説明

脚式移動ロボット

【課題】搭載するカメラ(撮像素子)に太陽光などの高輝度の光源が写り込まれるとき、光源の方向を特定し、よって撮影対象を適切な輝度値で撮影可能とした脚式移動ロボットを提供する。
【解決手段】撮影対象を含む外界からの入射光によって画像を撮像する撮像素子(CCDカメラ)によって撮像された画像に高輝度の入射光によって撮像された高輝度撮像部位があるとき、ハンドを駆動するなどして高輝度の入射光の方向を特定する入射方向特定動作を実行する(S10からS14)。また、高輝度撮像部位の輝度を低減する輝度低減動作も実行する(S16からS36)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は脚式移動ロボットに関し、より具体的には視覚センサとしてのCCDカメラ(撮像素子)を備えると共に、それに太陽光などの高輝度の光源が写り込まれるときも撮影対象を適切な輝度値で撮影するようにした脚式移動ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1において、太陽光などの高輝度の光源がカメラの画角内に写り込まれるとき、撮像素子面上に内部反射で発生するゴーストの位置、形状などを予測し、撮影画像のどの部分がゴーストか判定し、判定されたゴースト部分を撮影者の指定により、あるいは自動的に補正(低減処理)する技術が提案されている。
【特許文献1】特開2006−129084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1記載の技術はいわゆるデジタルカメラやビデオカメラであり、ユーザが人などの撮影対象に向けて操作して撮影するカメラについての技術であるが、その種のカメラを脚式移動ロボットなどの移動体に搭載して視覚センサとして使用することがある。
【0004】
そのような場合、図14に示す如く、太陽光やスポットライトなどの高輝度光源が撮像素子に撮像されるとき、光源の影響で暗部にいる本来撮影したい人などの撮影対象の輝度値が潰れてしまい、撮影対象を特定できないことがある。図14で実際には人は画面に右側に存在する。
【0005】
従ってこの発明の目的は上記した課題を解決し、搭載するカメラ(撮像素子)に太陽光などの高輝度の光源が写り込まれるとき、光源の方向を特定し、よって撮影対象を適切な輝度値で撮影可能とした脚式移動ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、請求項1に係る脚式移動ロボットにあっては、撮影対象を含む外界からの入射光によって画像を撮像する撮像素子と、前記撮像素子によって撮像された画像に高輝度の入射光によって撮像された高輝度撮像部位があるとき、前記高輝度の入射光の方向を特定する入射方向特定動作を実行する高輝度入射方向特定動作実行手段とを備える如く構成した。
【0007】
請求項2に係る脚式移動ロボットにあっては、前記高輝度入射方向特定動作実行手段は、基体と、前記基体に連結される腕部と、前記腕部に連結されるハンドとを少なくとも有すると共に、少なくとも前記ハンドを駆動して前記高輝度の入射光の方向を特定する如く構成した。
【0008】
請求項3に係る脚式移動ロボットにあっては、さらに、前記高輝度撮像部位の輝度を低減する輝度低減動作を実行する輝度低減動作実行手段を備える如く構成した。
【0009】
請求項4に係る脚式移動ロボットにあっては、基体と、前記基体に連結される腕部と、前記腕部に連結されるハンドとを少なくとも有すると共に、前記輝度低減動作実行手段は、前記ハンドを駆動して前記高輝度の入射光を遮断することで前記高輝度撮像部位の輝度を低減する如く構成した。
【0010】
請求項5に係る脚式移動ロボットにあっては、基体と、前記基体に連結されると共に、前記撮像素子が搭載される頭部とを少なくとも有すると共に、前記輝度低減動作実行手段は、前記頭部を回転させて前記高輝度の入射光を回避する如く構成した。
【0011】
請求項6に係る脚式移動ロボットにあっては、基体と、前記基体に連結される頭部と脚部と腕部とを少なくとも有すると共に、前記輝度低減動作実行手段は、前記脚部を駆動して前記高輝度の入射光を回避する如く構成した。
【0012】
