説明

苗移植機

【課題】つる苗100の苗茎部100aが軟弱であり、曲がっていることが多いため、把持部への苗茎部のセット作業を行い難いという問題や、苗茎部の挟持(把持)姿勢が安定せず、また、無端搬送ベルトによる苗搬送中、特に下降搬送部において、苗の把持姿勢が変わり易く、苗取り出し部での植付爪による苗取りミスが生じる虞があった。
【解決手段】搬送ベルト21には、その搬送方向に沿って適宜間隔にて、苗茎部を把持するホルダ部22が設けられ、ホルダ部22は、前記搬送方向の前後に位置する一対の合成樹脂製の弾性把持体22bにて構成され、一対の弾性把持体22bは苗茎部を把持する部位が互いに向かい合う凸湾曲面に形成されているものである。また、ホルダ部に隣接して植付体が通過する側には、前記苗茎部を案内するガイド体27が設けられ、Y字状の案内溝27aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、つる苗を畝に植え付ける苗移植機の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、甘薯の苗等のつる苗を苗供給機構によって植付装置の近傍まで搬送し、茎端部を植付爪で掴み、該植付爪を上下方向に揺動させ、植付爪の先端を圃場に突入させることによって、植付作業を行う苗移植機は公知となっている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0003】
そして、植付爪は、植付爪の上下揺動に連動させた植付駆動アームのカム機構によって開閉する構成としていた。また、マルチフィルムを被装した圃場において、植付作業時に植付爪がマルチフィルムを切り裂く距離を短くするために、植付爪の軌跡が前高後低となるように構成されていた。
【0004】
また、つる苗を供給する苗供給機構として、特許文献2では、苗搬送方向に所定間隔で苗収容部が設けられた無端搬送ベルトにおける苗搬送方向と直交する一側縁部には、前記苗収容部毎につる苗の基部(茎の基部)を把持若しくは挟持する把持部(ホルダ部)を備える。この無端搬送ベルトを1つの駆動回転体及び少なくとも2箇所の従動回転体とに巻掛けすることにより、走行機体の正面視で、走行機体の上部側で略水平状態にて当該走行機体の左右方向(横方向)の一方に苗搬送する上部横搬送部と、その上部横搬送部の終端から走行機体の下端部の苗取り出し部に至る下降搬送部と、苗取り出し部から上部横搬送部の始端に至る上昇搬送部とを構成している。
【0005】
そして、苗茎の基部を把持(挟持)する把持(挟持)部(ホルダ部)では、苗搬送方向の上流側苗挟持部材と下流側苗挟持部材との一対の挟持部材を備え、上流側苗挟持部材は毛先が下流側苗挟持部材に向かうブラシ体で構成し、下流側苗挟持部材はスポンジ等の弾性部材にて構成され、これら一対の苗挟持部材の間につる苗の苗茎の基部を押し込んで挟持させていた。
【特許文献1】特開2004−24076号公報
【特許文献2】特開2005−341833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記従来技術のように、一方がブラシ体であって他方がスポンジ等の弾性部材からなる、苗の挟持部材だけであると、つる苗の苗茎の基部が軟弱であり、曲がっていることが多いため、上記把持(挟持)部(ホルダ部)への苗茎の基部のセット作業を行い難いという問題や、苗茎の基部の挟持(把持)姿勢が安定せず、また、無端搬送ベルトによる苗搬送中、特に下降搬送部において、苗の把持姿勢が変わり易く、苗取り出し部での植付爪による苗取りミスが生じる虞があった。
【0007】
本願発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、苗茎の基部のホルダ部の構成を工夫することにより、苗茎の基部のセット作業の容易性とセットされたつる苗の姿勢の安定を図ることができる苗移植機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本願請求項1に係る発明は、つる苗を苗供給機構によって植付装置の近傍まで搬送し、つる苗の茎端部を左右一対の植付体にて掴んで苗取りを行い、植付体往復動機構によって前記植付体を上下方向に揺動させて圃場に突入させることにより、つる苗の植付作業を行う苗移植機において、前記苗供給機構は、無端状の搬送ベルトによって構成され、前記搬送ベルトには、その搬送方向に沿って適宜間隔にて、前記苗茎部を把持するホルダ部が設けられ、前記ホルダ部は、前記搬送方向の前後に位置する一対の合成樹脂製の弾性把持体にて構成され、前記一対の弾性把持体は前記苗茎部を把持する部位が互いに向かい合う凸湾曲面に形成されているものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の苗移植機において、前記ホルダ部に隣接して前記植付体が通過する側には、前記苗茎部を案内するガイド体が設けられているものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の苗移植機において、前記各弾性把持体は中空状であることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の苗移植機において、前記ガイド体には、前記苗の茎部を案内する案内溝の挿入側が実質的にV字状に形成されているものである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項2または3に記載の苗移植機において、前記苗供給機構における前記搬送ベルトの下降行程から苗取り部までに亙って延設されるガイドレールが、前記ホルダ部及びガイド体よりも、前記苗茎部の突出側に配置されているものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明では、無端状の搬送ベルトには、その搬送方向に沿って適宜間隔にて、前記苗茎部を把持するホルダ部が設けられ、前記ホルダ部は、前記搬送方向の前後(上流側と下流側と)に位置する一対の合成樹脂製の弾性把持体にて構成されている。