説明

超音波モータ

【課題】圧電素子の屈曲振動を積極的に使用することによりねじれ共振振動を効率よく発生させることのできる超音波モータを提供する。
【解決手段】中心軸に垂直な断面が矩形状の長さ比率を有する振動子と、振動子の楕円振動発生面に接して振動子の楕円振動発生面と直交する中心軸を回転軸として回転駆動されるロータと、を少なくとも備えた超音波モータであって、振動子の回転軸方向に伸縮する縦1次共振振動と、回転軸をねじれ軸とするねじれ2次共振振動又はねじれ3次共振振動とを合成することにより、楕円振動を形成してなり、振動子の回転軸方向に伸縮する縦1次共振振動と、回転軸をねじれ軸とするねじれ2次共振振動又はねじれ3次共振振動と、の共振周波数がほぼ一致するように、振動子の矩形状の長さ比率を設定し、振動子は、回転軸に対してそれぞれ鋭角をなす、2つの分極方向にそれぞれ沿った2つの分極軸を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、振動子の縦振動とねじれ振動を合成して楕円振動を発生させ、ロータを回転させる超音波モータが提案されている。そして、下記特許文献1の図1には、振動子の分解斜視図が描かれており、振動子軸方向に対し斜めにカッティングされた弾性体の間に複数枚の圧電素子が挿入された構成となっている。また、圧電素子の正電極は2分割されており、ここでは、それぞれA相、B相と称するものとする。
【0003】
ここで、A相とB相に同位相の交番電圧を印加することで、棒状振動子に縦振動を発生させることができる。また、A相とB相に逆位相の交番電圧を印加することで、棒状振動子にねじれ振動を発生させることができる。尚、振動子の溝位置を調整して縦振動の共振周波数と、ねじれ振動の共振周波数を、ほぼ一致するようにしておく。そして、A相とB相にπ/2位相の異なる交番電圧を印加すると、縦振動とねじれ振動が同時に発生し、棒状弾性体上面に楕円振動を発生させることができる。棒状弾性体上面にロータを押圧することにより、ロータを時計方向(CW方向)若しくは反時計方向(CCW方向)に回転させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−117168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された超音波モータは、その図1に示されるように、圧電素子と弾性体が必要になる、弾性体を斜めにカットしなければならない、縦振動とねじれ振動の周波数を合わせるために弾性体の一部に溝部を設けなければならない、構造が複雑であり組立性に難点がある等の課題があった。それ故、全体として振動子の構成が非常に複雑になり、ねじれ共振振動の発生効率が低いという課題を有していた。
【0006】
したがって本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧電素子の屈曲振動を積極的に使用することによりねじれ共振振動を効率よく発生させることのできる超音波モータを提供することにある。また、本発明は、単一の部材からなり、構造が単純であり、溝部等が不要であり、縦振動とねじれ振動を容易に励起することができ、縦振動とねじれ振動を合成することにより楕円振動を形成し、楕円振動によりロータを回転させる超音波モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る超音波モータは、中心軸に垂直な断面が矩形状の長さ比率を有する振動子と、振動子の楕円振動発生面に接して振動子の楕円振動発生面と直交する中心軸を回転軸として回転駆動されるロータと、を少なくとも備えた超音波モータであって、振動子の回転軸方向に伸縮する縦1次共振振動と、回転軸をねじれ軸とするねじれ2次共振振動又はねじれ3次共振振動とを合成することにより、楕円振動を形成してなり、振動子の回転軸方向に伸縮する縦1次共振振動と、回転軸をねじれ軸とするねじれ2次共振振動又はねじれ3次共振振動と、の共振周波数がほぼ一致するように、振動子の矩形状の長さ比率を設定し、振動子は、回転軸に対してそれぞれ鋭角をなす、2つの分極方向にそれぞれ沿った2つの分極軸を備えることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る超音波モータでは、振動子において、2つの分極方向に沿って互いに逆方向に伸縮するように、2つの分極方向と駆動電極の関係を設定することが好ましい。
【0009】
本発明に係る超音波モータにおいて、振動子は、例えば単板又は単板を貼り合わせたものからなることが好ましい。
【0010】
本発明に係る超音波モータにおいて、楕円振動は、縦1次共振振動とねじれ3次共振振動とを合成することにより形成され、ねじれ3次共振振動の腹位置に対応するように駆動電極を配置していることが好ましい。
【0011】
本発明に係る超音波モータにおいて、楕円振動は、縦1次共振振動とねじれ2次共振振動とを合成することにより形成され、ねじれ2次共振振動の腹位置に対応するように駆動電極を配置していることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る超音波モータは、圧電素子の屈曲振動を積極的に使用することによりねじれ共振振動を効率よく発生させることができるという効果を奏する。また、本発明の超音波モータにおいては、単一の部材からなり、構造が単純であり、溝部等が不要であり、縦振動とねじれ振動を容易に励起することができ、縦振動とねじれ振動を合成することにより楕円振動を形成し、楕円振動によりロータを回転させることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る超音波モータの構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る超音波モータの構成を示す分解斜視図である。
