説明

触媒パターン製造方法および金属パターン製造方法

【課題】本発明の目的は、吐出安定性に優れたインクを用い、基板との密着性、細線再現性及び導電性に優れた金属パターンの形成に用いる触媒パターンを製造する触媒パターン製造方法及びそれを用いた金属パターン製造方法を提供することにある。
【解決手段】無電解めっき触媒前駆体を含有するインクを用いて、基板上にパターン部を形成する形成工程と、該パターン部を還元液に浸漬して無電解めっき触媒前駆体を還元する還元工程を有する触媒パターン製造方法において、前記形成工程と還元工程の間に該パターン部の乾燥工程および酸性溶液による洗浄工程を含むことを特徴とする触媒パターン製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路、電極などに用いられる触媒パターン及び金属パターンを製造する製造方法に関し、特に、インクジェット方式を用いた触媒パターン及び金属パターンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回路などに用いられる金属パターンの形成は、従来、レジスト材料を用いた方法により行われてきた。すなわち、金属箔層上にレジスト材料を塗布または貼り付けてレジスト層を形成し、所望のパターンで光露光する。その後、現像により不要なレジストを除去し、さらにむき出しとなった金属箔をエッチングにより除去した後、最後に残存するレジスト部分を剥離することで金属パターンを形成していた。しかしながら、この方法では工程が多岐にわたること、また金属箔を除去することなど、原材料使用効率の点からも無駄が多く、新たな金属パターンの形成方法が要求されていた。
【0003】
上記課題に対し、平均粒径が100nm以下の金属ナノ粒子を含有するインクを用い、スクリーン印刷やインクジェット印刷などにより金属パターンを直接描画する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載の金属パターン形成方法は、金属ナノ粒子の粒径をナノオーダーまで小さくすることで融点が低下する現象を活用し、金属ナノ粒子を含有するインクをパターンニングした後、200〜300℃程度の温度で焼成して回路を形成する方法である。この方法では、工数の低減、原材料使用効率向上などの利点はあるものの、焼成後の金属パターンの電気抵抗を下げるためには、後処理の温度や条件に厳しい制約がある、という問題を有していた。
【0005】
一方、金属を穏和な条件で生成析出させる手段として、無電解めっき技術を活用して金属パターンを形成する方法も提案されている。例えば、絶縁基板上に、無電解めっきの触媒となる可溶性のパラジウム塩とアルコール系の溶剤を含むインクをインクジェット方式により記録し、導電性金属パターンを形成する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。この方法では、高温の焼成工程は不要となるメリットがあるが、記録後に基板上で液寄りを生じ、所望のパターンと同じ形状に金属パターンを形成することができないという問題を有していた。
【0006】
さらに、金属を穏和な条件で生成析出させる手段として、アルカリ処理したポリイミドにパラジウム系活性化インクをインクジェット方式により記録し、還元処理、無電解めっきにより、銅皮膜を形成する方法も提案されている(例えば、非特許文献1参照)。この方法では、インク受容層を持たない基板であるポリイミドに対して、インクジェット方式で金属パターンを形成することができており、前記焼成工程などの問題が解消されている。しかしながら、形成される金属パターンの細線再現性や、基板と金属パターンとの密着性が良くないという課題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−299833号公報
【特許文献2】特開平7−131135号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】第21回エレクトロニクス実装学会講演大会論文集 P105
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、吐出安定性に優れたインクを用い、基板との密着性、細線再現性及び導電性に優れた金属パターンの形成に用いる触媒パターンを製造する触媒パターン製造方法及びそれを用いた金属パターン製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0011】
1.無電解めっき触媒前駆体を含有するインクを用いて、基板上にパターン部を形成する形成工程と、該パターン部を還元液に浸漬して無電解めっき触媒前駆体を還元する還元工程とを有する触媒パターン製造方法において、該形成工程と還元工程の間に、該パターン部の乾燥工程および酸性溶液による洗浄工程を含むことを特徴とする触媒パターン製造方法。
【0012】
2.前記無電解めっき触媒前駆体が、パラジウム金属塩であることを特徴とする前記1に記載の触媒パターン製造方法。