このホルダ部は搬送ベルトにおける搬送方向沿う一側縁の近傍であり、且つ植付体による苗取り出し側に近い側縁側であることが好ましい。このようにホルダ部を一対の合成樹脂製の弾性把持体にて構成することにより、従来技術のような一方がブラシ体にて構成するよりも、把持力が強くなり、且つ把持面も平滑になるので、把持された苗茎部を傷つけないし、姿勢が安定する。しかも、前記一対の弾性把持体は前記苗茎部を把持する部位が互いに向かい合う凸湾曲面に形成されているものであるため、苗茎部をセットし易いし、傷つけないという効果も奏する。
【0014】
請求項2に記載の発明では、前記ホルダ部に隣接して前記植付体が通過する側には、前記苗茎部を案内するガイド体が設けられているものであるから、前記ホルダ部とガイド体とが協働して搬送中の前記苗茎部の姿勢が一層安定する。
【0015】
請求項3に記載の発明では、ホルダ部における前記各弾性把持体は中空状であるので、弾性把持体の弾性変形量が大きくなるため、前記苗茎部の直径に大小あっても、確実に把持できる範囲が広がり、適応性が向上する。
【0016】
請求項4に記載の発明では、前記ガイド体には、前記苗の茎部を案内する案内溝の挿入側が実質的にV字状に形成されているものであるので、前記ホルダ部に苗茎部を手作業で挿入するときの案内が容易になるという効果を奏する。
【0017】
請求項5に記載の発明では、前記苗供給機構における前記搬送ベルトの下降行程から苗取り部までに亙って延設されるガイドレールが、前記ホルダ部及びガイド体よりも、前記苗茎部の突出側に配置されているものである。即ち、前記ホルダ部及びガイド体に隣接して前記植付体が通過する側には、前記苗茎部を案内するガイドレールが設けられているものであるから、搬送ベルトの下降行程での苗の姿勢の乱れを防止でき、且つ苗茎部が前記ホルダ部及びガイド体から外れるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施例である苗移植機を示す全体側面図、図2は同じく平面図、図3は走行機体の下部を示す正面図、図4は手動左右傾斜制御装置を示す側面図、図5は同じく平面図、図6は係合ピン周辺を示す背面図、図7は苗供給機構の背面図、図8は同じく平面図、図9(a)は苗茎部を把持するホルダ部の平面図、図9(b)は同じく背面図、図10は同じく斜視図、図11(a)は苗供給機構における搬送ベルトの下降部の斜視図、図11(b)は搬送ベルトの下端部である苗取部の側断面図、図12は搬送ベルト駆動軸周辺を示す平面断面図、図13はワンウェイクラッチを示す正面断面図、図14は植付体往復動機構24を示す側面図、図15は植付駆動軸への動力伝達を示す平面図、図16は植付体が開いた状態の植付体開閉ローラ機構を示す背面図、図17は同じく閉じた状態を示す背面図である。
【0019】
苗移植機1の全体構成について説明する。
【0020】
図1及び図2に示すように、苗移植機1は、畝に沿って走行しながら、自動的に苗100を畝中に植え付ける歩行型の自走式作業機であり、畝間の谷部17を走行する左右一対の前輪2、2および後輪3、3と、畝上面18の上方に位置する走行機体4と、を備えている。
【0021】
本発明の苗移植機1が植え付ける苗の種類は限定するものでないが、以下の本実施例においては、つる苗100の一種である甘藷苗を例に挙げて説明を行なう。
【0022】
走行機体4のメインフレームは、エンジン10が搭載された前側のエンジンフレーム5と、中央部のミッションケース6と、後側のハンドルフレーム7とを、前後方向に連結固定して構成されており、このメインフレーム上に各種装置が支持されている。
【0023】
走行機体4には、前記各種装置として、走行方向の前方より後方に向けて、畝ガイド装置8、前輪支持装置9、エンジン10、後輪支持装置11、前記ミッションケース6、畝高さ検出装置16、苗供給機構12、植付装置13、鎮圧装置14、運転操作部15、が備えられている。
【0024】
なお、これらの各種装置において、ミッションケース6より前側に配置される装置はエンジンフレーム5に支持され、ミッションケース6より後側に配置される装置はハンドルフレーム7に支持されている。
【0025】
畝ガイド装置8は、畝に沿って走行する苗移植機1の走行方向を案内するための装置であり、畝の左右側面(斜面)に当接させるための畝ガイドローラ8a、8aを左右一対備えている。これらの畝ガイドローラ8a、8a間に畝を挟み込み、または、斜面に当接させながら転動させて、この状態で苗移植機1を走行させることで、苗移植機1を運転操作により方向制御することなく、畝に沿って走行させることが可能である。
【0026】
前輪支持装置9には、エンジンフレーム5に回動可能に係止されている上前輪支持軸9aと、上前輪支持軸9aの軸方向にスライド自在で、各前輪2を支持する前輪アーム9b、9bと、が備えられている(図1〜図3参照)。
【0027】
後輪支持装置11も、前輪支持装置9と同様の構成であり、ミッションケース6に対して回動可能に係止されている後輪支持軸11aと、後輪支持軸11aの軸方向にスライド自在で、各後輪3を支持するチェンケース11b、11bと、が備えられている。
【0028】
なお、後輪支持軸11aの内部には、後輪3、3の駆動軸が内蔵されており、この駆動軸の回転駆動が、左右それぞれで、チェンケース11b内のチェンを介して、後輪3に伝達される。
【0029】
