説明

車両制御装置

【課題】装置構成を複雑化することなく、非常時におけるドアロック制御及びエンジン始動制御をユーザに負担を強いることなく行える車両制御装置を得る。
【解決手段】車載装置6内において、スマート機能部7は電子キー1のスマート機能部2との間でスマート通信が可能であり、トランスポンダ機能部8は電子キー1のトランスポンダ機能部3との間でトランスポンダ通信が可能である。エンジン始動制御部43及びドアロック制御部44は、通常時において、それぞれ個別にエンジン始動制御及びドアロック制御を行い、非常時において、トランスポンダ制御部41のトランスポンダ制御信号S41を基づき、ドアロック制御部44及びエンジン始動制御部43間で協調するドアロック制御及びエンジン始動制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子キーと、車両に搭載され上記電子キーと送受信する車載装置とを備える車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リモートユニット(電子キー)及び車両側ユニット(車載装置)から構成され、リモートユニットの電池が消耗し、またリモートユニットの電池寿命がなくなるか、もしくは車両側のバッテリー寿命がなくなった非常時においても、車両のドアを解錠できる車両キーレスエントリー装置として、例えば、特許文献1に開示された車両キーレスエントリー装置がある。
【0003】
この装置は、ドア付近の車外からにリモートユニット内のトランスポンダに誘導給電可能な給電ユニットを車両側ユニットに搭載し、リモートユニットの電池切れ等の非常時に、当該給電ユニットよりリモートユニット側のトランスポンダ通信可能に給電することにより、非常時におけるリモートユニット,車両側ユニット間のトランスポンダ通信を実現して、ドアロック制御を可能としていた。なお、本明細書で述べるトランスポンダ通信とは車両側ユニットからリモートユニット側に回路動作に必要な電力を給電しながら、車両側ユニット,リモートユニット間で行うLF送受信による通信を意味する。
【0004】
一方、キーシリンダやスロットにイモビライザキーを挿入せず、イモビライザ機能に切り替えることが可能な遠隔制御システムの作動制御装置として、例えば、特許文献2に開示された作動制御装置がある。
【0005】
この装置は、緊急操作として、車内の所定の通信領域(トランスポンダ通信領域)内に携帯機(電子キー)を翳す操作を行い、給電された携帯器による照合が確認されると、エンジン始動を許可するエンジン制御を行っている。
【0006】
このように、従来において、前者(従来例1)は非常時における電子キーを用いたトランスポンダ通信によるドアロック制御、後者(従来例2)は非常時における電子キーを用いたトランスポンダ通信によるエンジン始動制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−115699号公報
【特許文献2】特開2004−359057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の車両制御装置はドアロック制御及びエンジン始動制御それぞれ一方の非常時動作のみを実現しているにすぎず、ドアロック制御及びエンジン始動制御を非常時に統括制御するという試みは何ら行われていない、という問題点があった。
【0009】
また、単純に従来例1及び従来例2の先行技術を組み合わせて、ドアロック制御及びエンジン始動制御双方を制御する構成が考えられる。
【0010】
この場合、一般にトランスポンダ通信は通信範囲が数cmレベルで狭く、従来例1の通信領域は車外であり、従来例2の通信領域は車内であるため、必然的にトランスポンダ通信用に個別に2つのアンテナを設ける必要がある。加えて、給電動作を効果的に実現するために給電回路を含む送受信機能をアンテナ近傍に設ける必要があるため、給電機構を含む送受信機能も2つ個別に設ける必要がある。
【0011】
このように、従来例1及び従来例2を組み合わせて、ドアロック制御及びエンジン始動制御双方を制御する構成を想定した場合、必然的に2つのアンテナ及び給電機構を含む送受信機能を設ける必要があり、非常時の構成として装置が複雑化し過ぎるという問題点があった。
【0012】
