説明

薄型電池及び薄型電池の製造方法

【課題】車両の振動等に対しても二次電池の耐久性の低下を抑制した薄型電池を提供する。
【解決手段】 外装部材111の内部に発電要素112が封入された電池本体11と、他の電池本体を積層した際に互いの電池本体11の外周部113の間に配置される板状部材と、電池本体11及び板状部材とに接合して電池本体11と板状部材とを連結すると共に、板状部材の少なくとも一部を覆う弾性体とを備え、板状部材は、板状部材を覆う弾性体の電池本体11の厚み方向端面の一部から露出した露出部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型電池及び薄型電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラミネートフィルム製外装部材を有する薄型二次電池において、外装部材の周囲にプラスチック製フレーム部材を装着し、外装部材の機械的剛性と外装部材の周囲の封止力を向上させたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−73510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術の二次電池は、フレーム部材の締付溝に外装部材の外周シール部を挿入して結合する構造であるため(特許文献1の段落0041の「弾力的締付」参照)、例えば車両に適用した場合には車両の振動がフレーム部材を介して二次電池へ伝達して、二次電池の耐久性が低下する可能性が有るという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、車両の振動等に対しても二次電池の耐久性の低下を抑制した薄型電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、樹脂層を含むラミネートフィルム製外装部材の内部に発電要素が封入された電池本体と、他の電池本体を積層した際に互いの電池本体の外周部の間に配置される板状部材と、電池本体及び板状部材とに接合して電池本体と板状部材とを連結する弾性体と、を備えることにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両の振動などの外力が板状部材に入力するが、この外力に対して弾性体に緩衝力が生じるので、薄型電池の耐久性低下を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態に係る二次電池を示す斜視図である。
【図2】図1の二次電池の主たる構成を示す分解斜視図である。
【図3】図1のIII-III線に沿う断面図である。
【図4】図1の二次電池と他の二次電池とを積層する様子を示す斜視図である。
【図5】図1のV矢視図である。
【図6】図1のVI-VI線に沿う断面図である。
【図7】図1のVII-VII線に沿う断面図である。
【図8】図1のVIII矢視図である。
【図9】図1のIX-IX線に沿う断面図である。
【図10】図1の電池本体及びスペーサを成形型にセットする様子を示す斜視図である。
【図11】図10のXI矢視図である。
【図12】図11のXII部分の拡大図である。
【図13】図10の電池本体及びスペーサを成形型にセットした様子を示す斜視図である。
【図14】図10の電池本体11及びスペーサ12を成形型20で型締めしている様子を示す斜視図である。
【図15】図14のXV-XV線に沿う断面図である。
【図16】図14の成形型を開いた様子を示す斜視図である。
【図17】図16の成形型から、電池本体、スペーサ及び弾性樹脂部を取り出した状態を示す斜視図である。
【図18】本発明の変形例に係る二次電池の部分断面図である。
【図19】本発明の変形例に係る二次電池の部分断面図である。
【図20】本発明の変形例に係る二次電池の部分断面図である。
【図21】本発明の変形例に係る二次電池の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
《第1実施形態》
図1は本発明の一実施の形態に係る二次電池の完成状態を示す斜視図、図2は当該二次電池の主たる構成部材に分解した状態を示す分解斜視図である。図3は図1のIII-III線に沿う断面図である。図1及び図2に示すように、本例の二次電池1は、薄型扁平状の電池本体11と、スペーサ12と、これら電池本体とスペーサとを包含する範囲に形成された弾性樹脂部13と、を備える。
【0010】