ここで、前輪2、2の支持構造について説明する。
【0030】
図3に示すように、前輪2、2は、前輪支持装置9、9によって走行機体4に支持されるものであり、前輪2、2のフロントホイル2aが進行方向に対して上開きの状態で支持されている。つまり、前輪2、2には鉛直方向から一定のキャンバ角を保って支持されている。本実施例の苗移植機1では、各々の前輪アーム9bの下端に、図3に示すような下前輪支持軸46が枢支されており、該下前輪支持軸46にフロントホイルが遊嵌されている。
【0031】
図3に示すように、該下前輪支持軸46は、正面視逆「へ」字状に折れ曲がって形成されており、機体側の前輪アーム9bの下端に回転自在に支持される水平部46aと前輪2を回転自在に支持する傾斜部46bからなる。該下前輪支持軸46の水平部46aが前輪アーム9b下端に左右水平方向に回転自在に枢支され、傾斜部46bが前輪アーム9b下端から走行機体4内側方が上方へ折れ曲がって突出されている。該傾斜部46bに前輪2が遊嵌されて、前輪2の上側が外方向に開くように支持されている。そして、下前輪支持軸46には、前記傾斜部46bを常時上方に折れ曲がるように支持する規制部材47が外嵌固定されている。該規制部材47はプレートを正面視略コ字状に折り曲げ形成した第一支持部材47aと、プレートを正面視略C字状に折り曲げ形成して該第一支持部材47aの外側面(走行機体4内側面)に固設した第二支持部材47bから構成されている。
【0032】
このように、下前輪支持軸46は正面視逆「へ」字状に構成して、前輪支持装置9に対して回動可能としているので、走行機体4の高さを変化させるために前輪アーム9bを上下回動した場合であっても、機体の自重により水平部46aが下方へ押されるため、前輪2の反力により傾斜部46bは常時上方へ傾き、キャンバ角度が変化して同時にトーイン角度が変化するようなことが無くなる。つまり、従来では、前輪アーム9bに下前輪支持軸46がキャンバ角を有するように固設して前輪2を支持する構成となっており、前輪アーム9bを上下に回動すると、キャンバ角が変化するだけでなくトーイン角度も変化してしまうが、本実施例のように構成することにより、苗移植機1の自重によって、傾斜部46bが上方へ向くように、即ちキャンバ角度が最大となる位置に、下前輪支持軸46が自動で回動するのである。前輪2、2のトーイン角度が変化せず、キャンバ角度も変化しないため、前輪2、2が畝斜面を削ることなく、苗移植機1が畝溝に沿って走行する。
【0033】
また、下前輪支持軸46にストッパーとなる上板47cと下板47dを取り付けたので、前輪2が浮いたり持ち上げられたりした場合であっても、前輪2の自重で下前輪支持軸46が前輪アーム9bに対して回動して傾斜部46bが下方へ回動しようとしても、上板47cまたは下板47dが前輪アーム9bに当接するので所定の角度しか回動できず、前輪2、2のキャンバ角が負角とならず、苗移植機1の回行時において、前輪2を持ち上げて再度設置させた時や、圃場の抵抗が前輪2に大きく作用した場合に、前輪2のアライメントが異常となることを防止し、前輪2、2設置時の支点越えによる違和感が生じなくなる。加えて、前輪2、2が上方向に開いた状態で保持されるため、畝上面18を被っているマルチフィルムを前輪が破ってしまうことを防止できる。
【0034】
走行機体4は次の構成により、前輪2、2および後輪3、3に対する高さ位置の調整、つまり畝上面18に対する高さ位置の調整が可能となっている。
【0035】
図1及び図2に示すように、前輪アーム9bとチェンケース11bとは図示せぬ連結軸を介して連結されており、前輪アーム9bおよびチェンケース11bが平行リンクに構成されている。そして、前輪アーム9bまたはチェンケース11bを回転させることで、前輪2、2および後輪3、3に対する走行機体4の上下高さが可変である。
【0036】
本実施例の形態では、チェンケース11bを走行機体4に対して回転させる手段として、エンジンフレーム5とチェンケース11bとを連結して伸縮させるアクチュエータ19が設けられている。このアクチュエータ19を伸縮させることにより、前記平行リンクの作動を介して、前輪2、2および後輪3、3に対して、走行機体4が上下動する。
【0037】
図1及び図2に示すように、走行機体4の上下動は、前記畝高さ検出装置16による畝高さの検出に基づいて行なわれるものである。前記畝高さ検出装置16には、畝上面18と接触するセンサローラ16aと、センサローラ16aを支持しエンジンフレーム5に回動自在に設けられるセンサアーム16bと、が備えられている。
【0038】
このセンサアーム16bの傾斜角度は、エンジンフレーム5と畝上面18との離間距離に関する情報を与えるものである。そして、このセンサアーム16bの傾動に応じて、油圧バルブのスプールが押し引きされて、油圧式とした前記アクチュエータ19の作動が制御され、エンジンフレーム5と畝上面18との離間距離が一定に保たれるように、走行機体4の高さ位置が制御される。
【0039】
次に、苗移植機1の手動左右傾斜制御装置49について説明する。
【0040】
苗移植機1の左右傾斜は、走行機体4の左右一側方に前記アクチュエータ19とは別に配設された図示しないアクチュエータによって、左右一方のチェンケース11b及び前輪アーム9bを回動することによって行なうものである。そして、本実施例では、エンジン10で得られた動力を図示しない油圧ポンプ及び油圧バルブを介して、該アクチュエータに伝達する構成となっており、該油圧バルブを切り替えるスプール51の摺動を手動で行なうことによって、走行機体4の左右傾斜制御を行なっている。
【0041】
