説明

車両用電源制御装置及び車両用電源制御方法

【課題】ユーザがバッテリ劣化通知を軽視してバッテリ交換をしないために、バッテリ劣化が進行してエンジン始動ができなくなることを回避する車両用電源制御装置を提供する。
【解決手段】バッテリの劣化状態を検出するバッテリ劣化状態検出部と、エンジン始動要求に応答して、メインコンタクタを制御してバッテリの電力をスタータモータに供給するスタータ制御部とを備え、スタータ制御部は、バッテリ劣化状態検出部が検出したバッテリの劣化状態に応じて、通常始動モード又は抑制始動モードのいずれかを決定する始動モード決定部と、通常始動モードが決定された場合は1回のエンジン始動要求に応答してエンジンを始動させ、抑制始動モードが決定された場合は複数回数のエンジン始動要求に応答してエンジンを始動させる始動回数制御部とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電源制御装置及び車両用電源制御方法に関し、より特定的には、ユーザにバッテリの劣化を通知する車両用電源制御装置及び車両用電源制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のバッテリ劣化状態を測定して、ユーザに通知する技術は、一般に知られている。そして、この技術は、近年の環境意識の高まりを理由に行われるアイドリングストップの実施等に起因する車両の消費電力増加によって、更に重要性を増している。例えば、特許文献1には、バッテリの劣化状態を正確に測定して、インストルメントパネルに警告表示することによって、ユーザにバッテリの劣化を通知する技術が記載されている。
【特許文献1】特開2006−15896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来の技術には、以下の問題がある。ユーザは、インストルメントパネルの警告表示を確認しても当分の期間は、特に不便を感じることなくエンジンを始動できる。このことから、ユーザは、バッテリ劣化を警告表示によって認識していても、バッテリ交換を先延ばしにしがちである。つまり、従来の技術では、正確にバッテリ劣化を計測してユーザに通知しても、ユーザはバッテリ劣化通知を軽視してバッテリ交換をしない傾向にある。この結果として、従来の技術には、バッテリ劣化が進行し、エンジン始動ができないという事態に陥り易いという問題がある。
【0004】
それ故に、本発明の目的は、ユーザがバッテリ劣化通知を軽視してバッテリ交換をしないことを理由にバッテリ劣化が進行してエンジン始動ができなくなることを回避する車両用電源制御装置及び車両用電源制御装方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、バッテリの電力をメインコンタクタを介してスタータモータに供給してエンジンを始動させるスタータ装置に備えられる車両用電源制御装置に向けられている。そして、上記目的を達成させるために、本発明の車両用電源制御装置は、バッテリの劣化状態を検出するバッテリ劣化状態検出部と、エンジン始動要求に応答して、メインコンタクタを制御してバッテリの電力をスタータモータに供給するスタータ制御部とを備え、スタータ制御部は、バッテリ劣化状態検出部が検出したバッテリの劣化状態に応じて、通常始動モード又は抑制始動モードのいずれかを決定する始動モード決定部と、通常始動モードが決定された場合は1回のエンジン始動要求に応答してエンジンを始動させ、抑制始動モードが決定された場合は複数回数のエンジン始動要求に応答してエンジンを始動させる始動回数制御部とを含む。
【0006】
これにより、本発明の車両用電源制御装置は、エンジンの始動を意図的に失敗させることによってバッテリ劣化警告を行うので、ユーザは、不便を感じ、近い将来にエンジン始動不能となるという危機感を感じる。このことによって、ユーザは、バッテリ劣化警告を軽視せずバッテリ交換を促されるので、バッテリ劣化によるエンジン始動不能という事態を確実に回避できる。
【0007】
また、好ましくは、始動モード決定部は、抑制始動モードを決定した場合、更に、バッテリ劣化状態検出部が検出したバッテリの劣化状態に応じた回数を決定し、始動回数制御部は、抑制始動モードが決定された場合、始動モード決定部によって決定された回数のエンジン始動要求に応答してエンジンを始動させる。
【0008】
これにより、本発明の車両用電源制御装置は、バッテリ劣化の進行に伴って、ユーザに与える危機感を増加させることができる。この結果として、ユーザは、バッテリ交換を強く促されるので、バッテリ劣化によるエンジン始動不能という事態を更に確実に回避できる。
