。肥料回収管85の左端部は、前記エア切替管81を介してブロア67に接続されている。エア切替管81は二股状の管であって、一方にエアチャンバ68が接続され、他方に肥料回収管85が接続されている。エア切替管81にはエア切替部としてのエア切替シャッタ86が設けられ、ブロア67から吹き出されるエアをエアチャンバ68側に供給する状態と肥料回収管85側に供給する状態とに切り替えられようになっている。エア切替シャッタ86はエアチャンバ68と肥料回収管85の間の前後中央部にあるので、両者へのエア供給が安定している。肥料回収管85の右端部は肥料回収口87になっている。
【0029】
図8は上記各シャッタ84、…、86の開閉機構を示す図である。肥料回収口87の近傍に肥料回収レバー90が回動自在に設けられている。この肥料回収レバー90の回動支点軸90aと同軸上に、繰出部61の前側に配置された左右方向に長いシャッタ開閉伝達軸91(図6)が設けられている。シャッタ開閉伝達軸91には扇形プレート92が取り付けられており、この扇形プレート92に形成された円弧状の長穴92aに、肥料回収レバー90に固着されたピン90bが遊嵌している。シャッタ開閉伝達軸91には各繰出部ごとに開閉ギヤ93が取り付けられ、該ギヤ93が排出シャッタ84の回動軸84aに取り付けた半円形ギヤ94と噛み合っている。なお、半円形ギヤ94の端部には当該ギヤ94の歯よりも径の大きいストッパ部94aが形成されているので、両ギヤ93、94の噛み合いが外れることはない。また、肥料回収レバー90には、エア切替ワイヤ95の一端が繋がれている。エア切替ワイヤ95の他端は、エア切替シャッタ86の回動軸86aに取り付けたアーム96に付勢手段である引張りスプリング97を介して繋がれている。
【0030】
肥料回収レバー90を回動操作すると、エア切替ワイヤ95が引かれてエア切替シャッタ86を切り替え、ブロア67から引き出されるエアが肥料回収管85に供給されるようになる。肥料回収レバー90の回動操作量が少ないうちは、ピン90bが長穴92aの中を移動するだけにすぎないので、シャッタ開閉伝達軸91は回動しない。しかしながら、肥料回収レバー90を一定量以上回動操作すると、ピン90bが扇形プレート92に係合し、シャッタ開閉伝達軸91が回動する。これにより、排出シャッタ84、…が開き、肥料ホッパ60内の肥料が肥料回収管85に排出される。つまり、1本のレバー90の操作だけでエア切替シャッタ86及び排出シャッタ84、…を操作することができる。しかも、必然的に、始めにエアが肥料回収管85に供給され、その後で肥料が肥料回収管85に排出されるのである。このため、肥料回収管85での肥料の搬送が円滑に行われ、肥料回収管85での肥料詰まりが生じない。また、肥料回収レバー90が肥料回収口87の近傍に設けられているので、肥料回収容器等を肥料回収口87の下側に容易に確保でき、さらに肥料回収の状況を確認しながら作業を行え好都合である。
【0031】
肥料回収レバー90はレバーガイド98に沿って回動操作するようになっている。このレバーガイド98にはガイド穴98a、98bが形成されており、肥料回収レバー90の撓みを利用して肥料回収レバー90の係合部(図示せず)をガイド穴98a、98bに係合させることにより、肥料回収レバー90をエア切替シャッタ86だけが切り替えられる位置P1(図8)と、エア切替シャッタ86及び排出シャッタ84、…の両方が切り替えられる位置P2とに固定することができるようになっている。肥料回収レバー90を上記以外の位置にも停止させられるようにし、排出シャッタ84の開度を無段階又は段階的に調節できるようにしてもよい。
従って、肥料回収時にはブロア67より気流搬送される肥料は肥料回収管85を流れ、排出口87からスムーズに肥料が排出される。
【0032】
なお、エア切替シャッタ86は上下方向を向く回動軸86aを中心に回動するので、エア切替シャッタ86の開閉操作時の抵抗が変動しない。また、肥料回収時には引張りスプリング97の張力に抗して強制的にエア切替シャッタ86を切り替えるようにしているので、肥料回収時におけるエア切替シャッタ86の気密性が良好である。
