超音波モータ
【課題】 積層型圧電素子に均等且つ簡易に予圧できる超音波モータを提供すること。
【解決手段】 棒状弾性体12と、棒状弾性体12に両端を保持され、変位方向と棒状弾性体12の長手方向との間の角度において鋭角を有した状態で正面12aと裏面12bとに配設され、さらに棒状弾性体12の長手方向において正対して見て互いに反対方向に傾斜して棒状弾性体12に配置される一対の積層型圧電素子18と、棒状弾性体12の先端部に接合されている摩擦子26と、を具備し、一対の積層型圧電素子18にそれぞれ位相の異なる交番電圧を印加することにより、縦振動と捻れ振動とを同時に励起し、摩擦子26に超音波楕円運動を励起させる超音波モータ1であって、超音波モータ1は、積層型圧電素子18を棒状弾性体12に密着固定するために、積層型圧電素子18を積層型圧電素子18の積層方向に沿って同時に且つ均等に予圧する予圧機構80を具備する。
【解決手段】 棒状弾性体12と、棒状弾性体12に両端を保持され、変位方向と棒状弾性体12の長手方向との間の角度において鋭角を有した状態で正面12aと裏面12bとに配設され、さらに棒状弾性体12の長手方向において正対して見て互いに反対方向に傾斜して棒状弾性体12に配置される一対の積層型圧電素子18と、棒状弾性体12の先端部に接合されている摩擦子26と、を具備し、一対の積層型圧電素子18にそれぞれ位相の異なる交番電圧を印加することにより、縦振動と捻れ振動とを同時に励起し、摩擦子26に超音波楕円運動を励起させる超音波モータ1であって、超音波モータ1は、積層型圧電素子18を棒状弾性体12に密着固定するために、積層型圧電素子18を積層型圧電素子18の積層方向に沿って同時に且つ均等に予圧する予圧機構80を具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を駆動源とした超音波モータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電磁型モータに代わる新しいモータとして、超音波モータが注目されている。超音波モータは、圧電素子などの振動子の振動を利用する。超音波モータは、従来の電磁型モータと比較して、ギアなしで低回転高トルクが得られる点、保持力が大きい点、高分解能である点、静粛性に富む点、磁気的ノイズを発生せず、また、磁気的ノイズの影響を受けない点等の利点を有している。
【0003】
例えば特許文献1には、1種類の圧電素子を用いて構成でき、構成が簡略な超音波モータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−121573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている超音波モータにおいて、基本弾性体の一方の側面と他方の側面とは互いに対向しており、一方の側面と他方の側面とには積層型圧電素子がそれぞれ配置されている。積層型圧電素子を基本弾性体に固定するためには、保持用弾性体等によって基本弾性体に対して積層型圧電素子を予圧する必要が生じる。この予圧とは、積層型圧電素子に加える圧縮力である。また保持用弾性体を用いる際に、組立冶具等の別部品を使用する必要が生じる。
【0006】
しかしながら保持用弾性体は、一方の側面と他方の側面とにおける積層型圧電素子それぞれに対して、別々に予圧するために、均等に予圧できない虞が生じ(予圧がばらつく虞が生じ)、超音波振動子の性能に影響を及ぼす可能性が生じる。また積層型圧電素子を予圧するために保持用弾性体を用いる際に、組立冶具が必要となり、簡易に予圧できず、予圧に手間がかかってしまう。
【0007】
本発明は、これらの事情に鑑みてなされたものであり、積層型圧電素子に均等且つ簡易に予圧できる超音波モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は目的を達成するために、棒状弾性体と、前記棒状弾性体に両端を保持され、変位方向と前記棒状弾性体の長手方向との間の角度において鋭角を有した状態で前記棒状弾性体の対向する2つの側面にそれぞれ配設され、さらに前記棒状弾性体の長手方向において正対して見て互いに反対方向に傾斜して前記棒状弾性体に配置される一対の積層型圧電素子と、前記棒状弾性体の先端部に接合されている摩擦子と、を具備し、一対の前記積層型圧電素子にそれぞれ位相の異なる交番電圧を印加することにより、縦振動と捻れ振動とを同時に励起し、前記摩擦子に超音波楕円運動を励起させる超音波モータであって、前記積層型圧電素子を前記棒状弾性体に密着固定するために、前記積層型圧電素子を前記積層型圧電素子の積層方向に沿って同時に且つ均等に予圧する予圧機構を具備することを特徴とする超音波モータを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、積層型圧電素子に均等且つ簡易に予圧できる超音波モータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る超音波モータを構成する超音波振動子の上面図である。
【図2】図2は、超音波振動子を図1に示すα方向からみた図(正面図)である。
【図3】図3は、超音波振動子を図1に示すβ方向からみた図(背面図)である。
【図4】図4は、超音波振動子を図1に示すγ方向からみた図(右側面図)である。
【図5】図5は、超音波振動子を図1に示すδ方向から視た図(左側面図)である。
【図6】図6は、超音波振動子を用いた超音波モータの側面図である。
【図7】図7は、超音波振動子を用いた超音波モータの分解図である。
【図8】図8は、第2の実施形態における超音波振動子を用いた超音波モータの側面図である。
【図9】図9は、第2の実施形態における超音波振動子を用いた超音波モータの分解図である。
【図10】図10は、第3の実施形態における超音波振動子を用いた超音波モータの分解図である。
【図11】図11は、第3の実施形態における超音波振動子を用いた超音波モータの側面図である。
【図12】図12は、第4の実施形態における超音波振動子を用いた超音波モータの分解図である。
【図13】図13は、第4の実施形態における超音波振動子を用いた超音波モータの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1乃至図7を参照して第1の実施形態について説明する。
超音波モータ1は、図1乃至図7に示すよう、超音波による振動を発生させる超音波振動子10と、超音波振動子10の振動が伝達され駆動される被駆動部材であるロータ53と、被駆動部材(ロータ53)と超音波振動子10とに押圧力を与える押圧機構70と、超音波振動子10に設けられる後述する積層型圧電素子18に予圧力を与える予圧機構80とを有している。
【0012】
超音波振動子10は、例えば黄銅材(C2801PのO材)からなる角柱又は円柱形状の棒状弾性体である基本弾性体12と、図示しない駆動源により交番電圧が印加され励振する電気機械変換素子である積層型圧電素子18と、基本弾性体12の長手方向上端部にて被駆動部材(ロータ53)に対向して配置され、積層型圧電素子18による振動を被駆動部材(ロータ53)に伝達する摺動用駆動子26とを有している。
【0013】
図2に示すように基本弾性体12の正面12aに凹部16aを有し、図3に示すように正面12aに対向する基本弾性体12の裏面12bに凹部16bを有している。凹部16a,16bは、正面12aと裏面12bとに限定される必要はなく、基本弾性体12の対向する側面12c,12dに配置されていてもよい。
【0014】
凹部16aは、基本弾性体12の高さ(長手)方向に対して所望の角度だけ傾けられた状態で正面12aに配設されている。凹部16bも凹部16aと同様に、基本弾性体12の高さ(長手)方向に対して凹部16aと同じ所望の角度だけ傾けられた状態で裏面12bに配設されている。この場合、凹部16a,16bは、正対して見て逆方向に取付けられている。また凹部16a,16bの傾き角度は、基本弾性体12の高さ(長手)方向と、凹部16a,16bの長手方向との間において鋭角である。
【0015】
この凹部16a,16bには、積層型圧電素子18と、積層型圧電素子18を保持する後述する保持用弾性体83とがそれぞれ挿入される。積層型圧電素子18は、超音波による振動を発生させる振動本体部であり、電気機械変換素子である。保持用弾性体83は、凹部16a,16bにおいて、積層型圧電素子18よりも基本弾性体12の基端部13a側に配置される。積層型圧電素子18と保持用弾性体83とは、凹部16a,16bに挿入されるため、凹部16a,16bと同様に所望の角度だけ傾けられた状態で配置される。
