緩衝装置

【課題】減衰特性の設定の自由度を向上することができるとともに車両への搭載性を損なうことがない緩衝装置を提供することである。
【解決手段】本発明における課題解決手段は、シリンダ1と、ピストン2と、ピストンロッド4と、ベースバルブ30と、ピストンロッド4の一端に固定されて内部に圧力室R3を形成する有底筒状のハウジング12と、ハウジング12内に移動自在に挿入されるフリーピストン9と、フリーピストン9を挟持する伸側コイルばねS1および圧側コイルばねS2とを備えた緩衝装置Dにおいて、圧側コイルばねS1がハウジング12の筒部17によって径方向に位置決めされ、ハウジング12の底部18をハウジング内方に向けて凹ませて凹部19を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の緩衝装置にあっては、シリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入されシリンダ内をピストンロッド側の伸側室とピストン側の圧側室に区画するピストンと、ピストンに設けられた伸側室と圧側室を連通する第一流路と、ピストンロッドの先端から側部に開通して伸側室と圧側室を連通する第二流路と、第二流路の途中に接続される圧力室を備えてピストンロッドの先端に取付けられたハウジングと、圧力室内に摺動自在に挿入され圧力室を伸側圧力室と圧側圧力室とに区画するフリーピストンと、伸側圧力室と圧側圧力室とに収容されてフリーピストンを附勢する一対のコイルばねとを備えて構成されている。
【0003】
このように構成された緩衝装置は、圧力室がフリーピストンによって伸側圧力室と圧側圧力室とに区画されており、第二流路を介しては伸側室と圧側室とが直接的に連通されてはいないが、フリーピストンが移動すると伸側圧力室と圧側圧力室の容積比が変化し、フリーピストンの移動量に応じて圧力室内の液体が伸側室と圧側室へ出入りするため、見掛け上、伸側室と圧側室とが第二流路を介して連通されているが如くに振舞う。
【0004】
そのため、この緩衝装置では、低周波数の振動の入力に対しては大きな減衰力を発生し、他方、高周波数の振動の入力に対しては小さな減衰力を発生することができ、車両が旋回中等の入力振動周波数が低い場面においては高い減衰力を確実に発生可能であるとともに、車両が路面の凹凸を通過するような入力振動周波数が高い場面においては低い減衰力を確実に発生させて、車両における乗り心地を向上させることができる(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−215459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記緩衝装置にあっては、第二流路の流路抵抗や上記フリーピストンを挟持するコイルばねのばね定数を調整することで、減衰力の他、減衰力が低減される周波数を任意に設定することができる。
【0007】
ここで、緩衝装置の減衰特性を調整するべく、たとえば、ばね定数を低くするため線径の細いコイルばねを使おうとする場合、圧側圧力室内に収容されるコイルばねがフリーピストンの下端に設けた凸部にて径方向に位置決めされる関係上、ハウジング側端がハウジングに対して径方向に自由に動くことが可能となって、コイルばねのハウジング側端の着座状態が不安定になる。そのため、コイルばねがフリーピストンに与える附勢力が安定せず、緩衝装置が狙い通りの減衰特性を発揮することができなくなる可能性がある。したがって、従来の緩衝装置にあっては、線径の細いコイルばねの使用が難しく、減衰特性の設定の自由度の向上が望まれている。
【0008】
また、線径の細いコイルばねをフリーピストンの下端に設けた凸部にて径方向に位置決めしようとすると、コイル径が小さくなるため、コイルばねの密着長が長くなり、フリーピストンの十分なストロークを確保するためには、コイルばねを外力が働かない状態でフリーピストンとハウジングとの間に介装する場合の長さ(セット長)が線径の太いコイルばねを使用する場合に比較して長くなる。
【0009】
このようにコイルばねのセット長が長くなるとハウジングの全長も長くなるが、緩衝装置にあっては、ハウジングをピストンロッドの先端に設ける都合上、ハウジングの全長が長くなると、その分、緩衝装置のストロークが犠牲になる。緩衝装置は、車両のサスペンション装置に組み込む場合、全長が予め規制されるので、車両によっては、ハウジングが長いとストローク不足を招くことになり、結果、緩衝装置を車両へ搭載することを断念せざるを得ない場合がある。
【0010】
