説明

苗植え付け用の自走式作業台車

【課題】作業者が好みや得手に応じて、後向き姿勢での作業と前向き姿勢での作業を行なえるようにする。
【解決手段】畝幅(w)とほぼ対応する一定間隔のもとに前後方向へ延在する車体(F)の平行な左右両サイドフレーム(8)を、その操向自在車輪(1)と駆動輪(2)との前後相互間が畝高さ(h)よりも低く陥没する側面視の上向き拡開する倒立ハ字型に造形すると共に、その前上がり傾斜辺部を前側座席受け座(9f)とし、これと向かい合う後上がり傾斜辺部を後側座席受け座(9r)として、その両座席受け座(9f)(9r)の傾斜角度(α)を互いにほぼ等しく対応形成する一方、予じめ用意した作業者の1人乗り用座席(S)を上記前側座席受け座(9f)への後向きと、後側座席受け座(9r)への前向きに互換して、各々着脱自在に取り付け使用できるように定めた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は甘藷や馬鈴薯、里芋などの野菜苗を、圃場の畝に植え付け作業するための自走式作業台車に関する。
【背景技術】
【0002】
車体に座乗した1人の作業者が、マルチフィルムでの被覆状態にある畝へ、甘藷や馬鈴薯、里芋などの野菜苗を植え付け作業するために使われる自走式作業台車としては、下記の特許文献に見られる各種発明が提案されている。
【0003】
そのうち、特開2003−38008号は車体フレーム(12)(12)の中間部当りを畝(G)の上面に通ずる作業空間部(9)とするため、側面視のV字型(12a)(12b)に屈曲形成し、その下辺に左右一対のステップ(10)(10)を配設している点で、又その特開2003−38008号を改良した特開2005−46129号は、畝(U)の左右両サイド面に当接・転動する一対の畝ガイドローラー(9)を具備している点で、各々本発明に最も近似する公知技術であると考えられる。
【特許文献1】特開平6−343304号公報
【特許文献2】特開2002−360034号公報
【特許文献3】特開2003−38008号公報
【特許文献4】特開2004−267069号公報
【特許文献5】特開2005−46129号公報
【特許文献6】特開2005−65616号公報
【特許文献7】特開2005−110610号公報
【特許文献8】特開2005−210999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記2件の公知発明では後輪を駆動輪として、前進走行することが予じめ決められた機体との位置関係上、その機体の後部に前向きの座席が据え付けられているため、これに座乗する作業者としても、必らず前向き姿勢での植え付け作業を余儀なくされることになり、逆な後向き姿勢での作業を好みや得手とする作業者の要望に応じることができず、未だ使用上の利便性に劣る。
【0005】
この点、上記座席を前向き設置状態のままとして、機体を逆に後進走行させれば、作業者は後向き姿勢での植え付け作業を行なえることになるが、そうすると上記駆動輪が前輪をなす結果、機体を畝に沿って自づと正しく円滑に操向させることができない。特開2005−46129号に記載の畝ガイドローラーは、機体における進行方向の前側位置にあることにより、初めて先導的な操向性能を発揮し得るものと言える。
【0006】
又、その畝ガイドローラーが畝の左右両サイド面に当接・転動するとしても、回転駆動される後輪のみならず、前輪も垂直軸線の廻りに首振り旋回しないため、畝が屈曲している場合には、機体を畝に沿って正しく円滑に走行させることができず、畝の形崩れやマルチフィルムの破損を惹起することになる。
【0007】
他方、特開2003−38008号のようなV字型空間部を備えた機体(車体フレーム)の場合、その空間部の前側位置にも座席を据え付けることが考えられるが、その前後一対の座席を設置すれば、それだけ製造コストが高価になるほか、いたづらな重量化も招くのである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこのような課題の改良を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では圃場の畝幅とほぼ対応する一定間隔を保つ枠組み固定状態の剛性な車体と、その前部を支持する左右一対の操向自在車輪と、同じく車体の後部を支持する左右一対の駆動輪と、その駆動輪を回転駆動するDCモーター並びにバッテリと、上記車体の操向自在車輪よりも前方位置に軸支されて、畝の両サイド面を挟む状態に接触する左右一対の先導遊転ローラーと、上記車体の前部と後部に取り付け使用される一対の苗収容トレーとを備え、一方向へ前進走行される苗植え付け用の自走式作業台車であって、
【0009】
上記車体の前後方向に沿って延在する左右一対の平行なサイドフレームを、その操向自在車輪と駆動輪との前後相互間がほぼ水平なフロアーとして、畝高さよりも低く陥没する側面視のほぼU字型に造形すると共に、
【0010】
そのフロアーから隆起する両サイドフレームの前辺部を前側座席受け座とし、これと向かい合う両サイドフレームの後辺部を後側座席受け座として、その両座席受け座を上記フロアーとの互いにほぼ等しい一定な交叉角度に保ち、
【0011】
1人乗り用の座席を上記前側座席受け座への後向きと、上記後側座席受け座への前向きとに互換使用して、その各座席受け座へ着脱自在に取り付け固定することにより、何れにしても上記座席へ座乗した作業者が、畝を跨ぐ姿勢状態となるように関係設定したことを特徴とする。
【0012】
又、請求項2の構成では車体の両サイドフレームを、そのフロアーが底辺部となる側面視の上向き拡開するほぼ倒立ハ字型に造形して、
【0013】
その両サイドフレームにおける前辺部の前側座席受け座と、これと向かい合う後辺部の後側座席受け座とを、上記フロアーと交叉する互いにほぼ等しい一定な傾斜角度に保つと共に、
【0014】
座席をその一定な傾斜角度の各座席受け座に沿って、上下方向と前後方向への調整可能に取り付けたことを特徴とする。
【0015】
請求項3の構成では両サイドフレームのフロアーへ、多数の泥落し孔が開口分布する足載せ板を各々溶接すると共に、