【0013】
3.前記インクが、前記パラジウム金属塩と錯体形成可能な化合物を含有することを特徴とする前記2に記載の触媒パターン製造方法。
【0014】
4.前記インクのpH値が、12.5以上、14.0以下であることを特徴とする前記1から3のいずれか1項に記載の触媒パターン製造方法。
【0015】
5.前記洗浄工程における酸性溶液のpH値が、1.0以上、5.0以下であることを特徴とする前記1から4のいずれか1項に記載の触媒パターン製造方法。
【0016】
6.前記基板は、その表面が非インク吸収性の樹脂で構成されていることを特徴とする前記1から5のいずれか1項に記載の触媒パターン製造方法。
【0017】
7.前記パターン部を、インクジェット方式で形成することを特徴とする前記1から6のいずれか1項に記載の触媒パターン製造方法。
【0018】
8.前記1から7のいずれか1項に記載の触媒パターン製造方法により製造された触媒パターン部上に、無電解めっき処理によって金属パターンを形成する無電解めっき処理工程を有することを特徴とする金属パターン製造方法。
【0019】
9.前記無電解めっき処理工程の後に、電気めっき処理工程を有することを特徴とする前記8に記載の金属パターン製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、吐出安定性に優れたインクを用い、基板との密着性、細線再現性及び導電性に優れた金属パターンの形成に用いる触媒パターンを製造する触媒パターン製造方法及びそれを用いた金属パターン製造方法を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0022】
本発明の触媒パターン製造方法は、無電解めっき触媒前駆体を含有するインクを用いて、基板上にパターン部を形成する形成工程と、該パターン部を還元液に浸漬して無電解めっき触媒前駆体を還元する還元工程とを有する触媒パターン製造方法において、該形成工程と還元工程の間に、形成したパターン部の乾燥工程および酸性溶液による洗浄工程を含むことを特徴とする。
【0023】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、本発明を完成し、その発明により、吐出安定性に優れたインクを用い、基板とその表面上に形成される金属パターンとの密着性、細線再現性、導電性及び吐出性が向上するという効果が得られた。
【0024】
本発明を用いることにより、密着性、細線再現性及び導電性が解決できるその詳細な理由に関しては、以下のように推測している。
【0025】
無電解めっき触媒前駆体としてパラジウム金属錯体を用い、インクを高アルカリ性にすると、パラジウム金属錯体がインク中で安定化し、インクジェット出射性が良好となることが明らかとなっている。
【0026】
しかしながら、パラジウム金属塩を水に溶解させた場合、カウンターアニオンが強酸性を示し、またパラジウム金属塩を可溶化させる際に塩酸などの強酸が必要であるため、このあとインクをアルカリ性にするためには多量の強塩基性化合物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を添加する必要がある。そのため、副生成物として、インク中に酸とアルカリで形成される中和塩が多量に含有される。
【0027】
これらの中和塩はインク中では可溶化しており、簡単に析出するものではないが、インクジェットによりパターン部を形成した後、溶媒が揮発すると固形物としてパターン部上に残存する。
【0028】
そのため、無電解めっき工程では、これらの固形物が金属と基板の界面に残った状態で金属膜が形成されることになり、この結果、金属パターンの密着性が阻害されていることを本発明者らは見出した。また、残留する固形物は吸湿性の塩であることから、触媒前駆体を再度溶解させてしまうため、細線再現性に劣ることを本発明者らは見出した。これらを解決する手段として、パターン部を形成した後、パターン部を十分に乾燥させ、残留する固形物を除去する必要がある。
【0029】
また、固形残留物を除去する工程において、パターン部上に残留した強塩基を中和および除去するため、洗浄に用いる溶液のpH値を酸性にする必要がある。中性あるいはアルカリ性の溶液で洗浄した場合、残留する強塩基の溶解によって、パターン部周囲は高pH側にシフトし、ポリイミドなどの樹脂基材を改質(加水分解)してしまう。そのため、パターン部と同様にパラジウム金属錯体が吸着しやすい状態になり、パターン部以外にも金属パターンが生成することによって、細線再現性の劣化を招くことになる。そこで、洗浄液を酸性にすることにより、パラジウム金属錯体はアルカリにおける溶解性が高いため、可溶性塩の洗浄時でのパラジウム金属錯体の再溶解を抑制することが可能となる。また、パラジウム金属錯体の再溶解を抑制することで、パターン部周囲にパラジウム金属錯体が再付着することがなく、パターン部以外に金属パターンが生成し細線再現性が劣ることを抑制することができた。
【0030】