油圧ユニット26に収容された前記油圧バルブは、図4乃至図6に示すようにスプール51の上端部が油圧ユニット26後部上面から突出するように配設されている。該スプール51の上部には取付片52が固設されており、該取付片52には前方に向って係合ピン53が固設されている。
【0042】
油圧ユニット26上面の前部には、平面視C字状に形成された支持部材54が立設されており、該支持部材54の後壁には上下方向に長孔54bが形成されている。該支持部材54の後方には、背面視扇形の板状部材50が枢支されており、詳しくは該支持部材54の背面上部に、後述する制御ロッド55に板状部材50の扇形の中心部が固設されている。
【0043】
該制御ロッド55は、支持部材54の上部に回動自在に枢支されるものであり、支持部材54から苗供給機構12の後方まで延設されている。該制御ロッド55は、後部に操作レバー56が固設されており、前部に前記板状部材50の上部が溶接等によって固設されている。つまり、作業者が支持部材54に対して操作レバー56を回動すると、制御ロッド55を介して扇形の板状部材50が連動して回動する構成となっている。
【0044】
図6に示すように、板状部材50は、略扇形に形成されており、下部に円弧状の円弧長孔50bが形成されている。該円弧長孔50bは、円弧の中心位置が、板状部材50及び制御ロッド55の回動中心より右方に位置するように形成されている。つまり、板状部材50を制御ロッド55を中心に回転した時に、制御ロッド55と円弧長孔50bとの半径方向の距離は徐々に短くまたは長く変化するように構成している。そして、前記係合ピン53を該長孔54b及び円弧長孔50bに挿入している。
【0045】
そのため、板状部材50を制御ロッド55を中心に回動させると、係合ピン53が円弧長孔50bと長孔54bに案内されて、上下方向に移動するようになっている。
【0046】
このような構成となっているので、苗供給機構12の後方にて作業をしている作業者が、前記操作レバー56を背面視時計まわりに回動すると、板状部材50が時計まわりに回動し、係合ピン53が長孔54b及び円弧長孔50bに沿って下降し、その結果スプール51が下方へ摺動して図示しない油圧バルブが切り替えられて、アクチュエータによって走行機体4が左右一方向に傾斜する。逆に、作業者が前記操作レバー56を背面視反時計まわりに回動すると、板状部材50が反時計まわりに回動し、係合ピン53が長孔54b及び円弧長孔50bに沿って上昇し、その結果スプール51が上方へ摺動して図示しない油圧バルブが切り替えられて、該アクチュエータによって走行機体4が左右他方向に傾斜する。
【0047】
このように、本実施例の手動左右傾斜制御装置49は、操作レバー56が苗供給機構12の後方に配設されているので、作業時(作業者が苗100を搬送ベルト21に配設している時)において、若しくは走行機体4の移動時において、容易に走行機体4の左右傾斜制御が行なえる。また、前述したように、手動左右傾斜制御装置49が簡素な構造になっているので、トラブルが発生し難い。
【0048】
次に苗供給機構12について説明する。図1及び図2に示すように、苗供給機構12は、走行機体4のメインフレーム(エンジンフレーム5、ミッションケース6、ハンドルフレーム7)とは別体で構成されており、このメインフレームを主とする本体の組立後に、取り付けることが可能である。苗供給機構12の配設位置は、ミッションケース6の後方かつハンドルフレーム7の上方位置である。
【0049】
この苗供給機構12には、ミッションケース6のPTO軸6aからの動力が伝達される構成であり、ミッションケース6内において該PTO軸6aと後述する出力軸81とが連動して、即ち搬送ベルト21の駆動と後述する植付装置13とが連動して、搬送ベルト21が間欠的に回転駆動されるように構成されている。
【0050】
また、この苗供給機構12は、前記メインフレームに支持される構成であるが、前記PTO軸6aの接続部を解除するだけで、取り外しが可能に構成されており、該メインフレームへの着脱が容易である。図12及び図13に示すように、苗供給機構12は、図示せぬ苗収容ケースに収容されている苗100を適宜所定の間隔で載置して、後述する苗取部21dに搬送し、この苗取部21dにて植付装置13に備える左右一対の植付体20L、20Rにより挟持して取り出される装置である。
【0051】
苗供給機構12には、後面視(図7)において時計まわりに回転する帯状の搬送ベルト21が備えられている。詳しくは、図7及び図8に示すように、搬送ベルト21は、機体上部側で左右一方向に送る上部横送り部21aと、該上部横送り部21aに続いて下方向に送る下降送り部21bと、該下降送り部21bに続いて上方向に送り前記上部横送り部21aの送り始端側に戻す上昇送り部21cとから構成されており、背面視略逆三角形に保持されている。
【0052】
搬送ベルト21の上面である上部横送り部21aは、前記苗収容ケースから取り出した苗を保持させる載置部である。下降送り部21bと上昇送り部21cの境目は、搬送ベルト21の下端位置となり、植付体20L、20Rに苗を引き継ぐ苗取位置(苗取り部)21dとなっている(図7、図12及び図13参照)。
【0053】
搬送ベルト21の外周には、平ベルトからなる搬送ベルト21の外周外方に向けて矩形プレート状の複数の仕切り板21eが搬送ベルト21の幅方向の前後方向(搬送方向と直交する方向)に平行となるように且つ搬送ベルト21の搬送方向に沿って一定間隔で突設されており、作業者は該仕切り板21eの間に苗100を載置し、該苗100の苗茎部100aを後述するホルダ部22に把持させていく。
【0054】
搬送ベルト21の幅方向の前部及び後部には、搬送方向に沿って一定間隔にて係止孔21fが形成されており、搬送ベルト21の右端部(図7の右端部)において、後述する搬送ベルト駆動プーリ68、68の外周に設けられた係止突起68bが係止孔21fに嵌入されるようになっている。
