説明

脱穀装置の選別部構造

【課題】 処理物量が少ない場合でも、シーブケースの後端からの穀粒類の排出を効果的に抑制した選別が行われるようにする。
【解決手段】 選別部に備えられたシーブケース36の後端に、縦壁状の排塵調節板54を上下に位置変更可能に装備するとともに、選別部に供給される処理物の量を検知する検知手段を備え、この検知手段と排塵調節板と54を、処理物量が多くなるほど排塵調節板54が低くなり、処理物量が少なくなるほど排塵調節板54が高くなるように連係してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに搭載される脱穀装置の選別部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインに搭載された脱穀装置の選別部には、処理物を後方に揺動移送しながら篩い選別するシーブケースが装備されており、このシーブケース後端から穀粒類が装置外に排出されることを抑制し、いわゆる3番ロスの減少のために種々の手段が講じられている。例えば、特許文献1に示されるように、シーブケースの後端部に装備されるストローラックを上下揺動可能に構成し、検出した処理物量が多くなるとストローラックを振り下げて搬送面の後ろ上がり傾斜角度を緩くし、処理物の後方への流動を促進してシーブケース上での処理物の滞留をなくし、検出した処理物量が少なくなるとストローラックを振り上げて搬送面の後ろ上がり傾斜角度をきつくすることで処理物の後方への流動を抑制し、処理物に含まれる穀粒類の落下回収を促進することができるよう構成されている。
【特許文献1】特開平9−187159号公報(図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記手段によると、処理物量が少ない場合、ストローラックが振り上げられるので、ストローラックの下方空間が上下に大きいものとなって、選別部前方の唐箕からの選別風がストローラックの下方空間を通過しやすくなり、ストローラック上で後方への流動を抑制された処理物から穀粒が落下する際に、大きい下方空間を落下する途中で選別風を強く受けて装置外に排出される穀粒が発生することがあった。
【0004】
本発明は、このような点に着目してなされたものであり、処理物量が少ない場合でも、シーブケースの後端からの穀粒類の排出を効果的に抑制した選別が行われるようにすることを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、脱穀装置の選別部に備えられたシーブケースの後端に、縦壁状の排塵調節板を上下に位置変更可能に装備するとともに、選別部に供給される処理物の量を検知する検知手段を備え、この検知手段と排塵調節板とを、処理物量が多くなるほど排塵調節板が低くなり、処理物量が少なくなるほど排塵調節板が高くなるように連係してあることを特徴とする。
【0006】
上記構成によると、処理物量が多くなると排塵調節板が低くなり、シーブケースの後端に至った処理物の排出が速やかに行われ、シーブケース上に多量の処理物が滞留することが少なくなる。これによって、シーブケースに滞留した処理物中のワラ屑などが漏下することが少なくなって、ワラ屑やゴミの混入の少ない選別精度の高い穀粒回収が行われる。処理物量が少なくなると排塵調節板が高くなって、シーブケースの後端に至った処理物の排出が抑制され、処理物に含まれる穀粒類が漏下回収されやすくなり、穀粒類がワラ屑などと共に装置外に排出されてしまうことが少なくなる。
従って、第1の発明によると、排塵調節板の高さを自動的に調節することで、常に選別処理する処理物の量に対応した好適な選別を行うことができる。
【0007】
第2の発明は、上記第1の発明において、
検出手段を、脱穀装置の扱室後方に配備された排ワラ搬送装置における搬送排ワラの量を検知する構造としてあるものである。
【0008】
上記構成によると、脱穀処理された穀稈の量が多いほど、選別処理される処理物の量も多くなるので、排ワラの量を検知することで、間接的に処理物の量を検知することができる。
【0009】
第3の発明は、上記第1または2の発明において、
シーブケースに備えられた精選別用のグレンシーブの前部に、粗選別部位の前部から漏下してきた処理物を後方に送るグレンパンを配備するとともに、このグレンパンの後端を前後に位置変更移動可能に構成し、検知手段とグレンパンとを、処理物量が多くなるほどグレンパンの後端が後方に位置し、処理物量が少なくなるほどグレンパンの後端が前方に位置するように連係してあるものである。
