説明

躯体構築方法および後行躯体用型枠

【課題】逆巻き工法における躯体同士の打ち継ぎ部において、簡易かつ安価に高品質施工を行うことを可能とした躯体構築方法および後行躯体用型枠を提供する。
【解決手段】先行躯体2の下端面2aに密着するように後行躯体4を形成する躯体構築方法とこれに使用する後行躯体用型枠であって、先行躯体2の下端面2aを水平あるいは一方の下辺が他方の下辺よりも高くなるように傾斜させた状態に形成しておき、前記後行躯体4の型枠10には、下端面2aの一方の下辺に対応する位置に排出口13を形成しておくとともに、当該排出口13を開閉するスライドゲート14を設けておき、型枠10の内部へのコンクリート打設時に、排出口13から余剰水を排出させ、打設コンクリートの打設面の上昇に応じてスライドゲート14を上昇させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆巻き工法における躯体構築方法と後行躯体用型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物を構築する際に、上部から下部に向かって構築するいわゆる逆巻き工法を採用する場合がある。
例えば、地下構造物を構築する場合には、上部の躯体(先行躯体)を先に構築して下方に施工スペースを確保し、地盤を掘り下げた後、下部の躯体(後行躯体)を構築する。
【0003】
逆巻き工法における先行躯体と後行躯体との接続は、先行躯体の下端面と後行躯体の上端面との間に形成された隙間に無収縮モルタルやグラウト等を充填(注入)することにより行うが一般的であった。
【0004】
ところが、無収縮モルタル等を充填する方法は、圧入するための設備等を配置するためのスペースを確保する必要があることや、設備機器や材料により施工費が嵩む場合があることがあった。
また、充填性を確認するために手間を要していた。
【0005】
そのため、圧入用の設備等を要することなく、先行躯体と後行躯体とを接続する方法として、型枠の上端部を側方に広げるとともに先行躯体の下端面よりも高くなるように吹き上げ口を形成し、この吹き上げ口を利用してコンクリートを打ち上げることで、先行躯体の下端面に密着するように後行躯体のコンクリートを打設する方法が開発されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−272380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、前記従来のコンクリートの打設方法は、吹き上げ口にコンクリートが打ち上がるまで型枠内の圧力を保持することができないため、余剰水が排出され難かった。そのため、後行躯体の上端面に沈下が生じるおそれがあった。
また、単純に密封された型枠構造であればコンクリートの打設は容易であるものの、余剰水の排出は不可能となり、圧力上昇に対する型枠構造の増強やエア抜き不良に伴う充填不良対策を講じる必要があった。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、逆巻き工法における躯体同士の打ち継ぎ部において、簡易かつ安価に高品質施工を行うことを可能とした躯体構築方法および後行躯体用型枠を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の躯体構築方法は、先行躯体の下端面に密着するように後行躯体を形成する躯体構築方法であって、前記先行躯体の下端面を水平あるいは一方の下辺が他方の下辺よりも高くなるように傾斜させた状態に形成しておき、前記後行躯体の型枠には、前記先行躯体の下端面の一方の下辺に対応する位置に排出口を形成しておくとともに、当該排出口を開閉するスライドゲートを設けておき、前記型枠の内部へのコンクリート打設時に、前記排出口から余剰水を排出させ、打設コンクリートの打設面の上昇に応じて前記スライドゲートを上昇させることを特徴としている。
【0010】
かかる躯体構築方法によれば、余剰水やノロ分等を排出口から排出することができ、スライドゲートにより排出口を閉塞することで型枠内からのコンクリートの流出を防ぐことができるので打ち継ぎ目にジャンカや隙間が形成され難く、後行躯体を高品質に構築することができる。
【0011】
前記躯体構築方法において、前記スライドゲートで排出口を閉塞した状態で、前記コンクリートを加圧してもよい。つまり、スライドゲートで排出口を順次閉塞させながらポンプ圧送圧および流量を漸少(漸減)させつつコンクリートを打設し、最終的に排出口を閉塞させた状態でコンクリートを加圧することで、圧力の急激な上昇による型枠への負担を軽減するとともにエア抜きを実現することができる。このようにすると、打ち継ぎ目での密着度をより一層高めることができる。
