脱穀装置
【課題】本発明の課題は、唐箕からの選別風の一部を揺動選別棚のチャフシーブに向けて導風案内する風分流体を処理物量の多少に応じて姿勢変向することによって選別風の導入量を増減し、この選別風の増減に伴ってチャフシーブのシーブ開度を可変させることによって選別性能を高め、3番ロスの低減を図ることを目的とする。
【解決手段】揺動選別棚(15)の下方に唐箕(22)を設け、該唐箕22からの選別風の一部をチャフシーブ(18)に向けて案内する風分流体(32)を設け、前記層厚センサ(36)によって検出される脱穀処理物の層厚が大きくなるほどチャフシーブ(18)へ案内される選別風量を増大させるべく風分流体(32)を姿勢変更するとともに、前記チャフシーブ(18)における前記揺動選別棚(15)の揺動方向での各シーブ板(18a)の間隔を広くするように連繋する。
【解決手段】揺動選別棚(15)の下方に唐箕(22)を設け、該唐箕22からの選別風の一部をチャフシーブ(18)に向けて案内する風分流体(32)を設け、前記層厚センサ(36)によって検出される脱穀処理物の層厚が大きくなるほどチャフシーブ(18)へ案内される選別風量を増大させるべく風分流体(32)を姿勢変更するとともに、前記チャフシーブ(18)における前記揺動選別棚(15)の揺動方向での各シーブ板(18a)の間隔を広くするように連繋する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された技術は、唐箕からの選別風の一部を揺動選別棚の篩い線に向けて導入可能な開口部を設け、選別風の開口部への導入量を増減可能な風向板を姿勢変更自在に設け、処理量検出センサの検出結果に基づいて、処理物の量が多くなると風向板が選別風導入量を増大させる姿勢になり、処理物の量が少なくなるに伴って風向板が導入量を減少させる姿勢になるように構成されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−274696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、唐箕からの選別風の一部を揺動選別棚のチャフシーブに向けて導風案内する風分流体を処理物量の多少に応じて姿勢変向することによって選別風の導入量を増減し、この選別風の増減に伴ってチャフシーブのシーブ開度を可変させることによって選別性能を高め、3番ロスの低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
即ち、請求項1記載の発明は、脱穀処理物を揺動選別する揺動選別棚(15)に、該揺動選別棚(15)の揺動方向に所定間隔をおいて複数のシーブ板(18a)を配置したチャフシーブ(18)と、揺動選別棚(15)上の脱穀処理物の層厚を検出する層厚センサ(36)とを備え、揺動選別棚(15)の下方には唐箕(22)を設け、該唐箕22からの選別風の一部をチャフシーブ(18)に向けて案内する風分流体(32)を設け、前記層厚センサ(36)によって検出される脱穀処理物の層厚が大きくなるほどチャフシーブ(18)へ案内される選別風量を増大させるべく風分流体(32)を姿勢変更するとともに、前記各シーブ板(18a)の間隔が広くなるように連繋したことを特徴とする脱穀装置とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、前記層厚センサ(36)により検出される脱穀処理物の層厚が所定の厚さ以下の場合には、各シーブ板(18a)の間隔が変更されず、脱穀処理物の層厚が前記所定の層厚を超えて大きくなるほど、シーブ板(18a)の間隔が広くなる構成としたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、前記チャフシーブ(18)の上方に駆動速度を変速可能な吸引排塵ファン(25)を設け、前記層厚センサ(36)の検出する処理物層厚が大きくなるほど吸引排塵ファン(25)の駆動速度が増速する構成としたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の脱穀装置とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、前記風分流体(32)は、前記唐箕(22)の送風路における送風方向中間部を回動支点として上下回動自在に設け、該風分流体(32)によって、前記送風路を、風分流体(32)の上側に形成される上側風路と、風分流体(32)の下側に形成されてチャフシーブ(18)に向けて送風する下側風路とに分割し、風分流体(32)における唐箕(22)の送風方向上手側端部が下方回動して下側風路が狭まることで、チャフシーブ(18)に送風される選別風の風量が減少し、風分流体(32)における唐箕(22)の送風方向上手側端部が上方回動して下側風路が広くなることで、チャフシーブ(18)に送風される選別風の風量が増大する構成としたことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の脱穀装置とする。
