説明

苗移植機

【課題】簡易な構成で高精度で苗植付装置の植付け動作と連動して粉粒状の薬肥類を吐出動作することにより、所定間隔の施肥が可能となる苗移植機を提供する。
【解決手段】苗移植機1は、圃場走行可能な機体2と、その後部に取付けられて苗を植付動作する苗植付装置52と、この苗植付装置52に苗マットから苗を順次供給するために同苗マットを横方向と縦方向に送り動作する苗載台51と、この苗載台51を苗植付装置52の植付動作と連動して横方向と縦方向に駆動する苗送り伝動部246とを備えて構成され、上記機体2には、粉粒体を貯留するための粉粒体タンク60と、その繰出量制御用の繰出部61と、粉粒体を案内する移送管62と、この移送管62を開閉制御する間欠供給機構121とからなる施肥装置5を設けるとともに、上記苗送り伝動部246から動力を受けて上記間欠供給機構121を開閉駆動するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗植付装置、苗載台等を備えて水田に苗を植付ける苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
苗移植機は、水田走行可能な機体に多条用の苗植付装置、苗載台等を備えて圃場に苗を植付け、また、特許文献1に示すように、各条について施肥器を備えて肥料、薬剤を供給することができる。上記施肥器は調節可能な繰出部を備え、走行距離当たりの吐出量を設定して圃場の施肥を行うことができる。
【0003】
しかし、上記施肥器は、植付条に沿って連続的に薬肥を吐出することから、植付けた苗と対応して所定間隔で施肥することができなかった。この問題を解決するには、苗植付装置と連動するように吐出制御する必要があり、構成の複雑化の問題を避けることができなかった。
【特許文献1】特開2004−105014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、簡易な構成で高精度で苗植付装置の植付け動作と連動して粉粒状の薬肥類を吐出動作することにより、所定間隔の施肥が可能となる苗移植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、圃場走行可能な機体と、その後部に取付けられて苗を植付動作する苗植付装置と、この苗植付装置に苗マットから苗を順次供給するために同苗マットを横方向と縦方向に送り動作する苗載台と、この苗載台を苗植付装置の植付動作と連動して横方向と縦方向に駆動する苗送り伝動部とを備える苗移植機において、上記機体には、粉粒体を貯留するための粉粒体タンクと、その繰出量制御用の繰出部と、粉粒体を案内する移送管と、この移送管を開閉制御する間欠供給機構とからなる施肥装置を設けるとともに、上記苗送り伝動部から動力を受けて上記間欠供給機構を開閉駆動することを特徴とする。
上記苗移植機において、粉粒体は粉粒体タンクから繰出部により繰出制御され、次いで、移送管に介設する間欠供給機構が植付け動作と連動する植付け伝動部により開閉動作して吐出口から圃場に送出される。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成において、前記間欠供給機構には、その供給路を開閉操作するための開閉用レバーを設け、この開閉用レバーに作用する開閉制御カムを前記苗送り伝動部により駆動することを特徴とする。
苗送り伝動部の開閉制御カムは苗載台の縦方向の送り動作のための苗送りカムと共用でき、この開閉制御カムが開閉用レバーに作用して間欠供給機構が苗植付装置の植付動作と連動して開閉動作する。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項2の構成において、前記苗植付装置および苗載台は、複数条の並列植付け作業のために植付条別に左右に並列して構成し、各条に対応して複数の移送管を左右に並列し、それぞれの間欠供給機構は左右の2つのグループに分け、これらのグループ別に間欠供給機構を開閉駆動する開閉用レバーを配置し、これら開閉用レバーおよび対応する開閉制御カムは、少なくとも苗載台の横方向の送り幅の距離を離して配置したことを特徴とする。
複数条の植付け構成の場合に、横方向に並列する間欠供給機構が左右2つのグループに分けられ、所定距離を離して配置した開閉用レバーによりそれぞれの間欠供給機構が開閉駆動される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の苗移植機は、以下の効果を奏する。
請求項1の発明の苗移植機において、粉粒体は粉粒体タンクから繰出部により繰出制御され、次いで、移送管に介設する間欠供給機構の開閉動作に応じて吐出口から圃場に送出される。このとき、苗送り伝動部は苗植付装置の苗植付け動作と連動して伝動動作することから、この苗送り伝動部から間欠供給機構に動力を受けることにより、間欠供給機構は、簡易な伝動構成により、高精度のタイミングで苗植付け動作に合わせた開閉動作が可能となる。したがって、植付けた苗との関係で定めた所定位置に粉粒状の薬肥を集中して効率よく供給することができる。また、播種に適用した場合は所定間隔の点播に対応することができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成において、苗送り伝動部の開閉制御カムは、開閉用レバーに作用して間欠供給機構が苗植付装置の植付動作と連動して開閉動作する。