【図3】(a)は、本発明の実施形態に係る振動子の概略構成を示す斜視図、(b)は、ねじれ1次振動モードにおける振動状態を破線で示した斜視図、(c)は、縦1次振動モードにおける振動状態を破線で示した斜視図、(d)は、ねじれ2次振動モードにおける振動状態を破線で示した斜視図、(e)は、ねじれ3次振動モードにおける振動状態を破線で示した斜視図である。
【図4】振動子の高さを一定として、横軸を短辺の長さ/長辺の長さとしたときの各モードの共振周波数を表したグラフである。
【図5】縦振動用圧電素子の構成を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は(a)のVB方向から見た側面図である。
【図6】(a)は図5の縦振動用圧電素子に駆動信号を印加したときに縦振動用圧電素子が伸びた状態を示す斜視図、(b)は(a)のVIB方向から見た側面図である。
【図7】(a)は図5の縦振動用圧電素子に駆動信号を印加したときに縦振動用圧電素子が縮んだ状態を示す斜視図、(b)は(a)のVIIB方向から見た側面図である。
【図8】(a)は図5の縦振動用圧電素子に駆動信号を印加したときに縦振動用圧電素子が伸縮した状態を示す斜視図、(b)は(a)のVIIIB方向から見た側面図である。
【図9】斜め振動用圧電素子の構成を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は(a)のIXB方向から見た側面図である。
【図10】(a)は図9の斜め振動用圧電素子に駆動信号を印加したときに斜め振動用圧電素子が伸びた状態を示す斜視図、(b)は(a)のXB方向から見た正面図である。
【図11】(a)は図9の斜め振動用圧電素子に駆動信号を印加したときに斜め振動用圧電素子が縮んだ状態を示す斜視図、(b)は(a)のXIB方向から見た正面図である。
【図12】(a)は図9の斜め振動用圧電素子に駆動信号を印加したときに斜め振動用圧電素子が伸縮した状態を示す斜視図、(b)は(a)のXIIB方向から見た正面図である。
【図13】(a)は単板タイプの斜めねじれ振動用圧電素子の構成を示す斜視図、(b)は(a)のXIIIB方向から見た側面図、(c)は(a)のXIIIC方向から見た側面図である。
【図14】(a)は図13の斜めねじれ振動用圧電素子に駆動信号を印加したときの斜めねじれ状態を示す斜視図、(b)は(a)のXIVB方向から見た側面図、(c)は(a)のXIVC方向から見た側面図である。
【図15】(a)は図13の斜めねじれ振動用圧電素子に図14とは逆方向に駆動信号を印加したときの斜めねじれ振動を示す斜視図、(b)は(a)のXVB方向から見た側面図、(c)は(a)のXVC方向から見た側面図である。
【図16】(a)は単板タイプの斜めねじれ振動用圧電素子の構成を示す斜視図、(b)は(a)のXVIB方向から見た側面図、(c)は(a)のXVIC方向から見た側面図である。
【図17】(a)は図16の斜めねじれ振動用圧電素子に駆動信号を印加したときの斜めねじれ状態を示す斜視図、(b)は(a)のXVIIB方向から見た側面図、(c)は(a)のXVIIC方向から見た側面図である。
【図18】(a)は図16の斜めねじれ振動用圧電素子に図17とは逆方向に駆動信号を印加したときの斜めねじれ状態を示す斜視図、(b)は(a)のXVIIIB方向から見た側面図、(c)は(a)のXVIIIC方向から見た側面図である。
【図19】(a)は貼り合わせタイプの斜めねじれ振動用圧電素子の構成を示す斜視図、(b)は(a)のXIXB方向から見た側面図、(c)は(a)のXIXC方向から見た側面図である。
【図20】(a)は図19の斜めねじれ振動用圧電素子に駆動信号を印加したときの斜めねじれ状態を示す斜視図、(b)は(a)のXXB方向から見た側面図、(c)は(a)のXXC方向から見た側面図である。
【図21】(a)は図19の斜めねじれ振動用圧電素子に図20とは逆方向に駆動信号を印加したときの斜めねじれ状態を示す斜視図、(b)は(a)のXXIB方向から見た側面図、(c)は(a)のXXIC方向から見た側面図である。
【図22】第1実施例に係る振動子の構成を示す斜視図である。
【図23】図22のXXIII方向から見た側面図と、図3(e)に示すねじれ3次共振振動における振動状態を側面から見た図を対応させて示す図である。
【図24】図22のXXIV方向から見た正面図である。
【図25】第2実施例に係る振動子の構成を示す斜視図である。
【図26】図25のXXVI方向から見た側面図と、図3(d)に示すねじれ2次共振振動における振動状態を側面から見た図を対応させて示す図である。
【図27】図25のXXVII方向から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る超音波モータの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
本発明の実施形態に係る超音波モータ100は、縦1次共振振動とねじれ2次共振振動の合成により楕円振動を発生させるものであり、図1、図2に示すように、振動子101及びロータ102を備える。
【0015】
振動子101は、中心軸100c(回転軸)に垂直な断面が矩形状の長さ比率を有する、略直方体形状の圧電素子である。振動子101の矩形状の断面のうち、互いに対向する2つの短辺101sには、2つの駆動電極がそれぞれ設けられている。図1及び図2においては、互いに対向する2つの短辺101sの一方の辺に形成された2つの駆動電極121、122のみを図示している。
【0016】
ロータ102は、略円板状をなし、その下面が振動子101の楕円振動発生面101aに設けた摩擦接触部材103a、103bに接し、振動子101の楕円振動発生面101aと直交する中心軸100cを回転軸として回転駆動される。
【0017】