この発明は上記問題点を解決するためになされたもので、装置構成を複雑化することなく、非常時におけるドアロック制御及びエンジン始動制御をユーザに負担を強いることなく行える車両制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に係る請求項1記載の車両制御装置は、電子キーと、車両に搭載され前記電子キーと送受信可能な車載装置とを備える車両制御装置であって、前記電子キーは、第1の通信範囲内における第1方式通信が可能な第1の通信機能部と、車両外の領域を少なくとも一部に含む第2の通信範囲内における第2方式通信が可能な第2の通信機能部とを含み、前記車載装置は、前記第1の通信機能部との間で前記第1方式通信が可能な第3の通信機能部と、前記第2の通信機能部との間で前記第2方式通信が可能な第4の通信機能部とを含み、前記第4の通信機能部は前記第2の通信範囲内において前記第2の通信機能部を動作可能に給電する給電機構を有し、前記給電機構は前記車両の所定のドア付近に配置され、前記第3及び第4の通信機能部より得られる送受信情報に基づき、ドアをアンロックあるいはロックするドアロック制御及びエンジン始動を許可するエンジン始動制御を行う統合制御部とを備え、前記統合制御部は、前記第1及び第3の通信機能部間の第1方式通信が不能な非常時において、前記第2方式通信による前記第2の通信機能部からの認証情報を前記第4の通信機能部にて取得し、前記認証情報に基づく所定の認証処理を行い、前記所定の認証処理の成立後に前記ドアロック制御と共に前記エンジン始動制御を行っている。
【0014】
請求項2記載の車両制御装置は、請求項1記載の車両制御装置であって、前記統合制御部は、前記所定の認証処理の成立後の所定期間内において前記エンジン始動制御を行う。
【0015】
請求項3記載の車両制御装置は、請求項1あるいは請求項2記載の車両制御装置であって、前記車載装置は、第1方式通信及び第2方式通信用の共有アンテナを含み、前記共有アンテナは前記第3及び第4の通信機能部間で共用される。
【0016】
請求項4記載の車両制御装置は、請求項1ないし請求項3のうち、いずれか1項に記載の車両制御装置であって、前記第1の通信範囲は前記第2の通信範囲より広く、前記第1の通信機能部は内部に動作用電源を有し、前記第2の通信機能部は内部に動作用電源を有さない。
【発明の効果】
【0017】
この発明における請求項1記載の車両制御装置において、統合制御部は、非常時において、第2方式通信による第2の通信機能部からの認証情報を第4の通信機能部にて取得し、認証情報に基づく所定の認証処理を行い、所定の認証処理の成立後にドアロック制御と共にエンジン始動制御を行っている。
【0018】
このため、電子キーの第1の通信機能部あるいは車載装置の第3の通信機能部が機能不能になっても、電子キーの第2の通信機能部及び車載装置の第4の通信機能部間の第2方式通信によって、電子キーを用いたドアロック制御及びエンジン始動制御を支障なく行うことができる効果を奏する。
【0019】
この際、車載装置はドアロック制御及びエンジン始動制御用に1単位の第4の通信機能部を設けることにより、装置構成の簡略化を図ることができる。
【0020】
請求項2記載の本願発明において、統合制御部は、所定の認証処理の成立後の所定期間内においてエンジン始動制御を実行することにより、上記所定期間内でユーザはエンジン始動操作を確実に行うことができ、上記所定期間経過後にエンジン始動操作を誤って行われることを確実に回避して安全性を高めることができる。
【0021】
請求項3記載の本願発明において、車載装置は、共有アンテナを第3及び第4の通信機能部間で共用する分、集積度の向上を図ることができる。
【0022】
電子キー内の第2の通信機能部は内部に動作用電源を有さないため、電池切れの恐れなく、第4の通信機能部の給電機構による動作可能に給電されることにより、常に第2方式通信による第2の通信が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施の形態1であるの車両制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1の車両制御装置と従来例1との機能比較を模式的に示す説明図である。
【図3】実施の形態1の車両制御装置と従来例2との機能比較を模式的に示す説明図である。
【図4】非常時におけるエンジン始動制御に必要なユーザの操作の詳細を表形式で示す説明図である。
【図5】この発明の実施の形態2であるの車両制御装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<前提技術>
また、従来技術で説明した特許文献1(従来例1)と特許文献2(従来例2)とを組み合わせる際、装置構成簡略化のため、トランスポンダ通信用のアンテナ及び給電機構を含む送受信機能を強制的に一つに設定する場合を考える。
【0025】
