触媒コンバータ
【課題】、触媒コンバータからの放熱を行いつつ、触媒コンバータの周辺に対して触媒コンバータからの放熱の影響を抑制する、触媒コンバータを提供する。
【解決手段】筒状の触媒担体と、触媒担体を収容する筒部を有するケーシングと、触媒担体と筒部との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材と、を含む触媒コンバータであって、筒部は、当該筒部の外側面からの放熱を促進するための1又は複数の、触媒担体が収容される側に窪む凹部を備え、凹部を備える筒部の外側面の表面積は、凹部を備えない場合における筒部の外側面の表面積よりも大きい、ことを特徴とする触媒コンバータ。
【解決手段】筒状の触媒担体と、触媒担体を収容する筒部を有するケーシングと、触媒担体と筒部との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材と、を含む触媒コンバータであって、筒部は、当該筒部の外側面からの放熱を促進するための1又は複数の、触媒担体が収容される側に窪む凹部を備え、凹部を備える筒部の外側面の表面積は、凹部を備えない場合における筒部の外側面の表面積よりも大きい、ことを特徴とする触媒コンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金属製の波板と平板とを重ね、これ等を多重に巻回しコア部を形成し、このコア部を、両端にフランジの形成される筒状容器内に収容してなる金属触媒コンバータにおいて、前記筒状容器の内面に、前記コア部に向けて突出する突起を形成したことを特徴とする金属触媒コンバータについて開示がされている。
【0003】
特許文献2には、楕円形状の外周面に沿って凹状のビードが形成され内部にモノリス型触媒担体を収容した楕円形筒状の収容部と、該収容部の両端からそれぞれ漸次円筒状に縮径して延設されたインレットコーン部及びアウトレットコーン部とからなることを特徴とする触媒コンバータについて開示がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−54814号公報
【特許文献2】特開2002―97945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
触媒コンバータ中に高温の気体(排気ガス等)が流通した場合、触媒コンバータに配置される触媒担体は高温に曝されることとなる。ここで、触媒コンバータから効果的に放熱を行わなければ触媒担体が熱破損等をおこすという問題が生じてしまう。
【0006】
しかしながら、触媒コンバータから放出される熱によって、例えば、触媒コンバータの周辺に耐熱性の低い材料からなる部品が備えられた場合、当該部品は触媒コンバータから放出される熱によって熱破損等をおこしてしまうという新たな問題が生じてしまう。
【0007】
よって、触媒コンバータから効果的に放熱を行うものの、触媒コンバータの周辺に対し、触媒コンバータからの放熱による影響を抑制することが必要である。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、触媒コンバータからの放熱を行いつつ、触媒コンバータの周辺に対して触媒コンバータからの放熱の影響を抑制する、触媒コンバータを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る触媒コンバータは、筒状の触媒担体と、前記触媒担体を収容する筒部を有するケーシングと、前記触媒担体と前記筒部との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材と、を含む触媒コンバータであって、前記筒部は、当該筒部の外側面からの放熱を促進するための1又は複数の、前記触媒担体が収容される側に窪む凹部を備え、前記凹部を備える前記筒部の外側面の表面積は、前記凹部を備えない場合における前記筒部の外側面の表面積よりも大きいことを特徴とする。
【0010】
また、前記触媒コンバータは、前記凹部を備える前記筒部の外側面の表面積は、前記凹部を備えない場合における前記筒部の外側面の表面積と比較して1.5倍以上であることとしてもよい。
【0011】
また、前記触媒コンバータは、前記筒部における前記凹部が備えられた部分と前記触媒担体との間に備えられる触媒コンバータ用保持材の密度は0.65g/cm3以下であることとしてもよい。また、前記凹部は複数備えられており、複数の前記凹部は、それぞれが離間して、前記筒部に不連続に備えられていることとしてもよい。また、前記触媒コンバータは、複数の前記凹部は、それぞれが前記筒部に点在して備えられていることとしてもよい。
【0012】
また、前記触媒コンバータは、前記凹部は、前記触媒担体の軸方向に沿って前記筒部の一端から他端まで連続して備えられていることとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、触媒コンバータからの放熱を行いつつ、触媒コンバータの周辺に対して触媒コンバータからの放熱の影響を抑制する、触媒コンバータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る触媒コンバータの平面図である。
【図2A】図1における線2A−2Aにおける断面を示す断面図である。
【図2B】図1における線2B−2Bにおける断面を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る触媒コンバータが配置される一例を示す説明図である。
【図4A】本発明の実施形態に係る触媒コンバータに用いられる触媒コンバータ用保持材の平面図である。
【図4B】本発明の実施形態に係る触媒コンバータに用いられる触媒コンバータ用保持材の側面図である。
【図5】触媒コンバータ用保持材が触媒担体の外周面に巻かれて備えられている状態を示す説明図である。
【図6】ケーシングの筒部に、触媒コンバータ用保持材が巻かれた触媒担体を収容する様子を示す説明図である。
【図7】本発明の実施形態に係る触媒コンバータの他の一例の平面図である。
【図8A】図7における線8A−8Aにおける断面を示す断面図である。
【図8B】図7における線8B−8Bにおける断面を示す断面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る触媒コンバータの他の一例の平面図である。
【図10A】図9における線10A−10Aにおける断面を示す断面図である。
【図10B】図9における線10B−10Bにおける断面を示す断面図である。
【図11】本発明の実施形態に係る触媒コンバータの他の一例の平面図である。
【図12A】図11における線12A−12Aにおける断面を示す断面図である。
【図12B】図11における線12B−12Bにおける断面を示す断面図である。
【図13】本発明の実施形態に係る触媒コンバータの筒部の表面積と表面温度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明を行う。図1は、本発明の実施形態に係る触媒コンバータ1の平面図である。図2Aは、図1における線2A−2Aにおける断面を示す断面図である。図2Bは、図1における線2B−2Bにおける断面を示す断面図である。
【0016】
また、図3は、本実施形態に係る触媒コンバータ1が配置される一例を示す説明図である。図3にて示されるように、触媒コンバータ1はケーシング3に備えられたフランジ部3Bを介して他の管20と接続されている。
【0017】
本実施形態に係る触媒コンバータ1は、筒状の触媒担体2と、触媒担体2を収容する筒部3Aを有するケーシング3と、触媒担体2と筒部3Aとの間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4と、を含む触媒コンバータ1であって、筒部3Aは、当該筒部3Aの外側面32からの放熱を促進するための1又は複数の、触媒担体2が収容される側に窪む凹部5を備え、凹部5を備える筒部3Aの外側面32の表面積は、凹部5を備えない場合における筒部3Aの外側面32の表面積よりも大きいことを特徴とする。
【0018】
すなわち、本実施形態に係る触媒コンバータ1の特徴とする構成の一つは、ケーシング3の筒部3Aに1又は複数の凹部5を備えたことにある。そして、当該凹部5は、触媒コンバータ1に高温の気体が流通した際、触媒コンバータ1が高温の状態に置かれないように、触媒コンバータ1から熱を効果的に放出するよう備えられている。さらに、当該凹部5は、触媒コンバータ1の周辺に対して触媒コンバータ1からの放熱の影響を抑制するように、できるだけ触媒コンバータ1の周辺に置かれた機器11等から触媒コンバータ1の外表面を遠ざけるように触媒担体2が収容される側に窪んで形成されている。
【0019】
ここで、筒部3Aの外側面32とは、ケーシング3の筒部3Aにおける触媒コンバータ用保持材4が備えられる側と反対側の面のことをいう。したがって筒部3Aの外側面32の表面積とは、図1における凹部5が備えられていない部分30の表面積と、凹部5が備えられた部分31の表面積(凹部5の側部の面積を含む)と、の総和を表すものである。
【0020】
触媒コンバータ1には、一方向から他方向に向かって高温の気体(排気ガス等)が流通する。例えば、触媒コンバータ1が自動車において用いられる場合には、触媒コンバータ1に流通する高温の気体は、エンジン等の内燃機関から排出される排気ガスであり、800℃〜1000℃程度に達するものである。以下、触媒コンバータ1に流通する高温の気体は内燃機関から排出される排気ガスであることとして説明を行う。
【0021】