尚、上記で「高輝度の入射光」とは光源などの輝度が比較的高い入射光を、「高輝度撮像部位」とは高輝度の入射光によって画像に撮像される部位を意味する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る脚式移動ロボットにあっては、撮影対象を含む外界からの入射光によって画像を撮像する撮像素子によって撮像された画像に高輝度の入射光によって撮像された高輝度撮像部位があるとき、高輝度の入射光の方向を特定する入射方向特定動作を実行する如く構成したので、搭載するカメラ(撮像素子)に太陽光などの高輝度の光源が写り込まれるとき、高輝度の入射方向を特定することで、それを回避しつつ、カメラパラメータを修正して撮影対象を適切な輝度値で撮影することが可能となる。
【0014】
請求項2に係る脚式移動ロボットにあっては、ハンドを少なくとも有すると共に、少なくともハンドを駆動して高輝度の入射光の方向を特定する如く構成したので、上記した効果に加え、高輝度の入射方向を簡易に特定することができる。
【0015】
請求項3に係る脚式移動ロボットにあっては、さらに高輝度撮像部位の輝度を低減する輝度低減動作を実行する如く構成したので、上記した効果に加え、太陽光などの高輝度の入射光によって撮像された高輝度撮像部位があるときも、その輝度を低減することで人などの撮影対象を適切な輝度値で撮影することができる。
【0016】
請求項4に係る脚式移動ロボットにあっては、ハンドなどを少なくとも有すると共に、ハンドを駆動して高輝度の入射光を遮断することで高輝度撮像部位の輝度を低減する如く構成したので、上記した効果に加え、撮像素子や画像処理の性能を上げることなく、人などの撮影対象を適切な輝度値で撮影することができる。
【0017】
請求項5に係る脚式移動ロボットにあっては、頭部などを少なくとも有すると共に、頭部を回転させて高輝度の入射光を回避する如く構成したので、同様に、撮像素子や画像処理の性能を上げることなく、人などの撮影対象を適切な輝度値で撮影することができると共に、高輝度撮像部位が比較的大きいときも確実に撮影対象を撮影することができる。
【0018】
請求項6に係る脚式移動ロボットにあっては、基体に連結される脚部などを少なくとも有すると共に、脚部を駆動して高輝度の入射光を回避する如く構成したので、同様に、撮像素子や画像処理の性能を上げることなく、人などの撮影対象を適切な輝度値で撮影することができると共に、高輝度撮像部位が比較的大きいときも一層確実に撮影対象を撮影することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面に即してこの発明に係る脚式移動ロボットを実施するための最良の形態について説明する。
【実施例】
【0020】
図1はこの実施例に係る脚式移動ロボットの正面図、図2は図1に示すロボットの側面図である。
【0021】
図1に示すように、脚式移動ロボット(移動体。以下単に「ロボット」という)10は、左右2本の脚部12L,12R(左側をL、右側をRとする。以下同じ)を備える。脚部12L,12Rは、基体14の下部に連結される。基体14の上部には頭部16が連結されると共に、側方には左右2本の腕部20L,20Rが連結される。左右の腕部20L,20Rの先端には、それぞれハンド(エンドエフェクタ)22L,22Rが連結される。この実施例にあっては、脚式移動ロボットとして、2本の脚部と2本の腕部を備えた、1.3m程度の身長を有するヒューマノイド型のロボットを例にとる。
【0022】
図2に示すように、基体14の背部には格納部24が設けられ、その内部には電子制御ユニット(以下「ECU」と呼ぶ)26およびバッテリ(図示せず)などが収容される。
【0023】
図3は、図1に示すロボット10をスケルトンで表す説明図である。以下、図3を参照し、ロボット10の内部構造について関節を中心に説明する。尚、図示のロボット10は左右対称であるので、以降L,Rの付記を省略する。
【0024】
左右の脚部12は、それぞれ大腿リンク30と下腿リンク32と足部34とを備える。大腿リンク30は、股関節を介して基体14に連結される。図3では、基体14を基体リンク36として簡略的に示すが、基体リンク36は、関節38を介して上半部36aと下半部36bとが相対変位自在に構成される。
【0025】
大腿リンク30と下腿リンク32は膝関節を介して連結されると共に、下腿リンク32と足部34は足関節を介して連結される。股関節は、Z軸(ヨー軸)回りの回転軸40と、Y軸(ピッチ軸)回りの回転軸42と、X軸(ロール軸)回りの回転軸44とから構成される。即ち、股関節は3自由度を備える。
【0026】
膝関節はY軸回りの回転軸46から構成され、1自由度を備える。足関節はY軸回りの回転軸48とX軸回りの回転軸50とから構成され、2自由度を備える。このように、左右の脚部12のそれぞれには3個の関節を構成する6個の回転軸(自由度)が与えられ、脚部全体としては合計12個の回転軸が与えられる。