振動子101へのロータ102の取り付け構造について説明する。
振動子101(圧電素子)の節近傍にはホルダ110が固着される。振動子101の楕円振動発生面101aとホルダ110との間には、シャフト105、ロータ102、ベアリング107、押圧バネ108、バネ押さえリング109が順に配置される。この配置は、中心軸100cに対して同心状に行われる。
【0018】
ロータ102の中央の凹部102aにはベアリング107が結合され、ロータ102とベアリング107には中心軸100cに沿うようにシャフト105が挿通される。シャフト105の下部は振動子101の楕円振動発生面101a上に接触配置される。
【0019】
ロータ102及びベアリング107に挿通されたシャフト105の上部先端は、押圧バネ108とバネ押さえリング109に順に挿通され、さらに、ホルダ110の上部の貫通穴110aを通って、ホルダ110の上方に配置されたシャフト固定リング111に螺合される。これにより、シャフト105はホルダ110に固定される。
【0020】
バネ押さえリング109とシャフト105はネジ溝によって互いに螺合されており、バネ押さえリング109を回転させてシャフト105に対する位置を変更することにより、押圧バネ108の力量を調節してロータ102の摩擦接触部材103a、103bへの押圧力量を調節することができる。
【0021】
次に、図3及び図4を参照して、超音波モータ10に使用される振動子101(圧電素子)の共振周波数の一致に関して説明する。
【0022】
図3(a)に示されるように、振動子101は略直方体形状であり、中心軸100cに直交する矩形状の断面の短辺101sの長さをa、長辺101fの長さをb、中心軸100cに沿った高さをcとしている。以下の説明では、高さ方向を、1次振動モードの振動の方向、かつ、ねじれ振動のねじれの軸方向とする。また、a、b、cの大小関係はa<b<cとする。
【0023】
振動子101においては、a、b、cの各寸法を適切な値とすることで、縦1次振動モードの共振周波数とねじれ2次振動モード、若しくはねじれ3次振動モードの、共振周波数をほぼ一致させている。
【0024】
ここで、図3(b)〜(e)には、ねじれ振動の方向p1、p2、縦振動の方向q、及び振動の節Nを示している。節Nは、ねじれ1次振動(図3(b))及び縦1次振動(図3(c))では高さ方向の中心位置に1つ存在し、ねじれ2次振動(図3(d))では高さ方向の2つの位置に存在し、ねじれ3次振動(図3(e))では高さ方向の3つの位置に存在する。
【0025】
また、図3(b)〜(e)において、実線は振動前の振動子101の形状を示しており、破線は振動後の振動子101の形状を示している。
【0026】
図4からわかるように、a/bを変化させた場合には、縦1次振動モードの共振周波数はa/bに依存せず、ほぼ一定の値をとるが、ねじれ振動の共振周波数は、a/b値の増加とともに大きくなっていく。
【0027】
また、ねじれ1次振動モードの共振周波数は、a/bがどのような値をとっても、縦1次振動モードの共振周波数と一致する条件はない。これに対して、ねじれ2次振動モードの共振周波数は、a/b値が0.6となる近傍で、縦1次振動モードの共振周波数と一致する。また、ねじれ3次振動モードの共振周波数は、a/b値が0.3の近傍となるところで、縦1次振動モードの共振周波数と一致する。したがって、振動子101においては、縦1次ねじれ3次振動ではa/bが0.25〜0.35、縦1次ねじれ2次振動ではa/bが0.5〜0.6、となるように長さa、bをそれぞれ設定する。
【0028】
超音波モータ100においては、振動子101の中心軸100c(回転軸)方向に沿って伸縮する縦1次共振振動と、中心軸100cをねじれ軸とするねじれ2次共振振動又はねじれ3次共振振動と、を合成することにより、楕円振動を形成する。長さa、bの比(比率)は、振動子101の中心軸100c方向に伸縮する縦1次共振振動と、中心軸100cをねじれ軸とするねじれ2次共振振動又はねじれ3次共振振動と、の共振周波数がほぼ一致するように設定する。
【0029】
次に、図5〜図21を参照しつつ、上記実施形態の振動子101に用いる圧電素子の基礎となる、縦振動用圧電素子、斜め振動用圧電素子、及びねじれ振動用圧電素子について順に説明する。
まず、縦振動用圧電素子について、図5から図8を参照して説明する。図5は、縦振動用圧電素子の構成を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は(a)のVB方向から見た側面図である。図6(a)は図5の縦振動用圧電素子に駆動信号を印加したときに縦振動用圧電素子が伸びた状態を示す斜視図、図6(b)は図6(a)のVIB方向から見た側面図である。図7(a)は図5の縦振動用圧電素子に駆動信号を印加したときに縦振動用圧電素子が縮んだ状態を示す斜視図、図7(b)は図7(a)のVIIB方向から見た側面図である。図8(a)は図5の縦振動用圧電素子に駆動信号を印加したときに縦振動用圧電素子が伸縮した状態を示す斜視図、図8(b)は図8(a)のVIIIB方向から見た側面図である。
【0030】
図5(a)、(b)に示すように、縦振動用圧電素子150は、略直方体形状の圧電体である。縦振動用圧電素子150には、その上面に第1駆動電極150aが設けられ、底面に第2駆動電極150bが設けられている。第1駆動電極150aと第2駆動電極150bは、外部の電源(不図示)にそれぞれ接続される。接続には、例えばFPCを用い、各電極にFPCの一端を固着する。これにより、第1駆動電極150aと第2駆動電極150bを介して縦振動用圧電素子150に対して駆動信号が印加される。したがって、駆動電極への駆動信号の印加方向は、信号の電気極性に応じて、第1駆動電極150aから第2駆動電極150bへ、又は、第2駆動電極150bから第1駆動電極150aへ向かう方向となる。