【0009】
請求項5記載の発明は、前記各シーブ板(18a)間の最大間隔を変更可能な構成としたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の脱穀装置とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によると、揺動選別棚(15)上の脱穀処理物の量が多くなると、層厚センサ(36)の検出結果に基づき、風分流体(32)が選別風量を増大させる姿勢に変向する。風分流体(32)の風量増大方向への姿勢変向に伴いチャフシーブ(18)の各シーブ板(18a)間の間隔が広がる方向に作動する。脱穀処理物の量が少なくなると、風分流体(32)が選別風量を減少させる姿勢に変向し、これに伴いチャフシーブ(18)の各シーブ板(18a)間の間隔は狭まる方向に作動する。
【0011】
このように揺動選別棚(15)上の脱穀処理物の量に応じた風選別と揺動篩い選別が可能となり、選別精度が向上し、3番ロスが大幅に低減する。
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果を奏するものでありながら、脱穀処理物の層厚が所定の層厚を超えてからチャフシーブ(18)が開き始めるので、脱穀処理物の層厚が所定の層厚よりも薄い場合にシーブの間隔が大きくなることによる選別不良を未然に防止することができ、風選並びに篩い選別が効果的に行える。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は請求項2記載の発明による効果に加えて、脱穀処理物の量に応じて吸引排塵ファン(25)を変速して駆動するので、チャフシーブ(18)上に浮上する藁屑などの排塵処理が良好に効率よく行え、選別性能がより向上する。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、請求項1又は請求項2又は請求項3記載の発明による効果を奏するものでありながら、風分流体(32)の選別風送風方向上手側端部が下方回動して下側風路が狭まることで、チャフシーブ(18)に送風される選別風の風量が減少し、風分流体(32)の選別風送風方向上手側端部が上方回動して下側風路が広くなることで、チャフシーブ(18)に送風される選別風の風量が増大するので、脱穀処理物の量に応じた風選別と篩い選別が効率よく的確に行え、選別性能がより向上する。
【0014】
請求項5記載の発明によれば、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明による効果を奏するものでありながら、各シーブ板(18a)間の最大間隔を変更可能にしたので、脱穀処理物の種類に応じて選別処理を行うことができる。
【0015】
例えば、麦の脱穀作業では、稲より処理物中における藁屑類の混在割合が多いため、稲より麦のシーブ間隔を小さく制限することで、麦作業の場合には、脱穀処理物の量が多くなっても下方への藁屑の落下を少なくでき、篩い選別が良好に行える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】脱穀機の側断面図
【図2】脱穀機の要部の横断平面図
【図3】脱穀機の要部の側断面図
【図4】脱穀機の要部の正断面図
【図5】同上要部の正断面
【図6】風分流体の作動状態を示す側面図
【図7】制御ブロック回路図
【図8】シーブ開度と処理物層厚との関係を示すグラフ
【図9】唐箕回転数と処理物層厚との関係を示すグラフ
【図10】チャフシーブの要部の側断面図
【図11】同上一部の平面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1及び図2に示す脱穀機(脱穀部)は、次のような構成になっている。
すなわち、脱穀部1は、扱室2の一側に張設された脱穀フィードチエン4により株元を挟持しながら搬送される穀稈の穂先部を扱室2内で駆動回転する扱胴3により脱穀処理するよう構成している。扱室2の下半周部には受網5が張設され、扱胴3の上部を覆う扱胴カバー6は、扱室の一側を支点として揺動開閉する構成である。扱室2のフィードチエン4側とは反対側には、扱室からの2番処理物を受け入れて脱粒処理する2番処理胴7が扱胴3と平行して2番処理室8内に軸架されている。また、2番処理胴7の後方にはこれと同一軸芯上において排塵処理胴9が排塵処理室10内に架設されている。
