説明

給湯装置

【課題】 浴槽の湯張り温度が異常温度になったことを使用者に知らしめることができる給湯装置を提供する。
【解決手段】 上水が加熱手段11により加熱されて得られた温水の流量を流量計13で検出することにより求めた温水の給湯量Qと、湯温センサ12で検出することにより求めた前記温水の平均温度tと、前記上水の温度を検出する水温センサ14で検出することにより求めた上水の平均温度tと、浴槽用定量止水栓5から浴槽へ湯張りされる設定量Qとを用いて、

式1: t=(t−t)Q/Q+t

により算出した湯張り温水推定温度tが、異常温度であると判断した場合に、使用者に知らしめる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め設定した吐水量になると自動的に止水する定量止水栓と連結される給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の給湯装置として、浴槽への湯張り時に使用者が設定した湯量に到達した場合に、ブザー等の警報器にて湯張り完了を使用者に知らせるものが公開されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この給湯装置は、使用者が浴槽の蛇口を開けてお湯を浴槽に落とし込んでいくと、前記蛇口の開動作に連動して前記蛇口からの水量を水量検知器を用いて給湯機の制御部にて積算し記憶するとともに、その積算量をリモコンの湯張り設定量表示部に表示し、使用者が設定した湯張り量に前記積算量が到達すると、ブザー等の警報器で使用者に湯張り完了を知らせるものである。
【特許文献1】実開平5−3841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の給湯装置は、湯張りの量を積算した値が設定値に達したことをもって、湯張り完了を知らせるのみであり、浴槽に湯張りされたお湯の温度が設定した温度に適したものとなっているか否かを使用者に知らせるものではなかった。
【0005】
また、上記従来の給湯装置は、設定温度に近くなるように給湯装置内のバーナーでお湯の温度を調節して出湯するものであるが、これと異なり、例えば、使用者が浴槽用定量止水栓に設けられた水量調節バルブと湯量調節バルブのそれぞれの開度を調節することで、使用者自らが湯の温度調節を行うような、温度調節機構を有していない浴槽用定量止水栓と連結される給湯装置においては、使用者による温度調節が不適切であった場合や、結果的に浴槽の湯張り温度が異常な温度になった場合でも使用者は湯にふれるまで気づかないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、浴槽の湯張り温度が異常温度になったことを使用者に知らしめることができる給湯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1ないし請求項6に記載の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の給湯装置の発明は、上水の温度を検出する水温センサ(14)と、前記上水を加熱する加熱手段(11)と、前記上水が前記加熱手段(11)により加熱されて得られた温水の流量および温度をそれぞれ検出する流量計(13)および湯温センサ(12)と、前記湯温センサ(12)の検出値に基づいて求めた前記温水の平均温度t、前記流量計(13)の検出値に基づいて求めた前記温水の給湯量Q、前記水温センサ(14)の検出値に基づいて求めた前記上水の平均温度t、および前記湯温センサ(12)の下流に連結される浴槽用定量止水栓(5、5A)から排出されて浴槽へ湯張りされる温水の設定量Qを用いて、

式1: t=(t−t)Q/Q+t

により算出された湯張り温水推定温度tが、異常温度であると判断した場合に、異常温度であることを使用者に知らしめる制御手段(2)と、
を備えることを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、給湯装置に連結された浴槽用定量止水栓で使用者が湯張り温度の設定ミスをした場合、給湯装置に連結された浴槽用定量止水栓の温度検知機能が故障した場合、またはその温度調節機構の故障の場合によって、浴槽の湯張り温度が異常温度になったときでも、その異常状態を使用者に知らしめることができる安全性の高い給湯装置が得られる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、前記浴槽用定量止水栓(5A)は、水供給手段(52)および湯供給手段(53)を備え温度調節機構を有していないことを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、使用者が水供給手段(52)および湯供給手段(53)の調節具合を誤ったことによって湯張り温度が異常温度となってしまった場合でも、湯張り温度を精度高く推定することにより、その異常状態を使用者に知らしめることができる安全性の高い給湯装置が得られる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、前記制御手段(2)は、前記式1の代わりに、配管を流れるときの温度降下を考慮した補正値Cを用いて、