この場合において、開閉制御カムは、苗植付装置の植付動作と連動動作することから、苗載台の縦方向の送り動作のための苗送りカムと共用して簡易に構成することができる。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項2の構成において、複数条の植付け構成の場合は、横方向に並列する間欠供給機構が左右2つのグループに分けられ、所定距離を離して配置した開閉用レバーによりそれぞれの間欠供給機構が開閉駆動される。したがって、開閉用レバーに作用する開閉制御カムは、苗載台の縦方向送り駆動用の苗送りカムと共用構成で間欠供給機構を開閉駆動することができるとともに、間欠供給機構の開閉伝動系は、複数条の全幅距離に及ぶことなく、2系統分割による短い伝動距離により時間遅れを抑えて高精度で開閉動作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1及び図2は、乗用型の苗移植機1を示す側面図と平面図であり、この乗用型の苗移植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0012】
走行車体2は、駆動輪である各左右一対の前輪10,10及び後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該前輪ファイナルケースの変向可能な前輪支持部から外向きに突出する前輪車軸に前輪10,10が取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0013】
原動機となるエンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジンの回転動力が、第一ベルト伝動装置21及び第二ベルト伝動装置23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース内のトランスミッションにて変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構27によって施肥装置5へ伝動される。
【0014】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するボンネット32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びボンネット32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38,38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。
【0015】
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム45の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダを油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0016】
苗植付部4は6条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口51a,…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a,…に供給すると苗送りベルト51b,…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a,…に供給された苗を苗植付具52aで圃場に植付ける苗植付装置52,…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ53,53等を備えている。伝動ケース50内には、苗植付装置52,…の作動を2条単位で入・切する計3個の植付畦クラッチ54(1・2),54(3・4),54(5・6)が設けられている。これらの植付畦クラッチは、ケーブル120,…を介して畦クラッチレバー110(1・2),110(3・4),110(5・6)で入・切操作する。
【0017】
苗植付部4の下部にはセンターフロート55及びサイドフロート56,56が設けられている。これらフロートを圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロートが泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52,…により苗が植付けられる。各フロート55,56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が上下動検出機構57により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0018】