【0018】
なお、前記扱室2は、前側板2aと中側板2b,2cとの間に構成され、扱室終端の排塵口12は中側板2bと2cとの間に形成されている。そして、扱胴3を前記排塵口12より後方に延長して4番処理胴3Aを構成すると共に、中側板2cと後側板2dとの間にささり粒回収室13を構成している。
【0019】
扱室下方の揺動選別装置(揺動選別棚)15は、揺動クランク軸14によって前後方向に揺動駆動されるようになっていて、脱穀処理後の処理物を受け入れて揺動移送しながらふるい選別する構成であり、選別方向上手側から移送棚16、グレンシーブ17、チャフシーブ18、ストロ−ラック19の順に配置し、且つ、前記チャフシーブ18の下方に精選別網20、1番戻し棚21a、2番戻し棚21bを配置して設けた構成としている。
【0020】
また、揺動選別棚15の下方には選別方向の上手側から順に、唐箕22と、1番ラセン23、2番ラセン24と、その上方に吸引排塵フアン25を設けて排塵選別室を構成している。
【0021】
前記グレンシーブ17は、排塵口12の下方から上手側に配置され、前後方向に所定間隔を開けて上下方向に傾斜する傾斜角不変の固定シーブ17aからなる。チャフシーブ18は、排塵口12より下手側に配置され、グレンシーブ17からの処理物及びささり粒回収室13からの処理物を受け入れてふるい選別するように構成され、且つグレンシーブ17より選別行程が長く構成され、夫々横軸芯Q回りで揺動開閉自在な複数の可動シーブ板18aを並列配備してなる構成である。各シーブ板18aは、作動アーム26aやワイヤ26bを介してシーブ開閉モータ27により、揺動開閉作動して処理物の漏下開度を変更調節できるように構成している。
【0022】
グレンシーブ17には、揺動選別棚の前後方向の揺動方向に並行で且つ左右方向所定間隔置きに配設した清掃プレート28と、各固定シーブ26の上面に接触して付着物を除去するスクレーパ29とからなる複数個のシーブスクレーパ30,30,30…を備えている。
【0023】
唐箕22からの選別風の風選経路には、選別風の流れを変向する上下2段の風分流体(フラッパ)31,32が設けられている。そして、上段の風分流体31は、始端側の支点軸P1を回動中心として上下に揺動変位する構成であり、下段の風分流体32は、唐箕からの選別風の一部をチャフシーブ18側に向けて導入案内する構成であり、中間部の支点軸P2を回動中心として上下に揺動変位する構成になっている。
【0024】
上下の風分流体31,32は、連結リンク33によって連結され、この連結リンク33の長さ方向の移動操作によって、風分流体31,32の傾斜姿勢が変向できるようになっている。
【0025】
下段の風分流体32の始端側が下方に閉じる側に揺動変位すると、チャフシーブ18側への選別風量が減少するようになっており、また、風分流体32の始端側が上方に開く側に揺動変位するほど、チャフシーブ18側への選別風量は漸次増大するようになっている。そして、これら風分流体の姿勢変向は、駆動モータ34によって駆動制御するようになっている。
【0026】
揺動選別棚15始端側の移送棚16上には、処理物の層厚に応じて上下回動するセンサフロート36aと、センサフロートの上下動を検出する層厚センサ36bとからなる処理物量検出センサ36が設置されている。
【0027】
移送棚16上に落下する扱室からの脱穀処理物量が多くなると、処理物量検出センサ36の処理量検出結果に基づき、風分流体32の始端側が上方に開く側に揺動変位して選別風量を増大させ、処理物量が少なくなると、風分流体32の始端側が下方に閉じる側に揺動変位して選別風量を減少させるようにコントローラ35によって制御する構成としている。一方、チャフシーブ18は、風分流体32の風量増大方向への姿勢変向に伴いシーブ板18aが開く方向に作動し、風分流体32の風量減少方向への姿勢変向に伴いシーブ板18aが閉じる方向に作動するようにモータ27によって駆動制御する構成になっている。また、前記チャフシーブ18は、処理物量が一定値を超えると、つまり、処理物量が所定量に達すると、シーブ板が開き方向の作動を開始するように構成している。処理物量が所定量に達してからシーブ板が開き始めるため、選別不良をなくすことができる。更に、上記構成のチャフシーブ18は、シーブ開度の上限値が稲作物の場合は大きく、麦作物の場合はそれよりも小さくなるように設定している。
【0028】
麦の脱穀作業では、稲より処理物中における藁屑類の混在割合が多いため、稲より麦のシーブ開度が小さくなるように制限することによって、処理物量が多くなっても下方の1番選別棚上への藁屑の落下を少なくでき、ふるい選別が良好に行える。
