説明

超音波モータ

【課題】積層型圧電素子を弾性体に固定するための冶具や装置を用いなくても、積層型圧電素子を弾性体に容易に固定できる超音波モータを提供すること。
【解決手段】溝部14を有する棒状弾性体12と、棒状弾性体12に両端を保持され、変位方向と棒状弾性体12の長手方向との間の角度において鋭角を有した状態で正面12aと裏面12bとに配設され、さらに棒状弾性体12の長手方向において正対して見て互いに反対方向に傾斜して棒状弾性体12に配置される一対の積層型圧電素子18と、棒状弾性体12の先端部に接合されている摩擦子26と、を具備し、一対の積層型圧電素子18にそれぞれ位相の異なる交番電圧を印加することにより、縦振動と捻れ振動とを同時に励起し、摩擦子26に超音波楕円運動を励起させる超音波モータ1であって、超音波モータ1は、積層型圧電素子18を棒状弾性体12に密着固定するために積層型圧電素子18を与圧する与圧機構60を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械変換素子を駆動源として被駆動部材を駆動する超音波モータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電磁型モータに代わる新しいモータとして、超音波モータが注目されている。超音波モータは、圧電素子などの振動子の振動を利用する。超音波モータは、従来の電磁型モータと比較して、ギアなしで低回転高トルクが得られる点、保持力が大きい点、高分解能である点、静粛性に富む点、磁気的ノイズを発生せず、また、磁気的ノイズの影響を受けない点等の利点を有している。
【0003】
このような超音波モータは、電気機械変換素子(積層型圧電素子)と、電気機械変換素子を駆動源とする被駆動部材とを有している。被駆動部材は、電気機械変換素子の振動によって駆動する。
【0004】
例えば特許文献1には、構成が単純で、低電圧駆動が可能であるとともに、共振周波数が安定して得られる超音波モータが開示されている。
【0005】
この超音波モータは、外周の所定位置に溝を設けた角柱状弾性体と、角柱状弾性体の少なくとも対向する2つの側面に傾斜して設けた複数の積層型圧電素子と、角柱状弾性体の端面に接合した摺動用駆動子とを備え、複数の積層型圧電素子にそれぞれ位相の異なる交番電圧を印加することにより、共振縦振動と共振捩れ振動とを同時に励起し、摺動用駆動子の表面に超音波楕円振動を発生するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−317669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1における超音波モータにおいて、積層型圧電素子の破損を防止し、角柱状弾性体と積層型圧電素子とを一体化して同一の振動体とし、環境変化に追従して角柱状弾性体と積層型圧電素子とを一体化するためには、積層型圧電素子に圧力をかけながら、積層型圧電素子を角柱状弾性体に固定する必要がある。
【0008】
しかしながら、このような圧力による固定には、角柱状弾性体を固定する冶具と、積層型圧電素子を角柱状弾性体に固定するために積層型圧電素子を角柱状弾性体に押圧する保持用弾性体を保持する冶具と、保持用弾性体を角柱状弾性体に向って押圧する冶具等が必要となる。このような冶具を用いると、超音波モータの組み立ては困難となる。
【0009】
また積層型圧電素子は傾斜して配設されているため、保持用弾性体による押圧力は積層型圧電素子に伝達されにくく、つまり押圧による固定は容易ではない。
【0010】
本発明は、これらの事情に鑑みてなされたものであり、積層型圧電素子を弾性体に固定するための冶具や装置を用いなくても、積層型圧電素子を弾性体に容易に固定できる超音波モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は目的を達成するために、外周において全周に渡って形成される溝部を有する棒状弾性体と、前記棒状弾性体に両端を保持され、変位方向と前記棒状弾性体の長手方向との間の角度において鋭角を有した状態で前記棒状弾性体の対向する2つの側面にそれぞれ配設され、さらに前記棒状弾性体の長手方向において正対して見て互いに反対方向に傾斜して前記棒状弾性体に配置される一対の積層型圧電素子と、前記棒状弾性体の先端部に接合されている摩擦子と、を具備し、一対の前記積層型圧電素子にそれぞれ位相の異なる交番電圧を印加することにより、縦振動と捻れ振動とを同時に励起し、前記摩擦子に超音波楕円運動を励起させる超音波モータであって、前記積層型圧電素子を前記棒状弾性体に固定するために前記積層型圧電素子を与圧する与圧機構を有することを特徴とする超音波モータを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、積層型圧電素子を弾性体に固定するための冶具や装置を用いなくても、積層型圧電素子を弾性体に容易に固定できる超音波モータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る超音波モータを構成する超音波振動子の上面図である。