【0010】
上記構成によると、処理物量が多くなるとグレンパンの後端が後方に移動して、その分
だけ、グレンシーブの漏下面積が小さくなる。これによって、細かいワラ屑がグレンシーブから漏下することが抑制され、ワラ屑の混入の少ない選別精度の高い穀粒回収が行われる。処理物量が少なくなるとグレンパンの後端が前方に移動して、その分だけ、グレンシーブの漏下面積が大きくなる。これによって、穀粒の漏下が促進されて、効率の良い穀粒の漏下回収が行われる。
【0011】
第4の発明は、上第1〜3のうちのいずれか一つの発明において、
シーブケースに備えられた精選別用のグレンシーブの後方下部に、漏下してきた処理物を1番回収部に導く流し板を配備するとともに、この流し板の後端を前後に位置変更移動可能に構成し、検知手段と流し板とを、処理物量が多くなるほど流し板の後端が前方に位置し、処理物量が少なくなるほど流し板の後端が後方に位置するように連係してあるものである。
【0012】
上記構成によると、処理物量が多くなると流し板の後端が前方に移動して、落下してくる処理物が1番回収部の後方に位置する2番回収部に導かれやすくなり、ワラ屑が1番回収部に導かれることが抑制される。処理物量が少なくなると流し板の後端が後方に移動して、落下してくる処理物が1番回収部に導かれやすくなり、穀粒が2番回収部に導かれることが抑制される。
【0013】
第5の発明は、上第1〜4のうちのいずれか一つの発明において、
シーブケースに備えられた粗選別用のチャフシーブを開度調節可能に構成し、検知手段とチャフシーブとを、処理物量が多くなるほどチャフシーブの開度が大きくなり、処理物量が少なくなるほどチャフシーブの開度が小さくなるように連係してあるものである。
【0014】
上記構成によると、処理物量が多くなるとチャフシーブの開度が大きくなって処理物の漏下が促進され、チャフシーブでの処理物の滞留が少なくなり、シーブケースの後端に至って装置外に排出される穀粒を少くすることができる。処理物量が少なくなるとチャフシーブの開度が小さくなって処理物の漏下が抑制され、チャフシーブを漏下するワラ屑が少なくなって、ワラ屑の混入の少ない穀粒回収が行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に、自脱型のコンバインの側面図が示されている。このコンバインは、左右一対のクローラ走行装置1を備えた機体フレーム2の前部に複数条刈り仕様の刈取り部3が連結され、前記機体フレーム2の右側前部に運転部4が配備されるとともに、機体フレーム2の左側に脱穀装置5が搭載され、かつ、脱穀装置5の右側に穀粒回収タンク6が装備された構造となっている。前記刈取り部3で刈取られた穀稈は後方上方に搬送された後、フィードチェーン7に受け渡されて脱穀装置5に横倒れ姿勢で供給搬送され、脱穀装置5で脱穀処理されて選別回収された穀粒は穀粒回収タンク6に送られ、脱穀後の排ワラは排ワラ搬送装置8によって斜め後方に搬送された後、排ワラカッタ9で細断されて地上に放出されるようになっている。
【0016】
前記刈取り部3には、左右に並列配備された複数の引起し装置11、バリカン型の刈取り装置12、刈取り穀稈を後方上方に搬送して前記フィードチェーン7に横倒れ姿勢で供給する穀稈搬送装置13、等が装備され、刈取り部3全体が基端の支点P周りに油圧シリンダ14によって上下に駆動揺動されるようになっている。
【0017】
図10に示すように、前記引起し装置11は、引起しケース15の上部に備えた駆動スプロケット16とテンション輪17、および、引起しケース15の下部に備えた遊転輪18に亘って引起しチェーン19を巻回するとともに、引起しチェーン19に所定ピッチで引起し爪20を揺動可能に枢着して構成されている。引起しチェーン19が上方に移動する引起し径路においては、引起し爪20の基部が案内レール21に摺接案内されて、引起し爪20が引起しケース15から側方に突出する引起し作用姿勢に振り出され、引起しチェーン19が回動する上部巻回径路と引起しチェーン19が下方に移動する戻り径路においては、引起し爪20が引起しケース15内に揺動格納されるようになっている。
【0018】
引起し爪20を引起し作用姿勢に摺接案内する前記案内レール21は、固定レール部21aと、上下にスライド移動可能な上部可動レール部21bとで構成されており、上部可動レール部21bを上下に位置変更することで、引起し爪20の引起し作用高さを調節することができるようになっている。
