説明

自律走行苗移植機

【課題】本発明では、野菜苗等のポット苗を自律走行しながら畝に移植する苗移植機で、畝上を走行しながら畝の終端に達すると反転して隣の畝に移動して苗の移植を継続できるようにする自律走行苗移植機を提供することが課題である。
【解決手段】走行機体13の底部に畝Uの上面に接触して畝Uを検出する畝センサ28を設け、該畝センサ28が畝Uの終端を検出するとUターン制御を開始して隣の畝Uに移動すべく制御して自律走行苗移植機を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自律的に走行しながら野菜苗等のポット苗を畝に移植する自律走行苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
圃場を自律走行しながら農作業を行う自律走行農作業車として、トラクタやスピードスプレヤーや田植機等が特許文献に記載されている。例えば、特開2008−131880号公報にGPSを利用して圃場の走行作業位置を確認しながら自律走行する田植機が記載されている。
【特許文献1】特開2008−131880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明では、野菜苗等のポット苗を自律走行しながら畝に移植する苗移植機で、畝上を走行しながら畝の終端に達すると反転して隣の畝に移動して苗の移植を継続できるようにする自律走行苗移植機を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、走行機体13の底部に畝Uの上面に接触して畝Uを検出する畝センサ28を設け、該畝センサ28が畝Uの終端を検出するとUターン制御を開始して隣の畝Uに移動すべく制御して自律走行苗移植機を構成した。
【0005】
この構成で、自動苗移植機は、畝センサ28が畝Uの終端を検出して自動でUターンして隣の畝Uに移って苗の移植作業を継続する。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の発明では、自律走行苗移植機が自動で多数並んだ畝Uを移りながら苗へ苗の移植作業を継続するので、作業者が圃場へ入って走行機体13を反転させる作業が必要無くなり、苗の移植作業の省力化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
この発明の一実施例として自律走行苗移植機の一例である野菜移植機1を図面に基づき詳細に説明する。
【0008】
この野菜移植機1は、前輪3と後輪2からなる四輪の走行部1aによって畝Uを跨いだ状態で走行機体(メインフレーム)13を走行させながら、苗供給装置4と苗植付装置5等からなる植付部1bで苗トレイT内の野菜のポット苗を畝Uの上面に植付ける構成となっている。自動制御を解除して手動操作で作業する場合には、作業者は、畝U間を歩きながら走行機体13の後方に設けた操縦ハンドル6の左右グリップ6aを持って走行機体13を操縦操作する。
【0009】
以下、各部の構成について説明する。
走行部1aは、走行機体13の後部に装着するミッションケース7の上部にエンジン9が配置されて直接動力が伝動されている。エンジン9の左側面部には該エンジン9の動力で駆動する油圧ポンプ10が設けられている。また、エンジン9の上側には燃料タンク11等が設けられ、その上部をボンネット12が覆っている。
【0010】
前輪3と後輪2を装着する走行機体13の後部から後斜め後方に向けて後部フレーム14を設け、この後部フレーム14の上端に操縦ハンドル6を前端部が回動調節自在になるように取り付けられており、操縦ハンドル6の左右グリップ6aは高さ調節できるようになっている。
【0011】
後輪2は走行部ミッションケース7の左右側面から突出する左右後輪駆動軸15に装着され、前輪3はメインフレーム13の前端に操向可能に装着する左右前輪従動軸16に軸支されている。
【0012】
苗供給装置4は、メインフレーム13から前上方に向けて設ける前フレーム17に設けられ、前輪3よりも前方へ略水平に張り出す搬送ベルトからなる苗補給装置18とこの苗補給装置18の後部から後下方に張った苗送り装置19で構成され、苗補給装置18上の苗トレイTが苗送り装置19で後下方へ送られる。苗供給装置4の下方には空箱収納ケース33を設けて、苗送り装置19で苗取り装置24に苗が取り出されて空になった苗トレイTが落下収納する。
【0013】
苗送り装置19の上端に前照灯31を設けて夜間に前方を照らすようにしている。