電池本体11は、ラミネートフィルム製外装部材111の内部に発電要素112が収容され、当該外装部材111の外周部113が封止されたものである。なお、発電要素112の詳細な構成は図3に示す。外装部材111を構成するラミネートフィルムは、たとえば三層構造(図6の引き出し断面図Aを参照)とされ、二次電池1の内側から外側に向かって、内側樹脂層111aと、中間金属層111bと、外側樹脂層111cとを有する。内側樹脂層111aは、たとえばポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、または、アイオノマー等の樹脂、あるいは、これらの合成樹脂より形成されるフィルムである。中間金属層111bは、アルミニウム等の金属箔により形成されている。外側樹脂層111cは、たとえばポリアミド系樹脂又はポリエステル系樹脂等の電気絶縁性に優れた樹脂フィルムにより形成されている。
【0011】
このように、外装部材111は、中間金属層111bの一方の面(二次電池1の内側面)をポリエチレン等の樹脂でラミネートし、他方の面(二次電池1の外側面)をポリアミド系樹脂又はポリエステル系樹脂でラミネートした、樹脂−金属薄膜ラミネート材等の可撓性を有するラミネートフィルム(フィルム状部材)で形成されている。
【0012】
外装部材111は、該外装部材111を構成するラミネートフィルムが内側及び外側樹脂層111a,111cに加えて中間金属層111bをそれぞれ具備することにより、外装部材111自体の強度向上を図ることが可能となる。また、ラミネートフィルムの内側樹脂層111aが、たとえばポリエチレン等の樹脂で形成されることで、内側樹脂層111aと金属製の電極端子114,115との良好な融着性を確保することが可能となる。
【0013】
なお、本発明におけるラミネートフィルムは、上述した三層構造にのみ限定されず、内側又は外側樹脂層111a,111cのいずれか一層構造であってもよい。また、内側又は外側樹脂層111a,111cのいずれか一方と中間金属層111bとの二層構造であってもよい。さらに、必要に応じて四層以上の構造であってもよい。
【0014】
外装部材111は一対のラミネートフィルムで構成され、一対のラミネートフィルムの一方を発電要素112が収容できるように矩形状平板を浅い椀型(皿型)に成形した形状とし、内部に発電要素112と電解液を入れたのち、他方のラミネートフィルムを被せてそれぞれの外周部113を重ね合わせ、当該外周部113の全周が熱融着や接着剤により接合されて接合部を形成している。
【0015】
本例の二次電池1は、リチウムイオン二次電池であり、図3に示すように、発電要素112は正極板112aと負極板112bとの間にセパレータ112cを積層して構成されている。本例の発電要素112は、3枚の正極板112aと、5枚のセパレータ112cと、3枚の負極板112bと、特に図示しない電解質とを有している。なお、本発明に係る二次電池1はリチウムイオン二次電池に限定されず、他の電池であってもよい。
【0016】
発電要素112を構成する正極板112aは、正極端子114まで伸びている正極側集電体112dと、正極側集電体112dの一部の両主面にそれぞれ形成された正極層112e,112fとを有する。
【0017】
正極板112aの正極側集電体112dは、たとえばアルミニウム箔、アルミニウム合金箔、銅箔、又は、ニッケル箔等の電気化学的に安定した金属箔により形成されている。また正極板112aの正極層112e,112fは、たとえば、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMnO)又はコバルト酸リチウム(LiCoO)等のリチウム複合酸化物及びカルコゲン(S、Se、Te)化物等を含む正極活物質と、カーボンブラック等の導電剤と、ポリ四フッ化エチレンの水性ディスパージョン等の接着剤と、溶剤とを混合したものを、正極集電板112dの両主面に塗布し、乾燥及び圧延することにより形成されている。
【0018】
発電要素112を構成する負極板112bは、負極端子115まで伸びている負極側集電体112gと、当該負極側集電体112gの一部の両主面にそれぞれ形成された負極層112h,112iとを有する。
【0019】
負極板112bの負極側集電体112gは、たとえばニッケル箔、銅箔、ステンレス箔、又は、鉄箔等の電気化学的に安定した金属箔により形成されている。また、負極板112bの負極層112h,112iは、たとえば非晶質炭素、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、又は、黒鉛等のような上記の正極活物質のリチウムイオンを吸蔵及び放出する負極活物質を用いる。そして、負極活物質層に、有機物焼成体の前駆体材料としてのスチレンブタジエンゴム樹脂粉末の水性ディスパージョンを混合し、焼成したスチレンブタジエンゴムを炭化させて、次いで得られた焼成物を粉砕することで、炭素粒子表面に炭化したスチレンブタジエンゴムを担持させたものを得る。そして、これを主材料として、これにアクリル樹脂エマルジョン等の結着剤をさらに混合し、この混合物を負極集電板112gの両主面に塗布し、乾燥及び圧延させることにより形成されている。
【0020】