【0009】
また、バッテリ劣化状態検出部は、バッテリの内部抵抗を測定することによって、バッテリの劣化状態を検出してもよい。
【0010】
本発明は、バッテリの電力をメインコンタクタを介してスタータモータに供給してエンジンを始動させるスタータ装置に用いられる車両用電源制御方法にも向けられている。そして、上記目的を達成させるために、本発明の車両用電源制御方法は、バッテリの劣化状態を検出するバッテリ劣化状態検出ステップと、エンジン始動要求に応答して、メインコンタクタを制御してバッテリの電力をスタータモータに供給する電力供給ステップとを備え、電力供給ステップは、バッテリ劣化状態検出ステップで検出したバッテリの劣化状態に応じて、通常始動モード又は抑制始動モードのいずれかを決定する始動モード決定ステップと、通常始動モードが決定された場合は1回のエンジン始動要求に応答してエンジンを始動させ、抑制始動モードが決定された場合は複数回数のエンジン始動要求に応答してエンジンを始動させる始動ステップとを含む。
【0011】
これにより、本発明の車両用電源制御方法は、エンジンの始動を意図的に失敗させることによってバッテリ劣化警告を行うので、ユーザは、不便を感じ、近い将来にエンジン始動不能となるという危機感を感じる。このことによって、ユーザは、バッテリ劣化警告を軽視せずバッテリ交換を促されるので、バッテリ劣化によるエンジン始動不能という事態を確実に回避できる。
【0012】
また、好ましくは、始動モード決定ステップにおいて、抑制始動モードが決定された場合、更に、バッテリ劣化状態検出ステップで検出されたバッテリの劣化状態に応じた回数が決定され、始動ステップでは、抑制始動モードが決定された場合、始動モード決定ステップで決定された回数のエンジン始動要求に応答してエンジンを始動させる。
【0013】
これにより、本発明の車両用電源制御方法は、バッテリ劣化の進行に伴って、ユーザに与える危機感を増加させることができる。この結果として、ユーザは、バッテリ交換を強く促されるので、バッテリ劣化によるエンジン始動不能という事態を更に確実に回避できる。
【0014】
また、バッテリ劣化状態検出ステップでは、バッテリの内部抵抗を測定することによって、バッテリの劣化状態を検出してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両用電源制御装置及び車両用電源制御方法は、バッテリ劣化時には、エンジン始動を意図的に失敗させる。このことによって、ユーザは、バッテリ劣化時には、不便を感じ、近い将来にエンジン始動不能となるという危機感を感じる。そして、ユーザは、バッテリ劣化警告を軽視せず、バッテリ交換を促される。この結果として、本発明の車両用電源制御装置及び車両用電源制御方法は、バッテリ劣化によるエンジン始動不能という事態を、より確実に回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、スタータ装置10に備えられる第1の実施形態に係る車両用電源制御装置100を説明するための図である。図1に示す通り、スタータ装置10は、第1の実施形態に係る車両用電源制御装置100と、バッテリ3と、メインコンタクタ4と、スタータモータ5とを備える。車両用電源制御装置100は、バッテリ状態監視ECU(electronic control unit)1と、スタータ制御回路2とを備える。バッテリ3の一端は接地され、他端はメインコンタクタ4の入力端子とバッテリ状態監視ECU1の入力端子とに接続される。メインコンタクタ4の出力端子は、スタータモータ5の一端に接続される。スタータモータ5の他端は、接地される。バッテリ状態監視ECU1の出力端子は、スタータ制御回路2の入力端子に接続される。スタータ制御回路2の出力端子は、メインコンタクタ4の制御端子に接続される。なお、バッテリ状態監視ECU1を、バッテリ劣化状態検出部1と呼んでもよい。また、スタータ制御回路2を、スタータ制御部2と呼んでもよい。
【0017】
スタータ制御回路2は、始動モード決定部11と、始動回数制御部12とを含む。始動モード決定部11の一端は、スタータ制御回路2の入力端子に接続され、他端は、始動回数制御部12の一端に接続される。始動回数制御部12の他端は、スタータ制御回路2の出力端子に接続される。
【0018】