式2: t=(t−C−t)Q/Q+t

により湯張り温水推定温度tを算出することを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、配管の長さなどが起因する湯張り温水温度の低下を考慮することにより、より精度の高い湯張り温水温度が推定できる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、前記温水の平均温度tおよび前記上水の平均温度tは、それぞれ湯張りが開始されてから終了するまでの平均値により求められることを特徴としている。請求項4に記載の発明によれば、温水の平均温度tおよび上水の平均温度tをより精度高く求めることができるので、より適切な湯張り温水温度を推定することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、前記制御手段(2)は、前記流量計(13)で連続して検出される前記温水の給湯量Qが、所定量以下であった場合は、前記温水の給湯量Qのカウントをクリアすることを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、浴槽への湯張りが実行されていることを適切に認識することができる給湯装置が得られる。
【0016】
請求項6に記載の発明では、前記制御手段(2)は、算出された前記湯張り温水推定温度tが、第1の所定温度以上であった場合は高温の異常温度であると使用者に知らしめ、第2の所定温度以下であった場合は低温の異常温度であると使用者に知らしめることを特徴としている。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、湯張り温水温度が適温でないことに加えて、それが高温、低温のいずれであるかを使用者に知らしめることができる、より安全性の高い給湯装置が得られる。
【0018】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下に第1実施形態について説明する。本発明の給湯装置1は、後述する浴槽用定量止水栓5、または浴槽用定量止水栓5Aに連結されて使用されるものである。
【0020】
図1は、本実施形態における給湯装置1の構成、および浴槽用定量止水栓5との関係を示す模式図である。図2は給湯制御装置2を示す構成図である。図3はリモコン9の内部構成を示す構成図であり、図4はリモコン9の外観を示す正面図である。
【0021】
本実施の形態に関わる構成部品は、要部である給湯装置1、給湯装置1から情報を表示または報知するとともに、使用者が設定湯量などを操作するリモコン9、浴室内に設置される浴槽用定量止水栓5、この浴槽用定量止水栓5から流出される湯水混合温水が貯められる浴槽6、および台所に設置されるキッチン水栓7である。
【0022】
上水が導入される給水配管3は、給湯装置1の上流側に接続され、浴槽用定量止水栓5およびキッチン水栓7の給水側に接続されている。給湯用配管4は、流量計13を間に介して、加熱手段11である加熱装置の下流側において加熱装置と浴槽用定量止水栓5を連結し、給湯装置1で加熱された温水を浴槽用定量止水栓5に導いている。また、給湯用配管4は、浴槽用定量止水栓5の上流側で分岐して給湯装置1で加熱された温水をキッチン水栓7に導くように接続されている。
【0023】
給湯装置1の制御手段である給湯制御装置2、およびリモコン9は、電気的に接続された有線のリモコン線8で接続されている。給湯装置1には、内部を流通する上水を加熱する加熱装置、および加熱装置を制御する給湯制御装置2が設けられている。加熱装置は内部に給水用配管3から導水される上水が流通する加熱用熱交換器(図示せず)と、この加熱用熱交換器に流通する上水を外部から加熱する熱源装置(図示せず)とから構成されている。
【0024】
給湯制御装置2は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵のROM(図示せず)には、予め設定された制御プログラムが設けられており、流量計13からの流量情報、および図示しない操作盤からの操作情報に基づいて加熱装置およびリモコン9を制御する。給湯制御装置2には、流量計13および湯温センサ12により検出された、加熱装置から流れ出る温水の流量Qおよび温度tのデータを取り込むとともに、水温センサ14により検出された給水の温度tのデータを取り込み、さらに浴槽6への湯張りされる設定量Qのデータを取り込んで、湯張り温水推定温度tを算出する制御プログラムが設けられている。給湯制御装置2は、この湯張り温水推定温度tに基づいてリモコン9に湯張り温度が異常であると判断した場合には、リモコン9にその情報を伝達することで使用者は異常状態を知ることになる。
【0025】
図2に示すように、給湯制御装置2は、加熱装置用入出力回路21、マイコン22、リモコン用入出力回路23、および流量計用入力回路24、水温センサ用入力回路25、湯温センサ用入力回路26から構成される。
【0026】