【0027】
脚部12は、アクチュエータ(図示せず)によって駆動される。脚部12を駆動する脚部アクチュエータは基体14と脚部12の適宜位置に配置された12個の電動モータからなり、上記した12個の回転軸を個別に駆動する。
【0028】
また、左右の腕部20は、それぞれ上腕リンク52と下腕リンク54を備える。上腕リンク52は、肩関節を介して基体14に連結される。上腕リンク52と下腕リンク54は、肘関節を介して連結されると共に、下腕リンク54とハンド22は手首関節を介して連結される。
【0029】
肩関節はY軸回りの回転軸56とX軸回りの回転軸58とZ軸回りの回転軸60とから構成され、3自由度を備える。肘関節はY軸回りの回転軸62から構成され、1自由度を備える。手首関節はZ軸回りの回転軸64とY軸回りの回転軸66とX軸回りの回転軸68とから構成され、3自由度を備える。このように、左右の腕部20のそれぞれには3個の関節を構成する7個の回転軸(自由度)が与えられ、腕部全体として合計14個の回転軸が与えられる。
【0030】
腕部20も、脚部12と同様に図示しないアクチュエータによって駆動される。腕部20を駆動する腕部アクチュエータは基体14と腕部20の適宜位置に配置された14個の電動モータからなり、上記した14個の回転軸を個別に駆動する。ロボット10は脚部アクチュエータあるいは腕部アクチュエータの動作が制御されて各回転軸が適宜な角度で駆動されることにより、脚部12あるいは腕部20に所望の動きが与えられる。
【0031】
ハンド22には、5本の指部70が設けられる。指部70は図示しないハンドアクチュエータによって動作自在とされ、腕部20の動きに連動して物を把持する、あるいは適宜な方向を指差すなどの動作が実行可能とされる。
【0032】
頭部16は、基体14に首関節を介して連結される。首関節はZ軸回りの回転軸72とY軸回りの回転軸74とから構成され、2自由度を備える。回転軸72,74も、図示しない頭部アクチュエータによって個別に駆動される。頭部アクチュエータの動作を制御して回転軸72,74を適宜な角度で駆動することにより、頭部16を所望の方向に向けることができる。基体リンク36も関節38に配置されたアクチュエータ(図示せず)を駆動することで、上半部36aと下半部36bが相対回転させられる。
【0033】
左右の脚部12には、それぞれ力センサ(6軸力センサ)76が取り付けられ、床面から脚部12に作用する床反力の3方向成分Fx,Fy,Fzとモーメントの3方向成分Mx,My,Mzを示す信号を出力する。左右の腕部20にも同種の力センサ78がハンド22と手首関節の間で取り付けられ、腕部20に作用する外力の3方向成分Fx,Fy,Fzとモーメントの3方向成分Mx,My,Mzを示す信号を出力する。
【0034】
基体14には傾斜センサ80が設置され、鉛直軸に対する基体14の傾斜角度とその角速度などの状態量を示す信号を出力する。頭部16には、人などの撮影対象を含む外界からの入射光によって撮像する、2個(左右)の撮像素子、具体的にはCCDカメラ(以下「カメラ」という)82が設置される。また、頭部16には、マイクロフォン84aとスピーカ84bからなる音声入出力装置84が設けられる。
【0035】
上記したセンサなどの出力は、ECU26(図2に示す)に入力される。ECU26はマイクロコンピュータからなり、図示しないCPUや入出力回路、ROM、RAMなどを備える。
【0036】
図4は、ロボット10の構成をECU26の入出力関係を中心に示すブロック図である。
【0037】
図示の如く、ロボット10は、上記したセンサなどに加え、回転軸40などのそれぞれに配置されたロータリエンコーダ群86と、ジャイロセンサ88と、GPS受信器90と、人(撮影対象)が携行するICタグ92に無線系で接続されてICタグ92から発信されるICタグ情報を受信するICタグ信号受信器(リーダ)94を備える。
【0038】
ロータリエンコーダ群86はそれぞれ、回転軸40などの回転角度、即ち、関節角度に応じた信号を出力する。ジャイロセンサ88は、ロボット10の移動方向と距離に応じた信号を出力する。GPS受信器90は衛星から発信された電波を受信し、ロボット10の位置情報(緯度と経度)を取得してECU26に出力する。
【0039】
ICタグ信号受信器94は、ICタグ92に記憶されると共に、それから発信される識別情報(RFID(Radio Frequency ID)、具体的にはICタグ92の携行者である人を識別する識別情報)を無線系で受信してECU26に出力する。