植付部1bは、前側が前フレーム17に枢支され後側が後部フレーム14から前方へと突設したブラケット21に枢着の昇降シリンダ22に取り付けられた植付け昇降台20に植付伝動ケース23を装着し、この植付伝動ケース23の上側に苗取り装置24が装着され、下側に苗植付装置25が装着されている。そして、苗送り装置19から苗取り装置24で苗を取り出し、苗植付装置25へ供給して、この苗植付装置25が畝Uへ降下して苗を植え付ける。
【0014】
前記のブラケット21上には補助苗載せ台26を設け、この補助苗載せ台26の荷枠先端で前記苗植付装置25の真上位置にGPSアンテナ27を設けていて、GPSアンテナ27の位置が苗の植付位置となって、畝Uの左右中央をGPSアンテナ27が移動するように走行部1aを制御して、苗が畝Uの左右中央に植え付けられるようにしている。
【0015】
この補助苗載せ台26は作業者が手動で植え付け作業を行う際に補給苗トレイを載せ置く。
メインフレーム13の前後略中央に下方へ向けて付勢した畝センサ28と鎮圧ローラ29を設けている。畝センサ28は畝高さを検出して植付け昇降台20を昇降制御して苗の植付深さを一定にし、鎮圧ローラ29は植え付けた苗の左右地面を押しつけて苗を安定すると共に、畝センサ28が畝Uの終端で畝Uから外れて落下すると畝Uが終了したことを感知するようにして、この畝センサ28が畝Uの終了を感知すると走行部1aを隣の畝UへUターンするように制御し、再び畝センサ28が畝Uの存在を検出すると苗の植え付けを再開する。このUターンは、後輪2と前輪3のトレッド幅で旋回する。
【0016】
以上の如き野菜移植機1の構成で、自動制御のためのセンサ類が次の如く設けられている。
苗補給装置18の先端には前方へ向けて後述する自動苗搬送機40との位置合わせをする位置確認センサ30を設け、苗送り装置19には苗トレイTが無くなったことを検出する苗切れセンサ32を設け、苗取り装置24には苗の状態と苗を取ったことを検出する苗確認センサ38を設ける。苗確認センサ38は苗取り装置24が取る2、3株前を監視し、欠株であればその株を苗取り装置24が取らないように苗送り装置19を早送りし、植付株数のカウントを行わない。苗送り装置19を早送りしても植付位置までに苗を取れない場合には走行速度を遅くしたり停止したりして調整する。
【0017】
なお、苗確認センサ38を苗補給装置18から苗送り装置19へ引き継ぐ位置に設けて、早めに欠株を発見するようにしても良い。
燃料タンク11には燃料が少なくなったことを検出する燃料センサ34を設け、操縦ハンドル6にはスロットルレバー36の動きを検出するスロットルセンサ37を設けている。
【0018】
苗切れセンサ32からの苗切れ信号によって、この苗切れセンサ32の取付位置と植付間隔から苗が無くなる位置を算出して苗切れ位置として後述する統合制御装置55へ送信する。なお、植付間隔によって苗切れセンサ32の取付位置を変更して苗切れ位置送信タイミングに合わせても良い。
【0019】
さらに、植付け昇降台20の後端下側には鎮圧ローラ29の後で畝Uの上面に向けてライト付きカメラ35を設けて植え付けた苗の状態を映し、写した苗の状態を分析して最適の植付深さになるように植付け昇降台20を昇降制御する。このライト付きカメラ35は苗植付装置25の真後ろであって植え付けた苗を確実に捉え、植付け昇降台20の下側で雨を防ぐ。
【0020】
苗植付装置25が苗を畝Uに植え付ける植付間隔は、畝Uの長さと植付株数を入力し機体に備えたマイコンで自動的に算出し、入力した植付株数を移植するが、走行速度とGPSで測定する実移動距離からスリップ率を算出し、そのスリップ率を考慮したタイミングで苗植付装置25を作動して植付間隔を計画通りに修正する。また、スリップ率を考慮してエンジン9の回転数も制御する。
【0021】
もし、ぬかるんでいる圃場や急傾斜の圃場や急に雨が降り出した等の理由で、スリップ率が適宜に設定する限界スリップ率を超えると、植え付け作業に適しないとして、植え付け作業を中断する。
【0022】
エンジン9の燃料消費率を算出し、エンジン9を低速回転にすれば畝Uを往復するのが可能と判断出来れば、低速回転で植え付け作業を続行し、低速回転でも往復が出来ないと判断すれば、畦道側の畝Uの終端で走行を停止し、ブザーなどで作業者に知らせる。
【0023】
苗移植機の動力源としてエンジンとモータを搭載し、適宜に使い分けるようにすれば良い。例えば、下り傾斜地を走行するにはモータを使用したり、上り傾斜地の走行でも強いトルクが必要な場合にはモータを使用したり、夜間作業時にモータを使用したり、エンジンの燃料が少なくなるとモータを使用したりすれば良い。