【0055】
そして、この搬送ベルト21外周の搬送方向と直交する方向の後端部(走行機体4の後端側)には、前記仕切り板21eの間毎にホルダ部22が設けられている。図9(a)、図9(b)及び図10に示すように、各ホルダ部22は、プラスチック製等の上向きコ字状の枠体22aの内部にスポンジ等の合成樹脂製で構成した一対の弾性把持体22bが固設されて構成されている。一対の弾性把持体22bは搬送ベルト21の搬送方向の前後(下流側と上流側)とに苗100の茎部を弾性的に把持できる程度に隙間H1をあけて配置されている。また、各弾性把持体22bの上面は前記隙間H1に向かって下向きに傾斜する傾斜面を有し、且つ弾性把持体22bの苗把持部位が搬送ベルト21の幅方向に凸湾曲面を有して、把持するために作業者が挿入したときの苗茎部100aに傷が付かないよう配慮されている。なお、各弾性把持体22bは中空状に形成されており、これにより、各弾性把持体22bの弾性変形量を多くすることができ、苗茎部100aの直径に大小あっても、一対の弾性把持体22bによる苗茎部100aを確実に把持できる範囲を広げることができるものである。これらの場合、各弾性把持体22bの上面は少なくとも塞がれた中空形態であり、例えば、枠体22aの縦片若しくは底片に対面する個所が開放状の中空形態であっても良い。
【0056】
さらに、前記ホルダ部22に隣接し、且つ植付体20L、20Rの通過する側に近い部位には、前記枠体22aの一片を上向きに立設させてなるガイド体27が設けられており、このガイド体27には、前記隙間H1に連通する苗茎部100aを案内するための案内溝27aが切欠き形成され、案内溝27aは挿入側が上向きにV字状に広がる実質上Y字状形成されている。この構成により、つる苗100の苗茎部100aをホルダ部22に手作業で挿入するときの案内が容易になるという効果を奏する。
【0057】
なお、搬送ベルト21の外周に沿って右方から下方にかけて、下降送り部21bには、つる苗100の葉及び苗茎部100aの垂れ下がりを防止するための板状のカバー体58が配設されている(図10、図11(a)及び図11(b)参照)。これは、下降送り部21bにおける隣接する仕切り21eの間に位置する苗100の苗茎部100aが、ホルダ部22の一対の弾性把持体22bにて把持(挟持)されているときに、苗100の葉側がぶら下がって、苗100が折れ曲がったりしないように、苗100を受けてガイドするためである。
【0058】
苗供給機構12における搬送ベルト21の下降送り部(下降行程)21bから苗取り部21dまでに亙って延設される丸棒状のガイドレール59が、ホルダ部22及びガイド体27よりも、苗茎部100aの突出側(植付体20L、20Rの通過する側に近い部位)に配置されているものである(図11(a)及び図11(b)参照)。この構成により、搬送ベルト21の下降送り部(下降行程)21bにてホルダ部22及びガイド体27により把持(挟持)されている苗茎部100aが重力に垂れ下がって曲がって苗100の姿勢が乱れたり、苗茎部100aがホルダ部22から外れるのを防止し、苗取位置(苗取り部)21dでの植付体20L、20Rによる苗引き継ぎ作業を確実にすることができる。
【0059】
次に、苗供給機構12の駆動力伝達について説明する。図1、図2、図7に示すように、ミッションケース6から後方へ前記PTO軸6aが延設されている。このPTO軸6aの後端部には、ギヤ61が固設されており、該ギヤ61と噛合するギヤ62の支持軸上にはスプロケット57が固設されており、該スプロケット57に苗搬送駆動チェン63の一端が巻回されている。該PTO軸6a後端部と、ギヤ61、62と、ギヤ62とスプロケット57とを軸着する支持軸の前端部は、ギヤボックス64に収納されている。
【0060】
そして、該苗搬送駆動チェン63の他端は、図7、図12に示すように、後述する搬送ベルト駆動軸60に遊嵌されるスプロケット69に巻回されている。
【0061】
図7及び図12に示すように、走行機体4の前後方向に延びる搬送ベルト駆動軸60の前後両端部には、キー67a、67aを介して一対の搬送ベルト駆動プーリ68が固設されており、各搬送ベルト駆動プーリ68には、搬送ベルト21が巻回されている。そして、搬送ベルト21の係止孔21fに、各搬送ベルト駆動プーリ68の外周上に設けられた係止突起68bが嵌るようになっている。
【0062】
一方(後側)の搬送ベルト駆動プーリ68の前方には、スプロケット69が搬送ベルト駆動軸60に対して遊嵌されており、詳しくは、該スプロケット69は前記苗搬送駆動チェン63が巻回されるスプロケットとなっており、該スプロケット69の内周の前部はワンウェイカム71等からなるワンウエイクラッチ70が収納できるように幅広に形成されている。
【0063】
即ち、図12及び図13に示すように、該スプロケット69の前部外周には、搬送ベルト駆動軸60に対して半径方向に一対の突出片69bが一体的に形成されており、各突出片69bには一対のピン孔69cが半径方向に貫通して形成されている。そして、各突出片69bにはピアノ線等の弾性体で構成された付勢バネ74を摺動自在に嵌入できるように切欠き69eが設けられており、両ピン孔69c、69cには後述するワンウェイクラッチ70用のクラッチピン73が摺動自在に挿入される。両クラッチピン73、73の外側端部に付勢バネ74の先端部が挿入されている。
【0064】
スプロケット69の前部外周には、付勢バネ支持部69dが突出して形成されており、該付勢バネ支持部69dに該スプロケット69の前部外周に沿って配設された略半円状の付勢バネ74の中途部が挿通されて支持される。
【0065】