この場合、例えば、ドアロック制御に適したトランスポンダ通信用のアンテナをドアロック制御及びエンジン始動制御で共用させる場合、エンジン始動制御をドアの外部に出て電子キーをドア付近で給電しながら、エンジン始動操作(イグニッションノブSWやエンジン始動/停止用プッシュSW等)を行うという、極めて使用勝手の悪い操作性をユーザに強いることになる。
【0026】
逆に、エンジン始動制御に適したトランスポンダ通信用のアンテナを車内に設けて共用させることは、ドアロック制御(主として「ドアロック解錠」)は車外から行うことが基本であるため、実質的に不可能である。
【0027】
本発明は、このような前提技術を解消し、トランスポンダ通信用のアンテナ及び給電機能を含む送受信部を1単位に抑え、かつ、非常時におけるドアロック制御及びエンジン始動制御のユーザ操作性を高めた車両制御装置を得ることを目的としている。
【0028】
<実施の形態1>
図1はこの発明の実施の形態1であるの車両制御装置の構成を示すブロック図である。同図に示すように、実施の形態1の車両制御装置は電子キー1及び車載装置6から構成されている。
【0029】
電子キー1はスマート機能部2及びトランスポンダ機能部3(第1及び第2の通信機能部)から構成されており、車載装置6はスマート機能部7及びトランスポンダ機能部8(第3及び第4の通信機能部)並びに統合制御部31から構成されている。
【0030】
電子キー1内において、スマート機能部2は車載装置6のスマート機能部7に対し、315Mヘルツ(以下、「Hz」で表記)のUHF帯の送信、125kHzのLF帯の受信からなるスマート通信(第1方式通信)を行う。トランスポンダ機能部3は車載装置6のトランスポンダ機能部8との間で125kHzのLF帯の送受信からなるトランスポンダ通信(第2方式通信)を行う。なお、スマート通信及びトランスポンダ通信時に既存の暗号解読・作成等の信号処理も併せて行われる。
【0031】
スマート機能部2はLF受信用アンテナ15、LF受信部16、UHF送信部17、UHF送信用アンテナ18、電池19及びスマート制御部20から構成される。
【0032】
LF受信部16はスマート制御部20の制御下でLF受信用アンテナ15からLF帯のスマート通信信号TS1を受信し、UHF送信部17はスマート制御部20の制御下でUHF送信用アンテナ18からUHF帯のスマート通信信号TS2を送信する。なお、電池19はスマート機能部2の動作電源であり、電池19が消耗し電池切れ状態になるとスマート機能部2は動作不能となる。
【0033】
一方、トランスポンダ機能部3はトランスポンダ制御部11、LF送信部12、LF受信部13及びLF送受信用アンテナ14から構成される。
【0034】
LF受信部13はトランスポンダ制御部11の制御下でLF送受信用アンテナ14からLF帯のトランスポンダ通信信号TT1を受信し、LF送信部12はトランスポンダ制御部11の制御下でLF送受信用アンテナ14からのLF帯のトランスポンダ送信信号TT2を送信する。なお、トランスポンダ機能部3はLF送信部33及びLF送受信用アンテナ34からのトランスポンダ通信信号TT1の受信時に給電されるため、内部に電池を有することなく動作可能である。
【0035】
車載装置6内において、スマート機能部7は電子キー1のスマート機能部2との間でスマート通信が可能である。トランスポンダ機能部8は電子キー1のトランスポンダ機能部3との間でトランスポンダ通信が可能である。
【0036】
統合制御部31はスマート機能部7の制御、トランスポンダ機能部8の制御、エンジン始動制御及びドアロック制御を統括的に行い、トランスポンダ制御部41、時間管理部42、エンジン始動制御部43、ドアロック制御部44及びスマート制御部45から構成される。なお、ドアロック制御はドアをアンロックあるいはロックする制御を意味し、エンジン始動制御はエンジン始動を許可する制御を意味する。
【0037】
スマート機能部7において、LF送信部36は統合制御部31内のスマート制御部45の制御下で、LF送信用アンテナ35からスマート通信信号TS1を送信し、UHF受信部37はスマート制御部45の制御下でUHF受信用アンテナ38からスマート通信信号TS2を受信する。
【0038】
トランスポンダ機能部8において、LF受信部32は統合制御部31のトランスポンダ制御部41の制御下でLF送受信用アンテナ34からトランスポンダ通信信号TT2を受信し、LF送信部33はトランスポンダ制御部41の制御下でLF送受信用アンテナ34からトランスポンダ通信信号TT1を送信する。なお、LF送信部33は内部に給電機能を有しており、給電機構としても機能する。
【0039】