【0016】
図4および図5に示すように、積層型圧電素子18と保持用弾性体83との側面は、表裏面ともに長手方向で同位置に投影されている。つまり積層型圧電素子18は、変位方向と基本弾性体12の長手方向との間の角度において鋭角を有した状態で基本弾性体12の対向する2つの側面である正面12aと裏面12bとにそれぞれ配設される。さらにこれら積層型圧電素子18は、基本弾性体12の長手方向において正対して見て互いに反対方向に傾斜して基本弾性体12に配置される。
【0017】
なお凹部16aに配置されている積層型圧電素子18と保持用弾性体83と、凹部16bに配置されている積層型圧電素子18と保持用弾性体83とは、基本弾性体12を挟持していることとなる。またこれら積層型圧電素子18は、両端を基本弾性体12(凹部16a,16bと保持用弾性体83)により保持されていることとなる。
【0018】
また、凹部16aに挿入される積層型圧電素子18から出されている電気端子は、それぞれA端子とGND端子とである。また、凹部16bに挿入される積層型圧電素子18から出されている電気端子は、それぞれB端子とGND端子とである。
【0019】
次に積層型圧電素子18について詳細に説明する。
積層型圧電素子18は、複数の板状の圧電素子18fが積層され、積層した圧電素子18fを2個の図示しない絶縁板によって挟むことで構成されており、基本弾性体12の長手方向に対して傾斜して配置されている。このような積層化は接着剤を用いても良いし、一体焼成法によっても良い。
【0020】
圧電素子18fは、超音波振動子10の駆動用の圧電素子である。この圧電素子18fは、例えば100μmの厚みを有し、例えばチタン酸ジルコン酸鉛系圧電セラミックス素子(PZT)である。なお圧電素子18fの一部は、例えば振動検出用として用いられても良い。
【0021】
圧電素子18fの表面と裏面とには、+用電極と−用電極のいずれかを有している図示しない内部電極が形成されている。上述したように圧電素子18fが積層する際、+用電極の内部電極を有する圧電素子18fと、−用電極の内部電極を有する圧電素子18fと、が交互に積層する。
【0022】
内部電極は、例えば4μmの厚さを有し、例えば銀パラジウム合金である。内部電極の面積は、圧電素子18fの面積に可能な限り近いことが好適である。
【0023】
なお内部電極同士の積層の際の接続は、それぞれ短絡した外部電極で行う。そして+用電極の内部電極と−用電極の内部電極との間に高電圧を印加して、圧電素子18fを分極させ、圧電的に活性化させる。
【0024】
なお積層型圧電素子18の構成は、上記に限定する必要はない。
【0025】
超音波振動子10の上端部である基本弾性体12の先端部13bには、例えば円環状のフェノール樹脂にアルミナセラミックの砥粒を分散させた砥石からなる摩擦子や複合樹脂である摺動用駆動子26が接合されている。
【0026】
超音波モータ1は、一対の積層型圧電素子18にそれぞれ位相の異なる交番電圧を印加することにより、縦振動と捻れ振動とを同時に励起し、摺動用駆動子26に超音波楕円運動を励起させる。
【0027】
基本弾性体12の中心軸上には、貫通孔30が穿設されている。この貫通孔30の中心軸上の超音波振動子10の縦振動の節位置には、メネジ32が螺刻されている(図7参照)。
【0028】
貫通孔30には、後述する第1の弾性体81における軸51が嵌装される。この軸51は、図2に示すように超音波振動子10の先端部13bから突出する長さを有している。
【0029】
またこの軸51には、オネジ58,オネジ59が螺刻されている。
オネジ58は、メネジ32の配設位置(超音波振動子10の縦振動の節位置)に対応するように軸51に配設されている。オネジ58は、メネジ32と螺合し、その後、接着固定される。これにより軸51は、基本弾性体12の縦振動の節部にて接着固定される。
オネジ59は、先端部13bから突出する軸51の先端部に配設されている。オネジ59は、ナット57の配設位置に対応するように軸51に配設されている。このオネジ59には、ナット57が嵌合する。
【0030】
超音波振動子10の上端部である摺動用駆動子26には、摺動用駆動子26によって駆動される円環状のロータ53が配設される。詳細には、摺動用駆動子26に対向するロータ53の下面には、例えば円環状のセラミックスからなる摺動材53aが貼付されている。ロータ53の断面形状と摺動材53aの断面形状とは同一であり、ロータ53は摺動材53aを介して摺動用駆動子26と接触し、駆動される。
【0031】
またロータ53の内部には、ラジアルベアリング54が配置される。またロータ53の上部には、バネ保持体55が配設される。バネ保持体55は、コイルバネ56を位置決め保持している。
【0032】
ロータ53と摺動材53aとラジアルベアリング54とバネ保持体55とには、軸51が挿通している。
【0033】
ロータ53は、コイルバネ56によって、バネ保持体55とラジアルベアリング54とを介して摺動用駆動子26に向けて回転可能に押圧固定されている。より詳細には、摺動材53aが摺動用駆動子26に対して押圧固定される。
【0034】
コイルバネ56は、バネ保持体55によって保持され、ナット57によってバネ保持体55(軸51)からの抜けを防止されている。このナット57は、コイルバネ56の押圧力を調整する。
【0035】
つまりコイルバネ56は、軸51を螺旋状に囲み、バネ保持体55によって保持され、ナット57によって軸51から外れないように配設される。コイルバネ56の押圧力は、ナット57により調節される。コイルバネ56は、コイルバネ56の押圧力によって、バネ保持体55とラジアルベアリング54とを介してロータ53を摺動用駆動子26へと押圧する。
【0036】
このようにナット57とコイルバネ56とバネ保持体55とラジアルベアリング54とは、ロータ53を摺動用駆動子26に押圧する押圧機構70である。
【0037】
基本弾性体12の基端部13a(下面12g)には、長手方向に凸設されている凸部15が配設されている。凸部15は、後述する第2の弾性体82に設けられた開口部82aに嵌め込まれる。凸部15には、貫通孔30と連通している貫通孔15aが配設されている。
【0038】
また超音波モータ1は、超音波振動子10において、積層型圧電素子18を基本弾性体12に密着固定するために、保持用弾性体83を基本弾性体12の長手方向に沿って押圧し、積層型圧電素子18を積層型圧電素子18の積層方向に沿って予圧する予圧機構80を有している。この予圧機構80は、凹部16aに挿入される正面12a側の積層型圧電素子18と、凹部16bに挿入される裏面12b側の積層型圧電素子18とをそれぞれ同時に且つ同じ力量で(均等に)予圧する。この予圧とは、積層型圧電素子18を基本弾性体12に隙間無く密着固定させるために、保持用弾性体83を押圧し、積層型圧電素子18に大気圧よりも高い圧力をかけることであり、積層型圧電素子18に加える圧縮力を示す。
【0039】
予圧機構80が積層型圧電素子18を予圧し、積層型圧電素子18が基本弾性体12に固定される事で、積層型圧電素子18の振動は基本弾性体12に伝達される。
【0040】
予圧機構80は、基本弾性体12の基端部13a(下面12g)側に配設され、基本弾性体12の長手方向において積層型圧電素子18を挟んで押圧機構70や摺動用駆動子26やロータ53とは反対側に配設されている。
【0041】
予圧機構80は、基本弾性体12を基本弾性体12の基端部13a(下面12g)側から押圧する第1の弾性体81と、第1の弾性体81と基本弾性体12の基端部13aとの間に配設され、第1の弾性体81の押圧力を基本弾性体12の基端部13aに伝達する第2の弾性体82と、積層型圧電素子18を基本弾性体12に密着固定するために、第1の弾性体81から第2の弾性体82を介して伝達される押圧力によって、積層型圧電素子18を基本弾性体12に向って同時に且つ均等に予圧し、この予圧によって積層型圧電素子18を基本弾性体12に密着固定するように積層型圧電素子18を保持する保持用弾性体83とを有している。
【0042】
第1の弾性体81は、超音波モータ1の中心軸として貫通孔30に螺合可能であり、貫通孔30に挿通される軸51を有している。第1の弾性体81は、基本弾性体12にねじ止めによって固定される。
【0043】
