説明

表示装置及び表示装置の制御方法

【課題】可撓性を有する表示装置における表示機能の劣化を確実に抑える。
【解決手段】可撓性を有する基板102,103と、基板102,103に配列された複数の発光素子を有し、映像信号に応じた画像を表示する表示部110と、基板102,103の表面又は裏面に設けられ、基板102,103の湾曲状態を検知する変位センサ106と、変位センサ106により基板102,103の湾曲が検知された場合に、表示部110に表示される画像の画素ズラシを制御する画素ズラシ制御部126と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置及び表示装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時においては、表示装置における表示素子の信頼性を確保することは非常に重要な課題となっている。特に、構造的なメカニカルな信頼性や表示性能に関する信頼性の確保は、従来と変わらず必要不可欠な項目である。
【0003】
例えば下記の特許文献1には、電流量の温度上昇による素子の寿命劣化を抑制するために、映像データなどのデバイスの表示状態を判断できるデータから画像の状況を判断し、過電流を抑制するように点灯する水平走査線を制御する手法が提案されている。
【0004】
また、下記の特許文献2には、表示装置に対する微小な応力による変形を、入射する光の偏光状態の変化として、偏光検出手段の光検出器によって、定量的に変化量を検出することで、屈折率などの光学特性制御を行うものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−173193号公報
【特許文献2】特開2007−240617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された手法は、ゲート信号とソース信号の両方を組み合わせた複雑な制御であり、かつ、点灯期間を制御するなど、多様なフィードバック制御を必要とし、多くのアルゴリズムを必要とするため、信頼性確保のために製造コストが増大するという問題がある。また、複雑なアルゴリズム制御は、ドライバーICの消費電力増大にもつながり、電力性能の低下も発生する。
【0007】
また、特許文献2に記載された手法では、他の光源、たとえば太陽光や、室内の蛍光灯など、比較的強い外光に対する光散乱や外光反射によるノイズなどをすると、変形による微小な屈折率の検出は困難である。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、可撓性を有する表示装置における表示機能の劣化を確実に抑えることが可能な、新規かつ改良された表示装置及び表示装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、可撓性を有する基板と、前記基板に配列された複数の発光素子を有し、映像信号に応じた画像を表示する表示部と、前記基板の表面又は裏面に設けられ、前記基板の湾曲状態を検知する変位センサと、前記変位センサにより前記基板の湾曲が検知された場合に、前記表示部に表示される画像の画素ズラシを制御する画素ズラシ制御部と、を備える、表示装置が提供される。
【0010】
また、前記画素ズラシ制御部は、前記変位センサにより前記基板の湾曲が検知された場合に、湾曲部位において前記画素ズラシを実行するものであってもよい。
【0011】
また、前記画素ズラシ制御部は、前記基板の湾曲量に応じて前記画素ズラシを制御するものであってもよい。
【0012】
また、前記画素ズラシ制御部は、湾曲している前記基板が平面の状態に復帰したことが検知された場合は、前記画素ズラシによる画像の移動量を0に戻すものであってもよい。
【0013】
また、前記変位センサの出力と画素ズラシ量との関係を規定したルックアップテーブルに基づいて画素ズラシ量を演算する画素ズラシ量演算部を備え、前記画素ズラシ制御部は、前記画素ズラシ量に基づいて前記画素ズラシを制御するものであってもよい。
【0014】
また、前記画素ズラシ量演算部は、前記変位センサの出力値が所定のしきい値以下の場合は前記画素ズラシ量を0とするものであってもよい。
【0015】
また、前記画素ズラシ量演算部は、前記基板が湾曲する場合と、湾曲した前記基板が平面に復帰する場合とで、異なるルックアップテーブルに基づいて前記画素ズラシ量を演算するものであってもよい。
【0016】
