説明

脱穀装置

【課題】穀粒の乾燥を選別室内でまんべんなく、かつ汚染させないで行うことができる脱穀装置を提供すること。
【解決手段】穀稈から穀粒を脱粒させる扱胴(69)を軸架した扱室(66)と、該扱室(66)の下方に設けて該扱室(66)から落下する被処理物を後方に搬送しながら穀粒を選別する選別室(50)を備えた脱穀装置において、選別室(50)に備えた唐箕(79)のケース(79b)と、揺動棚(51)から落下する被処理物を受けて移送螺旋(65a,86)側へ案内する板体(64,85)を、空間部を間に形成した二重構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン等に搭載される脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインは穀稈の刈取装置と、脱穀装置と、脱穀後一時的に穀粒を貯留するグレンタンクと、グレンタンクに貯留されている穀粒を排出するオーガなどから構成される。
脱穀装置の主脱穀部である扱室には刈取装置で刈り取った穀稈が挿入され、穀稈は扱室に軸架された扱胴の表面に多数設けられた扱歯と扱網との相互作用により脱穀される。穀稈から分離された被処理物(穀粒や藁くず)は扱網を通過して、選別室の揺動棚で受け止められ、二番穀粒(二番物という場合がある)や藁屑などを分離して穀粒のみをグレンタンクに搬送する。
【0003】
二番穀粒は扱室の側方に設けられた二番処理室に送られ二番処理胴により穀粒、枝梗粒などに分離され、再び揺動棚に落下して比重選別や送風選別されて穀粒、藁屑などに分離される。扱室で発生した藁くずなど短尺のものは排塵処理室に搬送され、排塵処理胴により処理される。
【0004】
脱穀装置の中で最初に穀稈が挿入される扱室においては、被処理物が搬送されながら扱胴が回転することで穀稈の大部分が脱穀される。そして、扱室から落下する被処理物は、選別室において、上下前後方向に揺動する揺動棚上を移動しながら、後方のシーブで唐箕からの送風を受けて風力選別される。
【0005】
選別室においては、揺動棚上を移動してきた被処理物や扱室から一番棚板上と二番棚板上に落下する被処理物を濾過選別し、排藁などは機外に排出し、枝梗粒や穂切れ粒、稈切れ粒などと単粒とを分別して枝梗粒や穂切れ粒、稈切れ粒のみ二番処理室に送り、単粒はグレンタンクへ送る。
【0006】
下記特許文献1〜3に記載された構成では脱穀装置の選別室を加温させて穀粒を棚板上で移送し易くしている。特許文献1には選別室の外壁面又は底面にエンジン排気ガスが流れる配管を埋め込んで選別室を加温する構成が開示され、特許文献2、3には選別室の一番棚板と二番棚板の間から選別室内に向けてエンジン排気ガスを送る構成が開示されている。
【特許文献1】特開昭61−15617号公報
【特許文献1】特開平7−322750号公報
【特許文献1】特開2001−54317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1記載の構成によれば、脱穀装置の選別室の壁面の排ガスが流れる配管部分のみが加温され、また特許文献2、3記載の構成によれば、脱穀装置の選別室内に直接エンジン排気ガスが流れ込むため、穀粒が排ガスで汚染されるおそれがある。
本発明の課題は、穀粒の乾燥を選別室内でまんべんなく、かつ汚染させないで行うことができる脱穀装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は次の解決手段により解決できる。
請求項1記載の発明は、穀稈から穀粒を脱粒させる扱胴(69)を軸架した扱室(66)と、該扱室(66)の下方に設けて該扱室(66)から落下する被処理物を後方に搬送しながら穀粒を選別する選別室(50)を備えた脱穀装置において、選別室(50)に備えた唐箕(79)のケース(79b)と、揺動棚(51)から落下する被処理物を受けて移送螺旋(65a,86)側へ案内する板体(64,85)を、空間部を間に形成した二重構造としたことを特徴とする脱穀装置である。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記二重構造の空間部に、脱穀装置駆動用のエンジン(21)から排出される排気ガスを流す構成としたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置である。