【0012】
また、本発明の後行躯体用型枠は、先行躯体の下端面に密着する後行躯体を形成するための後行躯体用型枠であって、前記後行躯体の上端に沿って形成された排出口と、前記排出口よりも低い位置に形成された打設口と、前記排出口の下側に配置されたスライドゲートと、を備え、前記スライドゲートを上昇させると前記排出口が閉塞されることを特徴としている。
【0013】
かかる後行躯体用型枠によれば、排出口から余剰水やノロ分の排出を行うことができ、さらに、内部に打設されたコンクリートの打設面に応じてスライドゲートを上昇させることでコンクリート流出を防ぐことができるので、簡易かつ安価に後行躯体の上端面の沈下を抑制した高品質施工を行うことが可能となる。
ここで、型枠内へのコンクリートの打設は、1ヶ所の打設口に接続されるコンクリート輸送管を利用して順次接続する打設口を移動させて打設する方法と、枝分けされたコンクリート輸送管を複数の打設口に接続した状態で複数個所から同時に打設する方法等がある。また、打設口は、スライドゲート等により閉塞可能な構造が望ましい。
【0014】
また、スライドゲートとともにスライドする排出シュートが配設されていれば、型枠の汚損を防止することができる。
さらに、この排出シュートの下端に、排出口から排出された余剰コンクリートを受ける容器が配設されていれば、余剰コンクリートの処理を簡易に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の躯体構築方法および後行躯体用型枠によれば、逆巻き工法における躯体同士の打ち継ぎ部において、先行躯体の下方に形成される後行躯体を高品質に構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る後行躯体用型枠の使用状況を示す断面図である。
【図2】(a)は図1の後行躯体用型枠の拡大断面図、(b)は同後行躯体用型枠を一方から望む立面図、(c)は同後行躯体用型枠を他方から望む立面図である。
【図3】同後行躯体用型枠の詳細を示す図であって、(a)は一方から望む拡大立面図、(b)は拡大断面図である。
【図4】(a)〜(d)は、本発明の実施の形態に係る躯体構築方法の各施工状況を示す断面図である。
【図5】後行躯体用型枠の変形例を示す図であって、(a)はその一部分を示す立面図、(b)は同断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態では、図1に示すように、逆巻き工法により地下構造物1を構築する場合について説明する。
地下構造物1は、頂版2と底版3と壁部材4,4,4とを備えたボックスカルバートであって、先行して形成された頂版(先行躯体)2の下側に壁部材(後行躯体)4を形成することにより構築する。
【0018】
壁部材4は、壁本体4bと、この壁本体4bと頂版2との接続部分である上端部4aとにより形成される。
壁本体4bは、頂版2の下方に、頂版2の下端面2aから隙間をあけた状態で形成する。上端部4aは、この隙間に形成されることで、頂版2と壁部材4とを接続する。
【0019】
図2(a)に示すように、頂版2は、下端面2aの一方の下辺(図面において左側の下辺)が他方の下辺(図面において右側の下辺)よりも高くなるように、傾斜した状態で形成されている。
【0020】
上端部4aは、頂版2の下端面2aに密着するように、後行躯体用型枠10を利用して壁本体4bの上端に形成される。
【0021】
本実施形態の後行躯体用型枠10は、一対の型枠部材11,12を備えている。
一対の型枠部材11,12は、頂版2の下端と壁本体4bの上端との間に形成された隙間を挟むように配設される。
【0022】
型枠部材11,12は、図2(a)に示すように、板状の部材であって、その上部が頂版2に、下部が壁本体4bに、それぞれ固定部材20,20を介して固定されている。
なお、固定部材20の構成は限定されるものではないが、本実施形態の固定部材20は、アンカー21と係止部材22と横材23,23とを備えている。
アンカー21は、先端部分が上部部材2または壁本体4bに埋設された状態で固定されており、頭部が係止部材22を介して横材23に係止されている。係止部材22は、アンカー21の上下に配設された横材23,23に係止可能に構成された部材である。
