説明

超音波モータ及びそれを有するレンズ装置

【課題】 振動子の超音波振動を阻害せず、良好な加圧接触のために振動子が押圧する被駆動部の接触面の中央近傍には振動の節を設定する必要があり、設計自由度が制限された。
【解決手段】 超音波モータは、被駆動部と接触する接触面を有し、圧電素子を含む振動子であって、前記圧電素子によって励振された超音波振動によって前記被駆動部を駆動する振動子と、前記振動子を保持する保持部と、前記接触面を前記被駆動部に押圧するために、前記保持部を被駆動部に向かって付勢する付勢力を付与する加圧手段と、前記加圧手段を支持する固定部とを備え、前記保持部は、前記被駆動部の駆動方向における、前記接触面の両側において前記振動子を保持する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧された振動子に楕円振動を発生させることにより被駆動部を駆動する超音波モータと、その超音波モータを使用したレンズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、無音動作、低速から高速までの駆動が可能、高トルク出力などの特徴を活かして、例えば、カメラやレンズの駆動源として超音波モータが採用されている。特許文献1に開示された超音波モータは、回転軸を有する円環状の被駆動部と複数の振動子とから構成され、振動子は被駆動部に対し押圧された状態で接触している、いわゆる加圧接触状態となっており、円環状の被駆動部上に所定の間隔を隔てて配置されている。その加圧接触状態下で当該振動子に超音波振動が励起されると、振動子の被駆動部と接している部分に楕円運動が生じ、被駆動部が被駆動部の回転軸を中心に回転駆動される。当該振動子の被駆動部への加圧接触状態は、振動子の中央付近に設定された振動の節にあたる部分を板バネにより付勢することで得られる。そして、その押圧力の調節は、当該板バネの固定部近傍に設けられたビスと調節ワッシャーによってなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−158052号公報
【特許文献2】特開2004−304887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された超音波モータにおいては、振動子に励起された超音波振動を阻害しないようにするために、振動子が押圧する箇所には振動の節を設定しなければならなかった。また、振動子と被駆動部の接触面の良好な加圧接触状態を得るために接触面の中央で押圧する必要があり、そのためにも、振動子が押圧する接触面の中央近傍には振動の節を設定しなければならず、振動に対する設計自由度が制限される問題があった。
【0005】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、振動子に発生する超音波振動により被駆動部を駆動する超音波モータにおいて、振動子と被駆動部の接触面の良好な加圧接触状態を確保しながら、振動に対する設計自由度が改善された超音波モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の超音波モータは以下のような構成としている。
超音波モータは、被駆動部と接触する接触面を有し、圧電素子を含む振動子であって、前記圧電素子によって励振された超音波振動によって前記被駆動部を駆動する振動子と、前記振動子を保持する保持部と、前記接触面を前記被駆動部に押圧するために、前記保持部に向かって付勢する付勢力を付与する加圧手段と、前記加圧手段を支持する固定部とを備え、前記保持部は、前記被駆動部の駆動方向における、前記接触面の両側において前記振動子を保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、振動子に発生する超音波振動により被駆動部を駆動する超音波モータにおいて、振動子と被駆動部の接触面の良好な加圧接触状態を確保しながら、振動に対する設計自由度が改善された超音波モータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例1における超音波モータの分解斜視図である。
【図2】図1に示される各部材を組込んだ状態の斜視図である。
【図3】振動子と小基台の接合状態を示す拡大斜視図である。
【図4】(A)及び(B)は、実施例1における各部材を組込んだ状態を示す拡大断面図である。(C)は、(B)のA部の拡大詳細図であり、弾性部材の押圧力の成分ベクトルを示す。