【0024】
次に、自動苗搬送機40を図2で説明する。
この自動苗搬送機40は、左右の前輪41と後輪42を設けた走行車体39に五段の棚45を形成した棚枠48を設け、バッテリ43と車軸駆動モータ44で移動可能にしている。棚45は左右方向に開放し、各段に三列の苗トレイTを載置可能にしている。
【0025】
棚枠48の上枠54にカメラ付き抜き取り装置50を前後左右に移動可能に設け、発育不良等の不良苗を苗トレイTから抜き取って所定位置へ廃棄し、別の補給用苗を苗トレイTの抜き取り位置へ補給するようにしている。また、水噴射ノズル51と薬剤或は肥料の散布ノズル52を前後左右に移動可能に設け、植え付け待機中に灌水し薬剤或は肥料を散布するようにしている。さらに、棚枠48の上中央に位置してGPSアンテナ49を設けている。
【0026】
棚枠48の左右片側に、昇降シリンダ46を前後移動可能に設け、この昇降シリンダ46の上に苗トレイTの取出し装置47を設けて、棚枠48上の苗トレイT位置に移動して苗トレイTを引き出すようにしている。取出し装置47を設けた側では前輪41と後輪42の棚枠48との間を広くして取出し装置47が前後に支障なく動けるようにし、反対側は前輪41と後輪42の棚枠48との間を接近させて作業者が近づいて苗トレイTを補充し易くしている。取出し装置47は搬送ベルトで構成し、棚45上の苗トレイTを載せて引き出すのである。
【0027】
図3で、自律走行苗移植機1と自動苗搬送機40の動きを制御する統合制御装置55による連携制御状態を説明する。統合制御装置55は、畦際等に設置したり作業者が持参したりしている。
【0028】
自律走行苗移植機1と自動苗搬送機40は、GPSによって圃場内の位置を統合制御装置55によって把握されている。
自律走行苗移植機1は、畝Uに沿って走行しながら苗を植え付け、一列の畝Uへの植え付けが終わるとUターンして次の列の畝に移動して植付を続行するのであるが、苗切れセンサ32で苗送り装置19上の苗が終了し或は減少したことを検出すると、統合制御装置55で自律走行苗移植機1が植え付け作業を中断して畝Uの端まで移動するように指令し、同時に自動苗搬送機40を自律走行苗移植機1が移動してくる位置に移動するように指令する。
【0029】
畝Uの端で出会った自律走行苗移植機1と自動苗搬送機40は、まず、自動苗搬送機40が棚45から取出し装置47上に移動し、次に自律走行苗移植機1の苗補給装置18を位置確認センサ30で取出し装置47を確認しながら位置合わせして、自動苗搬送機40の取出し装置47が苗補給装置18上に苗トレイTを送り出す。空箱収納ケース33の空苗トレイTは、人手で取り出す。
【0030】
このようにして、苗補給装置18と苗送り装置19に苗トレイTを満載すると、自律走行苗移植機1が植え付けを中断した位置に戻って苗の植え付け作業を再開する。
図4はリモコン野菜移植機60の実施例を示している。
【0031】
このリモコン野菜移植機60は、前輪61と後輪62からなる四輪の走行部によって畝Uを跨いだ状態で走行機体を進行させながら、苗供給装置63と苗植付装置64等からなる植付部65で苗トレイT内の野菜のポット苗を畝Uの上面に植付ける構成となっている。手動で作業を行う場合には、作業者は、畝U間を歩きながら走行機体の後方に設けた操縦ハンドル66を持って適宜操縦操作する。
【0032】
走行機体の前部にミッションケース67が搭載され、そのミッションケース67の前部にエンジン68が配置されている。エンジン68の上側には燃料タンクが設けられ、その上部をボンネット69が覆っている。
【0033】
苗供給装置63は、走行機体の上方後方側に配置されており複数個のポット苗を縦方向と横方向とに多数収容した苗トレイTを後側が高くなるように傾斜して載置支持する苗タンク72を設け、この苗供給装置63の前方側に配置されていて苗取出爪によって前記苗トレイTから苗を一つずつ取出して苗ホッパーへと搬送する苗取装置で植付部65を構成されている。左右の前輪61,61の間には畝上面に接触して畝の存在を検出する畝センサ74を設け、機体後部の鎮圧輪76の後部にあって植え付け苗を監視する植付カメラ77を設けている。
【0034】
植付部65の前側に、育苗トレイが載せられる予備苗載台73が取り付けられている。
このリモコン野菜移植機60は、リモコン操縦装置80を手持ちにして遠隔で操縦することを可能にしている。
【0035】