【0019】
上部可動レール部21bは、バネ22によって下方にスライド付勢されるとともに、操作リンク23、および、操作ワイヤ24を介して運転部4の近傍に配備された操作レバー25に連係されており、運転部4での操作レバー25の操作によって引起し爪20の引起し作用高さを任意に調節することが可能となっている。
【0020】
図2に示すように、前記脱穀装置5の上部には、扱胴31を前後水平に軸支した扱室32が備えられるとともに、脱穀装置5の下部には選別部33が配備されている。フィードチェーン7で挟持搬送されて脱穀装置5に供給された穀稈は扱胴31によって脱穀処理され、穀稈から分離された処理物は扱室32の下部に沿って張設した受網34で漏下選別され、受網34を漏下した比較的小さい処理物は選別部33の前半部に落下供給される。受網34を漏下しなかった大きい処理物は扱室32の終端の送塵口35から排出されて選別部33の前後中間部に落下供給されるようになっている。
【0021】
選別部33には、落下供給された処理物を載置して後方(図2では右方)に向けて揺動搬送する前後に長いシーブケース36が装備されている。シーブケース36には、前部グレンパン37、粗選別用のチャフシーブ38、精選別用のグレンシーブ39、ほぐし用のふるい線40、ストローラック41、などが装備されており、シーブケース36の後部に連結した偏芯回動機構42によってシーブケース36を前後に往復揺動することで、載置した処理物を後方に揺動移送しながら篩い選別するよう構成されている。
【0022】
選別部33の前端部下方には、選別風をシーブケース36に吹き付けて風選処理する唐箕43が配備されるとともに、選別部33の下部には、グレンシーブ39から漏下した穀粒(1番物)を回収する1番回収部44と、ストローラック41などから漏下した枝梗付き穀粒などの2番物を回収する2番回収部45が配備されている。1番回収部44に回収した穀粒は1番スクリュー46によって機外に横送りした後、揚穀装置47によって揚送して穀粒回収タンク6に供給する。2番回収部45に回収した2番物を2番スクリュー48によって横送りした後、2番還元装置49によって揚送し、シーブケース36の前部に還元供給して再選別処理を行うように構成されている。
【0023】
扱室32の後方で選別部33の後部上方箇所には、排ワラ搬送装置8における排ワラ搬送経路の下側に位置させて排塵ファン50が横架されており、扱室32の終端の送塵口35から吹き出てきた浮塵やワラ屑、選別風によって選別部33の後部上方に吹き上げられた浮塵やワラ屑が、排塵ファン50に吸引されて強制的に機体後方に排出されるようになっている。
【0024】
シーブケース36の最前部上方に配備された前部グレンパン37は鋸歯形断面形状の波板材で形成されており、受網34の前半部から漏下した穀粒を多く含む処理物が前部グレンパン37で受け止められて後方に揺動移送され、この間に、軽いワラ屑と重い穀粒類とが上下2層に比重差選別される。
【0025】
図9に示すように、粗選別用の前記チャフシーブ38は、多数のリップ板38aを前後方向に所定間隔をもって並列配備して構成されている。各リップ板38aは、上端支点a周りに前後揺動可能に枢支されるとともに、各リップ板38aの下端部が前後に長い操作リンク38bに枢支連結されており、操作リンク38bが前後に位置変更されることで、各リップ板38aの角度が変更されて、前後のリップ板38aの間に形成される漏下間隙の開度が増減され、処理物の漏下具合が変更調節されるようになっている。チャフシーブ38の開度を変更する操作リンク38bは、後述するように自動的に前後に移動調節される。
【0026】
ほぐし用のふるい線40は、前記送塵口35の下方において後ろ向き片持ち状に配備されており、受網34を漏下することなく送塵口35から落下してきた処理物(主としてワラ屑類)はふるい線40で受け止められ、塊になっている処理物はふるい線40の上で揺すられることでほぐされてチャフシーブ38の後半部に落下供給される。
【0027】
ストローラック41は上辺が鋸歯状に形成された複数の縦板材を左右に並列配備して構成されており、チャフシーブ38の終端部近傍から後向き片持ち状に延出されている。ストローラック41は、チャフシーブ38の終端から後方に送り出されたワラ屑類を選別部33の後端に設けられた排塵口51に向けて揺動移送しながら、ワラ屑類に含まれる2番物を分離落下させる。
【0028】