【図5】ロータ及びリング基台がそれぞれ傾いた状態を示す拡大断面図である。
【図6】(A)及び(B)は、実施例2における各部材を組込んだ状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施例1]
以下、図を用いて本発明の実施例について説明する。なお、本実施例の超音波モータは、デジタルカメラ用のレンズ鏡筒などの駆動用アクチュエータとしてユニット化した回転駆動型モータを例に説明するが、使用用途はこれに限られたものではない。
【0010】
図1は、本発明の一実施例である超音波モータの分解斜視図である。なお、図において同一部材は同一記号で図示される。101は被駆動部であるロータで、後述する振動子109が押圧力を伴って加圧接触する接触面101aを備える。102は、接触面101aに押圧を伴う加圧接触状態で接触する振動板であり、103は、振動板102に接着剤などにより圧着されている圧電素子である。そして、振動板102に圧電素子103が圧着された状態で、圧電素子103に電圧を印加することにより楕円運動を発生させることができる。なお、振動板102と圧電素子103とで振動子109を構成している。そして、本実施例では3か所の振動子109でロータ101を回転駆動する。104は、振動子109を保持するための保持部としての小基台である。105は、固定部としてのリング基台であり、小基台104と、後述する加圧部材106及び板バネ107を保持する。106は、リング基台105の貫通穴部105bに嵌合する加圧部材であり、ロータ101の接触面101aに対して垂直な方向にのみ移動可能に保持され、後述する板バネ107からの押圧力により小基台104を介して振動子109をロータ101に加圧接触させる。107は、弾性部材であるところの板バネであり、両端部をビス108にてリング基台105へ固定され、そして板バネの押圧力により振動子と被駆動部を加圧接触させる。そして、この加圧部材106と板バネ107が、本発明の加圧手段となる。
【0011】
以上のように、上述した各部材が組込まれ、超音波モータとしてユニット化される。
【0012】
図2は、図1の各部材を組込んだ状態の斜視図である。なお、図2において、振動子109まわりの構成は3か所とも全て同一であり、図の煩雑さを防ぐため、図中の手前側にだけ番号を付している。図に示すようにリング基台105の3か所において、それぞれ2つのビス108で固定された板バネ107により、加圧部材106と小基台104を介して振動子109に押圧力が付勢され、その結果、振動子109とロータ101の接触面101aが加圧接触する。なお、実際のレンズ鏡筒などに組み込まれる際には、ロータ101をフォーカス機構やズーム機構に連結して駆動する。
【0013】
次に、超音波モータの構成部材の詳細について説明する。図3は、図1及び図2における振動板102と小基台104の接続状態を説明するための拡大斜視図で、ロータ101側から見た図である。図において振動板102の中央の平板部102aには、2か所の突起部102bが形成されている。突起部の上端面、すなわち、ロータ101の接触面101aと当接する面は同一平面状に形成され、接触面との当接状態を良好にするため、製造工程時には研磨などにより均一な面に仕上げられる。
【0014】
一方、図3に示す平板部102aの裏面側(2か所の突起部102bが形成されている面と反対の面側)には圧電素子103が接着剤などにより圧着されている。なお、平板部102aの裏側と圧電素子103の圧着は、圧着されればその方法は限定されない。この圧電素子103は複数の圧電素子膜を積層して一体化したものである。そして、この積層された圧電素子103に所望の交流電圧を印加することで励振させ、圧電素子103が圧着された振動板102に2つの振動モードを励起する。このとき2つの振動モードの振動位相が所望の位相差となるように設定することで、突起部102bには、図3の矢印で示すような楕円運動が発生する。この楕円運動を図1及び図2に示すような3か所の振動子109で発生させ、ロータ101の接触面101aに伝達することで、ロータ101を回転駆動させることが可能となる。なお、前述の圧電素子の積層構造や振動モードに関する詳細は、特許文献2に記載されている内容と同様であるため、それらの説明は省略する。
【0015】