軸51は、図2に示すように基本弾性体12の先端部13bから突出する長さを有している。突出する長さは、図6に示すように摺動用駆動子26とロータ53と押圧機構70とが配設される長さである。このように軸51は、摺動用駆動子26とロータ53と押圧機構70とを支持する支持軸でもある。軸51は、上述したようにオネジ58,59を有している。また軸51が貫通孔30に挿通した際、第1の弾性体81は、第2の弾性体82を貫通孔15a(基本弾性体12)に圧入させ、第2の弾性体82を第1の弾性体81と基本弾性体12とで挟持する。そして第1の弾性体81は、この圧入によって第2の弾性体82を基本弾性体12に固定する。
【0044】
第2の弾性体82は、凸部15が嵌め込まれる開口部82aと、第1の弾性体81によって保持用弾性体83をそれぞれ押圧する1対の押圧部82bとを有している。
【0045】
第2の弾性体82は、第1の弾性体81が基本弾性体12にねじ止めされる際に生じる力を、保持用弾性体83に伝達する。
【0046】
開口部82aは、第2の弾性体82の長手方向に沿って貫通している。そのため凸部15が開口部82aに嵌め込まれ、軸51が貫通孔15a,30を挿通すると、基本弾性体12と第1の弾性体81と第2の弾性体82とは、一体となる。またこのとき基本弾性体12と第1の弾性体81と第2の弾性体82との中心軸は、一致(一体化)する。
【0047】
押圧部82bは、第1の弾性体81と基本弾性体12とのねじ止めによる締結力によって保持用弾性体83を押圧する。
【0048】
押圧部82bは、凹部16aに挿入される保持用弾性体83と、凹部16bに挿入される保持用弾性体83とに対応するように第2の弾性体82に一対配設されている。押圧部82bは、保持用弾性体83をそれぞれ同時且つ均等の力で押圧する。
【0049】
保持用弾性体83は、押圧部82bにおける押圧力を基に、積層型圧電素子18を同時に且つ均等に予圧する。保持用弾性体83は、予圧する際に、この予圧を積層型圧電素子18の下面18b側から積層型圧電素子18の積層方向に沿って積層型圧電素子18に伝達する伝達部83aを有している。伝達部83aは、積層型圧電素子18が載置(当接)する保持用弾性体83の載置面である。伝達部83aは、上述したように積層型圧電素子18が傾くように、所望に傾けられている。
【0050】
なお伝達部83aに載置する積層型圧電素子18の載置面である下面18bには、エポキシ樹脂等の接着剤が塗布される。積層型圧電素子18は接着剤によって保持用弾性体83に接着しているため、伝達部83aが予圧を積層型圧電素子18に伝達すると、積層型圧電素子18は保持用弾性体83を介して基本弾性体12に密着固定される。このように保持用弾性体83は、伝達部83aによって積層型圧電素子18を保持し、基本弾性体12に積層型圧電素子18を密着固定する。
【0051】
保持用弾性体83は、凹部16a,16bを介して基本弾性体12に接着、積層型圧電素子18と共に基本弾性体12に両端を保持される。
【0052】
本実施形態において第2の弾性体82と保持用弾性体83とは、別体である。
【0053】
第2の弾性体82の外径は、第1の弾性体81の外径と基本弾性体12の外径よりも小さい。そのため、第2の弾性体82と第1の弾性体81と基本弾性体12とによって深さ略1mm〜略2mmの溝部14が形成される。溝部14より下方(積層圧電素子18と反対側)の長さ寸法を変化させ、溝部14の相対位置を適切(所望)な位置とすることで、共振縦振動モードと共振捻れ振動との共振周波数をほぼ一致させる。
【0054】
次に本発明の動作方法について説明する。
まず超音波振動子10の作製方法について説明する。
積層型圧電素子18は、伝達部83aに載置される。下面18bには、接着剤が塗布されている。そのため積層型圧電素子18は伝達部83aに接着される。伝達部83aに載置された積層型圧電素子18を保持する保持用弾性体83は、凹部16a,16bに配置される。
【0055】
次に凸部15は、開口部82aに嵌め込まれる。このとき押圧部82bは、保持用弾性体83に当接する。次に軸51は、貫通孔15a,30を挿通する。このとき第1の弾性体81と第2の弾性体82と基本弾性体12とは、それぞれの中心軸が一致する。そしてオネジ58は、メネジ32に螺合した後に接着固定される。これにより軸51は、基本弾性体12の縦振動の節部と接着固定することとなる。
【0056】
このときオネジ58とメネジ32とが、螺合されることで、第2の弾性体82を基本弾性体12に圧入し、第2の弾性体82を基本弾性体12に固定する。
またこのとき押圧部82bは、保持用弾性体83を押圧する。
【0057】
なお第1の弾性体81のねじ止めを調整することで、押圧力が調整され、この調整に応じて押圧部82bは、基本弾性体12の基端部13a側から保持用弾性体83を押圧する。
【0058】
押圧部82bは、保持用弾性体83をそれぞれ押圧する。このとき押圧部82bは、凹部16aにおける保持用弾性体83と凹部16bにおける保持用弾性体83とを同時に且つ同量の押圧力にて押圧する。つまり凹部16aにおける保持用弾性体83と凹部16bにおける保持用弾性体83とは、押圧部82bによって、同時に且つ均等の押圧力にて押圧される。
【0059】
これにより保持用弾性体83において、伝達部83aは、この押圧力を基に下面18b側から積層型圧電素子18の積層方向に沿って積層型圧電素子18を予圧する。つまり積層型圧電素子18は、伝達部83aを通じて、押圧力を基に予圧される。
【0060】
保持用弾性体83は、積層型圧電素子18を保持し、積層型圧電素子18を予圧し、積層型圧電素子18を基本弾性体12に隙間無く密着固定する。よって積層型圧電素子18は、予圧された状態で基本弾性体12に密着固定される。
【0061】
なお積層型圧電素子18は、凹部16a,16bにそれぞれ配設されている。各積層型圧電素子18は、押圧部82bと伝達部83aによって同一の予圧を同時に与えられる。よって凹部16a,16bにそれぞれ配設されている積層型圧電素子18に対する予圧のばらつきは、抑えられる。
【0062】
またこのとき、保持用弾性体83は、凹部16a,16bを介して基本弾性体12に接着、またはねじ止め固定される。
【0063】
次に、超音波振動子10の動作について説明する。
超音波振動子10は、超音波振動子10の寸法が1次の共振縦振動、および1次の(溝部14より下方の捻れまで考慮すると2次の)共振捻れ振動がほぼ同一周波数Frで励起できるようになっている。
共振縦振動は、図2に示す矢印Z方向の振動である。1次の共振捻れ振動は、図1に示す矢印ω方向の振動であり、共振縦振動の振動方向(矢印Z方向)を捻れの軸とする振動である。この周波数近傍には、共振屈曲振動の固有振動はないような形状寸法に形成されている。
【0064】
まず、A端子に周波数Frで、振幅Vrの交番電圧を印加し、B端子に同一周波数、同振幅で同位相の交番電圧を印加すると共振縦振動が励起される。共振縦振動の節位置は、基本弾性体12の中心軸上で、超音波振動子10の長手方向のほぼ中央に存在する。
つぎに、A端子に周波数Frで、振幅Vrの交番電圧を印加し、B端子に同一周波数、同振幅で逆位相の交番電圧を印加すると共振捻れ振動が励起される。共振捻れ振動では、基本弾性体12の中心軸上で、長手方向のほぼ中央に節位置がある。
さらに、A端子に周波数Frで、振幅Vrの交番電圧を印加し、B端子に同一周波数、同振幅で位相が90度異なった交番電圧を印加すると共振縦振動と共振捻れ振動が合成されて、摺動用駆動子26の位置に超音波楕円振動が励起される。
【0065】
つぎに、図6と図7とを用いて、超音波振動子10を用いた本実施例の超音波モータ1の動作方法について説明する。図6と図7とにおいて、また上述した超音波振動子10の作製方法において、軸51は貫通孔15aに挿通され、貫通孔30(図7参照)に設けられたメネジ32とオネジ58とが螺合すると、軸51は基本弾性体12の縦振動の節部にて基本弾性体12に接着固定することとなる。
【0066】
摺動用駆動子26(超音波振動子10の上端部)には、ロータ53がラジアルベアリング54およびバネ保持体55を介して、コイルバネ56により押圧固定されている。コイルバネ56の押圧力はナット57により調節される。ロータ53は、摺動材53aを介して摺動用駆動子26と当接する。これにより押圧機構70が形成される。
【0067】
先に示したように、超音波振動子10のA端子とB端子とに、周波数Fr、振幅Vr、位相差+90度または−90度の交番電圧を印加する。すると、ロータ53が摺動用駆動子26に対して時計回りまたは反時計回りに回転する。
このように本実施形態では、予圧機構80において、第1の弾性体81をねじ止めすることで、第2の弾性体82と伝達部83aとによって積層型圧電素子18を同時に且つ均等の力で簡易に予圧することができる。また本実施形態では、凹部16a,16bにそれぞれ配設されている積層型圧電素子18に対して、予圧のばらつきを防止でき、超音波モータ1の性能を高く保つことができる。