統合制御部31内において、トランスポンダ制御部41は前述したようにトランスポンダ機能部8のトランスポンダ通信を制御し、スマート制御部45は前述したようにスマート機能部7のスマート通信を制御する。
【0040】
スマート制御部45は通常時にはスマート機能部7より得たスマート通信信号TS1,TS2等に基づき、電子キー1のスマート機能部2からのスマート通信による認証成立を判断すると、エンジン始動制御部43及びドアロック制御部44にエンジン始動制御信号S45E及びドアロック制御信号S45Dを与える。
【0041】
エンジン始動制御部43は通常時、スマート通信による認証成立を指示するエンジン始動制御信号S45Eに基づきエンジン始動制御を行う。
【0042】
同様にして、ドアロック制御部44は通常時、スマート通信による認証成立を指示するドアロック制御信号S45Dに基づき、ドアロック制御を行う。
【0043】
このように、エンジン始動制御部43及びドアロック制御部44は、通常時において、それぞれ個別にエンジン始動制御及びドアロック制御を行う。なお、スマート機能部2からのスマート通信による認証内容はエンジン始動制御時及びドアロック制御時間で共通でも異なっていても良い。
【0044】
一方、エンジン始動制御部43及びドアロック制御部44は、電子キー1の電池19の電池切れ、スマート機能部7の不良等で、電子キー1のスマート機能部2からのスマート通信による認証が正常に行えない非常時は、トランスポンダ制御部41のトランスポンダ制御信号S41に基づき、ドアロック制御部44及びエンジン始動制御部43間で協調するドアロック制御及びエンジン始動制御を行う。
【0045】
なお、統合制御部31は、スマート制御部45によって上記スマート通信による認証が正常に行えないことが認識されると、通常時から非常時に切り換えることができる。
【0046】
(従来例との比較)
図2は実施の形態1の車両制御装置と特許文献1で開示された車両キーレスエントリー装置(以下、「従来例1」と略記する。)との機能比較を模式的に示す説明図である。
【0047】
同図(a)に示すように、従来例1の車両50は、助手席側のサイドドア近傍に配置されたアンテナ51A、運転席側のサイドドア近傍に配置されたアンテナ51D、バックドア近傍に配置されたアンテナ51Bを有している。さらに、車両50は車室前方及び後方に設けられたアンテナ51F及び51Rを備えている。
【0048】
アンテナ51Aは例えば助手席のサイドドアの外部に設けられる等により、車両50の外部にスマート通信範囲52Aを有している。同様にして、アンテナ51D及び51Bは例えば運転席のサイドドア及びバックドアの外部に設けられる等により、車両50の外部にスマート通信範囲52D及び52Bを有している。一方、アンテナ51F及び51Rは車両50の内部にスマート通信範囲52F及び52Rを有している。
【0049】
さらに、運転席側のサイドドア近傍(外部)にトランスポンダ通信用のアンテナ55が設けられ、アンテナ55から外部にトランスポンダ通信領域61を有している。
【0050】
このように、従来例1は車両50のスマート通信用にアンテナ51A、51D、51B、51F及び51Rを設け、トランスポンダ通信用にアンテナ55を設けていた。しかしながら、従来例1においてアンテナ55を含むトランスポンダ通信機能部(図示せず)はドアロック制御専用であり、エンジン始動制御には用いられていなかった。
【0051】
図3は実施の形態1の車両制御装置と特許文献2で開示された作動制御装置(以下、「従来例2」と略記する。)との機能比較を模式的に示す説明図である。
【0052】
同図(a)に示すように、従来例2の車両70内において、車両50と同様にアンテナ51A、51D、51B、51F及び51Rを有している。
【0053】
さらに、運転席に座った状態で手が届く位置、例えばインストルメントパネル中央部にトランスポンダ通信用のアンテナ56を設け、アンテナ56を中心にトランスポンダ通信領域62を有している。
【0054】
このように、従来例2は車両70のスマート通信用にアンテナ51A、51D、51B、51F及び51Rを設け、トランスポンダ通信用にアンテナ56を設けていた。しかしながら、従来例2においてアンテナ56を含むトランスポンダ通信機能部(図示せず)はエンジン始動制御専用であり、ドアロック制御には用いられていなかった。
【0055】
一方、図2(b)あるいは図3(b)に示すように、実施の形態1の車載装置6を搭載した車両5は、従来例1(従来例2)と同様、アンテナ51A、51D、51B、51F及び51Rをスマート機能部7のLF送信用アンテナ35(図1参照)として有している。
【0056】