【図2】図2は、超音波振動子を図1に示すα方向からみた図(正面図)である。
【図3】図3は、超音波振動子を図1に示すβ方向からみた図(背面図)である。
【図4】図4は、超音波振動子を図1に示すγ方向からみた図(右側面図)である。
【図5】図5は、超音波振動子を図1に示すδ方向から視た図(左側面図)である。
【図6】図6は、超音波振動子を図1に示すα方向から視た場合の超音波振動子の分解図である。
【図7】図7は、超音波振動子を用いた超音波モータの側面図である。
【図8】図8は、超音波振動子を用いた超音波モータの分解図である。
【図9】図9は、本発明の第2の実施形態に係る超音波振動子を図1に示すα方向から視た場合の超音波振動子の分解図である。
【図10】図10は、第2の実施形態に係る変形例の超音波振動子を図1に示すα方向から視た場合の超音波振動子の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1乃至図8を参照して第1の実施形態について説明する。
超音波モータ1は、図1乃至図6に示すような超音波による振動を発生させる超音波振動子10と、超音波振動子10の振動が伝達すると駆動する被駆動部材であるロータ53と、後述する基本弾性体12において、積層型圧電素子18を基本弾性体12に密着固定するために積層型圧電素子18を与圧する与圧機構60と、被駆動部材(ロータ53)と超音波振動子10とに押圧力を与える押圧機構70とを有している。
【0015】
超音波振動子10は、例えば黄銅材(C2801PのO材)からなる角柱形状(棒状)の基本弾性体12と、図示しない駆動源により交番電圧が印加され励振する電気機械変換素子である積層型圧電素子18と、基本弾性体12の長手方向上端部に被駆動部材(ロータ53)と対向して配置され、積層型圧電素子18による振動を被駆動部材(ロータ53)に伝達する摺動用駆動子26とを有している。基本弾性体12は、下端から例えば11mmの位置の外周において全周に渡って形成(凹設)されている深さ略1mm〜略2mmの溝部14を有している。溝部14より下方(積層圧電素子14と反対側)の長さ寸法を変化させ、溝部14の相対位置を適切(所望)な位置とすることで、共振縦振動モードと共振捩れ振動との共振周波数をほぼ一致させる。
【0016】
また基本弾性体12は、基本弾性体12の正面12aに凹部16aを有し、正面12aに対向する基本弾性体12の裏面12bに凹部16bを有している。凹部16a,16bは、正面12aと裏面12bとに限定される必要はなく、基本弾性体12の対向する側面12c,12dに配置されていてもよい。
【0017】
凹部16aは、基本弾性体12の高さ(長手)方向に対して所望の角度だけ傾けられた状態で正面12aに配設されている。凹部16bも凹部16aと同様に、基本弾性体12の高さ(長手)方向に対して凹部16aと同じ所望の角度だけ傾けられた状態で裏面12bに配設されている。この場合、凹部16a,16bは、正対して見て逆方向に取付けられている。また凹部16a,16bの傾き角度は、基本弾性体12の高さ(長手)方向と、凹部16a,16bの長手方向との間において、鋭角である。
【0018】
この凹部16a,16bには、超音波による振動を発生させる振動本体部であり、電気機械変換素子である積層型圧電素子18がそれぞれ挿入される。そのため凹部16a,16bに挿入される積層型圧電素子18も所望の角度だけ傾けられた状態で配置される。凹部16a,16bに挿入される積層型圧電素子18は、凹部16a,16bと同様に、正面12aと裏面12bとにおいて、正対して見て逆方向に取付けられている。つまり積層型圧電素子18は、基本弾性体12の長手方向において正対して見て互いに反対方向に傾斜して基本弾性体12に配置される。
【0019】
