説明

試験装置および調整方法

【課題】試験装置を精度良く調整する。
【解決手段】被試験デバイスを試験する試験装置であって、被試験デバイスへ試験信号を供給する供給部と、供給部から出力される信号の直流電圧を測定する測定部と、供給部から予め定められた周期信号を出力させた場合における測定部に測定される周期信号電圧に基づき、立上りエッジを出力する場合の供給部の出力時間と立下りエッジを出力する場合の供給部の出力時間との時間差である出力時間差を算出する第1算出部と、を備える試験装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験装置および調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試験装置は、被試験デバイスから出力された信号の値を予め定められたタイミングにおいて取得する。そして、試験装置は、取得した値と期待値とを比較して、比較結果に基づき被試験デバイスの良否を判定する。
【0003】
ここで、試験装置は、被試験デバイスから出力された信号をコンパレータにより論理値化し、論理値化した信号の値をストローブ信号のタイミングにおいて取得する。しかし、コンパレータは、立上り応答と立下り応答とにズレがある。従って、試験装置は、試験に先立って、コンパレータの立上り応答および立下り応答のズレを、論理値の取得タイミングを調整することにより補正しなければならない。
【0004】
例えば、特許文献1には、試験装置内のドライバから出力する信号の立上りエッジのタイミングおよび立下りエッジのタイミングを一致させるように、ドライバの出力タイミングを予め調整しておく技術が記載されている。そして、特許文献1には、調整済みのドライバから出力された信号をコンパレータに直接与えて、コンパレータが論理値化した信号の立上りエッジの取得タイミングと立下りエッジの取得タイミングとを一致させるように、論理値の取得タイミングを調整する技術が記載されている。
【0005】
特許文献1 国際公開第2010/086971号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、安価な試験装置は、ドライバの出力タイミングを調整する機構を備えていない。従って、このような試験装置は、コンパレータが論理値化した信号の立上りエッジの取得タイミングと立下りエッジの取得タイミングとを精度良く一致させることができない。従って、このような試験装置は、精度良く試験をすることが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、被試験デバイスを試験する試験装置であって、前記被試験デバイスへ試験信号を供給する供給部と、前記供給部から出力される信号の直流電圧を測定する測定部と、前記供給部から予め定められた周期信号を出力させた場合における前記測定部に測定される周期信号電圧に基づき、立上りエッジを出力する場合の前記供給部の出力時間と立下りエッジを出力する場合の前記供給部の出力時間との時間差である出力時間差を算出する第1算出部と、を備える試験装置、および、調整方法を提供する。
【0008】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る試験装置10の構成を示す。
【図2】本実施形態に係る供給部16の構成の一例を示す。
【図3】本実施形態に係る取得部18の構成の一例を示す。
【図4】本実施形態に係る測定部22の構成の一例を示す。
【図5】本実施形態に係る試験装置10のキャリブレーションにおける処理フローを示す。
【図6】本実施形態に係る取得部18のドライバ58から出力される立上りエッジを含む信号の波形、および、ドライバ58から出力される立下りエッジを含む信号の波形の一例を示す。
【図7】本実施形態に係る供給部16のH側コンパレータ62に入力される立上りエッジを含む信号の波形およびH側コンパレータ62から出力される信号の波形、並びに、供給部16のL側コンパレータ64に入力される立下りエッジを含む信号の波形およびH側フリップフロップ66から出力される信号の波形の一例を示す。
【図8】図5のステップS11におけるキャリブレーション部34の詳細な処理フローを示す。
【図9】図8のステップS21での第1リレー24および第2リレー26の接続状態を示す。
【図10】図8のステップS24において出力されるべき理想的な周期信号の波形の一例を示す。
【図11】図8のステップS24において出力される実際の周期信号の波形の一例を示す。
【図12】複数の差電圧のそれぞれと対応する出力時間差とを予め登録したテーブルの一例を示す。
【図13】図5のステップS12におけるキャリブレーション部34の詳細な処理フローを示す。