図3にて示されるように触媒コンバータ1の一方に接続された管20Aからは内燃機関から排気された排気ガス40Aが導入される。そして導入された排気ガス40Aは触媒担体2にて浄化され、浄化された排気ガス40Bは触媒コンバータ1の他方から排出される。
【0022】
ここで、触媒コンバータ1における触媒担体2を流通する排気ガス40Aの温度は、上述の様に800℃〜1000℃程度に達するものである。触媒コンバータ1に備えられたケーシング3の筒部3Aの表面温度は、触媒コンバータ1に備えられている触媒コンバータ用保持材4によって導入される排気ガス40Aが有する一部の熱が断熱されるものの、約500℃にまで達する。すなわち、触媒コンバータ1の周辺に置かれる機器11等は、触媒コンバータ1の表面から放出される熱によって、500℃近い程度に曝されることとなる。
【0023】
図3にて示されるように触媒コンバータ1の周辺には他の機器11等が置かれ、触媒コンバータ1から放出される熱の影響を受けることが少なくない。したがって、触媒コンバータ1の周辺に他の機器11等が置かれる場合、通常触媒コンバータ1の表面から予め定められた距離を離して当該機器11等は置かれることとなる。
【0024】
ところで、触媒コンバータ1が自動車に用いられる場合、触媒コンバータ1の周辺に置かれる他の機器11等は、軽量化等の要請から樹脂やゴムといった熱に対する影響を受けやすい部材によって構成されることも少なくない。また、自動車の設計上の問題からエンジンルーム内のスペースを有効に利用したいという要請もあり、触媒コンバータ1と他の機器11等とが近接して置かれることも少なくない。したがって、触媒コンバータ1から放出される熱を低く抑えることが必要とされている。
【0025】
前述のように本実施形態に係る触媒コンバータ1のケーシング3の表面は、表面積を大きくするために触媒担体2が収容される側に窪む凹部5が備えられている。凹部5を備えるケーシング3の筒部3Aの外側面32の表面積は、当該凹部5を備えない場合における筒部3Aの外側面の表面積と比較して1.5倍以上であり、10倍以下であることが好適である。
【0026】
また、凹部5を備えるケーシング3の筒部3Aの外側面32の表面積は、当該凹部5を備えない場合における筒部3Aの外側面の表面積と比較して、好ましくは2.0倍以上であり、さらに好ましくは3.0倍以上である。表面積が増えることによって、放熱の効果はさらに高まることとなる。
【0027】
また、凹部5を備えるケーシング3の筒部3Aの外側面32の表面積は、当該凹部5を備えない場合における筒部3Aの外側面の表面積と比較して、好ましくは8倍以下であり、さらに好ましくは5倍以下である。なお、凹部5を備えるケーシング3の筒部3Aの外側面32の表面積の範囲は、上述した凹部5を備えない場合における筒部3Aの外側面の表面積と比較した際の上限比及び下限比を任意に組み合わせて決定することができる。
【0028】
そして、凹部5が、触媒担体2を収容する側に窪むようにケーシング3に備えられることによって、触媒コンバータ1の周辺に置かれた機器11等に対して、触媒コンバータ1から放出される熱による影響を抑制することとなる。
【0029】
なぜならば、一般的に高温物体(ここでは筒表面)と低温流体(ここでは空気)の間の熱のやりとりは、ニュートンの冷却法則式Q=α(T1−T2)A[Q:伝熱量(W)、α:熱伝達率(W/(m2・K))、T1:高温物体温度(℃)、T2:低温流体温度(℃)、A:放熱面積(m2)]で示され、伝熱量Qが一定の時は放熱面積Aが大きいほど、熱伝達による放熱量が増え、結果的に高温物体の表面温度を下げることが可能である。この考えをもとに、筒部表面積を増やすことにより、表面温度を下げることが可能となる。また同時に、凹部5においては基本的に空気層となるが、この空間は比較的淀んだ状態となり、静止空気(熱伝導率は低い)に近い断熱層として作用し、表面温度を下げることに寄与している。
【0030】
また、図3にて示されるように、触媒コンバータ1に凹部5が備えられていない部分30と、当該周辺に置かれた機器11と、の距離はd1である。これに対し、凹部5が備えられた部分31と、当該周辺に置かれた機器11と、の距離は最大d2である。すなわち、当該周辺に置かれた機器11と触媒コンバータ1の表面との距離は、部分的に距離を凹部5の深さ分遠ざけられていることとなる。
【0031】
ここで、触媒コンバータ1から放出される熱による温度は、触媒コンバータ1から距離が離れるほど低下することとなるので、結果として触媒コンバータ1の当該周辺に置かれた機器11に対する触媒コンバータ1から放出される熱による影響は抑制されることとなる。
【0032】
以下に、本実施形態に係る触媒コンバータ1を構成する、触媒担体2、触媒コンバータ用保持材4、ケーシング3、について詳細に説明を行う。
【0033】
触媒担体2は、例えば、触媒コンバータ1が自動車の排気ガスの浄化用として用いられる場合、排気ガス中に含まれる未燃焼炭化水素(HC)や、窒素酸化物(NOx)等を浄化するための触媒を担持する。そして、触媒担体2は、例えば、セラミックス製で肉薄のハニカム構造体を有するものであることとしてもよい。
【0034】
次に、触媒コンバータ用保持材4について説明を行う。触媒コンバータ用保持材4は、触媒担体2とケーシング3との間から排気ガス40Aの漏洩を防止、外部からの振動から触媒担体2の保護等をするために用いられるものである。
【0035】
図4Aは、本実施形態に係る触媒コンバータ1に用いられる触媒コンバータ用保持材4の平面図である。図4Bは、本実施形態に係る触媒コンバータ1に用いられる触媒コンバータ用保持材4の側面図である。
【0036】
図4A、4Bに示すように触媒コンバータ用保持材4は、平板状の触媒コンバータ用保持材4の一端に凸部41と、他端に凸部41と嵌合可能な形状の嵌合部42と、が形成された形状とすることとしてもよい。また、凸部41及び嵌合部42の形状は、図示される矩形の他に、三角形や半円形状であってもよい。また、凸部41及び嵌合部42の個数も1個には限定されず、2個以上であってもよい。
【0037】
触媒コンバータ用保持材4は、触媒担体2とケーシング3との間から排気ガス40Aの漏洩を防止するために、所定の密度を有することが好ましい。例えば、触媒コンバータ用保持材4の密度は、0.10〜0.65g/cm3とすることとしてもよい。そして、筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間に備えられる触媒コンバータ用保持材4の密度と、筒部3Aにおける凹部5が備えられていない部分30と触媒担体2との間に備えられる触媒コンバータ用保持材4の密度と、は異なるものであることとしてもよい。筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間に備えられる触媒コンバータ用保持材4の密度と、筒部3Aにおける凹部5が備えられていない部分30と触媒担体2との間に備えられる触媒コンバータ用保持材4の密度と、については後に詳細に説明を行う。また、触媒コンバータ用保持材4は、厚さが一定であることが好ましく、具体的には±25%以内とすることが好ましい。
【0038】
また、触媒コンバータ用保持材4は、触媒担体2とケーシング3との間から排気ガス40Aの漏洩を防止するために、触媒担体2からの放熱によって形状変化を生じないような耐熱性を有することが好ましい。触媒コンバータ用保持材4は、触媒担体2から放出される500℃に達する熱に曝されるため、触媒コンバータ用保持材4は、耐熱温度が500℃以上の材料によって構成されることが好ましい。
【0039】
例えば、触媒コンバータ用保持材4は、無機繊維によって構成されることとしてもよい。また、触媒コンバータ用保持材4は、セラミックス繊維によって構成されることとしてもよい。また、触媒コンバータ用保持材4は、アルミナ系繊維によって構成されることとしてもよい。また、触媒コンバータ用保持材4は、シリカ系繊維によって構成されることとしてもよい。また、アルミナ系繊維は、アルミナ繊維、ムライト繊維、シリカ−アルミナ繊維からなる群から選択される一または二以上の繊維によって構成されることとしてもよい。また、触媒コンバータ用保持材4は、アルミナ繊維によって構成されることとしてもよい。
【0040】
図5は触媒コンバータ用保持材4が触媒担体2の外周面に巻かれて備えられている状態を示す説明図である。図5に示されるように、触媒コンバータ用保持材4は、触媒コンバータ用保持材4の凸部41と、嵌合部42とが嵌合し、触媒担体2の外周面に巻かれて備えられている。
【0041】
図5にて示されるように、触媒コンバータ用保持材4の一つの面の全部は、触媒担体2の外側面と接していることとしてもよい。触媒コンバータ用保持材4の一つの面(例えば、図4Bにおける符号43にて示される面43)の全部が、触媒担体2の外側面と接していないとすると、触媒コンバータ用保持材4と触媒担体2との間隙には空気の層ができることとなる。当該空気の層は、触媒担体2から放出される熱を対流させ、触媒コンバータ用保持材4はより高い温度に曝されることとなる。結果、触媒コンバータ1全体の温度は上昇することとなる。
【0042】
次に、ケーシング3について説明を行う。ケーシング3は、例えば、ステンレス鋼(SUS)等の金属製のものであることとしてもよい。以下の説明においてケーシング3は金属製のものであるとして説明を行う。
【0043】
図6は、ケーシング3の筒部3Aに、触媒コンバータ用保持材4が巻かれた触媒担体2を収容する様子を示す説明図である。なお、図6は、ケーシング3の表面に備えられている凹部5を省略して記載されている。ここで、触媒コンバータ用保持材4の、触媒担体2と接する側と反対側の他の面(例えば、図4Bにおける符号44にて示される面44)の全部は、ケーシング3の筒部3Aの内側面と接していることとしてもよい。