そこで、本発明は上記した不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、減衰特性の設定の自由度を向上することができるとともに車両への搭載性を損なうことがない緩衝装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を解決するために、本発明における課題解決手段は、シリンダと、当該シリンダ内に摺動自在に挿入され当該シリンダ内を伸側室と圧側室に区画するピストンと、上記シリンダ内に移動自在に挿入されるピストンロッドと、シリンダ外に設けたリザーバと、上記シリンダの端部に設けられて上記圧側室から上記リザーバへ向かう流体の流れに抵抗を与えるベースバルブと、上記ピストンロッドの一端に固定されて底部を上記ベースバルブに対向させて内部に圧力室を形成する有底筒状のハウジングと、上記ハウジング内に移動自在に挿入されて当該圧力室を伸側流路を介して上記伸側室に連通される伸側圧力室と圧側流路を介して上記圧側室に連通される圧側圧力室とに区画するフリーピストンと、上記伸側圧力室に収容される伸側コイルばねと、上記圧側圧力室に収容される圧側コイルばねとを備え、上記伸側コイルばねおよび上記圧側コイルばねとで上記フリーピストンを挟持した緩衝装置において、上記圧側コイルばねは、上記フリーピストンと上記ハウジングの底部との間に介装されるとともに、その外周がハウジングの筒部によって径方向に位置決めされてなり、上記ハウジングの底部をハウジング内方に向けて凹ませて凹部を設けたことを特徴とする。
【0012】
本発明の緩衝装置にあっては、圧側コイルばねの下端外周がハウジングの筒部によって径方向に位置決めされるようになっているので、圧側コイルばねの線径を細くしても太くしても圧側コイルばねをハウジングによって位置決めすることができ、圧側コイルばねのハウジング側端のハウジングへの着座状態が安定し、圧側コイルばねの線径を細くしても、コイル径が小さくならず、圧側コイルばねの密着長の長大化を回避することができ、圧側コイルばねのセット長も短くなる。
【0013】
さらに、本発明の緩衝装置にあっては、ハウジングの底部をハウジングの内方に向けて凹ませて凹部を設けたので、緩衝装置の最収縮時にベースバルブの先端が凹部内に進入することが可能となって、その分、緩衝装置のストローク長を長くすることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上より、本発明の緩衝装置によれば、圧側コイルばねの線径によらず減衰特性の設定の自由度を向上することができ、車両への搭載性を損なわれることもない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施の形態における緩衝装置の縦断面図である。
【図2】一実施の形態における緩衝装置の振動周波数に対する減衰特性を示した図である。
【図3】一実施の形態における緩衝装置の最収縮状態の一部縦断面図である。
【図4】一実施の形態の一変形例における緩衝装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図に基づいて本発明を説明する。本発明の緩衝装置Dは、図1に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2に区画するピストン2と、シリンダ1内に移動自在に挿入されるピストンロッド4と、シリンダ1外に設けたリザーバRと、シリンダ1の端部に設けられて圧側室R2からリザーバRへ向かう流体の流れに抵抗を与えるベースバルブ30と、ピストンロッド4の一端に固定されて底部をベースバルブ30に対向させて内部に圧力室R3を形成する有底筒状のハウジング12と、ハウジング12内に移動自在に挿入されて圧力室R3を伸側流路5を介して伸側室R1に連通される伸側圧力室7と圧側流路6を介して圧側室R2に連通される圧側圧力室8とに区画するフリーピストン9と、伸側圧力室7に収容される伸側コイルばねS1と、圧側圧力室8に収容される圧側コイルばねS2とを備えて構成され、車両における車体と車軸との間に介装されて減衰力を発生し車体の振動を抑制するものである。なお、伸側室R1とは、車体と車軸が離間して緩衝装置Dが伸長作動する際に圧縮される室のことであり、圧側室R2とは、車体と車軸が接近して緩衝装置Dが収縮作動する際に圧縮される室のことである。
【0017】
なお、上記した伸側室R1、圧側室R2、圧力室R3およびリザーバR内に充填される流体は、たとえば、作動油、水、水溶液といった液体の他、気体を使用することもできる。
【0018】