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記二重構造の底部側の壁体を断熱材で構成したことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、選別室50に備えた唐箕79のケース79bと、揺動棚51から落下する被処理物を受けて移送螺旋(65a,86)側へ案内する板体(64,85を、空間部を間に形成した二重構造としたので、例えばこの空間部に高温の気体を流入させれば、唐箕79からの選別風の温度を上げて藁屑などの被選別物の乾燥を促進でき、選別作業の精度および能率を向上させることができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、前記二重構造のなす空間部内にエンジン排気ガスを流すことにより、唐箕ファン79aからの選別風の温度を上げることができる。そのため、藁屑が選別室50の構成部材に付着するのを防止する事ができ、三番ロス(三番物中に含まれる穀稈をいう)の増大と穀粒の選別不良を防止する事ができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、二重構造のなす空間部の底部側の壁体を断熱材で構成したことにより、穀粒の乾燥が効果的に行えるものでありながら、脱穀装置の底面側に雑草や藁屑が接触しても発火しにくくなり、安全性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施例を図面と共に説明する。図1には本発明の実施の形態の穀類の収穫作業を行うコンバインの左側面図を示し、図2には図1のコンバインの平面図を示し、図3には図1のコンバインの脱穀装置の左側面断面図を示し、図4に図3のA−A線断面図、図5に図3のB−B線断面図、図6に図3のC−C線断面図、図7に図1のコンバインの脱穀装置の天井分壁面を取り外した状態での平面図を示し、図8に図1のコンバインの脱穀装置の揺動棚などを含む部分の一部切り欠き平面図を示す。
なお、本明細書ではコンバインの前進方向を前、後進方向を後、前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右という。
【0015】
図1ないし図8に示すコンバイン1の走行フレーム2の下部には、ゴムなどの可撓性材料を素材として無端帯状に成型した左右一対のクローラ4を持ち、乾田はもちろんのこと、湿田においてもクローラ4が若干沈下するだけで自由に走行できる構成の走行装置3を備え、走行フレーム2の前部には刈取装置6を搭載し、走行フレーム2の上部にはエンジン(図示せず)、脱穀装置15、操縦席20およびグレンタンク30を搭載する。
【0016】
刈取装置6は、図示しない刈取昇降シリンダの伸縮作用により刈取装置6全体を昇降して、圃場に植生する穀稈を所定の高さで刈取りができる構成としている。刈取装置6の前端下部に分草具7を、その背後に傾斜状にした穀稈引き起こし装置8を、その後方底部には刈刃(図示せず)を配置している。刈刃と脱穀装置15のフィードチェン14の始端部との間に、図示しない前部搬送装置、扱深さ調節装置、供給搬送装置などを順次穀稈の受継搬送と扱深さ調節とができるように配置している。
【0017】
コンバイン1の刈取装置6の作動は次のように行われる。まず、エンジンを始動して変速用、操向用などの操作レバー(図示せず)をコンバイン1が前進するように操作し、刈取・脱穀クラッチ(図示せず)を入り操作して機体の回転各部を伝動しながら、走行フレーム2を前進走行させると、刈取、脱穀作業が開始される。圃場に植立する穀稈は、刈取装置6の前端下部にある分草具7によって分草作用を受け、次いで穀稈引き起こし装置8の引起し作用によって倒伏状態にあれば直立状態に引起こされ、穀稈の株元が刈刃に達して刈取られ、前部搬送装置に掻込まれて後方に搬送され、扱深さ調節装置、供給搬送装置に受け継がれて順次連続状態で後部上方に搬送される。
【0018】
次いで、穀稈は供給搬送装置からフィードチェン14の始端部に受け継がれ、脱穀装置15に供給される。脱穀装置15は、上側に扱胴69を軸架した扱室66を配置し、扱室66の下側に選別室50を一体的に設け、供給された刈取穀稈を脱穀、選別する。
【0019】