さらに、トランスポンダ機能部8のLF送受信用アンテナ34をアンテナ51Dとほぼ同様なドライバ側のサイドドア近傍に配置しており、サイドドアから外側に向けてトランスポンダ通信領域60を有している。このLF送受信用アンテナ34によるトランスポンダ通信領域60は、従来例2のアンテナ56によるトランスポンダ通信領域62と比較した場合、車外と車内という点で明確に異なっている。
【0057】
このように、実施の形態1は従来例1及び従来例2に比べ、ドアロック制御及びエンジン始動制御兼用のLF送受信用アンテナ34(を含むトランスポンダ機能部8(図1参照))を設け、非常時に、LF送受信用アンテナ34のトランスポンダ通信領域60で車載装置6とトランスポンダ通信を行うことにより、ドアロック制御及びエンジン始動制御の協調動作を可能にしている点で明確に異なっている。
【0058】
(非常時動作)
以下、エンジン始動制御部43及びドアロック制御部44を含む統合制御部31によるによる非常時動作について説明する。
【0059】
非常時において、車載装置6のトランスポンダ機能部8の通信範囲内でユーザが電子キー1を翳す等の処理を行い、電子キー1,車両5間のトランスポンダ通信を実行させると、トランスポンダ制御部41の制御下で電子キー1のトランスポンダ機能部3からのトランスポンダ通信による認証(以下、「トランスポンダ認証」と略記する)成立の有無をチェックする。
【0060】
なお、トランスポンダ認証とは、車載装置6のトランスポンダ機能部8と電子キー1のトランスポンダ機能部3との間でトランスポンダ通信を行わせ、車両5側のキーコードと一致するキーコードが電子キー1のトランスポンダ機能部3から送信されたか否かを判断することを意味する。
【0061】
そして、トランスポンダ制御部41はトランスポンダ認証成立を判定すると、トランスポンダ認証成立を指示するトランスポンダ制御信号S41をドアロック制御部44に出力する。トランスポンダ認証成立を指示するトランスポンダ制御信号S41をドアロック制御部44が受けるとドアロック制御部44及びエンジン始動制御部43は協同してドアロック制御及びエンジン始動制御を開始する。
【0062】
すなわち、トランスポンダ制御部41によるトランスポンダ認証成立をトリガとして、エンジン始動制御部43及びドアロック制御部44は協同して以下の(1)〜(3)の手順で非常時の制御動作を行う。
【0063】
(1) ドアロック制御部44はドアロック制御を開始する、
(2) ドアロック制御部44はドアロック制御終了後、ドアロック制御開始信号S44をエンジン始動制御部43に付与する、
(3) エンジン始動制御部43は、ドアロック制御開始信号S44の入力をトリガとしてエンジン始動許可時間内においてエンジン始動を許可するエンジン始動制御を行う。この際、エンジン始動許可時間の管理は時間管理部42の制御下で行う。
【0064】
時間管理部42は、例えば、トランスポンダ認証成立を指示するトランスポンダ制御信号S41を起点として所定時間(例えば、30秒間)をエンジン始動許可時間として設定することができる。また、時間管理部42は、タイマロック(30秒後にドアがリロックする)で用いられるソフトを上記エンジン始動許可時間の設定用に活用することもできる。
【0065】
一方、ユーザに要求される非常時のドアロック制御及びエンジン始動制御における操作手順は主として以下の(イ)及び(ロ)のみである。
【0066】
(イ)電子キー1のトランスポンダ機能部3と車載装置6のトランスポンダ機能部8とのトランスポンダ通信を可能にすべく、電子キー1を車載装置6のLF送受信用アンテナ34のトランスポンダ通信領域60内に配置する、
(ロ)上記操作(イ)からエンジン始動許可時間内にエンジン始動トリガ操作を行う。
【0067】
なお、エンジン始動制御は必要なく、ドアの解錠等のドアロック制御のみで十分である場合は、上記操作(イ)のみ行えばよく、この場合、上記エンジン始動許可時間経過後にエンジン始動制御は自動的に終了することになる。
【0068】
図4は非常時におけるエンジン始動制御に必要なユーザの操作(イ),(ロ)の詳細を表形式で示す説明図である。
【0069】
同図に示すように、非常時にユーザが車外にいた場合(通常、車両5はドアロック状態)、ユーザは上記操作(イ)を行うべく、車外からアンテナ51D付近に移動し、トランスポンダ通信領域60内に電子キー1を配置し、車載装置6のトランスポンダ機能部8とのトランスポンダ通信を可能にする。
【0070】
そして、車載装置6内のトランスポンダ制御部41においてトランスポンダ認証の成立が判定されると上記処理(1)〜(3)が順次実行される。
【0071】