【0016】
その足載せ板の左右何れか一方へフットアクセルペダルを、残る他方への付け替え自在に取り付けたことを特徴とする。
【0017】
請求項4の構成では、座席をほぼ水平なシート面と背凭れ面とから成る椅子形態として、その下面に車体の一定間隔と対応する正面視の門字型脚枠を固定横架させると共に、
【0018】
その脚枠の平行な左右両サイド取付片と上記シート面とが交叉する一定角度を、車体における両サイドフレームの前側座席受け座並びに後側座席受け座がフロアーと交叉する一定角度とほぼ等しく対応させたことを特徴とする。
【0019】
請求項5の構成では、両サイドフレームの前部へ平行な2本のフロント連結ビームを水平に固定横架させて、その両フロント連結ビームへ苗収容トレーを上方から着脱自在に取り付けると共に、
【0020】
両フロント連結ビームが両サイドフレームから横方向へ一定長さだけ張り出す左右両端部にスイベル軸を介して、操向自在車輪を一定の角度範囲だけ首振り旋回し得るように各々枢着したことを特徴とする。
【0021】
請求項6の構成では、両サイドフレームの前部をフロアーから連続的に隆起するフロントノーズとして、その両フロントノーズの前端部付近から左右一対の先導遊転ローラー用吊持ハンガーを一体的に垂下させると共に、
【0022】
その両吊持ハンガーへ左右一対の先導遊転ローラーを正面視のほぼハ字型に向かい合う傾斜姿勢状態として、且つ上下方向と左右横方向への調整自在に各々軸支したことを特徴とする。
【0023】
請求項7の構成では、両サイドフレームの後部をフロアーから連続的に垂立するリヤーマストとして、その両リヤーマストの中途高さ位置に固定横架した水平なリヤー補強バーから、左右一対の苗収容トレー用サイド支持板を一体的に垂立させると共に、
【0024】
その両サイド支持板へ苗収容トレーを起伏的な回動角度の調整自在に枢着したことを特徴とする。
【0025】
請求項8の構成では、両サイドフレームの後部をフロアーから連続的に垂立するリヤーマストとして、その上端部を固定横架する水平な2本のリヤー連結ビーム上へ、左右一対のバッテリ受け枠台を搭載させ、
【0026】
その両バッテリ受け枠台の左右相互間に横架する水平な伝動軸上へ、1個の第1伝動スプロケットと左右一対の第2伝動スプロケットとを並列状態に嵌め付け一体化して、
【0027】
その第1伝動スプロケットとDCモーターの出力スプロケットとを、第1伝動チェンにより連繋する一方、
【0028】
上記リヤーマストの下端部へ駆動輪と一体回転し得るように軸支された左右一対の第3伝動スプロケットと、上記第2伝動スプロケットとを各々第2伝動チェンにより連繋したことを特徴とする。
【0029】
更に、請求項9の構成では伝動軸の両端部へ左右独立に作用する一対のサイドプルクラッチを取り付けると共に、そのクラッチを横外方から引っ張り操作することにより、駆動輪の左右何れか一方をフリー状態に保ち、残る他方だけを回転駆動できるように定めたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
請求項1の上記構成によれば、作業者の1人乗り用座席を一方向へ前進走行される自走式作業台車との関係上、その車体を形作る左右両サイドフレームの前側座席受け座へ後向きとして、又同じく両サイドフレームの後側座席受け座へ前向きとして、互換的に取り付け使用することができ、作業者の好みや得手に対応し得る利便性と汎用性がある。
【0031】
その何れの使用状態にあっても、操向自在車輪と駆動輪との前後相互間がほぼ水平なフロアーとして兼用され、その両サイドフレームのフロアーに両足を載せて、上記座席へ座乗した作業者は必らず畝を跨ぐ姿勢状態となり、その畝の上面に接近するため、いたづらに低く屈む作業姿勢を強要されず、軽労力のもとで野菜苗の植え付け作業を遂行できるのである。
【0032】
その場合、車体の前部と後部には一対の苗収容トレーが取り付け使用されるようになっているため、上記座席が前向きと後向きとの何れに取り付けられても、これに座乗した作業者はその眼前位置へ臨むこととなる苗収容トレーから、野菜苗をすばやく安楽に掴み出すことができ、作業能率の向上に役立つ。
【0033】
更に、車体の前部を支持する前輪が操向自在車輪(キャスター)であり、その前方位置に畝の両サイド面を挟んで接触・転動する左右一対の先導遊転ローラーが軸支されているため、畝が屈曲している場合でも、その先導遊転ローラーに追従して自づと首振り旋回する操向自在車輪により、車体を畝に沿って正しく円滑に前進走行させ得る効果がある。
【0034】
特に、請求項2の構成を採用するならば、畝に対する野菜苗の植え付け作業空間を極力広く確保することができ、座席への乗り降りも容易化されるため、身体の大きな作業者にとってますます有益となる。
【0035】
請求項3の構成を採用するならば、作業者が着用する長靴でも、これを足載せ板によって安定良く受け持つことができ、上記座席における向きの変換に応じて付け替えられるフットアクセルペダルにより、その作業者が得手の片足を使って、車体の走行速度調整や停止を便利良く行なえる効果もある。
【0036】
請求項4の構成を採用するならば、その背凭れ面も備えた椅子形態の座席によって、長時間作業する作業者を安楽に座乗させることができるほか、その脚枠の左右両サイド取付片と水平なシート面との交叉する一定角度が、車体の両サイドフレームにおける前側座席受け座や後側座席受け座と水平なフロアーとの交叉する一定角度にほぼ等しく対応形成されているため、上記座席をその前側座席受け座と後側座席受け座へ、互いにほぼ同じ取付角度(姿勢)として常時安定良く取り付け使用できるのであり、その意味でも互換性に優れる。
【0037】
又、請求項5の構成を採用するならば、両サイドフレームの前部に固定横架された水平な2本のフロント連結ビームを兼用して、その前側苗収容トレーと操向自在車輪(キャスター)とを合理的に取り付けることができ、しかもその操向自在車輪はスイベル軸の垂直軸線廻りに、一定の角度範囲だけしか首振り旋回しないように規制されているため、不正に横向くおそれがなく、車体を畝に沿って確実に操向させ得る効果がある。