バッテリ3は、スタータモータ5に電力を供給して、スタータモータ5を動作させる。スタータモータ5は、エンジン(図示せず)を始動させる。メインコンタクタ4は、バッテリ3とスタータモータ5とを接続するスイッチの役割を果たす。車両用電源制御装置100は、メインコンタクタ4の動作を制御することによって、スタータモータ5を制御して、エンジンを始動させる。ここで、車両用電源制御装置100がスタータモータ5を制御する方法は、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)制御である。
【0019】
図2は、第1の実施形態に係る車両用電源制御装置100の動作について説明するためのフローチャートである。以下では、図1及び図2を参照して、車両用電源制御装置100の動作について説明する。
【0020】
まず、ステップS101において、スタータ制御回路2は、ユーザからエンジン始動要求が有るまで待機する。ユーザからのエンジン始動要求は、例えば、ユーザがエンジン始動ボタンを押すことによって、スタータ制御回路2に通知される。ユーザからエンジン始動要求が有ると、ステップS102に移る。
【0021】
ステップS102において、バッテリ状態監視ECU1は、バッテリ3の劣化状態を検出する。例えば、バッテリ状態監視ECU1は、バッテリ3の内部抵抗値を計測することによって、バッテリ3の劣化状態を検出する。以下では、バッテリ状態監視ECU1が、バッテリ3の内部抵抗値を計測することによってバッテリ3の劣化状態を検出するものとして説明を行う。なお、バッテリ状態監視ECU1は、バッテリ3の劣化状態を検出するために、他の方法を用いてもよい。また、バッテリ状態監視ECU1は、スタータ制御回路2から検出要求を受けてバッテリ3の劣化状態を検出してもよいし、常に、バッテリ3の劣化状態を検出してスタータ制御回路2に検出結果を出力していてもよい。
【0022】
次に、ステップS103において、始動モード決定部11は、ステップS102でバッテリ状態監視ECU1が検出したバッテリ3の劣化状態を示す内部抵抗値が、所定値以上であるか否かを判断する。始動モード決定部11は、内部抵抗値が所定値以上ではないと判断した場合は、当該判断結果を始動回数制御部12に通知し、ステップS104に移る。始動モード決定部11は、内部抵抗値が所定値以上であると判断した場合は、当該判断結果を始動回数制御部12に通知し、ステップS105に移る。
【0023】
ステップS104において、始動回数制御部12は、メインコンタクタ4の制御端子に制御信号を出力して、バッテリ3の電力をスタータモータ5に供給させる。ステップS104における始動回数制御部12の制御信号は、メインコンタクタ4に、スタータモータ5がエンジンを始動できる電力を当該スタータモータ5に供給させる信号である。つまり、ステップS104において、始動回数制御部12は、エンジン始動に必要な通常の電力をスタータモータ5に供給させる。この結果として、車両用電源制御装置100は、ユーザの1回のエンジン始動要求に応答してエンジンを始動させ、動作を終了する。
【0024】
一方、ステップS105において、始動回数制御部12は、メインコンタクタ4の制御端子に制御信号を出力して、バッテリ3からスタータモータ5へ抑制した電力を供給させる。ステップS105においてスタータモータ5に供給される電力は、当該スタータモータ5がエンジンを始動できない程度に抑制された電力である。この結果として、スタータモータ5は、動作するが、エンジンを始動させない。つまり、スタータモータ5の出力軸は、回転するが、エンジンは始動しない。
【0025】
次に、ステップS106において、始動回数制御部12は、ユーザからエンジン始動要求が有るまで待機する。ユーザからエンジン始動要求が有ると、ステップS104に移り、スタータモータ5はエンジンを始動させ、車両用電源制御装置100の動作は終了する。この結果として、車両用電源制御装置100は、ユーザの2回のエンジン始動要求に応答してエンジンを始動させ、動作を終了する。
【0026】
図3は、車両用電源制御装置100において、バッテリ劣化状態を示す内部抵抗値とエンジン始動に必要となるエンジン始動要求回数との関係の一例を示した図である。図3において、図2のステップS103で始動モード決定部11が判断する際に用いる内部抵抗値の所定値は、一例として、17mΩである。図3に示す通り、車両用電源制御装置100は、バッテリ3の内部抵抗値が17mΩ未満である場合は、ユーザの1回目のエンジン始動要求に応答して、エンジンを始動させる(ステップS103及びS104)。なお、このステップS103及びS104のルートの動作を、通常始動モードの動作と呼んでもよい。一方、車両用電源制御装置100は、バッテリ3の内部抵抗値が17mΩ以上である場合は、ユーザの2回目のエンジン始動要求によってエンジンを始動させる(ステップS103、S105、S106及びS104)。なお、このステップS103、S105、S106及びS104のルートの動作を、抑制始動モードの動作と呼んでもよい。