【図14】図8のステップS31での第1リレー24および第2リレー26の接続状態を示す。
【図15】図5のステップS13における調整部42による調整処理の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
図1は、本実施形態に係る試験装置10の構成を示す。試験装置10は、半導体装置等の被試験デバイス(DUT)を試験する。
【0012】
試験装置10は、パターン発生部12と、タイミング発生部14と、供給部16と、取得部18と、判定部20と、測定部22と、第1リレー24と、第2リレー26と、制御装置30とを備える。
【0013】
パターン発生部12は、試験信号の波形を指定する試験パターンおよび被試験デバイスから出力されるべき応答信号の期待値のパターンを出力する。タイミング発生部14は、試験信号のエッジタイミングを示すタイミング信号および応答信号の値の取得タイミングを示すストローブ信号を出力する。
【0014】
供給部16は、タイミング信号および試験パターンを受け取って試験パターンにより指定される波形の試験信号を生成し、生成した試験信号をピン28を介して被試験デバイスへ供給する。取得部18は、被試験デバイスから出力された応答信号をピン28を介して受け取って、受け取った応答信号の値をストローブ信号のタイミングにおいて取得する。なお、供給部16の信号出力端と取得部18の信号入力端は、信号線により接続されている。判定部20は、取得部18により取得された応答信号の値とパターン発生部12から発生された期待値とが一致するか否かを判定する。
【0015】
測定部22は、供給部16から出力される信号の直流電圧を測定する。第1リレー24は、被試験デバイスへ接続されるピン28と供給部16の信号出力端との間を接続または切断する。より詳しくは、供給部16と取得部18との間を接続する信号線とピン28との間を接続または切断する。第2リレー26は、供給部16の信号出力端と測定部22との間を接続または切断する。より詳しくは、第2リレー26は、ピン28と第1リレー24との間を接続する信号線と測定部22との間を接続または切断する。
【0016】
制御装置30は、当該試験装置10の全体の制御をする。制御装置30は、コンピュータにより実現される。制御装置30は、試験制御部32と、キャリブレーション部34とを有する。
【0017】
試験制御部32は、試験時において、当該試験装置10の各部を制御する。試験制御部32は、コンピュータが試験プログラムを実行することにより実現される機能ブロックである。
【0018】
キャリブレーション部34は、試験に先立って、当該試験装置10のキャリブレーションを実行する。キャリブレーション部34は、コンピュータがキャリブレーション用プログラムを実行することにより実現される。
【0019】
キャリブレーション部34は、キャリブレーション制御部36と、第1算出部38と、第2算出部40と、調整部42とを含む。キャリブレーション制御部36、第1算出部38、第2算出部40および調整部42のそれぞれは、コンピュータがキャリブレーション用プログラムを実行することにより実現される機能ブロックである。
【0020】
キャリブレーション制御部36は、キャリブレーション時において、当該試験装置10の各部を制御する。第1算出部38は、立上りエッジを出力する場合の供給部16の出力時間と立下りエッジを出力する場合の供給部16の出力時間との時間差である出力時間差を算出する。
【0021】
第2算出部40は、立上りエッジを取得する場合の取得部18の取得時間と立下りエッジを取得する場合の取得部18の取得時間の時間差である取得時間差を算出する。調整部42は、立上りエッジを取得する場合の取得時間および立下りエッジを取得する場合の取得時間を一致させるように、第2算出部40により算出された取得時間差に基づき取得部18を調整する。
【0022】
このような試験装置10は、試験時において、被試験デバイスに試験信号を供給する。そして、試験装置10は、試験時において、試験信号が供給されたことに応じて被試験デバイスから出力される応答信号の値を取得し、取得した応答信号の値と期待値とを比較して被試験デバイスの良否を判定する。これにより、試験装置10は、被試験デバイスを試験することができる。
【0023】
また、試験装置10は、試験に先立って、キャリブレーションを実行する。試験装置10は、キャリブレーションにおいて、立上りエッジを含む信号を取得する場合の取得部18の取得時間と、立下りエッジを含む信号を取得する場合の取得部18の取得時間とのずれを無くすように、取得部18における信号の取得タイミングを調整する。これにより、試験装置10は、試験装置10から出力された応答信号の値を精度良く取得することができる。
【0024】