横材23,23は、型枠部材11,12の表面において軸方向(図2(b)において左右方向)沿って配設された支保材であって、係止部材22を介してアンカー21により締め付けられることで、型枠部材11,12を保持している。横材23は、例えば、単管パイプや型鋼材などにより構成されている。本実施形態では横材23を2本配設するが、横材23の本数は限定されるものではない。
【0023】
型枠部材11,12は、図2(a)〜(c)に示すように、鋼板により形成されており、その外面(壁部材4と反対側の面)には、補強用のリブ11a,12aが複数配設されている。なお、型枠部材11,12を構成する材料は限定されるものではなく、例えば木製の板材等であってもよい。
【0024】
頂版2の一方の下辺側(図2(a)において左側)に配設された一方の型枠部材11(以下、「第一型枠部材11」という)には、図2(a)および(b)に示すように、上端部4aの上端(一方の下辺)に沿って排出口13が形成されている。
排出口13は、横方向に所定の間隔をあけて複数(本実施形態では5つ)形成されている。
【0025】
また、各排出口13にはスライドゲート14が配置されている。
スライドゲート14は、図3(b)に示すように、縦板部14aと横板部14bとを備えてなる、断面視L字状の板材により構成されている。
【0026】
縦板部14aは、コンクリート打設前は排出口13の下側に位置している(図3(b)参照)が、上昇することで排出口13を閉塞する(図2(a)参照)。
【0027】
横板部14bは、縦板部14aの下端に一体に形成されていて、牽引ロープRが係止されている。牽引ロープRは、第一型枠部材11よりも高い位置において頂版2から吊持されている。
スライドゲート14は、牽引ロープRを引き上げることにより上昇し、排出口13を閉塞する。
【0028】
第一型枠部材11には、図3(a)に示すように、排出口13の両脇に抑え板18が配設されている。
抑え板18と第一型枠部材11との間には所定の隙間が形成されており、この隙間に縦板部14aの側端部が挿入されている。すなわち、抑え板18と第一型枠部材11は縦板部14aを上下動可能に保持している。
なお、スライドゲート14の設置方法はこれに限定されるものではない。
【0029】
また、第一型枠部材11には、図3(a)および(b)に示すように、スライドゲート14とともにスライドする排出シュート15が配設されている。
【0030】
排出シュート15の上部は、縦板部14aに上部が固定されている。また、排出シュート15は、横板部14bの下面に固定された固定部材15aを介して横板部14bに固定されている。
【0031】
固定部材15aは、横板部14bよりも長い部材であって、一端が排出シュート15に固定されている。
排出シュート15は、図3(b)に示すように、固定部材15aを介して固定されていることで、下に行くほど第一型枠部材11から離れるように傾斜している。
【0032】
排出シュート15の両側端には、図3(a)に示すように、側板15b,15bが配設されている。
また、排出シュート15の下端には、容器16が配設されている。容器16には、排出口13から排出された余剰コンクリートや余剰水が貯留される。
【0033】
排出シュート15は、側板15b,15bを備えているため、排出口13から排出された余剰コンクリートや余剰水を側方にこぼすことなく容器16に誘導する。
【0034】
容器16は、袋状の部材であって、上部が開口した状態で排出シュート15の下端に、着脱自在に配設されている。本実施形態では、排出シュート15の下端部を容器16の開口部分に挿入し、排出シュート15を介して落下した余剰水等が容器16に投入されるように構成する。
なお、容器16は、余剰コンクリートや余剰水等を取り込むことが可能であれば限定されるものではなく、バケツや箱型の容器等であってもよい。また、容器16の開口縁部を排出シュート15の下端に密着させても良い。
【0035】
頂版2の他方の下辺側(図2(a)において右側)に配設された他方の型枠部材12(以下、「第二型枠部材12」という)には、図2(a)および(c)に示すように、排出口13よりも低い位置となるように打設口17が形成されている。
打設口17は、横方向に所定の間隔をあけて複数(本実施形態では5つ)形成されている。
打設口17の形状や数は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。なお、打設口17は、スライドゲート等により閉塞可能に構成されている。
【0036】