脱穀装置15に供給された穀稈は、後で詳細に説明するが、主脱穀部である扱室66に挿入され、扱室66に軸架され回転する扱胴69の多数の扱歯69aと、フィードチェン14による移送と、扱網74との相互作用により脱穀され、被処理物(穀粒や藁くず)は脱穀装置15内の選別室50の揺動棚51で受け止められ、上下前後方向に揺動する揺動棚51上を寄せ板88で揺動棚51の幅方向に均一な層厚になるように拡散されて後方へ送られながら、唐箕79からの送風を受けて風力選別され、比重の重い穀粒はチャフシーブ53および選別網63から漏下して、一番棚板64上を流下し、一番螺旋65aから搬送螺旋65b(図5参照)を内蔵している一番揚穀筒65を経てグレンタンク30へ搬送され、グレンタンク30に一時貯留される。
【0020】
脱穀装置15の扱室66の終端に到達した脱穀された残りの穀稈で長尺のままのものは、排藁チェーン80に挟持されて搬送され、脱穀装置15の後部の排藁処理室95の藁用カッター81a、81b(図3、図7)に投入された後、切断され、圃場に放出される。
【0021】
グレンタンク30内の底部に穀粒移送用のグレンタンク螺旋(図示せず)を設け、グレンタンク螺旋を駆動する螺旋駆動軸(図示せず)に縦オーガ18および横オーガ19からなる排出オーガを連接し、グレンタンク30内に貯留した穀粒をオーガ排出口19aからコンバイン1の外部に排出する。グレンタンク螺旋、縦オーガ螺旋(図示せず)および横オーガ螺旋(図示せず)は、エンジンの動力の伝動を受けて回転駆動され、それぞれの螺旋羽根のスクリュウコンベヤ作用により貯留穀粒を搬送する。
【0022】
刈取装置6で刈り取った穀稈は刈取装置6に装着された扱深さ調節装置で扱深さなどが調節され、脱穀装置15の主脱穀部である扱室66内に挿入される。扱室66に軸架された扱胴69は、その表面に多数の扱歯69aが設けられており、エンジンからの動力が図示しない扱胴・処理胴入力ギアケース内の伝動機構を経由して扱胴69の回転軸69bに伝達され、矢印B方向(図4)に回転する。
【0023】
扱室66に挿入された穀粒の付いた穀稈は、移動するフィードチェン14とフィードチェン挟扼杆12(図3、図5)との間に挟扼され、図7の矢印A方向に移送されながら、矢印B方向に回転する扱胴69の扱歯69aと扱網74との相互作用により脱穀される。穀稈から分離された被処理物(穀粒や藁くず)は扱網74を矢印C1方向(図4)に通過して、揺動棚51で受け止められる。
【0024】
揺動棚51は扱室66の扱網74の下方に配置した複数個の断面三角形状の移送突起52aを備えた移送棚52とその後方に配置した上方のチャフシーブ53とその下方の選別網63と最後端部に配置したストローラック62などから構成されている。
【0025】
扱網74の前方の約1/3の領域で漏下する脱穀初期に脱粒した穀粒は単粒であり夾雑物も含んでいないので図3などに示すチャフシーブ53上で粗選別する必要が無く、直接選別網63で唐箕79からの送風により風選することができ、チャフシーブ53の負荷を軽くし、能率的な脱穀が可能となる。唐箕79からの送風は、送風流路に設けた風割部105(105a,105b)によって上下に分割される。
【0026】
また、揺動棚51は揺動棚駆動機構の作動により上下前後方向に揺動するので、被処理物は矢印D方向(図3)に移動しながら、移送棚52上に漏下した比重の重い穀粒は選別網63を矢印E方向に通過し、一番棚板64で集積され、一番螺旋65aから一番揚穀筒65を経てグレンタンク30へ搬送される。グレンタンク30に貯留された穀粒は、オーガ18、19を経由してコンバイン1の外部へ搬送される。
【0027】
揺動棚51の上の被処理物のうち軽量のものは、揺動棚51の揺動作用と唐箕79のファン79aによる送風に吹き飛ばされて、移送棚52からチャフシーブ53に向けて矢印D方向(図3)に移動し、ストローラック62の上で大きさの小さい二番穀粒は矢印G方向に漏下して二番棚板85上を通り、二番螺旋86の設置部分に集められ、二番還元筒87へ搬送される。
【0028】
揺動棚51に取り付けたストローラック62は、揺動棚51の後部側に、その前側の基部が取り付けられ、ストローラック62の後部側を自由端とする構成である。そして、ストローラック62から漏下した被処理物は二番棚板85側に集められ、二番螺旋86で二番還元筒87へ搬送される(図3)。
【0029】
図3及び図4に示すように扱胴69に隣接して二番処理胴70を配置し、該二番処理胴70は扱室66を構成する壁面の前壁である前板66aと中板66bとの間に設けている。なお、中板66bは二番処理胴70の後端部に位置し、該中板66bと後板66cとの間に連通口66xを形成する。即ち、中板66bは、二番処理室58側と排塵処理室59側とを仕切る壁となる。