以上の効果により、本発明の金属パターン製造方法により形成される金属パターンは、良好な細線再現性及び導電性と密着性を実現することができたものと考えられる。
【0031】
以下、本発明に係るインクの構成、本発明の触媒パターン製造方法および金属パターン製造方法の各構成要件の詳細について説明する。
【0032】
《インク》
〔無電解めっき触媒前駆体〕
本発明に係るインクは、無電解めっき触媒前駆体を含有することを特徴とする。本発明に係る無電解めっき触媒前駆体とは、後述する無電解めっき処理が行われるためのトリガーとなり得るものであり、パラジウム金属塩であることが好ましい。
【0033】
パラジウム金属塩としては、例えば、フッ化パラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、酢酸パラジウム、アセト酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、水酸化パラジウム、酸化パラジウム、硫化パラジウム等が挙げられ、これらの中でも塩化パラジウムが好ましく用いられる。
【0034】
インク中での無電解めっき触媒前駆体の存在状態としては、インクジェットヘッドの目詰まり防止等や、表面改質によって基板表面に形成した官能基との静電結合形成の観点から、金属微粒子や金属塩コロイド(例えば、パラジウム−スズコロイドなど)の状態ではなく、溶解した状態であることが好ましい。
【0035】
インク中における無電解めっき触媒前駆体の含有量としては、無電解めっき処理の反応活性およびインク中での無電解めっき触媒前駆体の安定性の面から、0.01〜5.0質量%が好ましく、特に0.01〜1.0質量%が好ましい。
【0036】
〔pH〕
本発明に係るインクは、25℃におけるpH値が8.0以上であることが好ましく、さらに好ましくは、12.5以上、14.0以下である。
【0037】
インクのpH値を8.0以上とすることによって、インクが基板に着弾してから乾燥するまでの間に、基板表面の樹脂が加水分解等により改質され、基板表面の樹脂上に新たな官能基(例えば、カルボシキル基や水酸基)が形成する。そのため、その官能基とパラジウム金属塩との間に静電気力による結合が形成して、パターンニングした部分のみで密着性がより強固になる。
【0038】
pHの測定方法としては、例えば、東亜電波工業株式会社のデジタルpHメーターHM−30S等を用い、25℃におけるpH値を測定する。
【0039】
また、本発明に係るインクのpH値としては、金属パラジウム金属塩の溶解性および後述のパラジウム金属への還元性の観点からも、8.0以上であることが好ましく、さらに好ましくは12.5以上、14.0以下である。
【0040】
本発明に係るインクにおいては、アルカリ剤を加えることにより、pH値を所望の範囲に調整することができる。
【0041】
本発明に係るインクに適用可能なアルカリ剤としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の水酸化物あるいは塩などの無機アルカリ剤、テトラアルキルアンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミンなどの有機アルカリ剤が挙げられ、これらの中でも、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムが好ましく用いられる。
【0042】
〔錯体形成可能な化合物〕
本発明に係るインクでは、さらに、インク中にパラジウム金属塩と錯体形成可能な化合物(以下、錯化剤ともいう)を含有することが、インクの射出安定性の観点から好ましい。
【0043】
パラジウム金属塩と錯体形成可能な化合物としては、例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン四酢酸、ベンジルアミンなどのアミン系化合物、ピリジン、ビピリジル、フェナントロリンなどの含窒素複素環式化合物などが挙げられる。
【0044】
インク中での、パラジウム金属塩と、パラジウム金属塩と錯体形成可能な化合物との含有量の割合は、モル比として、めっき効率の面から1:0.5〜1:10の範囲が好ましい。モル比を1:0.5以上にすることで、パラジウム金属塩とパラジウム金属塩と錯体形成可能な化合物とで形成される錯体の比率が高まり、インク中でのパラジウム金属塩の溶解性や還元反応性が良好となる。
【0045】
〔インク溶媒〕
本発明に係るインクでは、溶媒を含有することができる。適用可能な溶媒としては、上記パラジウム金属塩および錯体形成可能な化合物の溶解性の観点から水性液媒体が好ましく、水性液媒体としては、水及び水溶性有機溶剤等を含有する混合溶媒が好ましく用いられる。
【0046】
水溶性有機溶剤の例としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)等が挙げられる。
【0047】
〔界面活性剤〕
本発明に係るインクでは、界面活性剤を含有することもできる。
【0048】