【0044】
触媒コンバータ用保持材4の他の面44の全部が、筒部3Aの内側面と接していないとすると、触媒コンバータ用保持材4と筒部3Aとの間隙には空気の層ができることとなる。当該空気の層は、触媒コンバータ用保持材4から放出される熱を対流させ、筒部3Aはより高い温度に曝されることとなる。結果、触媒コンバータ1全体の温度は上昇することとなる。
【0045】
また、図6にて示されるように、ケーシング3は、触媒担体2を収容する筒部3Aと、排気ガスの供給、排気を行う管と接続されるフランジ部3Bと、筒部3Aとフランジ部3Bとを滑らかに繋ぐテーパー部3Cと、を含んで構成されている。
【0046】
ケーシング3の形状は、所定の方法によって形成される。例えば、予め金属製の円筒を用意し、円筒に、予め触媒担体2に触媒コンバータ用保持材4を巻き付けたものを、治具等を用いてケーシング3の筒部3Aに挿入し、その後金属製の円筒の両端部を絞り加工等を行うことによってテーパー部3Cを形成し、さらにフランジ部3Bを形成することとしてもよい。そして筒部3Aの表面に所定の凹部5を形成することによってケーシング3が形成される。
【0047】
あるいは、ケーシング3をその長手方向に沿って2分割した構成(2つのシェルに分割した構成)とすることができる。上記シェルは、予めテーパー部3C、フランジ部3Bの一部、および凹部5が形成されたものとする。一方のシェル内の所定箇所に触媒コンバータ用保持材4が予め巻かれた触媒担体2を設置した後、他方のシェルを一方のシェルと重ねて溶接することによってケーシング3が形成される。なお、上述の溶接はボルト等を用いて固定する方法に代替可能である。
【0048】
次に、ケーシング3の筒部3Aに備えられる凹部5について、以下に詳細に説明を行う。図1にて示されるように、凹部5は、筒部3Aに複数備えられることが好ましい。そして、複数の凹部5のそれぞれは離間して、筒部3Aに不連続に備えることが好ましい。
【0049】
筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4の一部は、筒部3Aにおける凹部5が備えられていない部分30と触媒担体2との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4の他の部分よりも、圧縮されて密度が高い状態で備えられる。
【0050】
密度が高い触媒コンバータ用保持材4の熱伝導率は、密度が低いものと比較して、高いものとなる。したがって筒部3Aにおいて凹部5が備えられた部分31は、凹部5が備えられていない部分30よりも、温度が高い状態となる。さらに、凹部5が備えられた部分31は、熱源である触媒担体2との距離が近くなるので、触媒担体2から放出される熱の影響を、凹部5が備えられていない部分30よりも受けやすい状態となる。
【0051】
ここで、筒部3Aの外側面32において複数の凹部5のそれぞれが離間して、不連続に配置されることによって、凹部5が備えられた部分31(温度の高い部分)は、凹部5が備えられていない部分30(温度が低い部分)に囲まれて配置されることになる。結果、ケーシング3の筒部3Aの表面温度は、凹部5が備えられていない部分30(温度が低い部分)の温度と略同等の温度となり、触媒コンバータ1の周辺に置かれた機器11に対する触媒コンバータ1から放出される熱による影響を抑制することとなる。
【0052】
また、図1に示されるように、複数の凹部5は、それぞれがケーシング3の筒部3Aに点在して備えられていることとしてもよい。このように凹部5を備えることによって、触媒コンバータ1の周辺に置かれた機器11等に対する触媒コンバータ1から放出される熱による影響を抑制する効果をさらに高めることとなる。
【0053】
また、筒部3Aの外側面32における、凹部5の開口面積の総和は、凹部5が備えられていない部分30の面積の1/3倍以上、3倍以下であることが好ましい。ここでいう開口面積とは、凹部5の開口部51の面積をいう。すなわち、開口面積は、図1にて示される触媒コンバータ1の平面図において、矩形に囲まれて記載されている部分の面積をいう。
【0054】
開口面積が大きいことは、筒部3Aの外側面32において、触媒コンバータ1の周辺に置かれる機器11から離れている面積が大きいことを意味する。すなわち、触媒コンバータ1の周辺に置かれた機器11等に対する触媒コンバータ1から放出される熱による影響を抑制することとなる。
【0055】
触媒コンバータ1の周辺に置かれた機器11等に対する触媒コンバータ1から放出される熱による影響を抑制する効果を高めるために、凹部5の開口面積の総和は、凹部5が備えられていない部分の面積の1/3倍以上、3倍以下であることが好ましく、1/2倍以上、3倍以下であることがより好ましい。さらに、凹部5の開口面積の総和と、凹部5が備えられていない部分の面積と、が同じかそれ以上であることが好ましく、さらに1.5倍以上、3倍以下であることが好ましい。
【0056】
また、複数の凹部5のそれぞれは、開口面積が小さいことが好ましい。具体的には筒部3Aの面積は1〜900mm3であることが好ましい。より好ましくは1〜600mm3であり、さらに好ましくは1〜400mm3である。複数の凹部5のそれぞれの開口面積が大きい場合、ケーシング3の表面における均熱性が悪くなるなどの弊害が考えられる。
【0057】
次に、筒部3Aに備えられる凹部5と、触媒コンバータ用保持材4と、の関係について説明を行う。本発明の実施形態に係る触媒コンバータ1に備えられる触媒コンバータ用保持材4の密度は、前述のように0.10〜0.65g/cm3とすることとしてもよい。そして、筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間に備えられる触媒コンバータ用保持材4の密度と、筒部3Aにおける凹部5が備えられていない部分30と触媒担体2との間に備えられる触媒コンバータ用保持材4の密度と、は異なるものであることとしてもよい。
【0058】
ここで、ケーシング3の筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間に備えられる触媒コンバータ用保持材4の密度は0.65g/cm3以下となるように凹部5の深さを設定する。ケーシング3の筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間に備えられる触媒コンバータ用保持材4の密度が0.65g/cm3を超えるように凹部5を深くしすぎると、担体の破損を招く可能性があるためである。
【0059】
また、ケーシング3の筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間に備えられる触媒コンバータ用保持材4の密度は0.65g/cm3以下となるように凹部5の深さを設定することが好ましく、より好ましくは0.60g/cm3以下であり、特に好ましくは0.55g/cm3以下である。
【0060】
また、ケーシング3の筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間に備えられる触媒コンバータ用保持材4の密度は0.20g/cm3を超える値となるように凹部5の深さを設定することが好ましく、より好ましくは0.25g/cm3を超える値であり、特に好ましくは0.30g/cm3を超える値である。
【0061】
また、ケーシング3の筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間に備えられる触媒コンバータ用保持材4の密度範囲は、前述した上限値及び下限値を任意に組み合わせて決定することができる。
【0062】
また、前述のように、筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4の一部は、筒部3Aにおける凹部5が備えられていない部分30と触媒担体2との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4の他の部分よりも、圧縮されて密度が高い状態で備えられる。そして、密度が高い触媒コンバータ用保持材4の熱伝導率は、密度が低いものと比較して、高いものとなる。
【0063】
したがって、触媒コンバータ用保持材4が、凹部5の備えられる位置に基づいて、密度分布を有することは、触媒コンバータ1の周辺に置かれた機器11等に対する触媒コンバータ1から放出される熱による影響を抑制する効果をさらに高めることとなる。
【0064】
たとえば、触媒コンバータ用保持材4において、筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4の一部の密度は、筒部3Aにおける凹部5が備えられていない部分30と触媒担体2との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4の他の部分の密度と比べて小さいこととしてもよい。
【0065】
具体的には、触媒コンバータ用保持材4において、筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4の一部の密度は、筒部3Aにおける凹部5が備えられていない部分30と触媒担体2との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4の他の部分の密度よりも小さいことが好ましい。
【0066】