後行躯体用型枠10は、このように構成されていることで、打設口17からコンクリートを打設するとともに、排出口13から余剰コンクリート、ノロ分や余剰水等を排出させることができる。
また、コンクリートの打設時に排出口13から排出された余剰コンクリート等は、排出シュート15を介して容器16により回収する。
【0037】
次に、地下構造物1の躯体構築方法について説明する。
本実施形態では、頂版2を構築し、頂版2の下に施工スペースを確保した後、底版3を構築し、その後、頂版2と底版3との間に壁部材4を構築する。
【0038】
なお、頂版2は、一方の下辺が他方の下辺よりも高くなるように、下端面2aが傾斜した状態で形成する。
【0039】
壁部材4の構築は、まず、頂版2の下方に壁本体4bを形成し、その後、壁本体4bと頂版2との間に形成された隙間に上端部4aを形成することにより行う。
【0040】
壁本体4bは、図4(a)に示すように、先行して形成された頂版2と底版3との間に型枠30を配設し、この型枠30内にコンクリートを打設することにより形成する。
壁本体4bは、頂版2の下端面2aとの間に所定の隙間をあけた状態で形成する。
【0041】
型枠30は、上端が頂版2に固定されており、下端が底版3に固定されている。
型枠30内へのコンクリートの打設にともない、型枠30の上部からバイブレータ40を挿入し、コンクリートを締め固める。
【0042】
コンクリートを養生し、壁本体4bに所定の強度が発現したら、型枠30を脱型し、図4(b)に示すように、頂版2と壁本体4bとの間に後行躯体用型枠10を配設する。
このとき、スライドゲート14は排出口13が開口するように排出口13の下側に配設しておく。
【0043】
次に、図4(c)に示すように、打設口17からコンクリートを投入する。
コンクリートの打設面が排出口13の下縁高さまで上昇したら、当該打設面の上昇に応じてスライドゲート14を上昇させる。このとき、必要に応じて、スライドゲート14の上端をコンクリートの打設面よりも低くして、コンクリート打設時の余剰水やノロ分等を排出させてもよい。
排出口13から排出された余剰水等は、排出シュート15により誘導されて、容器16に取り込まれる。
【0044】
図4(d)に示すようにコンクリートの打設面が頂版2の下端面に接近し、排出口13からコンクリートが流出し始めたら順次ポンプ圧送圧および流量を漸少させつつスライドゲート14を上昇(閉塞)させていき、最終的に閉塞した状態で後行躯体用型枠10内のコンクリートを低圧で加圧する。
【0045】
なお、必要に応じてスライドゲート14を微小量下降させ、余剰水、ノロ分や余剰コンクリート等を排出口13から排出させ、加圧充填しつつも急激な圧力上昇による型枠への負担を抑制する。
【0046】
本実施形態の躯体構築方法と後行躯体用型枠によれば、スライドゲート14を昇降させることにより排出口13の開口幅(高さ)を調節することができ、圧力の急激な上昇を防ぎつつ加圧充填しながら、エア抜きや余剰水の排出等を好適に行うことができる。
そのため、頂版2と壁部材4との打ち継ぎ部にジャンカや隙間が形成され難く、高品質に施工を行うことができる。
【0047】
また、コンクリートの余剰水をエアとともに排出口13から排出することで、後行躯体の上端面に沈下や空隙が生じることを抑制し、高品質に施工を行うことができる。
そのため、後行躯体を先行躯体に密着させて、隙間を埋めるなどの補修作業等を要しない。
また、ポンプ圧送圧および流量を漸少させつつ排出口13を閉塞することができるので、コンクリートを型枠の崩壊を防止しつつ加圧することができ、ひいては、コンクリートを頂版2の下端面2aに密着させることができる。
ここで、後行躯体用型枠10の内部に圧力センサーを設置し、内部圧力を確認しつつポンプ圧送圧および流量を漸少させながら排出口13を閉塞させれば、より確実に型枠の崩壊を防止し、かつ、下端面2aへのコンクリートの密着性をより向上させることができる。
【0048】
また、従来の吹き上げ口を利用した施工方法のように後行躯体の上部に突出部分が形成されることがないため、ハツリ作業や後仕上げを省略でき、施工性に優れている。
【0049】
排出口13から排出された余剰水や余剰コンクリート等は、排出シュート15を介して容器16に回収されるため、後行躯体用型枠10の表面、壁本体4bや下部部材3等の周囲を汚すことがない。そのため、清掃作業等の手間を省略することができる。
【0050】
また、後行躯体用型枠10は、簡易な構成なため、比較的安価に製造することができる。
【0051】