次に、振動板102の両端には、小基台104の両側に形成された一段高い上面部104aと接合するための2か所の接合部102cが形成されている。そして、振動板102は小基台104に、この接合部102cにおいて溶接や接着などにより接合されるが、振動板102と小基台104が接合されれば、その方法は限定されない。2か所の接合部102cと平板部102aとの間には2か所の腕部(接続部)102dが形成され、この腕部102dを介して、振動板102と圧電素子103が小基台104に固定される。この腕部102dは、平板部102aに発生する振動を接合部102cに伝達しにくい、すなわち、振動減衰率が高い構成とするため、図3に示すように平板部102aや接合部102cに対して細い形状となっている。逆に言い換えると、剛体である小基台104が平板部102aに発生する振動を阻害しないような連結の構成を、当該接合部102cによって実現している。また、小基台104の中央付近の平面部104bと、圧電素子103の平面部104bと対向する面(不図示)には所定の隙間203が形成されている。
【0016】
振動子109とロータ101の接触面間の摩擦力で駆動する超音波モータでは、良好な接触状態を確保するため、平板部102aの中央で押圧し、押圧ムラを少なくすることが重要である。平板部102aの中央を押圧するためには、振動子109の中央を押圧することが必要となる。特許文献1に開示されている超音波モータでは、振動子を直接押圧している。そのため、振動子109に励起された超音波振動を阻害しないために、振動子109の中央は振動の節に設定する必要があった。従って、2つの振動モードを組み合わせて突起部102bに楕円運動を発生させようとした場合、どちら振動のモードについても振動子109の中央に振動の節を設定する必要があった。そのため、振動の設計自由度が制限されてしまうという問題があった。
【0017】
しかしながら本発明の超音波モータでは、振動の伝搬を抑制する腕部102dを介して振動子109が保持部材104に保持されているため、振動子109の中央に振動の節を設定する必要がない。そのため、例えば特許文献2に記載されているように、2つある振動モードのうち、一方の振動モードの節が振動子109の中央に存在しない振動モードを設定することも可能となる。これにより振動の設計自由度が高い超音波モータを実現することができる。
【0018】
本発明の超音波モータでは、突起部102bに対して駆動方向外側に腕部102dが設けられている。さらに当該腕部102dに対して駆動方向外側に接合部102cが設けられている。これにより、駆動方向と直交する方向、すなわちロータの径方向の大きさを抑えることができる。したがって、本発明により超音波モータの小型化を実現することができる。
【0019】
図4(A)、(B)は、各部材を組込んだ状態を示す拡大断面図で、図2における3か所の振動子109のうち1か所の周囲のみを拡大している。なお、残りの2か所に関しては同様の構成を有するため説明を省略する。
【0020】
図4(A)は、ロータ101を上側とした図になっており、振動板102の2つの突起部102bにおいて、ロータ101の接触面101aと接触する面である上端面のそれぞれの重心と、当該それぞれの重心を起点とするそれぞれの上端面の法線を含む面を切断面としている。
【0021】
図4(B)は、図3における振動板102の突起部102bにおいて、接触面101aと接触する全上端面の重心と接触面101aの法線を含み、且つ図4(A)に直交する面を切断面としている。ただし、全上端面とは、2つの上端面を全て含むものとする。
【0022】
図4(A)、(B)の201は、振動板102の突起部102bにおいて、接触面101aと接触する全上端面の重心を通過し、当該接触面101aの法線を含む中心線である。
【0023】
突起部102bの上端面はロータ101の接触面101aと当接し、加圧接触状態にある。また、振動板102は、両端の接合部102cが2か所の上面部104aで小基台104と接合されている。そして、圧電素子103と小基台104の平面部104bの間には所定の隙間203が形成されている。
【0024】
小基台104の下面側には穴部104cと長穴部104dが設けられ、リング基台105に形成された2か所の軸部105aが嵌合している。小基台104の下側中央には当接部104eが設けられている。この当接部104eは、図4(A)で示されるような円弧形状が、紙面奥行方向(図4(B)においては左右方向)に延在する半円筒形状となっている。そして、この当接部104eには加圧部材106の上端面106aが接している。この上端面106aは平面で形成されているため、当接部104eとの接触は、図4(A)の紙面奥行方向(図4(B)においては左右方向)に長さを有する線接触となっている。なお、本実施例では当接部104eが前述のように円弧形状を有する半円筒形状としたが、当接部104eと加圧部材106の上端面106aが直線の線接触を保てれば、その形状は限定されない。