したがって、ユーザは上記操作(ロ)を行うべく、上記処理(2)のドアロック制御中にユーザがドアアンロック・ロック操作を行ってドア解錠した後に車内に入る。なお、ドアアンロック・ロック操作として、車両5のドアに設けられたリクエストSWをONする、ドアノブに触れる等の操作等が考えられる。
【0072】
その後、ユーザは車内で、エンジン始動許可時間内にエンジン始動操作を行いエンジンを始動させることができる。なお、エンジン始動操作として、例えば、イグニッションノブSW操作、エンジンプッシュSWのON操作、ブレーキペダルのON操作等が考えられる。
【0073】
一方、非常時にユーザが車内にいる場合、ユーザは上記操作(イ)を行うべく、一旦、車外へ出て、アンテナ51D付近のトランスポンダ通信領域60内に電子キー1を配置し、車載装置6とのトランスポンダ通信可能にする。
【0074】
そして、車載装置6内のトランスポンダ制御部41においてトランスポンダ認証の成立が判定されると上記処理(1)〜(3)が順次実行される。
【0075】
その後、ユーザは上記操作(ロ)を行うべく、上記処理(2)のドアロック制御中にユーザがドアアンロック・ロック操作を形式的に行って車内に戻った後、エンジン始動許可時間内にエンジン始動操作を行いエンジンを始動させることができる。
【0076】
このように、実施の形態1の車両制御装置において、統合制御部31は、非常時において、トランスポンダ通信によるトランスポンダ機能部3からのキーコード(認証情報)をトランスポンダ機能部8にて取得し、トランスポンダ制御部41によってキーコードに基づくトランスポンダ認証判定を行っている。そして、統合制御部31は、トランスポンダ認証成立後にドアロック制御部44及びエンジン始動制御部43の協調動作によるドアロック制御及びエンジン始動制御を行っている。
【0077】
このため、電子キー1のスマート機能部2あるいは車載装置6のスマート機能部7が機能不能になっても、電子キー1のトランスポンダ機能部3及び車載装置6のトランスポンダ機能部8間のトランスポンダ通信によって、電子キー1を用いたドアロック制御及びエンジン始動制御を支障なく行うことができる効果を奏する。
【0078】
すなわち、実施の形態1の車両制御装置は、基本的に上記操作(イ),(ロ)のみがユーザに要求する操作となるため、ユーザに負担を強いることなく非常時におけるドアロック制御及びエンジン始動制御を行える効果を奏する。
【0079】
さらに、車載装置6はドアロック制御及びエンジン始動制御用に1単位のトランスポンダ機能部8を設けることにより、個別に設ける場合に比べて、装置構成の簡略化を図ることができる。
【0080】
加えて、実施の形態1の車両制御装置において、統合制御部31は、トランスポンダ認証成立後のエンジン始動許可時間内においてエンジン始動を許可するエンジン始動制御を実行することにより、上記エンジン始動許可時間内でユーザはエンジン始動操作の確実に行うことができ、上記エンジン始動許可時間経過後にエンジン始動操作を誤って行われることを確実に回避して安全性を高めることができる。
【0081】
さらに、電子キー1内のトランスポンダ機能部3は内部に動作用電源を必要としないため、電池切れの恐れなく、トランスポンダ機能部8の給電機構(LF送信部33)によって動作可能に給電されることにより、常にトランスポンダ通信が可能である。
【0082】
<実施の形態2>
図5はこの発明の実施の形態2であるの車両制御装置の構成を示すブロック図である。同図に示すように、実施の形態2の車両制御装置は電子キー1及び車載装置9から構成されている。
【0083】
車載装置9はLF送受信用アンテナ34及びLF送信用アンテナ35に置き換えて、LF送受信用アンテナ39及び切換機構40を設けた点で、実施の形態1の車載装置6と異なる。なお、他の構成は、図1で示した実施の形態1と同様である。
【0084】
LF送受信用アンテナ39はスマート機能部7及びトランスポンダ機能部8で共用されるべく、LF送受信用アンテナ39が電気的に接続されるアンテナ側端子P3は切換機構40によって、トランスポンダ機能部8が電気的に接続されるトランスポンダ通信用端子P1あるいはスマート機能部7が電気的に接続されるスマート通信用端子P2に選択的に接続対象が切り換えられる。
【0085】
切換機構40によるアンテナ側端子P3の切換制御として、例えば、以下の制御方法が考えられる。まず、第1の制御方法として、アンテナ側端子P3との接続対象を一定の周期毎にトランスポンダ通信用端子P1,スマート通信用端子P2間で切り換える方法がある。また、第2の制御方法として、通常はアンテナ側端子P3とスマート通信用端子P2とを電気的に接続し、特殊状態設定時(車両5に設けられたスマート通信で使用するリクエストSWの所定時間以上の長押し検出時等)から所定の時間帯のみ、アンテナ側端子P3とトランスポンダ通信用端子P1とを電気的に接続する方法がある。