【0068】
また本実施形態では、超音波モータ1を作製(組み立てる)する際に、第1の弾性体81をねじ止めするのみで、積層型圧電素子18を簡易に予圧することができ、予圧の手間を省くことができる。
【0069】
また本実施形態では、保持用弾性体83を用いても冶具などを用いずに第1の弾性体81をねじ止めするのみで、簡易に超音波モータ1を作製することができ、超音波モータ1を安価にすることができる。
【0070】
また本実施形態では、第1の弾性体81のねじ止めを調整することで、予圧を調整することができる。また本実施形態では、予圧機構80は、基本弾性体12の長手方向において積層型圧電素子18を挟んで押圧機構70や摺動用駆動子26やロータ53とは反対側に配設されている。よって本実施形態では、超音波モータ1を作製した後でも、第1の弾性体81のねじ止めを調整でき、予圧を調整することができる。
【0071】
また本実施形態では、積層型圧電素子18を基本弾性体12に固定する力(予圧)を積層型圧電素子18に直接的に伝えることができる。よって本実施形態では、効率よく予圧を積層型圧電素子18に伝達でき、予圧の伝達効率を向上させることができる。
【0072】
また本実施形態では、第1の弾性体81によって第2の弾性体82を基本弾性体12に圧入し固定することで、第1の弾性体81の押圧力を第2の弾性体82を通じて保持用弾性体83に無駄なく伝達することができる。
【0073】
また本実施形態では、圧入によって第2の弾性体82を基本弾性体12に固定することで、第1の弾性体81が第2の弾性体82を基本弾性体12にねじ止めする際の力を、保持用弾性体83と基本弾性体12とに直接伝達することを防止することができる。
【0074】
次に図8乃至図9を参照して第2の実施形態について説明する。第1の実施形態と同一の構成については第1の実施形態と同一の参照符号を付すことにより説明を省略する。
本実施形態において第2の弾性体82は、保持用弾性体83と一体(同体)である。
【0075】
これにより本実施形態では、超音波モータ1の部品数を削減することができ、組立工数を削減でき、より安価な超音波モータ1を提供することができる。また本実施形態では超音波モータ1をより容易に組み立てることができる。
【0076】
次に図10乃至図11を参照して第3の実施形態について説明する。第1,2の実施形態と同一の構成については。第1,2の実施形態と同一の参照符号を付すことにより説明を省略する。
本実施形態の基本弾性体12は、下端から例えば11mmの位置の外周にて、全周に渡って形成(凹設)されている深さ略1mm〜略2mmの溝部14を有している。溝部14より下方(積層圧電素子14と反対側)の長さ寸法を変化させ、溝部14の相対位置を適切(所望)な位置とすることで、共振縦振動モードと共振捻れ振動との共振周波数をほぼ一致させる。
【0077】
溝部14よりも上方に位置する基本弾性体12の基端部13aの外径D1は、摺動用駆動子26側の基本弾性体12の先端部13bの外径D2に比べて小さい。つまり基本弾性体12の基端部13aは、基本弾性体12の先端部13bよりも細径である。基本弾性体12の基端部13aの外周には、ねじ山12hが形成されている。
【0078】
本実施形態の予圧機構80は、積層型圧電素子18を基本弾性体12に密着固定するために、ねじ山12hを介して保持用弾性体83をねじ止めすることで保持用弾性体83を介して積層型圧電素子18を予圧する押圧リング84を有している。
【0079】
押圧リング84の内径D3は、基本弾性体12の基端部13aの外径D1に比べて大きい。押圧リング84の中心軸は、基本弾性体12の中心軸と同一直線上に配設される。
【0080】
また本実施形態の保持用弾性体83は、リング形状を有している。保持用弾性体83は、押圧リング84がねじ山12hを通じて保持用弾性体83をねじ止めすることで、積層型圧電素子18それぞれに同時に予圧を加える。
【0081】
本実施形態では、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また本実施形態では、押圧リング84と基本弾性体12の基端部13aとは、一体化する。よって本実施形態では、軸51を介して振動を被駆動材であるロータ53に効率よく伝達でき、振動のロスを削減することができ、振動の伝達効率を向上させることができる。
【0082】
次に図12乃至図13を参照して第4の実施形態について説明する。第1,2,3の実施形態と同一の構成については。第1,2,3の実施形態と同一の参照符号を付すことにより説明を省略する。
【0083】
本実施形態の保持用弾性体83は、凹部16a,16bにおいて、積層型圧電素子18よりも基本弾性体12の先端部13b側に配置される。
保持用弾性体83は、積層型圧電素子18の上面18aから積層型圧電素子18を保持する
基本弾性体12の先端部13bの外径D2は、基本弾性体12の基端部13aの外径D1よりも小さい。つまり基本弾性体12の先端部13bは、基本弾性体12の基端部13aよりも細径である。なお本実施形態の場合、基本弾性体12の基端部13aの外径D1は、積層型圧電素子18が配設される基本弾性体12の中端部の外径と略同一である。基本弾性体12の先端部13bの外周には、ねじ山12hが形成されている。
【0084】
この場合、押圧リング84は、ねじ山12hを通じて基本弾性体12の先端部13bをねじ止めすることで保持用弾性体83を介して積層型圧電素子18を予圧する。このとき押圧リング84の中心軸は、基本弾性体12の中心軸と同一直線上に配設される。
【0085】
これにより本実施形態では、摺動用駆動子26とロータ53と押圧機構70とが配設される基本弾性体12の先端部13b側からの組み立てが可能となり、超音波モータ1を容易に組み立てることができる。
【0086】
また本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。
【符号の説明】
【0087】
1…超音波モータ、10…超音波振動子、12…基本弾性体(棒状弾性体)、12a…正面、12b…裏面、12c,12d…側面、13a…基端部、13b…先端部、14…溝部、15…凸部、15a…貫通孔、16a,16b…凹部、18…積層型圧電素子、18a…上面、18b…下面、18f…圧電素子、26…摺動用駆動子(摩擦子)、30…貫通孔、32…メネジ、51…軸、53…ロータ、53a…摺動材、54…ラジアルベアリング、55…バネ保持体、56…コイルバネ、57…ナット、58…オネジ、70…押圧機構、80…予圧機構、81…第1の弾性体、82a…開口部、82…第2の弾性体、82b…押圧部、83…保持用弾性体、83a…伝達部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を駆動源とした超音波モータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電磁型モータに代わる新しいモータとして、超音波モータが注目されている。超音波モータは、圧電素子などの振動子の振動を利用する。超音波モータは、従来の電磁型モータと比較して、ギアなしで低回転高トルクが得られる点、保持力が大きい点、高分解能である点、静粛性に富む点、磁気的ノイズを発生せず、また、磁気的ノイズの影響を受けない点等の利点を有している。
【0003】
例えば特許文献1には、1種類の圧電素子を用いて構成でき、構成が簡略な超音波モータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−121573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている超音波モータにおいて、基本弾性体の一方の側面と他方の側面とは互いに対向しており、一方の側面と他方の側面とには積層型圧電素子がそれぞれ配置されている。積層型圧電素子を基本弾性体に固定するためには、保持用弾性体等によって基本弾性体に対して積層型圧電素子を予圧する必要が生じる。この予圧とは、積層型圧電素子に加える圧縮力である。また保持用弾性体を用いる際に、組立冶具等の別部品を使用する必要が生じる。
【0006】
しかしながら保持用弾性体は、一方の側面と他方の側面とにおける積層型圧電素子それぞれに対して、別々に予圧するために、均等に予圧できない虞が生じ(予圧がばらつく虞が生じ)、超音波振動子の性能に影響を及ぼす可能性が生じる。また積層型圧電素子を予圧するために保持用弾性体を用いる際に、組立冶具が必要となり、簡易に予圧できず、予圧に手間がかかってしまう。