図2は、本実施形態に係る供給部16の構成の一例を示す。本例に係る供給部16は、立上り遅延部52と、立下り遅延部54と、SRフリップフロップ56と、ドライバ58とを有する。
【0025】
立上り遅延部52は、試験信号の立上りエッジのタイミングを指定する立上り用パターンをパターン発生部12から受け取る。より詳しくは、立上り遅延部52は、基準タイミングから立上りエッジまでの遅延量を指定する立上り用パターンをパターン発生部12から受け取る。また、立上り遅延部52は、基準タイミングを示すパルス波のタイミング信号をタイミング発生部14から受け取る。そして、立上り遅延部52は、立上り用タイミング信号を、立上り用パターンにより指定された時間分遅延する。これにより、立上り遅延部52は、試験パターンにより指定された立上りエッジのタイミングにおいて、パルス波のタイミング信号を出力することができる。
【0026】
立下り遅延部54は、試験信号の立下りエッジのタイミングを指定する立下り用パターンをパターン発生部12から受け取る。より詳しくは、立下り遅延部54は、基準タイミングから立下りエッジまでの遅延量を指定する立下り用パターンをパターン発生部12から受け取る。また、立下り遅延部54は、基準タイミングを示すパルス波のタイミング信号をタイミング発生部14から受け取る。そして、立下り遅延部54は、立下り用タイミング信号を、立下り用パターンにより指定された時間分遅延する。これにより、立下り遅延部54は、試験パターンにより指定された立下りエッジのタイミングにおいて、パルス波のタイミング信号を出力することができる。
【0027】
SRフリップフロップ56は、立上り遅延部52から出力されたタイミング信号をセット端子に入力し、立下り遅延部54から出力されたタイミング信号をリセット端子に入力する。これにより、SRフリップフロップ56は、立上り遅延部52から出力されたタイミング信号のタイミングにおいて立ち上がり、立下り遅延部54から出力されたタイミング信号のタイミングにおいて立ち下がる試験信号を出力することができる。
【0028】
ドライバ58は、SRフリップフロップ56から出力された試験信号を被試験デバイス(DUT)へと供給する。このような供給部16は、試験パターンにより指定されたタイミングにおいて試験パターンにより指定される波形の試験信号を、被試験デバイスへ供給することができる。
【0029】
図3は、本実施形態に係る取得部18の構成の一例を示す。本例に係る取得部18は、H側コンパレータ62と、L側コンパレータ64と、H側フリップフロップ66と、L側フリップフロップ68と、論理比較部70と、H側微小遅延素子72と、L側微小遅延素子74とを有する。
【0030】
H側コンパレータ62は、被試験デバイスから出力された応答信号を受け取り、応答信号のレベルがH論理レベルであるか否かを示す論理信号を出力する。H側コンパレータ62は、一例として、応答信号のレベルと設定されたH側閾レベルVOHとを比較する。そして、H側コンパレータ62は、一例として、応答信号のレベルが設定されたH側閾レベルVOHより大きい場合にはL論理となり、応答信号のレベルがH側閾レベルVOHより大きくない場合にはH論理となる論理信号を出力する。
【0031】
L側コンパレータ64は、被試験デバイスから出力された応答信号を受け取り、応答信号のレベルがL論理レベルであるか否かを示す論理信号を出力する。L側コンパレータ64は、一例として、応答信号のレベルと設定されたL側閾レベルVOLとを比較する。そして、L側コンパレータ64は、一例として、応答信号のレベルがL側閾レベルVOLより小さい場合にはL論理となり、応答信号のレベルがL側閾レベルVOLより小さくない場合にはH論理となる論理信号を出力する。
【0032】
H側フリップフロップ66は、応答信号のH論理の値を取り込むタイミングを示すH論理用ストローブ信号をタイミング発生部14から受け取る。H側フリップフロップ66は、H側コンパレータ62から出力された論理信号の値を、H論理用ストローブ信号のタイミングにおいて取り込んで内部に格納する。これにより、H側フリップフロップ66は、応答信号がH論理であるか否かを示す値をタイミング発生部14により指定されたタイミングにおいて取り込むことができる。
【0033】
L側フリップフロップ68は、応答信号のL論理の値を取り込むタイミングを示すL論理用ストローブ信号をタイミング発生部14から受け取る。L側フリップフロップ68は、H側コンパレータ62から出力された論理信号の値を、L論理用ストローブ信号のタイミングにおいて取り込んで内部に格納する。これにより、L側フリップフロップ68は、応答信号がL論理であるか否かを示す値をタイミング発生部14により指定されたタイミングにおいて取り込むことができる。
【0034】