本発明に係るインクに界面活性剤を適用することにより、インクの表面張力、インクを吐出、着弾させる基板への濡れ性のコントロールが可能となり、インクの液寄りを抑制し、金属パターンの細線再現性をより向上するための構成成分として、必要に応じて用いることができる。
【0049】
本発明に係るインクに使用できる界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド等の活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤、シリコーン系もしくはフッ素系界面活性剤等が挙げられる。
【0050】
〔インクの粘度〕
本発明に係るインクの粘度は特に限定されないが、25℃において1mPa・s以上15mPa・s以下であることが好ましい。
【0051】
本発明に係るインクの粘度測定に用いることができる装置として、回転式、振動式や細管式の各種粘度計が挙げられ、例えば、トキメック社製の円錐平板型E型粘度計、東機産業社製のE Type Viscometer(回転粘度計)、東京計器社製のB型粘度計BL、山一電機社製のFVM−80A、Nametore工業社製のViscoliner、山一電気社製のVISCO MATE MODEL VM−1A、同DD−1等の粘度計が市販されている。
【0052】
〔インクの表面張力〕
本発明に係るインクの表面張力は、22mN/m以上35mN/m以下であることが好ましく、さらには22mN/m以上30mN/m以下であることが好ましい。表面張力を22mN/m以上とすることにより、インクの射出状態を安定化しやすくなり、35mN/m以下とすることにより、金属パターンの均一性が向上する。
【0053】
本発明でいうインクの表面張力(mN/m)は、25℃で測定した静的表面張力の値であり、その測定方法は一般的な界面化学、コロイド化学の参考書等に記載されている。例えば、新実験化学講座第18巻(界面とコロイド)、日本化学会編、丸善株式会社発行:P.68〜117を参照することができる。具体的な測定方法としては、輪環法(デュヌーイ法)、白金プレート法(ウィルヘルミー法)が挙げられるが、白金プレート法により測定することが好ましく、市販の装置としては協和界面科学製の表面張力計CBVP−Zがある。
【0054】
〔その他の各種添加剤〕
本発明に係るインクにおいては、必要に応じて、その他の従来公知の添加剤を含有することができる。例えば、蛍光増白剤、消泡剤、潤滑剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤、水溶性多価金属塩、酸、塩基、緩衝液等のpH調整剤、酸化防止剤、表面張力調整剤、非抵抗調整剤、防錆剤、無機顔料等を挙げることができる。
【0055】
《基板》
本発明に係る基板としては、その表面が樹脂で構成された基板であることが好ましく、特には、その表面が非インク吸収性の樹脂で構成されている基材であることが好ましい。
【0056】
本発明でいう非インク吸収性とは、インクと接触させた際に、溶解、膨潤することが実質的に若しくは全くないことをいう。
【0057】
基材として非インク吸収性樹脂基板、特に、樹脂フィルムを用いることにより、優れた可撓性を得ることができ、広範囲な分野への適用が可能となり、加えて非インク吸収性樹脂基板とすることにより、金属パターン形成過程における基板の伸縮が抑制されることで、高精緻な金属パターンを形成することができる。
【0058】
非インク吸収性樹脂としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合合成樹脂)、メチルメタクリル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエチレンナフタレートなどの樹脂が挙げられる。
【0059】
本発明においては、これらの中でも、ポリイミドとPETが好ましく、なかでもポリイミドがより好ましく用いられる。
【0060】
本発明に係る基板としては、他の基材上に上記のような樹脂をその表面に有する板状あるいはフィルム状の基板、上記のような樹脂から構成される板状あるいはフィルム状の基板が挙げられるが、後者が好ましく用いられる。
【0061】
本発明に係る基板は、表面にプラズマ処理、オゾン処理、紫外線照射、アルカリ処理などの表面処理を行っても良い。
【0062】
《触媒パターン製造方法》
〔パターン部の形成工程〕
本発明の触媒パターン製造方法においては、無電解めっき触媒前駆体を含有したインクが、インクジェットヘッドにより基板上へ吐出され、基板上にパターン部が形成される。
【0063】
本発明に係るパターン部とは、基板上の吐出されたインクが存在する部分をいう。吐出されるインク液滴の大きさとしては、特に制限はないが、回路配線等の場合は微細線の形成が必要となるので、50pl以下であり、好ましくは20pl以下の液滴量である。
【0064】
本発明において使用可能なインクジェットヘッドとしては、特に制限はなく、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)等のインクジェットヘッドを挙げることができる。インクジェットヘッドのコストや生産性の観点からは、電気−機械変換方式、または電気−熱変換方式のヘッドを用いることが好ましい。