【0038】
請求項6の構成を採用するならば、上記操向自在車輪の前方位置にある左右一対の先導遊転ローラーが、正面視のほぼハ字型に向かい合う傾斜姿勢状態として、畝の両サイド面に馴染み良く接触し、しかも上下方向と左右横方向への調整自在として、畝高さや畝幅の変化に対応できる効果がある。
【0039】
更に、請求項7の構成を採用するならば、両サイドフレームにおけるリヤーマストの中途高さ位置を補強する水平なリヤー補強カバーと、これから一体的に垂立する左右一対のサイド支持板を活用して、後側苗収容トレーを合理的に取り付けることができ、しかもその苗収容トレーは起伏的な回動角度の調整自在であるため、上記座席へ後向きに座乗した作業者が、その眼前位置の苗収容トレーから野菜苗をやはり安楽に掴み出せることとなる。
【0040】
請求項8の構成を採用するならば、その構成を備えた駆動輪の回転駆動機構が、車体の後部に集中して設置されているため、その後部に重心を偏倚させることができ、野菜苗を植え付け作業する畝の列変更に当り、上記車体における前部の持ち上げ旋回操作を軽快に行なえる効果がある。
【0041】
その場合に、請求項9の構成を採用するならば、左右何れか一方のサイドプルクラッチを引っ張り操作して、その一方の駆動輪に対する回転駆動力を断ち、残る他方の駆動輪だけを回転駆動することにより、これを支点として、車体を小回り旋回させることができ、上記前部の持ち上げ旋回操作を老人や婦女子でもすばやく安楽に行なえるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、図面に基いて本発明を詳述すると、その自走式作業台車は図1〜6の全体から明白なように、圃場の畝幅(w)とほぼ対応する一定間隔を保つ枠組み固定状態の剛性な車体(F)と、その前部を支持する左右一対の操向自在車輪(前輪)(1)と、同じく車体(F)の後部を支持する左右一対の駆動輪(後輪)(2)と、その操向自在車輪(1)と駆動輪(2)との前後相互間に介在する位置関係として、上記車体(F)へ前向き又は後向きとなる着脱変換自在に取り付け使用される座席(S)と、同じく車体(F)における上記操向自在車輪(1)の前方位置へ、畝(G)の両サイド面と接触するように軸支された左右一対の先導遊転ローラー(3)と、上記駆動輪(2)を回転駆動するDCモーター(4)並びにそのバッテリ(5)と、上記車体(F)の前部と後部へ着脱自在に取り付け使用される一対の苗収容トレー(6)(7)とを備えており、上記座席(S)へ好みや得手に応じた前向き又は後向きとして座乗した1人の作業者(M)が、その苗収容トレー(6)(7)から甘藷や馬鈴薯、里芋などの野菜苗(V)を掴み出して、畝(G)へ植え付け作業するようになっている。矢印符号(A)は作業台車の予じめ決められた進行(前進)方向を示している。
【0043】
先ず、上記車体(F)の具体的な構成について言えば、これは図7〜9に抽出して示す如く、前後方向に沿って延在する左右一対の平行なサイドフレーム(8)を備えており、その両サイドフレーム(8)が金属角パイプ材から、中間部を畝高さ(h)よりも低く陥没するほぼ水平のフロアー(8a)とし、前部を畝高さ(h)よりも高いフロントノーズ(8b)とし、残る後部をそのフロントノーズ(8b)よりも背高く垂立するリヤーマスト(8c)とした側面視の全体的なほぼU字型に屈曲形成されている。
【0044】
その場合、両サイドフレーム(8)における底辺部のフロアー(8a)とフロントノーズ(8b)との境界に隆起する前辺部が前側座席受け座(9f)として、同じくフロアー(8a)とリヤーマスト(8c)との境界に隆起する後辺部が後側座席受け座(9r)として、その互いに上向き拡開する倒立ハ字型のほぼ等しい一定な傾斜角度(α)(例えば約65度)に各々造形されており、しかもその前側座席受け座(9f)と後側座席受け座(9r)には各々多数の互いに同じボルト受け入れ孔(10)が開口分布されている。
【0045】
つまり、1人乗り用の座席(S)を作業者(M)の好みや得手に応じ、その前側座席受け座(9f)への後向きと後側座席受け座(9r)への前向きに互換して、着脱自在に取り付け使用できるようになっているわけであり、その何れにおいても座席受け座(9f)(9r)は上記フロアー(8a)と交叉する一定の傾斜角度(α)をなしているため、これに沿って座席(S)の取付位置を上下方向と前後方向へ調整することができる。
【0046】
この点、図示の実施形態では両サイドフレーム(8)におけるフロアー(8a)とリヤーマスト(8c)とがほぼ直角に屈曲する境界部へ、その補強用としても役立つ別個な金属角パイプ材の座席支持エルボ(8d)を溶接し、その付属の支持エルボ(8d)を上記後辺部として、これに一定な傾斜角度(α)の後側座席受け座(9r)を造形しているが、上記前辺部の前側座席受け座(9f)と後辺部の後側座席受け座(9r)とを、ほぼ水平な底辺部の上記フロアー(8a)から約90度の一定な交叉角度(α)として平行に垂立させても良く、要するに前側座席受け座(9f)と後側座席受け座(9r)とが車体(F)の両サイドフレーム(8)へ、その上記操向自在車輪(1)と駆動輪(2)との前後相互間に介在することとなる底辺部のフロアー(8a)を挟む向かい合う一対づつとして、造形されておれば足る。
【0047】
そして、両サイドフレーム(8)の上記フロアー(8a)には、多数の泥落し孔(11)を備えた足載せ板(パンチングメタル)(12)の左右一対が溶接されているため、上記座席(S)を前向きと後向きとの何れに取り付け使用した場合でも、その足載せ板(12)を兼用することができ、ここに両足を載せて、その座席(S)へ座乗した作業者(M)は、自づと畝(G)を跨ぐ姿勢状態になるのである。
【0048】
又、同じく両サイドフレーム(8)における上記フロントノーズ(8b)の水平な中途部には、金属角パイプ材から成るフロント連結ビーム(13)の平行な2本が、溶接によって上方から水平に固定横架されており、その両フロント連結ビーム(13)の左右両端部は両サイドフレーム(8)から一定長さ分だけ横方向へ張り出す状態にある。(14)は上記フロントノーズ(8b)の前端部付近から一体的に垂下する左右一対の先導遊転ローラー用吊持ハンガーであり、これも金属角パイプ材から成る。(15)は同じくフロントノーズ(8b)における左右何れか一方(好ましくは右側)の前端部付近から内向き一体的に張り出す手元スイッチ用取付座である。