図3のA−A線矢視図である図4に示すように二番処理胴70を扱室66内に配置すると脱穀装置15をコンパクトにできる。
【0030】
前記二番穀粒(二番物)は、正常な穀粒、枝梗粒、藁くずおよび藁くずの中に正常な穀粒が刺さっているササリ粒などの混合物であり、二番還元筒87の中を搬送螺旋87aにより上方に揚送されて、二番処理室58の後端上部に開口した入口から斜め前方へ向けて放出される。前記二番処理室58の下部に軸架する二番処理胴70に設けられた二番処理歯70aによって搬送される間に穀粒の分離と枝梗粒からの枝梗の除去を行い、一部の被処理物は盲板75の前方から漏下して揺動棚51に落下して扱室66からの被処理物と合流して再選別される。
【0031】
なお、扱室66の被処理物搬送方向終端部に到達した被処理物は、図7に示す連通口66xから矢印A方向に搬送されて排塵処理室59に入り、該排塵処理室59では回転する排塵処理胴71(二番処理胴70と同軸)の歯71aにより搬送されながら解砕、処理される。この被処理物中には、少量ながら枝梗の付着した穀粒が含まれており、この枝梗付着粒および小さな藁屑は、格子状の受け網(濾過部材)72(図6)を漏下して揺動棚51に落下する。
【0032】
さらに詳細に説明すると、揺動棚51におけるチャフシーブ53の前部から選別網63上へ漏下した被処理物は、唐箕79からの選別風を下側から受けて細かな藁屑が吹き飛ばされながら後方に移送され、この移送中に選別網63から漏下したものが一番螺旋65aに取り込まれる。このように、選別網63から漏下して一番螺旋65aに取り込まれる被処理物は、桔梗付着の少ない穀粒(清粒)が主である。
【0033】
一方、この選別網63から漏下しないものは、この選別網63上を後方へ移送されて該選別網63の後端部から二番螺旋86側に供給される。選別網63から漏下せずに二番螺旋86側に供給される被処理物は、枝梗付着粒や小さな藁屑等が主である。
【0034】
また、チャフシーブ53の前部から漏下しない被処理物は、このチャフシーブ53上を後方へ移送されて該チャフシーブ53の後部またはストローラック62から漏下して、二番螺旋86側に供給される。このように、チャフシーブ53の後部やストローラック62から漏下して二番移送螺旋86に取り込まれるものは、主として藁屑である(僅かに穀粒も含まれる)。これら枝梗付着粒や藁屑を二番還元して再処理する。
【0035】
また、ストローラック62から漏下せずに該ストローラック62の後端まで移送されたものは、矢印F方向(図3)にそのまま脱穀装置の外へ排出される。この中には僅かな穀粒が含まれていることがあり、この量(比率)によって、脱穀装置の選別精度が評価される。
【0036】
このように、一番螺旋65a又は二番螺旋86にはそれぞれ、主に清粒、枝梗付着粒、藁屑といった大きさ(目合いを漏下するか否か)及び形状(選別風の影響を受け易いか)によって選別された被処理物が供給される。
【0037】
なお、揺動棚51に取り付けたストローラック62は二番螺旋86の略上方位置にその基部が取り付けられ、ストローラック62の後方を自由端とする構成である。
【0038】
また、図4に示すように二番処理胴70の回転軸70bを扱胴69の回転軸(軸心)69bよりも下方に設け、二番還元筒87の排出口87bは扱胴69の軸心とほぼ高さを等しくしている。
【0039】
このように、二番処理胴70の軸心70bを扱胴69の軸心69bより下方に設けることで、扱室66内からの濾過物を扱網74の上方部位から広範囲に二番処理胴70に導くことができ、枝梗・カギ又の単粒化や藁塵の単粒化が促進される。さらに二番還元筒87の排出口87bは扱胴69の軸心とほぼ同一高さに配置しているので、扱室66内に扱室66の下方壁面から突入している二番還元筒87(図4参照)の長さを極力短くすることができ、機体前後方向で二番還元筒87の排出口87bを中板66b寄りとしているので、二番物の処理に二番処理胴70の長手方向を有効に使用でき、処理効率がよい。
【0040】
二番処理胴70の歯70aの送塵方向は機体後方から機体前方に向き、排塵処理胴71の前端部に該処理胴71からの排出部(排出羽根部71a1:図3)を設けている。
【0041】