【0033】
図4に示す開閉ギヤ93と半円形ギヤ94との噛み合いに予め融通性を持たせておくと、各条のギヤの組み付けに多少の誤差があっても、各条の排出シャッタ84の動作タイミングに狂いが出ず、確実に排出シャッタ84が閉じるようにすることができる。
【0034】
一方、肥料回収レバー90を図8に示す施肥作業位置にすると「ON」になるスイッチを設けると共に、各畦クラッチレバー110L、110C、110R(図4)をクラッチ入り位置にすると「ON」になるスイッチを各々設けて、これらスイッチの検出により、肥料回収レバー90が肥料排出位置(肥料回収レバー90が施肥作業位置でない時)で全ての畦クラッチレバー110L、110C、110Rがクラッチ入りの時(施肥作業時)に、肥料回収レバー90が施肥作業位置でないことを警報するハンドル34下方のモニター部に設けたランプを点灯するか若しくはブザーを鳴らすように制御装置で制御している。これは、肥料回収レバー90を図8のP2位置にして肥料回収作業をした後、肥料回収レバー90をP2位置にしたまま、メインスイッチを切って作業を中断し、後に(後日)、施肥・植付け作業を行なう時に肥料回収レバー90をP2位置にしたまま施肥・植付け作業をすると施肥作業が行なえないまま植付け作業をしてしまう不具合を防止するためで、肥料回収レバー90をP2位置にしたままでメインスイッチを入れるとランプが点灯するか若しくはブザーが鳴って作業者に肥料回収レバー90が施肥作業位置になっていないことを知らせ、即座に作業者は肥料回収レバー90を施肥作業位置に操作して前記のような不具合を未然に防止でき作業性が良い。
【0035】
繰出部ケース78は、側面視で前下がりに傾斜した分割面F−F(図5)で、下側の固定部分78aと上側の離脱部分78bとに分割されている。繰出ロール73A、73B及び排出シャッタ84(肥料排出口83)は固定部分78aに設けられている。一方、ブラシ76及び繰出停止シャッタ77は離脱部分78bに設けられている。肥料ホッパ60が接続される上部開口部及び吐出口61aは分割されていないので、両者の気密性が良好に保たれる。
【0036】
肥料ホッパ60を最も後方に回動させると、側面視で前記離脱部分78bを離脱させる方向に投影した区域外に肥料ホッパが位置するようになっている。このため、離脱部分78bを無理なく離脱させられる。また、分割面F−F(図5)の延長先はエアチャンバ68の上端よりも下側に位置するとともに、側面視で離脱部分78bを離脱させる方向に投影した区域外にエアチャンバ68が位置している。このため、離脱部分78bを取り外した状態で、走行車体2上から繰出ロール73A、73Bのメンテナンスを行いやすい。
【0037】
図9(図5を簡略化して書いている。)に示すように、肥料ホッパ60には、該ホッパ60内へ加圧空気を供給する空気供給装置69を設け、空気供給口60bを傾斜案内壁60gに設けて、空気供給装置69と空気供給口60bを接続するダクト58を設けると共に、ホッパ60内に供給した加圧空気をホッパ60の外へ排出する排出口60cを設ける。なお、前記空気供給装置69はエンジンカバー30内に設けられ、エンジン20から発生する熱により熱風を発生させる構成となっている。空気供給口60bからホッパ60内の粉粒体を乾燥させるための加熱された加圧空気を供給し、シャッタ60dにより開閉自在な排気口60cに肥料粒子が通過できない大きさの開口を有する網60fを設けている。この状態で施肥前のホッパ60内にある肥料を供給口60bからホッパ60内に導入した乾燥用加圧空気で乾燥させることができる。この乾燥用加圧空気の供給口60bをホッパ60内の傾斜案内壁60gに備えることにより、粉粒体が集まる傾斜案内壁60g周辺での粉粒体のブリッジを良好に防止し、傾斜案内壁部60gでの粉粒体の下方への誘導を円滑にし、粉粒体の適正な繰出しが可能となる。
【0038】