また、前記変位センサは、ITO又はIZOからなる一対の透明電極を有し、前記一対の透明電極間の抵抗値の変化に基づいて、前記基板の湾曲状態を検知するものであってもよい。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、映像信号に応じた画像を表示する表示部が設けられた、可撓性を有する基板の湾曲状態を検知するステップと、前記基板の湾曲が検知された場合に、前記表示部に表示される画像の画素ズラシを制御するステップと、を備える、表示装置の制御方法が提供される。
【0018】
また、前記画素ズラシを制御するステップにおいて、前記基板の湾曲が検知された場合に、湾曲部位において前記画素ズラシを実行するものであってもよい。
【0019】
また、前記画素ズラシを制御するステップにおいて、前記基板の湾曲量に応じて前記画素ズラシを制御するものであってもよい。
【0020】
また、湾曲している前記基板が平面の状態に復帰したことが検知された場合に前記画素ズラシによる画像のずらし量を0に戻すステップを更に備えるものであってもよい。
【0021】
また、前記基板の湾曲量に相当する値と画素ズラシ量との関係を規定したルックアップテーブルに基づいて画素ズラシ量を演算するステップを備え、前記画素ズラシを制御するステップにおいて、前記画素ズラシ量に基づいて前記画素ズラシを制御するものであってもよい。
【0022】
また、前記画素ズラシ量を演算するステップにおいて、前記基板が湾曲する場合と、湾曲した前記基板が平面に復帰する場合とで、異なるルックアップテーブルに基づいて前記画素ズラシ量を演算するものであってもよい。
【0023】
また、前記基板の湾曲状態を検知するステップにおいて、前記基板の表面又は裏面に設けられた変位センサの出力値に基づいて前記基板の湾曲状態を検知し、前記変位センサの出力値が所定のしきい値以下の場合は前記画素ズラシを行わないものであってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、可撓性を有する表示装置における表示機能の劣化を確実に抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る表示装置の表側の面を示す平面図である。
【図2】表示装置の断面を示す模式図である。
【図3】変位センサを表示部の裏面側に設けた例を示す図であって、表示装置の裏面を示す平面図である。
【図4】変位センサを表示部の裏面側に設けた例を示す図であって、表示装置の断面を示す模式図である。
【図5】表示装置が湾曲した状態を示す図であって、表示部が設けられた表側の面が凹面となるように湾曲した状態を示す模式図である。
【図6】表示部が設けられた面が凸面となるように湾曲した状態を示す模式図である。
【図7】本実施形態に係る表示装置の機能構成を示すブロック図である。
【図8】抵抗変化量に応じた画素ズラシ量を規定するLUTの一例を示す模式図である。
【図9】画素ズラシ量を規定するLUTの他の例を示す模式図である。
【図10】画素ズラシの概念を示す模式図である。
【図11】表示装置の断面を示す図であって、変位センサを表示装置の表裏面に設けた構成例を示す模式図である。
【図12】図11に示す表示装置が湾曲した状態を示す模式図である。
【図13】ルックアップテーブルの他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0027】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.表示装置の構成例
2.表示装置の機能ブロック構成
3.画素ズラシ量の演算について
4.変位センサを表裏面に設けた構成例
5.ルックアップテーブルの他の例
【0028】
[1.表示装置の構成例]
まず、図1及び図2を参照して、本発明の一実施形態に係る表示装置100の概略構成について説明する。図1は、表示装置100の表側の面を示す平面図である。表示装置100は、後述する半導体層によって構成された、複数の画素がマトリクス状に配列されてなる表示部110を備える。表示部110は、映像信号に応じて各画素を発光させることにより、静止画や動画などの画像を表示する。
【0029】
本実施形態では、フレキシブルな特徴をもち合せたゆえに、湾曲作動が自由となりうると当時に湾曲時に呼応して曲がり具合量に対して、固定表示部は、その変位検出量に応じて、表示装置の固定表示画像において、画素ずらしを行うことで、固定表示による焼付きを抑制し、表示信頼性を確保する。
【0030】