【0007】
本発明は、これらの事情に鑑みてなされたものであり、積層型圧電素子に均等且つ簡易に予圧できる超音波モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は目的を達成するために、棒状弾性体と、前記棒状弾性体に両端を保持され、変位方向と前記棒状弾性体の長手方向との間の角度において鋭角を有した状態で前記棒状弾性体の対向する2つの側面にそれぞれ配設され、さらに前記棒状弾性体の長手方向において正対して見て互いに反対方向に傾斜して前記棒状弾性体に配置される一対の積層型圧電素子と、前記棒状弾性体の先端部に接合されている摩擦子と、を具備し、一対の前記積層型圧電素子にそれぞれ位相の異なる交番電圧を印加することにより、縦振動と捻れ振動とを同時に励起し、前記摩擦子に超音波楕円運動を励起させる超音波モータであって、前記積層型圧電素子を前記棒状弾性体に密着固定するために、前記積層型圧電素子を前記積層型圧電素子の積層方向に沿って同時に且つ均等に予圧する予圧機構を具備することを特徴とする超音波モータを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、積層型圧電素子に均等且つ簡易に予圧できる超音波モータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る超音波モータを構成する超音波振動子の上面図である。
【図2】図2は、超音波振動子を図1に示すα方向からみた図(正面図)である。
【図3】図3は、超音波振動子を図1に示すβ方向からみた図(背面図)である。
【図4】図4は、超音波振動子を図1に示すγ方向からみた図(右側面図)である。
【図5】図5は、超音波振動子を図1に示すδ方向から視た図(左側面図)である。
【図6】図6は、超音波振動子を用いた超音波モータの側面図である。
【図7】図7は、超音波振動子を用いた超音波モータの分解図である。
【図8】図8は、第2の実施形態における超音波振動子を用いた超音波モータの側面図である。
【図9】図9は、第2の実施形態における超音波振動子を用いた超音波モータの分解図である。
【図10】図10は、第3の実施形態における超音波振動子を用いた超音波モータの分解図である。
【図11】図11は、第3の実施形態における超音波振動子を用いた超音波モータの側面図である。
【図12】図12は、第4の実施形態における超音波振動子を用いた超音波モータの分解図である。
【図13】図13は、第4の実施形態における超音波振動子を用いた超音波モータの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1乃至図7を参照して第1の実施形態について説明する。
超音波モータ1は、図1乃至図7に示すよう、超音波による振動を発生させる超音波振動子10と、超音波振動子10の振動が伝達され駆動される被駆動部材であるロータ53と、被駆動部材(ロータ53)と超音波振動子10とに押圧力を与える押圧機構70と、超音波振動子10に設けられる後述する積層型圧電素子18に予圧力を与える予圧機構80とを有している。
【0012】
超音波振動子10は、例えば黄銅材(C2801PのO材)からなる角柱又は円柱形状の棒状弾性体である基本弾性体12と、図示しない駆動源により交番電圧が印加され励振する電気機械変換素子である積層型圧電素子18と、基本弾性体12の長手方向上端部にて被駆動部材(ロータ53)に対向して配置され、積層型圧電素子18による振動を被駆動部材(ロータ53)に伝達する摺動用駆動子26とを有している。
【0013】
図2に示すように基本弾性体12の正面12aに凹部16aを有し、図3に示すように正面12aに対向する基本弾性体12の裏面12bに凹部16bを有している。凹部16a,16bは、正面12aと裏面12bとに限定される必要はなく、基本弾性体12の対向する側面12c,12dに配置されていてもよい。
【0014】
凹部16aは、基本弾性体12の高さ(長手)方向に対して所望の角度だけ傾けられた状態で正面12aに配設されている。凹部16bも凹部16aと同様に、基本弾性体12の高さ(長手)方向に対して凹部16aと同じ所望の角度だけ傾けられた状態で裏面12bに配設されている。この場合、凹部16a,16bは、正対して見て逆方向に取付けられている。また凹部16a,16bの傾き角度は、基本弾性体12の高さ(長手)方向と、凹部16a,16bの長手方向との間において鋭角である。
【0015】
この凹部16a,16bには、積層型圧電素子18と、積層型圧電素子18を保持する後述する保持用弾性体83とがそれぞれ挿入される。積層型圧電素子18は、超音波による振動を発生させる振動本体部であり、電気機械変換素子である。保持用弾性体83は、凹部16a,16bにおいて、積層型圧電素子18よりも基本弾性体12の基端部13a側に配置される。積層型圧電素子18と保持用弾性体83とは、凹部16a,16bに挿入されるため、凹部16a,16bと同様に所望の角度だけ傾けられた状態で配置される。
【0016】
図4および図5に示すように、積層型圧電素子18と保持用弾性体83との側面は、表裏面ともに長手方向で同位置に投影されている。つまり積層型圧電素子18は、変位方向と基本弾性体12の長手方向との間の角度において鋭角を有した状態で基本弾性体12の対向する2つの側面である正面12aと裏面12bとにそれぞれ配設される。さらにこれら積層型圧電素子18は、基本弾性体12の長手方向において正対して見て互いに反対方向に傾斜して基本弾性体12に配置される。
【0017】
なお凹部16aに配置されている積層型圧電素子18と保持用弾性体83と、凹部16bに配置されている積層型圧電素子18と保持用弾性体83とは、基本弾性体12を挟持していることとなる。またこれら積層型圧電素子18は、両端を基本弾性体12(凹部16a,16bと保持用弾性体83)により保持されていることとなる。
【0018】
また、凹部16aに挿入される積層型圧電素子18から出されている電気端子は、それぞれA端子とGND端子とである。また、凹部16bに挿入される積層型圧電素子18から出されている電気端子は、それぞれB端子とGND端子とである。
【0019】
次に積層型圧電素子18について詳細に説明する。
積層型圧電素子18は、複数の板状の圧電素子18fが積層され、積層した圧電素子18fを2個の図示しない絶縁板によって挟むことで構成されており、基本弾性体12の長手方向に対して傾斜して配置されている。このような積層化は接着剤を用いても良いし、一体焼成法によっても良い。
【0020】
圧電素子18fは、超音波振動子10の駆動用の圧電素子である。この圧電素子18fは、例えば100μmの厚みを有し、例えばチタン酸ジルコン酸鉛系圧電セラミックス素子(PZT)である。なお圧電素子18fの一部は、例えば振動検出用として用いられても良い。
【0021】
圧電素子18fの表面と裏面とには、+用電極と−用電極のいずれかを有している図示しない内部電極が形成されている。上述したように圧電素子18fが積層する際、+用電極の内部電極を有する圧電素子18fと、−用電極の内部電極を有する圧電素子18fと、が交互に積層する。
【0022】
内部電極は、例えば4μmの厚さを有し、例えば銀パラジウム合金である。内部電極の面積は、圧電素子18fの面積に可能な限り近いことが好適である。
【0023】
なお内部電極同士の積層の際の接続は、それぞれ短絡した外部電極で行う。そして+用電極の内部電極と−用電極の内部電極との間に高電圧を印加して、圧電素子18fを分極させ、圧電的に活性化させる。
【0024】
なお積層型圧電素子18の構成は、上記に限定する必要はない。
【0025】
超音波振動子10の上端部である基本弾性体12の先端部13bには、例えば円環状のフェノール樹脂にアルミナセラミックの砥粒を分散させた砥石からなる摩擦子や複合樹脂である摺動用駆動子26が接合されている。
【0026】
超音波モータ1は、一対の積層型圧電素子18にそれぞれ位相の異なる交番電圧を印加することにより、縦振動と捻れ振動とを同時に励起し、摺動用駆動子26に超音波楕円運動を励起させる。
【0027】
基本弾性体12の中心軸上には、貫通孔30が穿設されている。この貫通孔30の中心軸上の超音波振動子10の縦振動の節位置には、メネジ32が螺刻されている(図7参照)。
【0028】
貫通孔30には、後述する第1の弾性体81における軸51が嵌装される。この軸51は、図2に示すように超音波振動子10の先端部13bから突出する長さを有している。