加熱装置用入出力回路21は、加熱装置とマイコン22との間に設けられ、マイコン22からの制御信号に基づき加熱装置内に設けられたバルブ等(図示せず)を駆動するための制御信号を出力するとともに、加熱装置内の制御手段(図示せず)から送信されてくるフィードバック信号(主として現時点での水温)を受信して、マイコン22が読み込める制御信号へと変換し、伝達する入出力手段である。
【0027】
マイコン22は、CPU、RAM、ROMなどからなり、加熱装置用入出力回路21と、リモコン用入出力回路23、さらに流量計用入力回路24と接続され、リモコン9から送信される操作信号と、流量計13から送信される流量情報と、加熱装置から送信されるフィードバック信号とを受信し、給湯配管4への給湯制御を演算する演算手段である。
【0028】
リモコン用入出力回路23は、リモコン9から送信される操作信号を受信し、マイコン22が読み込める操作信号に変換するとともに、マイコン22へ伝達し、さらにマイコン22からリモコン9へ送信される報知信号を後述するリモコン9の入出力部91が読み込める報知信号に変換し、送信する入出力手段である。
【0029】
流量計用入力回路24は、流量計13からの流量信号を受信し、マイコン22が読み込める流量信号に変換するとともに、マイコン22に伝達する入力手段である。水温センサ用入力回路25は、水温センサ14からの温度信号を受信し、マイコン22が読み込める温度信号に変換するとともに、マイコン22に伝達する入力手段である。湯温センサ用入力回路26は、湯温センサ12からの温度信号を受信し、マイコン22が読み込める温度信号に変換するとともに、マイコン22に伝達する入力手段である。
【0030】
次に、リモコン9の内部構成は、図3に示すように、入出力回路91、マイコン92、スイッチ部93、表示部94、およびスピーカー95からなる。
【0031】
入出力回路91は、給湯制御装置2からの報知信号を受信し、マイコン92に伝達するとともに、マイコン92からの操作信号を給湯制御装置2のリモコン用入出力回路23が読み込める操作信号に変換し、伝達する入出力手段である。
【0032】
マイコン92は、マイコン22と同様の構成で、CPU、RAM、ROMなどからなり、入出力回路91、スイッチ部93、表示部94、およびスピーカー95のそれぞれに接続され、スイッチ部93からの操作信号を受信するとともに、入出力回路91から伝達された報知信号を、表示部94およびスピーカー95に出力する演算装置である。
【0033】
次に、リモコン9の外観は、図4に示すように、その前面に、表示部94と、スピーカー95と、スイッチ部93を構成する、「湯張り量」ボタン93a、「湯温設定」ボタン93b、「上昇」ボタン93c、「下降」ボタン93d、および「確定」ボタン93eとが配置されているものである。
【0034】
浴槽へ湯張りされる設定量Qの設定手順を説明する。設定量Qは、使用者が浴槽6内に湯張りしたいと考える湯量であり、通常の浴槽においては、100L〜400Lの範囲で設定するものである。
【0035】
まず「湯張り量」ボタン93aを押すことで、湯張り量設定モードになり、表示部94に数値と単位[L]が点滅する。次に「上昇」ボタン93cまたは「下降」ボタン93dを押すことで設定量Qが任意に設定できる。そして、「確定」ボタン93eを押すと設定量Qが確定されることになる。
【0036】
次に、給湯装置1から出湯する給湯温度の設定手順を説明する。まず、「湯温設定」ボタン93bを押すことで、湯温設定モードになり、表示部94に数値と単位[℃]が点滅する。次に、「上昇」ボタン93cまたは「下降」ボタン93dを押すことで給湯温度が任意に設定できる。そして、「確定」ボタン93eを押すと給湯温度が確定されることになる。
【0037】
次に、浴槽用定量止水栓5はお湯張り量が予め設定した目標お湯張り量に達すると自動的に止水する機能を有する水栓金具である。本実施形態の浴槽用定量止水栓5は、浴室内の浴槽と洗い場とが隣接する壁面に取り付けるタイプであって、特に、浴槽内にお湯張りを行なうときに、図6(a)に示すように、本体51の上面に設けられた操作パネル511内の吐水/止水スイッチ511aを操作することで、定量お湯張り運転が開始され、吐水口51bより設定した湯温の混合水を自動で吐水し、予め設定された目標お湯張り量に達したときに自動的に止水するようにしている。
【0038】
そして、浴槽用定量止水栓5は、湯水を混合する湯水混合栓本体52と混合された混合水の水路を開閉する本体51とを給水管51aを介して連結している。また、湯水混合栓本体52には、右端側に温度設定手段である温調ハンドル53、正面側に流路切替ハンドル54、左端側に流量調節ハンドル55が備えられている。シャワーホース56、冷水流水路57、温水流水路58が設けられている。
【0039】
次に、湯水混合栓本体52の概略構成を図6(b)に基づいて説明する。図6(b)に示すように、湯水混合栓本体52には、湯と水を混合する湯水混合手段521の他に、湯水混合手段521により混合された混合水の流量を調節する流量調節手段522と、混合された混合水を給水管51aまたはシャワーホース56のいずれか一方に流路を切り替える流路切替手段523とから構成されている。
【0040】