さらに具体的には、触媒コンバータ用保持材4において、筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4の一部の密度は、筒部3Aにおける凹部5が備えられていない部分30と触媒担体2との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4の他の部分の密度の、0.3倍以上、1.0倍未満であることとしてもよく、より好ましくは、0.4倍以上、0.9倍以下であることとしてもよく、さらに好ましくは、0.5倍以上、0.8倍以下であることとしてもよい。
【0067】
あるいは、触媒コンバータ用保持材4は、筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4の一部の密度と、筒部3Aにおける凹部5が備えられていない部分30と触媒担体2との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4の他の部分の密度と、が同じとするような密度分布を有することとしてもよい。
【0068】
このように、筒部3Aにおける凹部5の備えられる位置に基づいて、触媒コンバータ用保持材4の密度を分布させることによって、触媒コンバータ1表面の温度を低下させることができるため、触媒コンバータ1の周辺に置かれた機器11等に対する触媒コンバータ1から放出される熱による影響を抑制する効果をさらに高めることとなる。
【0069】
また、触媒コンバータ用保持材4が、凹部5の深さに基づいて、密度分布を有することもまた、触媒コンバータ1の周辺に置かれた機器11等に対する触媒コンバータ1から放出される熱による影響を抑制する効果をさらに高めることとなる。
【0070】
この場合も、触媒コンバータ用保持材4は、筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4の一部の密度と、筒部3Aにおける凹部5が備えられていない部分30と触媒担体2との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4の他の部分の密度と、が同じとするような密度分布を有することとしてもよい。
【0071】
図13は、本発明の実施形態に係る触媒コンバータ1の筒部3Aの表面積比と表面温度との関係を示す図である。具体的には、図13は、触媒コンバータ1を流通させる排気ガス温度を700℃(もしくは850℃)、触媒コンバータ1の外気温度30℃、触媒コンバータ1の筒部3Aの外径165mm、触媒コンバータ1の筒部3Aの内径160mm、触媒担体2の外径150mm、触媒コンバータ用保持材4(アルミナ繊維によって構成)の密度(凹部5が備えられていない部分の密度)0.3g/cm3、凹部5は筒部3Aに図1にて示されるようにそれぞれが離間して不連続に点在して備えられ、凹部5のそれぞれの開口面積は25mm2、の条件における、本発明の実施形態に係る触媒コンバータ1の表面積と表面温度との関係を示すシミュレーション結果である。
【0072】
筒部に凹部5が備えられていない場合(図13における筒部の表面積比(倍)が1.0の場合)の触媒コンバータ1の筒部3Aの表面温度は450℃(触媒コンバータ1を流通させる排気ガス温度が850℃の場合:図13における■)、370℃(触媒コンバータ1を流通させる排気ガス温度が700℃の場合:図13における◆)であった。図13には、触媒コンバータ1の筒部3Aの表面積が増加するに従い、触媒コンバータ1の筒部3Aの表面温度は減少することが示されている。
【0073】
触媒コンバータ1の筒部3Aにおいて、凹部5を備える筒部3Aの外側面32の表面積が、凹部5を備えない場合における筒部3Aの外側面32の表面積と比較して3.0倍の場合における触媒コンバータ1の筒部3Aの表面温度は、365℃(触媒コンバータ1を流通させる排気ガス温度が850℃の場合:図13における■)、305℃(触媒コンバータ1を流通させる排気ガス温度が700℃の場合:図13における◆)であり100℃近く減少した。また凹部5を備える筒部3Aの外側面32の表面積が、凹部5を備えない場合における筒部3Aの外側面32の表面積と比較して1.5倍であっても、触媒コンバータ1の筒部3Aの表面温度が20℃近くも減少することがわかる。
【0074】
図7は、本発明の実施形態に係る触媒コンバータ1の他の一例の平面図である。図8Aは、図7における線8A−8Aにおける断面を示す断面図である。図8Bは、図7における線8B−8Bにおける断面を示す断面図である。本実施形態に係る触媒コンバータ1に備えられた触媒担体2と触媒コンバータ用保持材4は、図1にて示された実施形態に係る触媒コンバータ1のものと同様のものである。
【0075】
本実施形態に係る触媒コンバータ1のケーシング3には、図7にて示されるように、触媒担体2の軸方向に沿ってケーシング3の筒部3Aの一端から他端まで連続して凹部5が備えられている。このように凹部5を筒部3Aに備えることによって、触媒担体2に排気ガスが導入される入口から、排出される出口にわたって全ての領域で放熱をすることができる。
【0076】
また、図7にて示される触媒コンバータ1は、触媒担体2に触媒コンバータ用保持材4を予め巻き付けたものを、治具を用いて予め凹部5がプレス成型等によって施されたケーシング3の筒部3Aに挿入して製造されることとしてもよい。すなわちスタッフィング方式を経て製造を行うこととしてもよい。なお、触媒担体2に触媒コンバータ用保持材4を予め巻き付けたものを、治具を用いてケーシング3の筒部3Aに挿入し、その後凹部5を加工する製造方法によって製造されることとしてもよい。
【0077】
若しくは、ケーシング3を軸方向に二分割したクラムシェルタイプケースを用意し、それぞれのケースの表面に凹部5をプレス成型等によって形成し、その後触媒担体2に触媒コンバータ用保持材4を予め巻き付けたものを二つのケースに挟みこまれて製造することとしてもよい。すなわちクラムシェル方式を経て製造を行うこととしてもよい。
【0078】
図9は、本発明の実施形態に係る触媒コンバータ1の他の一例の平面図である。図10Aは、図9における線10A−10Aにおける断面を示す断面図である。図10Bは、図9における線10B−10Bにおける断面を示す断面図である。
【0079】
本実施形態に係る触媒コンバータ1に備えられた触媒担体2と触媒コンバータ用保持材4は、図1にて示された実施形態に係る触媒コンバータ1のものと同様のものである。このように、凹部5は筒部3Aの周方向の全部に備えられることとしてもよい。
【0080】
図11は、本発明の実施形態に係る触媒コンバータ1の他の一例の平面図である。図12Aは、図11における線12A−12Aにおける断面を示す断面図である。図12Bは、図11における線12B−12Bにおける断面を示す断面図である。
【0081】
本実施形態に係る触媒コンバータ1に備えられた触媒担体2と触媒コンバータ用保持材4は、図1にて示された実施形態に係る触媒コンバータ1のものと同様のものである。このように、凹部5は筒部3Aにらせん状に備えられることとしてもよい。なお、本実施形態に係る触媒コンバータ1に備えられた凹部5は複数存在するが、連続した一の凹部5によって備えることとしてもよい。
【0082】
また、図9、11にて示される触媒コンバータ1は、触媒担体2に触媒コンバータ用保持材4を予め巻き付けたものを、治具を用いて予め凹部5がプレス成型等によって施されたケーシング3の筒部3Aに挿入して製造されることとしてもよい。すなわちスタッフィング方式を経て製造を行うこととしてもよい。
【0083】
若しくは、ケーシング3を軸方向に二分割したクラムシェルタイプケースを用意し、それぞれのケースの表面に凹部5をプレス成型等によって形成し、その後触媒担体2に触媒コンバータ用保持材4を予め巻き付けたものを二つのケースに挟みこまれて製造することとしてもよい。すなわちクラムシェル方式を経て製造を行うこととしてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 触媒コンバータ、2 触媒担体、3 ケーシング、3A 筒部、4 触媒コンバータ用保持材、5 凹部、11 機器、20、20A 管、3B フランジ部、40A、40B 排気ガス、41 凸部、42 嵌合部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金属製の波板と平板とを重ね、これ等を多重に巻回しコア部を形成し、このコア部を、両端にフランジの形成される筒状容器内に収容してなる金属触媒コンバータにおいて、前記筒状容器の内面に、前記コア部に向けて突出する突起を形成したことを特徴とする金属触媒コンバータについて開示がされている。
【0003】
特許文献2には、楕円形状の外周面に沿って凹状のビードが形成され内部にモノリス型触媒担体を収容した楕円形筒状の収容部と、該収容部の両端からそれぞれ漸次円筒状に縮径して延設されたインレットコーン部及びアウトレットコーン部とからなることを特徴とする触媒コンバータについて開示がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−54814号公報
【特許文献2】特開2002―97945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
触媒コンバータ中に高温の気体(排気ガス等)が流通した場合、触媒コンバータに配置される触媒担体は高温に曝されることとなる。ここで、触媒コンバータから効果的に放熱を行わなければ触媒担体が熱破損等をおこすという問題が生じてしまう。
【0006】