正極板112aと負極板112bとの間に積層されるセパレータ112cは、正極板112aと負極板112bとの短絡を防止するものであり、電解質を保持する機能を備えてもよい。セパレータ112cは、たとえばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン等で形成される微多孔性膜であり、過電流が流れると、その発熱によって層の空孔が閉塞され電流を遮断する機能をも有する。なお、セパレータ112cは、ポリオレフィン等の単層膜にのみ限られず、ポリプロピレン膜をポリエチレン膜でサンドイッチした三層構造や、ポリオレフィン微多孔膜と有機不織布等を積層したものも用いてもよい。このようにセパレータ112cを複層化することで、過電流の防止機能、電解質保持機能及びセパレータ112cの形状維持(剛性向上)機能等の諸機能を付与することができる。
【0021】
以上の発電要素112は、セパレータ112cを介して正極板112aと負極板112bとが交互に積層されてなる。そして、3枚の正極板112aは、金属箔製の正極端子114にそれぞれ接続される。また、図3では図示されていないが、3枚の負極板112bは金属箔製の負極端子115にそれぞれ接続されている。
【0022】
図1に示すように、発電要素112の正極板112a及び負極板112bのそれぞれから外装部材111の外部へ正極端子114と負極端子115とが導出されている。本例の二次電池1では、外装部材111の一辺(図1の手前の短辺)の外周部113aから正極端子114と負極端子115とが並んで導出されている。正極端子114及び負極端子115は正極タブ114及び負極タブ115とも称される。
【0023】
本例の二次電池1は、外装部材111の一つの辺の外周部から正極端子114と負極端子115とが並んで導出されている。図3には発電要素112の正極板112aから正極端子114に至る断面図を図示し、発電要素112の負極板112bから負極端子115に至る断面を省略するが、負極板112b及び負極端子115も図3の断面図に示す正極板112a及び正極端子114と同様の構造とされている。ただし、発電要素112の端部から正極端子114及び負極端子115に至る間の正極板112a(正極側集電体112d)及び負極板112b(負極側集電体112g)は、平面視において互いに接触することがないように半分以下に切り欠かれている。
【0024】
電池本体11は平面視において長方形とされているので、外装部材111における一対のラミネートフィルム(フィルム状部材)を接合して内部を封止する外周部113を、図2に示すように外周部113a〜113dと称する。なお、電池本体11の外形形状は長方形にのみ限定されず、正方形や他の多角形に形成することも可能である。また、正極端子114と負極端子115の導出位置は、本例のように一つの外周部113aから導出させること以外にも、対向する外周部113aと113bや113cと113dのそれぞれから導出させてもよい。また、長辺の外周部113c,113dから導出させてもよい。
【0025】
以上のように構成された電池本体11は単体で使用に供することもできるが、他の一または複数の二次電池と接続して組み合わせ、所望の出力、容量の二次電池(以下、電池モジュールともいう)として使用に供することもできる。さらに、こうした電池モジュールを複数接続して組み合わせ(以下、組電池ともいう)、この組電池を電気自動車やハイブリッド自動車などの車両に搭載して、走行駆動用電源として用いることもできる。
【0026】
複数の電池本体11を接続して電池モジュールを構成する場合に、図4に示すように複数の電池本体11の主面同士を積み重ねて電池ケース内に収容することが行われる。図4は、二次電池1と他の二次電池1とを積層する様子を示す斜視図である。この場合に、電池本体11の外周部113aから導出された正極端子114及び負極端子115と、この電池本体11に積層された電池本体11の外周部113aから導出された正極端子114及び負極端子115との絶縁性を確保するとともに、これら正極端子114及び負極端子115を直列及び/又は並列に接続するためのバスバを配置したり、電圧検出用センサのコネクタを配置したりするために、絶縁性材料から構成された外形板状の部材(板状部材)であるスペーサ12が用いられる。
【0027】
本例のスペーサ12は、図1、図2及び図4に示すように隣接する電池本体11の互いの外周部113aの間に配置されるとともに、隣接する電池本体11の互いの外周部113aの間から電池の外周方向に向かって突出し、電池本体11を、電池モジュールのケースや自動車の車体など所定の設置位置に対して固定するための固定部121を有する。
【0028】