以下、各部について詳細に説明する。シリンダ1の上方には、ピストンロッド4を摺動自在に軸支するロッドガイド24が嵌合されており、シリンダ1の下端には、ベースバルブ30におけるバルブケース31が嵌合されている。また、シリンダ1の外方には、有底筒状の外筒25が設けられており、シリンダ1と外筒25との間の環状隙間でリザーバRが形成されている。また、ロッドガイド24の上方には、ピストンロッド4の外周をシールする環状のシール部材26が積層されている。そして、外筒25の上端開口端を内側へ向けて加締めることで、シール部材26、ロッドガイド24、シリンダ1およびバルブケース31が外筒25内に収容され固定される。
【0019】
ピストンロッド4は、その図1中下端としての一端に小径部4aが形成されるとともに、小径部4aの先端側には螺子部4bが形成されている。そして、ピストンロッド4には、小径部4aの先端から開口しピストンロッド4の側部に抜ける伸側流路5が形成されている。なお、図示したところでは、この伸側流路5の途中には、抵抗となる弁を設けていないが、絞り等の弁を設けるようにしてもよい。
【0020】
ピストン2は、シリンダ1内に移動自在に挿通されたピストンロッド4の一端に連結され、ピストンロッド4は、シリンダ1の図中上端部から外方へ突出されている。なお、図示したところでは、緩衝装置Dは、いわゆる片ロッド型に設定されているため、緩衝装置Dの伸縮に伴ってシリンダ1内に出入りするピストンロッド4によってシリンダ1内の容積が変化するが、変化分の流体がリザーバRから給排されて体積補償が行われるようになっている。
【0021】
ピストン2は、環状に形成されるとともに、その内周側にピストンロッド4の小径部4aが挿入されている。また、このピストン2には、伸側室R1と圧側室R2とを連通するポート3a,3bが設けられ、ポート3aの図1中上端はピストン2の図1中上方に積層される減衰力発生要素である積層リーフバルブV1にて閉塞され、他方のポート3bの図1中下端もピストン2の図1中下方に積層される減衰力発生要素である積層リーフバルブV2によって閉塞されている。
【0022】
この積層リーフバルブV1,V2は、共に環状に形成され、内周側にはピストンロッド4の小径部4aが挿入され、積層リーフバルブV1の撓み量を規制する環状のバルブストッパ11とともにピストン2に積層されている。
【0023】
そして、積層リーフバルブV1は、緩衝装置Dの収縮作動時に圧側室R2と伸側室R1の差圧によって撓んで開弁しポート3aを開放して圧側室R2から伸側室R1へ移動する液体の流れに抵抗を与えるとともに、緩衝装置Dの伸長作動時にはポート3aを閉塞するようになっており、他方の積層リーフバルブV2は、積層リーフバルブV1とは反対に緩衝装置Dの伸長作動時にポート3bを開放し、収縮作動時にはポート3bを閉塞する。すなわち、積層リーフバルブV1は、緩衝装置Dの収縮作動時における圧側減衰力を発生する減衰力発生要素であり、他方の積層リーフバルブV2は、緩衝装置Dの伸長作動時における伸側減衰力を発生する減衰力発生要素である。また、積層リーフバルブV1,V2でポート3a,3bを閉じた状態にあっても、図示はしない周知のオリフィスによって伸側室R1と圧側室R2とが連通されるようになっており、オリフィスは、たとえば、積層リーフバルブV1,V2の外周に切欠を設けたり、積層リーフバルブV1,V2が着座する弁座に凹部を設けたりするなどして形成される。なお、減衰力発生要素としては、上記した積層リーフバルブV1,V2の他にも、たとえば、チョークとリーフバルブを並列させる構成やその他の構成を採用することもできるのは当然である。
【0024】
そして、ピストンロッド4の小径部4aには、上記したバルブストッパ11、積層リーフバルブV1、ピストン2および積層リーフバルブV2が順に組み付けられ、この積層リーフバルブV2の下方から、小径部4aに形成した螺子部4bに圧力室R3を形成するハウジング12が螺着される。このように、ハウジング12をピストンロッド4に螺着することによって、ピストン2、積層リーフバルブV1,V2およびバルブストッパ11がピストンロッド4に固定される。このように、ハウジング12は、内部に圧力室R3を形成する役割だけでなく、ピストン2をピストンロッド4に固定する役割をも果たしている。
【0025】
ハウジング12は、有底筒状であって、ピストンロッド4の螺子部4bに螺合される鍔14付のナット部13と、ナット部13における鍔14の外周に開口部が加締められて一体化されるケース部16とを備えて構成されている。
【0026】