【0031】
図5から図8に示す縦振動用圧電素子150の分極方向P1は、第2駆動電極150bから第1駆動電極150aへ向かう方向であって、駆動信号の印加方向に沿った方向である。
このような構成を備えた縦振動用圧電素子150は、駆動信号を印加することにより、図6〜図8に示すように上下方向(図5〜図8の上下方向)に縦振動する。具体的には、外部の電源の+と−の電極の一方を第1駆動電極150aに、他方を第2駆動電極150bに、それぞれ接続すると、縦振動用圧電素子150は上下方向に伸び(図6)、第1駆動電極150aと第2駆動電極150bへの接続を入れ替えると、縦振動用圧電素子150は上下方向に縮む(図7)。さらに、第1駆動電極150aと第2駆動電極150bの間に交流を印加すると、150は上下方向、すなわち分極方向P1に沿って伸縮する(図8)。
したがって、第1駆動電極150aと第2駆動電極150bへ印加する信号に応じて縦振動用圧電素子150を縦振動させることができる。
【0032】
つづいて、斜め振動用圧電素子について、図9から図12を参照して説明する。図9は、斜め振動用圧電素子の構成を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は(a)のIXB方向から見た側面図である。図10(a)は図9の斜め振動用圧電素子に駆動信号を印加したときに斜め振動用圧電素子が伸びた状態を示す斜視図、図10(b)は図10(a)のXB方向から見た正面図である。図11(a)は図9の斜め振動用圧電素子に駆動信号を印加したときに斜め振動用圧電素子が縮んだ状態を示す斜視図、図11(b)は図11(a)のXIB方向から見た正面図である。図12(a)は図9の斜め振動用圧電素子に駆動信号を印加したときに斜め振動用圧電素子が伸縮した状態を示す斜視図、図12(b)は図12(a)のXIIB方向から見た正面図である。
【0033】
図9(a)、(b)に示すように、斜め振動用圧電素子160は、縦振動用圧電素子150と同様の略直方体形状の圧電体である。斜め振動用圧電素子160には、その側面161の上部に第1駆動電極160aが設けられ、側面161に対向する側面162の下部に第2駆動電極160bが設けられている。第1駆動電極160aと第2駆動電極160bは、外部の電源(不図示)にそれぞれ接続される。接続には、例えばFPCを用い、各電極にFPCの一端を固着する。これにより、第1駆動電極160aと第2駆動電極160bを介して斜め振動用圧電素子160に対して駆動信号が印加される。したがって、駆動電極への駆動信号の印加方向は、信号の電気極性に応じて、第1駆動電極160aから第2駆動電極160bへ、又は、第2駆動電極160bから第1駆動電極160aへ向かう方向となる。
【0034】
図9から図12に示す斜め振動用圧電素子160の分極方向P2は、第2駆動電極160bから第1駆動電極160aへ向かう方向であって、駆動信号の印加方向に沿った方向である。
このような構成を備えた斜め振動用圧電素子160は、駆動信号を印加することにより、図10〜図12に示すように、斜め振動用圧電素子160を正面から見たときの左上の角と右下の角を結ぶ対角線に略沿った斜め方向に振動する。具体的には、外部の電源の+と−の電極の一方を第1駆動電極160aに、他方を第2駆動電極160bに、それぞれ接続すると、斜め振動用圧電素子160は斜め方向に伸び(図10)、第1駆動電極160aと第2駆動電極160bへの接続を入れ替えると、斜め振動用圧電素子160は斜め方向に縮む(図11)。さらに、第1駆動電極160aと第2駆動電極160bの間に交流を印加すると、160は斜め方向、すなわち分極方向に伸縮する(図12)。
したがって、第1駆動電極160aと第2駆動電極160bへ印加する信号に応じて斜め振動用圧電素子160を斜め振動させることができる。
【0035】
次に、斜めねじれ振動用圧電素子について、図13から図21を参照して説明する。この斜めねじれ振動用圧電素子においては、2つの分極方向にそれぞれ沿った2つの分極軸を備え、これらの2つの分極方向と駆動電極を所定の関係に設定することによって、斜めねじれ振動を生じさせる。
【0036】
まず、図13から図15を参照して、斜めねじれ振動用圧電素子を1枚の圧電素子で構成した単板タイプにおいて、2つの分極方向が互いに逆方向である場合について説明する。
図13の(a)は単板タイプの斜めねじれ振動用圧電素子の構成を示す斜視図、(b)は(a)のXIIIB方向から見た側面図、(c)は(a)のXIIIC方向から見た側面図である。図14の(a)は図13の斜めねじれ振動用圧電素子に駆動信号を印加したときの斜めねじれ状態を示す斜視図、(b)は(a)のXIVB方向から見た側面図、(c)は(a)のXIVC方向から見た側面図である。図15の(a)は図13の斜めねじれ振動用圧電素子に図14とは逆方向に駆動信号を印加したときの斜めねじれ状態を示す斜視図、(b)は(a)のXVB方向から見た側面図、(c)は(a)のXVC方向から見た側面図である。
【0037】
図13から図15に示すように、斜めねじれ振動用圧電素子200は、略直方体形状の圧電体である。斜めねじれ振動用圧電素子200には、その側面221の上部に第1駆動電極201及び第2駆動電極202が斜めねじれ振動用圧電素子200の厚み方向に沿って並べて設けられ、側面221に対向する側面222の下部に第3駆動電極211及び第4駆動電極212が斜めねじれ振動用圧電素子200の厚み方向に沿って並べて設けられている。第1駆動電極201、第3駆動電極211は背面223側に設けられ、第2駆動電極202及び第4駆動電極212は正面224側に設けられている。
【0038】