【0029】
吸引排塵ファン25は、回転数の増減によって吸引風量が任意調節できるようになっており、処理物量検出センサ36の検出結果に基づいて、処理物量が多くなるに伴って増速し、処理物量が少なくなるに伴って減速するように変速モータ37によって制御し、処理物量に応じた吸塵選別が行える。
【0030】
また、本例では、唐箕22においても風量が調節できるように変速モータ38によって増減速可能に構成してあり、処理物量検出センサ36の検出結果に基づいて、処理物量が多くなるに伴って増速し、処理物量が少なくなるに伴って減速する構成としている。そして、図9例では変速域の上限と下限には一定速度の定速ゾーンV1,V2を設けている。これによると、層厚が少ないときに必要以上に増速して騒音の増加を防止し、過選別となるのを防止でき、層厚が多いときに必要以上に減速し藁屑の機外排出能力が低下し、還元率が増加したり、選別状態が悪化するのを防止できる。また、麦の脱穀作業では、稲より処理物中における藁屑類の混在割合が多く層厚も多いため、図例(図9)のように、稲より麦の唐箕回転数を増速側に高く設定しておくことで、風選別が良好に行える。
【0031】
なお、別実施例として、ハイブリッドコンバインを具現するにあたり、揺動選別棚上に処理物層厚センサを設け、バッテリ電圧が低下した状態で、層厚が薄い場合、各部モータの回転数を下げるように構成する。これによると、消費電力を削減することができ、また、層厚が薄いため、各部回転数を下げても穀粒損失を悪化させることがない。
【0032】
図10、図11に示す実施例は、シーブ開度不変のチャフシーブ17には、左右方向に往復動するシーブスクレーパ30を設けるが、揺動開閉可能なチャフシーブ18には、弾性変位可能な線材からなる篩い線40をシーブ板18a面に接するように設け、チャフシーブ17側から後方のチャフシーブ18上に延長して設けた清掃プレート28に篩い線40を止着してシーブスクレーパ30と一体的に左右方向に往復動するように構成している。シーブスクレーパの動きにより、篩い線で可動シーブ面を掃除するので、湿材を脱穀しても可動シーブ部での詰まりの発生がなく、3番ロスを低減することができる。
【符号の説明】
【0033】
15 揺動選別棚
18 チャフシーブ
18a 可動シーブ板(シーブ板)
22 唐箕
25 吸引排塵ファン
32 風分流体
36 層厚センサ
【技術分野】
【0001】
この発明は、脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された技術は、唐箕からの選別風の一部を揺動選別棚の篩い線に向けて導入可能な開口部を設け、選別風の開口部への導入量を増減可能な風向板を姿勢変更自在に設け、処理量検出センサの検出結果に基づいて、処理物の量が多くなると風向板が選別風導入量を増大させる姿勢になり、処理物の量が少なくなるに伴って風向板が導入量を減少させる姿勢になるように構成されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−274696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、唐箕からの選別風の一部を揺動選別棚のチャフシーブに向けて導風案内する風分流体を処理物量の多少に応じて姿勢変向することによって選別風の導入量を増減し、この選別風の増減に伴ってチャフシーブのシーブ開度を可変させることによって選別性能を高め、3番ロスの低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
即ち、請求項1記載の発明は、脱穀処理物を揺動選別する揺動選別棚(15)に、該揺動選別棚(15)の揺動方向に所定間隔をおいて複数のシーブ板(18a)を配置したチャフシーブ(18)と、揺動選別棚(15)上の脱穀処理物の層厚を検出する層厚センサ(36)とを備え、揺動選別棚(15)の下方には唐箕(22)を設け、該唐箕22からの選別風の一部をチャフシーブ(18)に向けて案内する風分流体(32)を設け、前記層厚センサ(36)によって検出される脱穀処理物の層厚が大きくなるほどチャフシーブ(18)へ案内される選別風量を増大させるべく風分流体(32)を姿勢変更するとともに、前記各シーブ板(18a)の間隔が広くなるように連繋したことを特徴とする脱穀装置とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、前記層厚センサ(36)により検出される脱穀処理物の層厚が所定の厚さ以下の場合には、各シーブ板(18a)の間隔が変更されず、脱穀処理物の層厚が前記所定の層厚を超えて大きくなるほど、シーブ板(18a)の間隔が広くなる構成としたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、前記チャフシーブ(18)の上方に駆動速度を変速可能な吸引排塵ファン(25)を設け、前記層厚センサ(36)の検出する処理物層厚が大きくなるほど吸引排塵ファン(25)の駆動速度が増速する構成としたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の脱穀装置とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、前記風分流体(32)は、前記唐箕(22)の送風路における送風方向中間部を回動支点として上下回動自在に設け、該風分流体(32)によって、前記送風路を、風分流体(32)の上側に形成される上側風路と、風分流体(32)の下側に形成されてチャフシーブ(18)に向けて送風する下側風路とに分割し、風分流体(32)における唐箕(22)の送風方向上手側端部が下方回動して下側風路が狭まることで、チャフシーブ(18)に送風される選別風の風量が減少し、風分流体(32)における唐箕(22)の送風方向上手側端部が上方回動して下側風路が広くなることで、チャフシーブ(18)に送風される選別風の風量が増大する構成としたことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の脱穀装置とする。
【0009】
請求項5記載の発明は、前記各シーブ板(18a)間の最大間隔を変更可能な構成としたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の脱穀装置とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によると、揺動選別棚(15)上の脱穀処理物の量が多くなると、層厚センサ(36)の検出結果に基づき、風分流体(32)が選別風量を増大させる姿勢に変向する。風分流体(32)の風量増大方向への姿勢変向に伴いチャフシーブ(18)の各シーブ板(18a)間の間隔が広がる方向に作動する。脱穀処理物の量が少なくなると、風分流体(32)が選別風量を減少させる姿勢に変向し、これに伴いチャフシーブ(18)の各シーブ板(18a)間の間隔は狭まる方向に作動する。
【0011】
このように揺動選別棚(15)上の脱穀処理物の量に応じた風選別と揺動篩い選別が可能となり、選別精度が向上し、3番ロスが大幅に低減する。
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果を奏するものでありながら、脱穀処理物の層厚が所定の層厚を超えてからチャフシーブ(18)が開き始めるので、脱穀処理物の層厚が所定の層厚よりも薄い場合にシーブの間隔が大きくなることによる選別不良を未然に防止することができ、風選並びに篩い選別が効果的に行える。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は請求項2記載の発明による効果に加えて、脱穀処理物の量に応じて吸引排塵ファン(25)を変速して駆動するので、チャフシーブ(18)上に浮上する藁屑などの排塵処理が良好に効率よく行え、選別性能がより向上する。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、請求項1又は請求項2又は請求項3記載の発明による効果を奏するものでありながら、風分流体(32)の選別風送風方向上手側端部が下方回動して下側風路が狭まることで、チャフシーブ(18)に送風される選別風の風量が減少し、風分流体(32)の選別風送風方向上手側端部が上方回動して下側風路が広くなることで、チャフシーブ(18)に送風される選別風の風量が増大するので、脱穀処理物の量に応じた風選別と篩い選別が効率よく的確に行え、選別性能がより向上する。
【0014】
請求項5記載の発明によれば、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明による効果を奏するものでありながら、各シーブ板(18a)間の最大間隔を変更可能にしたので、脱穀処理物の種類に応じて選別処理を行うことができる。
【0015】
例えば、麦の脱穀作業では、稲より処理物中における藁屑類の混在割合が多いため、稲より麦のシーブ間隔を小さく制限することで、麦作業の場合には、脱穀処理物の量が多くなっても下方への藁屑の落下を少なくでき、篩い選別が良好に行える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】脱穀機の側断面図