また、ナット部13は、上述のように外周に鍔14を備え、その内周には筒状の螺子部15が形成され、この螺子部15をピストンロッド4の螺子部4bに螺着することによって、ハウジング12をピストンロッド4の小径部4aに固定することが可能なようになっている。
【0027】
ケース部16は、筒部17と、筒部17の図1中下端を閉塞する底部18とを備えており、底部18には、ハウジング12内方に凹ませることで形成される凹部19が設けられており、当該底部18はハウジング12の底部を構成している。
【0028】
また、凹部19には、これを貫いて圧側流路6の一部を構成する固定オリフィス21が設けられ、筒部17の側部には圧側室R2をハウジング12内へ連通する二つの可変オリフィス22,23が設けられている。
【0029】
さらに、ケース部16の下端外周の断面形状は、図示しない工具で把持可能な真円以外の形状、たとえば、一部を切欠いた形状や、六角形等の形状とされていて把持部20が形成されている。この把持部20を工具で把持し、工具を介してトルクを付加することでハウジング12をピストンロッド4の螺子部4bへ強固に螺着することができる。また、この把持部20には、工具からトルクが付加される都合もあって、筒部17の他の部位よりも肉を厚くして強度確保がなされている。したがって、把持部20における内径は、筒部17の他の部位の内径よりも小径となっており、この把持部20内周に圧側コイルばねS2の図1中下端外周が嵌合されて圧側コイルばねS2を径方向に位置決めするようになっている。
【0030】
そして、このように構成されたケース部16内にナット部13を挿入し、ケース部16における筒部17の上端をナット部13の鍔14へ向けて加締めることで、ケース部16とナット部13とが一体化されてハウジング12が形成され、このハウジング12内で圧力室R3を画成している。なお、ナット部13とケース部16との一体化に際し、上記加締め加工以外にも溶接等の他の方法を採用することも可能である。
【0031】
上記のように形成されるハウジング12内には、フリーピストン9が摺動自在に挿入されて、圧力室R3は、このフリーピストン9によって図1中上方側の伸側圧力室7と下方側の圧側圧力室8に区画されている。
【0032】
フリーピストン9は、有底筒状とされており、底部9aを図1中下方へ向けて筒部9bの外周を筒部17の内周に摺接させてハウジング12内に挿入されている。フリーピストン9は、底部9aの圧側圧力室8側に凹状部9cを備え、凹状部9cの中心部には圧側圧力室8へ向けて突出する凸部9dが設けられている。なお、フリーピストン9の底部9aを図1中下方へ向けてハウジング12内に収容することで、フリーピストン9のナット部13における螺子部15への干渉を避けることができる。さらに、フリーピストン9は、この実施の形態の場合、筒部9bの外周に環状溝9eと、フリーピストン9の筒部9bの図1中下端から開口して環状溝9eへ通じる孔9fとを備えている。
【0033】
また、伸側圧力室7には、伸側コイルばねS1が収容されており、この伸側コイルばねS1は、フリーピストン9の底部9aの伸側圧力室側面とハウジング12を構成するナット部13の鍔14との間に介装されて、フリーピストン9を圧側圧力室8を圧縮する方向へ向けて附勢している。伸側コイルばねS1の図1中下端側外周は、フリーピストン9の筒部9bの内周に嵌合されていて、このフリーピストン9によって径方向に位置決めされている。伸側コイルばねS1の図1中上端の内周には、ナット部13が挿入されており、伸側コイルばねS1のハウジング側端である上端の径方向への著しい位置ずれが防止される。このように、伸側コイルばねS1がフリーピストン9の筒部9bの内周で径方向に位置決めされているので、伸側コイルばねS1はフリーピストン9へ安定した附勢力を作用させることができる。
【0034】
さらに、圧側圧力室8には、圧側コイルばねS2が収容されており、この圧側コイルばねS2は、フリーピストン9の底部9aの圧側圧力室側面とハウジング12を構成するケース部16の底部18との間に介装されて、フリーピストン9を伸側圧力室7を圧縮する方向へ向けて附勢している。圧側コイルばねS2のハウジング側端である図1中下端側外周は、ハウジング12の筒部17の内周に嵌合されていて、このハウジング12によって径方向に位置決めされている。圧側コイルばねS2の図1中上端の内周には、フリーピストン9の凸部9dが挿入されており、圧側コイルばねS2のフリーピストン側端である上端の径方向への著しい位置ずれが防止される。このように、圧側コイルばねS2がハウジング12の筒部17の内周で径方向に位置決めされているので、圧側コイルばねS2はフリーピストン9へ安定した附勢力を作用させることができる。