【0027】
以上に説明した通り、本発明の第1の実施形態に係る車両用電源制御装置100は、バッテリ3の劣化状態を検出し、当該劣化状態に応じてエンジンの始動を意図的に失敗させる。このことによって、車両用電源制御装置100は、バッテリ劣化時には、ユーザに不便を感じさせることによって、ユーザに近い将来エンジン始動不能となるという危機感を感じさせることができる。つまり、車両用電源制御装置100は、ユーザがバッテリ劣化の警告を軽視してバッテリ交換を先延ばしにすることを抑制できる。この結果として、車両用電源制御装置100は、バッテリ劣化によるエンジン始動不能という事態を、より確実に回避することができる。
【0028】
なお、以上では、ステップS103でバッテリ劣化状態が所定値以上と判断された場合(抑制始動モードの場合)、ステップS105及びS106の動作を1回行った。しかし、ステップS105及びS106の動作は、複数回繰り返し行われてもよい。このことによって、抑制始動モードにおいてエンジン始動に必要となるエンジン始動要求の回数を3回以上にすることができる。
【0029】
また、以上では、車両用電源制御装置100は、直前のバッテリ劣化状態に応じて通常スタート始動又は抑制スタートモードのいずれかを決定するために、バッテリ劣化状態検出のステップS102を、バッテリ3の劣化状態を判断するステップS103の直前に実施した(図2を参照)。しかし、ステップS102は、図2に示した位置には限られず、例えば、ステップS104の次に位置してもよい。この場合、車両用電源制御装置100は、ユーザが次回エンジンを始動させるためにエンジン始動要求を行う(ステップS101)まで、バッテリ劣化状態(内部抵抗値)を記憶することとなる。
【0030】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る車両用電源制御装置200は、第1の実施形態に係る車両用電源制御装置100に対して、スタータ制御回路2をスタータ制御回路6に置換えた構成である。また、スタータ制御回路6は、スタータ制御回路2に対して、始動モード決定部11を始動モード決定部21に置換え、始動回数制御部12を始動回数制御部22に置換えた構成である。従って、以下では、図1を流用して説明を行う。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態と重畳する内容については、原則として説明を省略する。
【0031】
図4は、第2の実施形態に係る車両用電源制御装置200の動作について説明するためのフローチャートである。図4のフローチャートは、第1の実施形態の図2のフローチャートに対して、ステップS205、S206、S207及びS208を追加した構成である。図5は、車両用電源制御装置100において、バッテリ劣化状態を示す内部抵抗値とエンジン始動に必要となるエンジン始動要求回数nとの関係の一例を示した図である。以下では、図1、図4及び図5を参照して、車両用電源制御装置200の動作について説明する。
【0032】
まず、ステップS101において、スタータ制御回路6は、第1の実施形態で説明したスタータ制御回路2と同様に、ユーザからエンジン始動要求が有るまで待機し、ユーザからエンジン始動要求が有ると、ステップS102に移る。
【0033】
ステップS102において、第1の実施形態で説明した通り、バッテリ状態監視ECU1は、バッテリ3の劣化状態を検出する。
【0034】
次に、ステップS103において、始動モード決定部21は、バッテリ状態監視ECU1が検出したバッテリ3の劣化状態を示す内部抵抗値が所定値である17mΩ(図5を参照)以上であるか否かを判断する。始動モード決定部21は、内部抵抗値が17mΩ以上ではないと判断した場合は、当該判断結果を始動回数制御部22に通知し、ステップS104に移る。始動モード決定部21は、内部抵抗値が17mΩ以上であると判断した場合は、ステップS205に移る。なお、バッテリ3の劣化状態を示す内部抵抗値の所定値は、17mΩには限られない。
【0035】
ステップS104において、始動回数制御部22は、第1の実施形態で説明した始動回数制御部12と同様の動作を行う。この結果として、車両用電源制御装置200は、ユーザの1回のエンジン始動要求に応答してエンジンを始動させ(図5のn=1)、動作を終了する。
【0036】