【0040】
ECU26は、力センサ76、傾斜センサ80およびロータリエンコーダ群86などの出力に基づいて歩容を生成して歩行制御を行う。具体的には、前記した脚部アクチュエータ(符号100で示す)の動作を制御して脚部12を駆動してロボット10を移動(歩行)させる。歩容生成および歩行制御については本出願人が提案した特許第3726081号に記載されているので、詳細な説明は省略する。
【0041】
また、ECU26は、歩行制御などに付随して腕部アクチュエータ(符号102で示す)とハンドアクチュエータ(符号104で示す)の動作を制御して腕部20とハンド22を駆動すると共に、頭部アクチュエータ(符号106で示す)の動作を制御して頭部16の向きを調整する。
【0042】
さらに、ECU26は、カメラ(撮像素子)82に高輝度撮像部位が撮像されているとき、高輝度の入射方向を特定すると共に、高輝度撮像部位の輝度を低減させる輝度低減動作を実行する。
【0043】
図5は、ECU26が高輝度入射方向特定および輝度低減動作を実行するときの構成を機能的に示すブロック図である。
【0044】
図示の如く、そのときのECU26の動作を機能別に見ると、ECU26は、ステレオ処理部26aと、ヒストグラム生成部26bと、露出パラメータ設定部26cと、画像処理部26dと、行動生成部26eとからなる。
【0045】
ステレオ処理部26aは、移動体(ロボット)10に搭載された2個のカメラ(撮像素子)82の出力を入力し、ステレオ処理によって視差から画素ごとの距離情報を算出する。カメラ82の画素の数は320×240とする。ステレオ処理部26aは、濃淡画像データから3次元(3D)データを算出して出力する。
【0046】
ヒストグラム生成部26bは撮影された画像の輝度値ヒストグラムを作成すると共に、距離ごとに、あるいは距離に応じて重み付けを行う。
【0047】
露出パラメータ設定部26cは、撮像したい距離の輝度値から露出パラメータ(より具体的にはシャッタ速度)を設定する。カメラ82はロボット10に搭載されて視覚センサとして機能する関係上、自ら撮影対象を捜索して撮影することはなく、撮影画像から撮影対象を抽出しなければならない。そのため、カメラ82の絞りは最小に固定され、近距離、具体的には0.5mから2.5m程度で焦点が合うように調整される。従って、露出パラメータとしてはシャッタ速度のみが調整自在とされる。
【0048】
画像処理部26dは、ロボット10が移動するとき、視覚センサとしての画像処理を行う。
【0049】
行動生成部26eは、カメラ82に光源などの高輝度の入射光によって撮像された高輝度撮像部位があるとき、高輝度の入射方向を特定すると共に、高輝度撮像部位の輝度を低減する輝度低減動作を実行する。
【0050】
次いで、上記したECU26の動作をさらに詳細に説明する。
【0051】
図6は、図5と同様、ECU26が輝度低減動作するときの処理を示すフロー・チャートである。
【0052】
以下説明すると、S10において撮影対象(人)を含む外界からの入射光によって撮像された画像に高輝度の入射光によって撮像された高輝度撮像部位があるか(あるいは除去されていないか)否か判断する。
【0053】
S10において否定されるときは以降の処理をスキップすると共に、肯定されるときはS12に進み、高輝度撮像部位の方向が特定されているか、換言すれば高輝度の入射光の方向が特定されているか否か判断する。S12で否定されるときはS14に進み、高輝度の入射光の方向を特定する入射方向特定動作を実行する。
【0054】
図7はその動作を示すサブ・ルーチン・フロー・チャートである。図8は図7の動作を説明する説明図である。
【0055】
図8を参照しつつ、図7に従って以下説明すると、S100においてハンド22を目標とする方向に視野角が制限されるように駆動する。即ち、入射光の方向が不明であることから、図8(a)に示す如く、左右両方のハンド22R,22Lを撮影対象が存在する方向を目標とし、それに向けて駆動する。このとき、ハンド22R,22Lの間に間隔をおき、撮影対象からの入射光が遮断されないように駆動する。
【0056】
次いでS102に進み、図8(b)(c)に示す如く、ハンド22R,22Lの間隔を保ちながら、高輝度撮像部位が画面から除去されるまで、撮影対象から左に離れる方向に頭部16と基体14とハンド22を駆動する。このとき、基体14の脚部12に対する可動範囲がリミットに達したら、頭部16とハンド22をさらに左側可動最大値Almaxまで左方向に駆動して行う。
【0057】
高輝度撮像部位が画面から除去されたときはS104に進み、そのときの方向、即ち、高輝度の入射光の方向をAlと記録する。
【0058】
次いでS106に進み、頭部16と基体14とハンド22を目標方向に戻す、即ち、S100で述べた姿勢に駆動する。
【0059】
次いでS108に進み、反転して撮影対象から右に離れる方向にハンド22R,22Lの間隔を保ちながら、高輝度撮像部位が画面から除去されるまで、頭部16と基体14とハンド22を駆動し、高輝度撮像部位が画面から除去されたときはS110に進み、そのときの方向、即ち、高輝度の入射光の方向をArと記録する。入射光の方向Al,Arは図8に示す平面における角度を意味する。
【0060】
次いでS112に進み、頭部16と基体14を中央(正面)に戻し、ハンド22を下ろすように駆動する。
【0061】
次いでS114に進み、AlとArが得られたか(高輝度の入射光の方向が特定されたか)否か判断し、AlとArが共に得られた判断されるときはS116に進み、両者を2で除算して入射光の方向を特定できたと判断すると共に、一方が不足したときはS118に進み、特定失敗と判断する。
【0062】
図6フロー・チャートの説明に戻ると、次いでS16に進み、図7の処理において入射光の方向が特定されたか否か判断する。肯定されるときはS18に進み、脚部制御1を実行する。
【0063】
図9はその動作を示すサブ・ルーチン・フロー・チャートである。図10は図9の動作を説明する説明図である。
【0064】
図10を参照しつつ、図9に従って説明すると、S200において特定された高輝度の入射光の方向(換言すれば高輝度撮像部位の方向)と撮影対象の位置から脚部12の目標位置を設定し、S202に進み、脚部12などを駆動して歩行を開始し、S204で到着して終わる。
【0065】
具体的には、図10(a)に示す如く、光源(高輝度)の入射光が画角内にあるとき、同図(b)に示す如く、左に旋回しつつ1歩右に移動し、その入射光を回避する(入射光が画角の外側となる)ように脚部12を駆動する。
【0066】
図6フロー・チャートの説明に戻ると、S18の後S12に戻ると共に、S16で否定される(入射光の方向が特定されなかったと判断される)ときはS20に進み、脚部制御2を実行する。
【0067】
図11はその動作を示すサブ・ルーチン・フロー・チャートである。図12は図11の動作を説明する説明図である。
【0068】
図12を参照しつつ、図11に従って説明すると、S300において高輝度の入射光の方向ArまたはAlが得られているか否か判断し、肯定されるときはS302に進み、Al+(Ac/2)にカメラ82を向ける(Al不定のときはAr+(Ac/2)にカメラ82を向ける。図12(a)に示す如く、Acは画角を示す。従って、上記の処理は、高輝度の入射光が画角に入らないようにすることを意味する。
【0069】
他方、S300で否定されるときはS304に進み、Almax+(Ac/2)あるいはArmax+(Ac/2)にカメラ82を向ける。Armaxは右側可動最大値を意味する。この処理も高輝度の入射光が画角に入らないようにすることを意味する。
【0070】
次いでS306に進み、カメラ82の向きを変更する。即ち、S302あるいはS304でカメラ82が左に向けられたときは右、右に向けられたときは左にカメラ82の向きを変更する。
【0071】
図12(a)(b)(c)に示す如く、上記した処理を画像から高輝度撮像部位が除去されるまで繰り返し、除去されるとS308に進み、カメラ82の向きを保ったまま、撮影対象が中央(正面)に見える位置に歩行目標を設定し、S310に進み、それに向かって歩行を開始し、S312で到着したと判断されると、終了する。
【0072】
図6フロー・チャートの説明に戻ると、S20の後はS12に戻る。一方、S12で肯定されるときはS22に進み、撮影対象の位置、高輝度の入射光の方向からハンド22を出す位置を決定し、S24に進み、ハンド22の位置が撮影対象を隠すことができるか否か判断し、肯定されるときはS26に進み、ハンド22を駆動する。
【0073】
図13はハンド22の駆動を説明する説明図である。図示の如く、ハンド22Rを駆動し、光源からの高輝度の入射光(光軸)を遮断するように動作させるが、ハンド22Rの位置はA,B,Cの順で自身の頭部16に搭載されるカメラ82に近づき、光源からの入射光を遮断する面積も増加する一方、撮影対象からの入射光(光軸)も遮断する可能性が増加する。