【0035】
このようにフリーピストン9は、伸側コイルばねS1および圧側コイルばねS2に挟持されてこれらによって附勢力が作用しているので、伸側コイルばねS1および圧側コイルばねS2以外からの圧力や附勢力が作用しない状態では、ハウジング12内で伸側コイルばねS1および圧側コイルばねS2の附勢力が釣り合った位置を中立位置として、当該中立位置に位置決めされる。
【0036】
そして、フリーピストン9が上記中立位置にあるときには、必ず環状溝9eが上記可変オリフィス22,23に対向して圧側圧力室8と圧側室R2を連通するとともに、フリーピストン9がストロークエンドまで変位すると、可変オリフィス22,23がフリーピストン9の外周で完全にラップされて閉塞されるようになっている。すなわち、圧側流路6は、環状溝9e、可変オリフィス22,23、孔9fおよび固定オリフィス21で構成されている。可変オリフィス22,23を二つ設けているが、その数は任意である。
【0037】
したがって、この緩衝装置Dの場合、フリーピストン9の中立位置からの変位量が所定の変位量となるときに、可変オリフィス22,23の開口全てが環状溝9eに対向する状況からフリーピストン9の外周に対向し始める状況に移行して徐々に可変オリフィス22,23の流路面積が減少し始め、圧側流路6における流路抵抗が徐々に増加する。そして、この実施の形態では、フリーピストン9の変位量の増加に伴って徐々に可変オリフィス22,23の流路面積が減少し、フリーピストン9がストロークエンドに達すると、可変オリフィス22,23が完全にフリーピストン9の外周で閉塞されて、圧側流路6における流路抵抗が最大となり圧側圧力室8が固定オリフィス21のみによって圧側室R2に連通されるようになっている。
【0038】
なお、この場合、フリーピストン9の筒部9bの図1中上端がナット部13の鍔14に当接すると、スリーピストン9のハウジング12に対するそれ以上の上方側への移動、つまり、伸側圧力室7を圧縮する方向への移動が妨げられ、これによりフリーピストン9の上方側のストロークエンドが設定されている。また、フリーピストン9の筒部9bの図1中下端がケース部16の筒部17の肉を厚くして形成した把持部20の上端に当接すると、スリーピストン9のハウジング12に対するそれ以上の下方側への移動、つまり、圧側圧力室8を圧縮する方向への移動が妨げられ、これによりフリーピストン9の下方側のストロークエンドが設定されている。上記したフリーピストン9のストロークエンドの設定は、伸側コイルばねS1および圧側コイルばねS2の最圧縮状態となると、伸側コイルばねS1および圧側コイルばねS2の線材が密着して、それ以上の圧縮はできなくなるので、伸側コイルばねS1および圧側コイルばねS2とでフリーピストン9のストロークエンドを設定するようにしてもよい。
【0039】
つづいて、シリンダ1の下端に設けたベースバルブ30は、シリンダ1の下端に嵌合してシリンダ1と外筒25の底部とで挟持されるバルブケース31と、バルブケース31に設けられて圧側室R2とリザーバRとを連通するポート32と、バルブケース31の反圧側室側に積層されてポート32の下端開口を開閉する環状のリーフバルブ33と、バルブケース31に設けた挿通孔34とリーフバルブ33の内周側に挿通される軸部材35と、軸部材35の先端に螺着されるバルブナット36とを備えて構成されている。また、バルブケース31には、ポート32に並列して圧側室R2とリザーバRとを連通するポート37が設けられており、バルブケース31の圧側室側にはポート37の上端開口を開閉する環状のチェックバルブ38が積層されている。
【0040】
軸部材35は、基端にフランジ35aを備えていて、このフランジ35aと先端に螺着されるバルブナット36とで、外周に装着されるリーフバルブ33とチェックバルブ38を挟持してバルブケース31に固定している。したがって、リーフバルブ33とチェックバルブ38は、内周側が軸部材35に固定されていて、外周側の撓みが許容されている。
【0041】
そして、緩衝装置Dのピストン2がシリンダ1に対して下方へ移動して、圧側室R2が圧縮される際、シリンダ1内にピストンロッド4が侵入する体積の流体がシリンダ1内で過剰となり、この過剰分の流体がリーフバルブ33を押し開いてリザーバRへ排出される。逆に、緩衝装置Dのピストン2がシリンダ1に対して上方へ移動する場合、シリンダ1内からピストンロッド4が退出する体積の流体がシリンダ1内で不足となり、チェックバルブ38が開いてこの不足分の流体がリザーバRからシリンダ1内へ供給される。
【0042】