【0025】
リング基台105は、図1に示されるような板バネと対向する面に貫通穴部105bを有し、加圧部材106は、当該貫通穴部105bに嵌合して板バネと接触することで、板バネ107と協働することができる。なお、貫通穴部105b及び加圧部材106の中心軸は、中心線201、すなわち接触面101aに対して垂直な軸方向と概ね一致している。そして、図4(A)、(B)の加圧部材106の下側の球面部106bには、板バネ107が変形して、その弾性力により加圧部材106を小基台104方向に付勢した状態で接触している。
【0026】
板バネ107は、変形量の変化による押圧力のばらつきを低減するため、ある程度バネ定数を小さくする必要がある。従って、板バネは極力厚みを薄くし、長さもできるだけ長い方がよい。本実施例の板バネ107は薄板を用い、長さについては、円環状の超音波モータ内でできるだけ長いバネ長とするため、円弧形状で形成されている。そうすることで、加圧部材106の押圧方向の変位量に多少の変化が生じても板バネによる付勢力のばらつきを小さく抑えることができる。したがって、従来例のような押圧力に対する押圧力の調節機構が不要となる。以上のような構成で、ロータ101に対して振動子109は、小基台104と加圧部材106を介して板バネ107により押圧されている。
【0027】
次に、図4(A)、(B)、(C)を参照し、板バネ107による押圧力の伝達構成について説明する。以下の説明において、押圧力ベクトルとは、各図の断面において押圧力の方向及び大きさを含む力のベクトルである。
【0028】
まず、図4(A)において、小基台104は、当接部104eで加圧部材106と接触している。また小基台104は、2か所の突起部102bでロータ101に接触しており、各接触面の重心は、中心線201からロータの駆動方向において等しい距離にある。一方、板バネ107と加圧部材106の接触に関し、本実施例では板バネが円弧形状で形成されているため、板バネ107の両端の支持部と、押圧力の入力点(板バネ107と加圧部材106の接触点)が一直線上に存在しない。従って、押圧力を発生させる際の板バネの断面は、図4(B)で示されるような、傾きを持つ状態となる。結果として、板バネ107によって加圧部材106に入力される押圧力のベクトルは矢印206aとして図示することができる。加圧部材106と板バネ107の接触点は、中心線201上には存在せず、図4(B)においては中心線201の右側の点205にずれてしまう。
【0029】
図4(C)に、図4(B)のA部の点205まわりの拡大詳細図を示す。板バネ107が加圧部材106に付与する押圧力はベクトル206aで表され、中心線201に対して傾いている。従って、当該押圧力ベクトル206aは、中心線201と平行な方向の成分ベクトル206bと、中心線201と垂直な方向の成分ベクトル206cに分解することができる。
【0030】
加圧部材106は、図4(A)、(B)に示されるように、中心線201と概ね平行な方向にのみ自由度を持ってリング基台105に保持されているため、板バネ107が加圧部材106を押圧する押圧力ベクトル206aは、中心線201方向の成分ベクトル206bに対応する力(ベクトル204a)で小基台104に伝達される。
【0031】
一方、小基台104に伝達された押圧力(ベクトル204a)は、2つの突起部102bによって接触面101aに伝達され、それぞれの突起部102bが接触面を押圧する力は押圧力ベクトル204aの半分の大きさの押圧力(ベクトル204b)となる。従って、2か所の突起部102bにおける押圧力を均等に保つことが可能となる。
【0032】
なお、突起部102bと接触面101aとの接触は面接触であるため、実際にはその面内で均一に分布した押圧力を呈するが、理解を容易にするため、面内の重心位置に働く力のベクトルとして表現している。また、加圧部材106と小基台104の当接部104eの接触は線接触であるため、実際にはその直線上で均一に分布した押圧力ベクトルとなるが、これも直線上の重心位置に働く力のベクトルとして表現している。以後、面接触や線接触の場合も重心位置における力のベクトルで表現する。
【0033】