【0049】
他方、両サイドフレーム(8)における上記リヤーマスト(8c)の水平に張り出す後部上端には、やはり金属角パイプ材から成るリヤー連結ビーム(16)の平行な2本が、溶接によって水平に介挿横架されており、そのリヤーマスト(8c)とリヤー連結ビーム(16)との直角な交叉部には、側面視の門字型をなす左右一対のバッテリ受け枠台(17)が、その両リヤー連結ビーム(16)を上方から覆う被冠状態に溶接されている。
【0050】
更に、同じくリヤーマスト(8c)の中途高さ位置には、金属角パイプ材から成るリヤー補強バー(18)の1本が、やはり溶接によって水平に介挿横架されており、その左右両端部付近からは平行な一対の後側苗収容トレー用サイド支持板(19)が、上向き一体的に垂立されている。(20)は上記リヤーマスト(8c)へ横外方から溶接された左右一対の伝動ケース用取付ベース板、(21)は同じくリヤーマスト(8c)の下端部付近から外向き一体的に張り出された左右一対の水平な駆動輪用支軸である。
【0051】
次に、上記座席(S)はクッション材のほぼ水平なシート面(22)のみならず、背凭れ面(23)も備えた椅子形態をなしているが、その金属の丸パイプ材や角パイプ材から屈曲された本体フレーム(24)の下面には、図10のような左右一対の受け枕(25)を介して、上記車体(F)の一定間隔と対応する大きさの脚枠(26)が、溶接により予じめ固定横架されている。
【0052】
茲に、座席(S)に付属の脚枠(26)は上記車体(F)の両サイドフレーム(8)と同じ金属角パイプ材から、座席(S)を中央部とする正面視の門字型に折り曲げられており、その切り離し両端部の斜め下向く左右一対の平行なサイド取付片(26y)と、上記シート面(22)との交叉する一定角度(β)が、両サイドフレーム(8)における上記前側座席受け座(9f)や後側座席受け座(9r)の傾斜角度(α)(先に例示した約65度)とほぼ同等に関係設定されている。
【0053】
しかも、このような脚枠(26)の両サイド取付片(26y)には、両座席受け座(9f)(9r)の上記ボルト受け入れ孔(10)と選択的に合致連通するボルト受け入れ孔(27)が、その少なくとも2個づつの1組として開口分布されており、ここへ抜き差し自在に差し込み貫通されるセットボルト(28)とその固定ナット(29)によって、座席(S)の脚枠(26)が上記車体(F)の両サイドフレーム(8)へ、畝(G)を跨ぐ状態に締結一体化されることとなる。
【0054】
そのため、上記車体(F)を形作っている両サイドフレーム(8)の前側座席受け座(9f)へ、その座席(S)を図1〜4のような後向きとして取り付けることができるほか、これを取りはずして、同じく両サイドフレーム(8)の後側座席受け座(9r)へ、逆に図5、6のような前向きとして取り付けることもでき、その座席(S)の互換使用が可能である。
【0055】
そして、その何れの取り付け使用状態にあっても、座席(S)の姿勢(取付角度)が同じ一定に確保されることとなり、作業者(M)に違和感を与えるおそれがない。その場合、上記足載せ板(12)を兼用できることや、上記セットボルト(28)の差し替えによって、その座席(S)の取付位置を上下方向と前後方向へ調整できることについては、既に述べた通りである。
【0056】
尚、上記両サイドフレーム(8)のフロアー(8a)から約90度での平行に垂立する前側座席受け座(9f)と後側座席受け座(9r)に対応して、座席(S)に付属する脚枠(26)の両サイド取付片(26y)を垂下させ、その左右一対を前側座席受け座(9f)や後側座席受け座(9r)へ同様なセットボルト(28)の差し替えにより、上記座席(S)を上下方向への調整のみ行なえるように取り付けても良い。
【0057】
先の操向自在車輪(キャスター)(1)を具体的に説明すると、その左右一対は上記車体(F)を枠組み架構している水平なフロント連結ビーム(13)の両端部へ、各々スイベル軸(30)を介して首振り旋回自由に枢着されており、そのため屈曲する畝(G)にも自づと順応して、その畝(G)の両サイド溝を円滑に転動することとなる。
【0058】
即ち、これを抽出して示した図11、12から明白なように、上記フロント連結ビーム(13)の平行な2本が車体(F)の両サイドフレーム(8)から一定長さ分だけ張り出す左右両端部には、その下方から一対の円形な台盤(31)が複数づつのボルト(32)と固定ナット(33)によって締結一体化されていると共に、その台盤(31)の中心部からスイベル軸(30)が各々一体的に垂下している。
【0059】
(34)はそのスイベル軸(30)を包囲する円筒状のベアリングケースであって、操向自在車輪(1)を軸支した二叉フォーク(35)の上端中央部に溶接されており、そのベアリングケース(34)内のボールベアリング(36)を介して、上記スイベル軸(30)の垂直軸線廻りに首振り旋回する。(37)はベアリングケース(34)のカバー板、(38)はその抜け止め固定ナットであり、スイベル軸(30)の下端ネジ軸部に締結一体化されている。
【0060】
茲に、操向自在車輪(1)のスイベル軸(30)と、上記両サイドフレーム(8)の前側座席受け座(9f)へ取り付け使用される座席(S)とは、一定距離(L)だけ離隔しているため、その座席(S)へ後向きに座乗した作業者(M)の体重が、操向自在車輪(1)の負荷として作用することはなく、その操向自在車輪(1)の円滑な操向性に抵抗を与えるおそれはない。
【0061】
但し、操向自在車輪(1)の二叉フォーク(35)に跨がり係合する別個な操向角度規制板(39)が上記台盤(31)の下面へ、そのボルト(32)と固定ナット(33)を兼用して取り付け一体化されており、これによって操向自在車輪(1)は360度も自由に首振り旋回せず、一定角度範囲(γ)(例えば約30度)に限って首振り旋回し得るように規制されているのである。そのため、不正な横向きに旋回するおそれがない。(40)は上記二叉フォーク(35)の中途高さ位置に介挿固定された泥落しスクレーパーを示している。