また、湯水混合手段521の上流端は、給水用配管3を介して上水(水道管)に接続されて常温の水が流入される冷水流入路57と、給湯用配管4を介して給湯装置1に接続されて給湯装置1から吐出される温水が流入する温水流入路58とが備えられている。
【0041】
そして、湯水混合手段521は、内部にサーモワックスなどの感温体が収容されたサーモスタットからなる弁体(図示せず)、温調ハンドル53の回転角を往復動に変換する回転/往復変換部材(図示せず)、および温調ハンドル53から構成され、この温調ハンドル53を回転させることで、混合水を所望する湯温に設定できるようにしている。これにより、冷水流入路57および温水流入路58から流入した温水と水とが所望する湯温となるように混合される。
【0042】
また、流量調節手段522には、流量調節ハンドル55が設けられ、この流量調節ハンドル55を回転させることで、流量調節手段522による混合水の流量を調節できるようになっている。また、流路切替手段523には、流路切替ハンドル54が設けられ、この流路切替ハンドル54を回すことにより、混合水を給水管51aまたはシャワーホース56のいずれか一方に切り替えられるとともに、給水管51aまたはシャワーホース56のいずれへも止水するストップ機能が設けられている。
【0043】
次に、浴槽用定量吐水栓5における本体51の内部構成を図5に基づいて説明する。図5は浴槽用定量止水栓5の本体51を示す構成図である。本体51は、給水管51aから吐水口51bに至る水路51cを開閉する流水開閉手段513と、水車514aおよび発電機コイル514bからなり、水路51cを流れる混合水の流水エネルギーにより水車514aを回転させて発電する発電手段514と、この発電手段514により発電された電力を蓄える電源手段である蓄電用コンデンサ515と、水車514aの回転を検出して水路51cを流れる混合水の吐水流量を測定する吐水流量測定手段514a、514bと、蓄電用コンデンサ515により電源が供給されて流水開閉手段513の開閉を制御する定量止水制御装置516とから構成されている。
【0044】
まず、流水開閉手段513は、ソレノイドなどからなる電磁弁コイル513aにより開閉動作を行なうパイロット弁513bと、ダイヤフラムからなる主弁513cとで構成され、電磁弁コイル513aに通電し、混合水の一部を導いたパイロット弁513bを開弁することで、ダイヤフラムを作用させて主弁513cを開弁させるようになっている。
【0045】
これにより、電磁弁コイル513aに印加する電力が小さくても、小さな動力で動作するパイロット弁513bを通過した混合水の圧力により、ダイヤフラムを作用させて大きな動力を必要とする主弁513cを動作させたものである。なお、電磁弁コイル513aは定量止水制御装置516により制御されてパイロット弁513bを開弁/閉弁を行なうものである。
【0046】
なお、手動弁513dは、使用者の人力により主弁513cを開弁させる弁である。これは、後述する蓄電用コンデンサ515に蓄えられた電力がないとき、または定量止水制御装置516、電磁弁コイル513aなどの機器故障時に主弁513cを強制的に開弁させることができるようにしている。
【0047】
発電手段514は、吐水量測定手段である水車514aおよび発電機コイル514bとからなる。水車514aは、混合水の水路51c中に配設され、水路51cを流れる混合水の流水エネルギーを回転力に変換する。また、水車514aは、複数個の磁極をもつように磁化された永久磁石となっているため、この回転力は発電機コイル514bに伝えられて電力を発電する。そして、発電された電力は、定量止水制御装置516内に設けられた整流器(図示せず)により直流に変換され、さらに電圧調整された後、電源手段である蓄電用コンデンサ515に蓄えるように構成されている。
【0048】
また、本実施形態では、吐水口51bから吐水する吐水流量を測定するために、水車514aの回転により発生する発電機コイル514bの出力波形を定量止水制御装置516に出力して、その出力波形を発電パルスに変換して発電パルス数をカウントすることで水車514aの回転数に換算して吐水流量を算出するようにしている。
【0049】
なお、ここで説明する吐水流量は、混合水が吐水口51bから吐水する流量L/分を示すものであって、吐水流量と水車514aの回転数との関係は略比例関係となっているため、カウントした発電パルス数から回転数に変換させて吐水流量が求められるように予め設定されている。
【0050】
また、水車514aの回転数を発電機コイル514bから発する出力波形から回転数信号を求めたが、これに限らず、水車514aの回転数を検出する回転センサを設けて回転数信号を定量止水制御装置516に出力させても良い。整流板51dにより吐水口51bから吐水された水流を整流して外部に吐水するようになっている。
【0051】
また、水車514aの下流側には吐水口51bから吐水される混合水の湯温を検出する湯温センサ517が設けられ、湯温センサ517で検出された温度情報を定量止水制御装置516に出力するように接続されている。さらに、操作パネル511には、湯温センサ517で検出された温度情報を報知するための湯温表示部511bが設けられている。
【0052】