前記グレンシーブ39はシーブケース36の底部に沿って配備されており、穀粒を漏下し得る細かい目合いのクリンプ網あるいは樹脂成形網で構成されている。このグレンシーブ39の前部上側には、チャフシーブ38の前端部付近から漏下してきた処理物を後方に移送する波形のグレンパン52が配備されている。このグレンパン52は前後にスライド移動可能に支持されており、後述するように自動的に前後調節される。
【0029】
シーブケース36の下部には、撓み変形可能な樹脂製の流し板53が前方下方に向けて片持ち状に配備され、この流し板53の遊端部が1番回収部44における後方側の前下がり斜面に摺接支持されている。グレンシーブ39の後部から漏下した穀粒やチャフシーブ38の後部から漏下した処理物は唐箕43からの選別風を受け、軽いワラ屑類は後方に飛散除去されるとともに、重い穀粒が落下して流し板53に受け止められる。流し板53に受け止められた穀粒はシーブケース36と一体に前後動する流し板53によって揺すられながら速やかに流下して1番回収部44に送り込まれる。この流し板53はその傾斜方向に沿って前後にスライド移動可能に支持されており、後述するように自動的に前後に移動調節される。
【0030】
シーブケース36の後端には、ストローラック41の後端に近接して排塵調節板54が縦壁状に装着されている。前記排塵調節板54は上下動可能に支持されており、後述するように自動的に上下に移動調節される。
【0031】
図2に示すように、前記排ワラ搬送装置8は、縦回し巻回された搬送チェーン55と、その下側径路に沿って遠近移動可能、かつ、接近方向に弾性付勢して対向配備された挟持レール56とで構成されており、搬送される排ワラ量に応じて挟持レール56が搬送チェーン55に対して遠近変位するようになっている。
【0032】
上記排ワラ搬送装置8には、搬送される排ワラの量を検知する検知機構57が備えられている。図3に示すように、前記検知機構57は、前記挟持レール56の変位をポテンショメータ58で検知するよう構成されており、ポテンショメータ58の検出情報が制御装置59に入力されている。
【0033】
制御装置59には、検知機構57で検出された排ワラ量に応じて回動制御される電動モータ60が接続されるとともに、この電動モータ60の回転出力が大きくギヤ減速されて自動調節用の操作アーム61が揺動駆動されるようになっている。
【0034】
前記操作アーム61には4本の操作ワイヤ62,63,64,65が連結されており、各操作ワイヤ62,63,64,65が前記排塵調節板54の上下調節部、前記グレンパン52の前後調節部、前記流し板53の前後調節部、および、前記チャフシーブ38の開度調節部にそれぞれ以下のように連係されている。
【0035】
〔排塵調節板54との連係構造〕
図3,図4に示すように、排塵調節板54はシーブケース36の後端に上下長孔66と案内ピン67を介して平行に上下移動可能に支持されており、シーブケース36の後端左右に同調回動可能に備えたベルクランク形の操作リンク68の一端にピン係止されるとともに、操作リンク68に装着したバネ69の張力によって排塵調節板54が上方にスライド付勢されている。操作リンク68の他端に前記操作ワイヤ62が連結されており、電動モータ60の回動によって操作ワイヤ62が引き操作あるいは弛緩操作されることで排塵調節板54が高さ調節されるようになっている。
【0036】
電動モータ60は、検知機構57で検知された排ワラ量が多いほど、操作アーム61を図3において反時計方向に回動させて操作ワイヤ62を引き操作し、排塵調節板54を引き下げ移動させ、検知機構57で検知された排ワラ量が少ないほど、操作アーム61を図3において時計方向に回動させて操作ワイヤ62を弛緩操作し、排塵調節板54を押し上げ移動させるようになっている。
【0037】
すなわち、排ワラの量(穀稈の量)が多いほどシーブケース36に供給される処理物の量も多くなるので、処理物量が多くなるのに対応して排塵調節板54を低く調節することで、シーブケース36の後端に至った処理物の排出を速やかに行うことができ、シーブケース36に多量の処理物が滞留することがなくなる。これによって、シーブケース36に滞留した処理物中のワラ屑などが漏下することが少なくなって、ワラ屑やゴミの混入の少ない選別精度の高い穀粒回収が行われる。
【0038】