施肥装置5は、肥料貯留タンク(粉粒体貯留タンク)60に貯留されている肥料(粉粒体)を肥料繰出部(粉粒体繰出部)61,…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を肥料移送ホース(粉粒体移送管)62,…でフロート55,56,56の左右両側に取り付けた施肥ガイド63,…まで導き、施肥ガイド63,…の前側に設けた作溝体64,…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に吐出するようになっている。モータ66で駆動のブロア67で発生させた圧力風を左右方向に長いエアチャンバ68を経由して肥料移送ホース62,…内に吹き込み、肥料移送ホース62,…内の肥料を苗植付部側の肥料吐出口へ強制的に移送するようになっている。
【0019】
以下、図3、図4に示す施肥装置本体部の各部の構成について説明する。
各条が一体に成形された肥料貯留タンク60は、上部に後側を支点にして開閉可能な蓋60aが取り付けられている。肥料貯留タンク60の下部は各条ごとに漏斗状になっており、その下部が肥料繰出部61,…の上端に接続されている。肥料貯留タンク60はその背面下部で、左右方向に長い施肥フレーム70から上方に突設した支持板71に回動自在に取り付けられており、図3で二点鎖線で示すように、肥料繰出部61,…から分離して後方に回動させられるようになっている。肥料貯留タンク60の下部を肥料繰出部61,…の上端に接続した通常位置では、係止具72により肥料貯留タンク60を固定する。
【0020】
肥料貯留タンク60の下部には、肥料貯留タンク60から肥料繰出部61への肥料供給を停止する場合や、肥料貯留タンク60を回動させたときに中の肥料が流出するのを防ぐ開閉シャッタ73が設けられている。この開閉シャッタ73は、スライド支持部材74にスライド自在に支持されていて、把手73aをつかんで図4で実線で示す閉じた位置と二点鎖線で示す開いた位置とにスライドさせるようになっている。開閉シャッタ73を閉じた状態にしないと係止具72を外せないので、誤ってシャッタ73を開けたまま肥料貯留タンク60を回動させて肥料を流出させることの防止になっている。
【0021】
開閉シャッタ73の下側には、肥料貯留タンク60を肥料繰出部61に接続したときに肥料繰出部61の上部に挿入される筒状部75が形成されている。筒状部75と肥料繰出部61の上部との間に隙間が形成されるようになっている。肥料貯留タンク60に肥料が入っている状態で開閉シャッタ73を閉じて肥料貯留タンク60を回動させるとき、肥料繰出部61の上端よりも上側かつ開閉シャッタ73よりも下側に位置していた肥料が前記隙間に流入することにより、肥料繰出部61から肥料が溢れ落ちるのを防いでいる。
【0022】
肥料貯留タンク60下端部には、肥料貯留タンク60を肥料繰出部61に接続するときの緩衝用の弾性体76aと両者間の気密保持のためのパッキン76bとが取り付けられている。パッキン76bは肥料繰出部61の上端部分とその少し下方の部分の2箇所で肥料繰出部61のケースと接触するようになっている。このため、肥料繰出部61のケースとパッキン76bとの間に空間が有り、肥料貯留タンク60と肥料繰出部61との位置関係が多少ずれてもこの空間で吸収され、両者間の気密性が損われない。
【0023】
肥料繰出部61は、肥料貯留タンク60内の肥料を下方に繰り出す繰出ロール77を内蔵している。繰出ロール77は、外周部に肥料が入り込む複数本(図示例では6本)の溝77a,…が形成された回転体で、左右方向に設けた繰出軸78の角軸部78a(図示例は四角軸)にそれぞれ一体回転するように嵌合している。繰出ロール77が図4の矢印方向に回転することにより、肥料貯留タンク60から落下供給される肥料が溝77aに収容されて下方に搬送され、下端の繰出口61aから繰り出される。
【0024】
繰出ロール77の前側には該繰出ロールの外周面に摺接するブラシ79が着脱自在に設けられており、このブラシ79が溝77aから溢れる肥料を受けて下方へ落下するのを規制することにより、溝77aに肥料が摺り切り状態で収容され、肥料繰出量を一定に保持するようになっている。
【0025】
肥料繰出部61の繰出口61aには、若干後ろ下がりで略前後方向に連通する接続管80が設けられている。この接続管80の後端に前記肥料移送ホース62のホッパ側の端部が接続される。一方、接続管80の前端部はエアチャンバ68の背面部に挿入連結されている。エアチャンバ68の左端部はエア切替管81を介してブロア67に接続されており、該ブロアからの圧力風がエアチャンバ68を経由し管状部61bから肥料移送ホース62に吹き込まれるようになっている。
【0026】
肥料移送ホース62は、接続管80の少し後方の位置で、後述する左右方向に長い肥料回収管85に固定されたホースホルダ82により下から支えられている。
また、繰出ロール77の後側には、下端が繰出ロール77の上端よりも下位になる位置に肥料排出口83が形成されている。この肥料排出口83は後ろ下がりに傾斜しており、その中間部に上端側を支点にして開閉自在な排出シャッタ84が取り付けられている。そして、各肥料繰出部の肥料排出口83と肥料繰出部61の後方に設けた左右方向に長い肥料回収管85とが肥料排出管83aで接続されている。
【0027】
肥料移送ホース62の吐出口近傍には、図5の側面図に示すように、苗植付装置52と連動して粉粒状肥料を吐出制御するための間欠供給機構121を設ける。間欠供給機構121は、その詳細を図6の縦断面図(a)と横断面図(b)に示すように、ハウジング123内に形成した供給路123cを開閉するシャッタ122を支軸124に取付け、この支軸124をハウジング123から突出して軸支するとともに開閉用レバー125を取付け、その揺動動作によってシャッタ122を開閉可能に構成する。開閉用レバー125には、シャッタ122を閉位置に戻すように戻しばね126を取付ける。