次に、定量止水制御装置516の構成について説明する。定量止水制御装置516は、回路基板上に配設されたCPU、ROM、RAMを中心とした周知のマイクロコンピュータにより構成されているCPU516a、およびそのCPU516aに接続されるその他の電子部品から構成されており、操作パネル511の下方に設けられている。
【0053】
図7は浴槽用定量止水栓5の本体51を示す構成図である。図7に示すように、CPU516aには、操作モードに基づく主弁513cの開閉制御、発電機514からの出力波形に基づく吐水流量の計測と演算手段、湯温表示部511bの制御などを行なう制御プログラムの制御処理が設けられている。さらに、発電機514bからの出力波形に基づく吐水開始から吐水量の積算値である湯張り量を求める湯張り量演算手段と、予め設定された湯張り設定量を記憶する湯張り設定量記憶手段が設けられている。この湯張り設定量記憶手段で記憶される湯張り設定量は、使用者が浴槽内6に湯張りしたいと考える混合水量Q3であり、使用者が浴槽用定量止水栓5の本体51を操作することにより設定されるものである。
【0054】
電磁弁駆動回路516bは、CPU516aからの指令信号に基づいて電磁弁コイル513aに通電し、パイロット弁を駆動させて主弁513cを開閉する信号を出力する。波形整形回路516cは、発電機514から出力される出力波形をCPU516aに入力するための発電パルスに変換する。直流電源回路516dは、発電機514で発生した交流電圧を整流、平滑して直流に変換後定電圧ICなどで電圧を安定化させる。
【0055】
なお、湯温表示部511bは、回路基板(図示せず)に設けられ、CPU516aからの指令に基づき湯温センサ517により検出された温度を操作パネル511に表示するように構成されている。また、電磁弁コイル513aは電磁弁駆動回路516bに接続され、発電機514は波形整形回路516cおよび直流電源回路516dに接続され、蓄電用コンデンサ515は、直流電源回路516dに接続され充電されるとともに、定量止水制御装置516および湯温表示部511bの電源となるように接続されている。吐水/止水スイッチ511aは、湯温表示部511bと同じように、回路基板(図示せず)に設けられ、CPU516aに接続する電気回路を開閉する開閉スイッチを用いてCPU516aに電気的指示を出力するようにしている。
【0056】
次に、図8に示すフローチャートを用いて給湯装置1による制御フローを説明する。使用者が浴槽6に湯張りを行いたいときは、上述の、湯張り設定量Qの設定手順および湯張り設定温度の設定手順のとおりにリモコン9を操作する。このリモコン9の操作とともに、使用者は浴槽用定量止水栓5の本体51を操作して湯張り設定量Qを設定し、浴槽用定量止水栓5の蛇口を開放することが必要である。そして、このリモコン9からの情報が給湯制御装置2に伝達され、給水配管3から給水が行われるとともに加熱装置で水が加熱されて出湯が行われ、制御フローがスタートする。
【0057】
まず、ステップ100で、流量計13から、一定流量を検知する計量信号があるか否かを判断して、湯張りが開始されたか否かを判断する。計量信号があると判断した場合は、湯張りが開始されたと判断して湯温センサ12で温水の温度を検出し続け、その平均値tを求める(ステップ110)。同時に水温センサ14で上水からの給水温度も検出し続け、その平均値tを求める(ステップ115)。さらに、この間の流量を流量計13で検出し続け給湯量Qをカウントする(ステップ120)。この温水の平均値t、上水の平均値t、および給湯量Qは、後述するステップ130で流量計13から、一定流量を検知する計量信号がなくなったと判断するまで検出し続けるものである。
【0058】
次に、この給湯量Qが浴槽湯張り判定値Rに到達したか否かを判断し(ステップ125)、まだ到達していない場合は再びステップ100に戻り、ステップ100を経て温水の平均値t、上水の平均値t、および給湯量Qを計測し続ける。しかし、再びステップ100に戻った場合に、流量計13の計量信号がないと判断したときは、浴槽6への湯張りが行われていない上に、キッチン水栓7などの他の水栓の使用が終了した状態であると考えて、給湯量Qのカウント値をクリアし、再度ステップ100に戻ることになる。
【0059】
この浴槽湯張り判定値Rは、温水が浴槽用定量止水栓5から浴槽6内へ供給されたものなのか、あるいはキッチン水栓7から排出されたものなのかを判定するための値であり、本実施形態ではその一例として50Lを採用する。つまり、連続して計測した給湯量Qが50L以上の場合は、浴槽6へ湯張りが行われていると判断し、50L未満の場合は、湯張りが行われていないと判断する。これは、前述したように通常の浴槽においては、湯張り量の設定量Qは100L〜400Lの範囲で設定されることを想定しており、一方で、キッチン水栓7から排出する場合には、通常50L以上の連続的使用は想定し得ないと考えられるからである。
【0060】
給湯量Qが浴槽湯張り判定値Rに到達したと判断した場合は、ステップ135に移行して湯張り温水推定温度tを算出する。湯張り温水推定温度tは、下記の式1により算出されるものである。
【0061】