【0062】
又、上記先導遊転ローラー(3)について言えば、その各個は傾斜支軸(41)の廻りに遊転する硬質な合成樹脂製の芯筒(42)と、その胴面に被着一体化されたスポンジなどの弾力性皮膜(43)とから全体的なシリンダー型や、好ましくは畝(G)と密接しやすい紡錘型に造形されており、その皮膜(43)が畝(G)を覆っているマルチフィルム(透明ビニールシート)(44)の両サイド面と弾力的に接触して、そのフィルム(44)に傷付きを与えないようになっている。
【0063】
そして、車体(F)を形作っている両サイドフレーム(8)のフロントノーズ(8b)から垂下した上記吊持ハンガー(14)には、これと対応する左右一対の先導遊転ローラー用取付ブラケット(45)が、各々昇降自在に差し込み套嵌されており、その取付高さをセットボルト(押圧ボルト)(46)によって調整固定できるようになっている。
【0064】
(47)は水平に横架する先導遊転ローラー用支持バーの左右一対であって、一定長さのチャンネル溝型鋼材から成り、その内側の一端部には上記先導遊転ローラー(3)における傾斜支軸(41)の張り出し上端部が溶接されている。その際、左右一対の先導遊転ローラー(3)は図1から明白なように、畝(G)を挟む正面視のハ字型として向かい合う傾斜姿勢状態にある。
【0065】
しかも、上記一定長さだけ延在する水平な支持バー(47)には、多数のボルト受け入れ孔(48)が開口分布されており、ここへ抜き差し自在に差し込み貫通される2個づつのセットボルト(49)と固定ナット(50)を介して、その支持バー(47)が上記取付ブラケット(45)へ各々締結一体化されている。
【0066】
つまり、先導遊転ローラー(3)の支持バー(47)がそのセットボルト(49)の差し替えによって、左右横方向へ調整されるようになっているわけであり、そのため上記先導遊転ローラー(3)の左右一対が正面視のハ字型をなすこととも相俟って、畝幅(w)の広狭変化に対応でき、その両先導遊転ローラー(3)をマルチフィルム(44)の両サイド面に沿って、常時安定良く円滑に転動させ得ることとなる。
【0067】
更に言えば、このような先導遊転ローラー(3)の直後位置に臨む前輪が操向自在車輪(キャスター)(1)として、そのスイベル軸(30)の廻りに首振り旋回し得るようになっているため、畝(G)が屈曲していても、これを挟み接触する先導遊転ローラー(3)に、操向自在車輪(1)が自づと追従作用することとなり、車体(F)をその屈曲する畝(G)に沿って常時正しく円滑に前進走行させることができるのである。
【0068】
次に、上記駆動輪(2)の回転駆動機構を具体的に説明すると、左右一対のバッテリ受け枠台(17)が車体(F)における両サイドフレーム(8)のリヤーマスト(8c)上に設置されていることを上記したが、その両バッテリ受け枠台(17)の左右相互間に渡っては、水平な伝動軸(51)が回転可能な軸受け状態に横架されている。
【0069】
しかも、その伝動軸(51)上の中途部には比較的径大な1個の第1伝動スプロケット(52)が、同じく伝動軸(51)上の両端部付近には径小な左右一対の第2伝動スプロケット(53)が各々嵌め付け一体化されている。
【0070】
そして、先に一言した駆動源のDCモーター(24V)(4)は減速機(図示省略)付きとして、上記伝動軸(51)上の第1伝動スプロケット(52)とほぼ対応する背後位置に架設されており、そのモーター(4)の出力スプロケット(54)と上記第1伝動スプロケット(52)との向かい合う前後相互間には、第1伝動チェン(55)が巻き掛けられている。
【0071】
(56)は上記伝動軸(51)とDCモーター(4)並びに第1伝動チェン(55)を安全に被覆する断面門字型のカバー板であって、上記バッテリ受け枠台(17)の左右相互間に固定横架されている。(57)はその両バッテリ受け枠台(17)に搭載固定されたバッテリ収容ボックスであり、その内部にバッテリ(12V×2本)(5)を収容している。これには一般家庭の電源(100V)を使って充電することができる。
【0072】
他方、上記伝動軸(51)上の第2伝動スプロケット(53)と対応位置する比較的径小な第3伝動スプロケット(58)が、共通のボス(59)を介して上記駆動輪(2)と一体回転し得るように組み付けられており、そのボス(59)が上記両サイドフレーム(8)のリヤーマスト(8c)から張り出す水平な駆動輪用支軸(21)へ、各々抜け止め状態に差し込み套嵌されている。
【0073】
(60)は上記第2、3伝動スプロケット(53)(58)の向かい合う上下相互間に巻き掛けられた第2伝動チェンの左右一対であり、その何れも上記リヤーマスト(8c)の伝動ケース用取付ベース板(20)へ被着一体化された伝動ケース(61)によって、安全な被覆状態に保たれている。
【0074】
その場合、図4の側断面図から明白なように、駆動輪(2)の回転軸芯をなす上記支軸(21)と、伝動軸(51)とを直線的に結ぶ仮想線(Z−Z)は、上記両サイドフレーム(8)の垂立するリヤーマスト(8c)と一定角度(θ)(例えば約5度)だけ交叉した傾斜線として、上記バッテリ収容ボックス(57)の左右一対が後方への退避状態に配設されている。
【0075】
そのため、バッテリ(5)の重量が駆動輪(2)の真上から集中する負荷として作用せず、その回転駆動に抵抗を与えないほか、後述する車体(F)の前部持ち上げ旋回操作を、その後部の重心により著しく軽快に行なえるのである。
【0076】
更に、上記伝動軸(51)の両端部には左右一対のサイドプルクラッチ(62)も取り付けられており、これが左右独立に作用する詳細な機構については図示省略してあるが、そのノブ(63)を上記バッテリ受け枠台(17)の横外方から引っ張り操作して、上記第2伝動スプロケット(53)の左右何れか一方と、その伝動軸(51)との伝動を断ち、残る他方の駆動輪(2)だけを回転駆動し乍ら、車体(F)を希望の方向へ旋回させることにより、植え付け作業する畝(G)の変更を、その枕地での軽快にすばやく行なえるようになっている。(64)はその旋回時に車体(F)の前部を持ち上げるためのハンドルグリップであり、上記両サイドフレーム(8)におけるフロントノーズ(8b)の前端部に被着一体化されている。