第1駆動電極201、第2駆動電極202、第3駆動電極211、及び第4駆動電極212は、外部の電源(不図示)にそれぞれ接続される。接続には、例えばFPCを用い、各電極にFPCの一端を固着する。これにより、第1駆動電極201、第2駆動電極202、第3駆動電極211、及び第4駆動電極212を介して斜めねじれ振動用圧電素子200に対して駆動信号が印加される。
【0039】
駆動信号の印加は、第1駆動電極201と第3駆動電極211の間と、第2駆動電極202と第4駆動電極212の間と、でそれぞれ行われる。第1駆動電極201と第3駆動電極211の間における駆動信号の印加方向は、信号の電気極性に応じて、第1駆動電極201から第3駆動電極211へ、又は、第3駆動電極211から第1駆動電極201へ向かう方向となる。第2駆動電極202と第4駆動電極212の間における駆動信号の印加方向は、信号の電気極性に応じて、第2駆動電極202から第4駆動電極212へ、又は、第4駆動電極212から第2駆動電極202へ向かう方向となる。
【0040】
斜めねじれ振動用圧電素子200は、背面223側において第1駆動電極201から第3駆動電極211へ向かう分極方向P3と、正面224側において第4駆動電極212から第2駆動電極202へ向かう分極方向P4と、の2つの分極方向を有する。分極方向P3と分極方向P4は互いに逆向きであって、駆動信号の印加方向に沿った方向である。
このような構成を備えた斜めねじれ振動用圧電素子200は、駆動信号を印加することにより、図14及び図15に示すように斜めねじれ振動する。
【0041】
具体的な斜めねじれ振動は次のとおりである。
図14に示す場合では、外部電源は、第1駆動電極201と第3駆動電極211の間の通電方向と、第2駆動電極202と第4駆動電極212の間の通電方向と、が互いに同じ方向になるように通電している。そして電源の印加を制御することによって、ねじれ方向を変えることができる。例えば、図14(a)に示すように分極方向P4に沿って伸びるように、かつ、分極方向P3に沿って縮むように印加すれば、これらの動きが合成されて、図14の破線で示すように伸びながらねじれる。
【0042】
これに対して、図15に示す場合では、第1駆動電極201と第3駆動電極211の間の通電方向と、第2駆動電極202と第4駆動電極212の間の通電方向と、をそれぞれ図14に示す場合と逆にしている。この場合は、分極方向P4に沿って縮むように、かつ、分極方向P3に沿って伸びるように印加しており、これらの動きが合成されて、図15の破線で示すように伸びながらねじれる。
したがって、第1駆動電極201、第2駆動電極202、第3駆動電極211、及び第4駆動電極212へ印加する信号に応じて、斜めねじれ振動用圧電素子200を斜めねじれ振動させることができる。
【0043】
つづいて、図16から図18を参照して、図13から図15に示した単板タイプの斜めねじれ振動用圧電素子200において、2つの分極方向を互いに同じ方向にした場合について説明する。
図16の(a)は単板タイプの斜めねじれ振動用圧電素子の構成を示す斜視図、(b)は(a)のXVIB方向から見た側面図、(c)は(a)のXVIC方向から見た側面図である。図17の(a)は図16の斜めねじれ振動用圧電素子に駆動信号を印加したときの斜めねじれ状態を示す斜視図、(b)は(a)のXVIIB方向から見た側面図、(c)は(a)のXVIIC方向から見た側面図である。図18の(a)は図16の斜めねじれ振動用圧電素子に図17とは逆方向に駆動信号を印加したときの斜めねじれ状態を示す斜視図、(b)は(a)のXVIIIB方向から見た側面図、(c)は(a)のXVIIIC方向から見た側面図である。
【0044】
駆動信号の印加は、第1駆動電極201と第3駆動電極211の間と、第2駆動電極202と第4駆動電極212の間と、でそれぞれ行われる。第1駆動電極201と第3駆動電極211の間における駆動信号の印加方向は、信号の電気極性に応じて、第1駆動電極201から第2駆動電極202へ、又は、第2駆動電極202から第1駆動電極201へ向かう方向となる。第2駆動電極202と第4駆動電極212の間における駆動信号の印加方向は、第1駆動電極201と第3駆動電極211の間における駆動信号の印加方向と逆向きの方向となる。
【0045】
図16から図18に示す斜めねじれ振動用圧電素子200は、背面223側において第1駆動電極201から第3駆動電極211へ向かう分極方向P5と、正面224側において第2駆動電極202から第4駆動電極212へ向かう分極方向P6と、の2つの分極方向を有する。分極方向P5と分極方向P6は互いに同じ向きである。
このような構成を備えた斜めねじれ振動用圧電素子200は、駆動信号を印加することにより、図17及び図18に示すように斜めねじれ振動する。
【0046】
具体的な斜めねじれ振動は次のとおりである。
図17に示す場合では、外部電源は、第1駆動電極201と第3駆動電極211の間の通電方向と、第2駆動電極202と第4駆動電極212の間の通電方向と、が互いに逆の方向になるように通電している。このとき、図14に示す場合と同様に、分極方向P6に沿って伸びるように、かつ、分極方向P5に沿って縮むように印加すれば、これらの動きが合成されて、図17の破線で示すように伸びながらねじれる。
【0047】
これに対して、図18に示す場合では、第1駆動電極201と第3駆動電極211の間の通電方向と、第2駆動電極202と第4駆動電極212の間の通電方向と、をそれぞれ図17に示す場合と逆にしている。この場合は、図15に示す場合と同様に、分極方向P6に沿って縮むように、かつ、分極方向P5に沿って伸びるように印加しており、これらの動きが合成されて、図18の破線で示すように伸びながらねじれる。
したがって、第1駆動電極201、第2駆動電極202、第3駆動電極211、及び第4駆動電極212へ印加する信号に応じて、斜めねじれ振動用圧電素子200を斜めねじれ振動させることができる。
【0048】
次に、図19から図21を参照して、2枚の圧電素子を貼り合わせた、貼り合わせタイプの斜めねじれ振動用圧電素子の場合について説明する。