逆に、排ワラの量が少なくなるほどシーブケース36に供給される処理物の量も少なくなるので、処理物量が少なくなるのに対応して排塵調節板54を高く調節することで、シーブケース36の後端に至った処理物の排出を抑制することができ、これによって、処理物に含まれる穀粒類が漏下回収されやすくなり、穀粒類がワラ屑などと共に装置外に排出されてしまうこと(3番ロス)が少なくなる。
【0039】
〔グレンパン52との連係構造〕
図5,図6に示すように、グレンパン52は左右の案内レール71に沿って平行に前後移動可能に支持されており、シーブケース36の背部に備えたベルクランク形の操作リンク72の一端にグレンパン52の前端部がピン係止されるとともに、バネ73の張力によってグレンパン52が後方にスライド付勢されている。操作リンク72の他端に前記操作ワイヤ63が連結されており、電動モータ60の回動によって操作ワイヤ63が操作されることでグレンパン52が前後調節されるようになっている。
【0040】
すなわち、処理物量が多くなって操作ワイヤ63が操作アーム61によって弛緩操作されることで、図5(a)に示すように、グレンパン52の後端が後方に移動して、その分
だけ、グレンシーブ39の漏下面積が小さくなる。これによって、細かいワラ屑がグレンシーブ39から漏下することが抑制され、ワラ屑の混入の少ない選別精度の高い穀粒回収が行われる。逆に、処理物量が少なくなって操作ワイヤ63が操作アーム61によって引き操作されることで、図5(b)に示すように、グレンパン52の後端が前方に移動し、その分だけ、グレンシーブ39の漏下面積が大きくなる。これによって、穀粒の漏下が促進されて、効率の良い穀粒の漏下回収が行われる。
【0041】
〔流し板53との連係構造〕
図7,図8に示すように、流し板53は左右の案内レール74に沿って平行に前後移動可能に支持されており、シーブケース36の底部左右に同調回動可能に備えたベルクランク形の操作リンク75の一端に流し板53の後端部がピン係止されるとともに、操作リンク75に装着したバネ76の張力によって流し板53が後方にスライド付勢されている。操作リンク75の他端に前記操作ワイヤ64が連結されており、電動モータ60の回動によって操作ワイヤ64が操作されることで流し板53が前後に位置調節されるようになっている。
【0042】
すなわち、処理物量が多くなって操作ワイヤ64が操作アーム61によって引き操作されることで、図7(a)に示すように、流し板53の後端eが前方に移動して、落下してくる処理物が2番回収部45に導かれやすくなり、ワラ屑が1番回収部44に導かれることが抑制される。逆に、処理物量が少なくなって操作ワイヤ64が操作アーム61によって弛緩操作されることで、図7(b)に示すように、流し板53の後端eが後方に移動して、落下してくる処理物が1番回収部44に導かれやすくなり、穀粒が2番回収部45に導かれることが抑制される。
【0043】
〔チャフシーブ38との連係構造〕
図9に示すように、チャフシーブ38における所定のリップ板38aの下端部と操作リンク38bとを枢支連結する下部枢支ピン77が、シーブケース36の側面に形成された円弧状の長孔78を貫通してシーブケース36の外側に突出され、シーブケース36の外側面に上部支点a周りに揺動可能に枢支連結された操作部材79の下部に下部枢支ピン77が連結されており、操作部材79が外部から揺動操作されることで操作リンク38bが前後に移動されて、チャフシーブ38の開度が変更されるようになっている。
【0044】
前記操作部材79の下端部にバネ80が張設されて、操作部材79がチャフシーブ38の開度を小さくする方向に揺動付勢されるとともに、操作部材79の下端部に前記操作ワイヤ65が連結されており、電動モータ60の回動によって操作ワイヤ65が操作されることでチャフシーブ38の開度が調節されるようになっている。
【0045】
すなわち、処理物量が多くなって操作ワイヤ65が操作アーム61によって引き操作されることで、操作部材79がバネ80に抗して揺動され、チャフシーブ38の開度が大きくなって処理物の漏下が促進され、チャフシーブ38での処理物の滞留が少なくなり、シーブケース36の後端に至って装置外に排出される穀粒を少くすることができる。逆に処理物量が少なくなって操作ワイヤ65が操作アーム61によって弛緩操作されることで、前記操作部材79がバネ80によって揺動され、チャフシーブ38の開度が小さくなって処理物の漏下が抑制され、チャフシーブ38を漏下するワラ屑が少なくなって、ワラ屑の混入の少ない穀粒回収が行われる。
【0046】
〔他の実施例〕