論理比較部70は、H側フリップフロップ66およびL側フリップフロップ68に取り込まれた値に基づき、応答信号の値を判断する。論理比較部70は、一例として、応答信号の値がH論理であるか、L論理であるか、または、不確定な値であるかを判断する。そして、論理比較部70は、判断結果を応答信号の値として、判定部20に出力する。
【0035】
H側微小遅延素子72は、タイミング発生部14から出力されたH論理用ストローブ信号をH側フリップフロップ66へと伝搬する経路中に設けられる。そして、H側微小遅延素子72は、H側フリップフロップ66へと与えられるH論理用ストローブ信号を予め設定された遅延量により遅延する。H側微小遅延素子72は、キャリブレーションにおいて、遅延量が調整部42により調整される。
【0036】
L側微小遅延素子74は、タイミング発生部14から出力されたL論理用ストローブ信号をL側フリップフロップ68へと伝搬する経路中に設けられる。そして、L側微小遅延素子74は、L側フリップフロップ68へと与えられるL論理用ストローブ信号を予め設定された遅延量により遅延する。L側微小遅延素子74は、キャリブレーションにおいて、遅延量が調整部42により調整される。
【0037】
このような取得部18は、被試験デバイスから出力された応答信号の論理値を、調整部42により指定されるタイミングにおいて取得することができる。さらに、取得部18は、応答信号のH論理を取得するタイミング、および、応答信号のL論理を取得するタイミングをそれぞれ別個に調整することができる。
【0038】
図4は、本実施形態に係る測定部22の構成の一例を示す。本例に係る測定部22は、フィルタ部82と、AD変換部84とを有する。
【0039】
フィルタ部82は、供給部16から出力される信号をローパスフィルタリングする。これにより、フィルタ部82は、供給部16から周期信号が出力された場合において、周期信号の平均値を表す直流成分を出力することができる。
【0040】
AD変換部84は、フィルタ部82によりフィルタリングされた信号をAD変換する。これにより、AD変換部84は、供給部16から周期信号が出力された場合において、周期信号の直流成分を表すデジタル値を測定結果として出力することができる。
【0041】
図5は、本実施形態に係るキャリブレーション部34の処理フローを示す。図6は、本実施形態に係る取得部18のドライバ58から出力される立上りエッジを含む信号の波形、および、ドライバ58から出力される立下りエッジを含む信号の波形の一例を示す。図7は、本実施形態に係る供給部16のH側コンパレータ62に入力される立上りエッジを含む信号の波形およびH側コンパレータ62から出力される信号の波形、並びに、供給部16のL側コンパレータ64に入力される立下りエッジを含む信号の波形およびH側フリップフロップ66から出力される信号の波形の一例を示す。
【0042】
キャリブレーション部34は、ステップS11からステップS13の処理を実行する。まず、キャリブレーション部34は、ステップS11において、立上りエッジを出力する場合の供給部16の出力時間と立下りエッジを出力する場合の供給部16の出力時間との時間差である出力時間差を測定する。より具体的には、出力時間差とは、図6に示されるように、予め定められたタイミングにおいて立ち上がる波形の信号を出力させた場合における、実際に供給部16から出力される信号の立上りエッジの時刻(t)と、同一タイミングにおいて立ち下がる波形の信号を出力させた場合における、実際に供給部16から出力される信号の立下りエッジの時刻(t)との時間差をいう。なお、ここで、同一のタイミングとは、例えば、試験サイクル内の基準時刻からの遅延時間が同一であることを意味する。
【0043】
続いて、キャリブレーション部34は、ステップS12において、立上りエッジを取得する場合の取得部18の取得時間と立下りエッジを取得する場合の取得部18の取得時間の時間差である取得時間差を算出する。より具体的には、取得時間差とは、図7に示されるように、予め定められたタイミングにおいて立ち上がる波形の信号を入力した場合における、取得部18により取得する値が変化する時刻(t)と、同一タイミングにおいて立ち下がる波形の信号を入力した場合における、取得部18により取得する値が変化する時刻(t)との時間差をいう。
【0044】
続いて、キャリブレーション部34は、ステップS13において、立上りエッジを取得する場合の取得時間および立下りエッジを取得する場合の取得時間を一致させるように、取得時間差に基づき取得部18を調整する。キャリブレーション部34は、一例として、図3に示されるH論理用ストローブ信号を遅延するH側微小遅延素子72の遅延量およびL論理用ストローブ信号を遅延するL側微小遅延素子74の遅延量を調整することにより、立上りエッジを取得する場合の取得時間および立下りエッジを取得する場合の取得時間を一致させる。