【0028】
開閉用レバー125は、苗送り伝動部246の送り軸247に取付けた苗送りカム232と対応してその作用範囲に配置することにより、苗送りカム232を開閉制御カムとして苗植付装置52の植付動作と連動動作可能に共用構成する。また、間欠供給機構121の上流側に近接して上方向に分岐開口する送風ブリーザ口131を形成し、メッシュ材131mを介設するとともに、その上端に自重で閉鎖する蓋132を開閉可能に設ける。この蓋132は、間欠供給機構121が詰まった場合にその上流側の流れを確保しつつ、メッシュ材131mにより粉粒状肥料の飛散を防止する。また、シャッタ122は、定位置停止クラッチにより苗植付装置52が所定の状態で停止した時に閉鎖位置とすることにより、停止時の肥料排出を防止する。
【0029】
上記構成により、苗送りカム232、232は、その1回転について苗植付装置52が1株を植付けるように対応して回動することにより、それぞれと対応する2つの開閉用レバー125、125に作用し、2系統のそれぞれの支軸124a,124bについて各条のシャッタ122…を連動駆動するとともに、苗載台51の横送り端位置においては、その作用によって揺動動作する縦送りレバー249aを取付けた支軸249からワンウェークラッチ軸228aを介して苗載台51の縦送りベルト51bを送り駆動する。
【0030】
上記構成により、肥料貯留タンク60の粉粒体は、肥料繰出部61により繰出量制御され、次いで、肥料移送ホース62に介設する間欠供給機構121の開閉動作に応じて吐出口から圃場に送出される。このとき、苗送り伝動部246は苗植付装置52の苗植付け動作と連動して伝動動作することから、この苗送り伝動部246によって間欠供給機構121を伝動制御することにより、間欠供給機構121は、簡易な伝動構成により、苗植付け動作に合わせて高精度で連動開閉動作が可能となる。したがって、植付けた苗との関係で定めた所定位置に粉粒状の薬肥を集中して効率よく供給することができる。また、播種に適用した場合は所定間隔の点播に対応することができる。
【0031】
多条植えの具体的な構成については、図7の伝動系統展開図による構成例に示すように、苗送り伝動部246の送り軸247に形成した往復送り溝247aに沿う横送り部248によって苗載台51を左右に横送り駆動するとともに、その左右の折り返し位置で苗載台51の縦送りレバー249aに作用する2つの苗送りカム232、232を苗載台51の横送り幅と対応して送り軸247に取付け、それぞれと対応する2つの開閉用レバー125、125を取付けた左右の支軸124a,124bによって開閉伝動系を2つに分け、各条のシャッタ122…を連結する。
【0032】
このように、複数条の植付け構成の場合は、横方向に並列する間欠供給機構121…が左右2つのグループに分けられ、所定距離を離して配置した開閉用レバー125,125によりそれぞれの間欠供給機構121…が開閉駆動される。したがって、開閉用レバー125,125に作用する開閉制御カムは、苗載台51の縦方向送り駆動用の苗送りカム232と共用構成で間欠供給機構121を開閉駆動することができるとともに、間欠供給機構121の開閉伝動系は、複数条の全幅距離に及ぶことなく、2系統分割による短い伝動距離により時間遅れを抑えて高精度で開閉動作することができる。
【0033】
また、苗送り伝動部246が、図8の伝動系統展開図による構成例に示すように、送り軸247の両端に夫々苗送りカム232、232を取付けた構成例においては、左右が略同等の2系統の支軸124a,124bによって構成することができるので、時間遅れを最小限度に抑えることができる。
【0034】
次に、間欠供給機構の他の構成例について説明する。間欠供給機構141は、図9の側面図(a)と横断面図(b)に示すように、ハウジング142内に形成した供給路142cを開閉する回転シャッタ143を支軸144に取付け、この支軸144をハウジング142から突出して軸支するとともに開閉用レバー145を取付け、回転動作によって開閉する回転シャッタ143を構成する。支軸144には、位置決めカム146を取付け、位置決め用アーム147にばね148を連結して位置決めトルクを作用することにより、回転による確実な開閉動作とともに耐久性の向上が可能となる。また、回転シャッタ143の周縁には、外周隙間を埋める弾性モールを備えることにより、粉粒体の漏れを抑えることができる。
【0035】
次に、エアー式の間欠供給機構について説明する。エアー式の間欠供給機構151は、図10の縦断面図に示すように、ハウジング152の供給路152cを開閉するシャッタ153を設けるとともに、同ハウジング152内にエアーを案内するエアー口154を形成する。シャッタ153は、トルクスプリングで閉鎖方向に付勢して粉粒状薬肥を保持し、エアー口154から高圧エアーを受けることによってシャッタ153を開くとともに、吐出口155から粉粒状薬肥を送出するように構成する。
【0036】
上記構成の間欠供給機構151の吐出口155を作溝器の真上に配置した場合は、ハウジング152内に受けた所定量の肥料を高圧エアーで送出することにより、肥料の粒を壊すことなく、所定のタイミングで苗の真横位置に点播することができる。したがって、必要な部分に絞って効率よく施肥することができる。