【図2】脱穀機の要部の横断平面図
【図3】脱穀機の要部の側断面図
【図4】脱穀機の要部の正断面図
【図5】同上要部の正断面
【図6】風分流体の作動状態を示す側面図
【図7】制御ブロック回路図
【図8】シーブ開度と処理物層厚との関係を示すグラフ
【図9】唐箕回転数と処理物層厚との関係を示すグラフ
【図10】チャフシーブの要部の側断面図
【図11】同上一部の平面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1及び図2に示す脱穀機(脱穀部)は、次のような構成になっている。
すなわち、脱穀部1は、扱室2の一側に張設された脱穀フィードチエン4により株元を挟持しながら搬送される穀稈の穂先部を扱室2内で駆動回転する扱胴3により脱穀処理するよう構成している。扱室2の下半周部には受網5が張設され、扱胴3の上部を覆う扱胴カバー6は、扱室の一側を支点として揺動開閉する構成である。扱室2のフィードチエン4側とは反対側には、扱室からの2番処理物を受け入れて脱粒処理する2番処理胴7が扱胴3と平行して2番処理室8内に軸架されている。また、2番処理胴7の後方にはこれと同一軸芯上において排塵処理胴9が排塵処理室10内に架設されている。
【0018】
なお、前記扱室2は、前側板2aと中側板2b,2cとの間に構成され、扱室終端の排塵口12は中側板2bと2cとの間に形成されている。そして、扱胴3を前記排塵口12より後方に延長して4番処理胴3Aを構成すると共に、中側板2cと後側板2dとの間にささり粒回収室13を構成している。
【0019】
扱室下方の揺動選別装置(揺動選別棚)15は、揺動クランク軸14によって前後方向に揺動駆動されるようになっていて、脱穀処理後の処理物を受け入れて揺動移送しながらふるい選別する構成であり、選別方向上手側から移送棚16、グレンシーブ17、チャフシーブ18、ストロ−ラック19の順に配置し、且つ、前記チャフシーブ18の下方に精選別網20、1番戻し棚21a、2番戻し棚21bを配置して設けた構成としている。
【0020】
また、揺動選別棚15の下方には選別方向の上手側から順に、唐箕22と、1番ラセン23、2番ラセン24と、その上方に吸引排塵フアン25を設けて排塵選別室を構成している。
【0021】
前記グレンシーブ17は、排塵口12の下方から上手側に配置され、前後方向に所定間隔を開けて上下方向に傾斜する傾斜角不変の固定シーブ17aからなる。チャフシーブ18は、排塵口12より下手側に配置され、グレンシーブ17からの処理物及びささり粒回収室13からの処理物を受け入れてふるい選別するように構成され、且つグレンシーブ17より選別行程が長く構成され、夫々横軸芯Q回りで揺動開閉自在な複数の可動シーブ板18aを並列配備してなる構成である。各シーブ板18aは、作動アーム26aやワイヤ26bを介してシーブ開閉モータ27により、揺動開閉作動して処理物の漏下開度を変更調節できるように構成している。
【0022】
グレンシーブ17には、揺動選別棚の前後方向の揺動方向に並行で且つ左右方向所定間隔置きに配設した清掃プレート28と、各固定シーブ26の上面に接触して付着物を除去するスクレーパ29とからなる複数個のシーブスクレーパ30,30,30…を備えている。
【0023】
唐箕22からの選別風の風選経路には、選別風の流れを変向する上下2段の風分流体(フラッパ)31,32が設けられている。そして、上段の風分流体31は、始端側の支点軸P1を回動中心として上下に揺動変位する構成であり、下段の風分流体32は、唐箕からの選別風の一部をチャフシーブ18側に向けて導入案内する構成であり、中間部の支点軸P2を回動中心として上下に揺動変位する構成になっている。
【0024】
上下の風分流体31,32は、連結リンク33によって連結され、この連結リンク33の長さ方向の移動操作によって、風分流体31,32の傾斜姿勢が変向できるようになっている。
【0025】
下段の風分流体32の始端側が下方に閉じる側に揺動変位すると、チャフシーブ18側への選別風量が減少するようになっており、また、風分流体32の始端側が上方に開く側に揺動変位するほど、チャフシーブ18側への選別風量は漸次増大するようになっている。そして、これら風分流体の姿勢変向は、駆動モータ34によって駆動制御するようになっている。
【0026】
揺動選別棚15始端側の移送棚16上には、処理物の層厚に応じて上下回動するセンサフロート36aと、センサフロートの上下動を検出する層厚センサ36bとからなる処理物量検出センサ36が設置されている。
【0027】