排出口60cの閉鎖は、エア切替管81にはエア切替部としてのエア切替シャッタ86に連動させる構成になっているので、エア切替シャッタ86が肥料回収管85側に肥料搬送用のエアを供給する状態にエア切替管81を切り替えた場合に排出口60cがシャッタ60dにより閉鎖されるように連動させることで肥料を回収するときに同時に乾燥も行うことができる。また肥料を回収するときにホッパ60内が乾燥空気で加圧状態となり、ホッパ60から肥料回収管85へ肥料搬送が促され、及び該肥料回収管85内での肥料搬送が促され、肥料回収管85内が肥料で詰まることがなくなると共に肥料回収作業時間の短縮化が図れる。
【0039】
また、乾燥用加熱空気の供給口60bを設けたホッパ60の傾斜案内壁部60gから空気供給すると、傾斜案内壁部60gから肥料粒子を吹き飛ばすことができ、また、ホッパ60の傾斜案内壁部60gが安息角以下でも肥料粒子が滑り落ち、ホッパ60の容量を大きくすることが可能になる。なお、本明細書における「安息角」とは、粒子が重力により滑り落ちるときの傾斜角度をいう。
【0040】
また図10に示す形状からなるホッパ60を設け、該ホッパ60内の底部をメッシュ状枝の二重構造60hとし、その二重構造部60hより温風を吹き出し、ホッパー60上端部に設けた排気口から湿った空気を排出し、肥料を乾燥させる様にしてもよい。ホッパー60内に湿った空気を送っただけでは湿った空気が対流して、よけいに肥料が湿るおそれがあるが、下から上へと温風の流れを作ることにより、効率的に肥料の乾燥を行うことができる。
【0041】
図11に示すようにホッパ60内に乾燥空気を供給する際、ホッパ60の内壁面に多数の空気吹出し口60iを設けることもできる。この空気吹出し口60iはホッパ60内の対向する両壁面に設けても、ほぼ全壁面に設けても良い。このように施肥前のホッパ60内にある肥料を、吹出し口60iからホッパ60内に導入した乾燥用加圧空気で、肥料をより効率よく乾燥させることができる。また空気供給口60bは複数個あってもよい。
【0042】
一方、繰出部61のロート(図示せず)に粉が溜まり、付着することがある。そのため繰出部61のロートの内壁に乾燥空気の吹出し口を設けることにより、粉の付着を防止することができる。そして肥料排出時には、ホッパ60内の乾燥用空気の排出口を防いでホッパの内圧を上げることにより、肥料が排出しやすくなる。
【0043】
また加圧空気の吹出し口をホッパ60の内壁全面に複数個設けることにより、肥料の付着を防止することもできる。
【0044】
ホッパ60の下方には肥料などの粉粒体が集まるため、図12に示すようにホッパ内の乾燥用空気供給口60bの下に、粉取り部76aを設ける構成としても良い。繰出し部61の繰り出しロール73、74において粉粒体が発生し、繰り出しロール上部の粉粒体が集まる位置、特に肥料仕切ブラシ76の直ぐ上側の位置に粉取り部を設けることにより、加熱空気の通りをよくし、繰出し装置全体のつまりを防止することができる。そして粉が集まった後、粉取り部を後で取り出すことができる。ホース76bを外して粉取りができ、粉取り部も取り外しができる構成とすることで、経済的であるし、メンテナンスも容易になる。
【0045】
さらに図13に示すように、ホッパ60内の乾燥用空気の排出口60cを肥料仕切ブラシ76の周辺に設ける構成としても良い。また粉取り部76aを肥料仕切ブラシ76の下部に設けても良い。肥料仕切ブラシ76の部分から乾燥用空気の空気圧が抜けるので、肥料を効率よく乾かすことができ、また肥料の排出を良くして、適正に肥料の粉を施肥ホース62に送り出すことができる。
【0046】
また、図14に示すようにホッパ内乾燥用空気の排出口60cに排出ホース58aを設けて、乾燥用空気を接続管80又は施肥ホース62に通す構成にすると、乾燥用空気による肥料の搬送力がアップし、効率よく空気を使うことが可能となる。なお、図示例は傾斜案内壁60gに排出口60cを設けているが、排出口60cをホッパ60内に設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、施肥装置や薬剤散布装置等の粉粒体繰出し装置として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施例の施肥装置付き乗用型田植機の側面図である。
【図2】図1の施肥装置付き乗用型田植機の平面図である。