スペーサ12は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリプロピレン(PP)などの剛性を有する絶縁性樹脂材料で形成され、電池本体11の外周部113aの長さ以上の長さを有する長尺状に形成されている。そして、その両端のそれぞれに鞘状の通孔からなる固定部121が形成されている。なお、スペーサ12の長さは装着される外周部113a以上の長さとすることが望ましいが、これは外力の入力に対してこれをスペーサ12全体で受け止め、電池本体11に対して局所的な応力が作用しないようにする趣旨である。したがって、スペーサ12の長さは装着される外周部113aの長さに極力近い寸法であればよい。
【0029】
また、上述したPBTやPP製のスペーサ12の機械的強度(折り曲げ強度又は座屈強度などの剛性)は、電池本体11に収容された発電要素112を構成する電極板(上述した正極板112a及び負極板112b)の機械的強度より大きくすることが望ましい。特に、図6に示す外力Fの入力方向に対する機械的強度について、スペーサ12の方を大きく設定することが望ましい。車載された二次電池1に対しスペーサ12に著しく過大な外力が作用するとスペーサ12と発電要素112とが接触して両者ともに潰れようとする際にスペーサ12の方をより潰れ難くすることで二次電池1の保持安定性を確保するためである。
【0030】
本例のスペーサ12の固定部121の近傍には、通孔122及びリブ123が形成されている。図1、図2及び図4には図示を省略し、図5及び図6に通孔122及びリブ123を示す。図5は図1のV矢視図である。図6は図1のVI-VI線に沿う断面図である。本例の通孔122は、スペーサ12の両端であって固定部121の周囲の任意箇所に形成されている。また、本例のリブ123はスペーサ12の下面端部に下方へ突出するように形成されている。
【0031】
本例の通孔122及びリブ123は、後述する弾性樹脂部13に埋設されるが、スペーサ12の固定部121に入力した外力が弾性樹脂部13を介して電池本体11へ入力する際に、当該弾性樹脂部13による緩衝力を生じさせる面を有するものであればよい。すなわち、図6に示す外力Fの入力方向に対して対向する面を有する通孔、リブ、又は凹部であればよい。後述するように、通孔、リブ又は凹部を設けなくても、弾性樹脂部13自体に外力Fに対する緩衝力が生じるが、通孔、リブ又は凹部を設けることにより、同図に示すように外力Fに対する緩衝力f1,f2がより大きくなるので、電池本体11に作用する外力Fをより緩衝することができる。この意味で通孔122及びリブ123を補強部とも称する。
【0032】
本例の二次電池1では、電池本体11の外周部113の周囲であって、図6の断面図における外周部113とスペーサ12との重畳部14を包含する範囲に、弾性樹脂のインサート成形により弾性樹脂部13が形成されている。
【0033】
弾性樹脂部13は、加硫ゴム、熱硬化性樹脂エラストマ、熱可塑性樹脂エラストマ又はポリアミド系樹脂(ホットメルトグレード)などの弾性樹脂で形成され、後述するインサート成形により上記範囲に形成される。本例では、図2に示すように、固定部121の周囲H1以外に、電池本体11の外周部113c,113d(長辺側の外周部)の範囲H2にも弾性樹脂部13が形成されている。なお、外周部113の全周に弾性樹脂部13を形成してもよい。
【0034】
図2に示す範囲H1に形成される弾性樹脂部13は、図6の断面図に示すように電池本体11の外周部113aとスペーサ12との重畳部14を包含し、これら外周部113aとスペーサ12とに接合することにより、スペーサ12と電池本体11とを連結する。また、スペーサ12に形成された通孔122にも弾性樹脂が充填される。そして、スペーサ12に固定部121に入力された車両振動のような外力Fがスペーサ12から電池本体11の外周部113aに入力する際に弾性樹脂部13自体や通孔122、リブ123に緩衝力f3,f1,f2を発生させる。
【0035】
図6に示すように、電池モジュールや車両に対して二次電池1をその両端で固定する固定部121,121に同図において左向きの外力Fが作用すると、電池本体11にも左向きの力が作用する。このとき、電池本体11に封入された発電要素112は、正極端子114及び負極端子115と外装部材111の外周部113との接合と、外装部材111内の減圧による発電要素112と外装部材111との摩擦力とによってのみ保持されている。したがって、固定部121,121に作用した外力Fがそのまま電池本体11に伝達すると、内部に封入された発電要素112には外力Fに対する右向きの慣性力が作用し、発電要素112と外装部材111との間に相対変位が生じ、集電体112d,112gが変形して電池の機械的な劣化に繋がるおそれがある。
【0036】