また、加圧部材106にはその側面部において、板バネ107によって、加圧部材106に入力される押圧力ベクトル206aの中心線201と垂直な方向の成分ベクトル206cによる摩擦力が発生する。一方、軸部105aでの嵌合においても摩擦力が発生する。これらの摩擦力は押圧力に対して十分に小さいため無視している。実際、この側面の仕上げをある程度滑らかにすれば、摩擦力の影響は無視できる程度に小さくできる。
【0034】
本実施例では前述のように、加圧部材106がリング基台105に対して、概して、中心線201方向のみ自由度を有した状態で保持される構成となっている。従って、加圧部材106が小基台104へ与える押圧力ベクトル204aは、中心線201と概ね一致させることができる。このとき、押圧力ベクトル204aの大きさは、板バネによる押圧力ベクトル206aの中心線201と平行な方向の成分ベクトル206bと等しくなる。これは、押圧力ベクトル206aの成分ベクトル206bのみが押圧力ベクトル204aとなるためである。押圧力ベクトル206a中心線201と垂直な方向の成分ベクトル206cは、加圧部材106の側面部における摩擦力に影響する。なお、加圧部材106の側面と貫通穴部105bの内面は、滑らかに仕上げることで、生じる摩擦力は押圧力に比べて十分小さく、加圧部材106のスムーズな進退を阻害することもない。最後に、1か所の突起部102bが接触面101aに与える押圧力ベクトルは204bとなり、その大きさは押圧力ベクトル204aの半分となる。これは、図4(A)に示されるように突起部102bが2か所存在するためである。このように、図4(A)、(B)の断面図を参照することにより、入力される押圧力ベクトル206aの力点は中心線201からずれてしまい、またその方向は中心線201と平行ではないが、押圧力ベクトル204aと204bは良好な押圧を保つことが可能となる。
【0035】
一方、小基台104は当接部104eの直線状の接触部を介して押圧される構成となっている。従って、図4(A)における断面においては、小基台104が傾き可能な構成となっており、仮に製造時の寸法誤差や外乱による部材の傾きが生じても、良好な加圧接触状態を保つことができる。
【0036】
図5は、図4(A)が示すのと同じ部材の同断面における断面図であり、図4(A)の状態と比較してロータ101とリング基台105に、小基台104の当接部104eを回転中心として相対的な傾きが生じた場合を示している。図5においても、振動板102の突起部102bは、ロータ101の接触面101aに追従し、良好な加圧接触状態を保っている。なお、小基台104とリング基台105は、穴部104c及び長穴部104dと軸部105dで嵌合しているが、嵌合ガタ、すなわち嵌合隙間が設けられているため傾くことができる。よって、仮にロータ101やリング基台105に製造時の寸法誤差で傾きが生じた場合や、駆動時の振動や外乱により傾きが生じた場合でも、2か所の突起部102bにおける接触面101bへの良好な押圧が可能となる。
【0037】
つまり、図4(A)の断面において、図5に示すような傾きが部材間に生じた場合であっても、図4(A)における小基台104の当接部104eと加圧部材106の接触を一点の点接触とし、傾きに対する接触面間の追従性を保つことで問題の解決を図っている。一方、図4(B)に示す断面では、小基台104の当接部104eと加圧部材106の接触を一直線の線接触とすることで、図4(B)の左右方向へ小基台104と加圧部材が互いに傾かない構成とした。
【0038】
以上のように、本実施例では、振動の伝搬を抑制する腕部102dを介して振動子109が小基台104に保持されている。従って、振動の節の位置に制限がなくなるため、振動子と被駆動部の接触面の良好な加圧接触状態を確保しながら、振動に対する設計自由度が改善された超音波モータを実現することが可能となる。
【0039】
[実施例2]
実施例2は、実施例1の変形例であり、小基台104が加圧部材106と接触する当接部が、球面形状を有する形状とした例である。図6(A)、(B)は、各部材を組込んだ状態を示す拡大断面図で、3か所の振動子109のうち1か所のみを拡大している。なお、図が示す方向及び切断面の位置は、図4(A)、(B)とそれぞれ同様である。図6(A)、(B)を参照し、小基台104に球面形状を有する当接部104fを備えることで、加圧部材106は、図6(A)の紙面奥行き方向(図6(B)においては左右方向)にも点接触となり、傾くことができる。よって、ロータ101やリング基台105の製造時の寸法誤差で径方向に傾きが生じた場合や、駆動時の振動や外乱により部材に図6(A)の紙面奥行き方向(図6(B)においては左右方向)に傾きが生じた場合でも、2か所の突起部102bにおける良好な加圧接触を保つことが可能となる。なお、本実施例では当接部104eが前述のように球面形状を有する形状としたが、当接部104fと加圧部材106の上端面106aが一点による点接触を保てれば、その形状は限定されない。