しかしながら、触媒コンバータから放出される熱によって、例えば、触媒コンバータの周辺に耐熱性の低い材料からなる部品が備えられた場合、当該部品は触媒コンバータから放出される熱によって熱破損等をおこしてしまうという新たな問題が生じてしまう。
【0007】
よって、触媒コンバータから効果的に放熱を行うものの、触媒コンバータの周辺に対し、触媒コンバータからの放熱による影響を抑制することが必要である。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、触媒コンバータからの放熱を行いつつ、触媒コンバータの周辺に対して触媒コンバータからの放熱の影響を抑制する、触媒コンバータを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る触媒コンバータは、筒状の触媒担体と、前記触媒担体を収容する筒部を有するケーシングと、前記触媒担体と前記筒部との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材と、を含む触媒コンバータであって、前記筒部は、当該筒部の外側面からの放熱を促進するための1又は複数の、前記触媒担体が収容される側に窪む凹部を備え、前記凹部を備える前記筒部の外側面の表面積は、前記凹部を備えない場合における前記筒部の外側面の表面積よりも大きいことを特徴とする。
【0010】
また、前記触媒コンバータは、前記凹部を備える前記筒部の外側面の表面積は、前記凹部を備えない場合における前記筒部の外側面の表面積と比較して1.5倍以上であることとしてもよい。
【0011】
また、前記触媒コンバータは、前記筒部における前記凹部が備えられた部分と前記触媒担体との間に備えられる触媒コンバータ用保持材の密度は0.65g/cm3以下であることとしてもよい。また、前記凹部は複数備えられており、複数の前記凹部は、それぞれが離間して、前記筒部に不連続に備えられていることとしてもよい。また、前記触媒コンバータは、複数の前記凹部は、それぞれが前記筒部に点在して備えられていることとしてもよい。
【0012】
また、前記触媒コンバータは、前記凹部は、前記触媒担体の軸方向に沿って前記筒部の一端から他端まで連続して備えられていることとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、触媒コンバータからの放熱を行いつつ、触媒コンバータの周辺に対して触媒コンバータからの放熱の影響を抑制する、触媒コンバータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る触媒コンバータの平面図である。
【図2A】図1における線2A−2Aにおける断面を示す断面図である。
【図2B】図1における線2B−2Bにおける断面を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る触媒コンバータが配置される一例を示す説明図である。
【図4A】本発明の実施形態に係る触媒コンバータに用いられる触媒コンバータ用保持材の平面図である。
【図4B】本発明の実施形態に係る触媒コンバータに用いられる触媒コンバータ用保持材の側面図である。
【図5】触媒コンバータ用保持材が触媒担体の外周面に巻かれて備えられている状態を示す説明図である。
【図6】ケーシングの筒部に、触媒コンバータ用保持材が巻かれた触媒担体を収容する様子を示す説明図である。
【図7】本発明の実施形態に係る触媒コンバータの他の一例の平面図である。
【図8A】図7における線8A−8Aにおける断面を示す断面図である。
【図8B】図7における線8B−8Bにおける断面を示す断面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る触媒コンバータの他の一例の平面図である。
【図10A】図9における線10A−10Aにおける断面を示す断面図である。
【図10B】図9における線10B−10Bにおける断面を示す断面図である。
【図11】本発明の実施形態に係る触媒コンバータの他の一例の平面図である。
【図12A】図11における線12A−12Aにおける断面を示す断面図である。
【図12B】図11における線12B−12Bにおける断面を示す断面図である。
【図13】本発明の実施形態に係る触媒コンバータの筒部の表面積と表面温度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明を行う。図1は、本発明の実施形態に係る触媒コンバータ1の平面図である。図2Aは、図1における線2A−2Aにおける断面を示す断面図である。図2Bは、図1における線2B−2Bにおける断面を示す断面図である。
【0016】
また、図3は、本実施形態に係る触媒コンバータ1が配置される一例を示す説明図である。図3にて示されるように、触媒コンバータ1はケーシング3に備えられたフランジ部3Bを介して他の管20と接続されている。
【0017】
本実施形態に係る触媒コンバータ1は、筒状の触媒担体2と、触媒担体2を収容する筒部3Aを有するケーシング3と、触媒担体2と筒部3Aとの間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4と、を含む触媒コンバータ1であって、筒部3Aは、当該筒部3Aの外側面32からの放熱を促進するための1又は複数の、触媒担体2が収容される側に窪む凹部5を備え、凹部5を備える筒部3Aの外側面32の表面積は、凹部5を備えない場合における筒部3Aの外側面32の表面積よりも大きいことを特徴とする。
【0018】
すなわち、本実施形態に係る触媒コンバータ1の特徴とする構成の一つは、ケーシング3の筒部3Aに1又は複数の凹部5を備えたことにある。そして、当該凹部5は、触媒コンバータ1に高温の気体が流通した際、触媒コンバータ1が高温の状態に置かれないように、触媒コンバータ1から熱を効果的に放出するよう備えられている。さらに、当該凹部5は、触媒コンバータ1の周辺に対して触媒コンバータ1からの放熱の影響を抑制するように、できるだけ触媒コンバータ1の周辺に置かれた機器11等から触媒コンバータ1の外表面を遠ざけるように触媒担体2が収容される側に窪んで形成されている。
【0019】
ここで、筒部3Aの外側面32とは、ケーシング3の筒部3Aにおける触媒コンバータ用保持材4が備えられる側と反対側の面のことをいう。したがって筒部3Aの外側面32の表面積とは、図1における凹部5が備えられていない部分30の表面積と、凹部5が備えられた部分31の表面積(凹部5の側部の面積を含む)と、の総和を表すものである。
【0020】
触媒コンバータ1には、一方向から他方向に向かって高温の気体(排気ガス等)が流通する。例えば、触媒コンバータ1が自動車において用いられる場合には、触媒コンバータ1に流通する高温の気体は、エンジン等の内燃機関から排出される排気ガスであり、800℃〜1000℃程度に達するものである。以下、触媒コンバータ1に流通する高温の気体は内燃機関から排出される排気ガスであることとして説明を行う。
【0021】
図3にて示されるように触媒コンバータ1の一方に接続された管20Aからは内燃機関から排気された排気ガス40Aが導入される。そして導入された排気ガス40Aは触媒担体2にて浄化され、浄化された排気ガス40Bは触媒コンバータ1の他方から排出される。
【0022】
ここで、触媒コンバータ1における触媒担体2を流通する排気ガス40Aの温度は、上述の様に800℃〜1000℃程度に達するものである。触媒コンバータ1に備えられたケーシング3の筒部3Aの表面温度は、触媒コンバータ1に備えられている触媒コンバータ用保持材4によって導入される排気ガス40Aが有する一部の熱が断熱されるものの、約500℃にまで達する。すなわち、触媒コンバータ1の周辺に置かれる機器11等は、触媒コンバータ1の表面から放出される熱によって、500℃近い程度に曝されることとなる。
【0023】
図3にて示されるように触媒コンバータ1の周辺には他の機器11等が置かれ、触媒コンバータ1から放出される熱の影響を受けることが少なくない。したがって、触媒コンバータ1の周辺に他の機器11等が置かれる場合、通常触媒コンバータ1の表面から予め定められた距離を離して当該機器11等は置かれることとなる。
【0024】
ところで、触媒コンバータ1が自動車に用いられる場合、触媒コンバータ1の周辺に置かれる他の機器11等は、軽量化等の要請から樹脂やゴムといった熱に対する影響を受けやすい部材によって構成されることも少なくない。また、自動車の設計上の問題からエンジンルーム内のスペースを有効に利用したいという要請もあり、触媒コンバータ1と他の機器11等とが近接して置かれることも少なくない。したがって、触媒コンバータ1から放出される熱を低く抑えることが必要とされている。
【0025】
前述のように本実施形態に係る触媒コンバータ1のケーシング3の表面は、表面積を大きくするために触媒担体2が収容される側に窪む凹部5が備えられている。凹部5を備えるケーシング3の筒部3Aの外側面32の表面積は、当該凹部5を備えない場合における筒部3Aの外側面の表面積と比較して1.5倍以上であり、10倍以下であることが好適である。
【0026】
また、凹部5を備えるケーシング3の筒部3Aの外側面32の表面積は、当該凹部5を備えない場合における筒部3Aの外側面の表面積と比較して、好ましくは2.0倍以上であり、さらに好ましくは3.0倍以上である。表面積が増えることによって、放熱の効果はさらに高まることとなる。
【0027】
また、凹部5を備えるケーシング3の筒部3Aの外側面32の表面積は、当該凹部5を備えない場合における筒部3Aの外側面の表面積と比較して、好ましくは8倍以下であり、さらに好ましくは5倍以下である。なお、凹部5を備えるケーシング3の筒部3Aの外側面32の表面積の範囲は、上述した凹部5を備えない場合における筒部3Aの外側面の表面積と比較した際の上限比及び下限比を任意に組み合わせて決定することができる。