【0074】
従って、S26においては、撮影対象からの入射光を遮断することなく、光源からの高輝度の入射光を完全に遮断する位置、即ち、可能な限りAに近い位置となるように、ハンド22を駆動する。
【0075】
次いでS28に進み、撮影対象が適切な輝度値で撮像されているか否か判断し、肯定されるときは処理を終了すると共に、S28で否定されるときはS30に進み、図13に示す如く、ハンド22の画像(換言すれば頭部16)からの距離を変更し、S32で距離リミット(図13に示すC)に達したと判断されるまで、上記の処理を繰り返す。尚、S32で距離リミットに達したと判断されるときS18に進む。
【0076】
他方、S24で否定されるときはS34に進み、隠すことができる高輝度撮像部位の幅を判断し、大きいと判断されるときはS18に進むと共に、小さいと判断されるときはS36に進み、上半身制御を実行する。これは具体的には、高輝度の入射光をずらす(回避する)ように頭部16を駆動する制御を意味する。次いでS12に進み、上記した処理を繰り返す。
【0077】
この実施例に係る脚式移動ロボット10にあっては、撮影対象を含む外界からの入射光によって画像を撮像する撮像素子(CCDカメラ)82と、前記撮像素子によって撮像された画像に高輝度の入射光によって撮像された高輝度撮像部位があるとき、前記高輝度の入射光の方向を特定する入射方向特定動作を実行する高輝度入射方向特定動作実行手段(ECU26、ステレオ処理部26a、ヒストグラム生成部26b、露出パラメータ設定部26c、画像処理部26d、行動生成部26e,S10からS14,S100からS118)とを備える如く構成したので、搭載するカメラ(撮像素子)82に太陽光などの高輝度の光源が写り込まれるとき、高輝度の入射方向を特定することで、それを回避しつつ、カメラパラメータを修正して撮影対象を適切な輝度値で撮影することが可能となる。
【0078】
また、前記高輝度入射方向特定動作実行手段は、基体14と、前記基体に連結される腕部20と、前記腕部に連結されるハンド22とを少なくとも有すると共に、少なくとも前記ハンド22を駆動して前記高輝度の入射光の方向を特定する(S14,S100からS118,S16)如く構成したので、上記した効果に加え、高輝度の入射方向を簡易に特定することができる。
【0079】
さらに、前記高輝度撮像部位の輝度を低減する輝度低減動作を実行する輝度低減動作実行手段(S18,S20,S200からS204,S300からS312,S26からS36)を備える如く構成したので、上記した効果に加え、太陽光などの高輝度の入射光によって撮像された高輝度撮像部位があるときも、その輝度を低減することで人などの撮影対象を適切な輝度値で撮影することができる。
【0080】
また、基体14と、前記基体に連結される腕部20と、前記腕部に連結されるハンド22とを少なくとも有すると共に、前記輝度低減動作実行手段は、前記ハンド22を駆動して前記高輝度の入射光を遮断することで前記高輝度撮像部位の輝度を低減する(S26からS32)如く構成したので、上記した効果に加え、撮像素子や画像処理の性能を上げることなく、人などの撮影対象を適切な輝度値で撮影することができる。
【0081】
また、基体14と、前記基体に連結されると共に、前記撮像素子が搭載される頭部16とを少なくとも有すると共に、前記輝度低減動作実行手段は、前記頭部16を回転させて前記高輝度の入射光を回避する(S36)如く構成したので、同様に、撮像素子や画像処理の性能を上げることなく、人などの撮影対象を適切な輝度値で撮影することができると共に、高輝度撮像部位が比較的大きいときも確実に撮影対象を撮影することができる。
【0082】
また、基体14と、前記基体に連結される頭部16と脚部12と腕部20とを少なくとも有すると共に、前記輝度低減動作実行手段は、前記脚部12を駆動して前記高輝度の入射光を回避する(S18,S200からS204,S20,S300からS312)如く構成したので、同様に、撮像素子や画像処理の性能を上げることなく、人などの撮影対象を適切な輝度値で撮影することができると共に、高輝度撮像部位が比較的大きいときも一層確実に撮影対象を撮影することができる。
【0083】
尚、上記において、撮影対象として人を予定したが、それ以外にロボット10の作業で予定される道具やワークなどの物体であっても良い。
【0084】
また上記において、撮影対象の有無を撮影対象が携行するICタグ92から発信される識別情報を受信するICタグ信号受信器94の出力から判断するようにしたが、カメラ82の出力から判断しても良い。さらには外部からコマンドを入力して教示しても良い。