図12及び図13に示すように、搬送ベルト駆動軸60外周には、キー67b等を介してワンウェイカム71が相対回転不能に外嵌されている。そして、ワンウェイカム71は、前記スプロケット69の前部内周に収まるように配設されている。ワンウェイカム71外周には、前記ピン孔69c、69cと前後方向において略同じ位置に、所定角度毎に段差71b、71bが設けられており、該ピン孔69c、69cにはクラッチピン73、73が嵌入される。該クラッチピン73には前記付勢バネ74の端部が挿入されており、常にワンウェイカム71の外周に当接するように搬送ベルト駆動軸60の中心部に向って付勢されている。
【0066】
従って、本実施例では、苗搬送駆動チェン63からスプロケット69に伝達された駆動力を、ワンウェイカム71とピン孔69c、69cとクラッチピン73、73とから構成されたワンウェイクラッチ70を介して、搬送ベルト駆動軸60へと伝達する構成となっている。
【0067】
そして、メンテナンスや空送りしたい場合などで、苗数本分の搬送ベルト21を回動したい場合などでは、エンジン10を駆動して苗供給機構12を駆動したり、搬送ベルト21を進めるのに時間がかかってしまい、またタイミングを合せることも難しいが、このようにワンウェイクラッチ70を設けることで、エンジン停止時に、搬送ベルト21を持って搬送方向(図13中、矢印A方向)に回動すると、スプロケット69は停止しているが、搬送ベルト駆動軸60及びワンウェイカム71は回動されることになる。そして、該ワンウェイカム71の段差71bへ至る斜面がクラッチピン73にさしかかると、クラッチピン73は徐々に付勢バネ74の付勢力に抗してピン孔69c内を外方向へ摺動し、段差71bを乗り越えることができ、手動で空回りさせることができるのである。
【0068】
ここで、ワンウェイカム71の段差71bの個数及び間隔、そして搬送ベルト駆動プーリ68の外径及び苗100の配設間隔は、ワンウェイカム71(搬送ベルト駆動軸60)が一つの段差71bから次の段差71bまで回動する間に、搬送ベルト21が1本の苗100分だけ送られるような大きさにする。
【0069】
このように、苗100を苗供給機構12によって植付装置13の近傍まで搬送し、茎端部を左右一対の植付体20L、20Rで掴んで苗取を行い、植付体往復動機構24によって該植付体20L、20Rを上下方向に揺動させて畝上面18に突入させることによって、苗100の植付作業を行う苗移植機1において、該苗供給機構12を無端状の搬送ベルト21によって構成し、該搬送ベルト21の駆動伝動経路にワンウェイクラッチ70を設けたので、手動で搬送ベルト21を送ることができ、エンジン10を始動し作業スイッチを「ON」にして空運転をしなくても、搬送ベルト21に配設した苗を苗取位置(苗取り部)21dまで送ることができる。また、植付作業を終了し、エンジン10を停止した後でも、手動で搬送ベルト21を送ることができるので、植付装置13を駆動させることなく容易に搬送ベルト21に残った苗100を取り除ける。
【0070】
また、前記ワンウェイクラッチ70は、前記駆動伝動経路に固設されたワンウェイカム71を具備し、該ワンウェイカム71を1つの段差71b分回動すると、搬送ベルト21が1本の苗100分だけ送られるように構成したので、搬送ベルト21が植付体20L、20Rに対して中途半端な位置で止まることがなくなり、搬送ベルト21の調節等、作業者が搬送ベルト21に配設された苗100を苗取位置(苗取り部)21dに合わせる必要がなくなる。また、ワンウェイクラッチ70が搬送ベルト21近傍の駆動軸75上に配設されているため、他の駆動伝動経路の装置を動かす必要がなく、小さな力で搬送ベルト21を送ることができる。
【0071】
次に、図14を用いて、植付装置13を説明する。
【0072】
植付装置13は、左右一対の植付体20L、20Rと、植付体20L、20Rを苗取位置(苗取り部)21dから畝中まで往復運動させる植付体往復動機構24と、カム機構によって植付体20L、20Rを開閉させる周知の構成の植付体開閉カム機構40とから構成されている。上記周知の植付体開閉カム機構40は、特開2001−103810号公報における苗取出し爪の開閉機構を適用したものであり、ここでは詳述しない。
【0073】
植付体20L、20Rは、苗供給機構12の苗取位置(苗取り部)21dより受け渡されたつる苗100を畝中に移植するものであり、左右の植付体20L、20Rの開閉により、つる苗100の苗茎部100aの保持や、保持した苗100の解放が可能となっている。
【0074】
前記搬送ベルト21の下端部に位置する苗取位置(苗取り部)21dにある苗100を、植付体20L、20Rが挟み込んで掴み取り、畝中にある前記往復運動の最下位置で、植付体20L、20Rが苗100を解放し、植付体20L、20Rが上方へ退くことで、畝中への苗100の移植が行なわれる。
【0075】
前記植付体往復動機構24は、植付駆動軸25の回転運動を、苗供給機構12から畝中に至る植付体20L、20Rの往復運動に変換するクランク機構であり、詳しくは、植付駆動軸25の回転により植付体往復動機構24を介して植付体20L、20Rの先端の軌跡を三日月状体の外周の経路R(図14の二点鎖線を参照)に沿って、往復運動させるものである。
【0076】
そして、植付体支持枠31には、前記植付体往復動機構24による植付体20L、20Rの移動に連動して、植付体20L、20Rを開閉運動させる植付体開閉カム機構40が設けられている(図15参照)。
【0077】
次に、前記植付駆動軸25への動力伝達について説明する。図15に示すように、本実施例の苗移植機1では、エンジン10からの駆動力を、ミッションケース6及びハンドルフレーム7を介して、伝動軸80によって植付装置13へと伝達している。
【0078】