緩衝装置Dは、以上のように構成されるが、続いて緩衝装置Dの作動について説明する。まず、フリーピストン9における中立位置からの変位量が可変オリフィス22,23を閉塞し始めない範囲内にある場合の緩衝装置Dにおける動作について説明する。
【0043】
この場合、フリーピストン9は、圧側流路6の抵抗を変化させることなく変位することが可能である。そして、緩衝装置Dへ入力される振動周波数が低い場合と高い場合で、ピストン速度が同じであるという条件下で考えると、まず、入力周波数が低い場合、入力される振動の振幅が大きくなり、フリーピストン9の振幅も、可変オリフィス22,23を閉塞し始めない範囲内で大きくなる。
【0044】
フリーピストン9の振幅が上記の範囲で大きくなると、フリーピストン9が伸側コイルばねS1および圧側コイルばねS2から受ける附勢力が大きくなり、緩衝装置Dが伸長する場合、圧側圧力室8内の圧力は、伸側圧力室7内の圧力よりも伸側コイルばねS1および圧側コイルばねS2の附勢力分だけ小さくなり、逆に、緩衝装置Dが収縮する場合には、伸側圧力室7内の圧力は、圧側圧力室8内の圧力よりも伸側コイルばねS1および圧側コイルばねS2の附勢力分だけ小さくなる。
【0045】
このように、緩衝装置Dが低周波振動を呈すると伸側圧力室7と圧側圧力室8に伸側コイルばねS1および圧側コイルばねS2の附勢力に見合った差圧が生じるので、伸側室R1と伸側圧力室7の差圧および圧側室R2と圧側圧力室8の差圧が小さくなり、伸側流路5、圧側流路6、伸側圧力室7および圧側圧力室8でなる見掛け上の流路を通過する流量は小さい。この見掛け上の流路を通過する流量が小さい分、ポート3a,3bの流量は大きくなるので、緩衝装置Dが発生する減衰力が大きいまま維持される。
【0046】
逆に、緩衝装置Dへの入力周波数が高い場合、入力される振動の振幅が小さくなり、フリーピストン9の振幅はより小さくなる。フリーピストン9の振幅が小さくなると、フリーピストン9が伸側コイルばねS1および圧側コイルばねS2から受ける附勢力が小さくなり、緩衝装置Dが伸長行程にあっても収縮行程にあっても、伸側圧力室7内の圧力と圧側圧力室8内の圧力とが略等しくなる。すると、伸側室R1と伸側圧力室7の差圧および圧側室R2と圧側圧力室8の差圧は大きくなるので、伸側流路5および圧側流路6を通過する流量も多くなる。
【0047】
緩衝装置Dへ入力される振動の周波数が低い場合には、見掛け上の流路を通過する流量は小さく、入力周波数が高い場合には、見掛け上の流路を通過する流量は大きくなり、入力速度が同じであれば、伸側室R1から圧側室R2或いは圧側室R2から伸側室R1へ流れる流量は、入力周波数によらず等しくならなければならないため、ポート3a,3bの積層リーフバルブV1,V2を通過する流量は、入力周波数が低い場合には多くなって減衰力が高く、反対に、入力周波数が高い場合には少なくなって減衰力は低くなる。したがって、緩衝装置Dの減衰特性は、図2に示すように、推移することになる。なお、緩衝装置Dが収縮する場合には、圧側室R2からリザーバRへ流体が移動する際に、この流体の流れにリーフバルブ33が抵抗を与えるので、リーフバルブ33と積層リーフバルブV1とが協働して緩衝装置Dの圧側の減衰力が発揮されることになる。
【0048】
したがって、この緩衝装置Dにあっては、減衰力の変化を入力振動周波数に依存させることができ、ばね上共振周波数の振動の入力に対しては高い減衰力を発生することで車両の姿勢を安定させて、車両旋回時に搭乗者に不安を感じさせることを防止できるとともに、ばね下共振周波数の振動が入力されると必ず低い減衰力を発生させて車軸側の振動の車体側への伝達を絶縁して、車両における乗り心地を良好なものとすることができる。
【0049】
つぎに、フリーピストン9の中立位置からの変位量が圧側流路6の流路抵抗を増加させる範囲内となる場合の緩衝装置Dにおける動作について説明する。可変オリフィス22,23は、緩衝装置Dが伸長しても収縮しても、フリーピストン9が中立位置から変位して、その変位量に応じて、徐々に流路面積を小さくし、フリーピストン9が上下のいずれかストロークエンドに到達すると完全に閉塞されて流路面積を固定オリフィス21の流路面積と同じくして最小とする状況となる。
【0050】
つまり、フリーピストン9が可変オリフィス22,23を閉塞し始めた後は変位量に応じて圧側流路6の流路抵抗を徐々に大きくし、フリーピストン9がストロークエンドに到達すると流路抵抗が最大となる。
【0051】
ここで、フリーピストン9がストロークエンドまで変位するのは、伸側圧力室7もしくは圧側圧力室8への液体の流出入量が多い場合であり、具体的には、緩衝装置Dの伸縮の振幅が大きい場合である。