【図3】図1の施肥装置の(a)肥料回収管85部分を省略した背面図、及び(b)伝動関係を省略した背面図である。
【図4】図1の施肥装置の平面図である。
【図5】図1の施肥装置の一断面の側面断面図である。
【図6】図1の施肥装置の粉粒体繰出部の側面断面図である。
【図7】図6のS−S断面図である。
【図8】図1の施肥装置の肥料回収レバー及びその関連部材の側面図である。
【図9】図1の施肥装置の一側面図である。
【図10】他の実施例の施肥装置の一部破断面を含む一側面図である。
【図11】他の実施例の施肥装置の一部破断面を含む一側面図である。
【図12】他の実施例の粉粒体繰出部の側面断面図である。
【図13】他の実施例の粉粒体繰出部の側面断面図である。
【図14】他の実施例の施肥装置の一側面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 施肥装置付き乗用型田植機 2 走行車体
3 昇降リンク装置 4 苗植付部
5 粉粒体繰出し装置(施肥装置) 10 前輪
11 後輪 12 ミッションケース
13 前輪ファイナルケース 15 メインフレーム
18 後輪ギヤケース 20 エンジン
21 第一ベルト伝動装置 23 HST
25 植付クラッチケース 26 植付伝動軸
27 施肥伝動機構 30 エンジンカバー
31 座席 32 フロントカバー
34 ハンドル 35 フロアステップ
36 リヤステップ 38 予備苗載台
40 上リンク 41 下リンク
42 リンクベースフレーム 43 縦リンク
44 連結軸 45 スイングアーム
46 昇降油圧シリンダ 50 伝動ケース
51 苗載台 51a 苗取出口
51b 苗送りベルト 52 苗植付装置
52a 苗植付具 53 線引きマーカ
55 センターフロート 56 サイドフロート
57 上下動検出機構 58 乾燥用空気ダクト
58a 排出ホース 59 ファン
60 ホッパ(肥料ホッパ)
60a 蓋 60b 乾燥用空気供給口
60c 乾燥用空気排出口 60d シャッタ
60f 網 60g 傾斜案内壁
60h 二重構造部 60i 空気吹出し口
61 繰出部 61a 吐出口
62 施肥ホース 63 施肥ガイド
64 作溝体 65 サポートダクト
66 電動モータ 67 ブロア
67a エア吐出口 68 エアチャンバ
68a ゴム管 68b 樹脂管
69 空気供給装置 70 施肥フレーム
71 回動アーム 72 係止具
73A、73B 繰出ロール
74 凹部 75 繰出軸
75a 角軸部 76 ブラシ
76a 粉取り部 76b ホース
77、77A、77B 繰出停止シャッタ
77a 把手
78 繰出部ケース 78a 固定部分
78b 離脱部分 79 スライド支持部
80 接続管 81 エア切替管
83 肥料排出口 84 排出シャッタ
84a 回動軸 85 肥料回収管
86 エア切替シャッタ 86a 回動軸
87 肥料回収口 90 肥料回収レバー
90a 回動支点軸 90b ピン
91 シャッタ開閉伝達軸 92 扇型プレート
92a 長穴 93 開閉ギヤ
94 半円形ギヤ 94a ストッパ部
95 エア切替ワイヤ 96 アーム
97 引張りスプリング 98 レバーガイド
98a、98b ガイド穴
110L、110C、110R クラッチレバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホッパ60内の粉粒体をその下方の繰出部61で繰り出して施用する粉粒体繰出装置5において、前記ホッパ60は繰出部61へ粉粒体を誘導する傾斜案内壁60gを備え、該傾斜案内壁60gに加圧空気の供給口60bを設けたことを特徴とする粉粒体繰出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−81464(P2006−81464A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−269283(P2004−269283)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】