即ち、ミッションケース6から左方(図15では右方)に出力軸81を延設し、該出力軸81の左端に出力ベベルギヤ82を固設し、該出力ベベルギヤ82と噛合する前ベベルギヤ83が固設された伝動軸80は一方の走行機体4のパイプフレーム内に挿通され、伝動軸80の後端部には、ギヤケース内にて後ベベルギヤ84が固設され、該後ベベルギヤ84に、植付駆動軸25の左端部に固設された入力ベベルギヤ85が噛合されることによって、エンジン10の駆動力を後方へと伝達するものである。
【0079】
このように、ミッションケース6から植付装置13までの駆動伝達を、ベベルギヤ82、83、84、85を介して、軸伝動によって行なうので、植付駆動軸25への駆動力伝達をチェンによって行う場合と比べて、植付装置13の作動を迅速に且つスムーズなものとすることができる。
【0080】
次に、植付体開閉ローラ機構90について説明する。図16及び図17に示すように、植付体開閉ローラ機構90は、前記苗供給機構12の搬送ベルト21の下端部に配設されるものであり、前記植付体開閉カム機構40だけで制御された場合と比べて、より正確に苗取位置(苗取り部)21dにて植付体20L、20Rを閉じるためのものである。
【0081】
つまり、植付体開閉ローラ機構90を具備していない場合であっても、植付体20L、20Rは、開いた状態で下方へ回動されて、搬送ベルト21の下端部の苗取位置(苗取り部)21dで閉じられるが、植付体20L、20Rの基部側で開閉操作が行われるため、植付体20L、20Rのたわみ等により、先端では開閉力が弱く不安定になるおそれがある。
【0082】
本発明においては、搬送ベルト21の下端部の苗取位置(苗取り部)21dに搬送された苗100の後方に、左右一対のローラ23L、23Rが枢支されており、該ローラ23L、23R間を前記植付体往復動機構24によって上下動する植付体20L、20Rが上から下へと通過する構成になっている。そして、搬送された苗100の苗取位置(苗取り部)21dの直下部における植付体20L、20Rの回動軌跡の両側にローラ23L、23Rを配置して、植付体20L、20Rを閉じて苗100を挟持した直後にローラ23L、23R間を通過させる。これによって、強制的に植付体20L、20Rの両側をローラ23L、23Rでガイドして閉じることにより、苗100を挟持したまま確実に下方へ搬送させるのである。なお、ローラ23Lとローラ23Rの隙間の間隔は、植付体20L、20Rが閉じた時の外側の幅より狭くしている。図16に示すように、ローラ23L、23Rの初期位置(植付体20L、20Rを挟んでいないローラ23L、23Rの位置)は、後述する摺動軸36L、36R側面上に形成されたピンの位置によって決められる。
【0083】
以下、一対のローラ23L、23Rの支持方法について説明する。図16及び図17に示すように、ハンドルフレーム7、7にステー32L、32Rを固設し、該ステー32L、32Rによって、筒支持体33L、33Rを支持し、該筒支持体33L、33Rによって摺動筒35L、35Rを支持する。該摺動筒35L、35Rに対して摺動軸36L、36Rを摺動自在に挿入し、該摺動軸36L、36Rの苗取り部21dに近い側の端部には、ブラケット部材42L、42Rが固設され、該ブラケット部材42L、42Rには、ローラ23L、23Rが回動自在に枢支される。このローラ23L、23Rの回転支軸は搬送ベルト21の搬送方向と直交する方向に対して平行状に配置されている。そして、各ブラケット部材42L、42Rと各筒支持体33L、33Rとの間には、圧縮コイルバネのような弾性部材43L、43Rが配設されており、弾性部材43L、43Rの復元力によって前記摺動軸36L、36Rを苗100方向(植付体20L、20Rの左右中心方向)に付勢している。
【0084】
前記左ブラケット部材42R上部には、図16、図17において右方が解放されて苗案内路92bが形成された、正面視略「コ」の字状のガイド体92が固設されている。該ガイド体92は、苗取位置21dに搬送されてくる苗100が該ガイド体92の苗案内路92bに挟まれ易いように、苗案内路92bの開放側(図16及び図17においては、右側)が幅広に形成されている。ここで、該ガイド体92は、弾性を有する丸棒で構成することが望ましく、例えばピアノ線等で構成すると好適である。
【0085】
該植付体20L、20R上端部の間には、引張バネからなる植付体開きバネ93が配設されており、該植付体開きバネ93によって、植付体20L、20Rの下方が開く方向に付勢されている。また、各植付体20L、20Rは実質上金属製の丸棒を屈曲させて左右対称の形状に形成され、各植付体20L、20Rの下端(先端)部には、板状の把持片28が固設され、この一対の把持片28により、苗茎部100aが確実に把持できるように構成されている(図14〜図17参照)。なお、各把持片28の先端は尖頭形状の刃物部28aに形成されているため、植付体20L、20Rの先端刃物部28aが畝上面18に敷設されたマルチフィルムを切り裂き易くなり、畝土内へのつる苗100の植付け作業を確実に行える。
【0086】
そして、下部が開放状態となっている植付体20L、20Rが苗取位置21dへと下降し、ローラ23L、23R間に入ると、前記弾性部材43L、43Rの復元力に抗してローラ23L、23Rが押しのけられる。該ローラ23L、23Rの動きに連動して、摺動筒35L、35R内の摺動軸36L、36Rが反苗100方向に摺動し、該植付体20L、20Rが通過できるようにローラ23L、23R間の間隔が広がる。弾性部材43L、43Rの荷重や、ローラ23Lとローラ23Rの隙間の間隔の大小によって、植付体20L、20Rが苗100を挟む荷重を適正なものとしている。
【0087】