図2は、表示装置100の断面を示す模式図である。図2に示すように、本実施形態においては、第1基板102、第2基板104、及び変位センサ106が積層されて、数十μm程度の厚さの極めて薄い表示装置100が構成される。第1基板102は、フレキシブルな基板、たとえば樹脂製のプラスチック基板上に、各画素を構成する表示素子(発光素子)が形成されて構成されたものであり、表示素子は低温プロセスで形成可能な有機半導体あるいは無機半導体の素子を用いることができる。本実施形態では、第1基板102には、表示素子として有機EL(Organic Electro-Luminescence)素子が形成されるものとする。
【0031】
第2基板104は、やはり樹脂性のプラスチック基板からなり、有機半導体あるいは無機半導体からなる表示素子を備える第1基板102に対して対向して配置され、表示素子を封止する封止基板としての機能を有する。このように、本実施形態では、第1基板102及び第2基板104の2種の基板によって半導体層が挟持されることで表示装置100が構成される。画像が表示される表示部110は、第2基板104側の面となる。そして、このような構成により、表示装置100は、数十μm程度の厚さで構成され、可撓性を有し、画像を表示した状態で自由に湾曲することができる。
【0032】
図1及び図2に示すように、第2基板104の表面には、透明な電極体、たとえば、ITO膜、IZO膜などからなる変位センサ106が配列されている。変位センサ106は、例えば表示部110と同じ領域に形成されている。変位センサ106は透明な電極体からなり、第1基板102の表示素子に各々対向して配列されている。
【0033】
変位センサ106は、例えば既存のタッチパネルの電極と同様に構成され、ITO、IZO等の透明電極からなる2枚の金属薄膜(抵抗膜)が対向して配置され、この1対の金属薄膜が平面領域において例えばマトリクス状に複数配置されている。変位センサ106の対向する透明電極は抵抗を有し、一方の電極には所定の電圧が印加され、電極間の抵抗値がモニタされている。このような構成において、表示装置100が湾曲すると、湾曲した位置で2枚の金属薄膜間の抵抗値が変化し、他方の電極には湾曲に応じた電圧が発生するため、抵抗値の変化を検出することができる。従って、マトリクス状に配置された複数の1対の金属薄膜のうち、抵抗値が変化した金属薄膜を検知することで、変位センサ106のどの位置が変位したかを検知することができ、表示部110がどの位置で折り曲げられたかを検知できる。また、抵抗値の変化は、表示装置100の曲がり量が大きくなるほど増大する。このようにして、表示装置100は、変位センサ106にて検出された抵抗変化量を検出し、表示装置100の曲がり位置、および曲がり量を検出することができる。
【0034】
図3及び図4は、変位センサ106を表示部110の裏面側に設けた例を示す模式図である。ここで、図3は表示装置100の裏面の平面図を示しており、図4は表示装置100の断面図を示している。図3及び図4に示す構成において、第1基板102と第2基板104の構成は、図1及び図2の表示装置100と同様である。この構成例では、図4に示すように、変位センサ106は、第1基板102の裏面に設けられている。変位センサ106を表示部110の裏面に設けた場合も、表示部110の表面に設けた場合と同様に、抵抗値の変化に応じて表示装置100の湾曲量、湾曲位置を検出することができる。
【0035】
ところで、有機ELなどの自発光型の表示素子を用いた表示装置の場合、固定画像を長時間表示すると、いわゆる焼き付きの現象が生じることが知られている。焼き付きの現象は、例えば映像に輝度差がある表示領域において、使用経過に応じて発光材質の劣化の程度に差が生じることによって発生する。実際の表示においては、各表示セルに対応する、発光材質の発光累積時間は均一とはならないため、これまでに表示させてきた画像に応じてばらつきが生じることになる。これにより、表示セル間での発光材質の劣化の度合いにバラツキが生じ、焼き付きの現象が生じることになる。焼き付きの現象は、映像に輝度差がある場合に、その映像が継続して表示される固定画像表示の場合により発生し易くなることが知られている。
【0036】
このような焼き付きの現象に鑑みて、本実施形態では、変位センサ106で検出された抵抗値の抵抗変化量の検出値に応じて、第1基板102にて構成される有機半導体あるいは無機半導体からなる表示素子への出力制御を呼応させて、抵抗変化量から求まる表示部110の湾曲時の変位量(曲がり量)に基づいて、表示部110の表示画素について所定量の画素ズラシを行う。これにより、本実施形態では、同じ表示が行われることにより表示部110に発生する焼き付き現象を制御し、表示部110の信頼性を確保するようにしている。