しかしながら、本例の二次電池1は、図6に示すように電池本体11の外装部材111とスペーサ12は弾性樹脂部13により連結され、しかも電池本体11の両端において弾性樹脂部13を介して電池本体11を支持している。これにより、図6に示すようにスペーサ12の固定部121に左向きの外力Fが作用すると、両方の弾性樹脂部13,13に、電池本体11に作用しようとする外力Fに抗する緩衝力f1〜f3が発生し、単位時間当たりに受ける力を低減する。その結果、発電要素112と外装部材111との間の変位が抑制され、集電体112d,112gの変形等による電池の機械的な劣化の発生を抑制することができる。すなわち、電池本体11に入力される外力を緩衝することができ、電池本体11の固定状態の安定性が向上する。特に、弾性樹脂部13は車両振動のような比較的高周波の振動に対して弾性力による外力緩衝作用に優れている。
【0037】
これに対して図2の範囲H2に形成される弾性樹脂部13は、図7に示すように一対の外装部材111,111の端面を包含した状態で外周部113c,113dの全域に形成されている。図7は図1のVII-VII線に沿う断面図である。外周部113c,113dの全域にわたって弾性樹脂部13を形成することで外周部113c,113dの接合面から漏洩しようとする発電要素112からの電位漏れを阻止することができる。また、範囲H1に形成される弾性樹脂部13と範囲H2に形成される弾性樹脂部13とを接続することで、スペーサ12に入力した外力Fの一部を範囲H2に形成した弾性樹脂部13に分散させることができ、電池本体11に伝達する外力を軽減することができる。
【0038】
範囲H1に形成される弾性樹脂部13の硬度は、電池本体11の外装部材111を構成する外側樹脂層111cの硬度より小さく、スペーサ12の硬度より小さいことが望ましい。外力Fの入力によってスペーサ12に著しく過大な外力が作用して弾性樹脂部13と外装部材111とが最初に接触した場合に、弾性樹脂部13の硬度が大きいと外装部材111を傷付けるからである。弾性樹脂部13の硬度の設定は採用する樹脂材料の種類などによって行うことができる。
【0039】
また、図8及び図9に示すように、スペーサ12の下面には電池の厚み方向下方に向けて突出する突起部124が形成されている。図8は図1のVIII矢視図であり、図9は図1のIX-IX線に沿う断面図である。突起部124は、後述するように、本例の二次電池1を製造する際に、イジェクトピンと当たるための部材であって、突起部124の先端部分の表面は弾性樹脂部13の下面から露出している。突起部124は円筒状に形成され、円筒状の中心軸(円状の上下面の中心点を結ぶ線)が電池本体11の積層方向と平行になるように形成されている。
【0040】
上記のとおり、スペーサ12は、電池本体11の外周部113aで電池本体11を接合するために、電池本体11の主面と平行な主面を有しており、突起部124は、スペーサ12の主面を含む部材から主面に鉛直な方向(すなわち扁平型の電池本体11の厚み方向)に延在することで形成され、弾性樹脂部13の外方に向けて突起している。突起部124の側面は弾性樹脂部13に埋設されるが、突起部124の下面は弾性樹脂部13から露出している。そのため、突起部124の下面を含んだ先端部分は、当該下面を除いて、弾性樹脂部13に覆われている。また、弾性樹脂部13は、スペーサ12を下方から覆いつつ、電池本体11の積層方向(扁平型の電池本体11の厚み方向)と垂直方向に沿うよう形成された端面13aを有しており、突起部124の下面は弾性樹脂部13の端面13aの一部から、円状に露出している。すなわち、突起部124の先端部分である円状の下面部分が、弾性樹脂部13から露出した露出部に相当する。
【0041】
詳細は後述するが、二次電池1の製造過程において、成形型のキャビティに溶融弾性体を注入した後に、弾性樹脂部13を成形型から離型する工程がある。当該工程で、イジェクトピンを用いて弾性樹脂部13を離型する際に、イジェクトピンを弾性樹脂部13に当てて離型するためには、弾性樹脂部13が完全に硬化した後に、イジェクトピンで離型しなくてはならない。一方、本例の二次電池1では、上記のように、スペーサ12に、弾性樹脂部13の下方の端面の一部から露出する露出部を設けているため、離型工程において、弾性樹脂部13が完全に硬化する前に、イジェクトピンを露出部に当てて、弾性樹脂部13を離型することができる。その結果として、二次電池1の製造時間の短縮化を図ることができる。
【0042】
次に本例の二次電池1の製造方法について、説明する。最初にラミネートフィルム製外装部材111の内部に発電要素112を収容して電解液を充填し、外装部材111の外周部113を封止する。これにより電池本体11を得る。これと併行して、固定部121、通孔122、リブ123を有するスペーサ12を成形して、スペーサ12を準備する。
【0043】
次いで、図10に示すように、電池本体11及びスペーサ12を成形型20にセットする。図10は、電池本体11及びスペーサ12を成形型20にセットする様子を示す斜視図である。成形型20は、射出成形用金型であり、電池本体11及びスペーサ12を狭持するために、成形型201及び成形型202による一対の金型で形成されている。
【0044】