(1)上記実施例では、検知機構57で検知された排ワラ量に応じて排塵調節板54、グレンパン52、流し板53、チャフシーブ38をそれぞれ自動調節する場合を例示したが、検知機構57と排塵調節板54のみを連係した構造、あるいは、検知機構57と排塵調節板54とを連係するとともに、検知機構57とグレンパン52、流し板53、チャフシーブ38の少なくともいずれか一つとを連係した構造で実施することもできる。
【0047】
(2)排塵調節板54、グレンパン52、流し板53、あるいは、チャフシーブ38、などの調節部位と検知機構57との連係構造は、電動モータ60などのアクチュエータを介した電気的なものの他に、操作ワイヤやリンクなどを用いた機械的なものとすることもできる。
【0048】
(3)上記実施例では、排ワラ量を検知することでシーブケース36に供給される処理物量を間接的に検知する構造としているが、前記シーブケース36に供給される処理物の嵩を直接に検知する構造として実施することもできる。
【0049】
(4)本発明は、刈り取った作物を脱穀装置5に全稈投入する普通型のコンバインに適用することもでき、この場合は、前記排ワラ搬送装置8が備えられないので、処理物の量を検知する手段としては、前記シーブケース36に供給される処理物の量を直接に検知する構造とすることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】コンバインの側面図
【図2】脱穀装置の縦断側面図
【図3】排塵調節板の高さ制御構造を示す連係図
【図4】排塵調節板の高さ調節構造を示す縦断側面図
【図5】グレンパンの位置調節構造を示す縦断側面図
【図6】グレンパンの位置調節構造を示す平面図
【図7】流し板の位置調節構造を示す縦断側面図
【図8】流し板の位置調節構造を示す背面図
【図9】チャフシーブの開度調節構造を示す縦断側面図
【図10】引起し装置の内部構造を示す正面図
【符号の説明】
【0051】
5 脱穀装置
8 排ワラ搬送装置
33 選別部
36 シーブケース
38 チャフシーブ
39 グレンシーブ
44 1番回収部
52 グレンパン
53 流し板
54 排塵調節板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選別部に備えられたシーブケースの後端に、縦壁状の排塵調節板を上下に位置変更可能に装備するとともに、選別部に供給される処理物の量を検知する検知手段を備え、この検知手段と前記排塵調節板とを、処理物量が多くなるほど排塵調節板が低くなり、処理物量が少なくなるほど排塵調節板が高くなるように連係してあることを特徴とする脱穀装置の選別部構造。
【請求項2】
前記検知手段を、脱穀装置の扱室後方に配備された排ワラ搬送装置における搬送排ワラの量を検知する構造としてある請求項1記載の脱穀装置の選別部構造。
【請求項3】
前記シーブケースに備えられた精選別用のグレンシーブの前部に、粗選別部位の前部から漏下してきた処理物を後方に送るグレンパンを配備するとともに、このグレンパンの後端を前後に位置変更移動可能に構成し、前記検知手段と前記グレンパンとを、処理物量が多くなるほどグレンパンの後端が後方に位置し、処理物量が少なくなるほどグレンパンの後端が前方に位置するように連係してある請求項1または2記載の脱穀装置の選別部構造。
【請求項4】
前記シーブケースに備えられた精選別用のグレンシーブの後方下部に、漏下してきた処理物を1番回収部に導く流し板を配備するとともに、この流し板の後端を前後に位置変更移動可能に構成し、前記検知手段と前記流し板とを、処理物量が多くなるほど流し板の後端が前方に位置し、処理物量が少なくなるほど流し板の後端が後方に位置するように連係してある請求項1〜3のいずれか一項に記載の脱穀装置の選別部構造。
【請求項5】
前記シーブケースに備えられた粗選別用のチャフシーブを開度調節可能に構成し、前記検知手段と前記チャフシーブとを、処理物量が多くなるほどチャフシーブの開度が大きくなり、処理物量が少なくなるほどチャフシーブの開度が小さくなるように連係してある請求項1〜4のいずれか一項に記載の脱穀装置の選別部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−254266(P2009−254266A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106152(P2008−106152)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】