そのため、小型の脱穀装置では、扱室66内の扱胴69の長さが短く、扱室66内の処理物の回収時間が短く、高効率化が困難であったが、二番処理胴70の送塵方向を機体後方から前方へとすることで、二番処理物を揺動棚51の前方部に還元でき、揺動棚51での処理物の回収が良好に行われ、揺動棚51の前方部での浮遊選別距離も長く行える。
また、排塵処理胴71の終端部に排出羽根部71a1を設けることで、揺動棚51上の処理物の均分化も促進されることとなる。
【0042】
また、二番処理胴70の下方には処理物の搬送を案内する無孔のガイド板(盲板)75(図3)を設けるとともに、図3に示すようにガイド板75の前端は揺動棚51上の寄せ板88より前方に設けている。
【0043】
処理物の搬送樋となる無孔のガイド板75を設けることで二番処理胴70での処理物の処理が良好に行われ、機体前方へと送塵されるが、ガイド板75の前端より揺動棚51上の寄せ板88を後方とすることで、二番処理胴70から多量の処理物が揺動棚51上に送られてきても処理物の均分化が促進され、揺動棚51の処理物の回収が良好に行われる。
【0044】
図3には図示をしていないが本発明の一実施例では、図9の脱穀装置15の選別室50の左側断面図と図10の脱穀装置15の選別室50の背面図に示すように唐箕79のケース79bと一番棚板64と二番棚板85を一体的に構成し、しかもそれらの部分を二重構造(モナカ状)にし、該二重構成になった空間部(二重空間部)にはエンジン21の排気ガスを通す構成にした。
【0045】
上記二重空間部に脱穀装置15の右側面部からエンジン21の排気ガス管25より分岐管26を介して排気ガスを入れ、二番棚板85の機体後方端部から機外に排気ガスを排出する構成にしている。
【0046】
唐箕ファン79aからの選別風は外気温であるため、湿った作物を脱穀した場合、揺動棚51上にある藁屑が付着して不良の原因になっていたが、上記ケース79bと一番棚板64と二番棚板85を一体的な二重空間部として、この空間部内にエンジン排気ガスを流すことにより、唐箕ファン79aからの選別風の温度を上げることができる。そのため、選別網63やシーブ53、53’の乾きを促進し、これらの部材に藁屑が付着するのを防止する事ができ、三番ロス(三番物中に含まれる穀稈をいう)の増大と穀粒の選別不良を防止する事ができる。また、前記二重空間部の外側壁面部分を断熱材で構成すると、穀粒の乾燥がより効果的に行える。
【0047】
唐箕79のケース79bが熱くなる事で、その上にある揺動棚51の移送部も熱くなり、移送棚52上への藁屑の付着も防止できるので、穀粒などの詰まり、選別不良を防止できる。また、一番螺旋65aと二番螺旋86を備えた一番棚板64と二番棚板85も熱くなるので、この部分に藁屑が付着することも防止できるので、植立穀稈が湿っていても選別室50で刈取後の被処理物の乾燥が進むので、被処理物の選別性能の低下を防止する事が出来る。
【0048】
また、排ガス分岐管26の先端部がケース79bと接続する部分である唐箕79のケース79bの外側の唐箕ファン送風路側の壁面79sは該唐箕ファン79aの送風が選別網63に向かって流れる方向に向いた傾斜面を形成しているので唐箕ファン79aからの暖気送風により選別網63から漏下する穀粒の乾燥を効果的に行うことができる。
また、機体に固定されたエンジン21の排気ガス管25より分岐した分岐管26を設けることで、二重空間部がエンジン21の振動による弊害を受けない。
【0049】
また、本発明では図11のグレンタンク30の右側面図と図12のグレンタンク30の縦断面と脱穀装置15の正面を示す図のように、グレンタンク30の側板を二重構成にした実施例を採用しても良い。
【0050】
この場合も二重空間部に、エンジン21の排気ガスを入れることで、グレンタンク30の側板30a及びタンク30の内部が高温になるようにしている。また、コンバインの穀粒収穫作業中にはグレンタンク30の底部に設けられた螺旋31と縦オーガ18と横オーガ19内の図示しない螺旋を回転させて、グレンタンク30内の穀粒を縦オーガ18から横オーガ19に送り、横オーガ19のグレンタンク天井部に対向する箇所に設けた開閉自在の開口部19bから該開口部19bに対向する位置にあるグレンタンク30の天井部に設けた開閉自在の開口部30bを経由させてグレンタンク30内に循環できるようにしている。
【0051】