式1: t=(t−t)Q/Q+t

式1は、下記の式1aおよび式1bの熱量および流量の計算式により求めた値である。
【0062】

式1a: Q・t=Q・t+Q・t
式1b: Q=Q−Q
(Q:温水の給湯量、Q:上水の給水量、Q:湯張り設定量、t:温水の平均温度、t:上水の平均温度、t:湯張り温水推定温度)

次に、ステップ140で、このようにして算出した湯張り温水推定温度tが、第1の所定温度の一例である46℃以上であるか否かを判断し、46℃以上であれば、給湯制御装置2からリモコン9へ、湯張り温水温度が高温であることを伝達し、リモコン9の表示部94にその旨を表示するか、あるいは使用者にスピーカー95から警報音やメッセージを発信する(ステップ145)。
【0063】
一方、湯張り温水推定温度tが、第1の所定温度の一例である46℃よりも低い場合には、ステップ150で、第2の所定温度の一例である34℃以下であるか否かを判断し、34℃以下であれば、給湯制御装置2からリモコン9へ、湯張り温水温度が低温であることを伝達し、リモコン9の表示部94にその旨を表示するか、あるいは使用者にスピーカー95から警報音やメッセージを発信する(ステップ155)。
【0064】
また、34℃<t<46℃であれば、湯張り温度は適温であるとして、湯張り完了のみをリモコン9の表示部94に表示するか、あるいは使用者にスピーカー95で知らせて終了する。
【0065】
なお、式1における温水の平均温度tは、給湯装置1の出口側で検出されるものであるので、供給される温水は、浴槽用定量止水栓5の本体51に至るまでに数mにおよぶ配管内を流通することになる。このため、温水は前記配管内で冷やされ、温水の温度降下が起こり、検出により求められた温水の平均温度tと、浴槽用定量止水栓5の本体51における温水の温度との間には差が生じることになる。したがって、式1において温水の平均温度tに、温度降下を考慮した補正値Cを差し引いた下記の式2により、湯張り温水推定温度tを求めた場合には、さらに湯張り温度推定の精度を向上させることができる。
【0066】