【0077】
(65)は上記バッテリ受け枠台(17)における左右何れか一方の前面へ、座席(S)上から操作しやすく取り付け固定されたコントロールボックスであり、その表面には電源のオン・オフスイッチ(66)と走行速度調整ダイヤル(67)並びに表示ランプ(68)が並列している。(69)は上記足載せ板(12)の左右何れか一方(好ましくは右側)へ着脱自在に取り付けられたフットアクセルペダルであるが、これは上記座席(S)の向きを変換使用した時、残る他方の足載せ板(12)へ付け替えられることになる。
【0078】
又、電源をオン・オフ操作する別個な手元スイッチ(70)が、上記サイドフレーム(8)のフロントノーズ(8b)に付属する手元スイッチ用取付座(15)へ設置されており、作業者(M)が車体(F)の前部を持ち上げ旋回する時、その手元から便利良く操作することもできるようになっている。尚、上記バッテリ(5)からの全体的な電気配線は図示省略してある。
【0079】
更に、上記前側苗収容トレー(6)は合成樹脂製の網篭から成り、車体(F)を枠組み架構している上記2本の水平なフロント連結ビーム(13)へ跨がる搭載状態として、その上方から複数のボルト(71)により安定良く取り付け固定されている。そのため、前向きに取り付け使用される座席(S)へ座乗した作業者(M)が、その前側苗収容トレー(6)から野菜苗(V)をすばやく安楽に掴み出すことができる。
【0080】
その前側苗収容トレー(6)として、市販されている小型の網篭を使用するような場合には、図3の平面図に示唆する如く、その複数個を並列状態に取り付け固定して、植え付け作業中に不足しない多量の野菜苗(V)を収容できるように定めることが望ましい。
【0081】
他方、後側苗収容トレー(7)については言えば、これは図4のような互いに連通する前後一対の合成樹脂製網篭(7f)(7r)から成り、その比較的大きな後側網篭(7r)の左右両サイド面が、上記両サイドフレーム(8)のリヤー補強バー(18)から垂立している左右一対の後側苗収容トレー用サイド支持板(19)へ、各々水平の支点ピン(72)を介して起伏的な回動自在に枢着されている。(73)はその後側網篭(7r)の前下がり傾斜角度を調整する左右一対のセットボルトであるが、これを締め付け固定するためのナットは図示省略してある。
【0082】
そして、このような後側網篭(7r)の前端部に小型の上記前側網篭(7f)が、やはり水平な左右一対の組立ボルト(74)によって、独自の起伏的な回動(屈折)自在に枢支連結されているのである。その組立ボルト(74)を締め付けることにより、前側網篭(7f)の前下がり傾斜角度を調整固定するナットは、図示省略してある。
【0083】
そのため、後向きに取り付け使用される座席(S)へ座乗した作業者(M)は、その眼前位置に臨むこととなる後側苗収容トレー(7)から、やはり野菜苗(V)をすばやく安楽に掴み出すことができる。又、その後側苗収容トレー(7)の前側網篭(7f)を後側網篭(7r)に対して屈折させ、上記車体(F)を形作っている両サイドフレーム(8)の座席支持エルボ(8d)から離れる後方へ、図6のような退避状態に逃がすことにより、その座席支持エルボ(8d)の後側座席受け座(9r)へ上記座席(S)を前向きとして、一切の支障なく安定裡に取り付け使用することもできるのである。
【0084】
(75)は上記伝動軸(51)やDCモーター(4)などを被覆したカバー板(56)の真上位置において、両バッテリ収容ボックス(57)の左右相互間へ固定横架された苗箱受け台であり、ここには予備の野菜苗(V)を収容した別個な苗箱(76)が、その上方から搭載使用されるようになっている。
【0085】
そのため、予備の野菜苗(V)をその苗箱(76)から、上記前側苗収容トレー(6)や後側苗収容トレー(7)へ適宜移し入れることにより、広大な圃場の畝(G)についても、その野菜苗(V)の不足が生じることなく、能率良く植え付け作業を遂行できるのである。(77)は上記バッテリ収容ボックス(57)に対する苗箱受け台(75)の取り付けボルトを示している。
【0086】
上記のように構成された本発明の自走式作業台車を圃場に搬入して、その畝(G)へ甘藷や馬鈴薯、里芋などの野菜苗(V)を植え付け作業するに当り、その作業者(M)が作業台車における予じめ決まった進行(前進)方向(A)との関係上、後向き姿勢での作業を好みや得手とするならば、図1〜4や図13のように上記車体(F)を形作っている両サイドフレーム(8)の前側座席受け座(9f)へ、座席(S)を後向きに取り付け使用して、その眼前位置に臨むこととなる後側苗収容トレー(7)へ野菜苗(V)を、又同じく苗箱(76)や作業者(M)の背後に位置することとなる前側苗収容トレー(6)へ、予備の野菜苗(V)を各々収容しておく。
【0087】
そして、上記車体(F)の先導遊転ローラー(3)と操向自在車輪(キャスター)(1)並びに駆動輪(2)の左右一対づつを、畝(G)へ跨がる状態に配置させた上、1人の作業者(M)が上記座席(S)へ後向きに座乗して、その作業台車を図13の矢印(A)で示す一方向へ進行(前進)させるのである。
【0088】
茲に、進行速度としては不揃いな野菜苗(V)を取り分けるための所要時間や手数に鑑み、約300〜400m/hに調整しておくことが好ましく、その限度においてフットアクセルペダル(69)を片足により踏み込み操作し乍ら、上記眼前位置の後側苗収容トレー(7)から掴み出した野菜苗(V)を、畝(G)に植え付け作業する。
【0089】
そうすれば、両サイドフレーム(8)の足載せ板(12)へ両足を載せた作業者(M)は、畝(G)を自づと跨ぐ姿勢状態として、その畝(G)の上面に接近するため、無理に低く屈むことなく、軽労力のもとに順序良く植え付け作業することができ、又駆動輪(2)の回転駆動源はDCモーター(4)であるため、エンジンと異なって、騒音が作業者(M)の耳に残ることもなく、静粛に作業を遂行し得るのである。