【0037】
図5は、表示装置100が湾曲した状態を示す模式図であって、表示部110が設けられた表側の面が凹面となるように湾曲した状態を示している。また、図6は、表示部110が設けられた面が凸面となるように湾曲した状態を示している。
【0038】
図5及び図6に示すように、表示装置100が湾曲した状態では、湾曲によって表示部110の視認性が低下するため、通常と同じ画像の表示状態を維持する必要性は低くなる。例えば、図5のように、表示画面が凹面となるように湾曲した場合は、表示画面上の画像も湾曲する。また、表面の乱反射等の影響により、平面の場合と比較すると画質も低下する。このため、画素ズラシを行った場合であっても、ユーザに与える違和感を抑えることができる。特に、図5のように、表示部110の表示画面が180°程度の角度で屈曲した場合は、外側から表示部110の画像が視認できない領域が生じるため、画素ズラシがユーザに視認されることがなくなる。同様に、図6のように、表示部110の表示画面が凸面となるように湾曲した場合、表示画面上の画像も湾曲し、画質も低下することから、画素ズラシを行った場合であっても、ユーザに与える違和感を抑えることができる。このように、本実施形態では、表示部110が湾曲した場合に、固定画像表示を維持する必要性が薄くなることに鑑みて、画素ずらしを行う。これにより、ユーザに違和感を与えることなく、表示装置100としての表示品質の信頼性を確保することが可能である。
【0039】
画素ズラシは、マトリクス状に配置された複数の変位センサ106のうち、抵抗変化が検知された湾曲部に相当する領域において行う。これにより、湾曲が生じていない領域では、画素ズラシが行われないため、画像の視認性を高レベルに維持することができる。また、表示部110の湾曲量が大きくなるほど、表示画面上の画像の湾曲量が大きくなるため、画素ずらしの影響がより視認されにくくなる。このため、本実施形態では、表示装置100の曲がり量に対してある一定の対応した画素数分だけ、曲がり具合量に連動して画素ズラシを行うこととしている。また、表示部110の湾曲状態が元の平面に戻った場合は、これに応じて画素ずらし量を元の状態に戻し、画素ずらし量を0とする。なお、湾曲しない通常の表示装置では、焼き付き防止のための画素ズラシ制御がユーザに視認されることで、ユーザは違和感を覚える。しかし、本実施形態では、湾曲している最中に焼き付き防止のための画素ズラシ制御を行うため、画素ズラシ制御を行ってもユーザは画素ズラシを認識することができず、ユーザが違和感を覚えることがない。従って、ユーザに画素ズラシ制御を認識させることなく、表示装置の信頼性を確保することが可能となる。
【0040】
[2.表示装置の機能ブロック構成]
以下に具体的な制御手法について説明する。図7は、本実施形態に係る表示装置100の機能構成を示すブロック図である。図7に示す機能ブロックは、センサ、回路などのハードウェア、または中央演算処理装置(CPU)とこれを機能させるためのソフトウェア(プログラム)によって構成されることができる。図7に示すように、表示装置100は、抵抗検出部120、抵抗比較部122、画素ズラシ演算部124、画素ズラシ制御部126を備える。抵抗検出部120は、上述した変位センサ106に対応するものであり、抵抗検出部106は、湾曲量に対応するアナログ値として抵抗値を検出する。抵抗検出部120にて検出された抵抗値は、抵抗比較部122にて変化量が検出される。ここで、抵抗比較部122は、表示装置100が湾曲していない平面の状態での基準抵抗値と、抵抗検出部120にて検出された抵抗値を比較することにより変化量を検出する。
【0041】
抵抗比較部122は、抵抗変化量が検出された場合は、その変化量を画素ズラシ演算部124へ出力する。また、抵抗比較部122は、抵抗変化量が検出された場合は、その変位センサ106の位置情報を画素ズラシ制御部126へ入力する。抵抗変化量が検出されなかった場合、すなわち、抵抗検出部120にて検出された抵抗値と基準抵抗値との間に差がない場合は、表示装置100が湾曲していないため、抵抗変化量は画素ズラシ演算部124には出力されない。画素ズラシ演算部124では、入力された変化量に応じて、表示部120の画素ズラシ量を決定する。画素ズラシ演算部124にて決定された画素ズラシ量は、画素ズラシ量制御部126へ出力され、画素ズラシ量制御部126により表示部120における画素ズラシが制御される。画素ズラシ量制御部126では、マトリクス状に配置された複数の変位センサ106のうち、抵抗変化が検知された湾曲部に相当する領域において画素ズラシを行う。このため、画素ズラシ制御部126は、抵抗比較部122から入力された、抵抗変化が生じた変位センサ106の位置情報に基づいて、湾曲部に相当する領域において画素ズラシを行う。