【0037】
次に、作溝器によって施肥制御する例について説明すると、図11の断面図に示すように、肥料移送ホース62の吐出部62eを覆うように施肥ガイド161を取付け、この施肥ガイド161を作溝体64の後方に接する位置で前後方向に可動式に構成し、この施肥ガイド161を前後方向に揺動支持する支持レバー162を支軸163によって揺動可能に軸支しつつ、その一端を苗送りカム232に臨んで配置する。
【0038】
吐出部62eは弾性筒材で形成して圃場面の近くまで肥料を案内するとともに、肥料移送ホース62にゴムブーツ161rを介して施肥ガイド161を取付け、この施肥ガイド161の揺動に追従可能に構成する。これにより、苗送りカム232の回動に応じて支持レバー162が前後に揺動することから、吐出部62eは前後の揺動により、一定速度で通過する圃場面に対して高低の速度変化を生じ、その結果、吐出部62eから一定流量で肥料が連続吐出されても、苗植付装置52の植付け動作と連動する間隔で圃場面に集中的に施肥することができる。
【0039】
図12は、施肥装置用ブロアの伝動系等図である。ブロア171は電動機一体に構成してエンジン20の近傍に配置するとともにベルト172で伝動し、施肥装置の繰出部61までダクトを配設する。ベルト172のプーリ軸にはワンウェイクラッチ172cを介設することにより、エンジン20が低回転時はそれより高回転で電動駆動し、逆の場合は電動機の給電を止めることにより、ベルト駆動による送風とともにその電動機による発電によって充電することができる。したがって、エンジンルームに特段の発電手段を要することなく、簡易な構成によってエンジン低回転時の送風量を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】乗用型の苗移植機の側面図である。
【図2】乗用型の苗移植機の平面図である。
【図3】施肥装置本体部の拡大側面図である。
【図4】施肥装置の繰出部の拡大側面図である。
【図5】間欠供給機構の伝動機構の側面図である。
【図6】間欠供給機構の縦断面図(a)と横断面図(b)である。
【図7】多条植えの苗植付部の伝動系統展開図である。
【図8】別例の多条植えの苗植付部の伝動系統展開図である。
【図9】別例の間欠供給機構の側面図(a)と横断面図(b)である。
【図10】エアー式の間欠供給機構の縦断面図である。
【図11】施肥制御可能に構成した作溝器の断面図である。
【図12】施肥装置用ブロアの伝動系等図である。
【符号の説明】
【0041】
1 苗移植機
2 走行車体(機体)
4 苗植付部
5 施肥装置
25 植付クラッチケース
26 植付伝動軸
50 伝動ケース
51 苗載台
51a 苗取出口
51b ベルト
52 苗植付装置
52a 苗植付具
54 植付畦クラッチ
60 肥料貯留タンク(粉粒体タンク)
61 肥料繰出部
62 肥料移送ホース(移送管)
121 間欠供給機構
122 シャッタ
123 ハウジング
123c 供給路
124 支軸
124a,124b 支軸
125 開閉用レバー
228a ワンウェークラッチ軸
232 苗送りカム
246 苗送り伝動部
247a 苗送り溝
247 送り軸
248 横送り部
249a レバー
249 支軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場走行可能な機体と、その後部に取付けられて苗を植付動作する苗植付装置と、この苗植付装置に苗マットから苗を順次供給するために同苗マットを横方向と縦方向に送り動作する苗載台と、この苗載台を苗植付装置の植付動作と連動して横方向と縦方向に駆動する苗送り伝動部とを備える苗移植機において、
上記機体には、粉粒体を貯留するための粉粒体タンクと、その繰出量制御用の繰出部と、粉粒体を案内する移送管と、この移送管を開閉制御する間欠供給機構とからなる施肥装置を設けるとともに、上記苗送り伝動部から動力を受けて上記間欠供給機構を開閉駆動することを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記間欠供給機構には、その供給路を開閉操作するための開閉用レバーを設け、この開閉用レバーに作用する開閉制御カムを前記苗送り伝動部により駆動することを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
前記苗植付装置および苗載台は、複数条の並列植付け作業のために植付条別に左右に並列して構成し、各条に対応して複数の移送管を左右に並列し、それぞれの間欠供給機構は左右の2つのグループに分け、これらのグループ別に間欠供給機構を開閉駆動する開閉用レバーを配置し、これら開閉用レバーおよび対応する開閉制御カムは、少なくとも苗載台の横方向の送り幅の距離を離して配置したことを特徴とする請求項2記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−34175(P2006−34175A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219241(P2004−219241)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】