【0029】
またこの軸51には、オネジ58,オネジ59が螺刻されている。
オネジ58は、メネジ32の配設位置(超音波振動子10の縦振動の節位置)に対応するように軸51に配設されている。オネジ58は、メネジ32と螺合し、その後、接着固定される。これにより軸51は、基本弾性体12の縦振動の節部にて接着固定される。
オネジ59は、先端部13bから突出する軸51の先端部に配設されている。オネジ59は、ナット57の配設位置に対応するように軸51に配設されている。このオネジ59には、ナット57が嵌合する。
【0030】
超音波振動子10の上端部である摺動用駆動子26には、摺動用駆動子26によって駆動される円環状のロータ53が配設される。詳細には、摺動用駆動子26に対向するロータ53の下面には、例えば円環状のセラミックスからなる摺動材53aが貼付されている。ロータ53の断面形状と摺動材53aの断面形状とは同一であり、ロータ53は摺動材53aを介して摺動用駆動子26と接触し、駆動される。
【0031】
またロータ53の内部には、ラジアルベアリング54が配置される。またロータ53の上部には、バネ保持体55が配設される。バネ保持体55は、コイルバネ56を位置決め保持している。
【0032】
ロータ53と摺動材53aとラジアルベアリング54とバネ保持体55とには、軸51が挿通している。
【0033】
ロータ53は、コイルバネ56によって、バネ保持体55とラジアルベアリング54とを介して摺動用駆動子26に向けて回転可能に押圧固定されている。より詳細には、摺動材53aが摺動用駆動子26に対して押圧固定される。
【0034】
コイルバネ56は、バネ保持体55によって保持され、ナット57によってバネ保持体55(軸51)からの抜けを防止されている。このナット57は、コイルバネ56の押圧力を調整する。
【0035】
つまりコイルバネ56は、軸51を螺旋状に囲み、バネ保持体55によって保持され、ナット57によって軸51から外れないように配設される。コイルバネ56の押圧力は、ナット57により調節される。コイルバネ56は、コイルバネ56の押圧力によって、バネ保持体55とラジアルベアリング54とを介してロータ53を摺動用駆動子26へと押圧する。
【0036】
このようにナット57とコイルバネ56とバネ保持体55とラジアルベアリング54とは、ロータ53を摺動用駆動子26に押圧する押圧機構70である。
【0037】
基本弾性体12の基端部13a(下面12g)には、長手方向に凸設されている凸部15が配設されている。凸部15は、後述する第2の弾性体82に設けられた開口部82aに嵌め込まれる。凸部15には、貫通孔30と連通している貫通孔15aが配設されている。
【0038】
また超音波モータ1は、超音波振動子10において、積層型圧電素子18を基本弾性体12に密着固定するために、保持用弾性体83を基本弾性体12の長手方向に沿って押圧し、積層型圧電素子18を積層型圧電素子18の積層方向に沿って予圧する予圧機構80を有している。この予圧機構80は、凹部16aに挿入される正面12a側の積層型圧電素子18と、凹部16bに挿入される裏面12b側の積層型圧電素子18とをそれぞれ同時に且つ同じ力量で(均等に)予圧する。この予圧とは、積層型圧電素子18を基本弾性体12に隙間無く密着固定させるために、保持用弾性体83を押圧し、積層型圧電素子18に大気圧よりも高い圧力をかけることであり、積層型圧電素子18に加える圧縮力を示す。
【0039】
予圧機構80が積層型圧電素子18を予圧し、積層型圧電素子18が基本弾性体12に固定される事で、積層型圧電素子18の振動は基本弾性体12に伝達される。
【0040】
予圧機構80は、基本弾性体12の基端部13a(下面12g)側に配設され、基本弾性体12の長手方向において積層型圧電素子18を挟んで押圧機構70や摺動用駆動子26やロータ53とは反対側に配設されている。
【0041】
予圧機構80は、基本弾性体12を基本弾性体12の基端部13a(下面12g)側から押圧する第1の弾性体81と、第1の弾性体81と基本弾性体12の基端部13aとの間に配設され、第1の弾性体81の押圧力を基本弾性体12の基端部13aに伝達する第2の弾性体82と、積層型圧電素子18を基本弾性体12に密着固定するために、第1の弾性体81から第2の弾性体82を介して伝達される押圧力によって、積層型圧電素子18を基本弾性体12に向って同時に且つ均等に予圧し、この予圧によって積層型圧電素子18を基本弾性体12に密着固定するように積層型圧電素子18を保持する保持用弾性体83とを有している。
【0042】
第1の弾性体81は、超音波モータ1の中心軸として貫通孔30に螺合可能であり、貫通孔30に挿通される軸51を有している。第1の弾性体81は、基本弾性体12にねじ止めによって固定される。
【0043】
軸51は、図2に示すように基本弾性体12の先端部13bから突出する長さを有している。突出する長さは、図6に示すように摺動用駆動子26とロータ53と押圧機構70とが配設される長さである。このように軸51は、摺動用駆動子26とロータ53と押圧機構70とを支持する支持軸でもある。軸51は、上述したようにオネジ58,59を有している。また軸51が貫通孔30に挿通した際、第1の弾性体81は、第2の弾性体82を貫通孔15a(基本弾性体12)に圧入させ、第2の弾性体82を第1の弾性体81と基本弾性体12とで挟持する。そして第1の弾性体81は、この圧入によって第2の弾性体82を基本弾性体12に固定する。
【0044】
第2の弾性体82は、凸部15が嵌め込まれる開口部82aと、第1の弾性体81によって保持用弾性体83をそれぞれ押圧する1対の押圧部82bとを有している。
【0045】
第2の弾性体82は、第1の弾性体81が基本弾性体12にねじ止めされる際に生じる力を、保持用弾性体83に伝達する。
【0046】
開口部82aは、第2の弾性体82の長手方向に沿って貫通している。そのため凸部15が開口部82aに嵌め込まれ、軸51が貫通孔15a,30を挿通すると、基本弾性体12と第1の弾性体81と第2の弾性体82とは、一体となる。またこのとき基本弾性体12と第1の弾性体81と第2の弾性体82との中心軸は、一致(一体化)する。
【0047】
押圧部82bは、第1の弾性体81と基本弾性体12とのねじ止めによる締結力によって保持用弾性体83を押圧する。
【0048】
押圧部82bは、凹部16aに挿入される保持用弾性体83と、凹部16bに挿入される保持用弾性体83とに対応するように第2の弾性体82に一対配設されている。押圧部82bは、保持用弾性体83をそれぞれ同時且つ均等の力で押圧する。
【0049】
保持用弾性体83は、押圧部82bにおける押圧力を基に、積層型圧電素子18を同時に且つ均等に予圧する。保持用弾性体83は、予圧する際に、この予圧を積層型圧電素子18の下面18b側から積層型圧電素子18の積層方向に沿って積層型圧電素子18に伝達する伝達部83aを有している。伝達部83aは、積層型圧電素子18が載置(当接)する保持用弾性体83の載置面である。伝達部83aは、上述したように積層型圧電素子18が傾くように、所望に傾けられている。
【0050】
なお伝達部83aに載置する積層型圧電素子18の載置面である下面18bには、エポキシ樹脂等の接着剤が塗布される。積層型圧電素子18は接着剤によって保持用弾性体83に接着しているため、伝達部83aが予圧を積層型圧電素子18に伝達すると、積層型圧電素子18は保持用弾性体83を介して基本弾性体12に密着固定される。このように保持用弾性体83は、伝達部83aによって積層型圧電素子18を保持し、基本弾性体12に積層型圧電素子18を密着固定する。
【0051】
保持用弾性体83は、凹部16a,16bを介して基本弾性体12に接着、積層型圧電素子18と共に基本弾性体12に両端を保持される。
【0052】
本実施形態において第2の弾性体82と保持用弾性体83とは、別体である。
【0053】
第2の弾性体82の外径は、第1の弾性体81の外径と基本弾性体12の外径よりも小さい。そのため、第2の弾性体82と第1の弾性体81と基本弾性体12とによって深さ略1mm〜略2mmの溝部14が形成される。溝部14より下方(積層圧電素子18と反対側)の長さ寸法を変化させ、溝部14の相対位置を適切(所望)な位置とすることで、共振縦振動モードと共振捻れ振動との共振周波数をほぼ一致させる。
【0054】
次に本発明の動作方法について説明する。
まず超音波振動子10の作製方法について説明する。