ここで、成形型202の構成について、図11及び図12を用いて説明する。図11は図10のXI矢視図であり、図12は図11のXII部分の拡大図である。図11及び図12に示すように、成形型202には、イジェクトピン202bを挿入するための挿入孔202aが設けられている。挿入孔202aは、スペーサ12を成形型202にセットした際に、突起部124の下面と当接する位置に設けられ、成形型202の底面まで貫通している。挿入孔202aの周囲の部分は、スペーサ12とは当接しない。イジェクトピン202bは、挿入孔202aと挿抜可能な状態で、挿入孔202aに挿入されている。イジェクトピン202bの先端面は、挿入孔202aの周囲の部分と面一になっている。
【0045】
図13は電池本体11及びスペーサ12を成形型202にセットした様子を示す斜視図であり、図14は、電池本体11及びスペーサ12を成形型201、202で型締めしている様子を示す斜視図である。図13に示すように、突起部124の下面をイジェクトピン202bの先端部分に位置決めしつつ、電池本体11及びスペーサ12を成形型202にセットする。この際、スペーサ12を電池本体11の外周部113aに重畳するようセットする。そして、図14に示すように、成形型201及び成形型202で、電池本体11及びスペーサ12を閉じて、型を締める。
【0046】
ここで、型締めされた状態の電池本体11及びスペーサ12について、図15を用いて説明する。図15は図14のXV-XV線に沿う断面図である。図15に示すように、スペーサ12を成形型201、202にセットし、型を締めると、突起部124の下面とイジェクトピン202bの先端部分との間にはキャビティ(C)が形成されないが、突起部124の下面の周囲と成形型202の表面との間にキャビティが形成される。
【0047】
そして、射出口203から溶融樹脂を注入し、キャビティに溶融樹脂を充填させて、弾性樹脂部13を形成する。これにより、弾性樹脂部13は、電池本体11とスペーサ12との接合部分で、スペーサ12及び電池本体11の外周部113aを覆いつつ、突起部124の下面を露出させて、電池本体11及びスペーサ12を接合する。
【0048】
次いで、図16及び図17に示すように成形型201、202を開いて、イジェクトピン202bで、電池本体11、スペーサ12及び弾性体13を有する電池構造体を取り出す。図16は成形型20を開いた様子を示す斜視図であり、図17は成形型202から、電池本体11、スペーサ12及び弾性樹脂部13を取り出した状態を示す斜視図である。当該電池構造体は、弾性樹脂部13が完全に硬化する前に、イジェクトピン202bを挿入孔202aの底面の孔から押して、突起部124の下面をイジェクトピン202bで押し上げることにより、スペーサ12を成形型202から離型する方向に突き上げて、取り出される。
【0049】
電池構造体を成形型202から取り出す際には、弾性体13が完全に硬化しておらず、弾性体13と成形型202の表面とが接着している可能性がある。本例において、イジェクトピン202bはスペーサ12の突起部124の下面を押すため、弾性体13が完全に硬化していない状態であっても、電池構造体を押し上げることができる。本例とは異なり、突起部124以外であって、弾性樹脂部13で覆われていない部分のスペーサ12を、イジェクトピン202bで押し上げる場合も考えられる。しかし、かかる場合には、イジェクトピン202bが当たる部分及び当該部分の周辺は、成形型202と接着しておらず、これらの接着していない部分に応力が加わり、成形型202と弾性樹脂部13との接着部分に負荷が偏って加わるため、電池構造体を変形させることなく取り出すことが難しい。一方、本例では、イジェクトピン202bが当たる部分の周辺は、弾性体13と成形型202との境界になっているため、成形型202と弾性樹脂部13との接着部分に対して負荷が偏って加わることを防ぐことができる。
【0050】
以上のように、本例の二次電池1によれば、電池本体11の外周部で、電池本体11とスペーサ12とを弾性樹脂部13で連結しているので、図6に示すように外力Fが、スペーサ12を介して電池本体11に入力する際に弾性樹脂部13自体に緩衝力f3が発生する。これにより、電池本体11に入力される外力を緩衝することができ、電池本体11の固定状態の安定性が向上する。特に、車両振動のような比較的高周波の振動に対して、弾性樹脂部13の弾性力による外力緩衝作用に優れている。
【0051】
また本例は、スペーサ12の一部を弾性樹脂部13で覆いつつ、当該弾性樹脂部13に、電池本体11の積層方向に対して垂直方向の端面13aを形成し、スペーサ12に当該端面の一部から露出する露出部を設けた。また、本例は、電池本体11及びスペーサ12を、貫通孔202aを備えた成形型201、202にセットして型締めをし、電池本体11とスペーサ12とを弾性樹脂部13で一体的に成形し、電池本体11、スペーサ12及び弾性樹脂部13を成形型202から離型する際に、当該露出部を貫通孔202aに挿入されたイジェクトピン202bで押す。これにより、成形型202から電池構造体を取り出す際、イジェクトピン202bを弾性樹脂部13に当てることなく、スペーサ12の当該露出部に当てることができる。その結果として、弾性樹脂部13の変形を防ぎつつ、製造工程の短縮化を図ることができる。