リモコン操縦装置80は、図5の如く、リモコン野菜移植機60との通信制御が行われていることを示す作動確認ランプ81とリモコン野菜移植機60が異状によって停止していることを示す停止ランプ82を設け、圃場を映す圃場カメラ75(図6参照)のリモコン野菜移植機60と苗置き台車96をモニタ画面89に表示する。このモニタ画面89には、植付作業時にはリモコン野菜移植機60をメインに表示し、リモコン野菜移植機60と苗置き台車96が共に表示されない場合には何らかの故障としてリモコン野菜移植機60と苗置き台車96を停止する。
【0036】
リモコン操縦装置80に設ける操作スイッチは、畦終りスイッチとして走行を停止する停止スイッチ83aと停止解除スイッチ83bを設け、リモコン野菜移植機60が畦Uの終端に達すると作業終了をリモコン操縦装置80に知らせて自動停止するようにするが、自動停止が働かない場合には安全装置が働いて強制的に停止し、リモコン操縦装置80の停止ランプ82を点滅して停止状態を知らせ、安全装置が働いて停止した場合には、リモコン野菜移植機60側の停止解除スイッチ83bを押さなければ走行を開始しない。
【0037】
また、リモコン野菜移植機60からの信号は常にリモコン操縦装置80へ送信され作動確認ランプ81を点灯しているが、リモコン野菜移植機60からリモコン操縦装置80に信号が届かなくなると、リモコン野菜移植機60は畦Uの終端で停止し、作動確認ランプ81が消灯する。
【0038】
その他に、苗植付装置64の作動を入・切する植付スイッチ84a,84b、機体を昇降させる昇降スイッチ85a,85b、機体を前進・後進させる走行スイッチ86a,86b,植付株数を入力する植付株数入力スイッチ87、施肥装置の作動をオン・オフする施肥スイッチ88a,88b、苗の植え付け深さを調整する植付調整スイッチ90a,90b、植付株間隔を調整する株間調整スイッチ91a,91b、潅水装置の作動をオン・オフする灌水スイッチ94a,94b、苗置き台車96を走行させる台車スイッチ95a,95bを設けている。
【0039】
駆動輪である後輪62の回転数から算出する計算移動距離と実際に移動した実移動距離から算出したスリップ率をスリップ率表示部92に表示し、カメラ75でカウントした欠株数を欠株表示部93に表示する。
【0040】
このリモコン野菜移植機60での植え付け状態は、前記植付カメラ77で植付直後の苗を撮影して、リモコン操縦装置80のモニタ画面89に映し出して不良株を判断したりする。そして、畝Uのどの位置に欠株が生じたかをデータとして記憶し、植付の終わった畝Uを戻る際に欠株通過時に作業者に欠株であることを知らせて苗の植え直しを行える。
【0041】
このリモコン野菜移植機60は、危険な傾斜圃場等で使用し、畝Uを登り或は降りながら植え付けを行い、畝U端に来ると同じ畝Uを戻ってくるようにする。戻る際には機体と鎮圧輪76を上昇させて植え付けた苗を倒さないようにする。
【0042】
前述の如く、苗植付装置64が苗を畝Uに植え付ける植付間隔は、畝Uの長さと植付株数を入力し走行によって得られたスリップ率を考慮して自動的に算出するが、その植付け間隔をリモコン操縦装置80のモニタ画面89に表示し、株間調整スイッチ91a,91bによって植付け間隔を変更することも可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】自律走行苗移植機の全体側面図である。
【図2】自動苗搬送機の全体側面図である。
【図3】作業状態を示す圃場全体の平面図である。
【図4】リモコン野菜移植機の全体側面図である。
【図5】リモコン操縦装置の平面図である。
【図6】作業状態を示す圃場全体の平面図である。
【符号の説明】
【0044】
U 畝
13 走行機体
28 畝センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(13)の底部に畝(U)の上面に接触して畝(U)を検出する畝センサ(28)を設け、該畝センサ(28)が畝(U)の終端を検出するとUターン制御を開始して隣の畝(U)に移動すべく制御した自律走行苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−142185(P2010−142185A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324819(P2008−324819)
【出願日】平成20年12月20日(2008.12.20)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】