積層型圧電素子18は、伝達部83aに載置される。下面18bには、接着剤が塗布されている。そのため積層型圧電素子18は伝達部83aに接着される。伝達部83aに載置された積層型圧電素子18を保持する保持用弾性体83は、凹部16a,16bに配置される。
【0055】
次に凸部15は、開口部82aに嵌め込まれる。このとき押圧部82bは、保持用弾性体83に当接する。次に軸51は、貫通孔15a,30を挿通する。このとき第1の弾性体81と第2の弾性体82と基本弾性体12とは、それぞれの中心軸が一致する。そしてオネジ58は、メネジ32に螺合した後に接着固定される。これにより軸51は、基本弾性体12の縦振動の節部と接着固定することとなる。
【0056】
このときオネジ58とメネジ32とが、螺合されることで、第2の弾性体82を基本弾性体12に圧入し、第2の弾性体82を基本弾性体12に固定する。
またこのとき押圧部82bは、保持用弾性体83を押圧する。
【0057】
なお第1の弾性体81のねじ止めを調整することで、押圧力が調整され、この調整に応じて押圧部82bは、基本弾性体12の基端部13a側から保持用弾性体83を押圧する。
【0058】
押圧部82bは、保持用弾性体83をそれぞれ押圧する。このとき押圧部82bは、凹部16aにおける保持用弾性体83と凹部16bにおける保持用弾性体83とを同時に且つ同量の押圧力にて押圧する。つまり凹部16aにおける保持用弾性体83と凹部16bにおける保持用弾性体83とは、押圧部82bによって、同時に且つ均等の押圧力にて押圧される。
【0059】
これにより保持用弾性体83において、伝達部83aは、この押圧力を基に下面18b側から積層型圧電素子18の積層方向に沿って積層型圧電素子18を予圧する。つまり積層型圧電素子18は、伝達部83aを通じて、押圧力を基に予圧される。
【0060】
保持用弾性体83は、積層型圧電素子18を保持し、積層型圧電素子18を予圧し、積層型圧電素子18を基本弾性体12に隙間無く密着固定する。よって積層型圧電素子18は、予圧された状態で基本弾性体12に密着固定される。
【0061】
なお積層型圧電素子18は、凹部16a,16bにそれぞれ配設されている。各積層型圧電素子18は、押圧部82bと伝達部83aによって同一の予圧を同時に与えられる。よって凹部16a,16bにそれぞれ配設されている積層型圧電素子18に対する予圧のばらつきは、抑えられる。
【0062】
またこのとき、保持用弾性体83は、凹部16a,16bを介して基本弾性体12に接着、またはねじ止め固定される。
【0063】
次に、超音波振動子10の動作について説明する。
超音波振動子10は、超音波振動子10の寸法が1次の共振縦振動、および1次の(溝部14より下方の捻れまで考慮すると2次の)共振捻れ振動がほぼ同一周波数Frで励起できるようになっている。
共振縦振動は、図2に示す矢印Z方向の振動である。1次の共振捻れ振動は、図1に示す矢印ω方向の振動であり、共振縦振動の振動方向(矢印Z方向)を捻れの軸とする振動である。この周波数近傍には、共振屈曲振動の固有振動はないような形状寸法に形成されている。
【0064】
まず、A端子に周波数Frで、振幅Vrの交番電圧を印加し、B端子に同一周波数、同振幅で同位相の交番電圧を印加すると共振縦振動が励起される。共振縦振動の節位置は、基本弾性体12の中心軸上で、超音波振動子10の長手方向のほぼ中央に存在する。
つぎに、A端子に周波数Frで、振幅Vrの交番電圧を印加し、B端子に同一周波数、同振幅で逆位相の交番電圧を印加すると共振捻れ振動が励起される。共振捻れ振動では、基本弾性体12の中心軸上で、長手方向のほぼ中央に節位置がある。
さらに、A端子に周波数Frで、振幅Vrの交番電圧を印加し、B端子に同一周波数、同振幅で位相が90度異なった交番電圧を印加すると共振縦振動と共振捻れ振動が合成されて、摺動用駆動子26の位置に超音波楕円振動が励起される。
【0065】
つぎに、図6と図7とを用いて、超音波振動子10を用いた本実施例の超音波モータ1の動作方法について説明する。図6と図7とにおいて、また上述した超音波振動子10の作製方法において、軸51は貫通孔15aに挿通され、貫通孔30(図7参照)に設けられたメネジ32とオネジ58とが螺合すると、軸51は基本弾性体12の縦振動の節部にて基本弾性体12に接着固定することとなる。
【0066】
摺動用駆動子26(超音波振動子10の上端部)には、ロータ53がラジアルベアリング54およびバネ保持体55を介して、コイルバネ56により押圧固定されている。コイルバネ56の押圧力はナット57により調節される。ロータ53は、摺動材53aを介して摺動用駆動子26と当接する。これにより押圧機構70が形成される。
【0067】
先に示したように、超音波振動子10のA端子とB端子とに、周波数Fr、振幅Vr、位相差+90度または−90度の交番電圧を印加する。すると、ロータ53が摺動用駆動子26に対して時計回りまたは反時計回りに回転する。
このように本実施形態では、予圧機構80において、第1の弾性体81をねじ止めすることで、第2の弾性体82と伝達部83aとによって積層型圧電素子18を同時に且つ均等の力で簡易に予圧することができる。また本実施形態では、凹部16a,16bにそれぞれ配設されている積層型圧電素子18に対して、予圧のばらつきを防止でき、超音波モータ1の性能を高く保つことができる。
【0068】
また本実施形態では、超音波モータ1を作製(組み立てる)する際に、第1の弾性体81をねじ止めするのみで、積層型圧電素子18を簡易に予圧することができ、予圧の手間を省くことができる。
【0069】
また本実施形態では、保持用弾性体83を用いても冶具などを用いずに第1の弾性体81をねじ止めするのみで、簡易に超音波モータ1を作製することができ、超音波モータ1を安価にすることができる。
【0070】
また本実施形態では、第1の弾性体81のねじ止めを調整することで、予圧を調整することができる。また本実施形態では、予圧機構80は、基本弾性体12の長手方向において積層型圧電素子18を挟んで押圧機構70や摺動用駆動子26やロータ53とは反対側に配設されている。よって本実施形態では、超音波モータ1を作製した後でも、第1の弾性体81のねじ止めを調整でき、予圧を調整することができる。
【0071】
また本実施形態では、積層型圧電素子18を基本弾性体12に固定する力(予圧)を積層型圧電素子18に直接的に伝えることができる。よって本実施形態では、効率よく予圧を積層型圧電素子18に伝達でき、予圧の伝達効率を向上させることができる。
【0072】
また本実施形態では、第1の弾性体81によって第2の弾性体82を基本弾性体12に圧入し固定することで、第1の弾性体81の押圧力を第2の弾性体82を通じて保持用弾性体83に無駄なく伝達することができる。
【0073】
また本実施形態では、圧入によって第2の弾性体82を基本弾性体12に固定することで、第1の弾性体81が第2の弾性体82を基本弾性体12にねじ止めする際の力を、保持用弾性体83と基本弾性体12とに直接伝達することを防止することができる。
【0074】
次に図8乃至図9を参照して第2の実施形態について説明する。第1の実施形態と同一の構成については第1の実施形態と同一の参照符号を付すことにより説明を省略する。
本実施形態において第2の弾性体82は、保持用弾性体83と一体(同体)である。
【0075】
これにより本実施形態では、超音波モータ1の部品数を削減することができ、組立工数を削減でき、より安価な超音波モータ1を提供することができる。また本実施形態では超音波モータ1をより容易に組み立てることができる。
【0076】
次に図10乃至図11を参照して第3の実施形態について説明する。第1,2の実施形態と同一の構成については。第1,2の実施形態と同一の参照符号を付すことにより説明を省略する。
本実施形態の基本弾性体12は、下端から例えば11mmの位置の外周にて、全周に渡って形成(凹設)されている深さ略1mm〜略2mmの溝部14を有している。溝部14より下方(積層圧電素子14と反対側)の長さ寸法を変化させ、溝部14の相対位置を適切(所望)な位置とすることで、共振縦振動モードと共振捻れ振動との共振周波数をほぼ一致させる。
【0077】
溝部14よりも上方に位置する基本弾性体12の基端部13aの外径D1は、摺動用駆動子26側の基本弾性体12の先端部13bの外径D2に比べて小さい。つまり基本弾性体12の基端部13aは、基本弾性体12の先端部13bよりも細径である。基本弾性体12の基端部13aの外周には、ねじ山12hが形成されている。
【0078】
本実施形態の予圧機構80は、積層型圧電素子18を基本弾性体12に密着固定するために、ねじ山12hを介して保持用弾性体83をねじ止めすることで保持用弾性体83を介して積層型圧電素子18を予圧する押圧リング84を有している。