【0052】
また本例は、弾性樹脂部13が完全に硬化する前に、電池本体11、スペーサ12及び弾性樹脂部13を成形型20から離型する。これにより、製造工程の短縮化を図ることができる。
【0053】
また、範囲H1に形成される弾性樹脂部13の硬度を電池本体11の外装部材111を構成する外側樹脂層111cの硬度より小さく、スペーサ12の硬度より小さくしているので、スペーサ12に著しく過大な外力が作用し、これにより弾性樹脂部13と外装部材111とが接触した場合に、弾性樹脂部13による外装部材111の傷付きを抑制することができる。
【0054】
また、範囲H2に形成された弾性樹脂部13により、外周部113c,113dの接合面から漏洩しようとする発電要素112からの電位漏れを阻止することができ、二次電池1の容量低下を抑制することができる。また、範囲H1に形成される弾性樹脂部13と範囲H2に形成される弾性樹脂部13とを接続しているので、スペーサ12に入力した外力Fの一部を範囲H2に形成した弾性樹脂部13に分散させることができ、電池本体11に伝達する外力を軽減することができる。
【0055】
また、弾性樹脂部13をインサート成形にて形成することで製造時間及び製造工数を低減することができ、二次電池1のコストダウンを図ることができる。
【0056】
なお、本例は、スペーサ12に突起部124を必ずしも設ける必要はなく、図19に示すように、スペーサ12の下面の一部を露出部12aとしてもよい。図18は、本発明の変形例に係る二次電池1の部分断面であり、図14のXV-XV線に沿う断面図に対応する図である。図19は本発明の変形例に係る二次電池1の部分断面であり、図1のIX- IXに沿う断面図に対応する図である。図18に示すように、イジェクトピン202bの一部が成形型202のキャビティCを形成する表面から飛び出ており、イジェクトピン202bの先端部分がスペーサ12の下面に当接している。イジェクトピン202bが当接している部分12a以外のスペーサ12の下面は成形型202と間隔を空けて、キャビティCを形成している。図18の状態で、弾性樹脂部13をキャビティCに充填し、上記と同様の工程を経ると、図19に示す二次電池1が形成される。すなわち、スペーサ12の下面のうち、イジェクトピン202bと当接していた部分が弾性樹脂部13の端面13aから露出する露出部12aとなり、イジェクトピン202bと当接していない部分は弾性樹脂部13に覆われる。これにより、成形型202から電池構造体を取り出す際、イジェクトピン202bを弾性樹脂部13に当てることなく、スペーサ12の露出部12aに当てることができる。その結果として、弾性樹脂部13の変形を防ぎつつ、製造工程の短縮化を図ることができる。
【0057】
なお本例において、突起部124は必ずしも円筒状に形成される必要はなく、例えば三角錐や四角錐などの角錐状に形成されてもよく、又は、円錐状に形成されてもよい。また、底面を三角形や四角形などの多角形とする角柱状に形成されてもよい。
【0058】
また本例において、突起部124は、先端部分を必ずしも弾性樹脂部13の端面13aと面一にするように形成される必要はなく、図20に示すように、突起部124の先端部分を弾性樹脂部13の端面13aより外側に延在させることで、突起部124の先端部分が端面13aから飛びだすよう、突起部124が形成されてもよい。図20は、本発明の変形例に係る二次電池1の部分断面であり、図1のIX- IXに沿う断面図に対応する図である。さらに、本例は、弾性樹脂部13の端面13aから突出している図20の突起部124を、例えば予め加熱したイジェクトピン202bで潰すことにより、図21に示すように、突起部124の先端部分が弾性樹脂部13を貫通している突起部124の部分より大きくなるように、形成してもよい。これにより、弾性樹脂部13がスペーサ12から離脱することを防ぐことができる。
【0059】
また本例は、リブ123の先端部である、端面13aと平行な面を含む端部を端面13aから露出することで、リブ123を突起部124としてもよい。また突起部124、または、スペーサ12のうち、上記の弾性樹脂部13の端面13aから露出している部分は、必ずしもスペーサ12の下面側に形成する必要はなく、スペーサ12の上面側に形成してもよい。
【0060】
なお、スペーサ12の機械的強度を発電要素112の電極板の機械的強度より大きくしてもよい。これにより、スペーサ12に著しく過大な外力が作用し、スペーサ12と発電要素112とが接触して両者ともに潰れようとする場合に、スペーサ12の方が潰れ難くなり、その結果、二次電池1の保持安定性を確保することができる。