移送棚16上に落下する扱室からの脱穀処理物量が多くなると、処理物量検出センサ36の処理量検出結果に基づき、風分流体32の始端側が上方に開く側に揺動変位して選別風量を増大させ、処理物量が少なくなると、風分流体32の始端側が下方に閉じる側に揺動変位して選別風量を減少させるようにコントローラ35によって制御する構成としている。一方、チャフシーブ18は、風分流体32の風量増大方向への姿勢変向に伴いシーブ板18aが開く方向に作動し、風分流体32の風量減少方向への姿勢変向に伴いシーブ板18aが閉じる方向に作動するようにモータ27によって駆動制御する構成になっている。また、前記チャフシーブ18は、処理物量が一定値を超えると、つまり、処理物量が所定量に達すると、シーブ板が開き方向の作動を開始するように構成している。処理物量が所定量に達してからシーブ板が開き始めるため、選別不良をなくすことができる。更に、上記構成のチャフシーブ18は、シーブ開度の上限値が稲作物の場合は大きく、麦作物の場合はそれよりも小さくなるように設定している。
【0028】
麦の脱穀作業では、稲より処理物中における藁屑類の混在割合が多いため、稲より麦のシーブ開度が小さくなるように制限することによって、処理物量が多くなっても下方の1番選別棚上への藁屑の落下を少なくでき、ふるい選別が良好に行える。
【0029】
吸引排塵ファン25は、回転数の増減によって吸引風量が任意調節できるようになっており、処理物量検出センサ36の検出結果に基づいて、処理物量が多くなるに伴って増速し、処理物量が少なくなるに伴って減速するように変速モータ37によって制御し、処理物量に応じた吸塵選別が行える。
【0030】
また、本例では、唐箕22においても風量が調節できるように変速モータ38によって増減速可能に構成してあり、処理物量検出センサ36の検出結果に基づいて、処理物量が多くなるに伴って増速し、処理物量が少なくなるに伴って減速する構成としている。そして、図9例では変速域の上限と下限には一定速度の定速ゾーンV1,V2を設けている。これによると、層厚が少ないときに必要以上に増速して騒音の増加を防止し、過選別となるのを防止でき、層厚が多いときに必要以上に減速し藁屑の機外排出能力が低下し、還元率が増加したり、選別状態が悪化するのを防止できる。また、麦の脱穀作業では、稲より処理物中における藁屑類の混在割合が多く層厚も多いため、図例(図9)のように、稲より麦の唐箕回転数を増速側に高く設定しておくことで、風選別が良好に行える。
【0031】
なお、別実施例として、ハイブリッドコンバインを具現するにあたり、揺動選別棚上に処理物層厚センサを設け、バッテリ電圧が低下した状態で、層厚が薄い場合、各部モータの回転数を下げるように構成する。これによると、消費電力を削減することができ、また、層厚が薄いため、各部回転数を下げても穀粒損失を悪化させることがない。
【0032】
図10、図11に示す実施例は、シーブ開度不変のチャフシーブ17には、左右方向に往復動するシーブスクレーパ30を設けるが、揺動開閉可能なチャフシーブ18には、弾性変位可能な線材からなる篩い線40をシーブ板18a面に接するように設け、チャフシーブ17側から後方のチャフシーブ18上に延長して設けた清掃プレート28に篩い線40を止着してシーブスクレーパ30と一体的に左右方向に往復動するように構成している。シーブスクレーパの動きにより、篩い線で可動シーブ面を掃除するので、湿材を脱穀しても可動シーブ部での詰まりの発生がなく、3番ロスを低減することができる。
【符号の説明】
【0033】
15 揺動選別棚
18 チャフシーブ
18a 可動シーブ板(シーブ板)
22 唐箕
25 吸引排塵ファン
32 風分流体
36 層厚センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀処理物を揺動選別する揺動選別棚(15)に、該揺動選別棚(15)の揺動方向に所定間隔をおいて複数のシーブ板(18a)を配置したチャフシーブ(18)と、揺動選別棚(15)上の脱穀処理物の層厚を検出する層厚センサ(36)とを備え、揺動選別棚(15)の下方には唐箕(22)を設け、該唐箕22からの選別風の一部をチャフシーブ(18)に向けて案内する風分流体(32)を設け、前記層厚センサ(36)によって検出される脱穀処理物の層厚が大きくなるほどチャフシーブ(18)へ案内される選別風量を増大させるべく風分流体(32)を姿勢変更するとともに、前記各シーブ板(18a)の間隔が広くなるように連繋したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記層厚センサ(36)により検出される脱穀処理物の層厚が所定の厚さ以下の場合には、各