【0045】
図8は、図5のステップS11におけるキャリブレーション部34の詳細な処理フローを示す。図9は、図8のステップS21での第1リレー24および第2リレー26の接続状態を示す。図10は、図8のステップS24において出力されるべき理想的な周期信号の波形の一例を示す。図11は、図8のステップS24において出力される実際の周期信号の波形の一例を示す。図12は、複数の差電圧のそれぞれと対応する出力時間差とを予め登録したテーブルの一例を示す。
【0046】
キャリブレーション部34は、ステップS11において、ステップS21からステップS25までの処理を実行する。まず、ステップS21において、キャリブレーション部34は、図9に示されるように、第1リレー24および第2リレー26を接続状態とする。これにより、キャリブレーション部34は、供給部16から出力された信号の電圧を測定部22に測定させることができる。
【0047】
続いて、ステップS22において、キャリブレーション部34は、供給部16からH論理の信号を出力させて、測定部22に供給部16から出力されたH論理電圧を測定させる。続いて、ステップS23において、キャリブレーション部34は、供給部16からL論理の信号を出力させて、測定部22に供給部16から出力させたL論理電圧を測定させる。
【0048】
続いて、ステップS24において、キャリブレーション部34は、供給部16から予め定められた周期信号を出力させて、測定部22に供給部16から出力された周期信号の直流成分である周期信号電圧を測定させる。より具体的には、キャリブレーション部34は、予め定められた周波数およびデューティ比によりH論理とL論理とを交互に繰り返す周期信号を出力させて、測定部22に周期信号電圧を測定させる。キャリブレーション部34は、一例として、デューティ比が50%の周期信号を出力させる。
【0049】
続いて、ステップS25において、キャリブレーション部34の第1算出部38は、供給部16からH論理の信号を出力させた場合に測定部22に測定されるH論理電圧、供給部16からL論理の信号を出力させた場合に測定部22に測定されるL論理電圧、および、供給部16から予め定められた周期信号を出力させた場合における測定部22に測定される周期信号電圧に基づき、出力時間差を算出する。
【0050】
ここで、例えば、供給部16が例えば図10に示されるような、立上り時間および立下り時間が一致した理想的な周期信号を出力した場合、測定部22により測定される周期信号電圧は、周期信号の振幅および周期信号のデューティ比により定まる電圧となる。即ち、供給部16が理想的な周期信号を出力した場合、測定部22により測定される周期信号電圧は、周期信号の振幅を周期信号のデューティ比で分割した電位の電圧となる。例えば、供給部16がデューティ比50%の周期信号を出力した場合であれば、測定部22により測定される周期信号電圧は、周期信号の振幅の中点、即ち、H論理電圧とL論理電圧との中間の電圧となる。このように、供給部16が理想的な周期信号を出力した場合において測定部22により測定される周期信号電圧を、ここでは基準電圧という。
【0051】
しかし、実際に供給部16が出力する周期信号は、例えば図11に示されるような、立上り時間と立下り時間とが異なる。立上り時間と立下り時間とが異なる場合、測定部22により測定される周期信号電圧は、基準電圧からずれる。この場合、基準電圧と周期信号電圧との差電圧は、例えば、出力時間差が大きくなるほど増加または減少する。
【0052】
そこで、ステップS25において、第1算出部38は、H論理電圧、L論理電圧および周期信号のデューティ比から、基準電圧を算出する。第1算出部38は、一例として、デューティ比50%の周期信号を出力した場合には、H論理電圧とL論理電圧との中点電圧を基準電圧として算出する。続いて、第1算出部38は、ステップS24において測定した周期信号電圧と基準電圧との差電圧を算出する。
【0053】
そして、第1算出部38は、算出した差電圧から出力時間差を算出する。この場合、第1算出部38は、一例として、図12に示されるような複数の差電圧のそれぞれと対応する出力時間差とを予め登録したテーブルを参照して、差電圧から出力時間差を算出する。テーブルには、一例として、サンプルの供給部16を計測した結果得られた差電圧と出力時間差との関係が登録されている。これにより、第1算出部38は、差電圧から出力時間差を正確に算出することができる。
【0054】
また、第1算出部38は、一例として、予め設定された代表する2点の差電圧と対応する出力時間差とを結ぶ予め定められた直線を参照して、差電圧から出力時間差を算出してもよい。これにより、第1算出部38は、テーブル等を用いずに差電圧から出力時間差を算出することができる。