【0028】
そして、凹部5が、触媒担体2を収容する側に窪むようにケーシング3に備えられることによって、触媒コンバータ1の周辺に置かれた機器11等に対して、触媒コンバータ1から放出される熱による影響を抑制することとなる。
【0029】
なぜならば、一般的に高温物体(ここでは筒表面)と低温流体(ここでは空気)の間の熱のやりとりは、ニュートンの冷却法則式Q=α(T1−T2)A[Q:伝熱量(W)、α:熱伝達率(W/(m2・K))、T1:高温物体温度(℃)、T2:低温流体温度(℃)、A:放熱面積(m2)]で示され、伝熱量Qが一定の時は放熱面積Aが大きいほど、熱伝達による放熱量が増え、結果的に高温物体の表面温度を下げることが可能である。この考えをもとに、筒部表面積を増やすことにより、表面温度を下げることが可能となる。また同時に、凹部5においては基本的に空気層となるが、この空間は比較的淀んだ状態となり、静止空気(熱伝導率は低い)に近い断熱層として作用し、表面温度を下げることに寄与している。
【0030】
また、図3にて示されるように、触媒コンバータ1に凹部5が備えられていない部分30と、当該周辺に置かれた機器11と、の距離はd1である。これに対し、凹部5が備えられた部分31と、当該周辺に置かれた機器11と、の距離は最大d2である。すなわち、当該周辺に置かれた機器11と触媒コンバータ1の表面との距離は、部分的に距離を凹部5の深さ分遠ざけられていることとなる。
【0031】
ここで、触媒コンバータ1から放出される熱による温度は、触媒コンバータ1から距離が離れるほど低下することとなるので、結果として触媒コンバータ1の当該周辺に置かれた機器11に対する触媒コンバータ1から放出される熱による影響は抑制されることとなる。
【0032】
以下に、本実施形態に係る触媒コンバータ1を構成する、触媒担体2、触媒コンバータ用保持材4、ケーシング3、について詳細に説明を行う。
【0033】
触媒担体2は、例えば、触媒コンバータ1が自動車の排気ガスの浄化用として用いられる場合、排気ガス中に含まれる未燃焼炭化水素(HC)や、窒素酸化物(NOx)等を浄化するための触媒を担持する。そして、触媒担体2は、例えば、セラミックス製で肉薄のハニカム構造体を有するものであることとしてもよい。
【0034】
次に、触媒コンバータ用保持材4について説明を行う。触媒コンバータ用保持材4は、触媒担体2とケーシング3との間から排気ガス40Aの漏洩を防止、外部からの振動から触媒担体2の保護等をするために用いられるものである。
【0035】
図4Aは、本実施形態に係る触媒コンバータ1に用いられる触媒コンバータ用保持材4の平面図である。図4Bは、本実施形態に係る触媒コンバータ1に用いられる触媒コンバータ用保持材4の側面図である。
【0036】
図4A、4Bに示すように触媒コンバータ用保持材4は、平板状の触媒コンバータ用保持材4の一端に凸部41と、他端に凸部41と嵌合可能な形状の嵌合部42と、が形成された形状とすることとしてもよい。また、凸部41及び嵌合部42の形状は、図示される矩形の他に、三角形や半円形状であってもよい。また、凸部41及び嵌合部42の個数も1個には限定されず、2個以上であってもよい。
【0037】
触媒コンバータ用保持材4は、触媒担体2とケーシング3との間から排気ガス40Aの漏洩を防止するために、所定の密度を有することが好ましい。例えば、触媒コンバータ用保持材4の密度は、0.10〜0.65g/cm3とすることとしてもよい。そして、筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間に備えられる触媒コンバータ用保持材4の密度と、筒部3Aにおける凹部5が備えられていない部分30と触媒担体2との間に備えられる触媒コンバータ用保持材4の密度と、は異なるものであることとしてもよい。筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間に備えられる触媒コンバータ用保持材4の密度と、筒部3Aにおける凹部5が備えられていない部分30と触媒担体2との間に備えられる触媒コンバータ用保持材4の密度と、については後に詳細に説明を行う。また、触媒コンバータ用保持材4は、厚さが一定であることが好ましく、具体的には±25%以内とすることが好ましい。
【0038】
また、触媒コンバータ用保持材4は、触媒担体2とケーシング3との間から排気ガス40Aの漏洩を防止するために、触媒担体2からの放熱によって形状変化を生じないような耐熱性を有することが好ましい。触媒コンバータ用保持材4は、触媒担体2から放出される500℃に達する熱に曝されるため、触媒コンバータ用保持材4は、耐熱温度が500℃以上の材料によって構成されることが好ましい。
【0039】
例えば、触媒コンバータ用保持材4は、無機繊維によって構成されることとしてもよい。また、触媒コンバータ用保持材4は、セラミックス繊維によって構成されることとしてもよい。また、触媒コンバータ用保持材4は、アルミナ系繊維によって構成されることとしてもよい。また、触媒コンバータ用保持材4は、シリカ系繊維によって構成されることとしてもよい。また、アルミナ系繊維は、アルミナ繊維、ムライト繊維、シリカ−アルミナ繊維からなる群から選択される一または二以上の繊維によって構成されることとしてもよい。また、触媒コンバータ用保持材4は、アルミナ繊維によって構成されることとしてもよい。
【0040】
図5は触媒コンバータ用保持材4が触媒担体2の外周面に巻かれて備えられている状態を示す説明図である。図5に示されるように、触媒コンバータ用保持材4は、触媒コンバータ用保持材4の凸部41と、嵌合部42とが嵌合し、触媒担体2の外周面に巻かれて備えられている。
【0041】
図5にて示されるように、触媒コンバータ用保持材4の一つの面の全部は、触媒担体2の外側面と接していることとしてもよい。触媒コンバータ用保持材4の一つの面(例えば、図4Bにおける符号43にて示される面43)の全部が、触媒担体2の外側面と接していないとすると、触媒コンバータ用保持材4と触媒担体2との間隙には空気の層ができることとなる。当該空気の層は、触媒担体2から放出される熱を対流させ、触媒コンバータ用保持材4はより高い温度に曝されることとなる。結果、触媒コンバータ1全体の温度は上昇することとなる。
【0042】
次に、ケーシング3について説明を行う。ケーシング3は、例えば、ステンレス鋼(SUS)等の金属製のものであることとしてもよい。以下の説明においてケーシング3は金属製のものであるとして説明を行う。
【0043】
図6は、ケーシング3の筒部3Aに、触媒コンバータ用保持材4が巻かれた触媒担体2を収容する様子を示す説明図である。なお、図6は、ケーシング3の表面に備えられている凹部5を省略して記載されている。ここで、触媒コンバータ用保持材4の、触媒担体2と接する側と反対側の他の面(例えば、図4Bにおける符号44にて示される面44)の全部は、ケーシング3の筒部3Aの内側面と接していることとしてもよい。
【0044】
触媒コンバータ用保持材4の他の面44の全部が、筒部3Aの内側面と接していないとすると、触媒コンバータ用保持材4と筒部3Aとの間隙には空気の層ができることとなる。当該空気の層は、触媒コンバータ用保持材4から放出される熱を対流させ、筒部3Aはより高い温度に曝されることとなる。結果、触媒コンバータ1全体の温度は上昇することとなる。
【0045】
また、図6にて示されるように、ケーシング3は、触媒担体2を収容する筒部3Aと、排気ガスの供給、排気を行う管と接続されるフランジ部3Bと、筒部3Aとフランジ部3Bとを滑らかに繋ぐテーパー部3Cと、を含んで構成されている。
【0046】
ケーシング3の形状は、所定の方法によって形成される。例えば、予め金属製の円筒を用意し、円筒に、予め触媒担体2に触媒コンバータ用保持材4を巻き付けたものを、治具等を用いてケーシング3の筒部3Aに挿入し、その後金属製の円筒の両端部を絞り加工等を行うことによってテーパー部3Cを形成し、さらにフランジ部3Bを形成することとしてもよい。そして筒部3Aの表面に所定の凹部5を形成することによってケーシング3が形成される。
【0047】
あるいは、ケーシング3をその長手方向に沿って2分割した構成(2つのシェルに分割した構成)とすることができる。上記シェルは、予めテーパー部3C、フランジ部3Bの一部、および凹部5が形成されたものとする。一方のシェル内の所定箇所に触媒コンバータ用保持材4が予め巻かれた触媒担体2を設置した後、他方のシェルを一方のシェルと重ねて溶接することによってケーシング3が形成される。なお、上述の溶接はボルト等を用いて固定する方法に代替可能である。
【0048】
次に、ケーシング3の筒部3Aに備えられる凹部5について、以下に詳細に説明を行う。図1にて示されるように、凹部5は、筒部3Aに複数備えられることが好ましい。そして、複数の凹部5のそれぞれは離間して、筒部3Aに不連続に備えることが好ましい。
【0049】
筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4の一部は、筒部3Aにおける凹部5が備えられていない部分30と触媒担体2との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4の他の部分よりも、圧縮されて密度が高い状態で備えられる。
【0050】