【0052】
緩衝装置Dに入力される振動周波数が比較的高い場合、緩衝装置Dは、フリーピストン9が可変オリフィス22,23を閉塞し始める位置へ変位するまでは、比較的低い減衰力を発生しているが、フリーピストン9が可変オリフィス22,23を閉塞し始める位置を越えて変位するようになると、徐々に圧側流路6の流路抵抗が徐々に大きくなっていくので、フリーピストン9のそれ以上のストロークエンド側への移動速度が減少されて、見掛け上の流路を介しての液体の移動量も減少し、その分ポート3a,3bを通過する液体量が増加することになり、緩衝装置Dの発生減衰力は徐々に大きくなっていく。
【0053】
そして、フリーピストン9がストロークエンドに達すると、それ以上、見掛け上の流路を介しての液体の移動はなくなり、伸側室R1から圧側室R2へ或いは圧側室R2から伸側室R1への流体の移動は、緩衝装置Dの伸縮方向を転ずるまではポート3a,3bのみを介して行われることになり、緩衝装置Dは、最大の減衰係数で減衰力を発生することになる。
【0054】
すなわち、フリーピストン9がストロークエンドまで変位してしまうような高周波数で大振幅の振動が緩衝装置Dに対し入力されても、フリーピストン9の中立位置からの変位量が任意の変位量を超えるとフリーピストン9がストロークエンドに達するまでに緩衝装置Dは徐々に発生減衰力を大きくするので、低い減衰力から急激に高い減衰力に変化することが無くなる。つまり、フリーピストン9がストロークエンドに達して圧力室R3内を介して伸側室R1と圧側室R2の液体の交流ができなくなるときに急激に減衰力の大きさが変化してしまうことがなくなり、低減衰力から高減衰力への減衰力変化がなだらかとなる。さらに、フリーピストン9が圧力室R3における両端側のストロークエンドまで到る際に、徐々に発生減衰力を大きくするので、減衰力の急激な変化を抑制する機能は、緩衝装置Dの伸圧の両行程で発揮される。
【0055】
したがって、この緩衝装置Dにあっては、高周波数で振幅が大きい振動が入力されても、発生減衰力がなだらかに変化することになって、搭乗者に減衰力の変化によるショックを知覚させずにすみ、車両における乗り心地を向上することができ、特に、急激な減衰力変化によって車体が振動しボンネットが共振して異音が発生してしまう事態も防止でき、この点でも車両における乗り心地を向上することができる。
【0056】
そして、本発明の緩衝装置Dによれば、圧側コイルばねS2の下端外周がハウジング12の筒部17によって径方向に位置決めされるようになっているので、圧側コイルばねS2の線径を細くしても太くしても圧側コイルばねS2をハウジング12によって位置決めすることができ、圧側コイルばねS2のハウジング側端のハウジング12への着座状態が安定するので、フリーピストン9へ安定した附勢力を作用させることができ、圧側コイルばねS2の線径のよらず緩衝装置Dに狙い通りの減衰特性を発揮させることができる。
【0057】
また、本発明の緩衝装置Dでは、圧側コイルばねS2の下端外周がハウジング12の筒部17によって径方向に位置決めされるようになっているので、圧側コイルばねS2の線径を細くしても、コイル径が小さくならず、圧側コイルばねS2の密着長の長大化を回避することができ、圧側コイルばねS2のセット長も短くなる。これに加えて、本発明の緩衝装置Dによれば、ハウジング12の底部18をハウジング12の内方に向けて凹ませて凹部19を設けたので、図3に示すように、緩衝装置Dの最収縮時にベースバルブ30におけるバルブナット36の図3中上端側が凹部19内に進入することが可能となって、その分、緩衝装置Dのストローク長を長くすることができる。
【0058】
このように、本発明の緩衝装置Dによれば、圧側コイルばねS2の線径によらず圧側コイルばねS2が安定した附勢力をフリーピストン9に作用させることができ、圧側コイルばねS2のセット長の長大化が回避されるとともに、ストローク長の確保が可能となるので、減衰特性の設定の自由度を向上しつつ、車両への搭載性を損なうことがない。
【0059】
また、この緩衝装置Dにあっては、フリーピストン9が有底筒状とされ、伸側コイルばねS1の外周がフリーピストン9の筒部9bの内周によって径方向に位置決めされるので、伸側コイルばねS1の線径を細くしても太くしても伸側コイルばねS1をフリーピストン9によって位置決めすることができ、伸側コイルばねS1のフリーピストン側端のフリーピストン9への着座状態が安定するので、フリーピストン9へ安定した附勢力を作用させることができる。したがって、本実施の形態の緩衝装置Dによれば、伸側コイルばねS1の線径によらず緩衝装置Dに狙い通りの減衰特性を発揮させることができるので減衰特性の設定の自由度をより一層向上することができ、また、伸側コイルばねS1の線径を細くしてもセット長が長くならないので、車両への搭載性も損なわれない。