図19の(a)は貼り合わせタイプの斜めねじれ振動用圧電素子の構成を示す斜視図、(b)は(a)のXIXB方向から見た側面図、(c)は(a)のXIXC方向から見た側面図である。図20の(a)は図19の斜めねじれ振動用圧電素子に駆動信号を印加したときの斜めねじれ状態を示す斜視図、(b)は(a)のXXB方向から見た側面図、(c)は(a)のXXC方向から見た側面図である。図21の(a)は図19の斜めねじれ振動用圧電素子に図20とは逆方向に駆動信号を印加したときの斜めねじれ状態を示す斜視図、(b)は(a)のXXIB方向から見た側面図、(c)は(a)のXXIC方向から見た側面図である。
【0049】
図19から図21に示すように、斜めねじれ振動用圧電素子300は、同一形状の第1圧電素子300a及び第2圧電素子300bを互いに貼り合わせて略直方体形状としている。
斜めねじれ振動用圧電素子300において、第1圧電素子300aの側面321aの上部には第1駆動電極301が設けられ、第2圧電素子300bの側面321bの上部には、斜めねじれ振動用圧電素子300の厚み方向に沿って第1駆動電極301と並ぶように第2駆動電極302が設けられている。また、第1圧電素子300aの側面321aに対向する側面322aの下部には第3駆動電極311が設けられ、第2圧電素子300bの側面321bに対向する側面322bの下部には、斜めねじれ振動用圧電素子300の厚み方向に沿って第3駆動電極311と並ぶように第4駆動電極312が設けられている。
【0050】
第1駆動電極301、第2駆動電極302、第3駆動電極311、及び第4駆動電極312は、外部の電源(不図示)にそれぞれ接続される。接続には、例えばFPCを用い、各電極にFPCの一端を固着する。これにより、第1駆動電極301、第2駆動電極302、第3駆動電極311、及び第4駆動電極312を介して斜めねじれ振動用圧電素子300に対して駆動信号が印加される。
【0051】
駆動信号の印加は、第1駆動電極301と第3駆動電極311の間と、第2駆動電極302と第4駆動電極312の間と、でそれぞれ行われる。第1駆動電極301と第3駆動電極311の間における駆動信号の印加方向は、信号の電気極性に応じて、第1駆動電極301から第3駆動電極311へ、又は、第3駆動電極311から第1駆動電極301へ向かう方向となる。第2駆動電極302と第4駆動電極312の間における駆動信号の印加方向は、信号の電気極性に応じて、第2駆動電極302から第4駆動電極312へ、又は、第4駆動電極312から第2駆動電極302へ向かう方向となる。
【0052】
斜めねじれ振動用圧電素子300は、背面323側において第1駆動電極301から第3駆動電極311へ向かう分極方向P7と、正面324側において第4駆動電極312から第2駆動電極302へ向かう分極方向P8と、の2つの分極方向を有する。分極方向P7と分極方向P8は互いに逆向きであって、駆動信号の印加方向に沿った方向である。
このような構成を備えた斜めねじれ振動用圧電素子300は、駆動信号を印加することにより、図20及び図21に示すように斜めねじれ振動する。
【0053】
具体的な斜めねじれ振動は次のとおりである。
図20に示す場合では、図14に示す場合と同様に、外部電源は、第1駆動電極301と第3駆動電極311の間の通電方向と、第2駆動電極302と第4駆動電極312の間の通電方向と、が互いに同じ方向になるように通電している。このとき、図14に示す場合と同様に、分極方向P8に沿って伸びるように、かつ、分極方向P7に沿って縮むように印加しており、これらの動きが合成されて、図20の破線で示すように伸びながらねじれる。
【0054】
これに対して、図21に示す場合では、第1駆動電極301と第3駆動電極311の間の通電方向と、第2駆動電極312と第4駆動電極312の間の通電方向と、をそれぞれ図20に示す場合と逆にしている。このとき、図15に示す場合と同様に、分極方向P8に沿って縮むように、かつ、分極方向P7に沿って伸びるように印加しており、これらの動きが合成されて、図21の破線で示すように伸びながらねじれる。
したがって、第1駆動電極301、第2駆動電極302、第3駆動電極311、及び第4駆動電極312へ印加する信号に応じて、斜めねじれ振動用圧電素子300を斜めねじれ振動させることができる。
【0055】
2枚の圧電素子を貼り合わせたタイプは、図19から図21に示すように2つの分極方向P7、P8が互いに逆向きである場合のほかに、2つの分極方向を同じ向きにすることもできる。貼り合わせタイプの斜めねじれ振動用圧電素子の2つの分極方向が互いに同じ向きである場合は、図16から図18に示す単板タイプの場合と同様の駆動信号を印加することにより同様の斜めねじれ振動を起こすことができるため、その詳細な説明は省略する。
【0056】
以下、上記実施形態に係る超音波モータ100における振動子101として用いる振動子の実施例について説明する。
(実施例1)
図22は、第1実施例に係る振動子400の構成を示す斜視図である。図23は、図22のXXIII方向から見た側面図と、図3(e)に示すねじれ3次共振振動における振動状態を側面から見た図を対応させて示す図である。図24は、図22のXXIV方向から見た正面図である。
図22及び図23に示すように、振動子400は、同一形状の第1圧電素子400a及び第2圧電素子400bを互いに貼り合わせて略直方体形状としている。
振動子400において、第1圧電素子400aの側面421aには第1駆動電極401が設けられ、第2圧電素子400bの側面421bには、振動子400の厚み方向に沿って第1駆動電極401と並ぶように第2駆動電極402が設けられている。また、第1圧電素子400aの側面421aに対向する側面422aには第3駆動電極411が設けられ、第2圧電素子400bの側面421bに対向する側面422bには、振動子400の厚み方向に沿って第3駆動電極411と並ぶように第4駆動電極412が設けられている。第1駆動電極401及び第2駆動電極402は、振動子101の2つの駆動電極121、122にそれぞれ対応する。