【0061】
上記のスペーサ12が本発明の「板状部材」に相当し、弾性樹脂部13が本発明の「弾性体」に相当し、突起部124の先端部分であって、弾性樹脂部13から露出している部分が、本発明の「露出部」に相当する。
【符号の説明】
【0062】
1…二次電池
11…電池本体
111…外装部材
111a…内側樹脂層
111b…中間金属層
111c…外側樹脂層
112…発電要素
112a…正極板
112b…負極板
112c…セパレータ
112d…正極側集電体
112e,112f…正極層
112g…負極側集電体
112h,112i…負極層
113,113a〜113d…外周部
114…正極端子
115…負極端子
12…スペーサ
12a…露出部
121…固定部
122…通孔
123…リブ
124…突起部
13…弾性樹脂部
13a…端面
14…重畳部
20…成形型
201、202…成形型
202a…挿入孔
202b…イジェクトピン
203…射出口
F…外力
f1,f2,f3…緩衝力
200…脆弱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装部材の内部に発電要素が封入された電池本体と、
他の電池本体を積層した際に互いの前記電池本体の外周部の間に配置される板状部材と、
電池本体及び板状部材とに接合して電池本体と板状部材とを連結すると共に、前記板状部材の少なくとも一部を覆う弾性体とを備え、
前記板状部材は、前記板状部材を覆う弾性体の前記電池本体の厚み方向端面の一部から露出した露出部を有する
ことを特徴とする薄型電池。
【請求項2】
請求項1記載の薄型電池において、
前記板状部材は、前記弾性体に覆われた部分から前記弾性体の外方に向けて突起した突起部を有し、
前記露出部は、前記突起部の先端により形成されている薄型電池。
【請求項3】
請求項1または2に記載の薄型電池において、
前記板状部材は、前記電池本体を前記所定位置に固定する固定部を有する薄型電池。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の薄型電池において、
前記外装部材は、二枚のフィルム状部材の外周を重ね合わせ、前記重ね合わせた二枚のフィルム状部材の外周の全周を接合した接合部を形成することにより、内部に発電要素を封入し、
前記外周部は前記接合部の少なくとも一部である薄型電池。
【請求項5】
請求項4に記載の薄型電池において、
前記フィルム状部材は、電池外表面側に樹脂層を含むラミネートフィルム製部材であり、
前記弾性体の硬度は、前記樹脂層の硬度より小さい薄型電池。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の薄型電池において、
前記弾性体の硬度は、前記板状部材の硬度より小さい薄型電池。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の薄型電池において、
前記弾性体は、前記電池本体と前記板状部材との重畳部を包含する範囲に、弾性樹脂のインサート成形により形成されている薄型電池。
【請求項8】
外装部材の内部に発電要素を封入し、電池本体を得る工程と、
前記電池本体の外周部に連結される板状部材を準備する準備工程と、
前記電池本体及び前記板状部材を、貫通孔を備えた成形型にセットして型締めする型締め工程と、
前記電池本体と前記板状部材とを、前記板状部材の電池本体の厚み方向の一部を露出させた状態で弾性体で一体的に成形する成形工程と、
前記電池本体、前記板状部材及び弾性体を前記成形型から離型する離型工程とを備え、
前記離型工程は、
前記弾性体から露出した前記板状部材の露出部を、前記貫通孔に挿入されたイジェクトピンで押す工程を含む薄型電池の製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の薄型電池の製造方法において、
前記離型工程は、前記弾性体が完全に硬化する前に、前記電池本体、前記板状部材及び弾性体を前記成形型から離型する工程を含む薄型電池の製造方法。
【請求項10】
請求項8または9記載の薄型電池の製造方法において、
前記型締め工程は、前記板状部材を、前記電池本体の外周部に重畳させた状態で前記金型にセットする工程を含み
前記成形工程は、前記電池本体と前記板状部材との重畳部を包含する範囲に、弾性樹脂を充填してインサート成形を行う工程を含む薄型電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−114889(P2013−114889A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259823(P2011−259823)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(511245282)松本加工株式会社 (1)
【Fターム(参考)】