【0086】
また、切換機構40を設けることなく、アンテナ側端子P3をトランスポンダ通信用端子P1及びスマート通信用端子P2双方に電気的に接続し、スマート機能部7及びトランスポンダ機能部8間で競合使用しないようにすることも可能である。
【0087】
このように、実施の形態2の車両制御装置は、実施の形態1の効果に加え、車載装置9内においてスマート機能部7及びトランスポンダ機能部8間で共用されるLF送受信用アンテナ39を設けることにより、実施の形態1に比べ、LF送受信用アンテナ数を“1”減少させることができる分、装置構成の簡略化を図ることができる効果を奏する。
【0088】
(その他)
なお、上述した実施の形態では、LF送受信用アンテナ34によるトランスポンダ通信領域60を車両5の外に設けられる例を示したが、LF送受信用アンテナ34の設置場所、設定方法を工夫することにより、車両5の外から車室内にまたがってトランスポンダ通信領域を設定することも考えられる。この場合、非常時にユーザが車両5内にいる場合の操作性を高めることができる効果を奏する。
【符号の説明】
【0089】
1 電子キー
2,7 スマート機能部
3,8 トランスポンダ機能部
6 車載装置
11,41 トランスポンダ制御部
12,36 LF送信部
13,16,32 LF受信部
14,34 LF送受信用アンテナ
15 LF受信用アンテナ
17 UHF送信部
18 UHF送信用アンテナ
19 電池
20,45 スマート制御部
31 統合制御部
33 LF送信部(給電機能付き)
35 LF送信用アンテナ
37 UHF受信部
38 UHF受信用アンテナ
42 時間管理部
43 エンジン始動制御部
44 ドアロック制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子キーと、車両に搭載され前記電子キーと送受信可能な車載装置とを備える車両制御装置であって、
前記電子キーは、
第1の通信範囲内における第1方式通信が可能な第1の通信機能部と、
車両外の領域を少なくとも一部に含む第2の通信範囲内における第2方式通信が可能な第2の通信機能部とを含み、
前記車載装置は、
前記第1の通信機能部との間で前記第1方式通信が可能な第3の通信機能部と、
前記第2の通信機能部との間で前記第2方式通信が可能な第4の通信機能部とを含み、前記第4の通信機能部は前記第2の通信範囲内において前記第2の通信機能部を動作可能に給電する給電機構を有し、前記給電機構は前記車両の所定のドア付近に配置され、
前記第3及び第4の通信機能部より得られる送受信情報に基づき、ドアをアンロックあるいはロックするドアロック制御及びエンジン始動を許可するエンジン始動制御を行う統合制御部とを備え、
前記統合制御部は、前記第1及び第3の通信機能部間の第1方式通信が不能な非常時において、前記第2方式通信による前記第2の通信機能部からの認証情報を前記第4の通信機能部にて取得し、前記認証情報に基づく所定の認証処理を行い、前記所定の認証処理の成立後に前記ドアロック制御と共に前記エンジン始動制御を行うことを特徴とする、
車両制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両制御装置であって、
前記統合制御部は、前記所定の認証処理の成立後の所定期間内において前記エンジン始動制御を行う、
車両制御装置。
【請求項3】
請求項1あるいは請求項2記載の車両制御装置であって、
前記車載装置は、
第1方式通信及び第2方式通信用の共有アンテナを含み、
前記共有アンテナは前記第3及び第4の通信機能部間で共用される、
車両制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうち、いずれか1項に記載の車両制御装置であって、
前記第1の通信範囲は前記第2の通信範囲より広く、
前記第1の通信機能部は内部に動作用電源を有し、前記第2の通信機能部は内部に動作用電源を有さない、
車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−7441(P2012−7441A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146399(P2010−146399)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】