【0065】
吐出させるインク液滴の大きさに制限はないが、回路配線に適用する場合は微細なパターン形成が必要となるため、15pl以下であることが好ましく、更に好ましくは4pl以下、特に好ましくは2pl以下のインク液滴量である。
【0066】
また、基板にインクを吐出し、パターン部を形成する際、インクを吐出する基板面を加熱することが好ましい。基板表面を加熱してパターン部形成を行う場合、基板上にパターン部を形成させる面の表面温度としては、好ましくは40℃以上、150℃以下である。基板を加熱する際に使用される加熱手段としては、ホットプレート、パネルヒーター等、基板を加熱することが可能なものを使用することができる。
【0067】
基板のインク着弾面を予め40℃以上に加熱することにより、インクの乾燥を促進して液寄りを抑制し、金属パターンの細線再現性を良好なものとしやすい。また、加熱温度を150℃以下とすることで、基材に対する熱のダメージを抑えると同時に、インクジェットヘッドノズル面での溶媒乾燥による目詰まりを防止することができる。
【0068】
〔乾燥工程〕
本発明の触媒パターン製造方法においては、上記説明した形成工程と後述する還元工程の間に、パターン部の乾燥工程を有することを特徴の1つとする。
【0069】
本発明に係る乾燥工程は、形成工程で基板にインクを吐出してパターン部を形成した後、基板を加熱して表面に残存する溶媒等を除去することが好ましい。
【0070】
基板を加熱して乾燥を行う場合、パターン部を形成した基板面の表面温度は、好ましくは40℃以上、150℃以下である。40℃以上に加熱することにより、パターン部の水分あるいは溶媒の乾燥を促進し、次工程におけるパターン部の再溶解を抑制することができる。また、加熱温度を150℃以下とすることで、基材に対する熱のダメージを抑えることができる。
【0071】
乾燥手段としては、送風乾燥機、ヒーター型乾燥機、それらを組み合わせた装置などが挙げられるが、速やかにパターン部を乾燥したい場合には、温風をインクにより形成されたパターン部に当てることが可能な乾燥機が好ましい。また、インクジェット記録装置に乾燥機を搭載し、インクの乾燥を促進する構成としても良い。
【0072】
乾燥は、基板全面にインクを用いてパターン部を形成した後、一括して行っても良いし、インクジェット記録装置における1回の走査ごとに乾燥を実施する方式としても良い。
【0073】
金属パターン細線再現性向上の観点からは、マイクロウェーブ方式やインターリーブ方式等により隣接するドットを間引きながらインクによるパターン部を形成させ、1回の走査ごとに乾燥を実施する方法でパターン部を形成させることが好ましい。
【0074】
また、本発明に係る乾燥工程では、低湿度で乾燥を行うことが好ましい。低湿度で乾燥を行うことで、触媒前駆体の再溶解を抑制することができるためである。湿度は、30%以下が好ましく、さらに好ましくは20%以下である。
【0075】
〔洗浄工程〕
本発明の触媒パターン製造方法においては、上記説明した形成工程と後述する還元工程の間に、パターン部の乾燥工程と共に、酸性溶液による洗浄工程を設けることを特徴の1つとする。
【0076】
本発明に係る洗浄工程においては、洗浄液として酸性溶液を用いることを特徴とするが、これは、本発明に係るインクには多量の無機塩やアルカリ化合物が含有される場合があり、酸性溶液を洗浄液として用いることにより、これらを効率良く除去することができる。なお、本発明でいう酸性溶液とは、pHが7.0未満の溶液をいう。
【0077】
本発明に適用する洗浄液を、pHとして7.0未満に調整する方法としては、水に塩酸や硝酸、硫酸、酢酸等を含有させることが好ましい。洗浄液のpH範囲としては、好ましくは1.0以上、5.0以下であり、さらに好ましくは約3.0である。
【0078】
パラジウム金属錯体がアルカリ領域で溶解性が高いことから、本発明に係る洗浄液のpH範囲を上記で規定する範囲とすることにより、無電解めっき触媒前駆体であるパラジウム金属錯体が酸性の洗浄液中に溶解し難くなり、またパターン部上に残存するアルカリ化合物の中和が良好になるからである。
【0079】
〔還元工程〕
本発明の触媒パターン製造方法においては、上記乾燥工程及び洗浄工程の後に、パターン部を還元液に浸漬して無電解めっき触媒前駆体を還元する還元工程を設けることを特徴の1つとする。
【0080】
すなわち、本発明の金属パターン製造方法に係る無電解めっき処理工程の前に、還元工程により還元処理を施すことにより、触媒前駆体中のパラジウムイオン(Pd2+)を0価のパラジウム金属(Pd)に還元することで、無電解めっき反応がより活性化される。
【0081】
本発明では、パターン部を還元液に浸漬して無電解めっき触媒前駆体中のパラジウムイオンを0価にする工程を還元工程という。一般に、還元工程で施される処理としては、酸の付与、加熱、還元剤の付与等が挙げられるが、本発明では還元剤を含む還元液に浸漬して還元処理を行うことを特徴とする。