一方、ステップS205において、始動モード決定部21は、バッテリ3の劣化状態を示す内部抵抗値に応じて、エンジン始動に必要となるエンジン始動要求の回数n(n≧2)を決定する。図5に示す通り、始動モード決定部21は、内部抵抗値が17〜20mΩの場合はn=2と決定し、内部抵抗値が20〜23mΩの場合はn=3と決定し、内部抵抗値が23〜26mΩの場合はn=4と決定し、内部抵抗値が26mΩ以上の場合はn=6と決定する。なお、nの最大値であるn=6に対応する内部抵抗値の最小値26mΩは、エンジン始動不能となる内部抵抗値よりも小さい値に設定されるのが好ましい。また、図5では、内部抵抗値を5つの区分に分けたが、この区分の数は複数で有ればよい。また、nの値は、内部抵抗値の増加に伴って増加する値であればよい。また、内部抵抗値を区分する範囲の大きさは、図5で示した3mΩには限られず、また、互いに異なる大きさであってもよい。
【0037】
次に、ステップS206において、始動回数制御部22は、K=2をカウントする。
【0038】
次に、ステップS105において、始動回数制御部22は、第1の実施形態の始動回数制御部12と同様に、メインコンタクタ4の制御端子に制御信号を出力して、バッテリ3からスタータモータ5へ、エンジンを始動できない程度に抑制した電力を供給させる。
【0039】
次に、ステップS106において、始動回数制御部22は、第1の実施形態の始動回数制御部12と同様に、ユーザからエンジン始動要求が有るまで待機する。ユーザからエンジン始動要求が有ると、ステップS207に移る。
【0040】
次に、ステップS207において、始動回数制御部22は、ステップS205で決定されたnの値と、カウントしているKの値とを比較する。nの値とKの値とが等しくない場合は、ステップS208に移る。nの値とKの値とが等しい場合は、ステップS104に移り、スタータモータ5はエンジンを始動させ、車両用電源制御装置200の動作は終了する。この結果として、車両用電源制御装置200は、ユーザの2回のエンジン始動要求に応答してエンジンを始動させ、動作を終了する。
【0041】
ステップS208において、始動回数制御部22は、Kの値に1を加え、ステップS105に戻る。つまり、始動回数制御部22は、ステップS105、S106、S207及びS208の動作を繰り返すことによって、ステップS205で決定された回数(n)のエンジン始動要求がユーザによって成された後に、エンジンを始動させる。
【0042】
なお、ステップS103及びS104のルートの動作を、抑制始動モードの動作と呼んでもよい。また、ステップS103、S205、S206、S105、S106、S207、S208及びS104のルートの動作を、抑制始動モードの動作と呼んでもよい。
【0043】
以上に説明した通り、本発明の第2の実施形態に係る車両用電源制御装置200は、バッテリ3の劣化状態を検出し、当該劣化状態に応じてエンジンの始動を意図的に失敗させる。このことによって、第2の実施形態の車両用電源制御装置200は、第1の実施形態の車両用電源制御装置100と同様の効果を得ることができる。加えて、第2の実施形態に係る車両用電源制御装置200は、バッテリ3の劣化状態の程度に応じた回数、エンジンの始動を意図的に失敗させる。つまり、車両用電源制御装置200は、バッテリ3の劣化の進行に伴って、エンジンの始動を意図的に失敗させる回数を増加させる。このことによって、車両用電源制御装置200は、バッテリ劣化の進行に応じて、ユーザに与える危機感を増加させることができる。この結果として、第2の実施形態に係る車両用電源制御装置200は、バッテリ劣化によるエンジン始動不能という事態を、第1の実施形態の車両用電源制御装置100よりも更に確実に回避することができる。
【0044】
なお、以上では、車両用電源制御装置200は、直前のバッテリ劣化状態に応じて通常始動モード又は抑制始動モードのいずれかを決定するために、バッテリ劣化状態検出のステップS102を、スタータモータ5に抑制した電力を供給する回数nを決定するステップS203の直前に実施した(図4を参照)。しかし、ステップS102は、図4に示した位置には限られず、例えば、ステップS104の次に位置してもよい。この場合、車両用電源制御装置200は、ユーザが次回エンジンを始動させるためにエンジン始動要求を行う(ステップS101)まで、バッテリ劣化状態(内部抵抗値)を記憶することとなる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、車両用電源制御装置及び車両用電源制御方法等に利用可能であり、特に、バッテリ劣化によるエンジン始動不能という事態をより確実に回避したい場合等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】スタータ装置10に備えられる第1の実施形態に係る車両用電源制御装置100を説明するための図