【0057】
振動子400においては、図4に示す、ねじれ3次共振振動が生じるような条件を満たすように、中心軸100cに垂直な断面の短辺と長辺が構成されている。これにより、図23の右側に示す、節N41、N42、N43を有するねじれ3次共振振動が生じることになる。このねじれ3次共振振動の振動状態は、図23の右側において、波線450で示している。
【0058】
第1駆動電極401、第2駆動電極402、第3駆動電極411、及び第4駆動電極412は、波線450で示した振動状態の節及び腹の位置に対応するように配置されている。具体的には、図23に示すように、波線450で示すねじれ3次共振振動の腹位置に対応するように、第1駆動電極401、第2駆動電極402、第3駆動電極411、及び第4駆動電極412を配置し、さらに、節N41に対応するように第1駆動電極401と第2駆動電極402の上端を配置し、節N42に対応するように第3駆動電極411と第4駆動電極412の下端を配置している。
このような構成により、ねじれの応力が最大になる位置がねじれの節になり、ねじれ3次共振振動が効率よく励起される。
【0059】
振動子400は、背面423側において第1駆動電極401から第3駆動電極411へ向かう分極方向P9と、正面424側において第4駆動電極412から第2駆動電極402へ向かう分極方向P10と、の2つの分極方向を有する。分極方向P9と分極方向P10は互いに逆向きであって、駆動信号の印加方向に沿った方向である。
振動子400において、外部電源は、第1駆動電極401と第3駆動電極411の間の通電方向と、第2駆動電極402と第4駆動電極412の間の通電方向と、が互いに同じ方向になるように通電している。これらの駆動電極に駆動信号を印加することにより、中心軸100cをねじれ軸とするねじれ3次共振振動(図3(e))と、中心軸100c方向に伸縮する縦1次共振振動と、が同時に発生し、これらが合成された楕円振動が生じる。したがって、振動子101としての振動子400の高さ方向の両端面に楕円振動が発生するため、摩擦接触部材103a、103bを介してロータ102に楕円振動が伝達される。
【0060】
さらに、図24に示すように、分極方向P10に沿った分極軸P40と、中心軸100cと、のなす角度θ4は鋭角となっている。ここで、分極方向P9は、分極方向P10に平行であるため、分極方向P9に沿った分極軸と中心軸100cとのなす角度もθ4であり、鋭角である。
振動子400においては、以上のような簡単な構成によって容易に楕円振動を励起させることができるため、溝部等が不要な振動子101を得ることができ、部品点数が少なくなり、製造が容易となることから、コストの安い超音波モータを供給することができる。さらに、ねじれ3次共振振動と縦1次共振振動を独立に制御することができる。また、分極に用いた電極をそのまま駆動用電極に使える。
【0061】
(実施例2)
図25は、第2実施例に係る振動子500の構成を示す斜視図である。図26は、図25のXXVI方向から見た側面図と、図3(d)に示すねじれ2次共振振動における振動状態を側面から見た図を対応させて示す図である。図27は、図25のXXVII方向から見た正面図である。
図25及び図26に示すように、振動子500は、同一形状の第1圧電素子500a及び第2圧電素子500bを互いに貼り合わせて略直方体形状としている。
振動子500において、第1圧電素子500aの側面521aには第1駆動電極501が設けられ、第2圧電素子500bの側面521bには、振動子500の厚み方向に沿って第1駆動電極501と並ぶように第2駆動電極502が設けられている。また、第1圧電素子500aの側面521aに対向する側面522aには第3駆動電極511が設けられ、第2圧電素子500bの側面521bに対向する側面522bには、振動子500の厚み方向に沿って第3駆動電極511と並ぶように第4駆動電極512が設けられている。第1駆動電極501及び第2駆動電極502は、振動子101の2つの駆動電極121、122にそれぞれ対応する。
【0062】
振動子500においては、図4に示す、ねじれ2次共振振動が生じるような条件を満たすように、中心軸100cに垂直な断面の短辺と長辺が構成されている。これにより、図26の右側に示す、節N51、N52を有するねじれ2次共振振動が生じることになる。このねじれ2次共振振動の振動状態は、図26の右側において、波線550で示している。
【0063】
第1駆動電極501、第2駆動電極502、第3駆動電極511、及び第4駆動電極512は、波線550で示した振動状態の節及び腹の位置に対応するように配置されている。具体的には、図26に示すように、波線550で示すねじれ2次共振振動の腹位置に対応するように、第1駆動電極501、第2駆動電極502、第3駆動電極511、及び第4駆動電極512を配置し、さらに、節N51に対応するように第1駆動電極501と第2駆動電極502の上端を配置し、節N52に対応するように第3駆動電極511と第4駆動電極512の下端を配置している。
このような構成により、ねじれの応力が最大になる位置がねじれの節になり、ねじれ2次共振振動が効率よく励起される。
【0064】
振動子500は、背面523側において第1駆動電極501から第3駆動電極511へ向かう分極方向P11と、正面524側において第4駆動電極512から第2駆動電極502へ向かう分極方向P12と、の2つの分極方向を有する。分極方向P11と分極方向P12は互いに逆向きであって、駆動信号の印加方向に沿った方向である。