【0082】
本発明に用いられる還元剤としては、ホウ素系化合物が好ましく、具体的には、水素化ホウ素ナトリウム、トリメチルアミンボラン、ジメチルアミンボラン(DMAB)などが好ましい。
【0083】
《金属パターン製造方法》
本発明の金属パターン製造方法では、上記説明した触媒パターン製造方法により製造された触媒パターン部上に、無電解めっき処理によって金属パターンを形成する無電解めっき処理工程を有することを特徴とし、更には、該無電解めっき処理工程に引き続いて、電気めっき処理によって金属パターンの厚みを増大させる電気めっき処理工程を設けることが好ましい。
【0084】
〔無電解めっき処理工程〕
以下、本発明に係る無電解めっき処理工程について説明する。
【0085】
本発明に係る金属パターンは、触媒パターン製造方法に係る還元工程の後、触媒パターンを形成した基板を無電解めっき液(浴)に浸漬することで得られる。
【0086】
本発明に係る無電解めっき液は、主には1)金属イオン、2)錯化剤、3)還元剤が含有される。無電解めっき処理で形成される金属としては、金、銀、銅、パラジウム、ニッケルおよびそれらの合金などが挙げられるが、導電性や安全性の観点から銀または銅が好ましく、さらに銅が好ましい。よって、無電解めっき浴に使用される金属イオンとしても、上記金属に対応した金属イオンを含有させることが好ましく、その中でも、無電解めっき浴が硫酸銅を含むことが好ましい。
【0087】
また、上記金属イオンに適した錯化剤および還元剤が選択され、無電解めっき浴に含まれる。錯化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(以下、EDTAと略記する)、ロシェル塩、D−マンニトール、D−ソルビトール、ズルシトール、イミノ二酢酸、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、などが挙げられ、EDTAが好ましい。還元剤としては、例えば、ホルムアルデヒド、テトラヒドロホウ酸カリウム、ジメチルアミンボラン、グリオキシル酸、次亜リン酸ナトリウムなどが挙げられ、ホルムアルデヒドが好ましい。
【0088】
本発明に係る無電解めっき処理工程は、めっき浴の温度、pH、浸漬時間、金属イオン濃度を制御することで、金属パターンの形成速度や膜厚を制御することができる。
【0089】
本発明において形成される金属膜厚は、0.01μmであることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
【0090】
〔電気めっき処理工程〕
本発明の金属パターン製造方法においては、金属パターンの膜厚を厚くする目的などで、上記無電解めっき処理後に、さらに電気めっき処理を施すことが好ましい。これにより、基材との密着性に優れた金属パターンをベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ金属パターンを容易に形成することができる。
【0091】
本発明の金属パターン製造方法において、電気めっき処理工程を付加することにより、金属パターンを目的に応じた厚みに形成することができ、金属パターンに対し高い導電性が要求される種々の用途に適用するのに好適である。
【0092】
電気めっき処理方法としては、従来公知の方法を用いることができる。
【0093】
なお、本発明に係る電気めっき処理工程に用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
【0094】
電気めっき処理により得られる金属パターンの膜厚については、用途に応じて異なるものであり、めっき浴中に含まれる金属濃度、浸漬時間、或いは、電流密度などを調整することでコントロールすることができる。
【0095】
なお、一般的な電気配線などに用いる場合の膜厚は、導電性の観点から、0.3μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
【実施例】
【0096】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0097】
《インクの調製》
〔インク1の調製〕
無電解めっき触媒前駆体として塩化パラジウムを0.4%、錯化剤として2−アミノピリジンを0.5%、水溶性有機溶媒として、プロピレングリコールを25%、2−ブタノールを25%、純水を残分としてインクを調整した。次いで、水酸化ナトリウムを用いて、インクのpHを14.0に調整してインク1とした。
【0098】
〔インク2の調製〕
上記インク1の調製において、水酸化ナトリウムを用いて、インクのpHを12.5に調整した以外は同様にして、インク2を調製した。
【0099】
〔インク3の調製〕
上記インク1の調製において、塩酸を用いて、インクのpHを8.0に調整した以外は同様にして、インク3を調製した。
【0100】
〔インク4の調製〕
上記インク1の調製において、錯化剤である2−アミノピリジンを除いた以外は同様にして、インク4を調製した。