また積層型圧電素子18の傾き角度は、凹部16a,16bと同様に、基本弾性体12の高さ方向と、積層型圧電素子18の長手方向との間において、鋭角である。従って、図4および図5に示すように、積層型圧電素子18の側面は、表裏面ともに長手方向で同位置に投影されている。つまり積層型圧電素子18は、変位方向と基本弾性体12の長手方向との間の角度において鋭角を有した状態で基本弾性体12の対向する2つの側面である正面12aと裏面12bとにそれぞれ配設される。さらにこれら積層型圧電素子18は、基本弾性体12の長手方向において正対して見て互いに反対方向に傾斜して基本弾性体12に配置される。
【0020】
なお凹部16aに配置されている積層型圧電素子18と、凹部16bに配置されている積層型圧電素子18とは、基本弾性体12を挟持していることとなる。またこれら積層型圧電素子18は、両端を基本弾性体12(凹部16a,16bと保持用弾性体20)に保持されていることとなる。
【0021】
また、凹部16aに挿入される積層型圧電素子18から出されている電気端子は、それぞれA端子とGND端子とである。また、凹部16bに挿入される積層型圧電素子18から出されている電気端子は、それぞれB端子とGND端子とである。
【0022】
超音波モータ1は、基本弾性体12において、積層型圧電素子18を基本弾性体12に密着固定するために積層型圧電素子18を与圧する与圧機構60を有している。この与圧とは、積層型圧電素子18を基本弾性体12に隙間無く密着固定させ、積層型圧電素子18に大気圧よりも高い圧力をかけることである。与圧機構60が積層型圧電素子18を与圧し、積層型圧電素子18が基本弾性体12に密着固定されると、積層型圧電素子18の振動は基本弾性体12に伝達する。
【0023】
与圧機構60は、積層型圧電素子18に、積層型圧電素子18の積層方向(厚み方向、長手方向)に対して平行に与圧する。与圧機構60は、基本弾性体12の先端部の内部に配設されており、基本弾性体12の長手方向において積層型圧電素子18よりも後述する押圧機構70側や摺動用駆動子26側やロータ53側に配設されている。与圧機構60は、凹部16aに挿入される正面12a側の積層型圧電素子18と、凹部16bに挿入される裏面12b側の積層型圧電素子18とをそれぞれ個別に与圧するため、正面12a側と裏面12b側との両方に配設されている。
【0024】
与圧機構60は、基本弾性体12の上面12fから積層型圧電素子18の上面18aに向かって積層型圧電素子18の積層方向(厚み方向、長手方向)に平行に沿って配設される溝部64と、溝部64に嵌合する(締め込まれる)ことで、上面18a側から積層型圧電素子18を積層方向に対して平行に与圧し、積層型圧電素子18を基本弾性体12に密着固定する与圧固定ネジ62とを有している。
【0025】
溝部64の傾き角度は、凹部16a,16bの傾き角度と同じであり、基本弾性体12の高さ(長手)方向と、溝部64の長手方向との間において、鋭角である。また溝部64は、基本弾性体12の先端部の内部に配設され、基本弾性体12の上面12fに対して斜めに形成され、上面12fと上面18aとの間にて基本弾性体12の長手方向に対して斜めに配設されている。溝部64は、後述する摺動用駆動子26に対向する。
【0026】
与圧固定ネジ62は、溝部64に締め込まれると、基本弾性体12と一体となる。その際、溝部64が積層型圧電素子18の積層方向に対して平行に沿って配設されているため、与圧固定ネジ62は、積層型圧電素子18の積層方向に沿って積層型圧電素子18を上面18a側から与圧する。このとき与圧固定ネジ62が与圧する与圧方向と、積層型圧電素子18の積層方向とは、同一方向となる。
【0027】
これにより積層型圧電素子18は、凹部16a,16bにおいて、基本弾性体12に密着固定され、与圧固定ネジ62と基本弾性体12と一体となる。よって与圧固定ネジ62と積層型圧電素子18と基本弾性体12とは、同一の振動体となる。
【0028】
上述したように与圧固定ネジ62は、溝部64に締め込まれと、積層型圧電素子18を与圧する。
【0029】
このように与圧固定ネジ62は、積層型圧電素子18を与圧する与圧部であり、積層型圧電素子18を基本弾性体12に固定する固定部である。
【0030】
基本弾性体12の先端部(上面12f・上端)には、例えば円環状のフェノール樹脂にアルミナセラミックの砥粒を分散させた砥石からなる摩擦子や複合樹脂である摺動用駆動子26が接合されている。摺動用駆動子26は、超音波振動子10の上端部である。
【0031】