振動子500においては、外部電源は、第1駆動電極501と第3駆動電極511の間の通電方向と、第2駆動電極502と第4駆動電極512の間の通電方向と、が互いに同じ方向になるように通電している。これらの駆動電極に駆動信号を印加することにより、中心軸100cをねじれ軸とするねじれ2次共振振動(図3(d))と、中心軸100c方向に伸縮する縦1次共振振動と、が同時に発生し、これらが合成された楕円振動が生じる。したがって、振動子101としての振動子500の高さ方向の両端面に楕円振動が発生するため、摩擦接触部材103a、103bを介してロータ102に楕円振動が伝達される。
【0065】
さらに、図27に示すように、分極方向P12に沿った分極軸P50と、中心軸100cと、のなす角度θ5は鋭角となっている。ここで、分極方向P11は、分極方向P12に平行であるため、分極方向P11に沿った分極軸と中心軸100cとのなす角度もθ5であり、鋭角である。
振動子500においては、以上のような簡単な構成によって容易に楕円振動を励起させることができるため、溝部等が不要な振動子101を得ることができ、部品点数が少なくなり、製造が容易となることから、コストの安い超音波モータを供給することができる。さらに、ねじれ2次共振振動と縦1次共振振動を独立に制御することができる。また、分極に用いた電極をそのまま駆動用電極に使える。
【0066】
実施例1及び実施例2においては2つの分極方向を逆向きにしていたが、同じ向きにした場合においても、図4に示す条件を満たすように中心軸100cに垂直な断面の短辺と長辺を構成することにより、ねじれ3次共振振動又はねじれ2次共振振動を発生させることができる。
また、実施例1及び実施例2では、2枚の圧電素子を貼り合わせて構成したが、単板で構成することもできる。また、2枚を超える枚数の圧電素子、例えば、4枚、8枚、...の圧電素子で構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上のように、本発明に係る超音波モータは、振動と斜めねじれ振動を合成することにより楕円振動を形成し、楕円振動によりロータを回転させる超音波モータに適している。
【符号の説明】
【0068】
100 超音波モータ
100c 中心軸
101 振動子
101a 楕円振動発生面
101f 長辺
101s 短辺
102 ロータ
103a、103b 摩擦接触部材
105 シャフト
107 ベアリング
108 押圧バネ
109 バネ押さえリング
110 ホルダ
111 シャフト固定リング
121、122 駆動電極
150 縦振動用圧電素子
150a 第1駆動電極
150b 第2駆動電極
160 斜め振動用圧電素子
160a 第1駆動電極
160b 第2駆動電極
200 斜めねじれ振動用圧電素子
201 第1駆動電極
202 第2駆動電極
211 第3駆動電極
212 第4駆動電極
300 斜めねじれ振動用圧電素子
300a 第1圧電素子
300b 第2圧電素子
301 第1駆動電極
302 第2駆動電極
311 第3駆動電極
312 第4駆動電極
400 振動子
400a 第1圧電素子
400b 第2圧電素子
401 第1駆動電極
402 第2駆動電極
411 第3駆動電極
412 第4駆動電極
500 振動子
500a 第1圧電素子
500b 第2圧電素子
501 第1駆動電極
502 第2駆動電極
511 第3駆動電極
512 第4駆動電極
P1、P2、P3、P4、P5、P6、P7、P8、P9、P10、P11、P12 分極方向
P40、P50 分極軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に垂直な断面が矩形状の長さ比率を有する振動子と、前記振動子の楕円振動発生面に接して前記振動子の前記楕円振動発生面と直交する前記中心軸を回転軸として回転駆動されるロータと、を少なくとも備えた超音波モータであって、
前記振動子の前記回転軸方向に伸縮する縦1次共振振動と、前記回転軸をねじれ軸とするねじれ2次共振振動又はねじれ3次共振振動とを合成することにより、楕円振動を形成してなり、
前記振動子の前記回転軸方向に伸縮する縦1次共振振動と、前記回転軸をねじれ軸とするねじれ2次共振振動又はねじれ3次共振振動と、の共振周波数がほぼ一致するように、前記振動子の前記矩形状の長さ比率を設定し、
前記振動子は、前記回転軸に対してそれぞれ鋭角をなす、2つの分極方向にそれぞれ沿った2つの分極軸を備えることを特徴とする超音波モータ。
【請求項2】
前記振動子において、前記2つの分極方向に沿って互いに逆方向に伸縮するように、前記2つの分極方向と駆動電極の関係を設定したことを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項3】
前記振動子は単板からなることを特徴とする請求項2に記載の超音波モータ。
【請求項4】
前記振動子は2枚の板からなることを特徴とする請求項2に記載の超音波モータ。
【請求項5】
前記楕円振動は、前記縦1次共振振動と前記ねじれ3次共振振動とを合成することにより形成され、
前記ねじれ3次共振振動の腹位置に対応するように前記駆動電極を配置していることを特徴とする請求項2に記載の超音波モータ。
【請求項6】
前記楕円振動は、前記縦1次共振振動と前記ねじれ2次共振振動とを合成することにより形成され、
前記ねじれ2次共振振動の腹位置に対応するように前記駆動電極を配置していることを特徴とする請求項2に記載の超音波モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−217237(P2012−217237A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79481(P2011−79481)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】