【0101】
《洗浄液1〜6の調製》
純水に塩酸または水酸化ナトリウムを添加して、表1に記載のpHからなる洗浄液1〜6を調製した。
【0102】
《金属パターンの作製》
[金属パターン1の作製]
〔触媒パターンの形成〕
(形成工程)
搬送系オプションXY100(コニカミノルタIJ株式会社製)に装着したインクジェットヘッド評価装置EB100(コニカミノルタIJ株式会社製)に、インクジェットヘッドKM256AQ水系ヘッド(コニカミノルタIJ株式会社製)を取り付け、上記調製したインク1(pH14.0、錯化剤含有)が吐出できるようにした。
【0103】
ステージに、基板として厚さ75μmのポリイミドシートを取り付け、インク1を吐出して、配線幅50μm、配線間距離50μm、配線長30mmで100本の細線パターンと10mm×10mmの正方形パターン部を形成した。
【0104】
なお、ホットプレートを用いて、吐出される基板表面を60℃に加熱した後、インク1の吐出をしてパターン部を形成した。
【0105】
(乾燥工程)
上記形成工程で触媒パターンを形成した基板を、ヒーター型乾燥機を用いて、120℃で5分間の加熱を行い、乾燥処理を施した。
【0106】
(洗浄工程)
上記乾燥工程で乾燥を行った触媒パターンを形成した基板を、塩酸を用いてpHを1.0に調製した洗浄液1を用い、25℃で10分間の浸漬による洗浄処理を行った。
【0107】
(還元工程)
上記洗浄工程で洗浄を行った触媒パターンを形成した基板を純水で1分間水洗したのち、ホウ素系の還元剤を含有した下記還元液に、25℃で10分間浸漬した。この工程で、パラジウム錯体を還元してパラジウム金属を形成した。浸漬後の基板は、純水にて洗浄した。
【0108】
〈還元液〉
アルカップMRD−2−A(上村工業株式会社製) 1.8%
アルカップMRD−2−C(上村工業株式会社製) 6.0%
純水 92.2%
〔金属パターンの形成〕
(無電解めっき処理工程)
下記の組成からなる無電解銅めっき溶液を調製した。仕上がりの無電解銅めっき溶液は、銅濃度として2.5%、ホルマリン濃度が1.0%、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)濃度が2.5%である。また、水酸化ナトリウムで無電解銅めっき溶液のpHを13.0に調整した。
【0109】
〈無電解銅めっき溶液〉
メルプレートCU−5100A(メルテックス株式会社製) 6.0%
メルプレートCU−5100B(メルテックス株式会社製) 5.5%
メルプレートCU−5100C(メルテックス株式会社製) 2.0%
メルプレートCU−5100M(メルテックス株式会社製) 4.0%
純水 82.5%
50℃に保温した上記無電解銅めっき溶液に、還元工程で還元処理を施した基板を90分間浸漬し、パターン部が銅金属によりめっき化された配線幅50μm、配線間距離50μm、配線長30mmで100本の金属配線パターンと10mm×10mmの正方形金属パターンを形成した。
【0110】
(電気めっき処理工程)
下記の電解銅めっき溶液を調製し、上記無電解めっき処理工程で金属パターンを形成した基板を定電流電源に接続したのち、1.5A/dmの条件で電気めっき処理を施して、金属パターン1を作製した。
【0111】
〈電気銅めっき溶液〉
硫酸銅五水和物 60g
硫酸 190g
塩素イオン 50mg
添加剤(ST901C)(メルテックス株式会社製) 5ml
純水で、1000mlに仕上げた。
【0112】
[金属パターン2〜22の作製]
上記金属パターン1の作製において、基板の種類、インクの種類及び洗浄液の種類を、表1に記載の組み合わせに変更した以外は同様にして、金属パターン2〜22を作製した。なお、基板として、表1に略称で記載したPETは、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートである。
【0113】
《金属パターンの評価》
上記形成した金属パターンについて、下記の各評価を行った。
【0114】
〔インク吐出性の評価〕
パターン形成に使用したインクジェットヘッドと特開2002−363469号公報の図2に記載のストロボ発光方式のインク飛翔観察装置を用いて、吐出周期と発光周期を同期させ、CCDカメラによりインクの飛翔状態をモニターし、下記基準に従って、インクの吐出安定性を評価した。
【0115】
A:インク液滴は正常に射出されており、斜め出射や速度のバラつきは全く認められない
B:インク液滴の出射にやや異常が認められ、斜め出射、速度のバラつきが生じているインク液滴比率が、0%を越え、10%未満である
C:インク液滴の出射に異常が認められ、斜め出射、速度のバラつきが生じている液滴が、10%以上、20%未満である
D:インク液滴の出射に顕著な異常が認められ、斜め出射、速度のバラつきが生じている液滴が20%以上であり、出射欠のノズルも発生している
〔細線再現性の評価〕
上記形成した配線幅50μm、配線間距離50μm、配線長30mmで100本の銅配線の金属パターンを光学顕微鏡にて観察し、下記のランクに従って細線の再現性を評価した。