密度が高い触媒コンバータ用保持材4の熱伝導率は、密度が低いものと比較して、高いものとなる。したがって筒部3Aにおいて凹部5が備えられた部分31は、凹部5が備えられていない部分30よりも、温度が高い状態となる。さらに、凹部5が備えられた部分31は、熱源である触媒担体2との距離が近くなるので、触媒担体2から放出される熱の影響を、凹部5が備えられていない部分30よりも受けやすい状態となる。
【0051】
ここで、筒部3Aの外側面32において複数の凹部5のそれぞれが離間して、不連続に配置されることによって、凹部5が備えられた部分31(温度の高い部分)は、凹部5が備えられていない部分30(温度が低い部分)に囲まれて配置されることになる。結果、ケーシング3の筒部3Aの表面温度は、凹部5が備えられていない部分30(温度が低い部分)の温度と略同等の温度となり、触媒コンバータ1の周辺に置かれた機器11に対する触媒コンバータ1から放出される熱による影響を抑制することとなる。
【0052】
また、図1に示されるように、複数の凹部5は、それぞれがケーシング3の筒部3Aに点在して備えられていることとしてもよい。このように凹部5を備えることによって、触媒コンバータ1の周辺に置かれた機器11等に対する触媒コンバータ1から放出される熱による影響を抑制する効果をさらに高めることとなる。
【0053】
また、筒部3Aの外側面32における、凹部5の開口面積の総和は、凹部5が備えられていない部分30の面積の1/3倍以上、3倍以下であることが好ましい。ここでいう開口面積とは、凹部5の開口部51の面積をいう。すなわち、開口面積は、図1にて示される触媒コンバータ1の平面図において、矩形に囲まれて記載されている部分の面積をいう。
【0054】
開口面積が大きいことは、筒部3Aの外側面32において、触媒コンバータ1の周辺に置かれる機器11から離れている面積が大きいことを意味する。すなわち、触媒コンバータ1の周辺に置かれた機器11等に対する触媒コンバータ1から放出される熱による影響を抑制することとなる。
【0055】
触媒コンバータ1の周辺に置かれた機器11等に対する触媒コンバータ1から放出される熱による影響を抑制する効果を高めるために、凹部5の開口面積の総和は、凹部5が備えられていない部分の面積の1/3倍以上、3倍以下であることが好ましく、1/2倍以上、3倍以下であることがより好ましい。さらに、凹部5の開口面積の総和と、凹部5が備えられていない部分の面積と、が同じかそれ以上であることが好ましく、さらに1.5倍以上、3倍以下であることが好ましい。
【0056】
また、複数の凹部5のそれぞれは、開口面積が小さいことが好ましい。具体的には筒部3Aの面積は1〜900mm3であることが好ましい。より好ましくは1〜600mm3であり、さらに好ましくは1〜400mm3である。複数の凹部5のそれぞれの開口面積が大きい場合、ケーシング3の表面における均熱性が悪くなるなどの弊害が考えられる。
【0057】
次に、筒部3Aに備えられる凹部5と、触媒コンバータ用保持材4と、の関係について説明を行う。本発明の実施形態に係る触媒コンバータ1に備えられる触媒コンバータ用保持材4の密度は、前述のように0.10〜0.65g/cm3とすることとしてもよい。そして、筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間に備えられる触媒コンバータ用保持材4の密度と、筒部3Aにおける凹部5が備えられていない部分30と触媒担体2との間に備えられる触媒コンバータ用保持材4の密度と、は異なるものであることとしてもよい。
【0058】
ここで、ケーシング3の筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間に備えられる触媒コンバータ用保持材4の密度は0.65g/cm3以下となるように凹部5の深さを設定する。ケーシング3の筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間に備えられる触媒コンバータ用保持材4の密度が0.65g/cm3を超えるように凹部5を深くしすぎると、担体の破損を招く可能性があるためである。
【0059】
また、ケーシング3の筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間に備えられる触媒コンバータ用保持材4の密度は0.65g/cm3以下となるように凹部5の深さを設定することが好ましく、より好ましくは0.60g/cm3以下であり、特に好ましくは0.55g/cm3以下である。
【0060】
また、ケーシング3の筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間に備えられる触媒コンバータ用保持材4の密度は0.20g/cm3を超える値となるように凹部5の深さを設定することが好ましく、より好ましくは0.25g/cm3を超える値であり、特に好ましくは0.30g/cm3を超える値である。
【0061】
また、ケーシング3の筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間に備えられる触媒コンバータ用保持材4の密度範囲は、前述した上限値及び下限値を任意に組み合わせて決定することができる。
【0062】
また、前述のように、筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4の一部は、筒部3Aにおける凹部5が備えられていない部分30と触媒担体2との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4の他の部分よりも、圧縮されて密度が高い状態で備えられる。そして、密度が高い触媒コンバータ用保持材4の熱伝導率は、密度が低いものと比較して、高いものとなる。
【0063】
したがって、触媒コンバータ用保持材4が、凹部5の備えられる位置に基づいて、密度分布を有することは、触媒コンバータ1の周辺に置かれた機器11等に対する触媒コンバータ1から放出される熱による影響を抑制する効果をさらに高めることとなる。
【0064】
たとえば、触媒コンバータ用保持材4において、筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4の一部の密度は、筒部3Aにおける凹部5が備えられていない部分30と触媒担体2との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4の他の部分の密度と比べて小さいこととしてもよい。
【0065】
具体的には、触媒コンバータ用保持材4において、筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4の一部の密度は、筒部3Aにおける凹部5が備えられていない部分30と触媒担体2との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4の他の部分の密度よりも小さいことが好ましい。
【0066】
さらに具体的には、触媒コンバータ用保持材4において、筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4の一部の密度は、筒部3Aにおける凹部5が備えられていない部分30と触媒担体2との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4の他の部分の密度の、0.3倍以上、1.0倍未満であることとしてもよく、より好ましくは、0.4倍以上、0.9倍以下であることとしてもよく、さらに好ましくは、0.5倍以上、0.8倍以下であることとしてもよい。
【0067】
あるいは、触媒コンバータ用保持材4は、筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4の一部の密度と、筒部3Aにおける凹部5が備えられていない部分30と触媒担体2との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4の他の部分の密度と、が同じとするような密度分布を有することとしてもよい。
【0068】
このように、筒部3Aにおける凹部5の備えられる位置に基づいて、触媒コンバータ用保持材4の密度を分布させることによって、触媒コンバータ1表面の温度を低下させることができるため、触媒コンバータ1の周辺に置かれた機器11等に対する触媒コンバータ1から放出される熱による影響を抑制する効果をさらに高めることとなる。
【0069】
また、触媒コンバータ用保持材4が、凹部5の深さに基づいて、密度分布を有することもまた、触媒コンバータ1の周辺に置かれた機器11等に対する触媒コンバータ1から放出される熱による影響を抑制する効果をさらに高めることとなる。
【0070】
この場合も、触媒コンバータ用保持材4は、筒部3Aにおける凹部5が備えられた部分31と触媒担体2との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4の一部の密度と、筒部3Aにおける凹部5が備えられていない部分30と触媒担体2との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材4の他の部分の密度と、が同じとするような密度分布を有することとしてもよい。
【0071】
図13は、本発明の実施形態に係る触媒コンバータ1の筒部3Aの表面積比と表面温度との関係を示す図である。具体的には、図13は、触媒コンバータ1を流通させる排気ガス温度を700℃(もしくは850℃)、触媒コンバータ1の外気温度30℃、触媒コンバータ1の筒部3Aの外径165mm、触媒コンバータ1の筒部3Aの内径160mm、触媒担体2の外径150mm、触媒コンバータ用保持材4(アルミナ繊維によって構成)の密度(凹部5が備えられていない部分の密度)0.3g/cm3、凹部5は筒部3Aに図1にて示されるようにそれぞれが離間して不連続に点在して備えられ、凹部5のそれぞれの開口面積は25mm2、の条件における、本発明の実施形態に係る触媒コンバータ1の表面積と表面温度との関係を示すシミュレーション結果である。