【0040】
なお、上述の半球面形状の当接部104f以外の構成要素、及び板バネ107からの押圧力の伝達方法は、実施例1と同様の構成であるためここでの説明は省略する。
【0041】
以上のように、実施例2では小基台104と加圧部材106が球面形状を有する当接部104fで点接触する構成としたため、ロータの駆動方向のみならず、ロータの駆動方向と垂直な方向に傾きが生じたとしても、良好な加圧接触状態を保つことが可能である。
【0042】
[実施例3]
フォーカスレンズやズームレンズ等を駆動するための駆動手段として実施例1又は2の超音波モータを有するレンズ装置を構成することによって、本発明の効果を享受することができるレンズ装置を実現することができる。
【0043】
以上のように、振動子に発生する楕円振動により被駆動部を駆動する超音波モータにおいて、振動子と被駆動部の接触面の良好な加圧接触状態を確保しながら、振動に対する設計自由度を改善することで、従来技術のように振動子が押圧する接触面の中心近傍に振動の節を設定しなくとも、当該接触面で良好な加圧接触状態が得られることが可能である。
【0044】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
101 ロータ(被駆動部)
101a 接触面
102 振動板
102a 平板部
102b 突起部
102c 接合部
102d 腕部(接続部)
103 圧電素子
104 小基台(保持部)
105 リング基台
106 加圧部材
107 板バネ(弾性部材)
109 振動子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波モータは、
被駆動部と接触する接触面を有し、圧電素子を含む振動子であって、前記圧電素子によって励振された超音波振動によって前記被駆動部を駆動する振動子と、
前記振動子を保持する保持部と、
前記接触面を前記被駆動部に押圧するために、前記保持部を被駆動部に向かって付勢する付勢力を付与する加圧手段と、
前記加圧手段を支持する固定部と、
を備え、
前記保持部は、前記被駆動部の駆動方向における、前記接触面の両側において前記振動子を保持する、
ことを特徴とする超音波モータ。
【請求項2】
前記振動子は、
前記被駆動部との前記接触面を形成する突起部を有し、前記圧電素子を含む平板部と、
前記振動子を保持するために前記保持部と接合する接合部と、
前記接合部と前記平板部を接続する接続部と、
を備え、
前記接続部は前記平板部に対し振動減衰率が高い、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項3】
前記接続部は前記平板部よりも細い、ことを特徴とする請求項2に記載の超音波モータ。
【請求項4】
前記加圧手段は加圧部材と弾性部材を備え、前記弾性部材は前記加圧部材を介して前記保持部に付勢力を付与し、
前記保持部は、前記加圧部材と点接触し、前記接触面を含む平面の法線であって、前記接触面の重心を通る法線を含む当接部を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波モータ。
【請求項5】
前記加圧手段は加圧部材と弾性部材を備え、前記弾性部材は前記加圧部材を介して前記保持部に付勢力を付与し、
前記保持部は、前記被駆動部の駆動方向に垂直な方向で前記加圧部材と線接触する当接部を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波モータ。
【請求項6】
前記振動子と前記保持部の間には隙間が設けられる、ことを特徴とする請求項2に記載の超音波モータ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の超音波モータを、被駆動部を駆動する駆動手段として備える、ことを特徴とするレンズ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−38878(P2013−38878A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172018(P2011−172018)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】