【0116】
A:細線の欠け(断線)、細線同士の接触がなく、かつ線形状の乱れ(細りや太り)の発生比率が5.0%未満である
B:細線の欠け(断線)、細線同士の接触がなく、かつ線形状の乱れ(細りや太り)の発生比率が5.0%以上、10%未満である
C:細線の欠け(断線)、細線同士の接触がなく、かつ線形状の乱れ(細りや太り)の発生比率が10%以上、20%未満である
D:細線の欠け(断線)、細線同士の接触が認められ、かつ線形状の乱れ(細りや太り)の発生率が20%以上である。
【0117】
〔密着性の評価〕
上記形成した10mm×10mmの金属パターンに対して、JIS C5600に記載に従って、テープ剥離試験による密着性の評価を行った。具体的には、2mm間隔の縦横25マス格子パターンの切れ込みをカッターで形成させ、格子パターンの上からセロハンテープを貼り付けた。このテープを引きはがした時に、テープ側に剥がれた切片の数を数え、下記の評価ランクに従って密着性を評価した。
【0118】
A:剥がれた金属パターンが認められない
B:剥がれた金属パターンが認められるが、発生数は5.0%未満である
C:剥がれた金属パターンが認められるが、発生数は5.0%以上、10%未満である
D:剥がれた金属パターンが認められ、発生数が10%以上である
〔導電性の評価〕
上記細線の再現性で評価した各銅配線の金属パターンに、抵抗率計ロレスタGP(株式会社ダイアインスツルメンツ製)の四探針プローブPSPを接続させて導電率を測定し、下記の評価ランクに従って導電性を評価した。
【0119】
A:導電率が5.0μΩ・cm未満である
B:導電率が5.0μΩ・cm以上、10μΩ・cm未満である
C:導電率が10μΩ・cm以上、20μΩ・cm未満である
D:導電率が20μΩ・cm以上である
尚、細線再現性、密着性、導電性および出射安定性ともに、ランクがC以上であれば、実用上良好な範囲であると評価した。以上により得られた各評価結果を、表1に示す。
【0120】
【表1】

【0121】
表1に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する製造方法に従って作製した本発明の金属パターンは、比較例に対し、密着性に優れ、かつ細線再現性、導電性に優れていることが分かる。また、金属パターンの形成に用いるインクとして、pH値を12.5以上とし、かつ錯化剤を含有させることにより、出射安定性に優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無電解めっき触媒前駆体を含有するインクを用いて、基板上にパターン部を形成する形成工程と、該パターン部を還元液に浸漬して無電解めっき触媒前駆体を還元する還元工程とを有する触媒パターン製造方法において、該形成工程と還元工程の間に、該パターン部の乾燥工程および酸性溶液による洗浄工程を含むことを特徴とする触媒パターン製造方法。
【請求項2】
前記無電解めっき触媒前駆体が、パラジウム金属塩であることを特徴とする請求項1に記載の触媒パターン製造方法。
【請求項3】
前記インクが、前記パラジウム金属塩と錯体形成可能な化合物を含有することを特徴とする請求項2に記載の触媒パターン製造方法。
【請求項4】
前記インクのpH値が、12.5以上、14.0以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の触媒パターン製造方法。
【請求項5】
前記洗浄工程における酸性溶液のpH値が、1.0以上、5.0以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の触媒パターン製造方法。
【請求項6】
前記基板は、その表面が非インク吸収性の樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の触媒パターン製造方法。
【請求項7】
前記パターン部を、インクジェット方式で形成することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の触媒パターン製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の触媒パターン製造方法により製造された触媒パターン部上に、無電解めっき処理によって金属パターンを形成する無電解めっき処理工程を有することを特徴とする金属パターン製造方法。
【請求項9】
前記無電解めっき処理工程の後に、電気めっき処理工程を有することを特徴とする請求項8に記載の金属パターン製造方法。

【公開番号】特開2011−222797(P2011−222797A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91187(P2010−91187)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(305002394)コニカミノルタIJ株式会社 (317)
【Fターム(参考)】