式2: t=(t−C−t)Q/Q+t

上記の補正値Cは、施工される配管の長さによって変動させることができる値であり、製品の工場出荷時にはある値で設定されているが、施工現場においてビットスイッチの操作やリモコン9の操作などより、補正値Cは任意の値に変更することができるように構成している。
【0067】
次に、浴槽用定量止水栓5の変形例として、温度調節機構のない浴槽用定量止水栓5Aの構成について説明する。図9に示すように、浴槽用定量止水栓5Aは、浴槽6への湯張り量が浴槽用定量止水栓5Aの本体51で予め設定した湯張り設定量に達すると、自動的に止水する機能を有する定量止水ユニット51と、温水と上水を混合するための湯水混合部59aと、水供給手段である水量を調節するための水量調節ハンドル59bと、湯供給手段である湯量を調節するための湯量調節ハンドル59cとから構成され、浴室内の浴槽と洗い場とが隣接する壁面に取り付けられる。湯水混合部59aには、給水配管3と給湯用配管4が接続され、水量調節ハンドル59bおよび湯量調節ハンドル59cが設けられ、それぞれのハンドルの開度を調節することで水と湯の混合量の比率が定まり、内部で湯と水を混合させた温水が本体51に送り込まれる。
【0068】
使用者が、この浴槽用定量止水栓5Aが接続された給湯装置1を用いて、浴槽6へ湯張りを行うときの制御フローを説明する。
【0069】
浴槽用定量止水栓5Aの水量調節ハンドル59bと湯量調節ハンドル59cを操作し、さらに、湯張り設定量Qを設定し、本体51に設けられたスイッチ手段(図示せず)を操作すると、上述の図8に示す制御フローがスタートする。以下、図8に示すステップ100〜ステップ155に至るフローは、上述の説明と同様であり、その説明は省略する。
【0070】
このように本実施形態において、湯温センサ12で検出することにより求めた温水の平均温度tと、流量計13で検出することにより求めた温水の給湯量Qと、水温センサ14で検出することにより求めた上水の平均温度tと、浴槽用定量止水栓5、5Aから浴槽へ湯張りされる使用者が決めた定量Qとを用いて、

式1: t=(t−t)Q/Q+t

により算出された湯張り温水推定温度tが、異常温度であると判断した場合に、使用者に知らしめる構成としたので、湯張り温度を複雑な算出式を用いないで精度高く推定することができ、使用者が給湯装置に連結された浴槽用定量止水栓を操作することにより設定した湯張り温水温度の設定ミスや、給湯装置に連結された浴槽用定量止水栓5の温度検知機能の故障や、その温度調節機構の故障などにより、浴槽の湯張り温度が異常温度になった場合でも、その異常状態を使用者に知らしめることができ、製品の安全性を高めることができる。また、温度調節機構のない浴槽用定量止水栓5Aに対して、本発明の給湯装置1を連結させることで、異常温度報知機能を有した給湯システムに機能アップすることができる。
【0071】
また、水量調節ハンドル59bおよび湯量調節ハンドル59cを備えて温度調節機構を有していない浴槽用定量止水栓5Aに、前記温水が供給されうるように給湯装置1を連結するとともに、湯温センサ12で検出することにより求めた前記温水の平均温度tと、
前記流量計13で検出することにより求めた前記温水の給湯量Qと、前記水温センサ14で検出することにより求めた前記上水の平均温度tと、前記浴槽用定量止水栓5Aから浴槽へ湯張りされる設定量Qとを用いて、

式1: t=(t−t)Q/Q+t

により湯張り温水推定温度tを算出する。この湯張り温水推定温度tが、異常温度であると判断された場合に、使用者に知らしめる構成としたので、使用者が水量調節ハンドル59bおよび湯量調節ハンドル59cの調節具合を誤ったことによって湯張り温水温度が異常温度となってしまった場合でも、湯張り温水温度を精度高く推定することにより、その異常状態を使用者に知らしめることができ、製品の安全性を高めることができる。
【0072】
また、給湯制御装置2が、式1の代わりに、配管を流れるときの温度降下を考慮した補正値Cを用いて、