【0085】
また上記において、移動体の例として脚式移動ロボット、具体的には2足歩行ロボットを例示したが、それに限られるものではなく、自律移動自在であればどのようなものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】この発明の実施例に係る脚式移動ロボットの正面図である。
【図2】図1に示すロボットの側面図である。
【図3】図1に示すロボットをスケルトンで示す説明図である。
【図4】図1に示すロボットの構成を電子制御ユニット(ECU)の入出力関係を中心に示すブロック図である。
【図5】図4に示す電子制御ユニットが高輝度入射方向特定および輝度低減動作を行なうときの構成を機能的に示すブロック図である。
【図6】図5と同様、電子制御ユニットが高輝度撮像部位の輝度低減動作を行なうときの処理を示すフロー・チャートである。
【図7】図6の高輝度の入射光の方向を特定する入射方向特定動作を示すサブ・ルーチン・フロー・チャートである。
【図8】図7の動作を説明する説明図である。
【図9】図6の脚部制御1を示すサブ・ルーチン・フロー・チャートである。
【図10】図9の動作を説明する説明図である。
【図11】図6の脚部制御2を示すサブ・ルーチン・フロー・チャートである。
【図12】図11の動作を説明する説明図である。
【図13】図6のハンドの駆動を説明する説明図である。
【図14】この実施例に係るカメラ(撮像素子)で撮影を予定する場面の一例である。
【符号の説明】
【0087】
10:脚式移動ロボット(移動体、ロボット)、12:脚部、14:基体、20:腕部、26:ECU(電子制御ユニット)、26a:ステレオ処理部、26b:ヒストグラム生成部、26c:露出パラメータ設定部、26d:画像処理部、26e:行動生成部、82:CCDカメラ(撮像素子。カメラ)、92:ICタグ、94:ICタグ信号受信器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影対象を含む外界からの入射光によって画像を撮像する撮像素子と、前記撮像素子によって撮像された画像に高輝度の入射光によって撮像された高輝度撮像部位があるとき、前記高輝度の入射光の方向を特定する入射方向特定動作を実行する高輝度入射方向特定動作実行手段とを備えたことを特徴とする脚式移動ロボット。
【請求項2】
前記高輝度入射方向特定動作実行手段は、基体と、前記基体に連結される腕部と、前記腕部に連結されるハンドとを少なくとも有すると共に、少なくとも前記ハンドを駆動して前記高輝度の入射光の方向を特定することを特徴とする請求項1記載の脚式移動ロボット。
【請求項3】
さらに、前記高輝度撮像部位の輝度を低減する輝度低減動作を実行する輝度低減動作実行手段を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の脚式移動ロボット。
【請求項4】
基体と、前記基体に連結される腕部と、前記腕部に連結されるハンドとを少なくとも有すると共に、前記輝度低減動作実行手段は、前記ハンドを駆動して前記高輝度の入射光を遮断することで前記高輝度撮像部位の輝度を低減することを特徴とする請求項3記載の脚式移動ロボット。
【請求項5】
基体と、前記基体に連結されると共に、前記撮像素子が搭載される頭部とを少なくとも有すると共に、前記輝度低減動作実行手段は、前記頭部を回転させて前記高輝度の入射光を回避することを特徴とする請求項3または4記載の脚式移動ロボット。
【請求項6】
基体と、前記基体に連結される頭部と脚部と腕部とを少なくとも有すると共に、前記輝度低減動作実行手段は、前記脚部を駆動して前記高輝度の入射光を回避することを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の脚式移動ロボット。

【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図11】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−56530(P2009−56530A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224756(P2007−224756)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】