頂版2の下端面2aが傾斜しているため、コンクリートの打設時に、打設面の上昇に伴ない排出口13から空気分を排出させることができる。そのため、先行躯体と後行躯体とを密着させることができる。
また、下端面2aが傾斜しているので、頂版2の下辺側にコンクリートの打設面が達した後であっても余剰水等を排出口13から排出させることができる。
【0052】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
【0053】
例えば、本発明の躯体構築方法および後行躯体用型枠が適用可能な構造物は、地下構造物に限定されるものではなく、あらゆる逆巻き工法により構築されるコンクリート構造物に採用可能である。また、地下構造物はボックスカルバートに限定されるものではない。
また、先行躯体の下端面は必ずしも傾斜している必要はなく、水平に形成されていてもよい。
【0054】
また、前記実施形態では、地下構造物の中壁を構築する場合について説明したが、本発明の躯体構築方法および後行躯体用型枠は、側壁の構築に採用してもよい。
また、後行躯体は、壁に限定されるものではなく、例えば柱であってもよい。
【0055】
前記実施形態では、排出シュートおよび容器を配設する場合について説明したが、排出シュートおよび容器は必要に応じて配設すればよく、省略してもよい。
【0056】
排出口を閉塞した状態でコンクリートを打設してコンクリートを加圧する場合について説明したが、コンクリートの加圧は必要に応じて行えばよく、必ずしも実施しなくてもよい。
また、コンクリートの打設は、複数の打設口から同時に行ってもよいし、順次打設箇所(打設口)を移動しながら1つの打設口から行ってもよい。
【0057】
躯体構築方法において打設されるコンクリートの種類は限定されるものではなく、例えば高流動コンクリート、膨張コンクリート、高強度コンクリート、普通コンクリート等を採用することができる。
また、モルタルやグラウトなどを採用することも可能である。
【0058】
前記実施形態では一対の型枠部材に対して一方の型枠部材に排出口、他方の型枠部材に打設口が形成されている場合について説明したが、排出口と打設口は一体の型枠部材に形成されていてもよい。
また、打設口は、必ずしもスライドゲートにより閉塞可能に構成されている必要はなく、その構成は限定されるものではない。
【0059】
前記実施形態では、後行躯体用型枠により上端部のみを形成する場合について説明したが、後行躯体用型枠の高さを大きくすることで壁本体を後行躯体用型枠により形成してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 地下構造物
2 頂版(先行躯体)
3 底版
4 壁部材(後行躯体)
4a 上端部
4b 壁本体
10 後行躯体用型枠
11 第一型枠部材(型枠部材)
12 第二型枠部材(型枠部材)
13 排出口
14 スライドゲート
15 排出シュート
16 容器
17 打設口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行躯体の下端面に密着するように後行躯体を形成する躯体構築方法であって、
前記先行躯体の下端面を水平あるいは一方の下辺が他方の下辺よりも高くなるように傾斜させた状態に形成しておき、
前記後行躯体の型枠には、前記先行躯体の下端面の一方の下辺に対応する位置に排出口を形成しておくとともに、当該排出口を開閉するスライドゲートを設けておき、
前記型枠の内部へのコンクリート打設時に、前記排出口から余剰水を排出させ、打設コンクリートの打設面の上昇に応じて前記スライドゲートを上昇させることを特徴とする、躯体構築方法。
【請求項2】
前記スライドゲートで排出口を閉塞した状態で、前記コンクリートを加圧することを特徴とする、請求項1に記載の躯体構築方法。
【請求項3】
先行躯体の下端面に密着する後行躯体を形成するための後行躯体用型枠であって、
前記後行躯体の上端に沿って形成された排出口と、
前記排出口よりも低い位置に形成された打設口と、
前記排出口の下側に配置されたスライドゲートと、を備え、
前記スライドゲートを上昇させると前記排出口が閉塞されることを特徴とする、後行躯体用型枠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−117338(P2012−117338A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270130(P2010−270130)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】