【図2】第1の実施形態に係る車両用電源制御装置100の動作について説明するためのフローチャート
【図3】第1の実施形態に係る車両用電源制御装置100において、バッテリ劣化状態を示す内部抵抗値とエンジン始動に必要となるエンジン始動要求回数との関係の一例を示した図
【図4】第2の実施形態に係る車両用電源制御装置200の動作について説明するためのフローチャート
【図5】第2の実施形態に係る車両用電源制御装置100において、バッテリ劣化状態を示す内部抵抗値とエンジン始動に必要となるエンジン始動要求回数nとの関係の一例を示した図
【符号の説明】
【0047】
1 バッテリ状態監視ECU
2、6 スタータ制御回路
3 バッテリ
4 メインコンタクタ
5 スタータモータ
10 スタータ装置
11、21 始動モード決定部
12、22 始動回数制御部
100、200 車両用電源制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの電力をメインコンタクタを介してスタータモータに供給してエンジンを始動させるスタータ装置に備えられる車両用電源制御装置であって、
前記バッテリの劣化状態を検出するバッテリ劣化状態検出部と、
エンジン始動要求に応答して、前記メインコンタクタを制御して前記バッテリの電力を前記スタータモータに供給するスタータ制御部とを備え、
前記スタータ制御部は、
前記バッテリ劣化状態検出部が検出した前記バッテリの劣化状態に応じて、通常始動モード又は抑制始動モードのいずれかを決定する始動モード決定部と、
前記通常始動モードが決定された場合は1回の前記エンジン始動要求に応答して前記エンジンを始動させ、前記抑制始動モードが決定された場合は複数回数の前記エンジン始動要求に応答して前記エンジンを始動させる始動回数制御部とを含むことを特徴とする、車両用電源制御装置。
【請求項2】
前記始動モード決定部は、前記抑制始動モードを決定した場合、更に、前記バッテリ劣化状態検出部が検出した前記バッテリの劣化状態に応じた回数を決定し、
前記始動回数制御部は、前記抑制始動モードが決定された場合、前記始動モード決定部によって決定された回数の前記エンジン始動要求に応答して前記エンジンを始動させることを特徴とする、請求項1に記載の車両用電源制御装置。
【請求項3】
前記バッテリ劣化状態検出部は、前記バッテリの内部抵抗を測定することによって、前記バッテリの劣化状態を検出することを特徴とする、請求項1に記載の車両用電源制御装置。
【請求項4】
バッテリの電力をメインコンタクタを介してスタータモータに供給してエンジンを始動させるスタータ装置に用いられる車両用電源制御方法であって、
前記バッテリの劣化状態を検出するバッテリ劣化状態検出ステップと、
エンジン始動要求に応答して、前記メインコンタクタを制御して前記バッテリの電力を前記スタータモータに供給する電力供給ステップとを備え、
前記電力供給ステップは、
前記バッテリ劣化状態検出ステップで検出した前記バッテリの劣化状態に応じて、通常始動モード又は抑制始動モードのいずれかを決定する始動モード決定ステップと、
前記通常始動モードが決定された場合は1回の前記エンジン始動要求に応答して前記エンジンを始動させ、前記抑制始動モードが決定された場合は複数回数の前記エンジン始動要求に応答して前記エンジンを始動させる始動ステップとを含むことを特徴とする、車両用電源制御方法。
【請求項5】
前記始動モード決定ステップにおいて、前記抑制始動モードが決定された場合、更に、前記バッテリ劣化状態検出ステップで検出された前記バッテリの劣化状態に応じた回数が決定され、
前記始動ステップでは、前記抑制始動モードが決定された場合、前記始動モード決定ステップで決定された回数の前記エンジン始動要求に応答して前記エンジンを始動させることを特徴とする、請求項4に記載の車両用電源制御方法。
【請求項6】
前記バッテリ劣化状態検出ステップでは、前記バッテリの内部抵抗を測定することによって、前記バッテリの劣化状態を検出することを特徴とする、請求項4に記載の車両用電源制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−228464(P2009−228464A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71797(P2008−71797)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】