【0042】
[3.画素ズラシ量の演算について]
画素ズラシ演算部124においては、抵抗変化量に応じて制御すべき画素ズラシ量が予めルックアップテーブル(LUT)として格納されている。図8は、抵抗変化量に応じた画素ズラシ量を規定するLUTの一例を示す模式図である。このように、本実施形態では、予め格納された線形データを用いて、画素ズラシ制御を行うものとする。図8に示すように、抵抗変化量が少ない場合は、画素ズラシ量の値が小さく設定される。そして、抵抗変化量が大きくなる程、例えば画素ズラシ量は指数関数的に大きくなるように設定される。これにより、表示部110の曲がりが少ない場合は、画素ズラシ量を小さくすることで表示性能を高く維持することができる。表示部110の湾曲量が少ない場合は、画素ズラシが認識され易くなるため、画素ズラシ量を小さくすることで、画素ズラシがユーザに認識されることを抑止できる。
【0043】
また、図9は、画素ズラシ量を規定するLUTの他の例を示す模式図である。図9に示す例では、変位センサ106により検出された電圧値(抵抗値に相当する値)と画素ズラシ量との関係を規定している。変位センサ106の一方の透明電極に所定の電圧を印加した場合に、表示装置100が湾曲していない状態での他方の電極の電圧値を基準電圧とすると、湾曲量が大きくなるほど、変位センサ106の他方の電極の基準電圧に対する電圧値は増加する。従って、変位センサ106の他方の電極の基準電圧に対する電圧値を図9のLUTに当てはめることで、画素ズラシ量を求めることができる。
【0044】
例えば、変位センサ106のある任意のポイント(位置)において、変位センサ106の透明電極の電圧検出値が、湾曲していない時の基準電圧に対して、抵抗比較部120にておいて0.2Vの差分が検出されたものとする。この場合、画素ズラシ演算部124にて、差分検出量に応じて画素ズラシ量が演算され、図9の例では画素ズラシ量が4画素とされる。そして、画素ズラシ制御部126にて、画素ズラシをある一定期間で上下左右に実行する。画素ズラシを行うことによって、映像に輝度差がある場合に、その映像が継続して表示されることが回避されるため、焼き付きの発生を抑えることができる。このように、本実施形態では、表示装置100の湾曲に応じて発生する抵抗値の差分に応じて画素ズラシを行うことで、焼付きを抑制することができる。
【0045】
図8に示すように、抵抗変化量が小さい所定の範囲では、画素ズラシ量は0とされ、抵抗変化量がある所定のしきい値Thを超えた場合に画素ズラシを行うようにルックアップテーブルが規定される。このように、画素ズラシが実際に行うまでの間に不感帯を設けることにより、表示装置100が微小に湾曲した場合は、画素ズラシが行わないようにすることができる。これにより、表示装置100の微小変形では画素ズラシが行われないため、ユーザに違和感が生じてしまうことを抑止できる。
【0046】
図10は、画素ズラシの概念を示す模式図であって、表示装置100の湾曲部において画素ズラシが行われる様子を示している。図10に示すように、抵抗値変化により表示部110の湾曲が検知されると、湾曲部に表示されていた固定画像表示パターンが所定時間内に所定画素分だけ上下左右(図10中の矢印方向)に移動される。または、所定画素の範囲で時計回りに(又は反時計周り)固定表示パターンが回転するように周期的に画素ズラシを行うことができる。画素ズラシ制御部126による画素ズラシの制御は、特に限定されるものではなく、公知の一般的な手法により行うことができる。例えば、画像の表示タイミングを所定数のクロックだけずらし、画素単位でデータ読出しのタイミングをずらすことにより、画素ズラシを行うようにすることができる。更に詳しくは、湾曲部に表示されていた固定画像表示パターンが所定時間内に所定画素分だけ上下左右(図10中の矢印方向)に移動させる制御において、湾曲によって発生する抵抗変化量に連動して制御される画素ズラシ制御を周期的に行う制御において、画素ズラシ量が大きくなるほどその周期を連動して早める制御を行う。すなわち、画素ズラシを多くするにともない、その画素ズラシの周期を呼応させて、その画素ズラシ周期を早めることにより、固定表示を湾曲に応じてより多く画素ズラシ制御することで、固定表示による焼付きを制御するものとする。