基本弾性体12の中心軸上には、貫通孔30が穿設されている。この貫通孔30の中心軸上の超音波振動子10の縦振動の節位置には、メネジ32が螺刻されている(図6参照)。
【0032】
貫通孔30には、軸51が嵌装されている。この軸51は、図7に示すように超音波モータ1の上端部から突出する長さを有している。
【0033】
またこの軸51には、オネジ58,オネジ59が螺刻されている。
オネジ58は、メネジ32の配設位置(超音波振動子10の縦振動の節位置)に対応するように軸51に配設されている。オネジ58は、メネジ32と螺合し、その後、接着固定される。これにより軸51は、基本弾性体12の縦振動の節部にて接着固定される。
オネジ59は、超音波振動子10の上端部から突出する軸51の先端部に配設されている。オネジ59は、ナット57の配設位置に対応するように軸51に配設されている。このオネジ59には、ナット57が嵌合する。
【0034】
超音波振動子10の上端部である摺動用駆動子26には、摺動用駆動子26によって駆動される円環状のロータ53が配設される。詳細には、摺動用駆動子26に対向するロータ53の下面には、例えば円環状のセラミックスからなる摺動材53aが貼付されている。ロータ53の断面形状と摺動材53aの断面形状とは同一であり、ロータ53は摺動材53aを介して摺動用駆動子26と接触し、駆動される。
【0035】
またロータ53の内部には、ラジアルベアリング54が配置される。またまたロータ53の上部には、バネ保持体55が配設される。バネ保持体55は、コイルバネ56を位置決め保持している。
【0036】
ロータ53と摺動材53aとラジアルベアリング54とバネ保持体55とには、軸51が挿通している。
【0037】
ロータ53は、コイルバネ56によって、バネ保持体55とラジアルベアリング54とを介して摺動用駆動子26に向けて回転可能に押圧固定されている。より詳細には、摺動材53aが摺動用駆動子26に対して押圧固定される。
【0038】
コイルバネ56は、バネ保持体55によって保持され、ナット57によってバネ保持体55(軸51)からの抜けを防止されている。このナット57は、コイルバネ56の押圧力を調整する。
【0039】
つまりコイルバネ56は、軸51を螺旋状に囲み、バネ保持体55によって保持され、ナット57によって軸51から外れないように配設される。コイルバネ56の押圧力は、ナット57により調節される。コイルバネ56は、コイルバネ56の押圧力によって、バネ保持体55とラジアルベアリング54とを介してロータ53を摺動用駆動子26へと押圧する。
【0040】
このようにナット57とコイルバネ56とバネ保持体55とラジアルベアリング54とは、ロータ53を摺動用駆動子26に押圧する押圧機構70である。
【0041】
次に本発明の動作方法について説明する。
まず超音波振動子10の作製方法について説明する。
図6に示すように積層型圧電素子18は、凹部16a,16bに挿入される。次に与圧固定ネジ62が上面12f側から溝部64に締め込まれると、与圧固定ネジ62は基本弾性体12と一体となる。このとき与圧方向と積層方向とは同一方向であるため、与圧固定ネジ62は、積層型圧電素子18の積層方向に沿って平行に積層型圧電素子18を上面18a側から与圧する。すると積層型圧電素子18は、凹部16a,16bにおいて、基本弾性体12に隙間無く密着固定される。これにより積層型圧電素子18は与圧固定ネジ62と基本弾性体12と一体となり、与圧固定ネジ62と積層型圧電素子18と基本弾性体12とは同一の振動体となる。この後、基本弾性体12の先端部(上面12f)には、摺動用駆動子26が接合される。なお摺動用駆動子26は接着剤等によって基本弾性体12の先端部に接着されてもよい。これにより超音波振動子10が形成される。
【0042】
次に、超音波振動子10の動作について説明する。
超音波振動子10は、超音波振動子10の寸法が1次の共振縦振動、および1次の(溝部14より下方の捩れまで考慮すると2次の)共振捩れ振動がほぼ同一周波数Frで励起できるようになっている。
共振縦振動は、図2に示す矢印Z方向の振動である。1次の共振捩れ振動は、図1に示す矢印ω方向の振動であり、共振縦振動の振動方向(矢印Z方向)を捩れの軸とする振動である。この周波数近傍には、共振屈曲振動の固有振動はないような形状寸法に形成されている。
【0043】
まず、A端子に周波数Frで、振幅Vrの交番電圧を印加し、B端子に同一周波数、同振幅で同位相の交番電圧を印加すると共振縦振動が励起される。共振縦振動の節位置は、基本弾性体12の中心軸上のほぼ中央に存在する。