このように、苗100を苗供給機構12によって植付装置13の近傍まで搬送し、茎端部を左右一対の植付体20L、20Rで掴んで苗取を行い、植付体往復動機構24によって該植付体20L、20Rを上下方向に揺動させて圃場に突入させることによって、苗100の植付作業を行う苗移植機1において、前記苗取位置21d下方に左右一対のローラ23L、23Rを設け、該ローラ23L、23R間を該植付体20L、20Rが通過する構成としたので、植付体20L、20Rが高速で上下揺動する場合であっても、左右の植付体20L、20R下部に苗100がある時に確実にタイミングを合わせて、植付体20L、20Rを閉じて苗100を挟持することができる。
【0088】
つまり、植付体20L、20Rのたわみを防ぐために、過度に植付体20L、20Rの剛性を高めたり、特殊な材質、構造を採用する必要がない。
【0089】
また、搬送方向下流側のローラ23Lの上方に、苗100の茎端部を案内するガイド体92を設けたので、苗100の茎端部が左右の植付体20L、20R下部の間に案内され易くなり、植付体20L、20Rの下部が苗100の苗茎端部100aを挟持し易くなる。つまり、苗100の苗茎端部100aが曲がっていても、そのような曲がりを矯正する役割を果たすことができる。
【0090】
植付体往復動機構24に植付体開閉カム機構40を設け、植付体20L、20Rがローラ23L、23R間を通過する間に、該植付体開閉カム機構40によって植付体20L、20Rを閉じる構成としたので、植付体20L、20Rがローラ23L、23R間を通過した後においても、植付体20L、20Rを閉じた状態で保持することができる。
【0091】
また、植付体20L、20Rは、弾性部材93によって植付体20L、20Rの先端側が開く方向に付勢されているので、植付体開閉ローラ機構90と植付体開閉カム機構40による植付体20L、20Rの閉状態が解除されると、弾性部材93によって自動的に植付体20L、20Rが開き、苗100を放すことができる。
【0092】
苗100の植付後に植付箇所を鎮圧する鎮圧装置14は、植付体20L、20Rが差し込まれた畝上面18を鎮圧して、植付体20L、20Rにより形成された植付孔を崩し、苗100の畝中への保持を確実とするように構成される。鎮圧装置14は、畝上面に重力で落下当接させる平坦面を有する鎮圧体37と、この鎮圧体37を植付体20L、20Rによる苗の移植に連動して上下動させるカム式の鎮圧駆動機構(図示せず)とが備えられている。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の一実施例である苗移植機を示す全体側面図である。
【図2】同じく平面図である。
【図3】走行機体の下部を示す正面図。
【図4】手動左右傾斜制御装置を示す側面図である。
【図5】同じく平面図である。
【図6】係合ピン周辺を示す背面図である。
【図7】苗供給機構の背面図である。
【図8】同じく平面図である。
【図9】(a)は苗茎部を把持するホルダ部の平面図、(b)は同じく背面図である。
【図10】ホルダ部の斜視図である。
【図11】(a)は苗供給機構における搬送ベルトの下降部の斜視図、(b)は搬送ベルトの下端部である苗取部の側断面図である。
【図12】搬送ベルト駆動軸周辺を示す平面断面図。
【図13】ワンウェイクラッチを示す正面断面図。
【図14】植付体往復動機構を示す側面図。
【図15】植付駆動軸への動力伝達を示す平面図。
【図16】植付体が開いた状態の植付体開閉ローラ機構を示す背面図である。
【図17】同じく閉じた状態を示す背面図である。
【符号の説明】
【0094】
1 苗移植機
12 苗供給機構
20L、20R 植付体
22 ホルダ部
22a 枠体
22b 弾性把持体
23L、23R ローラ
27 ガイド体
27a 案内溝
58 カバー体
59 ガイドレール
100 つる苗
100a 苗茎部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
つる苗を苗供給機構によって植付装置の近傍まで搬送し、つる苗の茎端部を左右一対の植付体にて掴んで苗取りを行い、植付体往復動機構によって前記植付体を上下方向に揺動させて圃場に突入させることにより、つる苗の植付作業を行う苗移植機において、
前記苗供給機構は、無端状の搬送ベルトによって構成され、
前記搬送ベルトには、その搬送方向に沿って適宜間隔にて、前記苗茎部を把持する苗ホルダ部が設けられ、
前記ホルダ部は、前記搬送方向の前後に位置する一対の合成樹脂製の弾性把持体にて構成され、前記一対の弾性把持体は前記苗茎部を把持する部位が互いに向かい合う凸湾曲面に形成されていることを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記ホルダ部に隣接して前記植付体が通過する側には、前記苗茎部を案内するガイド体が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の苗移植機。
【請求項3】
前記各弾性把持体は中空状であることを特徴とする請求項1または2に記載の苗移植機。
【請求項4】
前記ガイド体には、前記苗の茎部を案内する案内溝の挿入側が実質的にV字状に形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の苗移植機。
【請求項5】
前記苗供給機構における前記搬送ベルトの下降行程から苗取り部までに亙って延設されるガイドレールが、前記ホルダ部及びガイド体よりも、前記苗茎部の突出側に配置されていることを特徴とする請求項2または3に記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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