【0060】
なお、圧側コイルばねS2を、図4に示すように、円錐ばねとして、大径側端の外周をハウジング12の内周で位置決めされるようにしてもよい。このように圧側コイルばねS2を円錐ばねとすることで、圧側コイルばねS2が最も縮んだ時の長さである密着長を径が同一であるコイルばねに比較して短くすることができるから、より、ハウジング12の全長をより一層短くすることができ、緩衝装置Dのストローク長をより長くすることができる。この場合、フリーピストン9の底部に凸部9gを設けておき、圧側コイルばねS2の小径側端内に当該凸部を挿入してこの小径側端を径方向に位置決めしておくことで、より安定した附勢力をフリーピストン9へ作用させることができる。
【0061】
また、この図4に示した緩衝装置Dでは、ハウジング12の圧側コイルばねS2の大径側が嵌合する部位の内径を図1の緩衝装置Dよりも大径とし、圧側コイルばねS2の大径側の径を大きくすることで、凹部19の深さをより深くすることができるようになっている。このように凹部19の深さがより深くなることで、より一層バルブナット36の凹部19への許容侵入量が増えるので、その分、緩衝装置Dのストローク長を長くすることができる。さらに、上記した実施の形態の緩衝装置Dでは、フリーピストン9が有底筒状とされ、伸側コイルばねS1の外周がフリーピストン9の筒部9bの内周によって径方向に位置決めされていたが、圧側コイルばねS2の下端外周がハウジング12の筒部17によって径方向に位置決めされていれば所期の目的を達することができるので、このように構成しなくともよい。
【0062】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の緩衝装置は、車両の制振用途に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 シリンダ
2 ピストン
4 ピストンロッド
5 伸側流路
7 伸側圧力室
6 圧側流路
8 圧側圧力室
9 フリーピストン
9b フリーピストンの筒部
12 ハウジング
18 ハウジングにおける底部
19 凹部
30 ベースバルブ
D 緩衝装置
R リザーバ
R1 伸側室
R2 圧側室
R3 圧力室
S1 伸側コイルばね
S2 圧側コイルばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、当該シリンダ内に摺動自在に挿入され当該シリンダ内を伸側室と圧側室に区画するピストンと、上記シリンダ内に移動自在に挿入されるピストンロッドと、シリンダ外に設けたリザーバと、上記シリンダの端部に設けられて上記圧側室から上記リザーバへ向かう流体の流れに抵抗を与えるベースバルブと、上記ピストンロッドの一端に固定されて底部を上記ベースバルブに対向させて内部に圧力室を形成する有底筒状のハウジングと、上記ハウジング内に移動自在に挿入されて当該圧力室を伸側流路を介して上記伸側室に連通される伸側圧力室と圧側流路を介して上記圧側室に連通される圧側圧力室とに区画するフリーピストンと、上記伸側圧力室に収容される伸側コイルばねと、上記圧側圧力室に収容される圧側コイルばねとを備え、上記伸側コイルばねおよび上記圧側コイルばねとで上記フリーピストンを挟持した緩衝装置において、上記圧側コイルばねは、上記フリーピストンと上記ハウジングの底部との間に介装されるとともに、その外周がハウジングの筒部によって径方向に位置決めされてなり、上記ハウジングの底部をハウジング内方に向けて凹ませて凹部を設けたことを特徴とする緩衝装置。
【請求項2】
上記フリーピストンは有底筒状とされ、上記伸側コイルばねは、その外周が上記フリーピストンの筒部の内周によって径方向に位置決めされることを特徴とする請求項1に記載の緩衝装置。
【請求項3】
上記圧側コイルばねは、円錐ばねであって、大径側端の外周がハウジングの内周で位置決めされることを特徴とする請求項1または2に記載の緩衝装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−113307(P2013−113307A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256928(P2011−256928)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】