湿材からなる穀稈の刈取作業をした場合、グレンタンク30の底部では、穀粒の圧力により穀粒が底板との間で滑りが悪くなったり、穀粒同士がくっついたりして、穀粒排出時にグレンタンク30の内部の底部螺旋31への流れ込みが悪くなり、穀粒排出に時間を要していた。しかし、上記グレンタンク30の側板30aを二重構成としてエンジン排気ガスを導入することにより、グレンタンク30の側板30aを含んでグレンタンク30の内部は排気ガスにより高温となっているので、タンク30内部の穀粒は高温となる。
【0052】
特にグレンタンク30の側板30aと接触している穀粒は、表面の水分が蒸発し、乾いているため滑りが良い状態になっている。また、グレンタンク30の底部の温度が高い事もあり、穀粒全体が乾燥してくる。また、穀稈刈取作業中にグレンタンク30内の底部螺旋31とオーガ18、19内の螺旋(図示せず)を回転させてグレンタンク30内の穀粒をオーガ18、19を経由して前記開閉自在の開口部19b、30b(図11)からグレンタンク30内に再循環させることで穀粒全体を均一に乾燥する事ができ、オーガ18、19によるトラックなどへの穀粒排出時の詰まりを防止でき、かつ排出時間の短縮をすることができる。
【0053】
図13の選別室50の左側面図に示すように、選別網63を選別網63aと選別網63bとから構成し両者の接続部に段差を設けた構成としても良い。
従来は選別網63は平面状の網体であったため、選別網63の上部を搬送される穀粒などの処理物は、常に同じ選別網63の平面上を動くため、被処理物の層厚に変化がなかった。そのため、選別風の通りも悪く、穀粒と藁屑の分離を十分に出来ないことがあり、その場合は二番還元物が多くなり、最終的に三番ロスが多くなる原因になっていた。
【0054】
しかし、選別網63の途中に段差を設ける事で、搬送中の被処理物が段差部分で落下する時、層の薄い部分が出来るので、その部分から選別風が抜ける。そのため穀粒と藁屑の分離が容易となり、穀粒の濾過も良くなるので被処理物の選別性能の向上、三番ロスの低減を図ることができる。また、前記段差も網体で構成されているので、稈切れ等が選別網63から落下することなく被処理物の選別性(穀粒と藁体などとの分離性)が悪くならない。
【0055】
また、従来はストローラック62の連結板62aの機体後側端部は連結板62aの主要部の平面に対して下側に折り曲げた構成となっていたため、一番棚板64を通り過ぎた唐箕風が脱穀装置15の後方開放部から直接機外に出るように流れていた。そのため、選別搬送される被処理物は、その風に乗って機外に直接出てしまうので、三番ロスが増加する原因になっていた。
【0056】
そこで、図14の選別室50の左側面図に示すように、揺動棚51と一番棚板64とを一体として一番棚板64のなす平面の延長線上にストローラック62の連結板62aを配置する。また連結板62aの機体後側端部を鉛直方向上方に折り曲げた構成としても良い。
【0057】
この構成により、一番棚板64を通り過ぎた唐箕風はストローラック62の連結板62aで上方に向けて流れるようになり、排塵ファン91にほぼ全量吸われるように流れるので、1番棚板64から出た穀粒は、確実に二番棚板85の凹部にある二番螺旋86に向けて搬送され、二番螺旋86から二番還元筒87(図3)に送られ、二番処理室58で還元処理される。
【0058】
またシーブ53上の被処理物も排塵ファン91の風に乗って吸引されるので、藁屑と穀粒の分離が促進されて、穀粒を回収する事ができ、特に穀粒の流量が少ない低流量時の三番ロスの増加も防止することができる。
【0059】
また図14に示す構成では、ストローラック62の連結板62aの平面が一番棚板64の延長線上にあるように配置し、さらに連結板62aの下側を連結板62aの平面に対して下側に折り曲げた構成としている。そのため、一番棚板64から後方に送られる処理物は、連結板62aの下側の折り曲げ片に当たり、確実に落下して二番還元物として処理され、三番ロスを減少する事ができる。
【0060】
脱穀装置15の機体後側の縦壁面には排藁などを機外に排出するための開放部が設けられているが、図14および図14の背面図である図15に示すように、前記機体後側縦壁面の上方部位から揺動棚51の棚先部分まで、機体の開放部を覆うようにゴム板からなるシール材33を取り付けた構成としても良い。シール材33はその上端部に保持プレート34を重ねて機体にボルト締結されている。このシール材33により一番棚板64を通り過ぎた唐箕風はストローラック62の連結板62aに案内されて、連結板62aの上方にある折曲がり片により上方向に流れるようになり、排塵ファン91に全量が吸われ、かつ吸い足りない分は機体後方の開放部外部から大気を吸おうとするため、シール材33が吸い込まれ、前記開放部を閉じて蓋をするような動きをする。そのためコンバインの旋回時などに、単粒が選別室50から飛び出すことを防止することができ、三番ロスを減少する事ができる。また、前記シール材33の下部にはガイドプレート35が設けられストローラック62によって移送され脱穀装置より排出された排藁を圃場に誘導する。