【0055】
キャリブレーション部34は、以上のようにステップS21からステップS25の処理を実行することにより、立上りエッジを出力する場合の供給部16の出力時間と立下りエッジを出力する場合の供給部16の出力時間との時間差である出力時間差を測定することができる。
【0056】
図13は、図5のステップS12におけるキャリブレーション部34の詳細な処理フローを示す。図14は、図13のステップS31での第1リレー24および第2リレー26の接続状態を示す。
【0057】
キャリブレーション部34は、ステップS12において、ステップS31からステップS34までの処理を実行する。まず、ステップS31において、キャリブレーション部34は、図14に示されるように、第1リレー24および第2リレー26を切断状態とする。これにより、キャリブレーション部34は、供給部16から出力された信号を外部に出力させずに、取得部18に与えることができる。
【0058】
続いて、ステップS32において、キャリブレーション部34は、予め定められたタイミングで立ち上がる信号を供給部16から出力させて取得部18に与え、取得部18に入力した信号の立上りエッジのタイミングを測定させる。続いて、ステップS33において、キャリブレーション部34は、ステップS32で信号を立ち上げたタイミングと同一のタイミングで立ち下がる信号を供給部16から出力させて取得部18に与え、取得部18に入力した信号の立下りエッジのタイミングを測定させる。
【0059】
続いて、ステップS34において、キャリブレーション部34の第2算出部40は、立上りエッジを取得する場合の取得部18の取得時間と立下りエッジを取得する場合の取得部18の取得時間の時間差である取得時間差を算出する。この場合において、第2算出部40は、ステップS32で測定した供給部16に予め定められたタイミングで立ち上がる信号を出力させて取得部18により取得される立上りエッジのタイミング、ステップS33で測定した供給部16に予め定められたタイミングで立ち下がる信号を出力させて取得部18により取得される立下りエッジのタイミング、および、ステップS11で測定した出力時間差に基づき、取得時間差を算出する。
【0060】
より詳しくは、第2算出部40は、ステップS32で測定した立上りエッジのタイミングと、ステップS33で測定した立下りエッジのタイミングとの時間差を算出する。そして、第2算出部40は、立上りエッジのタイミングと立下りエッジのタイミングの時間差から、更に、ステップS11で算出した出力時間差を減算して、取得時間差を算出する。
【0061】
これにより、第2算出部40は、供給部16に出力時間差が含まれている結果、取得部18に入力される信号の立上りエッジと立下りエッジとの間に時間ズレが生じていても、取得部18の取得時間差を精度良く算出することができる。
【0062】
図15は、図5のステップS13における調整部42による調整処理の一例を示す。調整部42は、ステップS12において算出された取得時間差に基づき、取得部18が立上りエッジを取得する場合の取得時間および立下りエッジを取得する場合の取得時間を一致させるように、取得部18を調整する。
【0063】
調整部42は、一例として、応答信号のH論理の値を取り込むタイミングを示すH論理用ストローブ信号、および、応答信号のL論理の値を取り込むタイミングを示すL論理用ストローブ信号の相対的な時間差を、ステップS12において算出された取得時間差分ずらす。調整部42は、一例として、図3に示されるH側微小遅延素子72およびL側微小遅延素子74の少なくとも一方の遅延量を調整することにより、H論理用ストローブ信号およびL論理用ストローブ信号の相対的な時間差を取得時間差分ずらす。
【0064】
これにより、調整部42は、取得部18が応答信号の立上りエッジを取得する場合の取得時間と立下りエッジを取得する場合の取得時間との時間差を一致させることができる。以上のように、試験装置10によれば、供給部16から出力される信号の立上りエッジのタイミングと立下りエッジのタイミングを一致させる調整機構を備えていない場合であっても、取得部18における立上りエッジの取得タイミングと立下りエッジの取得タイミングとを精度良く一致させることができる。これにより、試験装置10は、被試験デバイスを精度良く試験することができる。
【0065】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0066】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0067】