【0072】
筒部に凹部5が備えられていない場合(図13における筒部の表面積比(倍)が1.0の場合)の触媒コンバータ1の筒部3Aの表面温度は450℃(触媒コンバータ1を流通させる排気ガス温度が850℃の場合:図13における■)、370℃(触媒コンバータ1を流通させる排気ガス温度が700℃の場合:図13における◆)であった。図13には、触媒コンバータ1の筒部3Aの表面積が増加するに従い、触媒コンバータ1の筒部3Aの表面温度は減少することが示されている。
【0073】
触媒コンバータ1の筒部3Aにおいて、凹部5を備える筒部3Aの外側面32の表面積が、凹部5を備えない場合における筒部3Aの外側面32の表面積と比較して3.0倍の場合における触媒コンバータ1の筒部3Aの表面温度は、365℃(触媒コンバータ1を流通させる排気ガス温度が850℃の場合:図13における■)、305℃(触媒コンバータ1を流通させる排気ガス温度が700℃の場合:図13における◆)であり100℃近く減少した。また凹部5を備える筒部3Aの外側面32の表面積が、凹部5を備えない場合における筒部3Aの外側面32の表面積と比較して1.5倍であっても、触媒コンバータ1の筒部3Aの表面温度が20℃近くも減少することがわかる。
【0074】
図7は、本発明の実施形態に係る触媒コンバータ1の他の一例の平面図である。図8Aは、図7における線8A−8Aにおける断面を示す断面図である。図8Bは、図7における線8B−8Bにおける断面を示す断面図である。本実施形態に係る触媒コンバータ1に備えられた触媒担体2と触媒コンバータ用保持材4は、図1にて示された実施形態に係る触媒コンバータ1のものと同様のものである。
【0075】
本実施形態に係る触媒コンバータ1のケーシング3には、図7にて示されるように、触媒担体2の軸方向に沿ってケーシング3の筒部3Aの一端から他端まで連続して凹部5が備えられている。このように凹部5を筒部3Aに備えることによって、触媒担体2に排気ガスが導入される入口から、排出される出口にわたって全ての領域で放熱をすることができる。
【0076】
また、図7にて示される触媒コンバータ1は、触媒担体2に触媒コンバータ用保持材4を予め巻き付けたものを、治具を用いて予め凹部5がプレス成型等によって施されたケーシング3の筒部3Aに挿入して製造されることとしてもよい。すなわちスタッフィング方式を経て製造を行うこととしてもよい。なお、触媒担体2に触媒コンバータ用保持材4を予め巻き付けたものを、治具を用いてケーシング3の筒部3Aに挿入し、その後凹部5を加工する製造方法によって製造されることとしてもよい。
【0077】
若しくは、ケーシング3を軸方向に二分割したクラムシェルタイプケースを用意し、それぞれのケースの表面に凹部5をプレス成型等によって形成し、その後触媒担体2に触媒コンバータ用保持材4を予め巻き付けたものを二つのケースに挟みこまれて製造することとしてもよい。すなわちクラムシェル方式を経て製造を行うこととしてもよい。
【0078】
図9は、本発明の実施形態に係る触媒コンバータ1の他の一例の平面図である。図10Aは、図9における線10A−10Aにおける断面を示す断面図である。図10Bは、図9における線10B−10Bにおける断面を示す断面図である。
【0079】
本実施形態に係る触媒コンバータ1に備えられた触媒担体2と触媒コンバータ用保持材4は、図1にて示された実施形態に係る触媒コンバータ1のものと同様のものである。このように、凹部5は筒部3Aの周方向の全部に備えられることとしてもよい。
【0080】
図11は、本発明の実施形態に係る触媒コンバータ1の他の一例の平面図である。図12Aは、図11における線12A−12Aにおける断面を示す断面図である。図12Bは、図11における線12B−12Bにおける断面を示す断面図である。
【0081】
本実施形態に係る触媒コンバータ1に備えられた触媒担体2と触媒コンバータ用保持材4は、図1にて示された実施形態に係る触媒コンバータ1のものと同様のものである。このように、凹部5は筒部3Aにらせん状に備えられることとしてもよい。なお、本実施形態に係る触媒コンバータ1に備えられた凹部5は複数存在するが、連続した一の凹部5によって備えることとしてもよい。
【0082】
また、図9、11にて示される触媒コンバータ1は、触媒担体2に触媒コンバータ用保持材4を予め巻き付けたものを、治具を用いて予め凹部5がプレス成型等によって施されたケーシング3の筒部3Aに挿入して製造されることとしてもよい。すなわちスタッフィング方式を経て製造を行うこととしてもよい。
【0083】
若しくは、ケーシング3を軸方向に二分割したクラムシェルタイプケースを用意し、それぞれのケースの表面に凹部5をプレス成型等によって形成し、その後触媒担体2に触媒コンバータ用保持材4を予め巻き付けたものを二つのケースに挟みこまれて製造することとしてもよい。すなわちクラムシェル方式を経て製造を行うこととしてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 触媒コンバータ、2 触媒担体、3 ケーシング、3A 筒部、4 触媒コンバータ用保持材、5 凹部、11 機器、20、20A 管、3B フランジ部、40A、40B 排気ガス、41 凸部、42 嵌合部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の触媒担体と、
前記触媒担体を収容する筒部を有するケーシングと、
前記触媒担体と前記筒部との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材と、を含む触媒コンバータであって、
前記筒部は、当該筒部の外側面からの放熱を促進するための1又は複数の、前記触媒担体が収容される側に窪む凹部を備え、
前記凹部を備える前記筒部の外側面の表面積は、前記凹部を備えない場合における前記筒部の外側面の表面積よりも大きい、
ことを特徴とする触媒コンバータ。
【請求項2】
前記凹部を備える前記筒部の外側面の表面積は、前記凹部を備えない場合における前記筒部の外側面の表面積と比較して1.5倍以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の触媒コンバータ。
【請求項3】
前記筒部における前記凹部が備えられた部分と前記触媒担体との間に備えられる触媒コンバータ用保持材の密度は0.65g/cm3以下である、
ことを特徴とする請求項1又は2いずれかに記載の触媒コンバータ。
【請求項4】
前記凹部は複数備えられており、
複数の前記凹部は、それぞれが離間して、前記筒部に不連続に備えられている、
ことを特徴とする請求項1乃至3いずれか一項に記載の触媒コンバータ。
【請求項5】
複数の前記凹部は、それぞれが前記筒部に点在して備えられている、
ことを特徴とする請求項4に記載の触媒コンバータ。
【請求項6】
前記凹部は、前記触媒担体の軸方向に沿って前記筒部の一端から他端まで連続して備えられている、
ことを特徴とする請求項1乃至5いずれか一項に記載の触媒コンバータ。
【請求項1】
筒状の触媒担体と、
前記触媒担体を収容する筒部を有するケーシングと、
前記触媒担体と前記筒部との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材と、を含む触媒コンバータであって、
前記筒部は、当該筒部の外側面からの放熱を促進するための1又は複数の、前記触媒担体が収容される側に窪む凹部を備え、
前記凹部を備える前記筒部の外側面の表面積は、前記凹部を備えない場合における前記筒部の外側面の表面積よりも大きい、
ことを特徴とする触媒コンバータ。
【請求項2】
前記凹部を備える前記筒部の外側面の表面積は、前記凹部を備えない場合における前記筒部の外側面の表面積と比較して1.5倍以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の触媒コンバータ。
【請求項3】
前記筒部における前記凹部が備えられた部分と前記触媒担体との間に備えられる触媒コンバータ用保持材の密度は0.65g/cm3以下である、
ことを特徴とする請求項1又は2いずれかに記載の触媒コンバータ。
【請求項4】
前記凹部は複数備えられており、
複数の前記凹部は、それぞれが離間して、前記筒部に不連続に備えられている、
ことを特徴とする請求項1乃至3いずれか一項に記載の触媒コンバータ。
【請求項5】
複数の前記凹部は、それぞれが前記筒部に点在して備えられている、
ことを特徴とする請求項4に記載の触媒コンバータ。
【請求項6】
前記凹部は、前記触媒担体の軸方向に沿って前記筒部の一端から他端まで連続して備えられている、
ことを特徴とする請求項1乃至5いずれか一項に記載の触媒コンバータ。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【公開番号】特開2012−251439(P2012−251439A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122772(P2011−122772)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】
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