【0079】
押圧リング84の内径D3は、基本弾性体12の基端部13aの外径D1に比べて大きい。押圧リング84の中心軸は、基本弾性体12の中心軸と同一直線上に配設される。
【0080】
また本実施形態の保持用弾性体83は、リング形状を有している。保持用弾性体83は、押圧リング84がねじ山12hを通じて保持用弾性体83をねじ止めすることで、積層型圧電素子18それぞれに同時に予圧を加える。
【0081】
本実施形態では、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また本実施形態では、押圧リング84と基本弾性体12の基端部13aとは、一体化する。よって本実施形態では、軸51を介して振動を被駆動材であるロータ53に効率よく伝達でき、振動のロスを削減することができ、振動の伝達効率を向上させることができる。
【0082】
次に図12乃至図13を参照して第4の実施形態について説明する。第1,2,3の実施形態と同一の構成については。第1,2,3の実施形態と同一の参照符号を付すことにより説明を省略する。
【0083】
本実施形態の保持用弾性体83は、凹部16a,16bにおいて、積層型圧電素子18よりも基本弾性体12の先端部13b側に配置される。
保持用弾性体83は、積層型圧電素子18の上面18aから積層型圧電素子18を保持する
基本弾性体12の先端部13bの外径D2は、基本弾性体12の基端部13aの外径D1よりも小さい。つまり基本弾性体12の先端部13bは、基本弾性体12の基端部13aよりも細径である。なお本実施形態の場合、基本弾性体12の基端部13aの外径D1は、積層型圧電素子18が配設される基本弾性体12の中端部の外径と略同一である。基本弾性体12の先端部13bの外周には、ねじ山12hが形成されている。
【0084】
この場合、押圧リング84は、ねじ山12hを通じて基本弾性体12の先端部13bをねじ止めすることで保持用弾性体83を介して積層型圧電素子18を予圧する。このとき押圧リング84の中心軸は、基本弾性体12の中心軸と同一直線上に配設される。
【0085】
これにより本実施形態では、摺動用駆動子26とロータ53と押圧機構70とが配設される基本弾性体12の先端部13b側からの組み立てが可能となり、超音波モータ1を容易に組み立てることができる。
【0086】
また本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。
【符号の説明】
【0087】
1…超音波モータ、10…超音波振動子、12…基本弾性体(棒状弾性体)、12a…正面、12b…裏面、12c,12d…側面、13a…基端部、13b…先端部、14…溝部、15…凸部、15a…貫通孔、16a,16b…凹部、18…積層型圧電素子、18a…上面、18b…下面、18f…圧電素子、26…摺動用駆動子(摩擦子)、30…貫通孔、32…メネジ、51…軸、53…ロータ、53a…摺動材、54…ラジアルベアリング、55…バネ保持体、56…コイルバネ、57…ナット、58…オネジ、70…押圧機構、80…予圧機構、81…第1の弾性体、82a…開口部、82…第2の弾性体、82b…押圧部、83…保持用弾性体、83a…伝達部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状弾性体と、
前記棒状弾性体に両端を保持され、変位方向と前記棒状弾性体の長手方向との間の角度において鋭角を有した状態で前記棒状弾性体の対向する2つの側面にそれぞれ配設され、さらに前記棒状弾性体の長手方向において正対して見て互いに反対方向に傾斜して前記棒状弾性体に配置される一対の積層型圧電素子と、
前記棒状弾性体の先端部に接合されている摩擦子と、
を具備し、
一対の前記積層型圧電素子にそれぞれ位相の異なる交番電圧を印加することにより、縦振動と捻れ振動とを同時に励起し、前記摩擦子に超音波楕円運動を励起させる超音波モータであって、
前記積層型圧電素子を前記棒状弾性体に密着固定するために、前記積層型圧電素子を前記積層型圧電素子の積層方向に沿って同時に且つ均等に予圧する予圧機構を具備することを特徴とする超音波モータ。
【請求項2】
前記予圧機構は、
前記棒状弾性体を前記棒状弾性体の基端部側から押圧する第1の弾性体と、
前記第1の弾性体と前記棒状弾性体の基端部との間に配設され、前記第1の弾性体の押圧力を前記棒状弾性体に伝達する第2の弾性体と、
前記積層型圧電素子を前記棒状弾性体に固定するために、前記第1の弾性体から前記第2の弾性体を介して伝達される押圧力によって、前記積層型圧電素子を前記基本弾性体に向って同時に且つ均等に予圧し、前記積層型圧電素子を保持する前記保持用弾性体と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項3】
前記保持用弾性体は、予圧する際に、前記予圧を積層型圧電素子の積層方向に沿って前記積層型圧電素子に伝達する伝達部を有することを特徴とする請求項2に記載の超音波モータ。
【請求項4】
前記第1の弾性体は、前記棒状弾性体にねじ止めによって固定されることを特徴とする請求項3に記載の超音波モータ。
【請求項5】
前記第1の弾性体は、前記第2の弾性体を前記棒状弾性体に圧入させ、圧入によって前記第2の弾性体を前記棒状弾性体に固定することを特徴とする請求項3に記載の超音波モータ。
【請求項6】
前記第2の弾性体は、前記保持用弾性体と一体であることを特徴とする請求項3に記載の超音波モータ。
【請求項7】
前記第1の弾性体と前記第2の弾性体と前記棒状弾性体との中心軸は、一体であることを特徴とする請求項3に記載の超音波モータ。
【請求項1】
棒状弾性体と、
前記棒状弾性体に両端を保持され、変位方向と前記棒状弾性体の長手方向との間の角度において鋭角を有した状態で前記棒状弾性体の対向する2つの側面にそれぞれ配設され、さらに前記棒状弾性体の長手方向において正対して見て互いに反対方向に傾斜して前記棒状弾性体に配置される一対の積層型圧電素子と、
前記棒状弾性体の先端部に接合されている摩擦子と、
を具備し、
一対の前記積層型圧電素子にそれぞれ位相の異なる交番電圧を印加することにより、縦振動と捻れ振動とを同時に励起し、前記摩擦子に超音波楕円運動を励起させる超音波モータであって、
前記積層型圧電素子を前記棒状弾性体に密着固定するために、前記積層型圧電素子を前記積層型圧電素子の積層方向に沿って同時に且つ均等に予圧する予圧機構を具備することを特徴とする超音波モータ。
【請求項2】
前記予圧機構は、
前記棒状弾性体を前記棒状弾性体の基端部側から押圧する第1の弾性体と、
前記第1の弾性体と前記棒状弾性体の基端部との間に配設され、前記第1の弾性体の押圧力を前記棒状弾性体に伝達する第2の弾性体と、
前記積層型圧電素子を前記棒状弾性体に固定するために、前記第1の弾性体から前記第2の弾性体を介して伝達される押圧力によって、前記積層型圧電素子を前記基本弾性体に向って同時に且つ均等に予圧し、前記積層型圧電素子を保持する前記保持用弾性体と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項3】
前記保持用弾性体は、予圧する際に、前記予圧を積層型圧電素子の積層方向に沿って前記積層型圧電素子に伝達する伝達部を有することを特徴とする請求項2に記載の超音波モータ。
【請求項4】
前記第1の弾性体は、前記棒状弾性体にねじ止めによって固定されることを特徴とする請求項3に記載の超音波モータ。
【請求項5】
前記第1の弾性体は、前記第2の弾性体を前記棒状弾性体に圧入させ、圧入によって前記第2の弾性体を前記棒状弾性体に固定することを特徴とする請求項3に記載の超音波モータ。
【請求項6】
前記第2の弾性体は、前記保持用弾性体と一体であることを特徴とする請求項3に記載の超音波モータ。
【請求項7】
前記第1の弾性体と前記第2の弾性体と前記棒状弾性体との中心軸は、一体であることを特徴とする請求項3に記載の超音波モータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−193591(P2010−193591A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34057(P2009−34057)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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