つぎに、A端子に周波数Frで、振幅Vrの交番電圧を印加し、B端子に同一周波数、同振幅で逆位相の交番電圧を印加すると共振捩れ振動が励起される。共振捩れ振動では、基本弾性体12の中心軸上に節位置がある。
さらに、A端子に周波数Frで、振幅Vrの交番電圧を印加し、B端子に同一周波数、同振幅で位相が90度異なった交番電圧を印加すると共振縦振動と共振捩れ振動が合成されて、摺動用駆動子26の位置に超音波楕円振動が励起される。
【0044】
つぎに、図7と図8とを用いて、超音波振動子10を用いた本実施例の超音波モータ1の動作方法について説明する。図7と図8とにおいて、超音波振動子10の貫通孔30(図6参照)には、軸51が嵌装される。オネジ58は、メネジ32に螺合した後に接着固定される。これにより軸51は、基本弾性体12の縦振動の節部と接着固定することとなる。
【0045】
摺動用駆動子26(超音波振動子10の上端部)には、ロータ53がラジアルベアリング54およびバネ保持体55を介して、コイルバネ56により押圧固定されている。コイルバネ56の押圧力はナット57により調節される。ロータ53は、摺動材53aを介して摺動用駆動子26と当接する。これにより押圧機構70が形成される。
【0046】
先に示したように、超音波振動子10のA端子とB端子とに、周波数Fr、振幅Vr、位相差+90度または−90度の交番電圧を印加する。すると、ロータ53が摺動用駆動子26に対して時計回りまたは反時計回りに回転する。
このように本実施形態では、積層型圧電素子18を基本弾性体12に与圧機構60により密着固定するために、基本弾性体12を固定する冶具を用いず、積層型圧電素子を基本弾性体12に保持させる保持用弾性体を用いず、そのため保持用弾性体を基本弾性体12に向って押圧する冶具を用いない。本実施形態では、このような冶具を用いなくても、与圧固定ネジ62を溝部64に締め込むことで、積層型圧電素子18を積層方向に沿って平行に上面18aから容易に与圧でき、この与圧によって積層型圧電素子18を基本弾性体12に容易に固定することができる。また本実施形態では、固定のために冶具や装置を用いないために、与圧によって固定できるために、超音波モータ1を容易に組み立てることができる。
【0047】
また本実施形態では、積層型圧電素子18を積層方向に沿って平行に与圧するために、与圧以外の外的要因を減らした状態で、積層型圧電素子18を基本弾性体12に固定する力を積層型圧電素子18に直接的に伝えることができる。よって本実施形態では、効率よく与圧を積層型圧電素子18に直接伝達でき、与圧の伝達効率を向上させることができ、固定効率を向上させることができる。つまり本実施形態では、積層型圧電素子18が傾斜していても、積層型圧電素子18を基本弾性体12に固定する力を、無駄な無く積層型圧電素子18に直接伝達することができる。
【0048】
また本実施形態では、与圧固定ネジ62を溝部64に締め込むことで、積層型圧電素子18を凹部16a,16bに押圧して、積層型圧電素子18を基本弾性体12に固定する冶具である例えば保持用弾性体が不要となるために、超音波モータ1を安価にすることができる。
【0049】
また本実施形態では、凹部16a,16bに挿入される積層型圧電素子18を与圧固定ネジ62によってそれぞれ個別に与圧するために、積層型圧電素子18それぞれに対する予圧を調整することができる。これにより基本弾性体12に対する積層型圧電素子18それぞれの固定具合を容易に調整することができ、予圧をより精密に調整することができ、与圧を微調整することができる。
【0050】
また本実施形態では、与圧固定ネジ62を溝部64に締め込ませて、与圧固定ネジ62を基本弾性体12と一体にし、与圧固定ネジ62によって積層型圧電素子18を基本弾性体12に密着固定させている。よって本実施形態では、与圧固定ネジ62と積層型圧電素子18と基本弾性体12とを一体化して同一の振動体としている。よって本実施形態では、積層型圧電素子18の振動を基本弾性体12に無駄なく伝達させることができる。
【0051】
次に図9乃至図10を参照して第2の実施形態について説明する。第1の実施形態と同一の構成については第1の実施形態と同一の参照符号を付すことにより説明を省略する。
本実施形態の与圧機構60は、基本弾性体12の基端部の内部に配設されており、基本弾性体12の長手方向において、積層型圧電素子18を挟んで押圧機構70や摺動用駆動子26やロータ53とは反対側に配設されている。本実施形態の基本弾性体12には、第1の実施形態と同様に1つの積層型圧電素子18に対して1つの与圧機構60が配設されている。