10 試験装置、12 パターン発生部、14 タイミング発生部、16 供給部、18 取得部、20 判定部、22 測定部、24 第1リレー、26 第2リレー、28 ピン、30 制御装置、32 試験制御部、34 キャリブレーション部、36 キャリブレーション制御部、38 第1算出部、40 第2算出部、42 調整部、52 立上り遅延部、54 立下り遅延部、56 SRフリップフロップ、58 ドライバ、62 H側コンパレータ、64 L側コンパレータ、66 H側フリップフロップ、68 L側フリップフロップ、70 論理比較部、72 H側微小遅延素子、74 L側微小遅延素子、82 フィルタ部、84 AD変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験デバイスを試験する試験装置であって、
前記被試験デバイスへ試験信号を供給する供給部と、
前記供給部から出力される信号の直流電圧を測定する測定部と、
前記供給部から予め定められた周期信号を出力させた場合における前記測定部に測定される周期信号電圧に基づき、立上りエッジを出力する場合の前記供給部の出力時間と立下りエッジを出力する場合の前記供給部の出力時間との時間差である出力時間差を算出する第1算出部と、
を備える試験装置。
【請求項2】
前記第1算出部は、前記供給部からH論理の信号を出力させた場合に前記測定部に測定されるH論理電圧、前記供給部からL論理の信号を出力させた場合に前記測定部に測定されるL論理電圧、および、前記周期信号電圧に基づき、前記出力時間差を算出する
請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記第1算出部は、前記周期信号の振幅をデューティ比に従って分割した電位の基準電圧と、前記周期信号電圧との差電圧に基づき、前記出力時間差を算出する
請求項1または2に記載の試験装置。
【請求項4】
前記被試験デバイスから出力された応答信号を取得する取得部と、
前記供給部に予め定められたタイミングで立ち上がる信号を出力させて前記取得部により取得される立上りエッジのタイミング、前記供給部に予め定められたタイミングで立ち下がる信号を出力させて前記取得部により取得される立下りエッジのタイミング、および、前記出力時間差に基づき、立上りエッジを取得する場合の前記取得部の取得時間と立下りエッジを取得する場合の前記取得部の取得時間の時間差である取得時間差を算出する第2算出部と、
を更に備える請求項1から3の何れかに記載の試験装置。
【請求項5】
立上りエッジを取得する場合の取得時間および立下りエッジを取得する場合の取得時間を一致させるように、前記取得時間差に基づき前記取得部を調整する調整部
を更に備える請求項4に記載の試験装置。
【請求項6】
前記第1算出部は、複数の前記差電圧のそれぞれと対応する前記出力時間差とを予め登録したテーブルを参照して、前記差電圧から前記出力時間差を算出する
請求項3に記載の試験装置。
【請求項7】
前記第1算出部は、代表する2点の差電圧と対応する出力時間差とを結ぶ直線を参照して、前記差電圧から前記出力時間差を算出する
請求項3に記載の試験装置。
【請求項8】
前記測定部は、
前記供給部から出力される信号をローパスフィルタリングするフィルタ部と、
前記フィルタ部によりフィルタリングされた信号をAD変換するAD変換部と、
を有する請求項1から7の何れかに記載の試験装置。
【請求項9】
被試験デバイスを試験する試験装置における調整方法であって、
前記試験装置は、
前記被試験デバイスへ試験信号を供給する供給部と、
前記被試験デバイスから出力された応答信号を取得する取得部と、
前記供給部から出力される信号の直流電圧を測定する測定部と、
を備え、
前記供給部から予め定められた周期信号を出力させた場合における前記測定部に測定される周期信号電圧に基づき、立上りエッジを出力する場合の前記供給部の出力時間と立下りエッジを出力する場合の前記供給部の出力時間との時間差である出力時間差を算出し、
前記供給部に予め定められたタイミングで立ち上がる信号を出力させて前記取得部により取得される立上りエッジのタイミング、前記供給部に予め定められたタイミングで立ち下がる信号を出力させて前記取得部により取得される立下りエッジのタイミング、および、前記出力時間差に基づき、立上りエッジを取得する場合の前記取得部の取得時間と立下りエッジを取得する場合の前記取得部の取得時間の時間差である取得時間差を算出し、
立上りエッジを取得する場合の取得時間および立下りエッジを取得する場合の取得時間を一致させるように、前記取得時間差に基づき前記取得部を調整する
調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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