シーブ板(18a)の間隔が変更されず、脱穀処理物の層厚が前記所定の層厚を超えて大きくなるほど、シーブ板(18a)の間隔が広くなる構成としたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記チャフシーブ(18)の上方に駆動速度を変速可能な吸引排塵ファン(25)を設け、前記層厚センサ(36)の検出する処理物層厚が大きくなるほど吸引排塵ファン(25)の駆動速度が増速する構成としたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記風分流体(32)は、前記唐箕(22)の送風路における送風方向中間部を回動支点として上下回動自在に設け、該風分流体(32)によって、前記送風路を、風分流体(32)の上側に形成される上側風路と、風分流体(32)の下側に形成されてチャフシーブ(18)に向けて送風する下側風路とに分割し、
風分流体(32)における唐箕(22)の送風方向上手側端部が下方回動して下側風路が狭まることで、チャフシーブ(18)に送風される選別風の風量が減少し、風分流体(32)における唐箕(22)の送風方向上手側端部が上方回動して下側風路が広くなることで、チャフシーブ(18)に送風される選別風の風量が増大する構成としたことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の脱穀装置。
【請求項5】
前記各シーブ板(18a)間の最大間隔を変更可能な構成としたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の脱穀装置。
【請求項1】
脱穀処理物を揺動選別する揺動選別棚(15)に、該揺動選別棚(15)の揺動方向に所定間隔をおいて複数のシーブ板(18a)を配置したチャフシーブ(18)と、揺動選別棚(15)上の脱穀処理物の層厚を検出する層厚センサ(36)とを備え、揺動選別棚(15)の下方には唐箕(22)を設け、該唐箕22からの選別風の一部をチャフシーブ(18)に向けて案内する風分流体(32)を設け、前記層厚センサ(36)によって検出される脱穀処理物の層厚が大きくなるほどチャフシーブ(18)へ案内される選別風量を増大させるべく風分流体(32)を姿勢変更するとともに、前記各シーブ板(18a)の間隔が広くなるように連繋したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記層厚センサ(36)により検出される脱穀処理物の層厚が所定の厚さ以下の場合には、各シーブ板(18a)の間隔が変更されず、脱穀処理物の層厚が前記所定の層厚を超えて大きくなるほど、シーブ板(18a)の間隔が広くなる構成としたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記チャフシーブ(18)の上方に駆動速度を変速可能な吸引排塵ファン(25)を設け、前記層厚センサ(36)の検出する処理物層厚が大きくなるほど吸引排塵ファン(25)の駆動速度が増速する構成としたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記風分流体(32)は、前記唐箕(22)の送風路における送風方向中間部を回動支点として上下回動自在に設け、該風分流体(32)によって、前記送風路を、風分流体(32)の上側に形成される上側風路と、風分流体(32)の下側に形成されてチャフシーブ(18)に向けて送風する下側風路とに分割し、
風分流体(32)における唐箕(22)の送風方向上手側端部が下方回動して下側風路が狭まることで、チャフシーブ(18)に送風される選別風の風量が減少し、風分流体(32)における唐箕(22)の送風方向上手側端部が上方回動して下側風路が広くなることで、チャフシーブ(18)に送風される選別風の風量が増大する構成としたことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の脱穀装置。
【請求項5】
前記各シーブ板(18a)間の最大間隔を変更可能な構成としたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の脱穀装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−205574(P2012−205574A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75710(P2011−75710)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]