式2: t=(t−C−t)Q/Q+t

により湯張り温水推定温度tを算出することとした場合には、配管の長さなどが起因する湯張り温水温度の低下を考慮することにより、より精度の高い湯張り温水温度が推定できる。また、これを現場に応じて適宜設定することでより使用状況に応じた安全性の高い製品とすることができる。
【0073】
また、温水の平均温度tおよび上水の平均温度tは、それぞれ湯張りが開始されてから終了するまでの平均値により求められることとしたので、温水の平均温度tおよび上水の平均温度tをより精度高く求めることができる。
【0074】
また、給湯制御装置2は、流量計13で連続して検出される温水の給湯量Qが、所定量以下であった場合は、温水の給湯量Qのカウントをクリアすることとしているので、浴槽への湯張りが実行されていることを適切に認識することができる。
【0075】
また、給湯制御装置2は、算出された湯張り温水推定温度tが、第1の所定温度(例えば46℃)以上であった場合は高温の異常温度であると使用者に知らしめ、第2の所定温度(例えば34℃)以下であった場合は低温の異常温度であると使用者に知らしめることとした場合には、湯張り温水温度が適温でないことに加えて、それが高温、低温のいずれであるかを使用者に知らしめることができるので、より使用者に配慮した製品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1実施形態における給湯装置1の構成、および浴槽用定量止水栓5との関係を示す模式図である。
【図2】第1実施形態における制御装置2を示す構成図である。
【図3】第1実施形態におけるリモコン9の内部構成を示す構成図である。
【図4】第1実施形態におけるリモコン9の外観を示す正面図である。
【図5】第1実施形態における浴槽用定量止水栓5の本体51の内部構成を示す模式図である。
【図6】(a)は、第1実施形態における定量止水栓5の全体構成を示す斜視図である。(b)は定量止水栓5の全体構成を示すブロック図である。
【図7】第1実施形態における浴槽用定量止水栓5の本体51の構成を示す構成図である。
【図8】第1実施形態における給湯装置1の制御フローを示すフローチャートである。
【図9】第1実施形態における浴槽用定量止水栓5Aを示す構成図である。
【符号の説明】
【0077】
1 給湯装置
2 給湯制御装置(制御手段)
5、5A 浴槽用定量止水栓(浴槽用給湯手段)
11 加熱手段
12 湯温センサ
13 流量計
14 水温センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上水の温度を検出する水温センサ(14)と、前記上水を加熱する加熱手段(11)と、前記上水が前記加熱手段(11)により加熱されて得られた温水の流量および温度をそれぞれ検出する流量計(13)および湯温センサ(12)と、前記湯温センサ(12)の検出値に基づいて求めた前記温水の平均温度t、前記流量計(13)の検出値に基づいて求めた前記温水の給湯量Q、前記水温センサ(14)の検出値に基づいて求めた前記上水の平均温度t、および前記湯温センサ(12)の下流に連結される浴槽用定量止水栓(5、5A)から排出されて浴槽へ湯張りされる温水の設定量Qを用いて、

式1: t=(t−t)Q/Q+t

により算出された湯張り温水推定温度tが、異常温度であると判断した場合に、異常温度であることを使用者に知らしめる制御手段(2)と、
を備えることを特徴とする給湯装置。
【請求項2】
前記浴槽用定量止水栓(5A)は、水供給手段(52)および湯供給手段(53)を備え温度調節機構を有していないことを特徴とする請求項1に記載の給湯装置。
【請求項3】
前記制御手段(2)は、前記式1の代わりに、配管を流れるときの温度降下を考慮した補正値Cを用いて、

式2: t=(t−C−t)Q/Q+t

により湯張り温水推定温度tを算出することを特徴とする請求項1または2に記載の給湯装置。
【請求項4】
前記温水の平均温度tおよび前記上水の平均温度tは、それぞれ湯張りが開始されてから終了するまでの平均値により求められることを特徴とする請求項1、2、または3に記載の給湯装置。
【請求項5】
前記制御手段(2)は、前記流量計(13)で連続して検出される前記温水の給湯量Qが、所定量以下であった場合は、前記温水の給湯量Qのカウントをクリアすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の給湯装置。
【請求項6】
前記制御手段(2)は、算出された前記湯張り温水推定温度tが、第1の所定温度以上であった場合は高温の異常温度であると使用者に知らしめ、第2の所定温度以下であった場合は低温の異常温度であると使用者に知らしめることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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