【0047】
この結果、湾曲によって表示部110の視認性が低下するため、湾曲時にユーザ側には視認されない表示領域において、その固定画像表示をキャンセルし、湾曲量に応じて、表示部110に表示される画像の画素ズラシを制御することで、焼き付きを抑えて表示信頼性を確保することができる。
【0048】
なお、この表示部110における焼き付きが生じ易い固定画像表示の画像の例としては特に限定されるものではないが、例えばある一定のフレーム周波数内で映像信号レベルが不変であるものを対象とすることができる。更には、固定画像表示と判断するための信号レベルが不変の状態(割合)は、表示装置100への入力などの手法により、ユーザ側で任意に決定できるものとしても良い。
【0049】
以上のように、本実施形態では、表示装置100において、湾曲量を変位センサ106にて検出して、その湾曲量に連動して画素ずらしを制御し、画像表示による焼付き劣化を抑制する。これにより、湾曲時にユーザ側には視認されにくい表示領域において、その画画像表示をキャンセルし、湾曲量に応じて、表示部110の画素ズラシを制御することで、表示信頼性を確保することができる。
【0050】
[4.変位センサを表裏面に設けた構成例]
図11は、表示装置100の断面を示す模式図であって、変位センサを表示装置100の表裏面に設けた構成例を示している。また、図12は、図11に示す表示装置100が湾曲した状態を示す模式図である。図12の場合、湾曲部において、表示部110が設けられていない裏面側の変位センサ106の曲率半径は、表示部110が設けられている表面側の変位センサ106の曲率半径よりも大きくなる。より詳細には、裏面側の変位センサ106の曲率半径は、第1基板102及び第2基板104の厚さ分だけ大きくなる。このため、表面側の変位センサ106の湾曲量は裏面側の変位センサ106の湾曲量に比べて大きくなり、より湾曲量の大きい表面側の変位センサ106の抵抗変化量は、裏面側の変位センサ106の抵抗変化量よりも大きくなる。
【0051】
従って、図11に示す構成によれば、表裏面の変位センサ106により抵抗変化量を検出した場合に、表裏面の抵抗変化量を比較することで、表裏面の何れか一方が凹面で、他方が凸面であることを検出することができる。そして、表面が凹面となる場合は、表面が凸面となる場合に比べて表示部110が外側から隠れてしまい、表示部110がより認識されにくくなるため、画素ズラシが目立たなくなり、画素ズラシ量をより大きくする制御が可能となる。一方、表面が凸面となる場合は、画像に湾曲が生じるものの、画像自体は認識できることから、表面が凹面の場合に比べて画素ずらし量を少なくすることで、画素ずらしによる違和感をユーザに与えることを抑止することが可能となる。
【0052】
また、上述した例では、画素ズラシの方向を上下左右の方向としたが、変位センサ106の出力に基づいて表示装置100の湾曲方向を検知し、湾曲方向に画素ズラシを行うようにしても良い。例えば、図5の場合を例に挙げると、湾曲方向(図5中に矢印で示す)に沿って画素ズラシを行うようにする。これにより、画素ズラシをより目立たなくすることができ、ユーザに画素ズラシが認識されることを確実に抑止できる。
【0053】
[5.ルックアップテーブルの他の例]
図13は、ルックアップテーブルの他の例を示す模式図である。図13に示す例では、表示装置100が折り曲げられる過程と、折り曲げが元に戻る過程とで、抵抗変化量に対する画素ズラシ量が異なるようにしている。
【0054】
図13に示すルックアップテーブルにおいて、表示装置100が折り曲げられる過程における特性曲線(図13中に実線で示す)は、図8と同様である。一方、折り曲げが元に戻る過程では、図13において破線で示す特性曲線とし、抵抗変化量が大きい領域では抵抗変化量に対する画素ズラシ量の変化量をより大きくし、抵抗変化量が小さい領域では抵抗変化量に対する画素ズラシ量の変化量をより小さくする。これにより、折り曲げられた状態から平面に復帰する際に、より早い段階で画素ズラシによる画像を元の状態に戻すことができる。従って、湾曲した表示装置100が平面に復帰する際に、画素ズラシによる違和感がユーザに与えられてしまうことを確実に抑止できる。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0056】
100 表示装置
106 変位センサ
110 表示部