【0061】
また、片側吸い込みタイプ(排塵ファン91による外気吸い込部が機体の一つの縦壁面のみに設けられているタイプ)の排塵ファン91は選別室50側の風洞内に渦を巻くようにして外気を吸い込むが、排塵ファン91の回転中心91aより連結板62aの後方の上方折曲がり片を後方側に長さLだけ後方側に配置している(図14参照)ので、唐箕風を排塵ファン91の吸引の渦の風に載せることができる。シーブ53上の被処理物もこの風に乗り吸引風に吸われるので、選別室50の風洞内で藁屑と穀粒の分離が促進され、穀粒を回収する事が出来るので、三番ロスを減少する事ができる。また、一番棚板64から出た穀粒は、確実に二番還元され、二番棚板85から出るロスを減少する事ができる。
【0062】
本発明の脱穀装置15の扱室66の天井部にある扱胴カバー66dには扱胴69の回転方向に長手方向が向けられた複数の排塵ガイド36を備えているが、図16(a)の平面図には扱室66の天井部の扱胴カバー66dに配置される4本の排塵ガイド36を並列配置した状態を示す。本実施例では一対の排塵ガイド36a,36aと排塵ガイド36b,36bをそれぞれ機体前方と後方で設置角度が変更自在になる構成とした。また、図16(b)には排塵ガイド36の側面図を示す。図17の底面図に図16(a)の別構成例を示す。
【0063】
機体前方側の排塵ガイド36a,36aと機体後方側の排塵ガイド36b,36bとは連結部材37a,37bでそれぞれ設置角度を変更自在に連結されている。後方排塵ガイド36b,36bを連結する連結部材37bは折れ曲がり状であり、前方の連結部材37aは直線状である。各連結部材37a,37bは各一対の排塵ガイド36a,36a;36b,36bの端部を回動自在に連結しているが、前方の直線状の連結部材37aの後方部位と後方の折れ曲がり状の連結部材37bの前方部位にはそれぞれピン38a,38bが設けられており、各ピン38a,38bに一本のロッド39が接当している。該ロッド39の回動中心39aが前方の連結部材37aの後方部位と後方の連結部材37bの前方部位の間の扱胴カバー66dに取り付けられており、後方の連結部材37bの折れ曲がり部位と該部位の後ろ側に位置する扱室66の天井部の扱胴カバー66dに設けたピン40に両端がそれぞれ支持されたスプリング41が取り付けられている。また該スプリング41の付勢力の方向に抗するように前記一本のロッド39がピン38a,38bと接当している。
【0064】
そのためスプリング41の付勢力の方向に抗するように連結部材37a,37bを動かすと前後一対の排塵ガイド36a,36a;36b,36bは扱胴カバー66dに取り付けられたそれぞれの回動中心36x、36x;36y、36yを中心に互いに逆方向に回動する。
【0065】
このように機体前方の排塵ガイド36aの設置角度の変更方向と機体後方の排塵ガイド36bの設置角度の変更方向を互いに逆向きにするだけでなく、機体前方の排塵ガイド36aより機体後方の排塵ガイド36bの高さを高くして、機体後方の排塵ガイド36bより機体前方の排塵ガイド36aのガイド長さを長くしている。これらの構成により、穀稈が比較的多く送られてくる脱穀装置内の機体前方部には穀粒が比較的多く含まれ、穀稈が比較的少なく送られてくる機体後方部では穀粒が比較的少なくなるので、前記機体後方部に送られてくる穀稈の処理能力を向上させるために抵抗がないようにして、脱穀時に枝梗粒を減らすことができ、また脱穀時の扱胴69の負荷を小さくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の脱穀装置はコンバインなどの収穫した穀粒の処理装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施の形態の穀類の収穫作業を行うコンバインの左側面図である。
【図2】図1のコンバインの平面図である。
【図3】図1のコンバインの脱穀装置の左側面断面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】図3のB−B線断面図である。