【0090】
しかも、上記座席(S)に座乗した作業者(M)の体重が、操向自在車輪(1)の負荷として作用せず、その自在車輪(1)の円滑な操向性能と、これよりも前方位置において畝(G)を挟み、そのマルチフィルム(44)の左右両サイド面に接触・転動する先導遊転ローラー(3)の先導作用により、作業台車が自づと正しく進行することになるため、作業者(M)としては安心して植え付け作業に集中できるのであり、万一作業途中で停止したい場合には、そのたび毎にフットアクセルペダル(69)の踏み込み操作を解除すれば良い。
【0091】
やがて、一列の畝(G)に対する植え付け作業が終了し、枕地に到着したならば、上記座席(S)から降りた作業者(M)が、手元スイッチ(70)とサイドプルクラッチ(62)を操作すると共に、車体(F)の前部を畝高さ(h)よりも高く、図14のように持ち上げて、その左右何れか一方の駆動輪(2)をフリー(遊転)状態に保ち、残る他方の回転駆動される駆動輪(2)を言わば支点としつつ、車体(F)を小廻り旋回させることにより、引き続き植え付け作業する畝(G)の列変更を行なえば良い。
【0092】
上記左右一対のバッテリ(5)やDCモーター(4)、予備の苗箱(76)などが搭載された座席(S)の後部に比して、その車体(F)の前部は著しく軽量化されているため、上記前部の持ち上げ旋回操作は高齢者や婦女子の1人でも、すばやく軽快に行なえる。
【0093】
図13のような座席(S)へ後向き姿勢として座乗した場合には、野菜苗(V)の植え付け状態を作業者(M)自身目視点検できる利点があると言えるが、別な作業者(M)が逆に前向き姿勢での作業を好みや得手とするならば、上記座席(S)をその両サイドフレーム(8)の前側座席受け座(9f)から一旦取りはずして、これを同じく両サイドフレーム(8)の後側座席受け座(9r)へ、図5、6のような前向きに取り付け使用する。
【0094】
そうすれば、図15、16から明白なように、前側苗収容トレー(6)が作業者(M)の眼前位置に臨むこととなる結果、これから野菜苗(V)を安楽に掴み出すことができ、その場合にも両サイドフレーム(8)の足載せ板(12)は兼用として、これに両足を載せた作業者(M)が、やはり自づと畝(G)を跨ぐ姿勢状態になり、その畝(G)の上面に接近するため、先の図13と同様に無理なく軽快に植え付け作業し得るのである。
【0095】
尚、図5、6や図15、16のような座席(S)の前向き取り付け使用状態から、逆に図1〜4や図13のような後向き取り付け使用状態へ変換できることは、敢えて言うまでもない。その他の作用と効果も先の図1〜4や図13に基き説明したそれと同等である。上記車体(F)にはオプションとして、例えば日除けや雨除けなどの付属品を取り付けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明に係る自走式作業台車の正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】座席を車体の後側座席受け座へ前向きに取り付けた使用状態の平面図である。
【図6】図5の6−6線断面図である。
【図7】車体を抽出して示す正面図である。
【図8】図7の側面図である。
【図9】図8の平面図である。
【図10】座席を抽出して示す斜面図である。
【図11】図3の11−11線に沿う拡大断面図である。
【図12】図11の12−12線断面図である。
【図13】座席を車体の前側座席受け座へ後向きに取り付けた使用状態での苗植え付け作業を示す側断面図である。
【図14】作業台車の前部持ち上げ旋回操作を示す側面図である。
【図15】座席を車体の後側座席受け座へ前向きに取り付けた使用状態での苗植え付け作業を示す正面図である。
【図16】図15の側断面図である。
【符号の説明】
【0097】
(1)・操向自在車輪
(2)・駆動輪
(3)・先導遊転ローラー
(4)・DCモーター
(5)・バッテリ
(6)(7)・苗収容トレー
(7f)・前側網篭
(7r)・後側網篭
(8)・サイドフレーム
(8a)・フロアー
(8b)・フロントノーズ
(8c)・リヤーマスト
(8d)・座席支持エルボ
(9f)・前側座席受け座
(9r)・後側座席受け座
(11)・泥落し孔
(12)・足載せ板
(13)・フロント連結ビーム
(16)・リヤー連結ビーム
(17)・バッテリ受け枠台
(18)・リヤー補強バー
(19)・後側苗収容トレー用サイド支持板
(21)・駆動輪用支軸
(22)・シート面
(23)・背凭れ面
(24)・座席本体フレーム
(26)・脚枠
(26y)・サイド取付片
(30)・スイベル軸
(31)・台盤
(34)・ベアリングケース
(39)・操向角度規制板
(40)・傾斜支軸
(32)・芯筒
(43)・弾力性皮膜
(44)・マルチフィルム
(51)・伝動軸
(52)・第1伝動スプロケット
(53)・第2伝動スプロケット
(54)・出力スプロケット
(55)・第1伝動チェン
(57)・バッテリ収容ボックス
(58)・第3伝動スプロケット
(60)・第2伝動チェン
(61)・伝動ケース
(62)・サイドプルクラッチ
(64)・ハンドルグリップ
(65)・コントロールボックス
(69)・フットアクセルペダル
(70)・手元スイッチ
(72)・支点ピン
(73)・セットボルト
(74)・組立ボルト
(75)・苗箱受け台
(76)・苗箱
(A)・前進走行方向
(F)・車体
(G)・畝
(L)・一定距離
(S)・座席
(α)・一定交叉(傾斜)角度
(β)・一定交叉角度
(γ)・操向角度範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場の畝幅(w)とほぼ対応する一定間隔を保つ枠組み固定状態の剛性な車体(F)と、その前部を支持する左右一対の操向自在車輪(1)と、同じく車体(F)の後部を支持する左右一対の駆動輪(2)と、その駆動輪(2)を回転駆動するDCモーター(4)並びにバッテリ(5)と、上記車体(F)の操向自在車輪(1)よりも前方位置に軸支されて、畝(G)の両サイド面を挟む状態に接触する左右一対の先導遊転ローラー(3)と、上記車体(F)の前部と後部に取り付け使用される一対の苗収容トレー(6)(7)とを備え、一方向(A)へ前進走行される苗植え付け用の自走式作業台車であって、