124 画素ズラシ演算部
126 画素ズラシ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する基板と、
前記基板に配列された複数の発光素子を有し、映像信号に応じた画像を表示する表示部と、
前記基板の表面又は裏面に設けられ、前記基板の湾曲状態を検知する変位センサと、
前記変位センサにより前記基板の湾曲が検知された場合に、前記表示部に表示される画像の画素ズラシを制御する画素ズラシ制御部と、
を備える、表示装置。
【請求項2】
前記画素ズラシ制御部は、前記変位センサにより前記基板の湾曲が検知された場合に、湾曲部位において前記画素ズラシを実行する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記画素ズラシ制御部は、前記基板の湾曲量に応じて前記画素ズラシを制御する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記画素ズラシ制御部は、湾曲している前記基板が平面の状態に復帰したことが検知された場合は、前記画素ズラシによる画像の移動量を0に戻す、請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記変位センサの出力と画素ズラシ量との関係を規定したルックアップテーブルに基づいて画素ズラシ量を演算する画素ズラシ量演算部を備え、
前記画素ズラシ制御部は、前記画素ズラシ量に基づいて前記画素ズラシを制御する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記画素ズラシ量演算部は、前記変位センサの出力値が所定のしきい値以下の場合は前記画素ズラシ量を0とする、請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記画素ズラシ量演算部は、前記基板が湾曲する場合と、湾曲した前記基板が平面に復帰する場合とで、異なるルックアップテーブルに基づいて前記画素ズラシ量を演算する、請求項5に記載の表示装置。
【請求項8】
前記変位センサは、ITO又はIZOからなる一対の透明電極を有し、前記一対の透明電極間の抵抗値の変化に基づいて、前記基板の湾曲状態を検知する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項9】
映像信号に応じた画像を表示する表示部が設けられた、可撓性を有する基板の湾曲状態を検知するステップと、
前記基板の湾曲が検知された場合に、前記表示部に表示される画像の画素ズラシを制御するステップと、
を備える、表示装置の制御方法。
【請求項10】
前記画素ズラシを制御するステップにおいて、前記基板の湾曲が検知された場合に、湾曲部位において前記画素ズラシを実行する、請求項9に記載の表示装置の制御方法。
【請求項11】
前記画素ズラシを制御するステップにおいて、前記基板の湾曲量に応じて前記画素ズラシを制御する、請求項9に記載の表示装置の制御方法。
【請求項12】
湾曲している前記基板が平面の状態に復帰したことが検知された場合に前記画素ズラシによる画像のずらし量を0に戻すステップを更に備える、請求項9に記載の表示装置の制御方法。
【請求項13】
前記基板の湾曲量に相当する値と画素ズラシ量との関係を規定したルックアップテーブルに基づいて画素ズラシ量を演算するステップを備え、
前記画素ズラシを制御するステップにおいて、前記画素ズラシ量に基づいて前記画素ズラシを制御する、請求項9に記載の表示装置の制御方法。
【請求項14】
前記画素ズラシ量を演算するステップにおいて、前記基板が湾曲する場合と、湾曲した前記基板が平面に復帰する場合とで、異なるルックアップテーブルに基づいて前記画素ズラシ量を演算する、請求項13に記載の表示装置の制御方法。
【請求項15】
前記基板の湾曲状態を検知するステップにおいて、前記基板の表面又は裏面に設けられた変位センサの出力値に基づいて前記基板の湾曲状態を検知し、前記変位センサの出力値が所定のしきい値以下の場合は前記画素ズラシを行わない、請求項9に記載の表示装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−95370(P2011−95370A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247517(P2009−247517)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】