【図6】図3のC−C線断面図である。
【図7】図1のコンバインの脱穀装置の天井分壁面を取り外した状態での平面図である。
【図8】図1のコンバインの脱穀装置の揺動棚などを含む部分の一部切り欠き平面図である。
【図9】図1のコンバインの脱穀装置の選別室の左側断面図である。
【図10】図9の脱穀装置とグレンタンク部分の背面図である。
【図11】図1のコンバインのグレンタンクの右側面図である。
【図12】図1のコンバインのグレンタンクの縦断面と脱穀装置の正面を示す図である。
【図13】図1のコンバインの脱穀装置の選別室の左側面図である。
【図14】図1のコンバインの脱穀装置の選別室の左側面図である。
【図15】図14のコンバインの脱穀装置の背面図である。
【図16】図1のコンバインの脱穀装置の扱室の天井部の排塵ガイドの並列配置図(図16(a))と排塵ガイドの側面図(図16(b))である。
【図17】図16(a)の排塵ガイド部の別構成例の平面視の拡大図である。
【符号の説明】
【0068】
1 コンバイン 2 走行フレーム
3 走行装置 4 クローラ
6 刈取装置 7 分草具
8 穀稈引き起こし装置 12 フィードチェン挟扼杆
14 フィードチェン 15 脱穀装置
18 縦オーガ 19 横オーガ
19a オーガ排出口 19b 横オーガ開口部
20 操縦席 21 エンジン
23 脱穀装置入力プーリ 24 変速装置
25 排気ガス管 26 分岐管
30 グレンタンク 30a グレンタンク側板
30b グレンタンク天井部の開口部 31 螺旋
33 シール材 34 保持プレート
35 ガイドプレート 36a,36b 排塵ガイド
37a,37b 排塵ガイド連結部材 38a,38b;40 ピン
39 ロッド 39a 回動中心
41 スプリング 50 選別室
51 揺動棚 52 移送棚
52a 移送突起 53、53’ シーブ
53a シーブ回動連動板 58 二番処理室
59 排塵処理室 59a 機外排塵口
62 ストローラック 62a ストローラック連結板
63,63a,63b 選別網 64 一番棚板(板体)
65 一番揚穀筒 65a 一番螺旋(移送螺旋)
65b 搬送螺旋 66 扱室
66a 前板 66b 中板
66c 後板 66d 扱胴カバー
66x 連通口 69 扱胴
69a 扱歯 69b 回転軸
70 二番処理胴 70a 二番処理歯
70b 回転軸 71 排塵処理胴
71a 排塵処理歯 71a1 排出羽根部
72 受け網 74 扱網
75 盲板 79 唐箕
79a 唐箕ファン 79b 唐箕ケース
79s 唐箕ファン送風路側の二重空間部の壁面
80 排藁チェーン 81a、81b 排藁カッター
85 二番棚板(板体) 86 二番螺旋(移送螺旋)
86a 二番螺旋回転軸 87 二番還元筒
87a 搬送螺旋 87b 排出口
87d 排出案内板 88 寄せ板
91 排塵ファン 91a 排塵ファン回転中心
95 排藁処理室
105(105a,105b) 風割部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀稈から穀粒を脱粒させる扱胴(69)を軸架した扱室(66)と、該扱室(66)の下方に設けて該扱室(66)から落下する被処理物を後方に搬送しながら穀粒を選別する選別室(50)を備えた脱穀装置において、
選別室(50)に備えた唐箕(79)のケース(79b)と、揺動棚(51)から落下する被処理物を受けて移送螺旋(65a,86)側へ案内する板体(64,85)を、空間部を間に形成した二重構造としたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記二重構造の空間部に、脱穀装置駆動用のエンジン(21)から排出される排気ガスを流す構成としたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記二重構造の底部側の壁体を断熱材で構成したことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−295364(P2008−295364A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144968(P2007−144968)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】