上記車体(F)の前後方向に沿って延在する左右一対の平行なサイドフレーム(8)を、その操向自在車輪(1)と駆動輪(2)との前後相互間がほぼ水平なフロアー(8a)として、畝高さ(h)よりも低く陥没する側面視のほぼU字型に造形すると共に、
そのフロアー(8a)から隆起する両サイドフレーム(8)の前辺部を前側座席受け座(9f)とし、これと向かい合う両サイドフレーム(8)の後辺部を後側座席受け座(9r)として、その両座席受け座(9f)(9r)を上記フロアー(8a)との互いにほぼ等しい一定な交叉角度(α)に保ち、
1人乗り用の座席(S)を上記前側座席受け座(9f)への後向きと、上記後側座席受け座(9r)への前向きとに互換使用して、その各座席受け座(9f)(9r)へ着脱自在に取り付け固定することにより、何れにしても上記座席(S)へ座乗した作業者(M)が、畝(G)を跨ぐ姿勢状態となるように関係設定したことを特徴とする苗植え付け用の自走式作業台車。
【請求項2】
車体(F)の両サイドフレーム(8)を、そのフロアー(8a)が底辺部となる側面視の上向き拡開するほぼ倒立ハ字型に造形して、
その両サイドフレーム(8)における前辺部の前側座席受け座(9f)と、これと向かい合う後辺部の後側座席受け座(9r)とを、上記フロアー(8a)と交叉する互いにほぼ等しい一定な傾斜角度(α)に保つと共に、
座席(S)をその一定な傾斜角度(α)の各座席受け座(9f)(9r)に沿って、上下方向と前後方向への調整可能に取り付けたことを特徴とする請求項1記載の苗植え付け用の自走式作業台車。
【請求項3】
両サイドフレーム(8)のフロアー(8a)へ、多数の泥落し孔(11)が開口分布する足載せ板(12)を各々溶接すると共に、
その足載せ板(12)の左右何れか一方へフットアクセルペダル(69)を、残る他方への付け替え自在に取り付けたことを特徴とする請求項1又は2記載の苗植え付け用の自走式作業台車。
【請求項4】
座席(S)をほぼ水平なシート面(22)と背凭れ面(23)とから成る椅子形態として、その下面に車体(F)の一定間隔と対応する正面視の門字型脚枠(26)を固定横架させると共に、
その脚枠(26)の平行な左右両サイド取付片(26y)と上記シート面(22)とが交叉する一定角度(β)を、車体(F)における両サイドフレーム(8)の前側座席受け座(9f)並びに後側座席受け座(9r)がフロアー(8a)と交叉する一定角度(α)とほぼ等しく対応させたことを特徴とする請求項1又は2記載の苗植え付け用の自走式作業台車。
【請求項5】
両サイドフレーム(8)の前部へ平行な2本のフロント連結ビーム(13)を水平に固定横架させて、その両フロント連結ビーム(13)へ苗収容トレー(6)を上方から着脱自在に取り付けると共に、
両フロント連結ビーム(13)が両サイドフレーム(8)から横方向へ一定長さだけ張り出す左右両端部にスイベル軸(30)を介して、操向自在車輪(1)を一定の角度範囲(γ)だけ首振り旋回し得るように各々枢着したことを特徴とする請求項1記載の苗植え付け用の自走式作業台車。
【請求項6】
両サイドフレーム(8)の前部をフロアー(8a)から連続的に隆起するフロントノーズ(8b)として、その両フロントノーズ(8b)の前端部付近から左右一対の先導遊転ローラー用吊持ハンガー(14)を一体的に垂下させると共に、
その両吊持ハンガー(14)へ左右一対の先導遊転ローラー(3)を正面視のほぼハ字型に向かい合う傾斜姿勢状態として、且つ上下方向と左右横方向への調整自在に各々軸支したことを特徴とする請求項1記載の苗植え付け用の自走式作業台車。
【請求項7】
両サイドフレーム(8)の後部をフロアー(8a)から連続的に垂立するリヤーマスト(8c)として、その両リヤーマスト(8c)の中途高さ位置に固定横架した水平なリヤー補強バー(18)から、左右一対の苗収容トレー用サイド支持板(19)を一体的に垂立させると共に、
その両サイド支持板(19)へ苗収容トレー(7)を起伏的な回動角度の調整自在に枢着したことを特徴とする請求項1記載の苗植え付け用の自走式作業台車。
【請求項8】
両サイドフレーム(8)の後部をフロアー(8a)から連続的に垂立するリヤーマスト(8c)として、その上端部を固定横架する水平な2本のリヤー連結ビーム(16)上へ、左右一対のバッテリ受け枠台(17)を搭載させ、
その両バッテリ受け枠台(17)の左右相互間に横架する水平な伝動軸(51)上へ、1個の第1伝動スプロケット(52)と左右一対の第2伝動スプロケット(53)とを並列状態に嵌め付け一体化して、
その第1伝動スプロケット(52)とDCモーター(4)の出力スプロケット(54)とを、第1伝動チェン(55)により連繋する一方、
上記リヤーマスト(8c)の下端部へ駆動輪(2)と一体回転し得るように軸支された左右一対の第3伝動スプロケット(58)と、上記第2伝動スプロケット(53)とを各々第2伝動チェン(60)により連繋したことを特徴とする請求項1記載の苗植え付け用の自走式作業台車。
【請求項9】
伝動軸(51)の両端部へ左右独立に作用する一対のサイドプルクラッチ(62)を取り付けると共に、そのクラッチ(62)を横外方から引っ張り操作することにより、駆動輪(2)の左右何れか一方をフリー状態に保ち、残る他方だけを回転駆動できるように定めたことを特徴とする請求項8記載の苗植え付け用の自走式作業台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−289026(P2007−289026A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118187(P2006−118187)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(398071668)株式会社日立建機ティエラ (1)
【Fターム(参考)】