【0052】
与圧機構60は、積層型圧電素子18に、積層型圧電素子18の積層方向(厚み方向、長手方向)に対して平行に与圧する。
【0053】
与圧機構60は、積層型圧電素子18の積層方向(厚み方向、長手方向)に平行に沿って配設され、基本弾性体12の下面12gから積層型圧電素子18の下面18bに向かって配設される溝部64と、溝部64に締め込まれることで、下面18b側から積層型圧電素子18を積層方向に対して平行に与圧し、積層型圧電素子18を基本弾性体12に固定する与圧固定ネジ62とを有している。
【0054】
溝部64は、基本弾性体12の基端部の内部に配設され、基本弾性体12の下面12gに対して斜めに形成され、下面12gと下面18bとの間にて基本弾性体12の長手方向に対して斜めに配設されている。
【0055】
次に本発明の動作方法は、与圧固定ネジ62が積層型圧電素子18の積層方向に対して平行に積層型圧電素子18を下面18b側から与圧する以外は、第1の実施形態と略同一であるため、詳細な説明については省略する。
このように本実施形態では、与圧機構60を押圧機構70や摺動用駆動子26やロータ53とは反対側に配設している。そのため本実施形態では、押圧機構70を組み立て、超音波モータ1を組み立て、コイルバネ56の押圧力をナット57によって調整した後でも、凹部16a,16bに挿入される積層型圧電素子18を与圧固定ネジ62によってそれぞれ個別に与圧でき、またその際、積層型圧電素子18それぞれに対する予圧を与圧固定ネジ62によって調整することができる。これにより基本弾性体12に対する積層型圧電素子18の固定具合を容易に調整することができる。
【0056】
なお本実施形態の変形例として、与圧機構60は、図9に示すように、与圧固定ネジ62の代わりに偏心ネジ66を用いてもよい。
【0057】
また本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。
【符号の説明】
【0058】
1…超音波モータ、10…超音波振動子、12…基本(棒状)弾性体、12a…正面、12b…裏面、12c,12d…側面、12f…上面、12g…下面、14…溝部、16a,16b…凹部、18…積層型圧電素子、18a…上面、18b…下面、26…摺動用駆動子(摩擦子)、30…貫通孔、32…メネジ、60…与圧機構、62…与圧固定ネジ、64…溝部、70…押圧機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周において全周に渡って形成される溝部を有する棒状弾性体と、
前記棒状弾性体に両端を保持され、変位方向と前記棒状弾性体の長手方向との間の角度において鋭角を有した状態で前記棒状弾性体の対向する2つの側面にそれぞれ配設され、さらに前記棒状弾性体の長手方向において正対して見て互いに反対方向に傾斜して前記棒状弾性体に配置される一対の積層型圧電素子と、
前記棒状弾性体の先端部に接合されている摩擦子と、
を具備し、
一対の前記積層型圧電素子にそれぞれ位相の異なる交番電圧を印加することにより、縦振動と捻れ振動とを同時に励起し、前記摩擦子に超音波楕円運動を励起させる超音波モータであって、
前記積層型圧電素子を前記棒状弾性体に密着固定するために前記積層型圧電素子を与圧する与圧機構を具備することを特徴とする超音波モータ。
【請求項2】
前記与圧機構は、前記積層型圧電素子に、前記積層型圧電素子の積層方向に対して平行に与圧することを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項3】
前記与圧機構は、前記棒状弾性体の長手方向において、前記積層型圧電素子を挟んで前記前記摩擦子とは反対側に配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の超音波モータ。
【請求項4】
前記与圧機構は、前記積層型圧電素子それぞれを個別に与圧することを特徴とする請求項1または2に記載の超音波モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−67002(P2011−67002A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214939(P2009−214939)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】